特許第6572677号(P6572677)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6572677被搬送部材の搬送方法および被搬送部材の搬送装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6572677
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】被搬送部材の搬送方法および被搬送部材の搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20190902BHJP
【FI】
   B25J15/08 M
   B25J15/08 N
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-164275(P2015-164275)
(22)【出願日】2015年8月21日
(65)【公開番号】特開2017-39197(P2017-39197A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2018年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 整
【審査官】 藤井 浩介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−282964(JP,A)
【文献】 特開2010−201517(JP,A)
【文献】 特開平03−211121(JP,A)
【文献】 特開平06−239579(JP,A)
【文献】 特開2004−255527(JP,A)
【文献】 特開昭61−012585(JP,A)
【文献】 特開平06−286974(JP,A)
【文献】 特開2008−254904(JP,A)
【文献】 特開平7−241518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00−21/02
B66C 1/46;1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送部材に備えられた穴に保持部材を係合させ、前記保持部材によって前記被搬送部材を保持して搬送する方法であって、
媒体が供給されることによって、前記穴の軸方向および当該軸方向と交差した径方向に沿ってそれぞれ伸縮する前記保持部材を用い、
前記保持部材を、内部に媒体を供給することによって、縮小させた状態から軸方向に沿って伸長させて前記穴に挿入し、径方向に沿って伸長させて前記穴の側面を押圧して前記穴に係合させ、前記被搬送部材を保持しつつ搬送する被搬送部材の搬送方法。
【請求項2】
前記穴は、貫通穴から構成し、
前記保持部材の端部を、軸方向に沿って伸長させつつ前記穴から突出させ、かつ、前記穴の縁よりも径方向に沿って大きく伸長させる請求項1に記載の被搬送部材の搬送方法。
【請求項3】
前記穴は、貫通穴から構成し、
前記被搬送部材は、前記穴の端部に係留する管状の係留部材を備え、
前記保持部材の先端部を、軸方向に沿って伸長させつつ前記係留部材の開口から突出させ、かつ、前記開口の縁よりも径方向に沿って大きく伸長させる請求項1に記載の被搬送部材の搬送方法。
【請求項4】
前記被搬送部材は、互いに離間した前記穴を複数備え、
複数のうち2つ以上の前記穴をそれぞれ前記保持部材によって係合する請求項1〜3のいずれか1項に記載の被搬送部材の搬送方法。
【請求項5】
被搬送部材に備えられた穴の軸方向および当該軸方向と交差した径方向に沿ってそれぞれ伸縮して前記穴を内方から押圧して前記穴に係合させ、前記被搬送部材を保持する保持部材と、
前記保持部材の基端部の側を支持し、前記被搬送部材を保持した前記保持部材を移動させる移動部材と、を有し、
前記保持部材は、前記基端部が開口し前記基端部から延在した先端部が閉塞し伸縮可能な筒形状から形成し、
前記基端部の側から前記保持部材の内部に供給する媒体の量を増減して前記保持部材を伸縮させる調整部を、さらに有する被搬送部材の搬送装置。
【請求項6】
前記保持部材は、外面と内面の間の層厚を前記基端部から前記先端部に向かって相対的に厚く形成した請求項5に記載の被搬送部材の搬送装置。
【請求項7】
前記保持部材は、軸方向に沿って長筒形状に形成し、折り畳んで縮小する請求項5または6に記載の被搬送部材の搬送装置。
【請求項8】
前記保持部材は、前記先端部が分岐している請求項5〜7のいずれか1項に記載の被搬送部材の搬送装置。
【請求項9】
前記調整部は、軸方向に沿って前記基端部と対向し径方向に沿って環状に配設し、前記媒体を前記基端部の側から前記内部に流入させる第1流路と、前記第1流路よりも径方向に沿った内方において前記基端部と対向して配設し、前記内部の前記媒体を前記基端部の側から排出させる第2流路と、を設けた請求項5〜8のいずれか1項に記載の被搬送部材の搬送装置。
【請求項10】
前記第2流路は、前記媒体を前記基端部の側から排出させつつ、少なくとも前記先端部を折り畳んで収容する請求項9に記載の被搬送部材の搬送装置。
【請求項11】
前記保持部材を回転させる回転部を、さらに有する請求項5〜10のいずれか1項に記載の被搬送部材の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被搬送部材の搬送方法および被搬送部材の搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、一対の保持部材(支持プレート)を用いて、被搬送部材(電池モジュールのようなワーク)を両側から保持して搬送する装置がある。この装置では、他の保持部材(ロケートピン)を、被搬送部材に備えられた穴に挿入して、その穴を基準とする位置決めを行っている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−201517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、被搬送部材が収容ボックスに密集して収容されていたり、被搬送部材の周囲に他の構造物が存在したりする場合がある。このような場合であっても、保持部材(支持プレート)は、被搬送部材に接近して保持するときに、収容ボックスや他の構造物との干渉を回避できることが望ましい。
【0005】
また、他の保持部材(ロケートピン)を、収容ボックスや他の構造物との干渉を避けつつ被搬送部材の穴に挿入するときに、その穴を内方から十分に係合して脱落を防止できることが望ましい。
【0006】
このように、被搬送部材が狭所に配設されている場合であっても、その被搬送部材を十分に保持して搬送することができる搬送方法および搬送装置が要望されている。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、被搬送部材を狭所において十分に保持して搬送することができる被搬送部材の搬送方法および搬送装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明に係る被搬送部材の搬送方法は、被搬送部材に備えられた穴に保持部材を係合させ、保持部材によって被搬送部材を保持して搬送する方法である。この搬送方法では、媒体が供給されることによって、穴の軸方向および当該軸方向と交差した径方向に沿ってそれぞれ伸縮する保持部材を用いる。ここで、保持部材を、内部に媒体を供給することによって、縮小させた状態から軸方向に沿って伸長させて穴に挿入し、径方向に沿って伸長させて穴の側面を押圧して穴に係合させ、被搬送部材を保持しつつ搬送する。
【0009】
上記目的を達成する本発明に係る被搬送部材の搬送装置は、保持部材と、移動部材を有している。保持部材は、被搬送部材に備えられた穴の軸方向および当該軸方向と交差した径方向に沿ってそれぞれ伸縮して穴を内方から押圧して穴に係合させ、被搬送部材を保持する。移動部材は、保持部材の基端部の側を支持し、被搬送部材を保持した保持部材を移動させる。保持部材は、基端部が開口し基端部から延在した先端部が閉塞し伸縮可能な筒形状から形成する。被搬送部材の搬送装置はさらに、基端部の側から保持部材の内部に供給する媒体の量を増減して保持部材を伸縮させる調整部を有する。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成した被搬送部材の搬送方法および搬送装置によれば、保持部材を軸方向および径方向に沿ってそれぞれ伸長させることによって、被搬送部材の穴を係合する。すなわち、保持部材を縮小させた状態において被搬送部材の穴に接近させてから、その保持部材を伸長させつつ被搬送部材の穴に挿入することができる。したがって、この被搬送部材の搬送方法および搬送装置は、被搬送部材を狭所において十分に保持して搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る電池モジュールの搬送装置を模式的に示す斜視図である。
図2】搬送装置の要部を示す原理図である。
図3】搬送装置を用いた電池モジュールの搬送方法を模式的に示す斜視図であって、(A)は搬送装置を収容容器に起立して収容されている電池モジュールに接近させている状態を示し、(B)は電池モジュールを保持し起立させたまま収容容器から取り出す状態を示し、(C)は取り出された電池モジュールを90°回転させて水平にした状態を示し、(D)は水平にされた電池モジュールをスタックする状態を示している。
図4】搬送装置を用いた電池モジュールの搬送方法に関し、保持部材を用いた電池モジュールの保持方法を示す模式図であって、(A)は保持部材の基端部aの側を電池モジュールの一端側に備えられた第1ハトメに当接させた状態を示し、(B)は保持部材の先端部を軸方向Xに沿って伸長させて第1ハトメを挿通しつつスリーブに挿入した状態を示し、(C)は保持部材の先端部をさらに軸方向Xに沿って伸長させて電池モジュールの他端側に備えられた第2ハトメから突出させた状態を示し、(D)は保持部材を径方向θに沿って伸長させて第1ハトメとスリーブおよび第2ハトメの内周面を径方向外方に押圧してそれらに係合させている状態を示している。
図5】搬送装置を用いた電池モジュールの搬送方法に関し、保持部材を電池モジュールから離間させる方法を示す模式図であって、(A)は保持部材によって第1ハトメとスリーブおよび第2ハトメを係合している状態を示し、(B)は保持部材を第1ハトメとスリーブおよび第2ハトメから抜去した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明に係る実施形態について説明する。図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面における部材の大きさや比率は、説明の都合上誇張され実際の大きさや比率とは異なる場合がある。
【0013】
搬送装置100は、被搬送部材(電池モジュール10)に備えられた穴10aに保持部材111を係合させ、その保持部材111によって電池モジュール10を保持して搬送する方法を具現化した装置である(図1図3等)。ここで、電池モジュール10は、1つ以上の単電池を積層して、フレームに収容したものである。電池モジュール10のフレームは、例えば、その四隅に穴10aを開口している。電池モジュール10は、図3(D)に示すように複数積層した後、各々の穴10aに対して通しボルトを挿通させて互いに締結することによって、組電池を構成する。電池モジュール10は、内部に収容した単電池から電力を出力したり、内部に収容した単電池を充電したりするときに、側面に備えた端子10bを用いる(図3)。
【0014】
電池モジュール10は、穴10aの端部に管状の係留部材(ハトメ20)を係留させることがある(図4)。電池モジュール10は、穴10aに円筒状のスリーブ30を挿通させて配設することがある(図4)。本実施形態において、被搬送部材に備えられた穴は、電池モジュール10の穴10aに加えて、ハトメ20の開口20aやスリーブ30の開口30aを包含するものとして説明する。
【0015】
まず、電池モジュール10の搬送装置100の構成について、図1および図2を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、実施形態に係る電池モジュール10の搬送装置100を模式的に示す斜視図である。図2は、搬送装置100の要部を示す原理図である。
【0017】
搬送装置100は、電池モジュール10を保持部材111によって保持する保持部110、保持部材111を伸縮させる調整部120、保持部材111を回転させる回転部130、保持部材111を移動させる移動部140、および調整部120と回転部130と移動部140をそれぞれ制御する制御部150を含んでいる。
【0018】
保持部110は、図1および図2に示し、電池モジュール10を保持部材111によって保持する。保持部110は、電池モジュール10の穴10aに挿入して電池モジュール10を保持する保持部材111と、複数の保持部材111を支持する支持板112を備えている。
【0019】
保持部材111は、図2に示すように、基端部111aを開口させ、かつ、基端部111aから延在した先端部111cを閉塞させて構成することによって、長筒形状に形成している。保持部材111は、内部111bに媒体(空気)を流入させることによって、軸方向Xおよび軸方向Xと交差した径方向θに沿って伸長(伸展)する。一方、保持部材111は、内部111bから空気を排出させることによって、軸方向Xおよび径方向θに沿って縮小する。保持部材111は、弾性を備えたゴムや樹脂からなる。保持部材111は、先端部111cが分岐している。保持部材111は、図2中の拡大図に示すように、外面と内面の間の層厚を基端部111aから先端部111cに向かって相対的に厚くなるように形成している。保持部材111は、図1に示すように、保持部110に例えば4つ設け、電池モジュール10の4隅に備えられた穴10aをそれぞれ係合する。
【0020】
保持部材111は、図2に示すように、調整部120によって軸方向Xに沿って伸長して、電池モジュール10の穴10aに挿入しつつ、その先端部111cを穴10aから突出させる。さらに、保持部材111は、軸方向Xと交差した径方向θに沿って伸長することによって、電池モジュール10の穴10aの側面を押圧しつつ、その先端部111cを穴10aの縁よりも径方向θに沿って大きく伸長させる。このようにして、保持部材111は、電池モジュール10を保持する。
【0021】
一方、保持部材111は、調整部120によって径方向θに沿って縮小して、電池モジュール10の穴10aの側面への押圧を解除しつつ、軸方向Xに沿って縮小させて穴10aから離間する。このようにして、保持部材111は、電池モジュール10の保持を止める。
【0022】
支持板112は、板状に形成している。支持板112は、上面112aから下面112bに向かって貫通した連通口112cを、四隅に備えている。4つの連通口112cの間隔は、電池モジュール10の穴10aの間隔と同一である。支持板112は、4つの連通口112cの間隔を手動または自動によって可変する機構(例えば2軸のステージ)を付加して、電池モジュール10の穴10aの様々な間隔に対応する構成としてもよい。支持板112は、保持部材111の基端部111aを、その下面112bの側から連通口112cに接合している。支持板112は、調整部120の外管127Mの先端を、その上面112aの側から連通口112cに接合している。支持板112は、回転アーム131の連結台131dを、その上面112aの中央に接合している。
【0023】
調整部120は、図1および図2に示し、保持部材111を伸縮させる。すなわち、調整部120は、基端部111aの側から保持部材111の内部111bに供給する空気の量を増減して保持部材111を伸縮させる。
【0024】
調整部120は、保持部材111の内部111bに空気を流入して保持部材111を伸長させる第1流路120Pと、保持部材111の内部111bから空気を排出して保持部材111を縮小させる第2流路120Qを設けている。
【0025】
第1流路120Pは、保持部材111の基端部111aの側から内部111bに向かって空気を流入させる。第1流路120Pは、図2に示すように、その下流側の端部に配置した外管127Mを、軸方向Xに沿って保持部材111の基端部111aと対向させ、径方向θに沿って環状に配設している。第1流路120Pは、パージポンプ124によって外部から吸引した空気を、外管127Mを介して保持部材111の内部111bに流入させる。
【0026】
第1配管122は、保持部材111に至る上流側に向かって、第1レギュレータ123S、パージポンプ124、マイクロバルブ125、流量圧力計126、および外管127Mの順に、それらの部材を連結している。第1配管122は、保持部110の移動に対応するように、少なくとも流量圧力計126と外管127Mの間の部分を、弾性変形するゴムチューブ等によって構成している。第1レギュレータ123Sは、エアー供給管121からパージポンプ124に供給される空気の流量を調整(増減)する。
【0027】
パージポンプ124は、給気口124aを介して外部から吸引した空気を保持部材111に向かって吐出して、その保持部材111の内部111bに流入させる。パージポンプ124は、エアー供給管121から供給される空気によって制御する。すなわち、パージポンプ124は、エアー供給管121から供給される空気を駆動源として用いる。マイクロバルブ125は、パージポンプ124から保持部材111に流入する空気の流量を調整(増減)する。流量圧力計126は、パージポンプ124から外管127Mに流入する空気の流量および圧力を測定して表示する。
【0028】
外管127Mは、円筒形状に形成し、先端部分が開口し基端部分が閉塞している。外管127Mは、その先端部分(第1流路120Pの下流側)を保持部材111の基端部111aに接合している。一方、外管127Mは、その基端部分(第1流路120Pの上流側)に第1配管122を挿通させている。外管127Mの径方向内方には、第2流路120Qの内管127Nが配設されている。パージポンプ124から外管127Mに向かって吐出される空気は、外管127Mと内管127Nの間の環状の空間を通って、保持部材111に流入する。すなわち、外管127Mと内管127Nの間から空気を吐出し、内管127Nから空気を吸引することから、これらは2重管の構造を備えている。
【0029】
第2流路120Qは、保持部材111の内部111bの空気を基端部111aの側から排出させる。第2流路120Qは、図2に示すように、その上流側の端部に配置した内管127Nを、第1流路120Pの外管127Mの径方向θに沿った内方において、保持部材111の基端部111aと対向させて配設している。第2流路120Qは、サクションポンプ129によって内管127Nを介して保持部材111から吸引した空気を、外部に排出する。
【0030】
第2配管128は、保持部材111から下流側に向かって、サクションポンプ129および第2レギュレータ123Tの順に、それらの部材を連結している。第2配管128は、保持部110の移動に対応するように、少なくとも内管127Nとサクションポンプ129の間の部分を、弾性変形するゴムチューブ等によって構成している。第2レギュレータ123Tは、エアー供給管121からサクションポンプ129に供給される空気の流量を調整(増減)する。
【0031】
サクションポンプ129は、保持部材111の内部111bから空気を吸引し、その空気を排気口129aを介して外部に排出する。サクションポンプ129は、パージポンプ124と同様に、エアー供給管121から供給される空気によって制御する。
【0032】
内管127Nは、円筒形状に形成し、先端部分および基端部分が開口している。内管127Nは、外管127Mの内部に収容している。内管127Nは、その開口した基端部分(第2流路120Qの下流側)を外管127Mの閉塞した基端部分に密着させて接合している。内管127Nは、その開口した先端部分(第2流路120Qの上流側)を外管127Mの開口した先端部分に沿って配設している。内管127Nは、その基端部分(第2流路120Qの下流側)に、外管127Mの基端部分を介して第2配管128を挿通させている。保持部材111からサクションポンプ129に向かって吸引される空気は、内管127Nを通ってサクションポンプ129の排気口129aから外部に排出される。このとき、保持部材111の少なくとも先端部111cは、内管127Nの内部に吸い込まれて収容される。
【0033】
回転部130は、図1に示し、保持部材111を回転させる。回転部130は、保持部材111を回転させる回転アーム131を備えている。
【0034】
回転アーム131は、モータ131a、ステータ用ケース131b、一対のロータ用ケース131c、連結台131d、および一対の連結支柱131eから構成している。モータ131aは、ステッピングモータからなり、ステータの両端から突出させたロータのシャフトを時計回りまたは反時計回りに沿って所定の角度(例えば90°)に回転させる。ステータ用ケース131bは、円筒形状からなり、モータ131aのステータを収容して固定している。ロータ用ケース131cは、一対から構成している。一対のロータ用ケース131cは、円筒形状からなり、ステータ用ケース131bの両端に配設され、モータ131aのロータのシャフトの両端を収容して固定している。連結台131dは、長方体形状からなり、ステータ用ケース131bと支持板112を連結している。連結支柱131eは、一対から構成している。一対の連結支柱131eは、円柱形状からなり、一対のロータ用ケース131cとロボットアーム141を連結している。
【0035】
モータ131aを回転させると、ロボットアーム141によって吊り下げられている一対の連結支柱131eおよび一対のロータ用ケース131cは不動のまま、モータ131aを収容したステータ用ケース131bおよび連結台131dが回転する。したがって、連結台131dに連結した支持板112が、連結台131dに従動して回転する。その結果、支持板112によって支持された複数の保持部材111が回転する。すなわち、回転部130は、図1中に示すように上下方向に起立している状態の保持部材111を例えば90°回転させて水平方向に沿って配置したり、水平方向に沿って配置している状態の保持部材111を例えば90°回転させて上下方向に起立させたりする。
【0036】
移動部140は、図1に示し、保持部材111を移動させる。移動部140は、保持部材111を移動させる移動部材(ロボットアーム141)を備えている。
【0037】
ロボットアーム141は、複数の支柱をそれぞれ回転自在な駆動軸によって連結して構成し、その先端部分を空間上の任意の位置に移動させる装置である。ロボットアーム141は、保持部材111の基端部111aの側を支持し、電池モジュール10を保持した保持部材111を、水平方向および垂直方向に移動させる。移動部材は、ロボットアーム141に替えて、工場の天井から吊り下げて用いるクレーンによって構成してもよい。また、移動部材は、ロボットアーム141に替えて、水平方向に加えて垂直方向に沿って駆動する3軸の直動ステージによって構成してもよい。
【0038】
制御部150は、図1に示し、調整部120、回転部130および移動部140を制御する。制御部150は、調整部120と回転部130および移動部140の各々の駆動部材の駆動を制御するコントローラ151を備えている。
【0039】
コントローラ151は、ROM、CPU、およびRAMから構成している。ROM(Read Only Memory)は、各々の駆動部材に関する制御プログラムを格納している。制御プログラムは、例えば、パージポンプ124の駆動タイミングや駆動時間に関するものである。CPU(Central Processing Unit)は、ROMに格納された制御プログラムに基づいて、各々の駆動部材を制御する。RAM(Random Access Memory)は、制御中の各々の駆動部材に関する様々なデータを一時的に記憶する。データは、例えば、流量圧力計126によって計測された保持部材111に流入させる空気の流量および圧力に関するものである。
【0040】
つぎに、搬送装置100を用いた電池モジュール10の搬送方法の概要について、図3を参照しながら説明する。
【0041】
図3は、搬送装置100を用いた電池モジュール10の搬送方法を模式的に示す斜視図である。図3(A)は、搬送装置100を収容ボックス40に起立して収容されている電池モジュール10に接近させている状態を示している。図3(B)は、電池モジュール10を保持し起立させたまま収容ボックス40から取り出す状態を示している。図3(C)は、取り出された電池モジュール10を90°回転させて水平にした状態を示している。図3(D)は、水平にされた電池モジュール10をスタックする状態を示している。
【0042】
図3(A)に示すように、収容ボックス40は、電池モジュール10を密集して収容している。各々の電池モジュール10は、その穴10aが水平方向に沿って位置するように収容されている。搬送装置100は、保持部材111を縮小させ支持板112を起立させた状態の保持部110を、電池モジュール10と収容ボックス40の間の狭い隙間や、隣り合う電池モジュール10の間の狭い隙間に対して、上方から下方に向かって差し込む。
【0043】
さらに、図3(B)に示すように、搬送装置100は、伸長させた保持部材111によって電池モジュール10の穴10aを係合した状態において、その電池モジュール10を下方から上方に向かって移動させて収容ボックス40から取り出す。すなわち、搬送装置100は、電池モジュール10を起立させた状態のまま収容ボックス40から取り出す。
【0044】
さらに、図3(C)に示すように、搬送装置100は、回転部130によって、電池モジュール10を90°回転させて水平の状態にする。電池モジュール10は、収容ボックス40の上方において回転することから、収容ボックス40と干渉しない。搬送装置100は、電池モジュール10を移動させながら回転させてもよい。
【0045】
さらに、図3(D)に示すように、搬送装置100は、水平に吊り下げている電池モジュール10を、既に複数積層されている電池モジュール10の上方に積み重ねる。電池モジュール10の積層数に応じて、図3(A)〜図3(D)に示す電池モジュール10の搬送を繰り返す。
【0046】
つぎに、保持部材111を用いた電池モジュール10の保持方法について、図4を参照しながら説明する。
【0047】
図4は、搬送装置100を用いた電池モジュール10の搬送方法に関し、保持部材111を用いた電池モジュール10の保持方法を示す模式図である。図4(A)は、保持部材111の基端部111aの側を電池モジュール10の一端側に備えられた第1ハトメ21に当接させた状態を示している。図4(B)は、保持部材111の先端部111cを軸方向Xに沿って伸長させて第1ハトメ21を挿通しつつスリーブ30に挿入した状態を示している。図4(C)は、保持部材111の先端部111cをさらに軸方向Xに沿って伸長させて電池モジュール10の他端側に備えられた第2ハトメ22から突出させた状態を示している。図4(D)は、保持部材111を径方向θに沿って伸長させて第1ハトメ21とスリーブ30および第2ハトメ22の内周面を径方向外方に押圧してそれらに係合させている状態を示している。
【0048】
図4(A)〜図4(D)に示す保持部材111を用いた電池モジュール10の保持方法は、図3(A)〜図3(B)に示す電池モジュール10の搬送工程の間に行われるものである。
【0049】
図4(A)に示すように、搬送装置100は、保持部材111を縮小させた保持部110を移動させて、保持部材111の基端部111aの側を電池モジュール10の一端側に備えられた第1ハトメ21の縁に当接させる。このとき、搬送装置100は、保持部材111の先端部111cを内管127Nの内部に吸い込んで収容している。
【0050】
さらに、図4(B)に示すように、搬送装置100は、保持部材111の基端部111aから内部111bに向かって、外管127Mと内管127Nの間から空気を流入させる。この結果、保持部材111は、基端部111aから先端部111cに向かって伸長し、その先端部111cが第1ハトメ21を挿通しつつスリーブ30の内部に挿入される。ここで、保持部材111は、外管127Mと内管127Nの間の環状の空間から注入される環状の気流によって、座屈したり偏心したりすることなく、軸方向Xに沿って直線状にスムーズに伸長する。
【0051】
さらに、図4(C)に示すように、搬送装置100は、保持部材111の基端部111aから内部111bに向かって、さらに空気を流入させる。この結果、保持部材111は、基端部111aから先端部111cに向かってさらに伸長し、その先端部111cがスリーブ30を挿通しつつ電池モジュール10の他端側に備えられた第2ハトメ22から突出する。このとき、保持部材111は、その分岐した部分が互いに離間するように変形しつつ膨張して、第2ハトメ22の縁を覆うように大きく伸長する。
【0052】
さらに、図4(D)に示すように、搬送装置100は、保持部材111の基端部111aから内部111bに向かって、さらに空気を流入させる。この結果、軸方向Xに沿って伸長を終えた保持部材111は、径方向θに沿って伸長して、第1ハトメ21とスリーブ30および第2ハトメ22の内周面を径方向外方に押圧してそれらに係合させる。さらに、保持部材111は、基端部111aと先端部111cによって、第1ハトメ21とスリーブ30および第2ハトメ22を軸方向Xに沿って挟み込むようにして係合する。
【0053】
つぎに、保持部材111を電池モジュール10から離間させる方法について、図5を参照しながら説明する。
【0054】
図5は、搬送装置100を用いた電池モジュール10の搬送方法に関し、保持部材111を電池モジュール10から離間させる方法を示す模式図である。図5(A)は、保持部材111によって第1ハトメ21とスリーブ30および第2ハトメ22を係合している状態を示している。図5(B)は、保持部材111を第1ハトメ21とスリーブ30および第2ハトメ22から抜去した状態を示している。
【0055】
図5(A)〜図5(B)に示す保持部材111を電池モジュール10から離間させる方法は、図3(A)〜図3(D)に示す電池モジュール10の搬送工程を終え、次の電池モジュール10を搬送するために新たに図3(A)の状態に移る前に行われるものである。
【0056】
図5(A)に示すように、搬送装置100は、保持部材111の基端部111aから内部111bに向かって空気を充填し続けることによって、保持部材111を用いて、第1ハトメ21とスリーブ30および第2ハトメ22を係合している。この状態は、図3(D)に示す状態に相当する。
【0057】
さらに、図5(B)に示すように、搬送装置100は、保持部材111に対する空気の充填を停止する。同時に、搬送装置100は、保持部材111の内部111bの空気を内管127Nから吸引して外部に排出する。この結果、保持部材111は、軸方向Xおよび径方向θに沿って縮小すると共に、その先端部111cが内管127Nの内部に吸い込まれて収容される。ここで、保持部材111は、軸方向Xに沿って基端部111aの中央に向かう均等な気流によって、座屈したり偏心したりすることなく、軸方向Xに沿ってスムーズに縮小する。このようにして、保持部材111は、第1ハトメ21とスリーブ30および第2ハトメ22から抜去される。
【0058】
上述した実施形態によれば、以下の構成によって作用効果を奏する。
【0059】
電池モジュール10の搬送方法は、電池モジュール10に備えられた穴10aに保持部材111を係合させ、その保持部材111によって電池モジュール10を保持して搬送する方法である。この搬送方法では、軸方向Xおよび当該軸方向Xと交差した径方向θに沿ってそれぞれ伸縮する保持部材111を用いる。ここで、保持部材111を、縮小させた状態から軸方向Xに沿って伸長させて穴10aに挿入し、径方向θに沿って伸長させて穴10aの側面を押圧して穴10aに係合させ、電池モジュール10を保持しつつ搬送する。
【0060】
電池モジュール10の搬送装置100は、保持部材111と、ロボットアーム141を有している。保持部材111は、電池モジュール10に備えられた穴10aの軸方向Xおよび当該軸方向Xと交差した径方向θに沿ってそれぞれ伸縮して穴10aを内方から押圧して穴10aに係合させ、電池モジュール10を保持する。ロボットアーム141は、保持部材111の基端部111aの側を支持し、電池モジュール10を保持した保持部材111を移動させる。
【0061】
このような構成の電池モジュール10の搬送方法および搬送装置100によれば、保持部材111を軸方向Xおよび径方向θに沿ってそれぞれ伸長させることによって、電池モジュール10の穴10aを係合する。すなわち、保持部材111を縮小させた状態において電池モジュール10の穴10aに接近させてから、その保持部材111を伸長させつつ電池モジュール10の穴10aに挿入することができる。したがって、この電池モジュール10の搬送方法および搬送装置100は、電池モジュール10を狭所において十分に保持して搬送することができる。
【0062】
さらに、この搬送方法において、穴10aは、貫通穴から構成している。ここで、保持部材111の端部(先端部111c)を、軸方向Xに沿って伸長させつつ穴10aから突出させ、かつ、穴10aの縁よりも径方向θに沿って大きく伸長させる。
【0063】
このような構成の搬送方法によれば、保持部材111の基端部111aと先端部111cによって、電池モジュール10の穴10aを挟み込むように係合することができる。すなわち、保持部材111は、電池モジュール10を強固に保持することができる。したがって、搬送中の電池モジュール10が保持部材111から脱落することを防止できる。
【0064】
特に、このような構成の搬送方法によれば、例えば保持部材111の基端部111aを上方にして、かつ、先端部111cを下方に位置させて、電池モジュール10を吊り下げるように搬送するような場合に効果的である。すなわち、保持部材111の先端部111cによって電池モジュール10の穴10aの縁を下方から引っ掛けるようにして保持することができる。したがって、電池モジュール10が、保持部材111から擦り抜けて脱落することを防止できる。
【0065】
さらに、この搬送方法において、穴10aは、貫通穴から構成している。電池モジュール10は、穴10aの端部に係留する管状のハトメ20を備えている。ここで、保持部材111の先端部111cを、軸方向Xに沿って伸長させつつハトメ20の開口20aから突出させ、かつ、開口20aの縁よりも径方向θに沿って大きく伸長させる。
【0066】
このような構成の搬送方法によれば、保持部材111の基端部111aと先端部111cによって、ハトメ20および電池モジュール10の穴10aを一体的に挟み込むように係合することができる。すなわち、保持部材111は、ハトメ20を穴10aに係留させたまま、電池モジュール10を強固に保持することができる。したがって、電池モジュール10の搬送中に、電池モジュール10に備えられたハトメ20や、電池モジュール10そのものが、保持部材111から脱落することを防止できる。
【0067】
また、このような構成の搬送方法によれば、ハトメ20が電池モジュール10の穴10aから浮き上がったり抜け落ちたりしないことから、ハトメ20が変形したり損傷したりすることを防止できる。また、ハトメ20が電池モジュール10の穴10aから抜け落ちないことから、ハトメ20が電池モジュール10(ハトメ20が抜け落ちた電池モジュール10、または抜け落ちたハトメ20の下方に載置されている他の電池モジュール10)の端子10bに接触して内部の電気部材が短絡して故障することを防止できる。したがって、電池モジュール10は、機械的および電気的な品質を維持することができる。
【0068】
また、このような構成の搬送方法によれば、ハトメ20が電池モジュール10の穴10aから浮き上がったり抜け落ちたりしないことから、ハトメ20の変形や損傷を防止すると共に、ハトメ20と電池モジュール10の穴10aの相対的な位置がずれたり、穴10aの両端に備えた一対のハトメ20の間隔がずれたり(間隔が広がる)することを防止できる。したがって、電池モジュール10を例えば複数積層したり別の場所に移動したりする場合に、変形や損傷が無く位置ずれが生じていないハトメ20を基準にすることによって、電池モジュール10の位置決めを精度良く行うことができる。このようなことから、特に、電池モジュール10を積み重ねた後、各々の穴10aに対して通しボルトを挿通させて互いに締結することによって、組電池を構成するような場合に有効である。
【0069】
さらに、この搬送方法において、電池モジュール10は、互いに離間した穴10aを複数備え、複数のうち2つ以上の穴10aをそれぞれ保持部材111によって係合する。
【0070】
このような構成の搬送方法によれば、保持部材111によって電池モジュール10の穴10aを係合して搬送するときに、電池モジュール10が1つの穴10aを軸にして回転することを防止できる。したがって、電池モジュール10と周囲の構造物との干渉や、電池モジュール10の位置(角度)ずれを防止することができる。
【0071】
また、このような構成の搬送方法によれば、保持部材111による保持によって電池モジュール10に掛かる負荷を、2つ以上の穴10aを用いて分散させることができる。すなわち、電池モジュール10の1つの穴10aに応力が集中して、その電池モジュール10が損傷することを防止できる。同様に、電池モジュール10の自重によって保持部材111に掛かる負荷を、複数の保持部材111を用いて分散させることができる。すなわち、保持部材111が損傷することを防止できる。このように、電池モジュール10および保持部材111にそれぞれ過度な負荷を掛けることなく、電池モジュール10の搬送を安定的に行うことができる。
【0072】
さらに、搬送装置100において、保持部材111は、基端部111aが開口し基端部111aから延在した先端部111cが閉塞し伸縮可能な筒形状から形成している。搬送装置100は、調整部120をさらに有している。調整部120は、基端部111aの側から保持部材111の内部111bに供給する空気の量を増減して保持部材111を伸縮させる。
【0073】
このような構成の搬送装置100によれば、非常に簡便な構成によって、保持部材111を膨張させつつ電池モジュール10の穴10aに挿入し、その穴10aを内方から押圧することによって、電池モジュール10を保持することができる。さらに、搬送装置100は、保持部材111を縮小させつつ電池モジュール10の穴10aに対する押圧を解除し、その穴10aから離間することによって、電池モジュールの保持を止めることができる。
【0074】
また、このような構成の搬送装置100によれば、保持部材111は、伸縮可能な筒形状から形成したことによって、ロボットアームのような機械的な保持機構を含む大掛かりな構成と比べて、特に径方向θに沿った大きさを抑制することができる。したがって、保持部材111は、ロボットアームのような構成を用いた場合と比べて、より細径の穴10aに挿入して係合することができる。
【0075】
また、このような構成の搬送装置100によれば、保持部材111は、電池モジュール10の穴10aの形状に応じて伸長させることができる。すなわち、保持部材111は、電池モジュール10の穴10aの内面に沿うように膨張して、電池モジュール10を保持することができる。したがって、保持部材111は、電池モジュール10の穴10aの大きさや形状が様々であっても、その穴10aに応じて伸長して保持することができる。
【0076】
また、このような構成の搬送装置100によれば、保持部材111による電池モジュール10の保持力を、保持部材111の膨張の大小によって容易に調整することができる。すなわち、電池モジュール10の穴10aの形状、電池モジュール10の自重、および保持部材111の材質等に応じて、保持部材111の内部111bに流入させる空気の量を調整することによって、適当な保持力を得ることができる。保持部材111が膨張する程、電池モジュール10の穴10aを内方から押圧する押圧力が増加することから、保持部材111によって電池モジュール10をより強固に保持することができる。
【0077】
また、このような構成の搬送装置100によれば、伸縮可能な筒形状から形成した保持部材111によって、電池モジュール10の穴10aの内面を柔軟に係合することができる。したがって、保持部材111によって、電池モジュール10の穴10aを損傷させることなく、十分に係合することができる。
【0078】
また、このような構成の搬送装置100によれば、保持部材111を縮小させた状態(穴10aの径よりも小さい状態)から伸長させつつ電池モジュール10の穴10aに挿入することから、保持部材111と電池モジュール10に位置ずれが多少生じていた場合であっても、保持部材111を電池モジュールの穴10aに挿入することができる。さらに、電池モジュール10の穴10aに挿入した保持部材111は、径方向θに対して均等に膨張した状態で安定することから、径方向θに沿って伸長し終えたときに、電池モジュール10の位置ずれをセルフアライメントのように補正することができる。すなわち、径方向θに対して均等に膨張した状態で安定する保持部材111は、位置決めピンのように機能させることができる。
【0079】
さらに、搬送装置100において、保持部材111は、外面と内面の間の層厚を基端部111aから先端部111cに向かって相対的に厚く形成している。
【0080】
このような構成の搬送装置100によれば、保持部材111は、基端部111aから先端部111cに向かってテーパーを備えていることから、相対的に層厚が厚い先端部111cよりも、相対的に層厚が薄い基端部111aの方が変形し易い。このため、保持部材111の基端部111aの側から内部111bに空気を流入させたときに、先端部111cよりも基端部111aの側が大きく変形する。すなわち、保持部材111は、内部111bに空気が流入されると、基端部111aから先に変形し始め、基端部111aから先端部111cに向かって連続的に伸長するように変形する。したがって、保持部材111は、軸方向Xに沿って伸長させて電池モジュール10の穴10aに挿入する際に、基端部111aと先端部111cの間の部分や先端部111cが先に変形して座屈するようなことがなく、基端部111aから先端部111cに向かって滑らかに伸長させることができる。
【0081】
さらに、搬送装置100において、保持部材111は、軸方向Xに沿って長筒形状に形成し、折り畳んで縮小する。
【0082】
このような構成の搬送装置100によれば、折り畳んで縮小した状態の保持部材111は、予め長筒形状に形成していることから、内部111bに空気が流入すると、軸方向Xに沿って折り返されるように速やかに伸長することができる。したがって、保持部材111は、軸方向Xに沿って伸長しつつ穴10aに十分に挿入した状態において、径方向θに沿って伸長させて穴10aの内面を押圧して穴10aに係合させることができる。すなわち、保持部材111は、例えば、軸方向Xに沿って伸長しつつ電池モジュール10の穴10aに十分に挿入する前に、径方向θに沿って伸長して穴10aの側面を強く押圧してしまい、軸方向Xに沿った伸長が途中で妨げられるようなことを防止できる。
【0083】
さらに、搬送装置100において、保持部材111は、先端部111cが分岐している。
【0084】
このような構成の搬送装置100によれば、保持部材111は、分岐した先端部111cに空気が流入すると、その分岐した部分が互いに離間するように大きく変形しつつ膨張して、軸方向Xと共に径方向θに沿って大きく伸長する。このようなことから、保持部材111は、基端部111aと、軸方向Xと共に径方向θに沿って大きく伸長した先端部111cによって、電池モジュール10の穴10aを十分に挟み込んで係合することができる。すなわち、保持部材111は、大きく膨らんだ先端部111cがアンカーとなり、穴10aの縁に引っ掛かるようにして、電池モジュール10を強固に保持することができる。したがって、搬送中の電池モジュール10が保持部材111から脱落することを防止できる。
【0085】
また、このような構成の搬送装置100によれば、保持部材111は、基端部111aと先端部111cによって、電池モジュール10の穴10aを挟み込んで係合する。したがって、搬送装置100は、保持部材111の基端部111aの位置を基準にして、電池モジュール10の位置決め精度を向上させることができる。このようなことから、特に、電池モジュール10を積み重ねた後、各々の穴10aに対して通しボルトを挿通させて互いに締結することによって、組電池を構成するような場合に有効である。
【0086】
さらに、搬送装置100において、調整部120は、第1流路120Pと、第2流路120Qを設けている。第1流路120Pは、軸方向Xに沿って基端部111aと対向し径方向θに沿って環状に配設し、空気を基端部111aの側から内部111bに流入させる。第2流路120Qは、第1流路120Pよりも径方向θに沿った内方において基端部111aと対向して配設し、内部111bの空気を基端部111aの側から排出させる。
【0087】
このような構成の搬送装置100によれば、保持部材111を伸長させる場合、第1流路120Pによって、保持部材111の基端部111aの縁から環状に空気を流入させる。したがって、保持部材111は、環状の均等な気流によって、座屈したり偏心したりすることなく、軸方向Xに沿ってスムーズに伸長させることができる。一方、保持部材111を縮小させる場合、第2流路120Qによって、保持部材111の基端部111aの中央に向かって空気を吸引する。したがって、保持部材111は、径方向外方から中央に向かう均等な気流によって、座屈したり偏心したりすることなく、軸方向Xに沿ってスムーズに縮小させることができる。
【0088】
さらに、搬送装置100において、第2流路120Qは、空気を基端部111aの側から排出させつつ、少なくとも先端部111cを折り畳んで収容する。
【0089】
このような構成の搬送装置100によれば、保持部材111は、第2流路120Qの内部に保護されることから、電池モジュール10を保持していない状態で移動しているときに、電池モジュール10や周囲の構造物との接触を回避し、それらとの接触による損傷を防止できる。特に、伸縮可能な筒形状からなり変形し易い保持部材111は、電池モジュール10を保持していない状態で移動しているときに、周囲の構造物等との接触を防止するために、第2流路120Qの内部に保護することが好ましい。
【0090】
さらに、搬送装置100において、保持部材111を回転させる回転部130を、さらに有している。
【0091】
このような構成の搬送装置100によれば、例えば、上下方向に沿って起立している電池モジュール10を回転部130によって水平方向に沿うように回転させて配置を変更することができる。同様に、搬送装置100は、水平方向に沿って平置きしている電池モジュール10を回転部130によって上下方向に沿うように回転させて配置を変更することができる。
【0092】
特に、このような構成の搬送装置100によれば、複数の電池モジュール10が収容ボックス40に密集して収容されて、かつ、電池モジュール10の穴10aが水平方向に沿って位置するように配設されている場合に効果的である。すなわち、縮小した状態の保持部材111は、電池モジュール10と収容ボックス40の隙間や、隣り合う電池モジュール10の隙間等の狭所に対して、上方から下方に向かって差し込むことができる。次に、保持部材111は、軸方向X(水平方向)および径方向θに向かって伸長して、電池モジュール10の穴10aを係合することができる。その後、保持部材111は、電池モジュール10を下方から上方に向かって移動して収容ボックス40から取り出すことができる。ここで、回転部130によって、電池モジュール10を90°回転させて水平にすることができる。水平状態にした電池モジュール10は、例えば上下方向に積み重ねるように積層することができる。
【0093】
そのほか、本発明は、特許請求の範囲に記載された構成に基づき様々な改変が可能であり、それらについても本発明の範疇である。
【0094】
例えば、被搬送部材に備えられた穴は、貫通穴に限定されない。搬送装置100は、被搬送部材に備えられた穴が所定の深さの穴であっても、その穴に保持部材111を挿入して保持することができる。
【0095】
また、被搬送部材に備えられた穴が貫通穴の場合、搬送装置100は、複数の被搬送部材に備えられた各々の穴に対して、保持部材111を連通するように挿入して係合することによって、複数の被搬送部材を同時に搬送することができる。
【0096】
また、被搬送部材に備えられた穴が複数の場合、搬送装置100は、それらの穴のいずれか1つ以上の穴に対して、保持部材111を挿入して係合することができる。
【0097】
また、保持部材111は、基端部111aから先端部111cにかけて、いわゆる蛇腹形状に形成し、全体を軸方向Xに沿って均等に縮める構成としてもよい。この場合、保持部材111は、軸方向Xに沿って折り畳んで縮小した時に、内管127Nのような配管等に収容することなく、軸方向Xに沿って圧縮するように大幅に縮小させた状態で外部に露出させておくこともできる。
【0098】
また、保持部材111は、軸方向Xを中心として径方向θ外方に向かって均等に伸長したり径方向θ内方に向かって均等に縮小したりする構成に限定されることはなく、軸方向Xを中心として径方向θに沿って偏心するように不均等に伸縮させてもよい。
【符号の説明】
【0099】
10 電池モジュール(被搬送部材)、
10a 穴、
10b 端子、
20 ハトメ(係留部材)、
20a 開口、
21 第1ハトメ、
22 第2ハトメ、
30 スリーブ、
30a 開口、
40 収容ボックス、
100 搬送装置、
110 保持部、
111 保持部材、
111a 基端部、
111b 内部、
111c 先端部、
112 支持板、
112a 上面、
112b 下面、
112c 連通口、
120 調整部、
120P 第1流路、
120Q 第2流路、
121 エアー供給管、
122 第1配管、
123S 第1レギュレータ、
123T 第2レギュレータ、
124 パージポンプ、
124a 給気口、
125 マイクロバルブ、
126 流量圧力計、
127M 外管、
127N 内管、
128 第2配管、
129 サクションポンプ、
129a 排気口、
130 回転部、
131 回転アーム、
131a モータ、
131b ステータ用ケース、
131c ロータ用ケース、
131d 連結台、
131e 連結支柱、
140 移動部、
141 ロボットアーム(移動部材)、
150 制御部、
151 コントローラ、
X 軸方向、
θ 径方向。
図1
図2
図3
図4
図5