【実施例1】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ここではエンジン作業機の一例として刈払機1を用いて説明する。なお、以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、前後左右、上下の方向は図中に示す方向であるとして説明する。
【0014】
図1は本発明の実施例に係る刈払機1の外観全体を示す斜視図である。刈払機1は、動力部10に小型の2サイクルエンジンを搭載する。動力部10から前方側には操作棹2が延びるように接続され、操作棹2には後述する駆動軸が通される。この駆動軸を操作棹2の一端側に設けたエンジンにて回転させることで、操作棹2の他端側に設けた回転刃3を回転させる。回転刃3の近傍には、刈り払った草の飛散を防ぐための飛散防御カバー4が設けられる。刈払機1は図示しない肩掛け用吊りベルト等を用いて携帯されるもので、操作棹2の長手中央部付近に作業者が操作するための正面視略U字状を呈するハンドル5が取り付けられる。ハンドル5の両端部は、グリップ部6a、6bが設けられ、グリップ部6a側にはスロットルレバー7が設けられる。作業者はスロットルレバー7を操作することによってエンジンの回転を制御する。スロットルレバー7の操作は、ワイヤー8によって動力部10の気化器(後述)に伝達される。
【0015】
図2は、
図1の動力部10の正面図であって前方側から見た図である。動力部10においてはエンジンが合成樹脂製のトップカバー20とファンケース22によってほぼ全体が覆われる。エンジン本体の左側には、シリンダ(後述)の吸気ポートに連結されるインシュレータを介して気化器55が設けられ、気化器55の外側には吸入する空気を濾過するエアクリーナの格納空間を構成するエアクリーナカバー56が設けられる。エンジン本体の右側には後述するマフラーが設けられ、マフラーの側面及びエンジンの上側はトップカバー20により覆われる。エンジン本体のクランクケース(後述)の下側には、燃料を溜めるための燃料タンク27が装着され、燃料タンク27の下側には脚部28が設けられる。燃料タンク27から気化器55に燃料が供給され、図示しないエアクリーナを介して気化器55に導入された空気との混合気がエンジン本体に供給される。エアクリーナカバー56の下側には始動時に燃料タンク27から燃料を吸い上げて気化器55に送るためのプライマリポンプ57が設けられる。本実施例のエンジン本体は、シリンダの一方側(左側)から外気が吸気されて、他方側(右側)に排気ガスが排出されるような吸排気方向となる。
【0016】
図3は
図2のA−A部の断面図であって、動力部10におけるクランク軸を通る縦断面図である。動力部10は、エンジン本体11に補機類を取り付けてこれらをハウジング(ファンケース22とトップカバー20)によって収容するように構成される。エンジンは、クランクケース16とシリンダ30を含むエンジン本体11に、気化器55(
図2参照)と、後述するマフラー60(
図4参照)と、冷却ファン23と、遠心クラッチ装置26等を取り付けたものである。クランクケース16の内部にはクランク15が収容され、コンロッド13によりクランク15とピストン12が接続される。ピストン12はシリンダ30の円筒空間内で上下方向に往復移動する。ここで、クランクケース16から突出するクランク軸14の中心線たる軸線A1は、操作棹2の中心軸の延長線と同軸となるように配置される。エンジン本体11は、ピストン12の往復方向が鉛直方向となるように、シリンダ30が縦置きとされるが、縦置きだけに限定されるものではない。シリンダ30は、鉄またはアルミニウム合金の鋳造品によって製造され、混合気を内部に流入させる筒状の部品(円筒部30a)を構成するものであって、所定のシリンダーボア(内径)と、所定のピストンストローク(行程)を有する。シリンダ30は、空気によって冷却されるため円筒部分の外側表面から径方向外側に延在するように複数の放熱フィンが形成される。シリンダ30の円筒部分と放熱フィンは鋳造時に一体に成形され、必要に応じて削りだし加工がされる。
【0017】
クランク軸14の前方側には、冷却ファン23及び遠心クラッチ装置26が固定される。冷却ファン23はマグネトロータの役割をも兼ねるようにアルミニウム合金によりより一体に製造され、クランク軸14と同期して回転する。クランク軸14が高速で回転すると冷却ファン23も回転し、冷却ファン23によってファンケース22の吸入孔(図示せず)から外気が吸引されて冷却風が生成される。冷却風は、ファンケース22とトップカバー20の内部空間内を所定方向(後方側)に流れることによって、シリンダ30の放熱フィンから熱を奪って冷却し、その後、トップカバー20の後方側のスリット部20aから外部に排出される。冷却ファン23の外周側の一部には、発電用の磁石(図示せず)が固定され、その磁石がイグニッションコイル24の近傍を通過することにより、イグニッションコイル24に電力を発生させる。この電力は、イグニッションコイル24で昇圧され、プラグキャップ25(
図2参照)で覆われた点火プラグ(図示せず)に適正な点火タイミングで供給されることによって、点火プラグ(図示せず)による混合気への点火が実行される。
【0018】
クランク軸14の前方の遠心クラッチ装置26には、伝達軸9が接続される。遠心クラッチ装置26の一部は軸受29によってファンケース22に対して回転可能なように軸支される。遠心クラッチ装置26は、高速回転時にクラッチ爪が外側に移動してクラッチドラムの内面と接触することにより動力の伝達を行うようにした公知のクラッチ機構である。遠心クラッチ装置26は、エンジン本体11の回転が所定の回転数以上になるとクラッチ爪からクラッチドラム側への動力伝達が行われて、操作棹2内に同軸に設けられた伝達軸9に動力が伝達される。クランク軸14の後方には、エンジンを始動させるための始動装置58が装着される。始動装置58としては、例えばリコイルスタータを用い、作業者がスタータハンドル59(
図6参照)を引くことによりエンジンを始動させる。エンジン本体11の全体構成は、通常用いられているエンジン作業機におけるものと基本的に同様であるが、本実施例では、2サイクルエンジンの冷却に関わる構造、特にシリンダ30の放熱フィンの形状に特徴を有する。この点について以下に説明する。
【0019】
図4は、
図1の動力部10のシリンダ30とマフラー60を示す正面図である。シリンダ30は、ピストン12(
図3参照)が往復動する円筒部分(円筒部30a)と、円筒部分に接続される排気通路42が形成され、円筒部30aの外側には多数の放熱用のフィンが形成される。また、シリンダ30にはクランクケース16(
図3参照)に接続される吸気通路41も形成される。シリンダ30の円筒部30aの下側はフランジ状に広がる取付部38が形成される。円筒部30aの外側であって、排気通路42よりも上側部分(図示しない点火プラグに近い側)には、水平方向に延在する7層の放熱フィン31〜37が設けられる。放熱フィン31〜37はほぼ等間隔で平行になるように配置され、クランクケース16(
図3参照)に近い側(下側)から5層分の放熱フィン31〜35が上面視でほぼ同じ外縁形状に形成される。上から2番目の放熱フィン36は、図示しない点火プラグの取り付けのために一端側(左側)が短くカットされた形状とされる。一番上の放熱フィン37は、半球状の燃焼室の頂点部分に対応するため、他の放熱フィン31〜36に比べて上面視で小さめの形状とされる。
【0020】
放熱フィン31〜36のマフラー60に近い側には、上下方向に連続するように形成された第二放熱フィン45と第三放熱フィン46が形成される。第二放熱フィン45は放熱フィン36の下面から放熱フィン35〜32を介して放熱フィン31の上面に接続された上、さらに放熱フィン31の下面から下方に延びて排気通路42の上面に接続される。また、排気通路42の下面からさらに下方側に延長され、補助放熱フィン48に接続される。一方、第三放熱フィン46は放熱フィン36の下面から放熱フィン35〜32を介して放熱フィン31の上面に接続される。放熱フィン31〜37、第二放熱フィン45及び第三放熱フィン46は、シリンダ30の鋳造時に一体に製造されるものである。
【0021】
水平方向に延びる第一放熱フィン(放熱フィン31〜36)に対して、垂直方向に延びるように配置される第二放熱フィン45と第三放熱フィン46は、シリンダ30の円筒部30aとマフラー60の間となる位置、つまり、第二放熱フィン45及び第三放熱フィン46は円筒部30aの軸線方向から見て排気通路42と重複する位置に設けられる。ここでは、第二放熱フィン45と第三放熱フィン46は、その面が円筒部30aの最近接点における法線方向と直交し、かつ、放熱フィン31〜36とも直交する方向に伸びるように形成される。第二放熱フィン45の下側部分、つまり放熱フィン31の下側は、矢印45bのように第二放熱フィン45が放熱フィン31と排気通路42を接続するように延長される。さらに第二放熱フィン45の延長部は、矢印45cのように排気通路42よりも下側にまで延びる位置まで設けられる。このように第二放熱フィン45を排気通路42と交差する位置にまで延長したことによって、結果的に排気通路42の外周面に放熱フィンを設けたことになり、排気通路42部分の放熱効果を高めることができる。
【0022】
第三放熱フィン46は、上側が矢印46aのように放熱フィン36の下面に接続され、下側は矢印46bのように放熱フィン31の上面に接続される。但し、第三放熱フィン46は放熱フィン31の下側部分には形成されない。これは、放熱フィン31の右側端部が排気通路42のフランジ部42aに接続されるためである。本実施例では更に、排気通路42のフランジ部42aの下側部分からシリンダ30の取付部38に向けて斜めに配置された補助放熱フィン48が形成される。第二放熱フィン45の下端部は矢印45cのように補助放熱フィン48と接続される。尚、補助放熱フィン48の風上側から風下側の長さは、第二放熱フィン45の長さと同等か、または短くすれば良い。
【0023】
排気通路42のマフラー60側の端部には、導風板63を挟んでマフラー60がネジ(図示せず)により固定される。マフラー60にはネジを貫通させて、マフラー60のシリンダへのネジ締めを可能とするための円筒形のネジ取付け孔61が2カ所設けられる。マフラー60においては、ネジ取付け孔61よりも下方側に排気出口を形成した排気プレート62が取り付けられる。排気通路42のマフラー60側の端部には、マフラー60のネジ締めによる取り付け台座となるフランジ部42aが形成される。また、一番下側の放熱フィン31のマフラー60側の辺部の一部がフランジ部42aに接続される。
【0024】
以上のようにシリンダ30には冷却効果を向上させために第二放熱フィン45、第三放熱フィン46、補助放熱フィン48による工夫が成されているが、さらに、放熱フィン31〜36の風上側の辺部には、直方体状の段差状の窪み36aが設けられる。これは放熱フィン31〜36の一部に、風の流れを乱して乱流を起こすことにより冷却風CA1、CA2が良好に放熱フィンに当たるようにしたものである。窪み36aは放熱フィン36の下面かつ前方面の境界部分に設けられた直方体状の窪みであり、窪みの高さは放熱フィンの板厚tの半分程度で、窪みの深さ(前後方向の長さ)も板厚tの半分程度とし、窪みの幅(左右方向の長さ)は板厚tの1〜3倍程度とすれば良い。
図4では符号を付していないが、放熱フィン31〜35にも同様の直方体状の窪みが形成される。窪みを設ける左右方向位置は、
図4のように前面から見た際に窪み(36a等)が第二放熱フィン45と同じ位置、またはその近傍位置になるようにすると良い。さらにシリンダ30の上側であって点火プラグ(図示せず)の近傍には、冷却風の流れを整えるための整流フィン44a、44bが設けられる。
【0025】
図5はシリンダ30の上面図である。取付部38の四つ角付近には図示しないボルトを通すための4つのネジ穴38a〜38dが設けられる。また放熱フィン33〜35付近の4つの角部付近は、図示しないボルトを通すことができるように角部を四角く落とした形状とされる。逆の言い方をすると放熱フィン31〜35は、ボルトを通す位置を結んだ四角形部分を越えて、4つの辺部を径方向外側に伸ばすようにしている。放熱フィン31〜35は上面視で同一の外縁形状とされ、風上側から風下側に見た長さ(クランク軸と同方向の長さ)たる幅Wに対して、マフラー60と対面する辺部の幅W1は十分短くなる。また、フランジ部42aの前後方向の幅W2との関係は、W1<W2<Wの関係となる。放熱フィン33〜35の前方側には、イグニッションコイル24を固定するための突起39が形成される。突起39と放熱フィン33〜35は鋳造時に一体成形にて形成されるものであり、突起39を設けるか否か、又は、設ける場合のその位置をどこにするかは任意であり必ずしも
図5で示す位置になければならない訳ではない。
【0026】
シリンダ30の燃焼室上面には図示しない点火プラグを装着するためのプラグ孔43が形成される。点火プラグはシリンダ30の円筒部分の中心軸線に対して所定の角度を有する様に斜めに取り付けられる。取り付けられる点火プラグに最も近い放熱フィン35の上面には整流フィン44a、44bが設けられる。同一形状の整流フィン44a、44bはくさび形であって、冷却風の風上側で横幅が狭く風下側で広くなり、また高さも風下側から風上側に向けて徐々に高くなるように構成される。これらの整流フィン44a、44bはシリンダ30の鋳造時に一緒に製造される。整流フィン44a、44bの後端部は、シリンダ30の鋳造の型枠の分割面とほぼ同じ位置に形成される。このように整流フィン44a、44bを設けることによって、点火プラグ付近の整流効果を高めて点火プラグ付近の冷却風の流れを理想的にし、点火プラグが効果的に冷却されるようにした。整流フィン44a、44bの最大高さは、
図4からわかるように放熱フィン35の板厚tに対して整流フィン44a、44bの高さhが0.5〜1.5倍程度、好ましくは0.5〜1倍程度とすると良い。
【0027】
図6は
図3のB−B部の断面図である。クランク軸14(
図3参照)はここでは前後方向に延びるように配置され、クランク軸14の前方側には冷却ファン23が固定される。冷却ファン23の上側にはイグニッションコイル24が設けられる。冷却ファン23で発生される冷却風は、後述するトップカバー20の内壁面に案内されてシリンダ30側に導かれ、シリンダ30の放熱フィン31〜36の間の空間、又は、放熱フィン36よりも上側部分を通過して、トップカバー20の後方側に形成されたスリット部20aより外部に排出される。放熱フィン31〜36の間の空間を流れる冷却風は、一部が冷却風CA1、CA2としてシリンダ30の円筒部30aのマフラー60側を後方に流れ、一部が冷却風CA3として円筒部30aの気化器側を流れる。本実施例では、放熱フィン32のマフラー60と面する側に、軸線A1と平行かつ鉛直方向に延びる第二放熱フィン45と第三放熱フィン46を形成した。このように所定間隔を隔てて平行に配置された第二放熱フィン45と第三放熱フィン46を設けた事によって冷却風CA1、CA2が効果的に後方側に案内される。
【0028】
図7は
図1の動力部10のトップカバー20の内側形状を示すための斜視図である。本実施例では、トップカバー20は、中央付近に仕切り板20eが設けられ、一方側の空間がシリンダ30を収容するシリンダ室21aとなり、他方側の空間がマフラー60を収容するマフラー室21bとなる。シリンダ室21aの後方側には、冷却風CA1〜CA3を排出するための複数の風窓たるスリット部20aが設けられ、マフラー室21bの後方側には排気ガスを大気中に放出するための開口たる排気出口20bが設けられる。本実施例ではシリンダ室21aとマフラー室21bを一つのトップカバー20により覆うように構成したが、シリンダ室21aを独立したシリンダカバーで覆い、マフラー60側を独立したマフラーカバーにて覆うように構成しても良い。トップカバー20の内側にはさらに湾曲部20dを有するリブ20cが設けられ、そのリブ20cの先端がシリンダ30の放熱フィン31〜37に向けられるようにした。このリブ20cの湾曲部20dにより、冷却風がシリンダ30の円筒部30aに向けて滑らかに送り込まれることから、風路抵抗が少なくなり、より多くの冷却風CA1〜CA3をシリンダ30の円筒部30aの外周面と放熱フィン31〜37の外縁部により囲まれる領域に向けて送り込むことができる。また、本実施例では、シリンダ30とマフラー60との間に、冷却ファン23からの冷却風を下流側に導く導風板63が配置されるため、円筒部30aの外周面と第二放熱フィン45の間の空間、及び第二放熱フィン45と第三放熱フィン46の間の空間に冷却風CA1、CA2が多量に通過するようにガイドすることができる。
【0029】
図8は本発明の
図6のシリンダ30とマフラー60付近の部分拡大図である。本実施例のシリンダ30の形状を説明する前に
図11を用いて従来のエンジンにおけるシリンダについて説明する。
図11は従来のエンジン作業機のシリンダの形状を説明するための図である。
図11のシリンダと
図6、8のシリンダ30との違いは第三放熱フィン46の有無であり、従来のシリンダでは第二放熱フィン45は設けられるものの第三放熱フィン46は設けられない。シリンダの円筒部30aから後方側であって放熱フィン32の部分には、成形時に金型から押し出すための突起30bが設けられるが、放熱フィン31、33〜36の近傍には突起30bは設けられないので注意されたい。従来のシリンダでは、例えば放熱フィン32と33の間の空間においては、冷却ファン23によって生成された冷却風の一部がシリンダ30の円筒部30aの外側と気化器55(
図2参照)の間を通り、冷却風CA3として流れる。残りの空気は上面視で円筒部30aに対して時計回りに沿って流れる。時計回りに沿って流れる空気の一部は、冷却風CA1に示すように第二放熱フィン45と円筒部30aの外壁に間を流れ、残りの空気は冷却風CA2に示すように第二放熱フィン45と導風板63との間の空間を流れる。ここで導風板63はシリンダ30のマフラー60側の辺部において近接するように僅かな距離を隔てるように配置されるので、放熱フィン32と33の間に流れる冷却風CA2は水平かつ後方側に流れることになる。
【0030】
第二放熱フィン45のマフラー60側(反円筒部側)を通る冷却風CA2は、矢印Dの領域が比較的距離があるため、シリンダ30の後方に向かうにつれて反円筒部側へと徐々に押しやられる。その結果、第二放熱フィン45の反円筒部側の壁面、特に点線49で囲む付近において冷却風CA2の第二放熱フィン45に対する剥離現象が生じることがわかった。この結果、冷却風CA2が第二放熱フィン45の反円筒部側の壁面に当たりにくくなり、第二放熱フィン45が放熱板として効果的に活用されないことになる。この現象はシリンダ30の放熱フィン31〜36の大きさ、冷却風の風量、第二放熱フィン45を設ける位置など様々な要因により変化する。
【0031】
そこで本実施例においては、
図8に示すように第二放熱フィン45とマフラー60との間に更なる第三放熱フィン46を設けるようにした。第三放熱フィン46を設けるのは
図10の点線49付近における第二放熱フィン45との剥離現象を抑制して、冷却風CA2を第二放熱フィン45の反円筒部側の面にも効果的に当てるためである。そのため。第三放熱フィン46の前端部が第二放熱フィン45の前端部と同じ位置またはほぼ同じ位置になるように配置される。このように本実施例では第二放熱フィン45の反円筒部側に、第三放熱フィン46を設けたことにより冷却風CA2は、第三放熱フィン46からシリンダ側へと押し返され、第二放熱フィン45の反円筒部側側面に効果的に当たるようになり、第二放熱フィン45の内側面と外側面の両方を有効に冷却に使用できるようになった。第二放熱フィン45と第三放熱フィン46の表面に沿って流れる冷却風CA1、CA2は、その際に第二放熱フィン45と第三放熱フィン46を効果的に冷却させることができるので、全体としてみたシリンダ30の冷却効果を一層高めることができた。また、第二放熱フィン45と第三放熱フィン46は、シリンダ30の円筒部30aとマフラー60の間に配置されており、上面視において排気通路42と重なる位置に配置されるので、高温になりやすいシリンダ30のマフラー60側の壁面や排気通路42付近を効果的に冷却できるようになった。
【0032】
また、冷却風CA2の下流側において、第三放熱フィン46は、第二放熱フィン45よりも短くなるよう構成した。つまり、第三放熱フィン46の長さL2が第二放熱フィンの長さL1よりも短い上に、第三放熱フィン46の冷却風の下流側端部が、第二放熱フィン45の下流側端部より上流側で途切れるようにした。発明者らの実験によると、第三放熱フィン46の上流側の位置を第二放熱フィン45と合わせれば、L2の長さはL1の0.5〜1倍程度で良いことがわかった。これにより、第三放熱フィン46による第二放熱フィン45の冷却性能改善効果を損なうことなく、より冷却に有利な円筒部30aの外壁近傍において放熱フィンの表面積を拡大でき、高い冷却性能が得られる。
【0033】
第二放熱フィン45および第三放熱フィン46は、放熱フィン31から36の間のそれぞれにおいて
図8と同形状になるように形成される。
図8では放熱フィン32と33の間の冷却風CA1〜CA3の流れを説明したが、放熱フィン31と32の間、33と34の間、34と35の空間においても
図8で示す冷却風CA1〜CA3と同じように流れる。第二放熱フィン45は放熱フィン31の下面を通過して下側にまで延び、排気通路42とも交差してさらに排気通路42の下方まで伸長する。この結果、排気通路42の中間部分において排気通路42の排気方向と直交する放熱フィンが形成されることになるので、燃焼ガス通過のために特に高温となる排気通路42の放熱を補助することができ、マフラー60からシリンダ30への熱の伝導を防止できる。尚、第三放熱フィン46は、冷却風CA2の上流側から下流側において、第二放熱フィン45に向かって僅かに傾斜するように配置している。これは成形加工の型枠形状により僅かに傾斜するようになるものであるが、この傾きをさらに大きく形成すれば冷却風CA3を、より強く第二放熱フィン45の反円筒部側壁面へと押し返すように構成することも可能であり、第二放熱フィン45によるシリンダ30の冷却を促進できる。
【0034】
図9はシリンダ30の第二放熱フィン45、第三放熱フィン46付近の部分拡大図である。隣接する放熱フィン31〜36のマフラー側の辺(端部)は、その位置が軸方向視でそろえられている。本実施例ではこれらの辺(端部)を結んだ仮想面が、第三放熱フィン46の外側の面(反円筒部側の面)と一致するようにした。しかしながら、第三放熱フィン46の外側の面が仮想面よりも内側(円筒部30aに近い側)になるように配置しても良い。ここで、第二放熱フィン45と円筒部30aの距離51は、第二放熱フィン45と第三放熱フィン46の距離52よりも小さくなるように設定した。この結果、放熱フィン31〜35と第二放熱フィン45と円筒部30aによって構成される風路の最小風路面積が、放熱フィン31〜35と第二放熱フィン45と第三放熱フィン46によって形成される風路の最小断面積よりも小さくなる。言い換えれば、第二放熱フィン45を、シリンダ30の円筒部30a側に近接させて設けることで、円筒部30aに生じた熱を第二放熱フィン45から効果的に放熱することができるとともに、先述の通り第三放熱フィン46によって剥離現象を抑制して第二放熱フィン45の流路方向の反円筒部側の側面を好適に冷却できるようにしている。さらに、第二放熱フィン45と第三放熱フィン46との間隔を大きくとることにより,導入される冷却風の風量を確保し、第二放熱フィン45の冷却効果を向上させている。尚、矢印52の長さは、第二放熱フィン45とシリンダ30の円筒部30aとの最短距離が、隣接する第一放熱フィンの間隔より大きくなるように設定されるようにしており、シリンダ30の円筒部30aの外壁部分の近い側に流れる空気を十分に確保できるようになっている。