(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、広範囲の圧力を検出する必要がある場合もあり、その場合、感圧部の数も多くなり、導電性織物に加えられた圧力を電気信号に変換するための検出回路に各感圧部を電気的に接続するための接続箇所が多くなり、接続作業が煩雑となる問題がある。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、導電糸同士が交差する部分を圧力センサの感圧部とする導電性織物であって、感圧部に加えられる圧力を検出回路にて電気信号に変換するため、感圧部に対応する導電糸を検出回路に接続するものにおいて、複数の感圧部に対応する導電糸を一括して検出回路に電気接続することにより、複数の感圧部に対応する導電糸を一つひとつ検出回路に接続する作業を不要として、複数の感圧部に対応する導電糸を検出回路に電気接続するための作業性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明は、導電性繊維の芯糸を繊維質の絶縁体で被った構造の導電糸が複数本互いに平行に並べて形成された導電糸域と、絶縁体製の絶縁糸が複数本互いに平行に並べて形成された絶縁糸域とが交互に複数平行に並ぶように織り込まれ、互いに交差するように配置された前記導電糸域同士が互いに交差した領域で圧力センサの感圧部が構成され、該感圧部に加えられる圧力変化を電気信号に変換するため、感圧部を構成する前記導電糸域の各導電糸が検出回路に電気的に接続される導電性織物であって、互いに平行な複数の前記導電糸域の各導電糸を互いに電気的に接続するように、導電性を備え、且つ前記導電糸の絶縁体内に含浸して前記芯糸と電気的に導通する性質を備えた導電性流体を塗布して電極を構成し、この電極を介して前記検出回路に接続可能とした。
【0007】
第1発明によれば、検出回路に接続されるべき複数の導電糸域の各導電糸が導電性流体によって互いに電気接続される。各導電糸は、導電性繊維の芯糸が繊維質の絶縁体によって被われているが、導電性流体は各導電糸の絶縁体の繊維質に含浸して導電性繊維の芯糸と電気的に接触し、各導電糸を互いに電気接続する。そして、導電性流体による電極が検出回路に接続可能とされる。そのため、複数の導電糸を検出回路に接続するに当たって、導電糸域の各導電糸の外表面に跨って導電性流体を塗布するのみで、導電糸域の各導電糸を互いに電気接続して検出回路に一括して電気接続することができる。従って、導電糸域の各導電糸を一つひとつ検出回路に接続する作業は不要となり、作業性を改善することができ、圧力センサとしての生産性を改善することができる。
【0008】
また、導電糸と絶縁糸域とが交互に並ぶように織り込まれて導電性織物が構成されるため、絶縁糸なしで全体が導電糸によって構成される導電性織物に比べて導電糸の使用量を減らすことができ、低コスト化を図ることができる。
【0009】
更に、導電性流体を塗布する長さを変えることによって導電性織物の感圧領域の大きさを任意に変更することができる。そのため、人体の呼吸や心拍のような比較的広い面積の微弱な圧力変化を検出したいニーズにも容易に対応することができる。比較的広い面積の微弱な圧力変化を検出する場合、導電性織物から得られる信号変化量が大きくなり、外乱ノイズの影響を受け難くなる。
【0010】
第2発明は、上記第1発明の導電性織物において、前記検出回路に接続されるべき前記複数本の導電糸に交差させて、該導電糸と同じ構造の接続用導電糸を設け、該接続用導電糸の外表面に前記導電性流体を塗布して、前記複数本の導電糸と前記接続用導電糸とを電気的に接続する。
【0011】
第2発明によれば、接続用導電糸に塗布された導電性流体は、接続用導電糸と検出回路に接続されるべき複数の導電糸の両方の絶縁体に含浸して、それぞれを電気的に接続する。そのため、導電性流体による接続に加えて接続用導電糸によっても複数の導電糸は接続されることになり、接続の信頼性を高めることができる。即ち、導電性流体による接続のみの場合、導電性織物が繰り返し折り曲げられる状況で、固化された導電性流体がひび割れして電気的接続が不安定になる可能性がある。しかし、第2発明によれば、接続用導電糸によっても各導電糸間の接続が行われているため、ひび割れが抑制されると共に、ひび割れが生じても複数の導電糸を交差する方向の接続は接続用導電糸によって確保される。
【0012】
なお、一部の導電糸域の導電糸を接続用導電糸として使用することもできる。その場合、接続用導電糸を構成するために導電性織物の織り方を変更する必要をなくすことができる。
【0013】
第3発明は、上記第1又は第2発明の導電性織物を使用した圧力センサであって、複数の前記感圧部に加えられる圧力変化に応じたインピーダンスの変化を、前記導電性流体の電極を介して接続された前記検出回路によって電気信号に変換して前記圧力変化を検出する。
【0014】
第3発明によれば、導電性流体の電極を介して検出回路に接続された導電糸によって導電性織物の感圧部が構成され、その導電性織物の感圧部に接触する物体の圧力変化を検出することができる。
【0015】
第4発明は、上記第3発明の導電性織物を使用した圧力センサにおいて、前記導電性織物の感圧表面を複数の領域に分割し、各領域毎に独立して圧力を検出可能とするように、各領域に対応する前記導電糸域毎に独立して前記導電性流体が塗布される。
【0016】
第4発明によれば、導電性流体を塗布する長さや位置を適宜選定することによって、一枚の導電性織物の感圧部を適宜大きさ及び形状の複数の圧力センサとして使い分けることができる。
【0017】
第5発明は、上記第3又は第4発明の導電性織物を使用した圧力センサにおいて、前記導電性織物は、呼吸状態を検出されるべき横臥状態
の被検者の呼吸器官に対応する部位に設けられ、前記被検者の呼吸に伴う各感圧部の受ける圧力変化に基づいて前記検出回路によって前記被検者の呼吸信号を抽出する。
【0018】
第5発明によれば、導電性織物を被検者の呼吸信号を検出するための圧力センサとして使用することができる。
【0019】
第6発明は、上記第3又は第4発明の導電性織物を使用した圧力センサにおいて、前記導電性織物は、心拍状態を検出されるべき横臥状態の前記被検者の循環器官に対応する部位に設けられ、前記被検者の心拍に伴う各感圧部の受ける圧力変化に基づいて前記検出回路によって前記被検者の心拍信号を抽出する。
【0020】
第6発明によれば、導電性織物を被検者の心拍信号を検出するための圧力センサとして使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1、2は本発明の一実施形態を示す。この実施形態の導電性織物10は、導電性繊維の芯糸を絶縁性の鞘糸(本発明における「繊維質の絶縁体」に相当)で被った構造の導電糸を含む縦糸と、同様の構造の導電糸を含む横糸とを使って織り込んで織物部11が構成され、この織物部11の縦端部と横端部にそれぞれ導電ペースト(本発明における導電性流体に相当)12、13が塗布されて成る。
【0023】
図3は、織物部11の織り方の第1例を示している。ここでは、織物部11の縦糸は、縦方向に延びる複数本の導電糸を横方向に並べた導電糸域112aと、縦方向に延びる複数本の絶縁糸を横方向に並べた絶縁糸域111aとが、横方向に交互に並べられた構成とされている。一方、織物部11の横糸は、横方向に延びる複数本の導電糸を縦方向に並べた導電糸域112bと、横方向に延びる複数本の絶縁糸を縦方向に並べた絶縁糸域111bとが、縦方向に交互に並べられた構成とされている。そして、導電糸域112aが絶縁糸域111aにより分離された縦糸と、導電糸域112bが絶縁糸域111bにより分離された横糸とが織り合わされて平織物に形成されており、織物部11は、導電糸域112a、112bが絶縁糸域111a、111bにより分離された間引き織り構造を有している。そして、導電糸域112aと導電糸域112bの交差位置で、縦糸の導電糸と横糸の導電糸が織り合わされたセル113が形成されている。ここでは、導電糸として、芯糸に日本蚕毛染色製のサンダーロン糸(167T/60、2本撚り)、鞘糸にポリエステル糸(150T/48)を使用したカバリング糸を使用している。そして、絶縁糸としては、ポリエステル糸(縦糸20/2、横糸60/2)を使用している。
【0024】
なお、絶縁糸については、ナイロン、レーヨン、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン等の合成繊維を用いても良く、天然繊維のウールを用いても良い。また、導電糸の芯糸については、銅、アルミ、鉄、ステンレス、ニクロム、金、銀、チタンニッケル合金等の金属繊維、PAN系、ピッチ系の炭素繊維を用いても良い。若しくは、絶縁糸に使用するポリエステル、ナイロン、レーヨン等の樹脂に導電成分としてカーボン、グラファイト、カーボンナノチューブ等を混練後に紡糸した糸を用いることもできる。更には、絶縁糸の表面に導電成分として銅、アルミ、銀、金等を金属メッキ手法により被覆した糸を用いることもできる。
【0025】
織物部11における縦方向の各導電糸域112aの各縦糸の端部は、導電ペースト12によって電気的に接続されている。即ち、対応する位置にある横方向の一つの導電糸域112bの各導電糸(本発明における接続用導電糸に相当)には導電ペースト12が塗布されており、そのため、導電ペースト12は各導電糸域112a、112bの各鞘糸に含浸し、鞘糸に被われた芯糸が導電ペースト12に電気接続されている。その結果、導電糸域112bの各導電糸及び導電ペースト12は、縦方向の各導電糸域112aの各導電糸を接続した電極となる。ここでは、導電ペースト12として藤倉化成製のカーボンペーストであるXC−32を使用した。この導電ペースト12は、常温で速乾性を有し、導電性織物10を圧力センサの感圧部として使用する際は、導電ペースト12による電極は固化した状態とされる。
【0026】
導電ペースト12に代えて、導電性流体としては各種のものが使用可能である。例えば、導電インク、導電塗料、導電接着剤、導電ポリマー、ホットメルトタイプの導電材料などがある。これらの導電性流体に導電性を持たせるための材料としては、金、金ナノ粒子、白金、パラジウム、銀、銀ナノ粒子、銅、銅ナノ粒子、ニッケル、カーボン、カーボンナノチューブなど、又はそれら材料をブレンドしたもの、若しくは金属材料による合金がある。
【0027】
一方、織物部11における横方向の各導電糸域112bの各横糸の端部は、導電ペースト13によって電気的に接続されている。即ち、対応する位置にある縦方向の一つの導電糸域112aの各導電糸(本発明における接続用導電糸に相当)には導電ペースト13が塗布されており、そのため、導電ペースト13は各導電糸域112a、112bの各鞘糸に含浸し、鞘糸に被われた芯糸が導電ペースト13に電気接続されている。その結果、導電糸域112aの各導電糸及び導電ペースト13は、横方向の各導電糸域112bの各導電糸を接続した電極となる。ここでは、導電ペースト13として導電ペースト12と同様のものを使用した。なお、
図2及び
図3では、導電ペースト12、13が塗布された各導電糸域112a、112bの導電糸同士間は互いに分離されているように見えるが、これは図示の都合上そのように見えるのみで、実際にはそれらの導電糸同士間は塗布された導電ペースト12、13により電気的に接続された状態とされている。
【0028】
図1、2のように、導電ペースト12と導電ペースト13とが互いに電気的に接触しないように、導電ペースト12と導電ペースト13とが互いに接近する位置である織物部11の角部において、導電ペースト12、13が塗布された導電糸域112aと導電糸域112bは切り取られている。このようにして互いに離間し、互いに隣接した導電ペースト12と導電ペースト13の各電極の端部にはリングスナップ14、15が結合されており、これらリングスナップ14、15を介して検出回路20が接続されている。リングスナップ14、15は、雄雌嵌合型の一方が導電ペースト12、13の各電極の各端部に結合され、雄雌嵌合型の他方が検出回路20からの配線の各端部に結合されている。そのため、導電性織物10への検出回路20の接続をリングスナップ14、15の雄雌嵌合によって容易に行うことができる。但し、導電性織物10への検出回路20の接続はリングスナップ14、15の雄雌嵌合に限定されない。例えば、カシメ、ハトメ、フック、リベット、ネジ止め、ボルト止め等にて接続してもよい。
【0029】
以上のように構成された導電性織物10の織物部11に外部から圧力が加えられると、セル113における各導電糸域112a、112bの各導電糸間の静電容量が加えられた圧力に応じて変化する。そのため、導電ペースト12、13の各電極及びリングスナップ14、15を介して接続された検出回路20は静電容量の変化を電気信号の変化に変換して出力する。
【0030】
図4〜6は、織物部11の織り方の第2例を示している。ここでは、導電性織物10は、上述の第1例と同様に導電糸が織り込まれた導電布2枚(上布121と下布122)が上下に面合わせに重ね合わされて、一般的な絶縁糸で結束して結合されている。具体的には、上布121及び下布122の2枚の導電布は、導電糸域123a、126aと導電糸域123b、126bとが互いに交差するセル124が上下に重ね合わされて、セル124部分を除く、導電糸域123a、123b、126a、126b及び絶縁糸域122a、122b、125a、125bでは、上布121と下布122との間の隙間を無くすように絶縁糸により結合されている。そのため、セル124部分では、上布121と下布122との間に成り行きで隙間が形成されている。なお、
図4は上布121と下布122とが重ね合わされる前の状態を示し、
図5は上布121と下布122とが上下に面合わせに重ね合わされた状態を示している。
【0031】
図6には、セル124において、導電糸域123a、123b、126a、126bの導電糸同士が平織された導電布同士が上下に重ね合わされ、セル124の両側に隣接する領域127では、導電糸域123a、126aの導電糸と絶縁糸域122b、125bの絶縁糸とが平織された導電布同士が上下に重ね合わされ、更に絶縁糸128で両布が結束された様子が示されている。
【0032】
第2例の織り方の織物部11を導電性織物10とする場合は、織物部11における上布121及び下布122の縦方向の各導電糸域123a、126aの各縦糸の端部は、導電ペースト12によって電気的に接続される。即ち、対応する位置にある横方向の一つの導電糸域123bの各導電糸(本発明における接続用導電糸に相当)には導電ペースト12が塗布される。このとき、導電ペースト12は上布121の各導電糸域123a、123bの各鞘糸に含浸し、鞘糸に被われた芯糸が導電ペースト12に電気接続される。また、導電ペースト12は下布122の各導電糸域126a、126bの各鞘糸にまで含浸し、鞘糸に被われた芯糸が導電ペースト12に電気接続される。その結果、導電糸域123bの各導電糸及び導電糸域126bの各導電糸(本発明における接続用導電糸に相当)、並びに導電ペースト12は、縦方向の各導電糸域123a、126aの各導電糸を接続した電極となる。
【0033】
一方、織物部11における上布121及び下布122の横方向の各導電糸域123b、126bの各横糸の端部は、導電ペースト13によって電気的に接続される。即ち、対応する位置にある縦方向の一つの導電糸域123aの各導電糸(本発明における接続用導電糸に相当)には導電ペースト13が塗布される。このとき、導電ペースト13は各導電糸域123a、123bの各鞘糸に含浸し、鞘糸に被われた芯糸が導電ペースト13に電気接続される。また、導電ペースト13は下布122の各導電糸域126a、126bの各鞘糸にまで含浸し、鞘糸に被われた芯糸が導電ペースト13に電気接続される。その結果、導電糸域123aの各導電糸及び導電糸域126aの各導電糸(本発明における接続用導電糸に相当)、並びに導電ペースト13は、横方向の各導電糸域123b、126bの各導電糸を接続した電極となる。
【0034】
以上のように第2例の織り方で構成された導電性織物10の織物部11に外部から圧力が加えられると、セル124における上布121側の導電糸域123a、123bの各導電糸間の静電容量、並びに下布122側の導電糸域126a、126bの各導電糸間の静電容量が、加えられた圧力に応じて変化する。この場合、導電ペースト12による電極と導電ペースト13による電極との間に、上布121側のコンデンサと下布122側のコンデンサとが並列接続されることになる。そのため、導電ペースト12、13の各電極及びリングスナップ14、15を介して接続された検出回路20にて計測される静電容量の変化は、第1例の織り方で構成された導電性織物10の場合に比べて大きくなり、外部からの圧力変化を高感度に電気信号の変化に変換して出力することができる。
【0035】
以上の第1例及び第2例の織り方から成る導電性織物10によれば、検出回路20に接続されるべき複数の導電糸が導電ペースト12、13によって互いに電気接続される。そして、導電ペースト12、13が検出回路20に接続されるための電極とされる。そのため、複数の導電糸を検出回路20に接続するに当たって、複数本の導電糸の外表面に跨って導電ペースト12、13を塗布するのみで、複数本の導電糸を互いに電気接続して検出回路20に接続することができる。従って、複数の導電糸を一つひとつ電極板に接続する作業は不要となり、作業性を改善することができ、圧力センサの生産性を改善することができる。
【0036】
しかも、第1例及び第2例の織り方による導電性織物10では、導電ペースト12、13を一組の電極として、その間にコンデンサが接続された構成とされ、その静電容量変化を検出回路20で受けて、導電性織物10に受けた圧力変化を検出する。そのため、検出信号のサンプリング速度を高速化することができ、回路構成を単純化及び小型化することができる。即ち、検出対象は一組の電極間に接続された静電容量のみであるため、検出のために検出対象を切り替える必要はなく、その切り替えのためのスイッチングシステムも不要となり、検出の高速化と回路の単純化及び小型化を図ることができる。
【0037】
また、導電ペースト12、13を塗布する長さを変えることによって導電性織物10の感圧領域の大きさを任意に変更することができる。そのため、人体の呼吸や心拍のような比較的広い面積の微弱な圧力変化を検出したいニーズにも容易に対応することができる。比較的広い面積の微弱な圧力変化を検出する場合、導電性織物10から得られる信号変化量が大きくなり、外乱ノイズの影響を受け難くなる。
【0038】
また、第1例及び第2例の織り方による導電性織物10の織物部11は、導電糸域112a、112b、123a、123b、126a、126bが絶縁糸域111a、111b、122a、122b、125a、125bにより分離された間引き織り構造とされている。そして、導電糸域112b、123bの各導電糸に導電ペースト12が塗布され、導電糸域112a、123aの各導電糸に導電ペースト13が塗布されている。そのため、導電ペースト12は、接続用導電糸として機能する導電糸域112b、123b、126bの各導電糸と、検出回路20に接続されるべき導電糸域112a、123a、126aの各導電糸の両方の鞘糸に含浸して、それぞれを電気的に接続する。また、導電ペースト13は、接続用導電糸として機能する導電糸域112a、123a、126aの各導電糸と、検出回路20に接続されるべき導電糸域112b、123b、126bの各導電糸の両方の鞘糸に含浸して、それぞれを電気的に接続する。そのため、導電ペースト12、13による接続に加えて接続用導電糸(導電糸域112b、123b、126bの各導電糸、及び導電糸域112a、123a、126aの各導電糸)によっても、検出回路20に接続されるべき複数の導電糸(導電糸域112a、123a、126aの各導電糸、及び導電糸域112b、123b、126bの各導電糸)は接続されることになり、接続の信頼性を高めることができる。即ち、導電ペースト12、13による接続のみの場合、導電性織物10が繰り返し折り曲げられる状況で、導電ペースト12、13がひび割れして電気的接続が不安定になる可能性がある。しかし、上記実施形態によれば、接続用導電糸によっても検出回路20に接続されるべき複数の導電糸間の接続が行われているため、ひび割れが抑制されると共に、ひび割れが生じても複数の導電糸を交差する方向の接続は接続用導電糸によって確保される。
【0039】
しかも、接続用導電糸として特別な糸を用意しなくても、圧力センサの感圧部を成す導電性織物10の導電糸の一部を接続用導電糸として使用するため、接続用導電糸を構成するために導電性織物10の織り方を変更する必要をなくすことができる。また、導電性織物10の織物部11は、導電糸域112a、112b、123a、123b、126a、126bが絶縁糸域111a、111b、122a、122b、125a、125bにより分離された間引き織り構造とされ、導電糸域と絶縁糸域とが交互に並ぶように織り込まれて構成されるため、絶縁糸なしで全体が導電糸によって構成される導電性織物に比べて導電糸の使用量を減らすことができ、低コスト化を図ることができる。
【0040】
更に、上述のように導電ペースト12、13の塗布長を長くすることにより導電性織物10の面積を大きくすることができるが、織物部11を間引き織り構造とすることにより、織物部11の中でも実際に感圧部として機能する部位である導電糸域112a、123a、126aと導電糸域112b、123b、126bとの交差部(セル113、124)が、格子状に分散して形成されるため、導電糸の量を減らして低コスト化を図りながら感圧部としての広がりの大きさは確保することができる。
【0041】
なお、上述した固化後の導電ペースト12、13のひび割れへの対応に関しては、上述のように接続用導電糸を用いることの他に、導電ペースト12、13の成分を調整することにより固化部分のひび割れを抑制することもできる。即ち、導電ペースト12、13における接着成分の架橋度を高めてひび割れの生じ難いものとすることである。
【0042】
図7、8は、呼吸、心拍等の生体情報を計測される被検者としての人Pが横臥する際の敷物としてのマットレス30とカバーとしてのマットレスパッド40との間に導電性織物10を挟み、この導電性織物10を、人Pの呼吸や心拍の様子を計測可能とした圧力センサとした第1使用例を示している。ここでは、導電性織物10は、人Pの胴体全体を支える位置に配置されている。
【0043】
図9、10は、
図7、8にて示した圧力センサによって計測される人Pの呼吸の様子と心拍の様子を示している。この場合、人Pは仰向けに寝た状態で、それぞれ計測されている。
図9、10から明らかなように、マットレス30とマットレスパッド40との間に挟まれた導電性織物10を使用した圧力センサによって、その上に仰向けに寝た人Pの呼吸(
図9参照)及び心拍(
図10参照)の様子を計測することができる。
【0044】
具体的には、マットレス30としては、パラマウント社製のKE−521A、マットレスパッド40としては、パラマウント社製のKE−030、検出回路としては、日置電機社製のIM3570を使用することができる。
【0045】
図11は、導電性織物を使用した圧力センサの第2使用例を示す。第2使用例が第1使用例に対して特徴とする点は、導電性織物10の感圧表面を複数の領域に分割し、一つの導電性織物10を使用して複数の圧力センサを構成した点である。第2使用例においても、
図7、8の第1使用例と同様、マットレス30とマットレスパッド40との間に導電性織物10を挟んで構成されているが、
図11では、マットレスパッド40を除いた状態で導電性織物10を示している。
【0046】
図11では、導電性織物10の感圧表面を、被検者としての人Pの頭部に対応する領域10eと、人Pの上体に対応する領域10hと、人Pの下肢に対応する領域10kと、それらの領域10e、10h、10kの周辺の領域10a、10b、10c、10d、10f、10g、10i、10j、10l、10m、10n、10oとに分割している。周辺の領域10a、10b、10c、10d、10f、10g、10i、10j、10l、10m、10n、10oは、領域10e、10h、10kに対してどの方向にあるかによって複数の領域に分けられている。
【0047】
領域10eでは、人Pの頭部の位置を検出し、領域10hでは、人Pの呼吸、心拍等の生体信号を検出し、領域10kでは、人Pの下肢の位置を検出する。また、領域10a、10b、10c、10d、10f、10g、10i、10j、10l、10m、10n、10oでは、人Pのマットレス30中央からのずれを検出する。
【0048】
このように導電性織物10の感圧表面を複数の領域に分割するため、各領域の導電性織物10の各導電糸域112a、123a、126a、112b、123b、126bに対応させて導電ペースト12a〜12c、13a〜13eが塗布されている。そして、各導電ペースト12a〜12c、13a〜13eは電極とされて検出回路20に接続されている。
【0049】
以上の構成により、導電性織物10の領域10hにおける感圧部の静電容量の変化を導電ペースト12b、13cの各電極を介して検出回路20により検出して、人Pの呼吸、心拍等の生体信号を検出することができる。また、導電性織物10の領域10e及び領域10kにおける感圧部の静電容量の変化を導電ペースト12b、13b及び導電ペースト12b、13dの各電極を介して検出回路20によりそれぞれ検出して、人Pがマットレス30から離れたか否かを検出することができる。更に、導電性織物10の領域10a、10b、10c、10d、10f、10g、10i、10j、10l、10m、10n、10oにおける感圧部の静電容量の変化を導電ペースト12a〜12c、13a〜13eの各電極を介して検出回路20により検出して、人Pのマットレス30中央からのずれを検出することができる。例えば、人Pがマットレス30の上方へ移動すると、領域10bにおける感圧部の静電容量の変化が導電ペースト12b、13aの各電極を介して検出回路20により検出される。人Pがマットレス30の下方へ移動すると、領域10nにおける感圧部の静電容量の変化が導電ペースト12b、13eの各電極を介して検出回路20により検出される。また、人Pがマットレス30の左方へ移動すると、領域10f、10i、10lにおける感圧部の静電容量の変化が導電ペースト12c、13b及び導電ペースト12c、13c並びに導電ペースト12c、13dの各電極を介して検出回路20により検出される。
【0050】
従って、第2使用例によれば、一枚の導電性織物10を使った圧力センサによって、人Pの呼吸、心拍等の生体信号の検出の他、人Pがマットレス30から離れたか否か、また、人Pがマットレス30からずれ落ちそうになっているか否かを検出することができる。
【0051】
このように第2使用例によれば、導電ペースト12a〜12c、13a〜13dを塗布する長さや位置を適宜選定することによって、一枚の導電性織物10の感圧部を適宜大きさ及び形状の複数の圧力センサとして使い分けることができる。
【0052】
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、次のような変形例が考えられる。
【0053】
1.上記実施形態における導電性織物では、導電糸域が絶縁糸域により分離された間引き織り構造とされたが、縦糸のみを導電糸域と絶縁糸域とが交互に並ぶ構造とし、横糸は導電糸のみによって構成した織物としてもよい。また、各種構造の織物を採用でき、織物の織り方についても、平織に限らず、綾織、朱子織など各種のものが採用できる。
【0054】
2.上記実施形態における織物部の第2例の織り方では、導電布が2枚重ねられた2重織としたが、3重織、4重織のような多重織とすることができる。
【0055】
3.圧力センサとしては、人の生体情報を計測するものに限らず、各種の圧力センサとして活用することができる。