(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る水処理システムの好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る水処理システム1の全体構成図である。
水処理システム1は、殺菌処理装置100から排出されたホルムアルデヒドを含む水から、ホルムアルデヒドを除去する。殺菌処理装置100としては、食品工場や飲料工場等で用いられるレトルト装置、パストライズ装置及び容器洗浄装置等(以下、「レトルト装置等」と言う場合がある)が挙げられる。レトルト装置等にから排出される水は、例えば1〜5mg/Lのホルムアルデヒドを含有する。
【0014】
図1に示すように、水処理システム1は、水流通ラインL1と、水流通ラインL1に配置される第1バッファタンク10、第2バッファタンク20及び除去手段30と、水流通ラインL1に配置される各種装置を制御する制御部40と、を備える。
【0015】
水流通ラインL1は、第1流通ラインL11と、第2流通ラインL12と、第3流通ラインL13と、透過水ラインL14と、濃縮水ラインL15と、第1循環ラインL16と、第2循環ラインL17と、を備える。水流通ラインL1を構成するラインの接続の詳細については、各構成で説明する。なお、本明細書における「ライン」とは、流路、径路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
【0016】
第1流通ラインL11は、上流側が殺菌処理装置100に接続され、下流側が第1バッファタンク10に接続される。第1流通ラインL11は、殺菌処理装置100から排出された、ホルムアルデヒドを含む水を第1バッファタンク10に供給する。
第1バッファタンク10は、第1流通ラインL11から供給される水を貯留する。第1バッファタンク10には、タンク内の水位を検出する水位センサ101が配置される。
【0017】
ここで、第1流通ラインL11には、所要の前処理装置(図示せず)を備えることができる。例えば、レトルト装置からの冷却排水は、60℃以上の高温となっており、しかも被レトルト物に由来する懸濁物質(充填時に容器の外側に付着した内容物等)を含むことがあるため、後述する逆浸透膜を劣化させたり、閉塞させたりする懸念がある。そこで、冷却排水を除熱する前処理装置として、熱交換器や冷却塔等の冷却装置を設置するのが好ましい。また、冷却排水を除濁する前処理装置として、精密ろ過膜や限外ろ過膜を装備した除濁装置を設置するのが好ましい。
従って、本願における「ホルムアルデヒドを含む水」とは、殺菌処理装置100から排出された未処理の水だけでなく、殺菌処理装置100から排出された後に所要の前処理装置を経た水をも対象とする。
【0018】
第1循環ラインL16は、第1バッファタンク10内の水の一部を循環させる。第1循環ラインL16には、第1薬注部11、pH調整薬注部12及び循環ポンプ13が配置される。
第1薬注部11は、第1循環ラインL16に、水に溶解して亜硫酸水素イオンを生成する亜硫酸水素イオン源を供給する。第1薬注部11から供給される亜硫酸水素イオン源としては、水に溶解して亜硫酸水素イオンを生成するものであれば特に限定されず、例えば、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩、亜ジチオン酸塩、亜硫酸塩及び亜硫酸が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。亜硫酸水素イオン源としては、取扱性の高さから、亜硫酸水素ナトリウムや亜硫酸水素カリウム等の亜硫酸水素塩を用いることが好ましい。なお、亜硫酸水素ナトリウムは、濃度35%以上の水溶液として市販されており、この水溶液を第1薬注部11及び後述する第2薬注部21の薬液としてそのまま使用することができる。
【0019】
pH調整薬注部12は、第1薬注部11の二次側においてpH調整剤を第1循環ラインL16に供給する。第1薬注部11及び後述する第2薬注部によって供給される亜硫酸水素イオン源により、水のpHは低下する傾向にあることから、pH調整薬注部12からは水酸化ナトリウム等のアルカリ性物質を供給する。
循環ポンプ13は、第1循環ラインL16に配置され、一次側から供給される水を昇圧して二次側に送り出す。
【0020】
第2流通ラインL12は、上流側が第1バッファタンク10に接続され、下流側が第2バッファタンク20に接続される。第2流通ラインL12は、第1バッファタンク10内の水を流通させる。第2流通ラインL12には、給水ポンプ14及び第2薬注部21が配置される。
給水ポンプ14は、第2流通ラインL12に配置され、一次側から供給される水を昇圧して二次側に送り出す。
【0021】
第2薬注部21は、給水ポンプ14の二次側において、更に亜硫酸水素イオン源を第2流通ラインL12に供給する。第2薬注部21から第2流通ラインL12に供給される亜硫酸水素イオン源は、第1薬注部11から第1循環ラインL16に供給される硫酸水素イオン源と同様のものを用いることができる。
第2バッファタンク20は、第2流通ラインL12から供給される水を貯留する。第2バッファタンク20は、タンク内の水位を検出する水位センサ201を有する。
【0022】
第3流通ラインL13は、上流側が第2バッファタンク20に接続され、下流側が除去手段30に接続される。第3流通ラインL13は、第2バッファタンク20内の水を流通させる。第3流通ラインL13には、加圧ポンプ22が配置される。
加圧ポンプ22は、第3流通ラインL13に配置され、一次側から供給される水を昇圧して二次側に送り出す。
【0023】
除去手段30は、加圧ポンプ22によって昇圧された水(供給水)を、逆浸透(RO)膜によって膜分離する。除去手段30は、供給水を、RO膜を透過する透過水(処理水)とRO膜を透過しない濃縮水に分離する。なお、RO膜には、通常のRO膜よりも細孔がルーズなナノ濾過膜(NF膜)も含まれる。除去手段30の構成については後段で詳述する。
【0024】
透過水ラインL14は、上流側が除去手段30に接続され、除去手段30においてRO膜を透過した透過水(処理水)を流通させる。
濃縮水ラインL15は、上流側が除去手段30に接続され、除去手段30においてRO膜を透過しなかった濃縮水を流通させる。
【0025】
第2循環ラインL17は、上流側が濃縮水ラインL15に接続され、下流側が第2バッファタンク20に接続される。第2循環ラインL17は、濃縮水ラインL15を流通する水の一部を、第2バッファタンク20側に循環させる。
なお、以上で説明した構成のうち、第2バッファタンク20、第2薬注部21、加圧ポンプ22、除去手段30、第2流通ラインL12の下流側の一部、第3流通ラインL13、透過水ラインL14の上流側の一部、濃縮水ラインL15の上流側の一部、第1循環ラインL16及び第2循環ラインL17は、RO膜装置を構成する。
【0026】
制御部40は、第1薬注制御部41と、第2薬注制御部42と、を備える。第1薬注制御部41は、第1薬注部11から第1循環ラインL16(水流通ラインL1)への亜硫酸水素イオン源の供給量を制御する。第2薬注制御部42は、第2薬注部21から第2流通ラインL12(水流通ラインL1)への亜硫酸水素イオン源の供給量を制御する。
水処理システム1は、上述した構成の他にも、バルブ、ポンプ、センサ等を備える。
【0027】
図2は、除去手段30の構成を示す図である。
図2に示すように、除去手段30は、複数(具体的には8本)の第1RO膜モジュール31と、第1RO膜モジュール31の数よりも少ない、複数(具体的には6本)の第2RO膜モジュール32と、複数の第1モジュール供給水ラインL311と、複数の第1モジュール透過水ラインL312と、複数の第1モジュール濃縮水ラインL313と、集合ラインL33と、複数の第2モジュール供給水ラインL321と、複数の第2モジュール透過水ラインL322と、複数の第2モジュール濃縮水ラインL323と、を有する。
【0028】
複数の第1モジュール供給水ラインL311は、第3流通ラインL13の下流側から分岐して配置される。複数の第1RO膜モジュール31は、それぞれ第1モジュール供給水ラインL311の下流側に接続される。複数の第1RO膜モジュール31は、それぞれRO膜によって、第3流通ラインL13から供給される供給水を透過水と濃縮水とに分離する。
複数の第1モジュール透過水ラインL312は、それぞれ上流側が第1RO膜モジュール31に接続され、下流側が透過水ラインL14の上流側に集合する。複数の第1モジュール透過水ラインL312は、第1RO膜モジュール31においてRO膜を透過した透過水を透過水ラインL14に供給する。
【0029】
複数の第1モジュール濃縮水ラインL313は、それぞれ上流側が第1RO膜モジュール31に接続される。第1モジュール濃縮水ラインL313は、第1RO膜モジュール31においてRO膜を透過しなかった濃縮水を流通させる。集合ラインL33は、複数の第1モジュール濃縮水ラインL313の下流側が接続される。集合ラインL33には、複数の第1モジュール濃縮水ラインL313を流通した濃縮水が集合する。複数の第2モジュール供給水ラインL321は、それぞれ上流側が集合ラインL33に接続される。第2モジュール供給水ラインL321は、集合ラインL33に集合した濃縮水を、後述の第2RO膜モジュール32に対して供給水として供給する。
【0030】
複数の第2RO膜モジュール32は、それぞれ第2モジュール供給水ラインL321の下流側に接続される。複数の第2RO膜モジュール32は、それぞれRO膜によって、第2モジュール供給水ラインL321から供給される供給水を透過水と濃縮水とに分離する。
複数の第2モジュール供給水ラインL321は、それぞれ上流側が第2RO膜モジュール32に接続され、下流側が透過水ラインL14の上流側に集合する。複数の第2モジュール供給水ラインL321は、第2RO膜モジュール32においてRO膜を透過した透過水を、透過水ラインL14に供給する。
【0031】
複数の第2モジュール濃縮水ラインL323は、それぞれ上流側が第2RO膜モジュール32に接続され、下流側が濃縮水ラインL15の上流側に集合する。複数の第2モジュール濃縮水ラインL323は、第2RO膜モジュール32においてRO膜を透過しなかった濃縮水を濃縮水ラインL15に供給する。
【0032】
第1RO膜モジュール31及び第2RO膜モジュール32(以下、単にRO膜モジュールともいう)は、それぞれ1ないし6本のRO膜エレメント(図示せず)をベッセルに収容して構成される。RO膜エレメントを形成する逆浸透膜は、架橋全芳香族ポリアミド等を用いた負荷電性のスキン層、すなわち、負に帯電しやすいスキン層を表面に有するものであり、好ましくは、操作圧力0.7MPa及び回収率15%の条件で濃度500mg/L、pH7.0及び温度25℃の塩化ナトリウム水溶液を供給したときの水透過係数が1.3×10
−11〜1.7×10
−11m
3・m
−2・s
−1・Pa
−1であり、かつ塩除去率が99%以上の性状のものである。
【0033】
ここで、操作圧力とは、日本工業規格JIS K3802:1995「膜用語」で定義される平均操作圧力をいい、ここでは、RO膜モジュールの一次側の入口圧力(供給水の圧力)と一次側の出口圧力(濃縮水の圧力)との平均値を指す。回収率とは、RO膜モジュールへの供給水の流量(A)に対する透過水の流量(B)の割合(%)(すなわち、B/A×100)をいう。水透過係数は、透過水流量(m
3/s)を膜面積(m
2)及び有効圧力(Pa)で除した値であり、逆浸透膜での水の透過性能を示す指標である。すなわち、水透過係数は、単位有効圧力を作用させたときに単位時間に膜の単位面積を透過する水の量を意味する。有効圧力は、日本工業規格JIS K3802:1995「膜用語」で定義されており、操作圧力(平均操作圧力)から浸透圧差及び二次側圧力を差し引いた圧力である。また、塩除去率は、膜を透過する前後の特定の塩類の濃度から計算される値であり、逆浸透膜での溶質の阻止性能を示す指標である。塩除去率(%)は、供給水における特定の塩類の濃度(C
1)及び透過水における特定の塩類の濃度(C
2)から、下記式(1)により求められる。
[数1] (1−C
2/C
1)×100 ・・・(1)
【0034】
上述のスキン層及び性状を備えた逆浸透膜は、RO膜エレメントとして市販されている。このようなRO膜エレメントとしては、例えば、東レ社製の型式名「TMG20−400」(上記条件での水透過係数が1.7×10
−11m
3・m
−2・s
−1・Pa
−1)、ウンジン・ケミカル社製の型式名「RE8040−BLN」(上記条件での水透過係数が1.6×10
−11m
3・m
−2・s
−1・Pa
−1)及び日東電工社製「ESPA1」(上記条件での水透過係数が1.6×10
−11m
3・m
−2・s
−1・Pa
−1)等が挙げられる。
【0035】
続いて、水処理システム1による水処理方法(水処理システム1の動作)について説明する。
図3は、本実施形態に係る水処理方法の手順について示す図である。
図3に示すように、本実施形態に係る水処理方法は、第1薬注ステップST1と、第1反応ステップST2と、第2薬注ステップST3と、第2反応ステップST4と、除去ステップST5と、を備える。
【0036】
第1薬注ステップST1では、殺菌処理装置100から排出された水に、殺菌処理装置100から排出されるホルムアルデヒドの物質量に対して1倍以上1.8倍以下の物質量の亜硫酸水素イオンを加える。第1薬注ステップST1では、第1薬注制御部41によって亜硫酸水素イオンの供給量が制御される。第1薬注制御部41は、殺菌処理装置100から単位時間あたりに排出されるホルムアルデヒドの物質量に対して、単位時間あたり1倍以上1.8倍以下となる物質量の亜硫酸水素イオン源を第1循環ラインL16(水流通ラインL1)へ供給するよう第1薬注部11を制御する。
【0037】
第1薬注ステップST1におけるホルムアルデヒドの供給量が殺菌処理装置100から排出されるホルムアルデヒドの物質量に対して1倍未満の場合には、透過水ラインL14を流通する透過水のホルムアルデヒド濃度が高くなる。一方、第1薬注ステップST1におけるホルムアルデヒドの供給量が殺菌処理装置100から排出されるホルムアルデヒドの物質量に対して1.8倍を超える場合には、透過水ラインL14を流通する透過水の亜硫酸水素イオン濃度が高くなる。
【0038】
また、第1薬注ステップST1では、亜硫酸水素イオン源が供給された水に対し、pH調整薬注部12によってpH調整剤が供給される。第1薬注ステップST1では、pHを6.0以上6.5以下に調整するのが好ましい。第1薬注ステップST1の処理がなされた水のpHが6.0未満の場合、あるいは6.5超過の場合には、ホルムアルデヒドと亜硫酸水素イオンとの反応速度が低下する虞がある上に、透過水ラインL14を流通する透過水のpHが水道水質基準(5.8以上8.6以下)を逸脱する虞がある。
【0039】
第1反応ステップST2では、第1薬注ステップST1後に、ホルムアルデヒドと亜硫酸水素イオンとを10分以上反応させる。第1反応ステップST2における、ホルムアルデヒドと亜硫酸水素イオンとの反応時間は、第1薬注部11から第2薬注部21に至るまでの水の流通時間によって決まる。つまり、第2薬注部21は、第1薬注部11から前記第2薬注部21に至るまでの水の流通時間が10分以上となる位置に配置される。なお、第1薬注部11から第2薬注部21に至るまでの水の流通時間は、第1薬注部11と第2薬注部21との間の配管長、配管径、配管の内部を流通する水の速度及び第1バッファタンク10内の水の量によって決定される。そして、第1薬注部11から第2薬注部21に至るまでの水の流通時間は、配管の内部を流通する水の速度等を変更することで設定できる。
【0040】
第1反応ステップST2における、ホルムアルデヒドと亜硫酸水素イオンとの反応時間が10分未満の場合、透過水ラインL14を流通する透過水のホルムアルデヒド濃度が高くなる。
【0041】
第2薬注ステップST3では、第1反応ステップST2後の水に、殺菌処理装置100から排出されるホルムアルデヒドの物質量に対して4倍以上8.2倍以下の物質量の亜硫酸水素イオンを加える。第2薬注ステップST3では、第2薬注制御部42によって亜硫酸水素イオンの供給量が制御される。第2薬注制御部42は、殺菌処理装置100から単位時間あたりに排出されるホルムアルデヒドの物質量に対して、単位時間あたり4倍以上8.2倍以下となる物質量の亜硫酸水素イオン源を第2流通ラインL12(水流通ラインL1)へ供給するよう第2薬注部21を制御する。
【0042】
第2薬注ステップST3におけるホルムアルデヒドの供給量が殺菌処理装置100から排出されるホルムアルデヒドの物質量に対して4倍未満の場合には、透過水ラインL14を流通する透過水のホルムアルデヒド濃度が高くなる。一方、第2薬注ステップST3におけるホルムアルデヒドの供給量が殺菌処理装置100から排出されるホルムアルデヒドの物質量に対して8.2倍を超える場合には、透過水ラインL14を流通する透過水の亜硫酸水素イオン濃度が高くなる。
【0043】
また、第2薬注ステップST3では、第1薬注ステップST1と同様に、pH調整剤(例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ性物質)を用いて亜硫酸水素イオン源が供給された水のpH調整を行うのが望ましい。第2薬注ステップST3では、好ましくは、pHが6.0以上6.5以下に調整される。
【0044】
第2反応ステップST4では、第2薬注ステップST3後に、ホルムアルデヒドと亜硫酸水素イオンとを2分以上反応させる。第2反応ステップST4における反応時間は、5分未満であることが好ましい。第2反応ステップST4における、ホルムアルデヒドと亜硫酸水素イオンとの反応時間は、第2薬注部21から除去手段30に至るまでの水の流通時間によって決まる。つまり、除去手段30は、第2薬注部21から除去手段30に至るまでの水の流通時間が2分以上となる位置に配置される。また、除去手段30は、第2薬注部21から除去手段30に至るまでの水の流通時間が5分未満となる位置に配置されることが好ましい。なお、第2薬注部21から除去手段30に至るまでの水の流通時間は、第2薬注部21と除去手段30との間の配管長、配管径、配管の内部を流通する水の速度及び第2バッファタンク20内の水の量によって決定される。そして、第2薬注部21から除去手段30に至るまでの水の流通時間は、配管の内部を流通する水の速度等を変更することで設定できる。
【0045】
第2反応ステップST4における、ホルムアルデヒドと亜硫酸水素イオンとの反応時間が2分未満の場合、透過水ラインL14を流通する透過水のホルムアルデヒド濃度が高くなる。また、第2反応ステップST4における、ホルムアルデヒドと亜硫酸水素イオンとの反応時間が5分を超える場合、第2薬注部21から除去手段30の間における水の滞留時間を確保するために第2バッファタンク20を大きくする必要がある。
【0046】
除去ステップST5では、ホルムアルデヒドと亜硫酸水素イオンとが反応して生成したヒドロキシメタンスルホン酸イオンをRO膜によって除去する。除去ステップST5において具体的には、除去手段30のRO膜によって、加圧ポンプ22によって昇圧された水(供給水)を膜分離することで、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンを除去した透過水(処理水)を得る。
除去手段30のRO膜を透過して透過水ラインL14を流通した透過水は、レトルト装置等において再利用される。除去手段30のRO膜を透過せず濃縮水ラインL15を流通した濃縮水は、一部が水処理システム1の系外に排出され、残部は第2循環ラインL17を通じて循環する。
【0047】
本実施形態に係る水処理方法及び水処理システムによれば、以下の効果が奏される。
(1)本実施形態では、ホルムアルデヒドを除去する水処理方法が、第1薬注ステップST1と、第1反応ステップST2と、第2薬注ステップST3と、第2反応ステップST4と、除去ステップST5と、を備えるものとした。また、第1薬注ステップST1において、殺菌処理装置100から排出された水に、殺菌処理装置100から排出されるホルムアルデヒドの物質量に対して1倍以上1.8倍以下の物質量の亜硫酸水素イオンを加え、第1反応ステップST2において、ホルムアルデヒドと亜硫酸水素イオンとを10分以上反応させるものとした。更に、第2薬注ステップST3において、第1反応ステップST2後の水に、殺菌処理装置100から排出されるホルムアルデヒドの物質量に対して4倍以上8.2倍以下の物質量の亜硫酸水素イオンを加え、第2反応ステップST4において2分以上反応させるものとした。
これにより、ホルムアルデヒドを含む水から効率良くホルムアルデヒドを除去できる上に、亜硫酸水素イオンが逆浸透膜を透過するのを抑えることができる。
【0048】
(2)本実施形態では、水処理システム1が、水流通ラインL1に亜硫酸水素イオン源を供給する第1薬注部11と、第1薬注部11の二次側において、更に亜硫酸水素イオン源を水流通ラインL1に供給する第2薬注部21と、ホルムアルデヒドと亜硫酸水素イオンとが反応して生成したヒドロキシメタンスルホン酸イオンを逆浸透膜によって水から除去する除去手段30と、第1薬注部11から水流通ラインL1への亜硫酸水素イオン源の供給量を制御する第1薬注制御部41と、第2薬注部21から水流通ラインL1への亜硫酸水素イオン源の供給量を制御する第2薬注制御部42と、を有する制御部40と、を備えるものとした。また、第1薬注制御部41が、殺菌処理装置100から単位時間あたりに排出されるホルムアルデヒドの物質量に対して、単位時間あたり1倍以上1.8倍以下となる物質量の亜硫酸水素イオン源を水流通ラインL1へ供給するよう第1薬注部11を制御し、第2薬注制御部42が、殺菌処理装置100から単位時間あたりに排出されるホルムアルデヒドの物質量に対して、単位時間当たり4倍以上8.2倍以下となる物質量の亜硫酸水素イオン源を水流通ラインL1へ供給するよう第2薬注部21を制御するものとした。更に、第2薬注部21を、第1薬注部11から第2薬注部21に至るまでの水の流通時間が10分以上となる位置に配置し、除去手段30を、第2薬注部21から除去手段30に至るまでの水の流通時間が2分以上となる位置に配置した。
これにより、上記の水処理方法と同様に、ホルムアルデヒドを含む水から効率良くホルムアルデヒドを除去できる上に、亜硫酸水素イオンが逆浸透膜を透過するのを抑えることができる。
【0049】
(3)本実施形態では、除去手段30を、第2薬注部21から除去手段30に至るまでの水の流通時間が5分未満となる位置に配置した。
これにより、第2薬注部21から除去手段30に至るまでの水の滞留時間を短くできる。従って、第2薬注部21と除去手段30との間の配管や反応タンク(第2バッファタンク20)の容量を小さくすることでコストを低減できる。
【0050】
(4)本実施形態では、水処理システム1が、水流通ラインL1に配置される第1バッファタンク10を更に備え、水流通ラインL1が、殺菌処理装置100から排出された水を第1バッファタンク10に供給する第1流通ラインL11と、第1バッファタンク10内の水を循環させる第1循環ラインL16と、第1バッファタンク10内の水を第2薬注部21側に流通させる第2流通ラインと、を備えるものとした。また、第1薬注部11が、第1循環ラインL16に亜硫酸水素イオン源を供給するものとした。
これにより、第1薬注部11から供給された亜硫酸水素イオンが、第1循環ラインL16を循環して十分に撹拌される。また、第1循環ラインL16によって、ホルムアルデヒドと第1薬注部11から供給された亜硫酸水素イオンとの反応時間を十分確保できる。
【0051】
以上、本発明の一実施形態に係る水処理システム1及び水処理方法について説明したが、本発明は上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0052】
なお、
図2に示した除去手段30によって行う、前段モジュール(第1RO膜モジュール31)群の濃縮水を後段モジュール(第2RO膜モジュール32)群の供給水とする多段通水により、単段のRO膜モジュールによる通水よりも透過水(処理水)の回収率を高めることができる。また、後段RO膜モジュールの数を前段モジュールの数よりも少なくすることで、各段においてRO膜の一次側の膜面流速を所定範囲に維持し、ファウリングを抑制できる。
【実施例】
【0053】
次に、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0054】
<実施例1>
上記実施形態に係る水処理システム1を用いて、レトルト装置(殺菌処理装置100)から排出される冷却排水を処理した。冷却排水の性状は以下の通りである。
【0055】
[冷却排水の性状]
ホルムアルデヒド濃度:1mg/L
遊離残留塩素濃度:2mg/L
pH:6.5〜7.5(水道水質基準内)
電気伝導率:150μS/cm程度
温度:60℃
【0056】
単位時間当たりにレトルト装置から排出されるホルムアルデヒドの物質量に対する、第1薬注部11から水流通ラインL1へ供給される亜硫酸水素ナトリウムの物質量(表1の「第1薬注量」)を1.5倍とした。また、単位時間当たりにレトルト装置から排出されるホルムアルデヒドの物質量に対する、第2薬注部21から水流通ラインL1へ供給される亜硫酸水素ナトリウムの物質量(表1の「第2薬注量」)を4.5倍とした。
【0057】
また、水の流通速度及び第1バッファタンク10内の水の量を、第1薬注部11から第2薬注部21に至るまでの水の流通時間(第1反応時間)が15分となる量に設定した。更に、水の流通速度及び第2バッファタンク20内の水の量を、第2薬注部21から除去手段30に至るまでの水の流通時間(第2反応時間)が4.5分となる量に設定した。除去手段30(RO膜装置50)における処理条件は以下の通りである。
【0058】
[RO膜装置の操作条件]
RO膜エレメント:TMG20−400(東レ株式会社製)
操作圧力:0.6MPa
回収率:80%
供給水の温度:30℃
供給水のpH:6.0〜6.5
【0059】
水処理システム1によって処理して得られた透過水(処理水)における、ホルムアルデヒド(HCHO)及び亜硫酸水素ナトリウム(SBS)の含有量をGC/MSで測定した。測定結果を表1に示す。なお、透過水は、ホルムアルデヒド濃度が0.08mg/L以下(水道水質基準)、SBS濃度が1.5mg/L以下である場合にレトルト装置の冷却水等として再利用可能と判断できる。溶液中において、SBSは亜硫酸水素イオンとして存在するが、濃度はナトリウム塩の濃度として表した。
また、
図4は、第1薬注からの経過時間と生成したホルムアルデヒドの濃度との関係を示したグラフである。
【0060】
<実施例2〜8及び比較例1〜6>
他の実施例・比較例についても第1薬注量、第1反応時間、第2薬注量及び第2反応時間を表1に示した値に調整した以外は、実施例1と同様の手順で水処理を行った。各実施例・比較例で得られた透過水(処理水)における、ホルムアルデヒド(HCHO)及び亜硫酸水素ナトリウム(SBS)の含有量を表1に示す。
【0061】
<比較例7>
比較例7では、第1薬注量及び第1反応時間を表1に示した値に調整し、第2薬注を行わなかった以外は、実施例1と同様の手順で水処理を行った。なお、比較例7における「第1反応時間」は、第1薬注部11から除去手段30に至るまでの水の流通時間である。比較例7において得られた透過水(処理水)における、ホルムアルデヒド(HCHO)及び亜硫酸水素ナトリウム(SBS)の含有量を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
図4に示した結果から、実施例1の水処理においては、第1薬注によってホルムアルデヒド濃度が0.3mg/Lまで下がった後に第2薬注が行われることで、十分にホルムアルデヒド濃度を下げることができることが確認された。なお、第1薬注を行ってから10分経過後の反応液、及び15分経過後の反応液は、遊離残留塩素が検出されなかった。
【0064】
実施例5と比較例4との比較から、実施例5の水処理の方が比較例4の水処理よりも、透過水のホルムアルデヒド濃度が低いことが分かった。また、実施例2と比較例2との比較から、実施例2の水処理の方が比較例2の水処理よりも、透過水の亜硫酸水素イオン濃度が低いことが分かった。
これらの結果から、第1薬注量を、単位時間当にレトルト装置から排出されるホルムアルデヒドの物質量に対して、1倍以上1.8倍以下とすることで、ホルムアルデヒドを含む水から効率良くホルムアルデヒドを除去できる上に、亜硫酸水素イオンがRO膜を透過するのを抑えることができることが確認された。
【0065】
実施例6と比較例5との比較から、実施例6の水処理の方が比較例5の水処理よりも、透過水のホルムアルデヒド濃度が低いことが分かった。
この結果から、第1反応時間を、10分以上とすることで、ホルムアルデヒドを含む水から効率良くホルムアルデヒドを除去できることが確認された。
【0066】
実施例4と比較例3との比較から、実施例4の水処理の方が比較例3の水処理よりも、透過水のホルムアルデヒド濃度が低いことが分かった。また、実施例2と比較例1との比較から、実施例2の水処理の方が比較例1の水処理よりも、透過水の亜硫酸水素イオン濃度が低いことが分かった。
これらの結果から、第2薬注量を、単位時間当にレトルト装置から排出されるホルムアルデヒドの物質量に対して、4倍以上8.2倍以下とすることで、ホルムアルデヒドを含む水から効率良くホルムアルデヒドを除去できる上に、亜硫酸水素イオンがRO膜を透過するのを抑えることができることが確認された。
【0067】
実施例6と比較例6との比較から、実施例6の水処理の方が比較例6の水処理よりも、透過水のホルムアルデヒド濃度が低いことが分かった。
この結果から、第2反応時間を、2分以上とすることで、ホルムアルデヒドを含む水から効率良くホルムアルデヒドを除去できることが確認された。
【0068】
実施例1と比較例7との比較から、実施例1の水処理の方が比較例6の水処理よりも、透過水のホルムアルデヒド濃度が低いことが分かった。
この結果から、一段階よりも、第1薬注と第2薬注の二段階で亜硫酸水素イオン源を水に添加する方が、ホルムアルデヒドを含む水から効率良くホルムアルデヒドを除去できることが確認された。これは、亜硫酸水素イオン源を一度に多く添加すると、亜硫酸水素イオンの一部がホルムアルデヒドよりも先に残留塩素と反応してしまうことに起因すると考えられる。
【0069】
本願発明者らの研究によれば、残留塩素と亜硫酸水素イオンの酸化還元反応は、亜硫酸水素イオンとホルムアルデヒドの付加反応に比べて非常に早く進行することが判明している。そのため、残留塩素の存在は、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンの生成を阻害する方向に作用すると推察している。
そこで、本願に係る二段階で亜硫酸水素イオン源をホルムアルデヒド含有水に添加する方法では、第1薬注で相対的に少量の亜硫酸水素イオンを供給し、第1反応で相対的に長い時間で反応させている。これにより、
図4に関して上で説明した通り、水中から残留塩素をほぼ完全に除去すると共に、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンの生成を進行させるようにしている。更に、本願では、第2薬注で相対的に多量の亜硫酸水素イオンを供給し、第2反応で相対的に短い時間で反応させている。これにより、未反応の微量ホルムアルデヒドに対して高濃度の亜硫酸水素イオンを存在させて、ヒドロキシメタンスルホン酸イオンの生成を促進させるようにしている。
【0070】
なお、レトルト処理に用いられる冷却水は、食品衛生上の要請から、次亜塩素酸ナトリウムを添加して残留塩素濃度を1〜3mg/L程度に維持する。これに対して、除去ステップを経た透過水(処理水)のSBS濃度が1.5mg/Lよりも高かった場合、冷却水の調製時にSBSと残留塩素が反応してしまうことから、過剰量の次亜塩素酸ナトリウムの投入が必要になる。従って、レトルト処理に再利用する透過水(処理水)のSBS濃度の基準を、上記のように1.5mg/L以下とすることで、残留塩素を目標濃度に維持するために行う、次亜塩素酸ナトリウムの薬注量の制御が容易になる。