(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1にかかる光送信器を示すブロック図である。この光送信器100は、例えば、100ギガ光モジュールの光送信器である。光モジュールは、他に光受信器(不図示)を含んでもよい。光送信器100は、TOSA101と、周波数解析部(解析部)102と、制御部103と、LD駆動部(LD−DRV部)104と、を含む。
【0015】
TOSA101は、複数系統(チャンネル)の複数の半導体レーザ(LD)111と、LD111の個数に対応した複数の受光素子(PD)112と、光合波器113と、を含む。
図1の例では、4チャンネルのLD1〜LD4(111)が並んで配置され、PD1〜PD4(112)もLD111の配置に対応して並んで配置されている。
【0016】
LD−DRV部104は、LD1〜LD4(111)に対し、駆動するために必要な電流(バイアス電流)と、入力された送信信号の変調波をそれぞれ供給する。また、LD−DRV部104は、バイアス電流をLD111の駆動信号の周波数とは異なる所定の周波数f[Hz]により、例えばsin波で振幅変調したディザ信号をLD1〜LD4(111)に供給する。
【0017】
ディザ信号の周波数fは、駆動信号の周波数より低周波の周波数であり、他のチャンネルのLDからの漏話成分を抽出するために用いる。実施の形態1では、ディザ信号を時分割してLD1〜LD4(111)に繰り返し出力する。
【0018】
LD1〜LD4(111)は、光信号を前方から出射し、光合波器113で合波され、光ファイバ等の光伝送路に向けて光送信器100外部に出力される。LD1〜LD4(111)がそれぞれ25Gbpsの伝送速度を有する光信号を出射する場合、光合波器113は、25×4=100Gbpsの伝送速度の光信号を光伝送路に出力する。
【0019】
LD1〜LD4(111)の後方から出射される光信号のパワー(バックパワー)は、それぞれPD1〜PD4(112)により検出され、この検出信号は、周波数解析部102に出力される。周波数解析部102は、検出信号を検出すべき対象のLD111(例えばLD1)から受光する対象光信号成分と、他のLD111(例えばLD2〜LD4)から受光する漏話光信号成分とにそれぞれ分離する。
【0020】
制御部103は、ディザ信号を含むバイアス電流によりLD−DRV部104の駆動を制御する。そして、周波数解析部102の出力(情報)を基に、漏話成分(対象光信号成分に対する前記漏話光信号成分の割合)を求め、検出信号から漏話成分の影響を取り除いた値(真のモニタ値)を求める演算を行う。
【0021】
そして、制御部103は、真のモニタ値に基づき、LD−DRV部104を制御して、LD1〜LD4(111)の光パワーをモニタする。また、各LD1〜LD4(111)が出射する光パワー(例えば、隣接波長レベル)を一定化するAPC制御を実行する。APC制御は、LD−DRV部104が出力するバイアス電流(DC成分)を可変させて行う。
【0022】
図2は、実施の形態1にかかる光送信器のLDの漏話状態を説明するタイミングチャートである。
図2(a)は、ディザ信号を加えた場合の各LD1〜LD4(111)の光出力−時間特性を示す。
図2(b)は、各PD1〜PD4(112)が検出する信号成分および漏話成分の光出力−時間特性を示す。
【0023】
LD−DRV部104は、周波数f[Hz]のディザ信号Dを時間経過毎に(時分割して)LD1〜LD4(111)のいずれかに供給する。
図2(a)に示す例では、ディザ信号は、時間t0〜t1の間LD1のみに供給し、時間t1〜t2はLD2のみに供給し、時間t2〜t3はLD3のみに供給し、時間t3〜t4はLD4のみに供給する。以後、時間t4〜t5はLD1のみに供給し、LD1〜LD4の順にいずれかに時分割で供給することを繰り返す。
【0024】
この際、
図2(b)に示すように、各PD1〜PD4(112)は、各LD1〜LD4(111)が出力するディザ信号に相当する信号成分Sの他に、所定量の漏話成分Cを含み検出する。
【0025】
PD1(112)の検出状態を例に説明すると、時間t0〜t1で検出する信号成分Sは、PD1(112)が本来受光すべきLD1(111)のみのバックパワーである。PD1(112)は、漏話成分Cとして、例えば、時間t1〜t2の間はLD2からのAC漏話成分と、LD3とLD4からのDC漏話成分を受光する。
【0026】
図3は、実施の形態1にかかる光送信器の周波数解析部の内部構成例を示す図である。
図3に示すように、周波数解析部102は、複数のPD1〜PD4(112)からの出力信号の経路を周期的に切り替えるスイッチ301を前段に配置する。また、後段には、スイッチ301を通過後の出力信号を、電気的なフィルタ302を通過しない経路(1)と、フィルタ302を通過する経路(2)とに分岐する。
【0027】
フィルタ302は、通過する出力信号のうちAC成分を抽出し、DC成分を取り除くフィルタ、例えば、バンドパスフィルタ、カップリングコンデンサ等を用いる。
【0028】
図4は、実施の形態1にかかる光送信器の周波数解析部内のスイッチ動作を説明する図である。
図3の周波数解析部102のスイッチ301の切り替えタイミングについて説明する。
【0029】
スイッチ301は、(a)→(b)→(c)→(d)→(a)→…の順に、周期T1〜T4毎にPD1〜PD4(112)の入力側の経路を切り替えて出力し、T5でT1と同配置となる。このスイッチ301は、制御部103により制御される。そして、制御部103は内部で生成するクロック信号を切り替えタイミングに用い、ディザ信号の出力タイミングに同期してスイッチ301を切替制御する。
【0030】
したがって、(a)の周期T1,T5,T9,…では、PD1(112)の出力信号を選択的に取り出し、(b)の周期T2,T6,T10,…ではPD2(112)の出力信号を選択的に取り出す。同様に、(c),(d)の周期では、PD3,PD4(112)の出力信号を選択的に取り出す。
【0031】
図5は、実施の形態1にかかる光送信器の周波数解析部内のスイッチ出力を示すタイミングチャートである。スイッチ301は、周期毎にPD1〜PD4(112)の出力信号を切り替えて出力する。
【0032】
最初の1周期(T1=t0〜t4)ではPD1(112)の出力信号を出力し、次の1周期(T2=t4〜t8)ではPD2(112)の出力信号を出力する。次の1周期(T3=t8〜t12)ではPD3(112)の出力信号を出力し、次の1周期(T4=t12〜t16)ではPD4(112)の出力信号を出力する。時間t16以降はPD1(112)の出力に戻る。
【0033】
図5に示すように、スイッチ301の出力は、信号成分Sと漏話成分Cを含む。
【0034】
以後、説明を簡略化するために、ある1周期T1(時間t0〜t4)におけるPD1(112)の出力信号に注目して説明する。
【0035】
図6は、実施の形態1にかかる光送信器の周波数解析部の出力信号を示す図である。
図6(a)は周波数解析部102の経路(1)の出力信号を示す。周期T1(時間t0〜t4)の期間、周波数解析部102の経路(1)は、スイッチ301が選択したPD1(112)の出力信号を出力し、
図5同様に信号成分Sと漏話成分Cを含む。
【0036】
図6(b)は周波数解析部102の経路(2)の出力信号を示す。周期T1(時間t0〜t4)の期間、周波数解析部102の経路(2)では、スイッチ301が選択したPD1(112)の出力信号は、フィルタ302を通過する。
【0037】
フィルタ302は、周波数f(Hz)のAC成分を抽出し、DC成分を取り除くバンドパスフィルタを通過させる。上記のディザ信号を含むDCのバイアス成分を取り除き、ACの信号成分Sおよび漏話成分Cを通過させる。これにより、
図6(b)に示すように、経路(2)からは、フィルタ302通過後のPD1(112)のAC成分(信号成分S)のみの出力信号が出力される。
【0038】
そして、経路(2)は、周期T1(時間t0〜t4)の間は、漏話成分Cが除去されたPD1(112)の信号成分S1を出力する。この後のPD1(112)の出力信号として、時間t1〜t2の間はLD2(111)からの漏話成分C2(AC成分)が出力される。同様に、時間t2〜t3の間はLD3(111)からの漏話成分C3が、時間t3〜t4の間はLD4(111)からの漏話成分C4が出力される。
【0039】
図6(a)に示した経路(1)を通過した出力信号と、
図6(b)に示した経路(2)を通過した出力信号は、制御部103に入力される。
【0040】
図7は、実施の形態1にかかる光送信器の演算部の内部構成例を示す図である。制御部103は、クロック生成部701、演算部702、メモリ部703、インターフェース部(IO部)704等を含み、これらはバス接続されている。
【0041】
クロック生成部701は、所定周波数のクロックを生成し、演算部702の各部に動作タイミング用として供給する。また、スイッチ301は、このクロック生成部701が生成したクロックに基づき上記のタイミングで切り替え動作する。
【0042】
演算部702は、例えばCPU等を用いてなり、上記漏話成分Cを除去した信号成分Sを求める演算を行う。そして、演算部702は、漏話成分Cを除去した信号成分Sを用いて、各LD1〜LD4の光パワーをモニタし、また、LD−DRV部104を介してLD111のAPC制御を行う。
【0043】
メモリ部703は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびフラッシュROMなどを有してなる。
【0044】
例えば、フラッシュROMやROMが各種プログラムを記憶し、RAMがCPU702のワークエリアとして使用される。ROMに記憶されるプログラムは、CPU702にロードされることで、コーディングされている処理をCPU702に実行させる。
【0045】
IO部704は、制御部103に対する各種信号の入出力制御を行う。例えば、周波数解析部102からの入力信号をAD変換するADC、およびLDーDRV部104への出力信号をDA変換するDACを含む。
【0046】
上述した周波数解析部102が有するフィルタ302は、アナログフィルタ、またはデジタルフィルタのいずれでもよく、デジタルフィルタの場合には、フィルタ302を制御部103(例えばCPU)の一部機能とすることができる。
【0047】
(漏話成分除去の動作処理例)
次に、実施の形態1の上記構成により信号成分Sから漏話成分Cを除去する動作処理例について説明する。制御部103が行う設定処理と漏話成分の除去処理についてそれぞれ説明する。
【0048】
図8は、実施の形態1にかかる光送信器の設定処理例を示すフローチャートである。制御部103は、LD−DRV部104の動作の初期値を設定する。
【0049】
はじめに、制御部103は、LD1〜LD4(111)のバイアス電流値Ib1〜Ib4をそれぞれ設定する(ステップS801)。また、制御部103は、ディザ信号Id(f)を設定する(ステップS802)。fはディザ周波数[Hz]、Idはディザ振幅[mA]である。
【0050】
また、制御部103は、ディザ信号Idを各LD1〜LD4(111)に切り替えるタイミング周波数を設定する(ステップS803)。例えば、タイミング周波数をFt[Hz]とすると、上述した1周期T[s]は、T=1/Ftである。
【0051】
そして、制御部103は、上記ステップS801〜ステップS803の各設定値に基づき、LD−DRV部104を制御する(ステップS804)。
【0052】
図9は、実施の形態1にかかる光送信器の設定処理に基づく各LDの時間別の電流値の例を示す図表である。
図8のステップS804により制御部103がLD−DRV部104を制御する際のLD1〜LD4(111)の時間別の電流値の例を示す。
【0053】
例えば、時間t0〜t1の間においては、LD1に対してのみディザ信号を供給し、LD1の電流はIb1+Id(f)となる。この際、他のLD2〜LD4の電流値はそれぞれIb2,Ib3,Ib4である(
図2(b),
図5参照)。この後、時間t4〜t5の間においては、再びLD1に対してのみディザ信号を供給し、LD1に供給する電流はIb1+Id(f)となる。
【0054】
また、時間t1〜t2の間においては、LD2に対してのみディザ信号を供給し、LD2の電流はIb2+Id(f)となる。この際、他のLD1,LD3,LD4の電流値はそれぞれIb1,Ib3,Ib4である(
図2(b)参照)。
【0055】
制御部103は、
図9の設定内容に基づき、各時間t0〜tnのタイミングでLD−DRV部104を介してLD1〜LD4(111)を駆動する。この際、LD1〜LD4(111)は、それぞれのバイアス点が周波数fでゆらぐ(
図2参照)。
【0056】
図10は、実施の形態1にかかる光送信器の漏話成分の除去の処理例を示すフローチャートである。制御部103は、
図8に示す設定処理の実行後に、
図10に示す処理を実行する。
【0057】
はじめに、制御部103は、経路(1)を通過後のPD1〜PD4(112)の出力信号についてそれぞれ二乗平均値を計算する(ステップS1001)。次に、制御部103は、経路(2)を通過後のPD1〜PD4(112)の出力信号についてそれぞれ二乗平均値を計算する(ステップS1002)。
【0058】
この後、制御部103は、各PD1〜PD4(112)について、ステップS1002で得た計算値を用いて信号成分Sに対する漏話成分Cの割合Rを演算する(ステップS1003)。次に、制御部103は、ステップS1001で得た計算値と、ステップS1003で得た演算値とを用いて、漏話成分Cの影響を取り除いた信号成分S(真のモニタ値)を演算する(ステップS1004)。
【0059】
最後に、制御部103は、ステップS1004で得た信号成分S(真のモニタ値)を用いて、各LD1〜LD4(111)の送信(TX)パワーモニタ、およびAPCの制御を実行する(ステップS1005)。
【0060】
図11〜
図16は、それぞれ実施の形態1にかかる光送信器の漏話成分除去の処理中の情報例を説明する図である。制御部103による計算値(演算値)を格納するメモリ部703の内容に相当する。
【0061】
図11は、
図10のステップS1001により計算された経路(1)を通過後のPD1〜PD4(112)の出力信号の二乗平均値である。PD1(112)出力として、周期T1(時間t0〜t4)の間の二乗平均値PD1がメモリ部703に格納される。PD2(112)出力として、周期T2(時間t4〜t8)の間の二乗平均値PD2がメモリ部703に格納される。PD3,PD4出力についても同様に対応する時間の二乗平均値PD3,PD4がメモリ部703に格納される。
【0062】
図12は、
図11で説明した経路(1)を通過後の出力信号の二乗平均値の例を示す図であり、時間t0〜t4の間で検出したPD1の出力信号の大きさを示している。
【0063】
図13は、
図10のステップS1002により計算された経路(2)を通過後のPD1〜PD4(112)の出力信号の二乗平均値を示す図表である。PD1(112)出力として、周期T1の間の時間t0〜t4別の二乗平均値PD1がメモリ部703に格納される。時間t0〜t1の間は、PD1_LD1、時間t1〜t2の間は、PD1_LD2、時間t2〜t3の間は、PD1_LD3、時間t3〜t4の間は、PD1_LD4として格納される。
【0064】
例えば、時間t0〜t1の間はLD1(111)にディザ信号を加えるためPD1_LD1として示し、時間t1〜t2の間はLD2(111)にディザ信号を加えるためPD1_LD2として示している。
【0065】
図14は、
図13で説明した経路(2)を通過後の出力信号の二乗平均値の例を示す図であり、時間t0〜t4の間で検出したPD1_LD1〜PD1_LD4の出力信号の大きさを示している。
【0066】
図15は、
図10のステップS1003で信号成分Sに対する漏話成分Cの割合Rを演算する演算式を示す図表である。R1は、PD1(112)で検出される信号成分Sに対する漏話成分Cの割合である。R1は、ステップS1002で計算されたPD2〜PD4(112)の出力信号の二乗平均値と、PD1(112)の出力信号の二乗平均値を用い、例えば、R1={PD1_LD2+PD1_LD3+PD1_LD4}/PD1_LD1の演算により求められる。
【0067】
また、R2は、PD2(112)で検出される信号成分Sに対する漏話成分Cの割合である。R2は、ステップS1002で計算されたPD1,PD3,PD4(112)の出力信号の二乗平均値と、PD2(112)の出力信号の二乗平均値を用いる。例えば、R2={PD2_LD2+PD2_LD3+PD2_LD4}/PD2_LD1の演算により求められる。このほか、R3,R4は、それぞれPD3,PD4(112)で検出される信号成分Sに対する漏話成分Cの割合である。
【0068】
図16は、
図10のステップS1004で漏話成分Cの影響を取り除いた信号成分S(真のモニタ値)を演算する演算式を示す図表である。PD1とR1の積PD1×R1がPD1(112)の出力信号のうち漏話成分Cを示す。このため、PD1×(1−R1)が漏話成分Cを除いたLD1(111)のバックパワーモニタの値となる。
【0069】
制御部103は、LD1(111)について、PD1(112)を用いて行う光出力(TX)パワーモニタや、LD1(111)のAPC制御を行う際に、このPD1×(1−R1)の値を用いる。これにより、制御部103は、漏話の影響を受けない状態に相当する光出力パワーモニタ、およびAPC制御が行える。
【0070】
なお、
図16に示すように、LD2については、PD2×(1−R2)の演算を行い、他のLD3,LD4についても
図16に示す演算式を用いて演算を行う。これにより、制御部103は、各LD1〜LD4について、漏話の影響を受けない状態に相当する光出力パワーモニタ、およびAPC制御が行える。
【0071】
以上説明した実施の形態1によれば、LDの駆動信号の周波数とは異なるディザ信号を複数のLDに出力する。そして、LD出力を各PDで検出し、信号成分から漏話成分を除去する。漏話成分を除去することで、漏話の影響を受けずに光出力パワーモニタ、およびAPC制御が行えるようになる。
【0072】
実施の形態1では、PD出力を分岐させ一方の経路にフィルタを設けて、AC成分を抽出しDC成分を除去し、漏話成分を抽出する。そして、各経路の出力信号を用いて漏話成分の割合を求めることで、信号成分から漏話成分を除去している。この際、各経路の出力信号の二乗平均値を演算することで時間的に変化する検出信号の漏話成分を抽出しやすくなる。
【0073】
そして、実施の形態1では、単一周波数fのディザ信号を時分割して各LDに出力し、LD出力に同期したスイッチ切り替えにより、時分割に漏話成分を演算処理する。これにより、ディザ信号の周波数別の変調信号を生成するLD−DRV部では一つの発振周波数(一つの発信器)とすればよく、周波数解析部に設けるフィルタも一つ設ければよい。また、演算部に設けるADCの数もPDの個数分だけでよく最小個数にでき、ハードウェア構成を簡単にできる。
【0074】
(実施の形態2)
実施の形態2の光送信器100は、実施の形態1と同じ全体構成(
図1)であるが、LD1〜LD4(111)毎に異なる周波数のディザ信号を用いること、および周波数解析部102の内部構成と、制御部103の演算処理内容とが異なっている。
【0075】
図17は、実施の形態2にかかる光送信器の各PDが受光する波形例を示す図である。
図17(a)はPD1、(b)はPD2、(c)はPD3、(d)はPD4でそれぞれ検出されるLDのモニタ信号(検出信号)である。
【0076】
制御部103は、各LD1〜LD4(111)に対し、LD111の駆動信号の周波数とは異なる信号周波数(ディザ信号)で振幅変調させる。例えば、LD1のバイアス電流がf1[Hz]で変調できるように制御部103は、LD−DRV部104を制御する。この場合、LD1の光出力パワーはf1[Hz]で変化し、LD1の後方から出射する光パワーを検出するPD1(112)の検出信号もf1[Hz]で変化する。
【0077】
同様にLD2,LD3,LD4(111)は、それぞれf2[Hz],f3[Hz],f4[Hz]のディザ信号で振幅変調させると、各LDの後方の光パワーを検出するPD2,PD3,PD4の検出信号はf2,f3,f4[Hz]で変化する。
【0078】
例えば、
図17(a)のPD1で説明すると、PD1(112)は、LD1(111)の後方の信号成分Sと、他のLD2〜LD4(111)からの漏話成分Cを受光する。なお、漏話成分Cは信号成分Sよりもレベルが小さいため、f1の信号成分Sが最も大きく、f2,f3,f4の漏話成分Cはレベルが小さい。
【0079】
PD2〜PD4(112)で受光されるモニタ信号についても
図17(b)〜(d)にそれぞれ示すように、信号成分Sと漏話成分Cを含む。
【0080】
各PD1〜PD4(112)の検出信号は、後段の周波数解析部102に入力される。以下、PD1(112)に注目して説明する。
【0081】
図18は、実施の形態2にかかる光送信器の周波数解析部の内部構成例を示す図である。周波数解析部102は、PD1(112)からの出力信号を複製し、電気的なフィルタ1801を通過する経路(経路2〜5)と、フィルタ1801を通過しない経路(経路1)とに分岐する。フィルタ1801は、ディザ信号の各周波数f1〜f4に対応する4つのFil1(1801a)〜Fil4(1801d)を含む。なお、他のPD2〜PD4(112)についても
図18と同様の構成のフィルタ1801(1801a〜1801d)がそれぞれ設けられる。
【0082】
このフィルタ1801は、アナログフィルタ、またはデジタルフィルタのいずれでもよく、デジタルフィルタの場合には、フィルタ1801を制御部103(例えばCPU)の一部機能とすることができる。
【0083】
図19は、実施の形態2にかかる光送信器の周波数解析部のフィルタ周波数を示す図である。横軸は周波数、縦軸はレベル(Gain)である。フィルタ1801(1801a〜1801d)は、バンドパスフィルタなどの周波数フィルタで構成し、Fil1はf1[Hz]、Fil2はf2[Hz]、Fil3はf3[Hz]、Fil4はf4[Hz]を抽出(通過)する。
【0084】
図20は、実施の形態2にかかる光送信器の周波数解析部のフィルタ通過後の検出信号を示す図である。経路(2〜5)を通過後の検出信号は、DC成分が除去され、LD1〜LD4(111)の各ディザ信号の周波数f1〜f4が抽出される。
【0085】
PD1(112)の検出信号について、経路(2)のフィルタ1801a(Fil1)を通過することで、LD1(111)のf1[Hz]の周波数成分が取り出される(漏話成分Cが除去される)。また、経路(3)のフィルタ1801b(Fil2)を通過することで、LD2(111)のf2[Hz]の周波数成分(漏話成分C)が取り出される。同様に、経路(4)ではフィルタ1801c(Fil3)により、LD3(111)のf3[Hz]の周波数成分(漏話成分C)が取り出される。経路(5)ではフィルタ1801d(Fil4)により、LD4(111)のf4[Hz]の周波数成分(漏話成分C)が取り出される。
【0086】
上記周波数解析部102の各経路(1)〜(5)を通過した検出信号は、制御部103に入力される。制御部103には、検出信号をAD変換するADCが設けられる。一つのPD(112)あたり5つの経路(経路1〜5)に対応して5つのADCを設け、4つのPD1〜PD4(111)の場合、合計20個のADCを設ける。
【0087】
制御部103は、入力される検出信号に基づき、信号成分Sに対する漏話成分Cの割合Rを求め演算を行う。そして、演算結果を用いて、各LD1〜LD4の光パワーモニタ、およびLD−DRV部104を介してAPC制御を行う。
【0088】
(漏話成分除去の動作処理例)
次に、実施の形態2の上記構成により信号成分Sから漏話成分Cを除去する動作処理例について説明する。制御部103が行う設定処理と漏話成分の除去処理についてそれぞれ説明する。
【0089】
図21は、実施の形態2にかかる光送信器の設定処理例を示すフローチャートである。制御部103は、LD−DRV部104の動作の初期値を設定する。
【0090】
はじめに、制御部103は、LD1〜LD4(111)のバイアス電流値Ib1〜Ib4をそれぞれ設定する(ステップS2101)。また、制御部103は、ディザ信号Id(f)を設定する(ステップS2102)。fはディザ周波数[Hz]、Idはディザ振幅[mA]である。ここで、ディザ信号の周波数は、LD1〜LD4でそれぞれ異なり、LD1をf1、LD2をf2、LD3をf3、LD4をf4に設定する。
【0091】
そして、制御部103は、上記ステップS2101,ステップS2102の各設定値に基づき、LD−DRV部104を制御する(ステップS2103)。この際、LD1〜LD4(111)は、それぞれのバイアス点が周波数f1〜f4でゆらぐバイアス信号で駆動され、PD1〜PD4(112)は、この周波数f1〜f4でゆらぐ光パワーを受光する(
図17参照)。
【0092】
図22は、実施の形態2にかかる光送信器の設定処理に基づく各LDのディザ信号の設定例を示す図表である。
図21のステップS2102により制御部103がLD−DRV部104を介してLD1〜LD4(111)に出力するディザ信号の周波数fと振幅を示す。例えば、LD1(111)は、ディザ信号の周波数をf1、振幅をId(f1)とする。
【0093】
図23は、実施の形態2にかかる光送信器の設定処理に基づく各LDの電流値の例を示す図表である。
図21のステップS2103により制御部103がLD−DRV部104を制御する際のLD1〜LD4(111)の電流値の例を示す。例えば、LD1(111)には、Ib1+Id(f1)の電流を供給する。
【0094】
図24は、実施の形態2にかかる光送信器の漏話成分の除去の処理例を示すフローチャートである。制御部103は、
図21に示す設定処理の実行後に、
図24に示す処理を実行する。
図24を用いて、PD1(112)に対する処理例について説明する。
【0095】
はじめに、制御部103は、各経路(1)〜(4)を通過後のPD1(112)の出力信号についてそれぞれ二乗平均値を計算する(ステップS2401)。次に、制御部103は、PD1(112)について、ステップS2401で得た計算値を用いて信号成分Sに対する漏話成分Cの割合R1を演算する(ステップS2402)。
【0096】
この後、制御部103は、ステップS2401とステップS2402でそれぞれ得た計算値を用いて漏話成分Cの影響を取り除いた信号成分S(真のモニタ値)を演算する(ステップS2403)。最後に、制御部103は、ステップS2403で得た信号成分S(真のモニタ値)を用いて、LD1(111)の送信(TX)パワーモニタ、およびAPCの制御を実行する(ステップS2404)。
【0097】
上記処理では、PD1(112)の検出信号に対して、漏話成分Cの影響を取り除いた信号成分S(真のモニタ値)を演算する処理例を説明したが、他のPD2〜PD4についても同様の処理を行う。これにより、PD2〜PD4(111)の検出信号に対して、漏話成分Cの影響を取り除いた信号成分S(真のモニタ値)を演算により求めることができる。そして、制御部103は、信号成分S(真のモニタ値)を用いて、LD2〜LD4(111)に対するそれぞれの送信(TX)パワーモニタ、およびAPCの制御を漏話成分の影響を受けずに実行することができる。
【0098】
図25は、実施の形態2にかかる光送信器の漏話成分除去の処理中の情報例を説明する図である。制御部103による計算値(演算値)を格納するメモリ部703の内容に相当する。
【0099】
図24のステップS2401により計算された各経路(1)〜(5)を通過後のPD1(112)の出力信号の二乗平均値である。経路(1)の二乗平均値はPD1、経路(2)の二乗平均値はPD1_LD1、経路(3)の二乗平均値はPD1_LD2、経路(4)の二乗平均値はPD1_LD3、経路(5)の二乗平均値はPD1_LD4、としてそれぞれメモリ部703に格納される。
【0100】
この後、
図24のステップS2402では、制御部103は、ステップS2401で求めた経路(2)〜(5)の各計算値を用い、PD1の信号成分Sに対する漏話成分Cの割合R1を下記式により求め、メモリ部703に格納する。
【0101】
R1={PD1_LD2+PD1_LD3+PD1_LD4}/PD1_LD1
【0102】
この後、
図24のステップS2403では、制御部103は、ステップS2401とステップS2402で求めた計算値を用い、漏話成分Cの影響を取り除いた信号成分S(真のモニタ値)を下記式により求め、メモリ部703に格納する。
【0103】
周波数解析部102で経路(1)を通過した信号はPD1(112)の検出信号そのものであり、信号成分S(LD1のバックパワー)と、漏話成分C(LD2〜LD4のバックパワー)の両方が含まれている。
【0104】
この経路(1)を通過後の二乗平均値はPD1であり、信号成分Sに対する漏話成分Cの割合はR1であるため、PD1とR1の積PD1×R1がPD1(112)で受光された漏話成分Cである。したがって、制御部103は、PD1からPD1×R1を減算した、PD1(1−R1)を演算することで、真のモニタ値(信号成分S)を得る。
【0105】
そして、制御部103は、LD1(111)について、PD1(112)を用いて行う光出力(TX)パワーモニタや、LD1(111)のAPC制御を行う際に、このPD1×(1−R1)の値を用いる。これにより、制御部103は、漏話の影響を受けない状態に相当する光出力パワーモニタ、およびAPC制御が行える。
【0106】
なお、PD2〜PD4の漏話成分Cの割合R2〜R4についても同様の演算により求めることができ、他のPD2〜PD4についてもR2〜R4の値に基づき真のモニタ値を演算により求めることができる。そして、PD2〜PD4(112)を用いて行う光出力(TX)パワーモニタや、LD2〜LD4(111)のAPC制御を漏話の影響を受けずに行えるようになる。
【0107】
以上説明した実施の形態2によれば、実施の形態1同様に送信信号の周波数とは異なるディザ信号を複数のLDに出力し、各PDで検出した信号成分から漏話成分を除去することで、漏話の影響を受けずに光出力パワーモニタ、およびAPC制御を行う。
【0108】
実施の形態2では、各LD毎に異なる周波数f1〜f4のディザ信号を出力し、PD出力を分岐させて各周波数に対応したフィルタを介して漏話成分を抽出する。そして、各経路の出力信号を用いて漏話成分の割合を求めることで、信号成分から漏話成分を除去している。この際、各経路の出力信号の二乗平均値を演算することで時間的に変化する検出信号の漏話成分を抽出しやすくなる。
【0109】
そして、実施の形態2では、異なる周波数のディザ信号を各LDに出力するため、各LDの漏話成分を同時に求めることができる。なお、実施の形態1と比較してLDの数に対応して異なる周波数のディザ信号を生成する必要があり、また、フィルタとADCの個数が増えるが、周波数解析部のスイッチを不要にできる。
【0110】
実施の形態1では、LDの個数に対応した異なる周波数のディザ信号を用い、実施の形態2では、単一周波数のディザ信号を時分割に各LDに個別に出力している。そして、いずれの実施の形態においても、PD出力を分岐させて各周波数に対応したフィルタを介して漏話成分を抽出し、各経路の出力信号を用いて漏話成分の割合を求めることで、信号成分から漏話成分を除去する。
【0111】
以上説明した各実施の形態によれば、送信信号の周波数とは異なるディザ信号を複数のLDに出力し、各PDでは、複数のLDから受光した漏話成分の割合を求めることで、信号成分から漏話成分を除去する演算を行う。これにより、漏話の影響を受けずに光出力パワーモニタを正確に行うことができ、また、APC制御を正確に行うことができるようになる。
【0112】
各PDが受光する漏話成分は一定量ではなく、LD駆動の温度環境の変化等により刻々変化するが、上記演算を行う毎に漏話成分の量を求めることができ、信号成分から漏話成分を除去できる。これにより、時間変化に伴い漏話成分が変化しても、漏話成分を正確に求めることができ、この漏話成分を除去できる。
【0113】
また、各実施の形態で用いるディザ信号は、複数のLDに供給するバイアス電流を振幅変調したものであり、光信号の周波数(25Gbps)に対して低周波数である。このため、光送信器の運用中であっても、ディザ信号を各LDに供給して漏話成分を除去する演算を行うことができる。
【0114】
LD−DRV部104は、送信信号を高周波で変調処理する変調部と、バイアス電流を生成する駆動部とをそれぞれ別のチップ部品として備え、変調部と駆動部とが並行動作する。これにより、光送信器として送信信号を光信号として送信する運用中に、実施の形態1の制御処理(
図8,
図10)、あるいは実施の形態2の制御処理(
図21,
図24)を平行して実行できる。これにより、求めた漏話成分に基づき、直ちに送信中の光信号に対するパワーモニタとAPC制御に適用できる。
【0115】
以上のように、各実施の形態によれば、TOSA等小型の光送信器の筐体内部に複数のLDを配置する場合でも、仕切りや開口、レンズ等を設置せずとも、電気的演算により他のLDからの漏話成分を除去できる。これにより、複数のLDが配置される高速なTOSAおよび光送信器を簡単な構成で低コストに小型化できるとともに、小型化しても漏話の影響を受けずに光パワーモニタやAPC制御を行うことができるようになる。
【0116】
上述した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0117】
(付記1)前方に光信号を出射する複数のレーザダイオードが隣接配置され、前記各光信号のパワーが制御される光送信器において、
前記各レーザダイオードの後方から出射される光信号の光パワーを検出する複数の受光素子と、
前記複数のレーザダイオードに、前記レーザダイオードの駆動信号の周波数と異なる所定周波数に振幅変調されたバイアス電流を供給するLD駆動部と、
前記各受光素子の検出信号を、検出すべき対象の該レーザダイオードから受光する対象光信号成分と他のレーザダイオードから受光する漏話光信号成分とにそれぞれ分離する解析部と、
前記対象光信号成分に対する前記漏話光信号成分の割合を、前記検出信号ごとに演算し、
前記割合に基づいて、前記検出信号から前記漏話光信号成分を除去する演算を行う制御部と、
を備えたことを特徴とする光送信器。
【0118】
(付記2)前記LD駆動部は、前記バイアス電流を単一周波数で振幅変調し、
前記解析部は、複数の前記受光素子の検出信号の中から所定の検出信号を選択して入力するスイッチと、入力される前記検出信号からDC成分を除き、AC成分を抽出するフィルタを有し、
前記制御部は、
前記LD駆動部を介して複数の前記レーザダイオードに対し、前記振幅変調した前記バイアス電流を時分割に供給させ、
前記バイアス電流を供給する時分割のタイミングに同期して、前記スイッチを切り替え、
前記解析部を通過した複数の前記検出信号を時分割に取り込み、前記演算を行うこと、
を特徴とする付記1に記載の光送信器。
【0119】
(付記3)前記LD駆動部は、前記各レーザダイオードに、それぞれ異なる周波数で振幅変調した前記バイアス電流を供給すること、
を特徴とする付記1に記載の光送信器。
【0120】
(付記4)前記制御部は、
前記解析部の前記フィルタを通過した経路の前記検出信号と、前記フィルタを通過しない経路の前記検出信号とに基づき、前記信号成分に対する前記漏話成分の割合を演算すること、
を特徴とする付記2または3に記載の光送信器。
【0121】
(付記5)前記制御部は、
前記解析部の前記フィルタを通過した経路の前記検出信号と、前記フィルタを通過しない経路の前記検出信号と、に対しそれぞれ二乗平均値を演算した後、前記信号成分に対する前記漏話成分の割合を演算すること、
を特徴とする付記2または3に記載の光送信器。
【0122】
(付記6)前記解析部の前記フィルタは、アナログフィルタ、またはデジタルフィルタであることを特徴とする付記2〜5のいずれか一つに記載の光送信器。
【0123】
(付記7)複数の前記レーザダイオードと、複数の前記受光素子は、光送信用サブアセンブリの筐体内に配置されたことを特徴とする付記1〜6のいずれか一つに記載の光送信器。
【0124】
(付記8)複数の前記レーザダイオードが出射する前記光信号を合波し、光伝送路に出力する光合波器を有すること、
を特徴とする付記1〜7のいずれか一つに記載の光送信器。
【0125】
(付記9)前方に光信号を出射する複数のレーザダイオードが隣接配置され、前記各レーザダイオードの後方から出射される光パワーを複数の受光素子でそれぞれ検出し、前記検出された結果に基づいて前記光信号のパワーを制御する光送信器の制御方法において、
前記各レーザダイオードに、前記レーザダイオードの駆動信号の周波数と異なる所定周波数に振幅変調されたバイアス電流を供給し、
前記各受光素子の検出信号を、検出すべき対象の該レーザダイオードから受光する対象光信号成分と他のレーザダイオードから受光する漏話光信号成分とにそれぞれ分離し、
前記検出信号の前記対象光信号成分に対する前記漏話光信号成分の割合を、前記検出信号ごとに演算し、
前記割合に基づいて、前記検出信号から前記漏話光信号成分を除去する演算を行う、
ことを特徴とする制御方法。