(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6572709
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】野縁の耐震補強金具
(51)【国際特許分類】
E04B 9/18 20060101AFI20190902BHJP
【FI】
E04B9/18 N
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-191173(P2015-191173)
(22)【出願日】2015年9月29日
(65)【公開番号】特開2017-66654(P2017-66654A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】591020685
【氏名又は名称】株式会社能重製作所
(72)【発明者】
【氏名】能重 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】八百板 潤
(72)【発明者】
【氏名】前川 伸哉
【審査官】
星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−057216(JP,A)
【文献】
特開2007−023737(JP,A)
【文献】
実開昭55−004243(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/16−9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り部材を介して躯体天井部に支持される複数のチャンネル状野縁受けに、上方に開口した両側面部の上端内方に逆U字状溝を有する複数のチャンネル状野縁を、野縁受けに取り付けられる野縁受け取付け部と、その垂下部から野縁受けに背反するよう折曲された両端部を立上り折曲させて、前記逆U字状溝内に挿入して野縁を支持受けする野縁支持受け部とを有する1組の野縁固定金具を介して支持する天井下地において、
前記野縁支持受け部による野縁の支持受け構造によって取り付けられた野縁の開口側周辺面域を補強する耐震補強金具であって、
該耐震補強金具は、前記野縁支持受け部を含む前記野縁の開口側を被嵌するよう、上面片とその両端に折曲された側面片とにより下向きコ字状に形成された野縁被嵌部と、前記一方の側面片を野縁受けの下面域となる野縁の側面部にオーバーラップするよう延出せしめた延出固定片とを一体的に備え、
前記野縁被嵌部をそれぞれ前記野縁に被嵌して、前記野縁受け取付け部に互いにスライド当接することで、前記延出固定片を前記他方の側面片に重合せしめた状態で、組みとなる耐震補強金具同士を対向配設し、
当該重合する延出固定片と側面片とを、野縁の側面部にビス固定することを特徴とする野縁の耐震補強金具。
【請求項2】
請求項1において、前記延出固定片は、前記野縁受けの下面域を通過して、前記他方に配設された野縁支持受け部の野縁の側面部に及ばせて延出されていることを特徴とする野縁の耐震補強金具。
【請求項3】
請求項1または2において、前記延出固定片を有しない側の側面片は、前記野縁受けの下面域に延出して、当該下面域を支持受け係合するする係合域を有し形成されていることを特徴とする野縁の耐震補強金具。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかにおいて、前記延出固定片は、前記野縁の側面部との間に隙間を形成するように折曲され、前記他方の側面片に重合することを特徴とする野縁の耐震補強金具。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかにおいて、前記延出固定片にビス孔を穿設し、前記他方の側面片にスライド方向に細幅の長孔が前記ビス孔の対向位置に打ち抜き形成すると共に、前記重合する延出固定片と側面片は、前記1組の野縁固定金具が対向する間隔幅の変化に応じてビス固定位置を可変調整可能に構成されていることを特徴とする野縁の耐震補強金具。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかにおいて、前記上面片には、前記野縁固定金具の垂下部に縦方向に形成された補強リブを嵌装する円弧状の凹溝部が形成されていることを特徴とする野縁の耐震補強金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に予め耐震性が求められる天井下地において、野縁を吊持ち状に載置して支持受けする構造の野縁固定金具によって取り付けられた野縁自体の剛性強度を高め、その支持受け構造を補強して耐震強度を向上することのできる野縁の耐震補強金具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、在来天井は、吊り部材(吊りボルト、吊りワイヤ等)を介して躯体天井部に支持される複数の野縁受け(チャンネル材)と、上方に開口した両側面部の上端内方に逆U字状溝を有し、野縁固定金具を介して野縁受けに支持される複数のチャンネル状の野縁と、野縁にビス止めされる天井パネルとから構成される。ところで、従来の天井下地に用いられる野縁固定金具としては、特許文献1の
図5に開示されたものが知られている。
【0003】
すなわち、特許文献1の野縁固定金具は、指圧変形不能な板厚が約1.2mm〜1.6mmの厚板材でプレス成型され、野縁受け(4)に取り付けられる逆L字状の野縁受け取付け部(51)と、その垂下部から受けに背反するようL字状に折曲された両端部を、野縁(7)の逆U字状溝(71)内に挿入されるよう立上り折曲させて凹状に形成された野縁支持受け部(52)とにより一体形成され、逆U字状溝(71)内に挿入した野縁支持受け部(52)の両側上端面で野縁(7)を支持受けするように構成されたものを組として、野縁受け(4)に挟み込ませて立上り片同士をネジ止め等により固定して取り付けられており、野縁支持受け部(52)も2カ所で野縁を支持受けするため、所定のジョイント強度や耐震強度が得られる。(特許文献1、
図5参照)
【0004】
しかしながら、この様な厚板材で形成された野縁固定金具(5a)であっても、野縁支持受け部(52)の両側上端部を逆U字状溝(71)内に挿入して、野縁(7)を吊持ち状に載置して支持受けする構造となっているため、野縁(7)は、野縁受け(4)の側面部と野縁支持受け部(52)との間で野縁(7)の逆U字状溝(71)の両側上端部がしっかりと挟持されているものの、野縁固定金具(5a)にビスなどによって固定されていないため、地震等の揺れを受けると、野縁支持受け部(52)が上下方向に振動し、野縁(7)の逆U字状溝(71)に上動圧接するような集中負荷が加わって変形を生じたり、逆U字状溝(71)から離間するような下側方向への振動(傾動)によって、野縁(7)と野縁受け(4)との間にガタツキが生じ、野縁固定金具(5a)などが位置ズレしてしまい、その様な状態で更なる振動を受けると、ガタツキや位置ズレが増大されて、天井下地全体が歪んだり、天井パネルの脱落につながる惧れがある。
【0005】
そこで、このものは、野縁(7)に固定される野縁被嵌部(61)と、野縁(7)の逆U字状溝(71)間に介在され、野縁被嵌部(61)から内方に折曲されて、野縁支持受け部(52)の下面域を覆ってその振動を規制する傾動規制部(62)とを一体的に備えた耐震補強金具(6)を取り付けすることによって、野縁固定金具(5a)に対する耐震強度を向上させる補強を行うことができるようにしている。
しかしながら、野縁(7)はその板厚規格が約0.5mmの薄板材で形成されているため、板厚規格が約1.2mmまたは1.6mmの厚板材で形成された野縁受け(4)や野縁固定金具(5a)に比して強度的に弱く、逆U字状溝(71)内に挿入されて支持受けする野縁支持受け部(52)の部位にのみ野縁被嵌部(61)を野縁(7)に被嵌してビス固定したものでは、野縁受け(4)の下面域となる側面部面域に対して、野縁受け(4)の傾動等を伴う振動負荷が加わった際に逆U字状溝(71)の部位に変形を生じる危惧がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−044205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の如き問題点を一掃すべく創案されたものであって、天井下地における野縁受けに固定された野縁固定金具を介して、野縁を、その逆U字状溝内に挿入される野縁支持受け部によって支持受けする構造でありながら、一方の野縁支持受け部側から他方の野縁支持受け部側に至る周辺域における野縁自体の剛性強度を高めることができ、野縁支持受け部による支持受け構造の補強だけでなく、野縁自体の補強をも行い得て、野縁受けと密着する野縁の逆U字状溝との間に、地震等の揺れにより、前後左右等に傾動する振動負荷を受けた際に、野縁受け等他の部材よりも薄板にて形成される野縁自体のねじれや変形を防止して、両者間の密着状態を好適に保持し、野縁支持受け部が野縁の逆U字状溝から離間する下側方向への振動を規制することは勿論、野縁と野縁受けとの間のガタツキや野縁固定金具などの位置ズレを防止することのできる野縁の耐震補強金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の野縁の耐震補強金具は、吊り部材を介して躯体天井部に支持される複数のチャンネル状野縁受け
に、上方に開口した両側面部の上端内方に逆U字状溝を有する複数のチャンネル状野縁を、野縁受けに取り付けられる野縁受け取付け部と、その垂下部から野縁受けに背反するよう折曲された両端部を立上り折曲させて、前記逆U字状溝内に挿入して野縁を支持受けする野縁支持受け部とを有する1組の野縁固定金具を介して支持する天井下地において、前記野縁支持受け部による野縁の支持受け構造によって取り付けられた野縁の開口側周辺面域を補強する耐震補強金具であって、該耐震補強金具は、前記前記野縁支持受け部を含む野縁の開口側を被嵌するよう、上面片とその両端に折曲された側面片とにより下向きコ字状に形成された野縁被嵌部と、前記一方の側面片を野縁受けの下面域となる野縁の側面部にオーバーラップするよう延出せしめた延出固定片とを一体的に備え、前記野縁被嵌部をそれぞれ前記野縁に被嵌して、前記野縁受け取付け部に互いにスライド当接することで、前記延出固定片を前記他方の側面片に重合せしめた状態で、組みとなる耐震補強金具同士を対向配設し、当該重合する延出固定片と側面片とを、野縁の側面部にビス固定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記のように構成したことにより、天井下地における野縁受けに固定された野縁固定金具を介して、野縁を、その逆U字状溝内に挿入される野縁支持受け部によって支持受けする構造でありながら、組みとして配設される耐震補強金具のそれぞれの野縁被嵌部を、野縁の野縁受け取付け部にスライド当接させ、延出固定片を野縁受けの下面域となる野縁の側面部にオーバーラップして他方の側面片と重合させた状態で、野縁受け取付け部を挟んで野縁の側面部に対角線上に確りとビス固定して一体化できるので、対向する野縁被嵌部によって両野縁受け取付け部を挟持した状態で、一方の野縁支持受け部側から他方の野縁支持受け部側に至る野縁の開口側周辺域全体が耐震補強され、野縁自体の剛性強度を高めることができ、地震等の揺れにより、野縁受けと密着する野縁の逆U字状溝との間に、前後左右等に傾動する上下方向やねじれ方向に振動負荷を受けた際に、野縁支持受け部の立上り上端部が野縁の逆U字状溝に集中して上動圧接し或いは離間するような振動負荷を、野縁被嵌部で受け止めて分散することができ、野縁の開口側の拡開や逆U字状溝の変形を防止することができるだけでなく、延出固定片と野縁側面部との共同剛性力によって野縁受けの下面部を確りと受け止めて規制し、野縁受け等他の部材よりも薄板にて形成される野縁自体のねじれや変形を防止して、両者間の密着状態を好適に保持し、野縁と野縁受けとの間のガタツキの発生や野縁固定金具などの位置ズレを防止することができる。その結果、野縁支持受け部による支持受け構造の補強と、野縁自体に対する補強とによる耐震強度を向上させる補強構造とが容易に構築できると共に、野縁支持受け部の両側上端が逆U字状溝へ密着した良好な状態を恒久的に保持することができ、天井下地全体の耐震性を向上させて構造的品質特性の維持に寄与することができる。しかも、重合する延出固定片と側面片とが重合する面域を、1組の野縁固定金具が対向配設された間隔幅が異なっていても、その幅変化に応じて、野縁被嵌部を野縁受け取付け部にスライド当接させてビス固定することができる幅調整域として機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る天井下地を示す概略側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る野縁の耐震補強金具であって、(A)は正面図、(B)は右側面図、(C)は背面図、(D)は平面図、(E)は底面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る組みとして用いられる耐震補強金具のセット状態を示す説明斜視図である。
【
図4】耐震補強金具の野縁への使用例を示し、(A)は一部破断側図、(B)は平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を好適な実施の形態として例示する野縁の耐震補強金具を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る概略側面図である。この図に示す天井下地には、躯体天井部1から所定の間隔を存して垂下される複数の吊りボルト2と、これら吊りボルト2間に野縁受けハンガー31を介して吊りボルト2の下端部に支持される野縁受け3(天井下地材)と、躯体天井部1と野縁受け3との間で吊りボルト2に振れ止め固定金具41を介して水平状に架設される振れ止め4(天井下地材)と、野縁受け3に野縁固定金具51を介して取り付けられる野縁5と、野縁5にビス固定される天井パネル6が含まれている。
【0012】
野縁受け3は、板厚規格が約1.2mmまたは1.6mmの厚板材で形成された側方が開口する断面コ字状のチャンネル材からなり、天井部に所定の間隔を存して並列状に割り付けされ、野縁受けハンガー31によって支持されると共に、吊りボルト2の先端部に取付けされる野縁受けハンガー31の位置変更によって、上下位置が調整される。このとき、野縁受け3は、図示しない躯体壁部に当接しない短めの長さに予め加工され、その両端部が野縁受け固定金具を介して躯体壁部に固定される。
【0013】
野縁5は、その板厚規格が約0.5mmの薄板材によって、上方に開口した両側部の上端を内方に折曲させて逆U字状溝5aを形成したチャンネル材であり、野縁受け3と直交するように、天井部に所定の間隔を存して並列状に割り付けされる。野縁5としては、幅寸法が異なるダブル野縁やシングル野縁があり、それぞれに適合した形状の野縁固定金具51を介して野縁受け3に対して、その下面部に逆U字状溝5aが圧着した状態で支持される。なお、ダブル野縁とシングル野縁のそれぞれに高さ幅の異なる19形(19mm)と25形(25mm)とがあり、本実施例で示す野縁5は、ダブル野縁の25形である。そして、天井部に割り付けられた野縁5間に天井パネル6を渡し、これをビス止めすることにより、既設の天井部が構成される。
【0014】
振れ止め固定金具41は、中央の吊りボルト2への吊りボルト固定部と、その両側に振れ止め4への被嵌固定部を有して側面視略コ字状に形成されている。
振れ止め4は、側方が開口する断面コ字状のチャンネル材からなり、吊りボルト2の間隔を維持するために複数の吊りボルト2間に水平状に架設される梁タイプとなっている。そして、振れ止め固定金具41を、吊りボルト2と振れ止め4とを同時に被嵌することで両者が組付け固定される。
【0015】
野縁固定金具51は、板厚が1.2〜1.6mmの厚板材プレス成型され、野縁受け3に取り付けられる立上り片から側面視く字状(逆L字状)に折曲された野縁受け取付け部511と、その垂下部の下端側を野縁受け3の外方に向けてL字状に折曲された両端側を上方に折曲させて、野縁5の逆U字状溝5a内に挿入され、野縁5を支持受けする野縁支持受け部512とを備えて一体形成され、このものを組みとして、野縁受け3の両側に挟持状に配置されて立上り片同士をボルト固定して取り付けられている。また、野縁受け取付け部511には、野縁受け3にドリルビスにて固定するためのビス孔が穿設されている。
【0016】
次に、本発明の実施態様に係る野縁の耐震補強金具について、
図2〜
図5を参照して説明する。
図2の(A)は耐震補強金具の正面図、(B)は同じく右側面図、(C)は背面図、(D)は平面図、(E)は底面図であり、
図3は、組みとして用いられる耐震補強金具のセット状態を示す説明斜視図、
図4の(A)は耐震補強金具の野縁への使用例を示す一部破断側図、(B)は同じく平面図である。
図4に示すように、野縁固定金具51は、板厚が1.2〜1.6mmの厚板材プレス成型され、野縁受け3の上面部中央配置される立上り片から傾斜して側面視く字状に折曲された野縁受け取付け部511と、その垂下部の下端側を野縁受け3の外方に向けてL字状に折曲された両端側を上方に折曲させて、野縁5の逆U字状溝5a内に挿入され、野縁5を支持受けする野縁支持受け部512とを備えて一体形成され、このものを組みとして、野縁受け3の両側に配置されて野縁受け3の上面部で立上り片同士をボルト固定することで挟持状に取り付けられている。また、野縁受け取付け部511には、野縁受け3にドリルビスにて固定するためのビス孔が穿設されている。
【0017】
7は本発明の実施態様に係る野縁5の耐震補強金具であって、これら図に示すように、耐震補強金具7は、板厚が約1.2〜1.6mmの厚板材でプレス成型され、野縁5の開口側から野縁支持受け部512を被嵌するよう、上面片711とその両端に折曲された側面片712、712とにより下向きコ字状に形成された野縁被嵌部71と、一方の側面片712を野縁受け3の下面域を通過して、他方に配設された野縁支持受け部512の野縁5の側面部にオーバーラップするよう及ばせて、延出せしめた延出固定片72とを一体的に備えて構成される。
【0018】
上面片711は、野縁支持受け部512を覆う充分な広幅(野縁支持受け部512の折曲幅よりも充分な広幅)をもつて形成され、延出固定片72を有しない側の側面片712は、上面片711を野縁受け取付け部511にスライド当接させた際に、野縁受け3の下面部に延出する係合域(掛合片)を有する長さ幅で、高さ幅が野縁5の19形(19mm)と略同一の幅をもって形成される。この側面片712には、野縁5の長手方向(スライド方向)に細幅の長孔71aが打ち抜き形成されている。また、上面片711には、野縁固定金具51の野縁受け取付け部511の垂下部に、縦方向に形成された補強リブを嵌装する円弧状の凹溝部71b、71bが形成されており、上面片711が補強リブをよけて野縁受け取付け部511に当接できるようになっている。なお、本実施例で示す耐震補強金具7は、ダブル野縁5用に供される野縁固定金具51に応じて、凹溝部71bを配置形成したが、シングル野縁5に供される野縁固定金具51には主に中央に1本の補強リブが形成されているので、当該対応位置に凹溝部71bを配置形成すればよい。また、長孔71aが形成された側面片712に延出形成された係合域の長さは任意であり、長孔71aは係合域を含む何れの部位に形成させても良い。
【0019】
延出固定片72は、他方に配設された野縁支持受け部512の幅よりも長く、かつ、他方に配設された耐震補強金具7の側面片712を覆う長さ幅をもって、野縁5の側面部との間にその板厚分の隙間を形成するように僅かに離間させ、先端部を外側に広げて上面視く字状に立上り折曲されている。また、延出固定片72には、野縁支持受け部512の下面域でその幅よりも僅かに外側となる長孔71aと対向する位置にビス孔72aが穿設されている。野縁受け取付け部511にスライド当接された状態でセットされた他方の耐震補強金具7に対して、一方となる耐震補強金具7を野縁受け取付け部511にスライド当接させてセットする際に、それぞれの延出固定片72、72が、野縁5の側面部との間の隙間を介して延出固定片72を有しない側の各側面片712、712に、野縁5の対向する側面部に対して対角重合した対称状態でセットできるようになっている。
【0020】
なお、ビス孔72aの長手方向への穿設位置は、野縁受け3の下面部となる野縁5の側面部にオーバラップして剛性強度が高められる構成のものであれば良く、延出固定片72と、重合する側面片712の係合域との長さを相対的に変更して、例えば側面片712の係合域を延出固定片72よりも長く設定し、野縁受け3の下面部に当該係合域と重合させるよう設定するなど、野縁5の側面部の面域の任意カ所に重合位置を設定してビス固定するようにしても良いことは勿論であるが、本実施例におけるビス固定位置は、両野縁支持受け部512、512間を挟んで対角対向する位置で、その離間長さを長尺なものとして軸芯が大きく離間した位置に設定されており、ビス同士の対角対向長さを短く軸芯を近接設定したものに比し、ビス固定カ所が2カ所であっても、野縁5のねじれ等の湾曲負荷に対して、延出固定片72側の側面片712などにビス固定しなくとも充分な固定強度が得られ、当該2カ所以外へのビス固定が不要となり使用するビス個数の削減と取り付け作業時間の短縮を図ることができる。
【0021】
次に、本発明の実施態様に係る耐震補強金具7の取り付け手順について、
図4(A)および(B)に基づいて説明する。これら図に示すように、耐震補強金具7を取り付けするには、2個を組として対向配置させて設けるようにする。先ず、組みとして取着された野縁固定金具51の両側から、互いに延出固定片72を野縁受け取付け部511に向けて、それぞれ野縁被嵌部71を、野縁5の開口側から逆U字状溝5aに跨がせて被嵌し、野縁受け取付け部511にスライド当接させてセットする。この時、延出固定片72は、その先端部が外側に広げて折曲され、かつ、野縁5の側面部と僅かに離間する隙間が形成されているので、対向する延出固定片72を有しない側の側面片712に均一に対向面接した重合状態でスムーズなセットが行えるようになっている。つまり、この重合状態とすることで、延出固定片72に穿設されたビス孔72aと、側面片712に打ち抜き形成された長孔71aとの中心孔が対向一致し、両者が均一に対向面接した重合状態で精度良くビス固定することができる。
【0022】
次いで、当該重合する延出固定片72と側面片712とを、ビス孔72aと長孔71aを介して野縁5の側面部に、薄板用ドリルタッピングビスなどを用いて長孔71aにドリル孔形成を伴いつつビス固定するだけで、僅かな作業時間をもって移動不能な状態に容易に取り付けすることができる。なお、指圧変形可能な薄板の野縁固定金具を片面に配設した既存の天井下地を耐震補強する際に、薄板の野縁固定金具を覆い被せる状態で、組みとして野縁固定金具51を用いた場合や、使用される野縁固定金具51の板厚が現場毎に異なり、その際、野縁受け3を挟んで取り付けられた野縁受け取付け部511同士の対向間隔も異なってくるため、ビス固定位置を長孔71aを介してビス固定位置を可変調整できるようになっている。
【0023】
この様に取り付けすると、野縁固定金具51の両側で、それぞれ野縁被嵌部71の上面片711が逆U字状溝5aの上面に面当てされ、かつ、その先端が野縁受け取付け部511に当接した状態で野縁5の開口側が覆われると共に、それぞれの長孔71aを有する側の係合域を有する側面片712の先端が野縁受け3の下面部に係合した状態で被嵌され、この係合状態の側面片712に対して、それぞれの延出固定片72の先端側が、野縁受け3の下面部となる野縁5の側面部を覆う状態で重合し、当該対角対向して重合する延出固定片72と側面片712とを野縁5の側面部にビス固定された状態となる。したがって、野縁固定金具51の両側となる野縁5の逆U字状溝5aの上面とその両側面部、および、野縁受け3の下面部となる野縁5の側面部を、係合域を有する側面片712の補強機能も加わって両野縁受け取付け部511を挟持した状態で一体化固定され、野縁固定金具51を介して取り付けられた野縁5の開口側周辺域全体が耐震補強され、野縁5自体の剛性強度を高めることができる。
【0024】
その結果、野縁5が長手方向(上下方向)やねじれ方向に傾動するような地震等の振動により、逆U字状溝5aに対して野縁支持受け部512の一方が離間し、他方が上動圧接するような振動負荷を受けると、野縁受け3の底面部の一方の角部がそれぞれ密着する逆U字状溝5aの上面を圧接し、他方の角部が離間する振動負荷を受けることになるが、この様な逆U字状溝5aの上面を圧接する荷重に対しては、離間する側の上面片711が対向する野縁受け取付け部511、511の拡開を規制しつつ、長孔71aを有する側の側面片712、712の係合域と、両側延出固定片72、72と、さらに野縁5自体の剛性力も加わって、これらが有機的に一体となった共同剛性力によって、野縁受け3の底面部角部の押圧加重を確りと受け止めることができ、振動負荷を分担して、薄板にて形成される野縁5自体のねじれや変形を防止して、両者間の密着状態を好適に保持し、野縁5と野縁受け3との間のガタツキの発生や野縁固定金具51、51などの位置ズレを防止することができる。
【0025】
叙述の如く構成された本発明の実施の形態において、いま、既設や新設施工が行われた躯体天井部1に対して、野縁支持受け部512による支持受け構造によ
り取り付けられた野縁5を耐震補強金具7によ
って耐震補強するのであるが、本発明にかかる耐震補強金具7は、野縁支持受け部512を含む野縁5の開口側を被嵌するよう、上面片711とその両端に折曲された側面片712とにより下向きコ字状に形成された野縁被嵌部71と、一方の側面片712を野縁受け3の下面域となる野縁5の側面部にオーバーラップするよう延出せしめた延出固定片72とを一体的に備え、野縁被嵌部71をそれぞれ野縁5に被嵌して、野縁受け取付け部511に互いにスライド当接することで、延出固定片72を他方の側面片712に重合せしめた状態で、組みとなる耐震補強金具7、7同士を対向配設し、当該重合する延出固定片72と側面片712とを、野縁5の側面部にビス固定することで、野縁5の開口側周辺面域を補強するよう構成されている。
【0026】
この様に構成すると、天井下地における野縁受け3に固定された野縁固定金具51を介して、野縁5を、その逆U字状溝5a内に挿入される野縁支持受け部512によって支持受けする構造ものでありながら、組みとして配設される耐震補強金具7、7のそれぞれの野縁被嵌部71、71を、野縁5の野縁受け取付け部511、511にスライド当接させ、延出固定片72、72を野縁受け3の下面域となる野縁5の側面部にオーバーラップして他方の側面片と重合させた状態で、野縁受け取付け部511、511を挟んで野縁5の側面部に対角線上に確りとビス固定して一体化できるので、対向する野縁被嵌部71によって両野縁受け取付け部511、511を挟持した状態で、一方の野縁支持受け部512側から他方の野縁支持受け部512側に至る野縁5の開口側周辺域全体が耐震補強され、野縁5自体の剛性強度を高めることができ、地震等の揺れにより、野縁受け3と密着する野縁5の逆U字状溝5aとの間に、前後左右等に傾動する上下方向やねじれ方向に振動負荷を受けた際に、野縁支持受け部512の立上り上端部が野縁5の逆U字状溝5aに集中して上動圧接し或いは離間するような振動負荷を、野縁被嵌部71で受け止めて分散することができ、野縁5の開口側の拡開や逆U字状溝5aの変形を防止することができるだけでなく、延出固定片72と野縁5の側面部との共同剛性力によって野縁受け3の下面部を確りと受け止めて規制し、野縁受け3等他の部材よりも薄板にて形成される野縁5自体のねじれや変形を防止して、両者間の密着状態を好適に保持し、野縁5と野縁受け3との間のガタツキの発生や野縁固定金具51などの位置ズレを防止することができる。
【0027】
その結果、野縁支持受け部512による支持受け構造の補強と、野縁5自体に対する補強とによる耐震強度を向上させる補強構造とが容易に構築できると共に、野縁支持受け部512の両側上端が逆U字状溝5aへ密着した良好な状態を恒久的に保持することができ、天井下地全体の耐震性を向上させて構造的品質特性の維持に寄与することができる。しかも、重合する延出固定片72と側面片712とが重合する面域を、1組の野縁固定金具51、51が対向配設された間隔幅が異なっていても、その幅変化に応じて、野縁被嵌部71を野縁受け取付け部511にスライド当接させてビス固定することができる幅調整域として機能させることができ、野縁5に対する耐震強度を向上させる補強を作業効率良く容易に行うことができる。
【0028】
また、延出固定片
72は、野縁受け
3の下面域を通過して、前記他方に配設された野縁支持受け部
512の野縁
5の側面部に及ばせて延出されているので、両野縁支持受け部512、512間を挟んで対角対向する位置で、その離間長さを長尺なものとして軸芯が大きく離間した位置に設定されており、ビス同士の対角対向長さを短く軸芯を近接設定したものに比し、ビス固定カ所が2カ所であっても、野縁5のねじれ等の湾曲負荷に対して、延出固定片72側の側面片712などにビス固定しなくとも充分な固定強度が得られ、当該2カ所以外へのビス固定が不要となり使用するビス個数の削減と取り付け作業時間の短縮を図ることができる。
【0029】
また、延出固定片72を有しない側の側面片712は、野縁受け3の下面域に延出して、当該下面域を支持受け係合するする係合域を有し形成されているので、野縁受け3の下面部によるとなる野縁5の側面部を、延出固定片72と重合する側面片712に加え、長孔71aを有する側の側面片712、712の係合域も加わった、これらが有機的に一体となった共同剛性力によって野縁受け3の下面部を確りと受け止めて規制し、野縁固定金具51を介して取り付けられた野縁5の開口側周辺域全体が耐震補強され、野縁5自体の剛性強度を高めることができるばかりか、延出固定片72と、重合する側面片712の係合域との長さを相対的に変更して、例えば側面片712の係合域を延出固定片72よりも長く設定し、野縁受け3の下面部に当該係合域と重合させるよう設定するなど、野縁5の側面部の面域の任意カ所に重合位置を可変設定することによっても、野縁受け3の下面部となる野縁5の側面部にオーバラップして剛性強度を高めることができる。
【0030】
また、延出固定片72、72は、野縁5の側面部との間に隙間を形成するように外方に折曲され、他方の側面片712、712に重合するよう構成されているので、当該重合する延出固定片72と側面片712とが野縁受け3を挟んで対角対向して配置された状態でビス固定することができ、野縁固定金具51の両側となる野縁5の逆U字状溝5aの上面とその両側面部、および、野縁受け3の下面部となる野縁5の側面部を、両野縁受け取付け部511を挟持した状態で強固に一体化固定され、野縁固定金具51を介して取り付けられた野縁5の開口側周辺域全体が耐震補強され、野縁5自体の剛性強度を高めることができ、一方の野縁被嵌部71に対する上下方向やねじれ方向の傾動を伴う振動負荷を、延出固定片72を介して対角対向して一体化された他方の野縁被嵌部71が分担して受け止めることができ、薄板にて形成される野縁5自体のねじれや変形や、耐震補強金具7、7同士のガタツキ発生を確実に防止することができる。
【0031】
また、延出固定片72にビス孔72aを穿設し、他方の側面片712にスライド方向に細幅の長孔71aがビス孔72aの対向位置に打ち抜き形成すると共に、重合する延出固定片72と側面片712は、1組の野縁固定金具51が対向する間隔幅の変化に応じてビス固定位置を可変調整可能に構成されている。
したがって、
指圧変形可能な薄板の野縁固定金具を片面に配設した既存の天井下地を耐震補強する際に、組みとして野縁固定金具51を用いた場合や、使用される野縁固定金具51の板厚が現場毎に異なり、その際、野縁受け3を挟んで取り付けられた野縁受け取付け部511同士の対向間隔も異なっていても、当該対向間隔幅に応じて耐震補強金具7、7同士を確りと固定することができる。
【0032】
また、上面片711には、野縁固定金具51の垂下部に縦方向に形成された補強リブを嵌装する円弧状の凹溝部71bが形成されているので、上面片711の先端を当該補強リブをよけて野縁受け取付け部511に密着当接することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 躯体天井部
2 ボルト
3 野縁受け
31 野縁受けハンガー
4 振れ止め
41 振れ止め固定金具
5 野縁
5a 逆U字状溝
51 野縁固定金具
511 野縁受け取付け部
512 野縁支持受け部
6 天井パネル
7 耐震補強金具
71 野縁被嵌部
711 上面片
712 側面片
71a 長孔
71b 凹溝部
72 延出固定片
72a ビス孔