(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被検者に対して圧迫撮影を実行する圧迫モード以外のときに、被検者が天板と対向する位置に配置され、かつ、圧迫筒が圧迫位置に配置された状態で圧迫筒がX線管とともに移動した場合においては、圧迫位置に配置された圧迫筒と天板と対向する位置に配置された被検者とが接触する可能性がある。高速で移動している圧迫筒と被検者とが衝突した場合には、被検者が損傷を負う可能性がある。
【0006】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、圧迫筒と被検者との接触を抑制して、被検者が損傷を負うことを効果的に防止することが可能なX線検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、被検者と当接して被検者の撮影位置を規定する天板と、X線管と、前記X線管から照射され被検者を通過したX線を検出するためのX線検出器とから成る映像系と、前記天板と前記映像系とを相対的に移動させる移動機構と、前記映像系とともに移動するとともに、前記被検者の診断部位を押圧する押圧位置と前記押圧位置より退避した収納位置との間を移動可能な圧迫筒と、を備えたX線検査装置において、前記圧迫筒が前記収納位置にあるか否かを判定する位置判定部と、前記位置判定部が前記圧迫筒が前記収納位置にないと判定したときには、前記移動機構による前記天板と前記映像系の相対的な移動速度を
、前記位置判定部が前記圧迫筒が前記収納位置にあると判断したときの速度より低速とする移動制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記移動制御部は、前記位置判定部が前記圧迫筒が前記収納位置にないと判定したときには、前記位置判定部が前記圧迫筒が前記収納位置にあると判定するまで、前記移動機構による前記天板と前記映像系の相対的な移動速度を
、前記位置判定部が前記圧迫筒が前記収納位置にあると判断したときの速度より低速とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記圧迫筒を利用した圧迫モードまたは圧迫筒を利用しない通常モードのいずれかを選択する選択手段をさらに備え、前記移動制御部は、前記通常モードが選択され、かつ、前記圧迫筒が前記収納位置にない場合に、前記移動機構による前記天板と前記映像系の相対的な移動速度を、前記位置判定部が前記圧迫筒が前記収納位置にあると判断したときの速度より低速とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1
または請求項2に記載の発明において、前記移動機構による前記天板と前記映像系の相対的な移動を指示する映像系移動指示手段と、前記圧迫筒で前記被検者の診断部位を押圧してX線撮影を行う圧迫モードを選択する操作部と、前記操作部により圧迫モードが選択されているか否かを判定するモード判定部と、前記位置判定部が前記圧迫筒が前記収納位置にないと判定し、かつ、前記モード判定部が前記圧迫モードが選択されていないと判定したときには、前記映像系移動指示手段による移動の指示がある間、前記圧迫筒を前記収納位置に向けて移動させる圧迫筒移動制御手段を更に有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、圧迫筒が収納位置に配置されていない場合には、天板と映像系の相対的な移動速度を
、位置判定部が圧迫筒が収納位置にあると判断したときの速度より低速とすることから、圧迫筒と被検者の接触の可能性を低くし、また、仮に接触しても被検者が損傷を負うことを防止することが可能となる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、圧迫筒が収納位置に配置されていない場合には、圧迫筒が収納されるまでの間、天板と映像系の相対的な移動速度を
位置判定部が圧迫筒が収納位置にあると判断したときの速度より低速とすることから、圧迫筒と被検者の接触の可能性を低くし、また、仮に接触しても被検者が損傷を負うことを防止することが可能となる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、
通常モードが選択され、かつ、圧迫筒が収納位置にない場合に、移動機構による天板と映像系の相対的な移動速度を、位置判定部が圧迫筒が収納位置にあると判断したときの速度より低速とすることから、圧迫筒と被検者の接触の可能性を低くし、また、仮に接触しても被検者が損傷を負うことを防止することが可能となる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、圧迫モードが選択されていないにもかかわらず圧迫筒が収納位置に配置されていない場合には、天板と映像系との相対的な移動が指示されたときに、圧迫筒を収納位置に向けて移動させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1から
図4は、この発明に係るX線検査装置の概要図である。なお、
図1は天板13が臥位位置に配置されたときのX線検査装置の正面図であり、
図2は天板13が臥位位置に配置されたときのX線検査装置の側面図である。また、
図3は天板13が立位位置に配置されたときのX線検査装置の正面図であり、
図4は天板13が立位位置に配置されたときのX線検査装置の側面図である。これらの図において、
図2は、圧迫筒機構20が圧迫筒21により被検者の診断部位を圧迫する圧迫位置に配置された状態を示している。また、
図1、
図3、
図4、圧迫筒機構20がX線管保持部材15内の収納位置に配置された状態を示している。
【0017】
このX線検査装置は、X線透視撮影台と呼称されるものであり、天板13と、X線管保持部材15と、このX線管保持部材15の先端に配設されたX線管11と、天板13に対してX線管11の逆側に配設されたフラットパネルディテクタやイメージインテンシファイア(I.I.)等のX線検出器を有するX線検出部12とを備える。また、X線管保持部材15には、圧迫筒機構20が配設されている。
【0018】
これらの天板13、X線管保持部材15およびX線管11は、図示しないモータを内蔵した回動機構16の作用により、
図1および
図2に示す、天板13の表面が水平方向を向く臥位位置と、
図3および
図4に示す、天板13の表面が鉛直方向を向く立位位置との間を回動可能となっている。また、回動機構16自体は、ベースプレート18上に立設された主支柱17に対して昇降可能となっている。
【0019】
天板13が臥位位置にあるときには、臥位状態の被検者に対してX線透視が行われる。このときには、被検者は天板13上に載置される。そして、被検者の消化器のX線透視を行うときには、必要に応じ、
図2に示すように、圧迫筒機構20における圧迫筒21により被検者の患部が圧迫される。また、天板13が立位位置にあるときには、立位状態の被検者に対してX線透視が行われる。このときには、被検者は天板13の正面に起立する。そして、被検者の消化器のX線透視を行うときには、必要に応じ、圧迫筒機構20における圧迫筒21により被検者の患部が圧迫される。
【0020】
図5および
図6は、圧迫筒機構20の概要図である。なお、
図5は、圧迫筒機構20が圧迫位置にある状態を、また、
図6は、圧迫筒機構20が収納位置にある状態を示している。
【0021】
この圧迫筒機構20は、圧迫筒21が先端に配設された第1アーム22と、この第1アーム22に対し、各々軸を介して連結された第2アーム23および第3アーム24とから成るリンク構造を有する。また、この圧迫筒機構20は、鉛直方向に延びる直線部分と、そこから湾曲した湾曲部分とを有するガイドレール25と、このガイドレール25に当接する複数個のベアリング27を備え、ガイドレール25に沿ってスライド可能なスライド部材26を備える。第3アーム24の第1アーム22とは逆側の端部は、スライド部材26に対して軸を介して揺動可能に固定されている。また、第2アーム23の第1アーム22とは逆側の端部には、ガイドレール25に当接する当接部28が配設されている。この第2アーム23も、スライド部材26に対して軸を介して揺動可能に固定されている。また、第2アーム23における当接部28は、バネ29の作用により、常にガイドレール25の端面に当接する構成となっている。
【0022】
また、圧迫筒機構20は、モータ34の駆動により回転する駆動プーリ32と、従動プーリ31と、これらの駆動プーリ32および従動プーリ31に巻回されたベルト33とを備える。そして、スライド部材26は、このベルト33に連結されている。このため、スライド部材26は、モータ34の駆動により、ガイドレール25の直線部分に沿って昇降する。
【0023】
スライド部材26の昇降により第2アーム23の端部に配設された当接部28がガイドレール25における直線部分と当接している状態においては、
図5に示すように、第2アーム23を時計方向に回動させる力が働き、第1アーム22と第2アーム23とが略直線状に伸びる状態となる。このときには、圧迫筒21が押圧位置に移動したことになり、圧迫筒21により被検者の患部を圧迫することが可能となる。そして、この状態でモータ34の駆動によりスライド部材26が昇降した場合には、当接部28がガイドレール25における直線部分と当接している範囲内においては、圧迫筒21が上下方向に昇降することになる。これにより、圧迫筒21による被検者の患部の圧迫状態を変更することが可能となる。
【0024】
一方、スライド部材26の昇降により第2アーム23の端部に配設された当接部28がガイドレール25における湾曲部分と当接している状態においては、
図6に示すように、第2アーム23を反時計方向に回動させる力が働き、第1アーム22と第2アーム23とが互いに屈曲する状態となる。この状態においては、圧迫筒21が収納位置に移動したことになる。圧迫筒21が収納位置に移動したことは、スライド部材26と当接するセンサ30により検知される。
【0025】
この圧迫筒機構20は、X線管保持部材15に付設されており、X線管11とともに、天板13に対して相対的に移動する。
【0026】
図7は、天板13および圧迫筒21の移動等の操作を実行するための操作部50の斜視図である。
【0027】
この操作部50は、圧迫筒移動レバー51と、映像系移動レバー52と、圧迫モード選択ボタン53と、タッチパネル式の表示部54とを備える。圧迫筒移動レバー51は、圧迫筒21を、
図5に示す圧迫位置と
図6に示す収納位置の間で移動させるためのものである。この圧迫筒移動レバー51を
図7に示す矢印A方向に傾動させることにより、圧迫筒21は、
図5に示す圧迫位置と
図6に示す収納位置との間を往復移動する。また、映像系移動レバー52は、X線管11およびX線検出部12から成る映像系を、水平方向に移動させるためのものである。この映像系移動レバー52を
図7に示す矢印B方向に移動させたときには、映像系は天板13に対して短手方向(天板13の短辺方向)に往復移動し、映像系移動レバー52を
図7に示す矢印C方向に移動させたときには、映像系は天板13に対して長手方向(天板13の長辺方向)に往復移動する。さらに、圧迫モード選択ボタン53は、圧迫筒21を利用した圧迫モードと、圧迫筒21を利用しない通常モードとを切り替えるためのものである。この圧迫モード選択ボタン53を押したときには圧迫モードが選択され、再度、この圧迫モード選択ボタン53を押したときには、圧迫モードが解除されて通常モードが選択される。
【0028】
図8は、この発明に係るX線検査装置の主要な制御系を示すブロック図である。
【0029】
このX線検査装置は、装置全体を制御する制御部60を有する。この制御部60は、上述したX線管11、X線検出部12および操作部50と接続されている。また、この制御部60は、X線管11およびX線検出部12を、天板13に対して相対的に短手方向および長手方向に移動させるモータ72、73に連結する映像系駆動部71と接続されている。さらに、この制御部60は、
図5および
図6に示すセンサ30およびモータ34に連結する圧迫筒駆動部75と接続されている。なお、X線管11とX線検出部12とは、個別に移動させてもよく、また、一体的に移動させてもよい。
【0030】
また、この制御部60は、操作部50により圧迫モードが選択されているか否かを判定するモード判定部61と、圧迫筒21が収納位置にあるか否かを判定する位置判定部62と、位置判定部62とモード判定部61との判定結果により映像系の移動速度を制御する移動制御部63と、圧迫筒駆動部75を制御する圧迫筒駆動制御部とを備える。
【0031】
次に、以上のような構成を有するX線検査装置による映像系の移動速度の制御動作について説明する。
図9は、この発明に係るX線検査装置における映像系の移動動作の第1実施形態を示すフローチャートである。
【0032】
オペレータは、操作に先立ち、圧迫筒21を利用した圧迫モードと圧迫筒21を利用しない通常モードとのいずれによってX線透視を実行するのかを選択する。このときには、オペレータは、
図7に示す操作部50における圧迫モード選択ボタン53を操作する。
【0033】
この状態において、オペレータが示す操作部50における映像系移動レバー52を操作することによりX線管11およびX線検出部12より成る映像系を天板13に対して相対的に移動させる映像系移動指令を送信したときには(ステップS11 )、
図8に示す制御部60におけるモード判定部61が、圧迫モードと通常モードのいずれが選択されているのかを判定する(ステップS12)。そして、圧迫モードが選択されていると判定したときには(ステップS12)、制御部60における移動制御部63が、映像系の移動速度を、圧迫撮影時の移動速度とした上で(ステップS13)、映像系を移動させる。この状態で、X線透視が実行される。
【0034】
一方、通常モードが選択されているときには(ステップS12)、制御部60における位置判定部62が、
図5、
図6および
図8に示すセンサ30の信号に基づいて、圧迫筒21が収納位置にあるか否かを判定する(ステップS14)。そして、圧迫筒21が収納位置にあると判定したときには(ステップS14)、制御部60における移動制御部63が、映像系の移動速度を、通常の移動速度とした上で(ステップS17)、映像系を移動させる。そして、X線透視が実行され、あるいは、映像系が必要な位置に移動する。
【0035】
また、通常モードが選択され圧迫モードが選択されていない場合において、圧迫筒21が収納位置に配置されていないと判定したときには(ステップS14)、制御部60における移動制御部63が、映像系の移動速度を、低速に切り替えた後に(ステップS15)、映像系を移動させる。また、圧迫筒移動制御部64の制御により圧迫筒21を収納位置に向けて移動させる。そして、圧迫筒21が収納位置まで移動したら(ステップS16)、制御部60における移動制御部63が、映像系の移動速度を通常の移動速度とした上で(ステップS17)、映像系を移動させる。しかる後、X線透視が実行され、あるいは、映像系が必要な位置に移動する。
【0036】
このように、この第1実施形態に係るX線検査装置においては、圧迫モードではないにもかかわらず圧迫筒21が収納位置に配置されていない場合には、圧迫筒21が収納されるまでの間、天板13と映像系の相対的な移動速度を低速とすることから、圧迫筒21と被検者の接触の可能性を低くし、また、仮に接触しても被検者が損傷を負うことを防止することが可能となる。
【0037】
次に、上述したX線検査装置による映像系の移動速度の制御動作の他の実施形態について説明する。
図10は、この発明に係るX線検査装置における映像系の移動動作の第2実施形態を示すフローチャートである。
【0038】
この第2実施形態においても、オペレータは、操作に先立ち、圧迫筒21を利用した圧迫モードと圧迫筒21を利用しない通常モードとのいずれによってX線透視を実行するのかを選択する。このときには、オペレータは、
図7に示す操作部50における圧迫モード選択ボタン53を操作する。
【0039】
この状態において、オペレータが示す操作部50における映像系移動レバー52を操作することによりX線管11およびX線検出部12より成る映像系を天板13に対して相対的に移動させる映像系移動指令を送信したときには(ステップS21 )、
図8に示す制御部60におけるモード判定部61が、圧迫モードと通常モードのいずれが選択されているのかを判定する(ステップS22)。そして、圧迫モードが選択されていると判定したときには(ステップS22)、制御部60における移動制御部63が、映像系の移動速度を、圧迫撮影時の移動速度とした上で(ステップS23)、映像系を移動させる。この状態で、X線透視が実行される。
【0040】
一方、通常モードが選択されているときには(ステップS22)、制御部60における位置判定部62が、
図5、
図6および
図8に示すセンサ30の信号に基づいて、圧迫筒21が収納位置にあるか否かを判定する(ステップS24)。そして、圧迫筒21が収納位置にあると判定したときには(ステップS24)、制御部60における移動制御部63が、映像系の移動速度を、通常の移動速度とした上で(ステップS27)、映像系を移動させる。そして、X線透視が実行され、あるいは、映像系が必要な位置に移動する。
【0041】
また、通常モードが選択され圧迫モードが選択されていない場合において、圧迫筒21が収納位置に配置されていない判定したときには(ステップS24)、制御部60における移動制御部63が、映像系の移動を禁止する(ステップS25)。また、圧迫筒移動制御部64の制御により圧迫筒21を収納位置に向けて移動させる。そして、圧迫筒21が収納位置まで移動したら(ステップS26)、制御部60における移動制御部63が、映像系の移動速度を通常の移動速度とした上で、映像系を移動させる(ステップS27)。しかる後、X線透視が実行され、あるいは、映像系が必要な位置に移動する。
【0042】
このように、この第2実施形態に係るX線検査装置においては、圧迫モードではないにもかかわらず圧迫筒21が収納位置に配置されていない場合には、圧迫筒21が収納されるまでの間、天板13と映像系の相対的な移動を停止させることから、圧迫筒21と被検者の衝突を防止することが可能となる。
【0043】
なお、上述した第2実施形態においては、圧迫筒21が収納位置まで移動するのを待って、映像系を移動させている。しかしながら、位置判定部62が圧迫筒21が収納位置にないと判定し、モード判定部61が圧迫モードが選択されていないと判定したときにおいては、映像系の移動を常に禁止する構成を採用してもよい。
【0044】
また、上述した第1、第2実施形態においては、X線管11およびX線検出部12から構成される映像系を移動させているが、天板13上に被検者を載置して撮影を実行する場合においては、X線管11およびX線検出部12から構成される映像系を停止させ、天板13を移動させるようにしてもよい。