特許第6572478号(P6572478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6572478
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】プロジェクション溶接装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/24 20060101AFI20190902BHJP
   B23K 11/14 20060101ALI20190902BHJP
   B23K 11/30 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   B23K11/24 338
   B23K11/14 315
   B23K11/30 311
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-96055(P2015-96055)
(22)【出願日】2015年4月16日
(65)【公開番号】特開2016-203250(P2016-203250A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】392014760
【氏名又は名称】新光機器株式会社
(72)【発明者】
【氏名】蕗澤 武夫
【審査官】 柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05814720(US,A)
【文献】 米国特許第06303893(US,B1)
【文献】 特開平05−200561(JP,A)
【文献】 特開平04−258384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/24
B23K 11/14
B23K 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定電極に基材を配置し、プロジェクションボルトのボルト部を、基材の溶接用孔を介して固定電極の挿入穴に挿入し、可動電極を動作して、固定電極と可動電極との間でプロジェクションボルトと基材を挟持し、可動電極、プロジェクションボルト、基材、及び固定電極に電流を流してプロジェクションボルトを基材に溶接するプロジェクション溶接装置において、前記固定電極の挿入穴にエア供給装置からのエア通路を接続するとともに、該エア通路に圧力センサを設け、圧力センサの出力を判定部に入力して、正常なプロジェクションボルトが供給されているか否かを判定する判定装置を設け、該判定装置は正常なプロジェクションボルトが供給された場合より低い値で、正常なプロジェクションボルトよりボルト部の径が細い場合より高い値の空気圧を第1の基準値に設定するとともに、正常なプロジェクションボルトが供給された場合より高い値で、プロジェクションボルトが欠品の場合より低い値の空気圧を第2の基準値に設定して、プロジェクションボルトの有無、及びプロジェクションボルトのボルト部の径の正誤を判定することを特徴としたプロジェクション溶接装置。
【請求項2】
固定電極に基材を配置し、プロジェクションボルトのボルト部を、基材の溶接用孔を介して固定電極の挿入穴に挿入し、可動電極を動作して、固定電極と可動電極との間でプロジェクションボルトと基材を挟持し、可動電極、プロジェクションボルト、基材、及び固定電極に電流を流してプロジェクションボルトを基材に溶接するプロジェクション溶接装置において、前記固定電極の挿入穴にエア供給装置からのエア通路を接続するとともに、該エア通路に圧力センサを設け、圧力センサの出力を判定部に入力して、正常なプロジェクションボルトが供給されているか否かを判定する判定装置を設け、該判定装置は正常なプロジェクションボルトが供給された場合より低い値で、正常なプロジェクションボルトよりボルト部の径が細い場合より高い値の空気圧を第1の基準値に設定するとともに、正常なプロジェクションボルトが供給された場合より高い値で、正常なプロジェクションボルトよりボルト部の径が太い場合より低い値の空気圧を第2の基準値に設定して、プロジェクションボルトの有無、及びプロジェクションボルトのボルト部の径の正誤を判定することを特徴としたプロジェクション溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクション(溶接用突起)が設けられたプロジェクションボルトを溶接するプロジェクション溶接装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図5図6で示すように、下部電極51に外部エア供給装置52に接続されるエア室53を形成し、下部をエア室53に挿入されるガイドピン54の下部から上部に向かってエア通路55を形成するとともに、上部電極56に、ガイドピン54のエア通路55と一致するように上部電極56内を貫通するエア通路57を形成し、上部電極56のエア通路57には外部に配置されるエア検知装置58を接続し、溶接時に溶接ボルト59が供給されている場合には、溶接ボルト59によりガイドピン54のエア通路55と上部電極56のエア通路57が塞がれて、下部電極51のエア室53に供給された空気は上部電極56のエア通路57に流れないが、溶接ボルト59が供給に失敗して欠品の場合にはガイドピン54のエア通路55と上部電極56のエア通路57は連通し、下部電極51のエア室53に供給された空気は上部電極56のエア通路57に流れ、エア検知装置58を動作させて、溶接用ボルト59の有無を検出するようにしたものがある。(例えば特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−058155号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のものでは、溶接ボルトの有無の検出は可能であるが、ボルトの径を間違えて供給した場合は検知することができないという問題があった。また、上部電極と下部電極の両方にエア通路を形成しなければならないので、電極部の製作に手間が掛かるという問題もあった。
【0005】
本発明は、前記の問題を解決し、プロジェクションボルトのボルト部の径の間違いだけではなく、プロジェクションボルトの有無も検出でき、かつ、電極部の製作も手間が掛からないプロジェクション溶接装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明のプロジェクション溶接装置の請求項1の発明は、固定電極に基材を配置し、プロジェクションボルトのボルト部を、基材の溶接用孔を介して固定電極の挿入穴に挿入し、可動電極を動作して、固定電極と可動電極との間でプロジェクションボルトと基材を挟持し、可動電極、プロジェクションボルト、基材、及び固定電極に電流を流してプロジェクションボルトを基材に溶接するプロジェクション溶接装置において、前記固定電極の挿入穴にエア供給装置からのエア通路を接続するとともに、該エア通路に圧力センサを設け、圧力センサの出力を判定部に入力して、正常なプロジェクションボルトが供給されているか否かを判定する判定装置を設け、該判定装置は正常なプロジェクションボルトが供給された場合より低い値で、正常なプロジェクションボルトよりボルト部の径が細い場合より高い値の空気圧を第1の基準値に設定するとともに、正常なプロジェクションボルトが供給された場合より高い値で、プロジェクションボルトが欠品の場合より低い値の空気圧を第2の基準値に設定して、プロジェクションボルトの有無、及びプロジェクションボルトのボルト部の径の正誤を判定することを特徴としたものである。
【0007】
請求項2の発明は、固定電極に基材を配置し、プロジェクションボルトのボルト部を、基材の溶接用孔を介して固定電極の挿入穴に挿入し、可動電極を動作して、固定電極と可動電極との間でプロジェクションボルトと基材を挟持し、可動電極、プロジェクションボルト、基材、及び固定電極に電流を流してプロジェクションボルトを基材に溶接するプロジェクション溶接装置において、前記固定電極の挿入穴にエア供給装置からのエア通路を接続するとともに、該エア通路に圧力センサを設け、圧力センサの出力を判定部に入力して、正常なプロジェクションボルトが供給されているか否かを判定する判定装置を設け、該判定装置は正常なプロジェクションボルトが供給された場合より低い値で、正常なプロジェクションボルトよりボルト部の径が細い場合より高い値の空気圧を第1の基準値に設定するとともに、正常なプロジェクションボルトが供給された場合より高い値で、正常なプロジェクションボルトよりボルト部の径が太い場合より低い値の空気圧を第2の基準値に設定して、プロジェクションボルトの有無、及びプロジェクションボルトのボルト部の径の正誤を判定することを特徴としたものである
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明では、固定電極の挿入穴にエア供給装置からのエア通路を接続するとともに、該エア通路に圧力センサを設け、圧力センサの出力を判定部に入力して、正常なプロジェクションボルトが供給されているか否かを判定する判定装置を設けたことにより、正常なプロジェクションボルトが供給されたことを検出でき、かつエア通路は固定電極のみに設け、可動電極には設ける必要がないので電極部の製作も容易にできるという効果がある。
【0009】
また、判定装置は正常なプロジェクションボルトが供給された場合より低い値で、正常なプロジェクションボルトよりボルト部の径が細い場合より高い値の空気圧を第1の基準値に設定するとともに、正常なプロジェクションボルトが供給された場合より高い値で、プロジェクションボルトが欠品の場合より低い値の空気圧を第2の基準値に設定して、プロジェクションボルトの有無、及びプロジェクションボルトのボルト部の径の正誤を判定することにより、プロジェクションボルトの欠品及びプロジェクションボルトの径が正常より細い場合の間違いを検出できる。
【0010】
請求項2の発明では、判定装置は正常なプロジェクションボルトが供給された場合より低い値で、正常なプロジェクションボルトよりボルト部の径が細い場合より高い値の空気圧を第1の基準値に設定するとともに、正常なプロジェクションボルトが供給された場合より高い値で、正常なプロジェクションボルトよりボルト部の径が太い場合より低い値の空気圧を第2の基準値に設定して、プロジェクションボルトの有無、及びプロジェクションボルトのボルト部の径の正誤を判定することにより、プロジェクションボルトの欠品を含めたプロジェクションボルトの径の間違いを検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態を示す側面図。
図2】細いプロジェクションボルトを溶接する場合の要部断面図。
図3】太いプロジェクションボルトを溶接する場合の要部断面図。
図4】プロジェクションボルトが欠品の場合の要部断面図。
図5】従来の溶接ボルトが供給された場合の要部断面図。
図6】従来の溶接ボルトが欠品の場合の要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を図1乃至図4に基づいて説明する。
1は溶接装置であり、溶接装置1は固定電極である下部電極2上に基材3を配置し、頭部4の裏面にプロジェクション5を突出させたプロジェクションボルト6を、図示しないボルト供給装置にて供給して、プロジェクションボルト6のボルト部7を基材3の溶接用孔8を介して下部電極2の挿入穴9に挿入し、可動電極である上部電極10を下降して、プロジェクションボルト6と基材3を上部電極10と下部電極2で挟持し、上部電極10、プロジェクションボルト6、基材3、及び下部電極2に電流を流してプロジェクションボルト6を基材3に溶接していた。
【0013】
11は下部電極に空気を送るエア源であり、エア源11は下部電極2の下部に接続され、下部電極2の挿入穴9の下部に連通されるとともに、挿入穴9のプロジェクションボルト6のボルト部7の挿入口となる上端部を排気口12としたエア通路13が形成されている。
【0014】
14判定装置であり、判定装置14は、エア通路13の空気圧を検出する圧力センサ15と、圧力センサ15の出力が入力され、プロジェクションボルト6の欠品、及びボルト部7の径の間違いを判定するための判定部16で構成されている。
【0015】
次に、図2図3、及び図4により、本発明によるプロジェクションボルト6の欠品及びボルト径の間違いの判定方法について説明する。図2は細い径のプロジェクションボルト6が供給された図であり、図3は太い径のプロジェクションボルト6が供給された図である。
【0016】
プロジェクションボルト6が供給され上部電極10が下降し、プロジェクションボルト6と基材3を上部電極12と下部電極2で挟持し、エア源11から圧縮空気がエア通路13に送られると圧縮空気は、下部電極2の挿入穴9下部より、ボルト部7の表面と挿入穴9の垂直壁との間、及びボルト部7の表面と基材の溶接用孔8の外周端面との間を通り、プロジェクションボルト6の頭部4と基材3の間にプロジェクション5により形成される空間を通って外部に排出される。
【0017】
このとき、プロジェクションボルト6のボルト部7の表面と下部電極2の挿入穴9の垂直壁面との間の隙間17と、プロジェクションボルト6のボルト部7の表面と基材3の溶接用孔12外周端面との隙間18は、いずれも図2の細い径のボルト6を挿入した場合のほうが、図3で示す太い径のプロジェクションボルト6を挿入した場合より広いので、圧縮空気が送られた場合、細い径のボルトが供給された図2の場合より、太い径のプロジェクションボルト6が供給された図3のほうが空気が排出される量が少なくなるので空気圧は高くなる。
【0018】
また、図3に示すように、プロジェクションボルト6の供給に失敗して欠品になった場合には、上部電極10により基材3の溶接孔8及び下部電極2の挿入穴7は共に塞がれるので、空気は殆ど排出されず、プロジェクションボルト6が挿入されている場合より空気圧は高くなる。
【0019】
即ち、空気圧は、供給されるプロジェクションボルトが細い径の場合より太い径のほうが高くなり、プロジェクションボルト6が欠品した場合が最も高くなる。
【0020】
そこで、適正な径のプロジェクションボルト6が供給された場合の空気圧より低く、1ランク下の径のプロジェクションボルト6が供給された場合の空気圧より高い空気圧を第1の基準値とし、適正な径のプロジェクションボルト6が供給された場合の空気圧より高く、1ランク上の径のプロジェクションボルト6が供給された場合の空気圧より低い空気圧を第2の基準値する。
【0021】
プロジェクションボルト6が図示しないボルト供給装置により供給され、上部電極10が下降し、プロジェクションボルト6と基材3を上部電極10と下部電極2で挟持し、エア源11から圧縮空気が送られ、圧力センサ15により第1の基準値より低い値の空気圧が検出された場合、判定部16は、適正なプロジェクションボルト6より細い径のプロジェクションボルト6が供給されたとして、警報を発するとともに溶接を中止する。
【0022】
また、圧力センサ15により、第1の基準値と第2の基準値の間の空気圧が検出された場合には、判定部16は、プロジェクションボルト6の適正なものが供給されたとして溶接を実行する。
【0023】
さらにまた、圧力センサ15により、第2の基準値より高い空気圧が検出された場合、判定部16は、適正なプロジェクションボルト6より太いプロジェクションボルト6が間違って供給されたか、又は、プロジェクションボルト6が欠品したとして、警報を発するとともに溶接を中止する。
【0024】
さらに、溶接するプロジェクションボルトが、最大の径のものであり、太いほうに間違える恐れがない場合には、第2の基準値を適正な径のプロジェクションボルト6が供給された場合の空気圧より高く、プロジェクションボルト6が欠品の場合の空気圧より低い空気圧として、圧力センサ15により第2の基準値より高い空気圧が検出された場合、判定部16はプロジェクションボルト6が欠品したとして、警報を発するとともに溶接を中止するようにしてもよい。
【0025】
さらに、溶接されるプロジェクションボルトが最少の径のものである場合には、第2の基準値のみ設定し、第1の基準値を設定しなくてもよい。
【0026】
以上のように、本発明では、プロジェクションボルトのねじ径の間違いだけではなくプロジェクションボルトの欠品も検出でき、プロジェクションボルトが正常な場合に溶接を行うことができ、かつ、電極部のエア通路は固定電極部のみに形成し、固定電極のプロジェクションボルトのボルト部の挿入部を利用しているので、製作が簡単にできる。
【符号の説明】
【0027】
2 固定電極
3 基材を
6 プロジェクションボルト
7 ボルト部
8 溶接用孔
9 挿入穴
10 可動電極
11 エア供給装置
12 エア通路
14 圧力センサ
15 判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6