(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
<成形体用シート>
本発明の成形体用シートは、セルロース繊維と繊維分散用樹脂と酸化チタン系粒子とを含有する。
本発明の成形体用シートは、マスターバッチとして用いてもよい。マスターバッチとは、セルロース繊維を高濃度で含有する樹脂組成物であって、粉砕されて、セルロース繊維強化樹脂の成形体を得る際にベース樹脂に配合される。
成形体用シートにおいて、セルロース繊維と繊維分散用樹脂と酸化チタン系粒子の合計の含有割合は、46質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。また、セルロース繊維と繊維分散用樹脂と酸化チタン系粒子の合計の含有割合が100質量%であってもよい。
【0008】
(セルロース繊維)
セルロース繊維の種類としては特に限定されず、木材から製造された木材系セルロース繊維、草本類から製造された非木材系セルロース繊維等が挙げられる。
木材系セルロース繊維としては、針葉樹、広葉樹をクラフト法、サルファイト法、ソーダ法、ポリサルファイド法などで蒸解した化学パルプ繊維、レファイナー、グラインダーなどの機械力によってパルプ化した機械パルプ繊維、薬品による前処理の後、機械力によってパルプ化したセミケミカルパルプ繊維、或いは古紙パルプ繊維などが挙げられる。これらは、各々、未晒(漂白前)もしくは晒(漂白後)の状態で使用することができる。例えば、化学パルプ繊維としては、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)等を使用することができる。
非木材系セルロース繊維としては、例えば、綿、マニラ麻、亜麻、藁、竹、バガス、ケナフなどを木材パルプと同様の方法でパルプ化した繊維が挙げられる。
前記セルロース繊維は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0009】
セルロース繊維の中でも、後述の方法により測定された平均繊維幅が2〜15000nmで、I型(平行鎖)の結晶構造のセルロース分子の集合体である微細セルロース繊維が好ましい。セルロース繊維の平均繊維幅が15000nm以下であると、後述する成形体の強度及び剛性をより向上させることができる。一方、セルロース繊維の平均繊維幅が2nm以上であれば、セルロース分子として水に溶解することを抑制できるため、セルロース繊維としての物性(強度や剛性、寸法安定性)を容易に発現できる。
また、セルロース繊維の平均繊維幅は2〜12000nmが好ましく、20〜12000nmがより好ましい。
セルロース繊維の平均繊維幅が上記範囲内にある場合、全てのセルロース繊維が上記繊維幅の範囲内である必要はなく、一部のセルロース繊維は繊維幅が上限を超えてもよいし、下限未満であってもよい。すなわち、太い繊維や細い繊維が混在してもよい。
【0010】
平均繊維幅の測定は以下のようにして行う。濃度0.05〜0.1質量%のセルロース繊維の水系懸濁液を調製し、該懸濁液を適宜希釈してから親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストして電子顕微鏡観察用試料とする。構成する繊維の幅に応じた倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。ただし、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を目視で読み取る。こうして少なくとも重なっていない画像を3組以上観察し、各々の画像に対して、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を読み取る。このようにして少なくとも20本×2×3=120本の繊維幅を読み取る。本発明における繊維幅は、このように読み取った繊維幅の平均値である。
【0011】
また、セルロース繊維は、後述の方法により測定される平均繊維長が0.01〜3mmであることが好ましく、0.05〜1.5mmであることがより好ましく、0.1〜0.7mmがさらに好ましい。セルロース繊維の平均繊維長が前記下限値以上であれば、セルロース繊維による補強効果がより高くなり、前記上限値以下であれば、セルロース繊維の樹脂中の分散不良を防止でき、成形体においてセルロース繊維の強化繊維としての機能を充分に発揮することができる。
平均繊維長は、カヤーニオートメーション社のカヤーニ繊維長測定器(FS−200形)を用い、長さ加重平均繊維長を測定することにより求める。
また、微細化を進めていくと、幅が細く、長さが短い繊維は、カヤーニ繊維長測定器では測定できなくなる場合がある。そこで、繊維の長さに応じて光学顕微鏡、走査型顕微鏡(SEM)、透過電子顕微鏡(TEM)を適宜選択し、繊維長の観察・測定を行う。繊維長は、得られた写真から20本以上を選択し、測定する。
【0012】
セルロース繊維のアスペクト比(長さ/幅)は20〜10000の範囲であることが好ましく、30〜5000の範囲であることがより好ましく、50〜3000の範囲であることがさらに好ましい。アスペクト比が前記上限値未満であると、セルロース繊維が強化繊維として機能しにくくなる傾向にあり、アスペクト比が10000を超えると、作製が困難であり、また、セルロース繊維をスラリー化した際、その粘度が高くなりすぎることがある。また、アスペクト比が20〜1000の範囲であると、後述するように成形体用シートを抄紙によって製造する場合、抄紙時の濾水性低下を抑制できる。
アスペクト比は、カヤーニオートメーション社のカヤーニ繊維長測定器(FS−200形)を用いて求めた平均繊維長測定値と電子顕微鏡観察により求めた平均繊維幅とにより求めた値である。
【0013】
前記好ましい平均繊維幅、平均繊維長及びアスペクト比のセルロース繊維は、パルプ等を、酸化処理や酵素処理等の化学的処理、及び、粉砕処理等の機械的処理の少なくとも一方を施すことにより作製される。
【0014】
セルロース繊維の含有割合は、成形体用シート100質量%に対して40〜94質量%であり、45〜90質量%であることが好ましく、50〜85質量%であることがより好ましい。セルロース繊維の含有割合が前記下限値以上であることにより、後述する成形体におけるセルロース繊維含有割合を充分な割合にすることが容易になり、強度及び剛性を容易に向上させることができる。一方、セルロース繊維の含有割合が前記上限値以下であることにより、セルロース繊維の分散性をより向上させることができる。
【0015】
(繊維分散用樹脂)
繊維分散用樹脂は、成形体を製造する際に、マトリックス樹脂中のセルロース繊維の分散性を高める役割を果たす。
繊維分散用樹脂としては特に限定されず、例えば、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、プロピレン−αオレフィン共重合体等)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリウレタン、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物等が挙げられる。これら繊維分散用樹脂は1種単独でもよいし、2種併用でもよい。
上記のように、繊維分散用樹脂は、マトリックス樹脂中のセルロース樹脂の分散性を高めるものであるから、別途配合するベース樹脂に応じて適宜選択され、具体的には、別途配合するベース樹脂と同じ単量体単位を有する樹脂が好ましい。例えば、別途配合するベース樹脂がポリプロピレンの場合には、繊維分散用樹脂として、プロピレン単位を有する樹脂(ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−αオレフィン共重合体)を選択することが好ましく、別途配合するベース樹脂がポリスチレンの場合には、繊維分散用樹脂として、スチレン単位を有する樹脂(ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体)を選択することが好ましい。
【0016】
繊維分散用樹脂の含有割合は、成形体用シート100質量%に対して5〜59質量%であり、10〜55質量%であることが好ましく、15〜50質量%であることがより好ましい。繊維分散用樹脂の含有割合が前記下限値以上であることにより、セルロース繊維の分散性をより向上させることができ、前記上限値以下であることにより、セルロース繊維の含有量が少なくなることによる機械的物性低下を防止できる。
【0017】
(酸化チタン系粒子)
酸化チタン系粒子は、ルチル型酸化チタンを主成分とする粒子である。ここで、主成分とは、含有割合が80質量%以上のことである。ルチル型酸化チタンの含有割合が80質量%未満であると、後述する成形体において色味の改善が不充分になる。また、酸化チタン系粒子におけるルチル型酸化チタン粒子の含有割合は、色味改善効果をより高める点では、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることがさらに好ましい。
具体的に酸化チタン系粒子は、ルチル型酸化チタン以外の成分を含んでもよいし、ルチル型酸化チタンのみからなってもよい。
【0018】
酸化チタン系粒子がルチル型酸化チタン以外の成分を含む場合、ルチル型酸化チタン以外の成分として、例えば、他の金属の酸化物(例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム等)、カップリング剤(シランカップリング剤、アルミネート系カップリング剤等)が含まれてもよい。
ルチル型酸化チタン以外の成分は、ルチル型酸化チタン粒子の表面を被覆する成分であることが好ましい。他の金属の酸化物でルチル型酸化チタン粒子を被覆した場合には、酸化チタンが持つ酸化活性を抑制でき、成形体の色味をより改善できる。カップリング剤でルチル型酸化チタン粒子を被覆した場合には、ルチル型酸化チタン粒子の樹脂中への分散性を向上させることができる。
【0019】
ルチル型酸化チタン以外の成分は1種でもよいし、2種以上でもよい。ルチル型酸化チタン粒子が2種以上である場合には、ルチル型酸化チタン粒子の表面に、ルチル型酸化チタン以外の各成分の層が2層以上形成されてもよい。例えば、酸化チタン系粒子がルチル型酸化チタンの他に酸化アルミニウム及び酸化ケイ素を含む場合には、ルチル型酸化チタン粒子の表面に酸化ケイ素層が形成され、その酸化ケイ素層より外側に酸化アルミニウム層が形成された複合粒子でもよい。ルチル型酸化チタンは酸化活性が低いものであるが、酸化ケイ素層及び酸化アルミニウム層で被覆すれば、酸化活性がより低くなるため、成形体の色味の改善効果がより一層高くなる。
【0020】
酸化チタン系粒子の質量平均粒子径は0.3μm以下であることが好ましく、0.28μm以下であることがより好ましく、0.25μm以下であることがさらに好ましい。酸化チタン系粒子の質量平均粒子径が前記下限値以上であれば、成形体において酸化チタン系粒子の含有割合を少なくしても色味を充分に改善できる。
一方、酸化チタン系粒子の質量平均粒子径は、酸化チタン系粒子の入手容易性及び取り扱い性の点から、0.05μm以上であることが好ましく、0.08μm以上であることがより好ましく、0.1μm以上であることがさらに好ましい。
本発明における酸化チタン系粒子の質量平均粒子径は、酸化チタン系粒子を撮影した透過型電子顕微鏡の画像において、50個以上の粒子について各々の粒子径を測定し、それらの値を平均した平均値である。
【0021】
酸化チタン系粒子の含有割合は、成形体用シート100質量%に対して1〜5質量%であることが好ましく、1.2〜4質量%であることがより好ましく、1.5〜3質量%であることがさらに好ましい。酸化チタン系粒子の含有割合が前記下限値以上であることにより、後述する成形体における酸化チタン系粒子含有割合を充分な割合にすることが容易になり、色味を容易に改善できる。一方、酸化チタン系粒子の含有割合が前記上限値以下であることにより、酸化チタン系粒子の分散性を向上させることができる。
【0022】
(その他の成分)
成形体用シートには、その機能の主旨を逸脱しない範囲において、他の機能を付加するために、前記セルロース繊維、前記繊維分散用樹脂及び前記酸化チタン系粒子以外の他の成分が含まれてもよい。
具体的にその他の成分としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、滑剤、難燃剤、充填材等が挙げられる。
前記その他の成分のうち、酸化防止剤を成形体用シートに含有させると、成形体の色味をより改善することができる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられ、これらは1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。色味の改善効果がより大きくなる点では、フェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤とを併用することが好ましい。
【0023】
(成形体用シートの厚さ)
成形体用シートの平均厚さは、5〜200μmであることが好ましく、7〜150μmであることがより好ましく、10〜130μmであることがさらに好ましい。成形体用シートの平均厚さが前記下限値以上であれば、成形体用シートを容易に製造でき、前記上限値以下であれば、容易に粉砕できる。
【0024】
(成形体用シートの製造方法)
成形体用シートは、例えば、抄紙法、キャスト法によって製造することができる。
【0025】
抄紙法による成形体用シートの製造方法は、セルロース繊維と繊維分散用樹脂と酸化チタン系粒子と水とを含有するスラリーを調製するスラリー調製工程と、前記スラリーをワイヤー上で抄紙して含水シートを得る抄紙工程と、前記含水シートを乾燥する乾燥工程とを有する。
【0026】
スラリー調製工程では、例えば、セルロース繊維が水に分散したセルロース繊維含有液にエマルション状の繊維分散用樹脂と酸化チタン系粒子とを添加してスラリーを得る方法、セルロース繊維が水に分散したセルロース繊維含有液に固形状の繊維分散用樹脂と酸化チタン系粒子とを添加してスラリーを得る方法等が挙げられる。
エマルション状の繊維分散用樹脂は、界面活性剤によって繊維分散用樹脂が水に分散した乳化液である。
固形状の繊維分散用樹脂の形状としては、例えば、繊維状、顆粒状、粉体状のいずれであってもよいが、抄紙のしやすさの点から、繊維状が好ましい。
スラリー調製工程で得るスラリーの固形分濃度は0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。スラリーの固形分濃度が前記下限値以上であれば、成形体用シートを容易に製造でき、前記上限値以下であれば、スラリーの懸濁安定性を確保できる。
抄紙用のスラリーには、一般の紙に使用する抄紙用の添加剤が含まれても構わない。抄紙用の添加剤としては、例えば、サイズ剤、紙力増強剤、歩留まり向上剤、凝集剤等が挙げられる。
【0027】
抄紙は長網式でもよいし、短網式でもよい。
抄紙に使用するワイヤーとしては、一般の抄紙で適用されるワイヤーを用いることができる。具体的には、ステンレス、ブロンズなどの金属ワイヤーやポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデンなどのプラスチックワイヤーが挙げられる。また、セルロースアセテート基材などのメンブレンフィルターをワイヤーとして使用してもよい。
ワイヤーの目開きとしては0.2〜200μmが好ましく、0.4〜100μmがよりに好ましい。目開きが前記下限値以上であれば、充分な脱水速度が得られ、前記上限値以下であれば、歩留りが高くなる。
【0028】
乾燥工程における乾燥法としては、紙の製造で用いられている公知の方法を採用することができる。例えば、シリンダードライヤー、ヤンキードライヤー、熱風乾燥、赤外線ヒーターなどの乾燥装置を用いた方法が挙げられる。
また、乾燥の前に、ロールプレスやシュープレスなどで脱水してもよい。
【0029】
キャスト法による成形体用シートの製造方法は、セルロース繊維と繊維分散用樹脂と酸化チタン系粒子と水とを含有するスラリーを調製するスラリー調製工程と、前記スラリーを非透水性の工程シートに塗工して成形体用シートとなる塗膜を形成する塗工工程と、前記塗膜を乾燥して成形体用シートを形成する乾燥工程と、前記工程シートから成形体用シートを剥離する剥離工程とを有する。
キャスト法のスラリー調製工程において調製されるスラリーは、上記抄紙法のスラリー調製工程において調製されるスラリーと同様である。キャスト法のスラリー調製工程において使用される繊維分散用樹脂は、上記抄紙法のスラリー調製工程において使用される繊維分散用樹脂と同様であるが、塗工によって塗膜を形成しやすい点では、エマルション状の繊維分散用樹脂が好ましい。
工程シートとしては、樹脂シート又はゴムシートを使用することができる。また、工程シートは、無端ベルト状とされてもよい。
乾燥法としては、熱風乾燥機、赤外線ヒーター、真空乾燥機などの乾燥装置を用いた方法が挙げられる。
【0030】
<成形体>
本発明の成形体は、マトリックス樹脂と、該マトリックス樹脂中に分散したセルロース繊維と、酸化チタン系粒子とを含有する。マトリックス樹脂は、前記成形体用シートに由来する繊維分散用樹脂を含有してもよい。
成形体において、マトリックス樹脂とセルロース繊維と酸化チタン系粒子の合計の含有割合は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。マトリックス樹脂とセルロース繊維と酸化チタン系粒子の合計の含有割合が100質量%であってもよい。
【0031】
(マトリックス樹脂)
マトリックス樹脂としては特に限定されず、熱可塑性樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂であってもよいが、成形体を容易に製造できることから、熱可塑性樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−αオレフィン共重合体、プロピレン−αオレフィン共重合体等)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体又は共重合体、スチレン系樹脂(例えば、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、ABS樹脂)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、不飽和ポリエステル、等)、ポリウレタン、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン−メチルメタクリレート共重合体、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物、ポリアミド系樹脂(例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ポリメタキシリレンアジパミド等)、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、フッ素樹脂等が挙げられる。これら熱可塑性樹脂は1種単独でもよいし、2種併用でもよい。
これら熱可塑性樹脂のなかで、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタールが好ましく、オレフィン系樹脂がより好ましい。
【0032】
(各成分の含有割合)
成形体におけるマトリックス樹脂の含有割合は、全体の質量を100質量%とした際の、30〜94.7質量%であることが好ましく、35〜92質量%であることがより好ましく、40〜90質量%であることがさらに好ましい。マトリックス樹脂の含有割合が前記下限値未満であると、該成形体の製造が困難になることがあり、前記上限値を超えると、セルロース繊維及び酸化チタン系粒子の含有割合が相対的に小さくなるため、強度及び剛性の低下が生じ、色味の改善が不充分になることがある。
成形体におけるセルロース繊維の含有割合は、全体の質量を100質量%とした際の、5〜69.7質量%であることが好ましく、8〜65質量%であることがより好ましく、10〜60質量%であることがさらに好ましい。セルロース繊維の含有割合が前記下限値未満であると、強度及び剛性の低下が生じることがあり、前記上限値を超えると、色味の改善が不充分になることがある。
成形体における酸化チタン系粒子の含有割合は、全体の質量を100質量%とした際の、0.3〜4質量%であることが好ましく、0.5〜3質量%であることがより好ましく、0.8〜2.5質量%であることがさらに好ましい。酸化チタン系粒子の含有割合が前記下限値未満であると、曲げ弾性率及び色味の改善が不充分となり、前記上限値を超えると、曲げ強度の低下が生じることがある。
【0033】
(その他の成分)
成形体には、その機能の主旨を逸脱しない範囲において、他の機能を付加するために、前記マトリックス樹脂、前記セルロース繊維及び前記酸化チタン系粒子以外の他の成分が含まれてもよい。
具体的にその他の成分としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、滑剤、難燃剤、充填材等が挙げられる。
前記その他の成分のうち、酸化防止剤を成形体に含有させると、成形体の色味をより改善することができ、しかも、セルロース繊維の酸化劣化を防いでセルロース繊維が本来有する樹脂の強化機能を充分に発揮させることができる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられ、これらは1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。色味の改善効果がより大きくなる点では、フェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤とを併用することが好ましい。
成形体におけるフェノール系酸化防止剤の含有割合は0.01〜1質量%であることが好ましく、0.05〜0.08質量%であることがより好ましい。フェノール系酸化防止剤の含有割合が前記下限値以上であれば、色味の改善効果がより高くなり、前記上限値以下であれば、強度低下を抑制できる。
成形体におけるリン系酸化防止剤の含有割合は0.01〜1質量%であることが好ましく、0.05〜0.08質量%であることがより好ましい。リン系酸化防止剤の含有割合が前記下限値以上であれば、色味の改善効果がより高くなり、前記上限値以下であれば、強度低下を抑制できる。
フェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤との質量比率(フェノール系酸化防止剤の質量/リン系酸化防止剤の質量)は、色味改善効果がより高くなることから、0.5/1〜1.5/1であることが好ましく、0.8/1〜1.2/1であることがより好ましい。
【0034】
(成形体の第1の製造方法)
本発明の成形体を製造する第1の製造方法としては、上記の成形体用シートを粉砕して粉砕物を得る粉砕工程と、前記粉砕物をベース樹脂に混合して成形用樹脂組成物を得る混合工程と、前記成形用樹脂組成物を溶融混練する溶融混練工程とを有する方法が挙げられる。ここで、ベース樹脂とは、成形体用シートの粉砕物に配合する樹脂であって、成形体におけるマトリックス樹脂の主成分となる樹脂である。ベース樹脂と、成形体用シートに由来する繊維分散用樹脂とにより、成形体におけるマトリックス樹脂が構成される。
【0035】
[粉砕工程]
粉砕工程は、ベース樹脂に対する成形体用シートの分散性を向上させるために、成形体用シートを粉砕する工程である。ベース樹脂に対する成形体用シートの分散性が向上すれば、ベース樹脂に対するセルロース繊維の分散性及び酸化チタン系粒子の分散性も向上する。
粉砕工程においては、公知の粉砕機、例えば、サンプルミル、ハンマーミル、ターボミル、アトマイザー、カッターミル、ビーズミル、ボールミル、ロールミル、ジェットミルなどを使用することができる。またシュレッダーを用いて粉砕してもよい。
【0036】
粉砕後には、スクリーンを用いて粉砕物の形状、大きさを篩い分けてもよい。篩い分けすると、ベース樹脂に対する分散性をより高くすることができる。篩い分けに使用されるスクリーンの口径は、0.5mm〜10mmであることが好ましく、1mm〜8mmであることがより好ましい、スクリーンの口径が前記下限値以上であれば、粉砕物を容易に作製でき、前記上限値以下であれば、ベース樹脂との混和性が高くなる。
【0037】
[混合工程]
第1の製造方法における混合工程は、粉砕物とベース樹脂とを溶融混練しやすくするために、粉砕物をベース樹脂に混合する工程である。
粉砕物とベース樹脂との混合比率は、成形体用シートにおける各成分の含有割合を考慮すると共に、最終的に得られる成形体における酸化チタン系粒子の含有割合が好ましくは0.3〜4質量%の範囲内になるように選択すればよい。具体的な混合比率としては、粉砕物の質量とベース樹脂の質量との合計を100質量部とした際、好ましくは、粉砕物の質量を1〜70質量部、より好ましくは2〜60質量部、さらに好ましくは5〜50質量部とする。
成形体に酸化防止剤を含有させる場合には、混合工程にて、粉砕物及びベース樹脂と共に酸化防止剤を配合することが好ましい。
粉砕物と混合するベース樹脂の形状は特に制限はなく、例えば、ペレット状、顆粒状、粉体状、繊維状のいずれであってもよい。取り扱い性の点からは、ベース樹脂の形状はペレット状であることが好ましい。
混合方法としては、ミキサーを使用して粉砕物とベース樹脂とを攪拌する方法が好ましい。ミキサーとしては、例えば、タンブラーミキサー、スーパーミキサー、スーパーフローター、ヘンシェルミキサー等を用いることができる。
少量であれば、手作業で粉砕物とベース樹脂とを攪拌して混合しても構わない。
【0038】
[溶融混練工程]
第1の製造方法における溶融混練工程は、ベース樹脂と繊維分散用樹脂とから構成されるマトリックス樹脂中にセルロース繊維及び酸化チタン系粒子を分散させるために、成形用樹脂組成物を溶融混練する溶融混練工程である。
溶融混練の際には、押出機(単軸押出機、二軸押出機)、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機を用いることができ、なかでも、連続的に混練できる点で、押出機が好ましい。
溶融混練工程における加熱温度はマトリックス樹脂の溶融のしやすさに応じて決められるが、通常は、100〜300℃の範囲内であり、120〜280℃の範囲内であることがより好ましい。加熱温度が前記下限値以上であれば、マトリックス樹脂を溶融しやすくなり、マトリックス樹脂中にセルロース繊維を分散させやすくなり、前記上限値以下であれば、各成分の熱劣化を抑制できる。
【0039】
溶融混練した後には、成形体の使用目的に応じた形状(例えば、ペレット状、シート状、チューブ状、棒状、柱状等)に成形又は加工することができる。
例えば、成形体をペレット状とする場合には、溶融混練後、ストランドを形成し、そのストランドを、ペレタイザを用いて切断してペレット状にする。ペレット状の成形体は、さらなる成形用の材料として使用できる。例えば、ペレット状の成形体を、成形機(例えば、射出成形機、押出成形機等)によって成形することができる。
成形体をシート状とする場合には、溶融混練後、溶融樹脂をスリット状の孔から吐出させることによりシート状にすることができる。シート状の成形体は、さらにプレス成形法又は真空成形法によって成形してもよい。
成形体をチューブ状にする場合には、溶融混練後、溶融樹脂を環状の孔から吐出させることによりチューブ状にすることができる。
成形体を棒状又は柱状にする場合には、溶融混練後、溶融樹脂を孔から吐出させることにより棒状又は柱状にすることができる。
【0040】
(成形体の第2の製造方法)
本発明の成形体を製造する第2の製造方法としては、セルロース繊維及び酸化チタン系粒子をベース樹脂に混合してセルロース繊維含有混合物を得る混合工程と、前記セルロース繊維含有混合物を溶融混練する溶融混練工程とを有する方法が挙げられる。
【0041】
[混合工程]
第2の製造方法における混合工程では、ベース樹脂とセルロース繊維と酸化チタン系粒子とを溶融混練しやすくするために、セルロース繊維及び酸化チタン系粒子をベース樹脂に混合する工程である。
セルロース繊維と酸化チタン系粒子とベース樹脂は、最終的に得られる成形体における各成分の割合が、上述の好ましい割合となるように混合する。
成形体に酸化防止剤を含有させる場合には、混合工程にて、セルロース繊維、酸化チタン系粒子及びベース樹脂と共に酸化防止剤を配合することが好ましい。
第2の製造方法におけるベース樹脂の形状及び混合方法は、第1の製造方法におけるベース樹脂の形状及び混合方法と同様である。
該混合工程にて添加するセルロース繊維の形態は、セルロース繊維に繊維分散用樹脂が予め混合された混合物、セルロース繊維に繊維状の繊維分散用樹脂が予め混抄された混抄物であってもよい。セルロース繊維に繊維分散用樹脂が混合又は混抄されていれば、セルロース繊維の分散性をより向上させることができる。
セルロース繊維に繊維分散用樹脂が予め混合された混合物を作製する方法としては、セルロース繊維が水に分散したセルロース繊維含有液にエマルション状の繊維分散用樹脂を添加してスラリーを得た後、抄紙する方法が挙げられる。
セルロース繊維に繊維状の繊維分散用樹脂が予め混抄された混抄物を作製する方法としては、セルロース繊維が水に分散したセルロース繊維含有液に繊維状の繊維分散用樹脂を添加してスラリーを得た後、抄紙する方法等が挙げられる。
【0042】
[溶融混練工程]
第2の製造方法における溶融混練工程は、ベース樹脂中にセルロース繊維及び酸化チタン系粒子を分散させるために、成形用樹脂組成物を溶融混練する溶融混練工程である。
第2の製造方法における溶融混練法及び加熱温度は、第1の製造方法における溶融混練法及び加熱温度と同様である。溶融混練の後、第1の製造方法と同様に、成形又は加工してもよい。
【0043】
(作用効果)
セルロース繊維を強化樹脂として含有する繊維強化樹脂は色味が良くない傾向にある。これは、セルロース繊維が熱劣化しやすい傾向にあるためと思われる。
本発明の成形体は、白色顔料である酸化チタン系粒子を上記特定量含有する。本発明で使用される酸化チタン系粒子はルチル型酸化チタンを主成分とするものであり、酸化活性が抑制されている。そのため、酸化チタンによるセルロース繊維の酸化劣化を防止でき、酸化チタン含有による色味改善効果を充分に発現させることができる。
また、セルロース繊維の酸化劣化が防止されることで、セルロース繊維の強化繊維としての効果を充分に発現することができ、曲げ強度等の強度、曲げ弾性率等の剛性を維持させることができる。
さらに、成形体に酸化チタン系粒子が適度に含まれることによっても、成形体の剛性を向上させることができる。また、成形体における酸化チタン系粒子の含有割合に上限があるから、成形体の脆性化が抑制されている。
したがって、本発明の成形体は、セルロース繊維を強化繊維として強度及び剛性を向上させているにもかかわらず、色味が改善されている。特に、平均繊維幅2〜15000nmの微細セルロース繊維を使用した場合には、強度及び剛性を向上させる効果がより大きい反面、熱劣化しやすい傾向にあるから、酸化チタン系粒子含有による色味の改善効果はとりわけ有効である。
また、セルロース繊維を含む成形体は臭いが生じる傾向にあるが、酸化チタン系粒子を含有する本発明の成形体は、その臭いを吸着して臭気を抑制することができる。
また、本発明の成形体は、炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維を用いた場合よりも軽量化できる。
【実施例】
【0044】
(製造例1)
針葉樹晒クラフトパルプ(王子製紙社製、JIS P8121に従って測定されるカナダ標準濾水度(CSF)550ml)を、熊谷理化工業製ダブルディスクリファイナーを用い、カナダ標準濾水度が100mlになるまで叩解した。叩解後、濃度が0.5質量%になるように調製し、エムテクニック社製クレアミックス2.2Sを用い、機械力による解繊処理を行って、繊維スラリーを得た。該繊維スラリーに含まれる繊維の平均繊維長は0.19mm、平均繊維幅は40nmであった。
【0045】
(製造例2)
製造例1で得た繊維スラリー80質量部(固形分換算)と、ポリプロピレン繊維(商品名:PZ、融点160℃、繊維太さ15μm、繊維長:10mm、ダイワボウポリテック社製)20質量部(固形分換算)と、酸化チタン系粒子3.3質量部とを混合して、固形分濃度5質量%の混合スラリーを調製した。ここで使用した酸化チタン系粒子は、ルチル型酸化チタン粒子の表面に酸化ケイ素膜が形成され、さらにその酸化ケイ素膜の表面に酸化アルミニウム膜が形成された粒子であって、ルチル型酸化チタン含有割合が98質量%、質量平均粒子径が0.3μmのものである。
次いで、その混合スラリーを、日本フィルコン社製の二重織りのプラスチックワイヤー上で吸引脱水することにより抄紙して、セルロース繊維と酸変性ポリプロピレンと酸化チタン系粒子とで構成された含水シートを得た。その含水シートを、シリンダーロールを用いて乾燥して、平均厚さ200μmの成形体用シート(A)を得た。成形体用シート(A)における各成分の百分率を表1に示す。
次いで、前記成形体用シート(A)を、カッターミルを用いて粉砕後、10mmのスクリーンを通過させて粉砕物(A)を得た。
【0046】
(製造例3)
製造例1で得た繊維スラリー80質量部(固形分換算)と、ポリプロピレン繊維(商品名:PZ、融点160℃、繊維太さ15μm、繊維長:10mm、ダイワボウポリテック社製)20質量部(固形分換算)とを混合して、固形分濃度3質量%の混合スラリーを調製した。
次いで、その混合スラリーを、日本フィルコン社製の二重織りのプラスチックワイヤー上で吸引脱水することにより抄紙して、セルロース繊維と酸変性ポリプロピレンとで構成された含水シートを得た。その含水シートを、シリンダーロールを用いて乾燥して、平均厚さ40μmの成形体用シート(B)を得た。
次いで、前記成形体用シート(B)を、カッターミルを用いて粉砕後、5mmのスクリーンを通過させて粉砕物(B)を得た。
【0047】
【表1】
【0048】
(実施例1)
前記粉砕物(A)31質量部(セルロース繊維24質量部、ポリプロピレン繊維6質量部、酸化チタン系粒子1質量部)と、ベース樹脂としてのホモポリプロピレン(サンアロマー株式会社製PM801A)のペレット68.5質量部と、酸化防止剤(BASF社製イルガノックスB225、フェノール系酸化防止剤であるイルガノックス1010とリン系酸化防止剤であるイルガフォス168とを質量比1:1で混合した混合物)0.5質量部とをドライブレンドして、成形用樹脂組成物を得た。
次いで、前記成形用樹脂組成物を、小型二軸混練機(DSM Xplore社製 型式:MC15)に投入し、5分間溶融混練した。その際のバレル温度は200℃、スクリュー回転数は50rpmとした。
5分経過後、樹脂吐出口から溶融樹脂を棒状に押出し、ステンレス製トレーの上に載せ、室温で冷却して固化させた後、ペレット状に裁断して成形体を得た。
【0049】
(実施例2)
前記粉砕物(B)31質量部(セルロース繊維24質量部、ポリプロピレン繊維6質量部、酸化チタン系粒子1質量部)と、ベース樹脂としてのホモポリプロピレン(サンアロマー株式会社製PM801A)のペレット69質量部とをドライブレンドして、成形用樹脂組成物を得た。
次いで、実施例1と同様に、前記成形用樹脂組成物を溶融混練した後、棒状に押し出し、ペレット状に裁断して成形体を得た。
【0050】
(実施例3)
前記粉砕物(B)30質量部(セルロース繊維24質量部、ポリプロピレン繊維6質量部)と、ベース樹脂としてのホモポリプロピレン(サンアロマー株式会社製PM801A)のペレット67.5質量部と、ペレット状の酸化チタン系粒子含有樹脂2.5質量部とをドライブレンドして、成形用樹脂組成物を得た。前記酸化チタン系粒子含有樹脂は、製造例2で使用したものと同様の酸化チタン系粒子40質量%とホモポリプロピレン(サンアロマー株式会社製VMD81M)60質量%との混合物である。
次いで、実施例1と同様に、前記成形用樹脂組成物を溶融混練した後、棒状に押し出し、ペレット状に裁断して成形体を得た。
【0051】
(比較例1)
粉砕物(B)30質量部(セルロース繊維24質量部、ポリプロピレン繊維6質量部)と、ベース樹脂としてのホモポリプロピレン(サンアロマー株式会社製PM801A)のペレット70質量部とをドライブレンドして、成形用樹脂組成物を得た。
次いで、実施例1と同様に、前記成形用樹脂組成物を溶融混練した後、棒状に押し出し、ペレット状に裁断して成形体を得た。
【0052】
(比較例2)
粉砕物(B)30質量部(セルロース繊維24質量部、ポリプロピレン繊維6質量部と、ベース樹脂としてのホモポリプロピレン(サンアロマー株式会社製PM801A)のペレット69.5質量部と、酸化防止剤(BASF社製イルガノックスB225)0.5質量部とをドライブレンドして、成形用樹脂組成物を得た。
次いで、実施例1と同様に、前記成形用樹脂組成物を溶融混練した後、棒状に押し出し、ペレット状に裁断して成形体を得た。
【0053】
<評価>
各実施例および各比較例の成形体を用い、以下の方法により、曲げ強度及び曲げ弾性率、印字濃度、白色度を測定した。測定結果を表2に示す。
測定に用いた試験片は、以下のように作製した。
各実施例及び各比較例により得られた成形体を射出成形機PNX−III(日精樹脂株式会社製)により射出成形にて試験片を作製した。試験片は、曲げ試験用の多目的試験片(JIS K7139 A型)と、印字・白色度測定用の平板試験片(縦10cm、横10cm、厚さ2mm)を作製した。
【0054】
[曲げ強度・曲げ弾性率の測定]
上記試験片を用い、JIS K 7171に準じて、曲げ強度・曲げ弾性率を測定した。曲げ試験機として、インストロン5566型を用い、曲げ速度は2mm/分とした。
【0055】
[印字濃度の測定]
各実施例および各比較例の成形体から作製した上記試験片を用い、印字濃度測定装置として、スペクトロアイLT(サカタインクス株式会社製)を用いて印字濃度を測定した。この印字濃度の値が小さい程、成形体が白いことを意味する。
【0056】
[白色度の測定]
各実施例および各比較例の成形体から作製した上記試験片を用い、JIS P8148に従い、Colour Cute i CC−Iw(スガ試験機株式会社)を用いてL
*値を測定した。このL
*値が大きい程、成形体の白色度が高いことを意味する。
【0057】
【表2】
【0058】
酸化チタン系粒子を含む各実施例の成形体はいずれも、曲げ強度及び曲げ弾性率が高く、しかも白色度が高く、良好な色味を有していた。
酸化チタン系粒子を含まない各比較例の成形体はいずれも、曲げ強度及び曲げ弾性率が高いが、白色度は低かった。