(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
本実施形態に係る電子装置の製造方法は、表面に金属露出部を有する基材と、基材に設けられた電子部品と、を備える。この電子装置の製造方法は、金属露出部と、フラックスとを接触させて、金属露出部をフラックス処理するフラックス処理工程と、フラックス処理した金属露出部の表面に接するように樹脂組成物を導入する導入工程と、を含むものである。
【0013】
フラックス処理工程に用いられるフラックスは、ロジンと、活性剤と、溶剤と、を含み、上記フラックス中の上記ロジンの含有量が、上記フラックス100質量部に対して、1質量部以上18質量部以下であり、下記の手順で測定される、加熱処理前後の前記フラックスの質量変化率が21質量%以下を満たすものである。
(手順)
窒素雰囲気下、昇温速度10℃/minで、温度25℃から250℃に昇温する加熱条件で、フラックスを加熱処理したとき、熱重量測定装置を用いて、加熱処理前のフラックスの質量M1と、加熱処理後のフラックスの質量M2とを測定する。そして、加熱処理前後のフラックスの質量変化率を、得られたM1、M2を用いて、式:(M2/M1)×100に基づいて算出する。
【0014】
導入工程に用いられる樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂硬化剤と、を含み、上記樹脂組成物において、上記エポキシ樹脂および上記フェノール樹脂硬化剤からなる樹脂群のHansen法に基づく平均溶解度パラメーターをSP1とし、上記エポキシ樹脂および上記フェノール樹脂硬化剤からなる樹脂群の数平均分子量をMn1としたとき、SP1とMn1とが、Mn1≦210×SP1−4095の関係を満たすものである。
【0015】
これまでの電子装置の製造方法において、フラックス残渣を洗浄する工程を行わない場合、電子装置の樹脂組成物の硬化物と、基材との間にフラックス残渣が残存することがあった。
【0016】
まず、フラックス残渣が形成される原因について説明する。
フラックスは、ロジンと、活性剤と、溶剤と、を含む樹脂系フラックスである。
電子装置の電気回路などの金属部材にフラックスを塗工する場合、フラックス中のロジン及び活性剤が、金属部材の表面に形成される酸化膜と反応し、酸化膜を除去する。これにより、酸化膜が除去された金属部材は、酸化膜が存在する金属部材と比べて、はんだとの密着性を向上することができる。
ここで、金属部材の表面には、酸化膜と反応しなかったロジン及び活性剤が残存する。そして、残存するロジン及び活性剤が、フラックス残渣を形成する。
【0017】
ロジンは、電子装置の作製工程におけるはんだ付け時の熱処理によって、熱変性ロジンとなる。ここで、熱変性ロジンは、金属部材に対する腐食、短絡などの悪影響を抑制ため、水との親和性が低く、絶縁性となるように設計される。このような熱変性ロジンと、従来の樹脂組成物とは化学的親和性が低かった。詳細なメカニズムは定かではないが、熱変性ロジンは水との親和性が低いためと推測される。ところで、熱変性ロジンの形状は、多孔質形状である。
以上より、化学的親和性の低い従来の樹脂組成物は、多孔質形状の熱変性ロジン内部に侵入できない。したがって、フラックス残渣が従来の樹脂組成物と相溶しないと推測される。
【0018】
活性剤は、電子装置の作製工程におけるはんだ付け時の熱処理によって、分解される。
ところで、近年使用される鉛フリーのはんだには、スズ(Sn)などの金属が含有される。詳細なメカニズムは定かではないが、分解された活性剤は、はんだ中に含まれるSnなどの金属、または、金属部材に由来するAg、Fe、Niなどの金属と反応し、該金属の結晶を形成すると推測される。これにより、フラックス中の摩擦が増加し、フラックスの粘度が上昇する。このようにフラックスの粘度が上昇してしまうと、フラックスの分子鎖と、樹脂組成物の分子鎖とが絡み合わなくなり、物理的親和性が低くなる。
以上より、物理的親和性の低い従来の樹脂組成物はフラックスの分子鎖と絡み合わない。したがって、フラックス残渣が従来の樹脂組成物と相溶しないと推測される。
【0019】
本発明者らは、フラックス残渣を洗浄する工程を行わないことを前提に、フラックス残渣を取り除く方法を検討した。その結果、上述したフラックスに対して、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂硬化剤からなる樹脂群のHansen法に基づく平均溶解度パラメーターSP1及び数平均分子量Mn1との間に特定の関係が成り立つ樹脂組成物を組み合わせて用いることが有効であることを知見した。これにより、フラックスと、樹脂組成物との化学的親和性、物理的親和性といった相溶性が向上すると推測される。したがって、樹脂組成物を導入することで、フラックス及び樹脂組成物が相溶し、フラックス残渣を洗浄せずに、フラックス残渣を取り除くことができる。
以上より、本実施形態に係る電子装置は、基材上のフラックス残渣を洗浄する工程を行わないことを前提に、樹脂組成物の硬化物と、基材と間にフラックス残渣が存在しない電子装置の製造方法を提供できるものである。これにより、樹脂組成物の硬化物と、基材との密着性を向上し、電子装置の電気的信頼性といった性能を向上できる。よって、生産性および製造安定性に優れた電子装置の製造方法を実現できる。
【0020】
まず、本実施形態に係る電子装置の製造方法に用いる、樹脂組成物、フラックスについて説明する。
【0021】
(樹脂組成物)
本実施形態に係る樹脂組成物は、エポキシ樹脂とフェノール樹脂硬化剤とを含む熱硬化性樹脂組成物である。
本実施形態に係る樹脂組成物は、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂硬化剤からなる樹脂群のHansen法に基づく平均溶解度パラメーターSP1と、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂硬化剤からなる樹脂群の数平均分子量Mn1との間に、Mn1≦210×SP1−4095の関係が成り立つものである。これにより、フラックスと相溶性を示し、フラックス残渣を取り除くことができるものである。
【0022】
まず、上述した樹脂群のHansen法に基づく平均溶解度パラメーターSP1について説明する。
Hansen法とは、蒸発エネルギーを分散エネルギーdD(Dispersion Energy)と、分極エネルギーdP(Polar Energy)と、水素結合エネルギーdH(Hydrogen Bonding Energy)とに分け、dD、dP及びdHを三次元ベクトルとしたときのベクトルの長さを溶解度パラメーターとして算出する方法である。
【0023】
平均溶解度パラメーターSP1は以下の式1により算出することができる。
平均溶解度パラメーターSP1=Σ(A
(n)×Ca
(n))+Σ(B
(m)×Cb
(m)) (式1)
(上記式1において、A
(n)は、本樹脂組成物中に含まれているn種のエポキシ樹脂それぞれに関するHansen法に基づいて算出された溶解度パラメーターを指す。Ca
(n)は、本樹脂組成物中における全エポキシ樹脂と全フェノール樹脂硬化剤の合計含有量に対するn種のエポキシ樹脂それぞれの含有量を指す。B
(m)は、本樹脂組成物中に含まれているm種のフェノール樹脂硬化剤それぞれに関するHansen法に基づいて算出された溶解度パラメーターを指す。Cb
(m)は、本樹脂組成物中における全エポキシ樹脂と全フェノール樹脂硬化剤の合計含有量に対するm種のフェノール樹脂硬化剤それぞれの含有量を指す。なお、上記n、mは、1以上の整数である。)
【0024】
一例として、樹脂群が、第1のエポキシ樹脂と、第2のエポキシ樹脂と、第1のフェノール樹脂硬化剤と、第2のフェノール樹脂硬化剤とにより構成されている場合について考える。この場合、樹脂群の平均溶解度パラメーターSP1は、以下の式2で算出されることになる。
平均溶解度パラメーターSP1=A
1×Ca
1+A
2×Ca
2+B
1×Cb
1+B
2×Cb
2 (式2)
(上記式2において、A
1は、第1のエポキシ樹脂に関するHansen法に基づいて算出された溶解度パラメーターの値を示す。A
2は、第2のエポキシ樹脂に関するHansen法に基づいて算出された溶解度パラメーターの値を示す。B
1は、第1の硬化剤に関するHansen法に基づいて算出された溶解度パラメーターの値を示す。B2は、第2の硬化剤に関するHansen法に基づいて算出された溶解度パラメーターの値を示す。Ca
1は、樹脂群全量に対する第1のエポキシ樹脂の含有量を示す。Ca
2は、樹脂群全量に対する第2のエポキシ樹脂の含有量を示す。Cb
1は、樹脂群全量に対する第1の硬化剤の含有量を示す。Cb
2は、樹脂群全量に対する第2の硬化剤の含有量を示す。)
【0025】
樹脂群の平均溶解度パラメーターSP1の上限値としては、例えば、30.0[cal/cm
3]
0.5以下であることが好ましく、28.0[cal/cm
3]
0.5以下であることが更に好ましく、26.0[cal/cm
3]
0.5以下であることが一層好ましく、24.0[cal/cm
3]
0.5以下であることが殊更好ましい。これにより、フラックス残渣中に含まれているロジン、活性種と、エポキシ樹脂やフェノール樹脂硬化剤の分子構造中に含まれている官能基との間に生じる水素結合、双極子相互作用などの相互作用が促進され、フラックス残渣に対する樹脂組成物の相溶性を向上させることができる。具体的には、SP1の値が上記上限値以下となることで、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂硬化剤の分子鎖同士の相互作用が小さくなり、フラックス残渣の分子同士の相互作用と同程度となるために、両者の相互作用が強くなり、相溶性が向上すると考えられる。
また、樹脂群の平均溶解度パラメーターSP1の下限値としては、例えば、20.8[cal/cm
3]
0.5以上であることが好ましく、21.0[cal/cm
3]
0.5以上であることがより好ましい。これにより、フラックス残渣中に含まれているロジン、活性種と、エポキシ樹脂やフェノール樹脂硬化剤の分子構造中に含まれている官能基との間に生じる水素結合、双極子相互作用などの相互作用が促進され、フラックス残渣に対する樹脂組成物の相溶性を向上させることができる。具体的には、SP1の値が上記下限値以上となることで、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂硬化剤の分子鎖同士の相互作用が大きくなり、フラックス残渣の分子の相互作用と同程度となるために、両者の相互作用が強くなり、相溶性が向上すると考えられる。
以上より、上述した平均溶解度パラメーターSP1の値が上記数値範囲内となるように制御した場合には、樹脂組成物及びフラックス残渣の相溶性を向上させることができる。
【0026】
また、上述したエポキシ樹脂およびフェノール樹脂硬化剤からなる樹脂群の数平均分子量Mn1の算出方法について説明する。
樹脂群の数平均分子量Mn1は、具体的には、以下の式3により算出することができる。
数平均分子量Mn1=Σ(a
(n)×Ca
(n))+Σ(b
(m)×Cb
(m)) (式3)
(上記式3において、a
(n)は、本樹脂組成物中に含まれているn種のエポキシ樹脂それぞれに関する数平均分子量の値を指す。Ca
(n)は、本樹脂組成物中における全エポキシ樹脂と全フェノール樹脂硬化剤の合計含有量に対するn種のエポキシ樹脂それぞれの含有量を指す。b
(m)は、本樹脂組成物中に含まれているm種のフェノール樹脂硬化剤それぞれに関する数平均分子量の値を指す。Cb
(m)は、本樹脂組成物中における全エポキシ樹脂と全フェノール樹脂硬化剤の合計含有量に対するm種のフェノール樹脂硬化剤それぞれの含有量を指す。なお、上記n,mは、1以上の整数である。)
【0027】
一例として、本実施形態に係る樹脂組成物中に含まれている樹脂群が、第1のエポキシ樹脂と、第2のエポキシ樹脂と、第1のフェノール樹脂硬化剤と、第2のフェノール樹脂硬化剤とにより構成されている場合について考える。この場合、樹脂群の数平均分子量Mn1は、以下の式4で算出されることになる。
数平均分子量Mn1=a
1×Ca
1+a
2×Ca
2+b
1×Cb
1+b
2×Cb
2 (式4)
(上記式4において、a
1は、第1のエポキシ樹脂の数平均分子量を示す。a
2は、第2のエポキシ樹脂の数平均分子量を示す。b
1は、第1のフェノール樹脂硬化剤の数平均分子量を指す。b
2は、第2のフェノール樹脂硬化剤の数平均分子量を示す。Ca
1は、樹脂群全量に対する第1のエポキシ樹脂の含有量を示す。Ca
2は、樹脂群全量に対する第2のエポキシ樹脂の含有量を示す。Cb
1は、樹脂群全量に対する第1のフェノール樹脂硬化剤の含有量を示す。Cb
2は、樹脂群全量に対する第2のフェノール樹脂硬化剤の含有量を示す。)
【0028】
樹脂群の数平均分子量Mn1の下限値は、例えば、250以上であることが好ましく、260以上であることがより好ましく、265以上であることが更に好ましい。これにより、フラックス残渣中に含まれているロジン、活性種と、エポキシ樹脂やフェノール樹脂硬化剤の分子構造を構成する主鎖との間に生じる相互作用が促進され、フラックス残渣に対する樹脂組成物の相溶性を向上させることができる。具体的には、数平均分子量Mn1が上記下限値以上となることで、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂硬化剤の分子鎖同士の絡み合いが大きくなる。これにより、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂硬化剤の分子鎖同士の運動性制限される。したがって、フラックス残渣が、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂硬化剤に対し相互作用をしやすくなり、相溶性を向上できると考えられる。
樹脂群の数平均分子量Mn1の上限値は、例えば、550以下であることが好ましく、520以下であることがより好ましい。これにより、フラックス残渣中に含まれているロジン、活性種と、エポキシ樹脂やフェノール樹脂硬化剤の分子構造を構成する主鎖との間に生じる相互作用が促進され、フラックス残渣に対する樹脂組成物の相溶性を向上させることができる。
【0029】
本発明者らは、フラックス残渣を相溶して封止材内に取り込むことが可能な樹脂組成物を得るために、樹脂組成物中のエポキシ樹脂と、フェノール樹脂硬化剤との組み合わせについて検討した。その結果、水素結合、分散力、双極子相互作用といった分子鎖の化学的相性であるSP1と、分子鎖の形状といった物理的な相性であるMn1が、それぞれ特定の数値範囲となることで、樹脂組成物と、フラックス残渣とを相溶させることができることを見出した。
特定の数値範囲としては、具体的には、Mn1≦210×SP1−4095の関係を満たすように、数平均分子量Mn1が小さく、平均溶解度パラメーターSP1が大きくなることが好ましい。これは、
図1にも示すように、SP1に対してMn1をプロットした時に、Mn1=210×SP1−4095の直線上、あるいは、それよりもMn1が小さくなる、または、SP1が大きくなることを示す。なお、Mn1≦210×SP1−4095の関係式において、Mn1の単位は無次元であり、SP1の単位は[cal/cm
3]
0.5である。
【0030】
詳細なメカニズムは定かではないが、Mn1≦210×SP1−4095の関係式を満たすことにより、樹脂組成物と、フラックス残渣とを相溶させることができる理由は以下のように推測される。
まず、Mn1の値が小さくなることで、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂硬化剤の分子鎖の絡み合いが適切に制御されると推測される。これにより、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂硬化剤の分子鎖と、フラックス残渣中に含まれているロジン、活性種の分子鎖との物理的親和性が向上し、相溶性が向上する。
また、SP1の値が大きくなることで、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂硬化剤の分子鎖と、フラックス残渣との分子鎖との化学的親和性を向上できると推測される。従来の電子装置の封止に用いられる樹脂組成物では、フラックス残渣の分子鎖同士の相互作用が、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂硬化剤の分子鎖と、フラックス残渣の分子鎖との相互作用より遥かに大きかった。しかしながら、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂硬化剤の分子鎖と、フラックス残渣の分子鎖とが化学的親和性を強めることによって、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂硬化剤の分子鎖が、フラックス残渣中に含まれている分子鎖を取り込みやすくなる。
以上より、Mn1及びSP1が、共に適切な数値範囲となることで、樹脂組成物と、フラックス残渣とを相溶させることができると推測される。
【0031】
本発明者らが、Mn1≦210×SP1−4095の関係式を満たす樹脂組成物を得る方法について検討した結果、樹脂群を構成するエポキシ樹脂及びフェノール樹脂硬化剤の選択を適切に行うことが重要な要素として挙げられる。ここで、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂硬化剤の選択としては、具体的には、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂硬化剤の組み合わせ、含有量が、関係式を満たすための要素として挙げられる。
【0032】
なお、SP1及びMn1の関係としては、例えば、210×SP1−5000≦Mn1の関係がさらに成り立ってもよい。
【0033】
次に、本実施形態に係る樹脂組成物の含有成分について説明する。
本実施形態に係る樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂硬化剤とを含む。
【0034】
(エポキシ樹脂)
本実施形態に係るエポキシ樹脂としては、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量や分子構造は特に限定されない。
エポキシ樹脂としては、具体的には、ビフェニル型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等に例示されるトリフェニル型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂)、ビフェニレン骨格含有ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂などが挙げられる。エポキシ樹脂としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。エポキシ樹脂としては、上記具体例のうち例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂からなる群より選択される1種または2種以上を用いることが好ましい。これにより、平均溶解度パラメーターSP1を大きくすることができ、樹脂組成物及びフラックスの相溶性を向上できる。
【0035】
樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量の下限値は、樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、例えば、2質量部以上であることが好ましく、4質量部以上であることがより好ましく、6質量部以上であることがさらに好ましい。
また、樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量の上限値は、樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、例えば、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、12質量部以下であることが更に好ましい。
エポキシ樹脂の含有量が上記数値範囲内であることにより、上述した数平均分子量Mn1を満たしつつ、平均溶解度パラメーターSP1を所望の数値範囲内とすることができる。
なお、本実施形態において、樹脂組成物の全固形分とは、樹脂組成物に含まれる溶剤を除く成分全体を示す。
【0036】
(フェノール樹脂硬化剤)
本実施形態に係るフェノール樹脂硬化剤は、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造については特に限定されるものではない。
フェノール樹脂硬化剤としては、具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、トリスフェノールメタン型フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ホルムアルデヒドで変性したトリフェニルメタン型フェノール樹脂、ホルムアルデヒドで変性したトリヒドロキシフェニルメタン型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂、フェニルアラルキル型フェノール樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物などが挙げられる。フェノール樹脂硬化剤としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。フェノール樹脂硬化剤としては、上記具体例のうち例えば、ノボラック型フェノール樹脂、多官能型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂からなる群より選択される1種または2種以上を用いることが好ましい。これにより、平均溶解度パラメーターSP1を大きくすることができ、樹脂組成物及びフラックスの相溶性を向上できる。
【0037】
樹脂組成物中のフェノール樹脂硬化剤の含有量の下限値は、樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、例えば、2質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましい。
また、樹脂組成物中のフェノール樹脂硬化剤の含有量の上限値は、樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、例えば、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、12質量部以下であることが更に好ましく、10質量部以下であることが一層好ましい。
フェノール樹脂硬化剤の含有量が上記数値範囲内であることで、上述した数平均分子量Mn1を満たしつつ、平均溶解度パラメーターSP1を所望の数値範囲内とすることができる。
【0038】
(その他の成分)
本実施形態に係る樹脂組成物は、必要に応じて、硬化促進剤、充填材、カップリング剤、離型剤、着色剤、難燃剤、イオン捕捉剤、低応力剤等の各種添加剤のうち1種または2種以上を適宜配合することができる。
以下に、代表成分について説明する。
【0039】
(硬化促進剤)
硬化促進剤は、エポキシ樹脂及び硬化剤の硬化反応を促進させるものであれば限定されず、エポキシ樹脂及び硬化剤の種類に応じて選択できる。
硬化促進剤としては、具体的には、オニウム塩化合物、トリフェニルホスフィンなどの有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール(EMI24)、2−フェニル−4−メチルイミダゾール(2P4MZ)、2−フェニルイミダゾール(2PZ)、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシイミダゾール(2P4MHZ)、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール(1B2PZ)などのイミダゾール化合物;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、ベンジルジメチルアミン等が例示されるアミジンや3級アミン;上記アミジンまたは上記3級アミンの4級アンモニウム塩等の窒素原子含有化合物などが挙げられる。硬化促進剤としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
(充填材)
本実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、充填材を更に含んでもよい。充填材としては限定されず、電子装置の構造、電子装置に要求される機械的強度、熱的特性に応じて適切な充填材を選択できる。
充填材としては、具体的には、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶性シリカ、2次凝集シリカ、球状微粉シリカなどのシリカ;アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化チタン、炭化ケイ素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、チタンホワイトなどの金属化合物;タルク;クレー;マイカ;ガラス繊維などが挙げられる。充填材としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。充填材としては、上記具体例のうち、例えば、シリカを用いることが好ましい。これにより、充填材と、密着助剤とが相互作用し、さらに密着性を向上できる。
【0041】
本実施形態において、充填材の体積基準の累積50%粒径(D
50)の下限値は、例えば、0.1μm以上であることが好ましく、0.3μm以上であることがより好ましく、0.5μm以上であることが更に好ましく、1μm以上であることが一層好ましい。これにより、樹脂組成物の粘度を向上できる。したがって、樹脂組成物が導入される際に、フラックスが、樹脂組成物中により好適に取り込まれる。
また、充填材の体積基準の累積50%粒径(D
50)の上限値は、例えば、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましく、25μm以下であることが更に好ましい。これにより、粗大な充填材が、樹脂組成物と、フラックスとの接触を妨げることを抑制できる。したがって、樹脂組成物と、フラックスとの相溶性を向上できる。
なお、本実施形態において、充填材の体積基準の累積50%粒径(D50)は、例えば、市販のレーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、島津製作所社製、SALD−7000)を用いて粒子の粒度分布を体積基準で測定し、算出することができる。
【0042】
本実施形態に係る樹脂組成物中の充填材の含有量の下限値は、樹脂組成物の固形分100質量部に対して、例えば、70質量部以上であることが好ましく、75質量部以上であることがより好ましく、80質量部以上であることが好ましい。これにより、樹脂組成物の硬化物の強度を向上させ、樹脂組成物の硬化物と、基材との密着性を向上できる。
また、樹脂組成物中の充填材の含有量の上限値は、樹脂組成物の固形分に対して、例えば、95質量部以下であることが好ましく、93質量部以下であることがより好ましく、90質量部以下であることが好ましい。これにより、樹脂組成物の粘度を向上できる。したがって、樹脂組成物が導入される際に、フラックスが、樹脂組成物中により好適に取り込まれる。
【0043】
(カップリング剤)
カップリング剤としては限定されず、電子装置に用いられる公知のカップリング剤を用いることができる。
カップリング剤としては、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニルシラン;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシシラン;p−スチリルトリメトキシシランなどのスチリルシラン;3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのメタクリルシラン;3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリルシラン;N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニルγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン;イソシアヌレートシラン;アルキルシラン;3−ウレイドプロピルトリアルコキシシランなどのウレイドシラン;3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシラン;3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネートシラン;チタン系化合物;アルミニウムキレート類;アルミニウム/ジルコニウム系化合物などが挙げられる。カップリング剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。カップリング剤としては、上記具体例のうち例えば、アミノシランを用いることが好ましい。また、アミノシランとしては、例えば、N−フェニルγ−アミノプロピルトリメトキシシランを用いることがより好ましい。これにより、樹脂組成物中におけるフラックス残渣の分散性をさらに向上させることができる。したがって、フラックス残渣の残存をより高度に抑制できる。
【0044】
(離型剤)
離型剤としては限定されず、電子装置の封止材に用いられる公知の離型剤を用いることができる。
離型剤としては、具体的には、カルナバワックスなどの天然ワックス、ジエタノールアミン・ジモンタンエステルなどの合成ワックス、ステアリン酸亜鉛などの高級脂肪酸及びその金属塩、パラフィンなどが挙げられる。離型剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0045】
(着色剤)
着色剤としては限定されず、電子装置の封止材に用いられる公知の着色剤を用いることができる。
着色剤としては、具体的には、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタンなどを挙げることができる。着色剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0046】
(難燃剤)
難燃剤としては限定されず、電子装置の封止材に用いられる公知の難燃剤を用いることができる。
難燃剤としては、具体的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、ホスファゼンなどを挙げることができる。難燃剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0047】
(イオン捕捉剤)
イオン捕捉剤としては限定されず、電子装置の封止材に用いられる公知のイオン捕捉剤を用いることができる。
イオン捕捉剤としては、具体的には、ハイドロタルサイト、ゼオライト、水酸化ビスマスなどを挙げることができる。
【0048】
(低応力剤)
低応力剤としては限定されず、電子装置の封止材に用いられる公知の低応力剤を用いることができる。
低応力剤としては、具体的には、シリコーンオイル、シリコーンゴム等のシリコーン化合物;ポリブタジエン化合物;アクリロニトリルブタジエン共重合などを挙げることができる。低応力剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0049】
(樹脂組成物の製造方法)
次に、本実施形態に係る樹脂組成物の製造方法について説明する。
本実施形態に係る樹脂組成物の製造方法は、例えば、上述した原料成分を混合して混合物を作製する混合工程と、次いで、混合物を成形する成形工程とを含む。
【0050】
(混合工程)
混合工程は、原料成分を混合し、混合物を作製工程である。混合する方法は限定されず、用いられる成分に応じて、公知の方法を用いることができる。
混合工程としては、具体的には、上述した樹脂組成物が含む原料成分を、ミキサーなどを用いて均一に混合する。次いで、ロール、ニーダーまたは押出機等の混練機で溶融混練し、混合物を作製する。
【0051】
(成形工程)
上述した混合工程に、次いで、混合物を成形する成形工程(S2)を行う。
成形する方法としては限定されず、樹脂組成物の形状に応じて、公知の方法を用いることができる。樹脂組成物の形状としては限定されず、例えば、顆粒形状、粉末形状、タブレット形状、シート形状などが挙げられる。樹脂組成物の形状は、成形方法に応じて選択できる。
【0052】
顆粒形状とした樹脂組成物を作製する成形工程としては、例えば、溶融混練後、冷却した混合物を粉砕する工程が挙げられる。なお、例えば、顆粒形状とした樹脂組成物をふるい分けして、顆粒の大きさを調節してもよい。また、例えば、顆粒形状とした樹脂組成物を、遠心製粉法またはホットカット法などの方法で処理し、分散度または流動性などを調製してもよい。
また、粉末形状とした樹脂組成物を作製する成形工程としては、例えば、混合物を粉砕し顆粒形状の樹脂組成物とした後、該顆粒形状の樹脂組成物をさらに粉砕する工程が挙げられる。
また、タブレット形状とした樹脂組成物を作製する成形工程としては、例えば、混合物を粉砕し顆粒形状の樹脂組成物とした後、該顆粒形状の樹脂組成物を打錠成型する工程が挙げられる。
また、シート形状とした樹脂組成物を作製する成形工程としては、例えば、溶融混練後、混合物を押出成形またはカレンダー成形する工程が挙げられる。
【0053】
(フラックス)
本実施形態に係るフラックスは、ロジンと、活性剤と、溶剤と、を含む。
本実施形態に係るフラックスは、例えば、半田のリフローにより生じるフラックス残渣の絶対量が少ない、低残渣タイプのフラックスであることが好ましい。これにより、フラックス残渣の絶対量を低減することができ、樹脂組成物中により分散することができる。ここで、低残渣タイプのフラックスとしては、フラックスについて、熱重量測定で評価される、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/minで温度25℃から250℃に昇温した時の、昇温前の前記フラックスの質量に対する、昇温後の前記フラックスの質量の百分率(質量変化率)は、21質量%以下のものであり、例えば、15質量%以下のものが好ましく、10質量%以下のものがより好ましく、5質量%以下のものがさらに好ましい。これにより、フラックス残渣の絶対量を低減することができる。これにより、樹脂組成物中にフラックス残渣をより分散でき、相溶性を向上できる。
なお、上記質量変化率の下限値としては、例えば、0質量%超としてもよく、5質量%以上としてもよく、10質量%以上としてもよい。
【0054】
以下、フラックスの含有成分について詳細を説明する。
【0055】
(ロジン)
ロジン(松脂)としては、具体的には、ガムロジン、ウッドロジン及びトール油ロジンなどの原料ロジン;上記原料ロジンから誘導されるロジン誘導体などが挙げられる。
ロジン誘導体としては、具体的には、アクリル酸変性ロジン、フェノール変性ロジン、マレイン酸変性ロジン、フマル酸変性ロジンなどのα,β不飽和カルボン酸変性ロジン;水添ロジン;重合ロジン;不均化ロジン;上記α,β不飽和カルボン酸変性ロジン、水添ロジン、重合ロジン、不均化ロジンを精製した精製ロジンなどが挙げられる。ロジンとしては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。ロジンとしては、上記具体例のうち例えば、α,β不飽和カルボン酸変性ロジンを用いることが好ましい。
【0056】
本実施形態に係るフラックス中のロジンの含有量の上限値としては、フラックス100質量部に対して、18質量部以下であり、例えば、15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。これにより、フラックス残渣を低減することができる。したがって、相溶性を向上できる。
本実施形態に係るフラックス中のロジンの含有量の下限値としては、フラックス100質量部に対して、1質量部以上であり、例えば、2質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましい。これにより、半田付けを好適に行うことができる。
【0057】
(活性剤)
活性剤としては、具体的には、アミン、有機酸などを用いることができる。活性剤としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
以下、詳細を説明する。
【0058】
(アミン)
活性剤として用いられるアミンとしては、具体的には、シクロへキシルアミンなどの脂肪族アミン;アニリンなどの芳香族アミン;イミダゾール類、ベンゾトリアゾール類、ピリジン類などの複素環アミン;上記脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環アミンの塩酸塩、臭化水素酸塩、テトラフルオロホウ酸塩などが挙げられる。アミンとしては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。アミンとしては、上記具体例のうち例えば、イミダゾール、ベンゾトリアゾールを用いることが好ましい。
【0059】
上記イミダゾールとしては、具体的には、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’―メチルイミダゾリル−(1’)]―エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジン、エポキシ―イミダゾールアダクト、2−メチルベンゾイミダゾール、2−オクチルベンゾイミダゾール、2−ペンチルベンゾイミダゾール、2−(1−エチルペンチル)ベンゾイミダゾール、2−ノニルベンゾイミダゾール、2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾールなどが挙げられる。
【0060】
上記ベンゾトリアゾールとしては、具体的には、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール]、6−(2−ベンゾトリアゾリル)−4−tert−オクチル−6’−tert−ブチル−4’−メチル−2,2’−メチレンビスフェノール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール、2,2’−[[(メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]イミノ]ビスエタノール、1,2,3−ベンゾトリアゾールナトリウム塩水溶液、1−(1’,2’−ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、1−(2,3−ジカルボキシプロピル)ベンゾトリアゾール、1−[(2−エチルヘキシルアミノ)メチル]ベンゾトリアゾール、2,6−ビス[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]−4−メチルフェノール、5−メチルベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0061】
活性剤として用いられる有機酸としては、具体的には、アジピン酸、アゼライン酸、エイコサン二酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、サリチル酸、ジグリコール酸、ジピコリン酸、ジブチルアニリンジグリコール酸、スベリン酸、セバシン酸、チオグリコール酸、テレフタル酸、ドデカン二酸、パラヒドロキシフェニル酢酸、ピコリン酸、フェニルコハク酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、ラウリン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、酒石酸、イソシアヌル酸トリス(2−カルボキシエチル)、グリシン、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジエチルグルタル酸、2−キノリンカルボン酸、3−ヒドロキシ安息香酸、リンゴ酸、p−アニス酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、トリマー酸、水添トリマー酸などを用いることができる。有機酸としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
フラックスに用いられる溶剤としては、具体的には、水、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、テルピネオール類等が挙げられる。アルコール系溶剤としてはイソプロピルアルコール、1,2−ブタンジオール、イソボルニルシクロヘキサノール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,2’−オキシビス(メチレン)ビス(2−エチル−1,3−プロパンジオール)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、1,2,6−トリヒドロキシヘキサン、ビス[2,2,2−トリス(ヒドロキシメチル)エチル]エーテル、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、エリトリトール、トレイトール、グアヤコールグリセロールエーテル、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール等が挙げられる。グリコールエーテル系溶剤としては、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられる。
【0063】
(電子装置)
次に、本実施形態に係る電子装置について説明する。
図2は、本実施形態に係る電子装置の一例を示す図である。
図2に示すように、本実施形態に係る電子装置100は、例えば、基材10と、電子部品20とを備えるものであり、電子部品20を封止する封止材50を備えるものである。ここで、封止材50は、例えば、上述した樹脂組成物の硬化物によってなる。
なお、
図2に示す電子装置100は、電子部品20と基材10とが半田バンプ30を介して電気的に接続されたものであるが、電気的な接続方法はこれに限定されるものではない。
【0064】
本実施形態に係る基材10としては、表面に金属露出部を備えるものであれば限定されない。ここで、金属露出部とは、具体的には、銅回路などの電気回路;銀、金などの金属メッキなどが挙げられる。
基材10は、例えば、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂等によって構成される有機基板や、セラミック基板であってもよい。
【0065】
本実施形態に係る電子部品20としては、半田バンプ30を備えていれば限定されるものではないが、例えば、半導体素子が好ましい。
半導体素子としては、限定されるものではないが、たとえば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子が挙げられる。
【0066】
本実施形態に係る電子装置としては、限定されるものではないが、半導体素子をモールドすることにより得られる半導体装置が好ましい。
半導体装置の種類としては、具体的には、MAP(Mold Array Package)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、CSP(Chip Size Package)、QFN(Quad Flat Non−leaded Package)、SON(Small Outline Non−leaded Package)、BGA(Ball Grid Array)、LF−BGA(Lead Flame BGA)、FCBGA(Flip Chip BGA)、MAPBGA(Molded Array Process BGA)、eWLB(Embedded Wafer−Level BGA)、Fan−In型eWLB、Fan−Out型eWLBなどの種類が挙げられる。
【0067】
(電子装置の製造方法)
本実施形態に係る電子装置の製造方法は、例えば、基材の金属露出部と、フラックスとを接触させて、金属露出部をフラックス処理するフラックス処理工程と、電子部品及び基材をリフローすることで、半田バンプを介して、電子部品と、基材の金属露出部とを電気的に接続させる半田リフロー工程と、フラックス処理した金属露出部の表面に接するように樹脂組成物を導入する導入工程と、を含む。
なお、本実施形態に係る電子装置の製造方法においては、フラックスを洗浄する工程を行わない。
以下、各工程について、
図3を用いて詳細を説明する。
【0068】
(フラックス処理工程)
フラックス処理工程では、基材の金属露出部と、フラックスとを接触させて、金属露出部をフラックス処理する。
フラックス処理工程では、まず、
図3(a)に示すように半田バンプ30を有する電子部品20を準備する。
次に、
図3(b)に示すように電子部品20に設けられた半田バンプ30にフラックス200を塗布する。具体的には、準備した電子部品20における半田バンプ30が設けられている側の面を、フラックス200が塗布された台上に接触させることにより、電子部品20に設けられた半田バンプ30にフラックス200を付着させる。
次いで、
図3(c)に示すように、電子部品20を基材10の上に直接配置する。これにより、基材10が備える金属露出部と、フラックス200とを接触させ、金属露出部にフラックス200を付着させるフラックス処理をする。
【0069】
(半田リフロー工程)
半田リフロー工程では、電子部品及び基材をリフローすることで、半田バンプを介して、電子部品と、基材の金属露出部とを電気的に接続させる。
具体的には、
図3(c)に示す電子部品及び基材からなる構造体をリフローすることで、半田バンプを介して、電子部品と、基材の金属露出部とを電気的に接続させ、
図3(d)に示す構造体を得る。ここで、
図3(d)に示す構造体においては、例えば、基材10の金属露出部と、基材10上に搭載される電子部品20と、電子部品20が備える半田バンプ30とにフラックス残渣300が付着している。
【0070】
(導入工程)
導入工程では、フラックス処理した金属露出部の表面に接するように樹脂組成物を導入する。
具体的には、
図3(e)に示すように、樹脂組成物を導入し、硬化させることで封止材50を成形する。
樹脂組成物を導入する方法としては限定されず、具体的には、トランスファー成形法、圧縮成形法、インジェクション成形法といった方法を用いることができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例】
【0072】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0073】
<樹脂組成物>
各実施例、各比較例に用いた樹脂組成物の原料成分の詳細について以下に示す。
【0074】
(エポキシ樹脂)
・エポキシ樹脂1:トリフェニルメタン型エポキシ樹脂とビフェニル型エポキシ樹脂の混合物(三菱化学社製、EPIKOTE YL6677)
・エポキシ樹脂2:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製、NC−3000)
・エポキシ樹脂3:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製、NC−3000−L)
・エポキシ樹脂4:トリフェニルメタン型エポキシ樹脂(三菱化学社製、1032H60)
・エポキシ樹脂5:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、YL6810)
・エポキシ樹脂6:ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学社製、YX4000K)
・エポキシ樹脂7:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂とビフェノールグリシジルエーテルの混合物(日本化薬社製、CER−3000−L)
【0075】
(フェノール樹脂硬化剤)
・フェノール樹脂硬化剤1:トリフェニルメタン型フェノール樹脂(明和化成社製、MEH−7500)
・フェノール樹脂硬化剤2:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂(明和化成社製、MEH−7851SS)
・フェノール樹脂硬化剤3:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂(明和化成社製、MEH−7851M)
・フェノール樹脂硬化剤4:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂(明和化成社製、MEH−7851H)
・フェノール樹脂硬化剤5:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂(日本化薬社製、GPH−65)
・フェノール樹脂硬化剤6:ホルムアルデヒドで変性したトリヒドロキシフェニルメタン型フェノール樹脂(エアウォーターケミカル社製、SK Resin HE910−20)
・フェノール樹脂硬化剤7:ノボラック型フェノール樹脂(住友ベークライト社製、Sumilite Resin PR−51470)
【0076】
上記のエポキシ樹脂1〜7、フェノール樹脂硬化剤1〜7のそれぞれについて、Hansen法に基づいて、溶解度パラメーター(SP:Solubility Parameter)を算出した。算出したSP値を、表1に示す。
なお、Hansen法とは、蒸発エネルギーを分散エネルギーdD(Dispersion Energy)と、分極エネルギーdP(Polar Energy)と、水素結合エネルギーdH(Hydrogen Bonding Energy)とに分け、dD、dP及びdHを三次元ベクトルとしたときのベクトルの長さをSP値として算出する方法である。
【0077】
上記のエポキシ樹脂1〜7、フェノール樹脂硬化剤1〜7のそれぞれの数平均分子量について、昭和電工株式会社製カラム Shodex GPC KF−603とKF−602.5とのカラムを用い、下記の測定条件で測定した。
測定条件:カラム温度 40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.6ml/分
検出:RI(示差屈折計)
測定した数平均分子量を下記表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
(その他の成分)
・硬化促進剤1:トリフェニルホスフィン(北興化学工業社製、TPP)
・充填材1:球状溶融シリカ(電気化学工業社製、FB−950FC、D
50:24μm、粒径75μmを超える粗大粒子の含有量:0.5重量%以下)
・着色剤1:カーボンブラック(三菱化学社製、MA−600)
・カップリング剤1:N−フェニルγ−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、KBM−573)
・離型剤1:カルナバワックス(日興ファイン社製、ニッコウカルナバ)
【0080】
(樹脂組成物の作製)
下記表2に記載した配合比率にて、各原料成分を、常温でミキサーを用いて混合し、次に70℃以上100℃以下の温度で2軸混練した。次いで、常温まで冷却後、粉砕して、樹脂組成物1〜14を作製した。
【0081】
得られた各樹脂組成物1〜14において、それぞれのエポキシ樹脂及びフェノール樹脂硬化剤からなる樹脂群の平均溶解度パラメーターSP1と、数平均分子量Mn1とを下記表2に示す。
【0082】
平均溶解度パラメーターSP1は、以下の式1により算出した。
平均溶解度パラメーターSP1=Σ(A
(n)×Ca
(n))+Σ(B
(m)×Cb
(m)) (式1)
(上記式1において、A
(n)は、樹脂組成物中に含まれているn種のエポキシ樹脂それぞれに関するHansen法に基づいて算出された溶解度パラメーターを指す。Ca
(n)は、樹脂組成物中における全エポキシ樹脂と全フェノール樹脂硬化剤の合計含有量に対するn種のエポキシ樹脂それぞれの含有量を指す。B
(m)は、樹脂組成物中に含まれているm種のフェノール樹脂硬化剤それぞれに関するHansen法に基づいて算出された溶解度パラメーターを指す。Cb
(m)は、樹脂組成物中における全エポキシ樹脂と全フェノール樹脂硬化剤の合計含有量に対するm種のフェノール樹脂硬化剤それぞれの含有量を指す。)
【0083】
数平均分子量Mn1は、以下の式3により算出した。
数平均分子量Mn1=Σ(a
(n)×Ca
(n))+Σ(b
(m)×Cb
(m)) (式3)
(上記式3において、a
(n)は、樹脂組成物中に含まれているn種のエポキシ樹脂それぞれに関する数平均分子量の値を指す。Ca
(n)は、樹脂組成物中における全エポキシ樹脂と全フェノール樹脂硬化剤の合計含有量に対するn種のエポキシ樹脂それぞれの含有量を指す。b
(m)は、樹脂組成物中に含まれているm種のフェノール樹脂硬化剤それぞれに関する数平均分子量の値を指す。Cb
(m)は、樹脂組成物中における全エポキシ樹脂と全フェノール樹脂硬化剤の合計含有量に対するm種のフェノール樹脂硬化剤それぞれの含有量を指す。)
【0084】
【表2】
【0085】
<フラックス>
各実施例、各比較例に用いたフラックスの原料成分の詳細について以下に示す。
【0086】
・ロジン1:アクリル酸変性水添ロジン
・有機酸1:グルタル酸
・アミン1:2−ウンデシルイミダゾール
・溶媒:イソボルニルシクロヘキサノール(87.5wt%)と1,3−ブチレングリコール(12.5wt%)の混合溶媒
【0087】
(フラックスの作製)
下記表3に記載した配合比率にて、各原料成分を、混合することで、フラックス1〜5を作製した。
【0088】
(フラックスの質量変化率)
得られたフラックス1〜5について、下記の手順に基づいて、加熱処理前後の質量変化率を測定した。
まず、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/minで、温度25℃から250℃に昇温する加熱条件で、フラックス1〜5のそれぞれを加熱処理した。このとき、熱重量測定装置を用いて、加熱処理前のフラックスの質量M1と、加熱処理後のフラックスの質量M2とを測定した。得られたM1、M2を用いて、式:(M2/M1)×100に基づいて、加熱処理前後のフラックスの質量変化率(質量%)を算出した。
加熱処理前後のフラックスの質量変化率は、昇温前のフラックスの質量に対する、昇温後のフラックスの質量の百分率で表される。測定結果を下記表3に示す。
【0089】
【表3】
【0090】
(電子装置の作製)
得られた樹脂組成物およびフラックスを用いて、以下の手順に従って、電子装置を作製した。
まず、長さ15mm×幅15mmの一面に銅回路を備えるプリント配線基板を用意した。
次いで、該プリント配線基板の一面にフラックスを塗工した。
次いで、半田バンプ有する、長さ10mm×幅10mm×厚さ250μmのフリップチップ型パッケージを準備した。
次いで、プリント配線基板の一面上に、フリップチップ型パッケージの半田バンプを有する面を対向配置し、ピーク温度240℃、ピーク温度時間10秒、窒素雰囲気下でリフロー処理することによって、半田バンプを溶融させて、フリップチップ型パッケージと、プリント配線基板の銅回路とを半田接合させた。なお、リフロー処理は2回行った。
次いで、フリップチップ型パッケージが搭載されたプリント配線基板を金型内に配置し、トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPaの条件で、樹脂組成物を金型内に注入し、成形した。このとき、銅回路の表面、半田バンプの表面に接触させるとともに、フリップチップ型パッケージの周囲を覆うように、樹脂組成物を導入した。成形時に175℃、120秒間の加熱処理を行い、樹脂組成物を硬化させて、封止材を形成した。
以上より、電子装置を作製した。
ここで、上記の電子装置の作製において、樹脂組成物として、上述の樹脂組成物1〜14と、フラックスとして、フラックス1〜5とを、表4に示す組み合わせで用いた。
表4の樹脂組成物1〜14とフラックス1〜5の組み合わせに応じて、実施例1〜24、比較例1〜46の条件を設定した。実施例1〜24、比較例1〜46のそれぞれにおいて、上記の手順と同様にして、電子装置を作製した。
【0091】
【表4】
【0092】
(相溶性試験)
得られた実施例1〜24、比較例1〜46の電子装置について、フラックス残渣を洗浄しない場合において、フラックスと樹脂組成物との相溶性を、下記のようにして評価した。
まず、電子装置のプリント配線基板の一面から、フリップチップ型パッケージを含む樹脂組成物の硬化物(封止材)を剥離した。
次いで、プリント配線基板の一面と密着していた硬化物の表面、プリント配線基板の一面のうち硬化物と密着していた表面を目視で観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
○:目視で観察した結果、樹脂組成物の硬化物の表面、プリント配線基板の表面にフラックス残渣が存在しておらず、フラックス残渣が樹脂組成物中に取り込まれたことが確認された。
×:目視で観察した結果樹脂組成物の硬化物の表面、プリント配線基板の表面にフラックス残渣が存在しており、フラックス残渣が樹脂組成物中に取り込まれず残存することが確認された。
【0093】
相溶性試験の結果、実施例1〜24はいずれも○、一方の比較例1〜46はいずれも×であった。
これにより、各実施例の電子装置は、各比較例の電子装置と比べて、フラックスと、樹脂組成物との相溶性に優れることが確認された。また、実施例1〜24は、比較例1〜46と比べて、樹脂組成物の硬化物とプリント配線基材との密着性に優れていた。
以上より、実施例1〜24の電子装置の製造方法によって、電子装置の生産性および製造安定性を向上できる。
【0094】
この出願は、2018年4月16日に出願された日本出願特願2018−078315号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
本発明の電子装置の製造方法は、表面に金属露出部を有する基材と、基材上に設けられた電子部品とを備える電子装置の製造方法であって、金属露出部と、フラックスとを接触させて、金属露出部をフラックス処理するフラックス処理工程と、フラックス処理した金属露出部の表面に接するように樹脂組成物を導入する導入工程と、を含み、フラックスは、ロジンと、活性剤と、溶剤と、を含み、ロジンの含有量が、フラックス100質量部に対して、1質量部以上18質量部以下であり、フラックスにおける加熱処理前後のフラックスの質量変化率が21質量%以下であり、樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂硬化剤と、を含み、樹脂組成物において、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂硬化剤からなる樹脂群のHansen法に基づく平均溶解度パラメーターをSP1とし、その樹脂群の数平均分子量をMn1としたとき、SP1とMn1とが、Mn1≦210×SP1−4095を満たすものである。