(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6572710
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】端子構造、蓄電装置及び蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 2/30 20060101AFI20190902BHJP
H01M 2/20 20060101ALI20190902BHJP
H01M 2/10 20060101ALI20190902BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20190902BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20190902BHJP
H01G 11/74 20130101ALI20190902BHJP
H01G 11/10 20130101ALI20190902BHJP
H01G 2/02 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
H01M2/30 B
H01M2/20 A
H01M2/10 E
H01M10/48 P
H01M10/04 Z
H01G11/74
H01G11/10
H01G2/02 101E
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-191888(P2015-191888)
(22)【出願日】2015年9月29日
(65)【公開番号】特開2017-68989(P2017-68989A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】早川 文隆
【審査官】
宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−229350(JP,A)
【文献】
特開2015−125943(JP,A)
【文献】
特開2012−177589(JP,A)
【文献】
特開2001−155714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/20− 2/34
H01M 2/10
H01M 10/00−10/0587
H01G 11/00−11/86
H01G 2/00− 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を収容するケースを備えた蓄電装置における端子構造であって、
前記ケースの内部と外部とを連通する連通孔を有する前記ケースの一側面部と、
前記連通孔において前記ケースの内部と外部とにわたって延在し、前記電極に電気的に接続された端子部材と、
前記ケースの外部において前記端子部材の外周面に取り付けられ、前記端子部材を前記一側面部に固定する固定部材と、を備え、
前記固定部材は、当該固定部材の外形を形成する面に形成された開口部から前記端子部材の外周面にまで連通する検査孔が形成されている、端子構造。
【請求項2】
前記検査孔は、前記端子部材の延在する方向に直交する方向に延在する、請求項1記載の端子構造。
【請求項3】
前記検査孔は、複数形成されている、請求項1又は2記載の端子構造。
【請求項4】
前記検査孔の内周面は、絶縁性材料により覆われている、請求項1〜3の何れか一項に記載の端子構造。
【請求項5】
前記固定部材はナットであり、
前記ナットは、前記端子部材の外周面に形成されてネジ溝に螺合可能に形成されている、請求項1〜4のいずれか一項記載の端子構造。
【請求項6】
正極電極及び負極電極を収容するケースと、
請求項1〜4のいずれか一項記載の端子構造を有する正極端子及び負極端子と、
を備えている、蓄電装置。
【請求項7】
正極端子と負極端子とが互いに対向する方向を第一方向としたとき、
前記検査孔は、前記第一方向に沿って延在し、
前記正極端子及び前記負極端子の一方に形成される前記検査孔における前記開口部は、前記正極端子及び前記負極端子の他方が配置されている側とは反対側に形成されている、請求項6記載の蓄電装置。
【請求項8】
正極電極及び負極電極を収容するケースと、請求項1〜5のいずれか一項記載の端子構造を有する正極端子及び負極端子と、を備えている、複数の蓄電装置と、
複数の前記蓄電装置の前記端子部材同士がバスバーによって電気的に接続されている、蓄電モジュール。
【請求項9】
正極端子と負極端子とが互いに対向する方向を第一方向としたとき、
複数の前記蓄電装置のそれぞれに形成される前記検査孔の開口部は、一方向に配列された複数の前記蓄電装置を前記第一方向から見たときに全て目視可能に配置されている、請求項8記載の蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子構造、蓄電装置及び蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のリチウムイオン電池等の蓄電装置を一方向に配列し、これらの蓄電装置が電気的に接続された蓄電モジュールが知られている。このような蓄電モジュールの組立は、一方向に複数の蓄電装置を配列し、これらの蓄電装置をエンドプレートによって挟持することによって拘束した後、それぞれの蓄電装置の端子をバスバーによって電気的に接続することによって行われる。組み立てられた蓄電モジュールは、例えば、特許文献1に開示されるような短絡検査等、様々な検査が実施される。このような検査の一つとして、バスバーを端子に締結した後に、正極端子と負極端子との接触抵抗を取得する検査(以後、「接触抵抗検査」と称する。)がある。これにより、バスバーを端子に締結した際の異物の噛み込み有無を確認している。
【0003】
組立後の電池モジュールは、正極端子及び負極端子の上端面は、バスバーに接触され、正極端子及び負極端子の外周面は、正極端子及び負極端子をケースに固定するためのナット等により覆われているので、正極端子及び負極端子に、抵抗測定器のリード棒を直接接触させることができない。そこで、上記接触抵抗検査では、バスバーが締結される前の状態において、正極端子と負極端子との電池の内部抵抗を交流抵抗計で測定(測定値R1)する。具体的には、正極端子及び負極端子に交流抵抗計のリード棒を接触させることにより抵抗を測定する。次に、バスバーを締結した後、バスバーを含めた正極端子と負極端子との抵抗を交流抵抗計で測定(測定値R2)する。具体的には、正極端子及び負極端子にそれぞれ締結されたバスバーに交流抵抗計のリード棒を接触させることにより接触抵抗を測定する。そして、測定値R2から測定値R1を引き算することにより、正極端子又は負極端子のバスバー締結部分の接触抵抗値を取得している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−95312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の接触抵抗検査では、バスバーを締結する前と後とで、2回の測定を行う必要があり作業性に劣る。また、電池の内部抵抗は交流抵抗計でしか測定できないが、交流抵抗計は周囲の金属による渦電流の影響を受けるため、直流抵抗計を用いる場合と比べて精度に劣る。
【0006】
そこで、本発明は、正極端子又は負極端子のバスバー締結部分の接触抵抗を検査する際の作業性及び検査精度を向上させることができる、端子構造、蓄電装置及び蓄電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の端子構造は、電極を収容するケースを備えた蓄電装置における端子構造であって、ケースの内部と外部とを連通する連通孔を有するケースの一側面部と、連通孔において前記ケースの内部と外部とにわたって延在し、電極に電気的に接続された端子部材と、ケースの外部において端子部材の外周面に取り付けられ、端子部材を一側面部に固定する固定部材と、を備え、固定部材は、当該固定部材の外形を形成する面に形成された開口部から端子部材の外周面にまで連通する検査孔が形成されている。
【0008】
この構成の端子構造では、端子部材の外周面に取り付けられる固定部材に、端子部材の外周面にアクセスするための検査孔が形成されている。すなわち、蓄電モジュールとして上記構成の端子構造を有する蓄電装置が組み付けられた場合であっても、バスバー等の接続部材を取り外すことなく、端子部材へのアクセス経路が確保される。これにより、上記検査孔を介して抵抗計のリード棒を正極端子と負極端子に直接接触させて、正極端子と負極端子との接触抵抗を測定できるようになるので、従来、蓄電モジュールとして組み立てる前に行っていた正極端子と負極端子との接触抵抗の測定を省略することができる。また、抵抗計のリード棒を正極端子と負極端子とに直接接触させることができるので、交流抵抗計ではなく直流抵抗計を使用することができる。これらの結果、正極端子又は負極端子のバスバー締結部分の接触抵抗を検査する際の作業性及び検査精度を向上させることができる。
【0009】
本発明の端子構造では、端子部材が延在する方向に直交する方向に延在していてもよい。この構成の端子構造によれば、検査孔に挿入された抵抗計のリード棒を端子部材に直交させ易くなる。これにより、検査精度をより向上させることができる。
【0010】
本発明の端子構造では、検査孔は、複数形成されていてもよい。この端子構造によれば、抵抗計のリード棒を挿入する検査孔の選択肢が増えるので、電池モジュールとして組み付けられた際に、リード棒を挿入することができない事象が発生する確率を低減することができる。
【0011】
本発明の端子構造では、検査孔の内周面は、絶縁性材料により覆われていてもよい。この端子構造によれば、抵抗計のリード棒が検査孔の内周面に接触した場合であっても、接触抵抗を正確に測定することができる。
【0012】
本発明の端子構造では、固定部材はナットであり、ナットは、端子部材の外周面に形成されてネジ溝に螺合可能に形成されていてもよい。この端子構造によれば、端子部材をケースの一側面部に容易に固定することができる。
【0013】
本発明の蓄電装置は、正極電極及び負極電極を収容するケースと、上記端子構造を有する正極端子及び負極端子と、を備えている。この構成の蓄電モジュールでは、正極端子又は負極端子のバスバー締結部分の接触抵抗を検査する際の作業性及び検査精度を向上させることができる。
【0014】
本発明の蓄電装置によれば、正極
端子と負極
端子とが互いに対向する方向を第一方向としたとき、検査孔は、第一方向に沿って延在し、正極
端子及び負極
端子の一方に形成される検査孔における開口部は、正極
端子及び負極
端子の他方が配置されている側とは反対側に形成されていてもよい。
【0015】
この構成の蓄電装置では、抵抗計のリード棒を正極端子と負極端子との間から検査孔に挿入することはなく、常に蓄電装置の外側方向から内側方向に向かってリード棒を挿入することになる。これにより、正極端子又は負極端子のバスバー締結部分の接触抵抗を検査する際の作業性をより向上させることができる。
【0016】
本発明の蓄電モジュールは、正極電極及び負極電極を収容するケースと、上記端子構造を有する正極端子及び負極端子と、を備えている、複数の蓄電装置と、複数の蓄電装置の端子部材同士がバスバーによって電気的に接続されている。
【0017】
この構成の蓄電モジュールでは、端子部材の外周面に取り付けられる固定部材に、端子部材の外周面にアクセスするための検査孔が形成されている。すなわち、蓄電装置が蓄電モジュールとして組み付けられた場合であっても、バスバーを取り外すことなく、端子部材へのアクセス経路が確保される。これにより、上記検査孔を介して抵抗計のリード棒を正極端子又は負極端子に直接接触させて、正極端子又は負極端子のバスバー締結部分の接触抵抗を測定できるようになるので、従来、蓄電モジュールとして組み立てる前に行っていた正極端子と負極端子との電池の内部抵抗の測定を省略することができる。また、抵抗計のリード棒を正極端子と負極端子とに直接接触させることができるので、交流抵抗計だけでなく直流抵抗計を使用することができる。これらの結果、正極端子又は負極端子のバスバー締結部分の接触抵抗を検査する際の作業性及び検査精度を向上させることができる。
【0018】
本発明の蓄電モジュールは、正極
端子と負極
端子とが互いに対向する方向を第一方向としたとき、複数の蓄電モジュールのそれぞれに形成される検査孔の開口部は、一方向に配列された複数の蓄電装置を第一方向から見たときに全て目視可能に配置されていてもよい。
【0019】
この構成の蓄電モジュールでは、抵抗計のリード棒を正極端子と負極端子との間から検査孔に挿入することはなく、常に蓄電装置の外側方向から内側方向に向かってリード棒を挿入することになる。これにより、正極端子又は負極端子のバスバー締結部分の接触抵抗を検査する際の作業性をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、バスバー締結後の正極端子と負極端子との接触抵抗を検査する際の作業性及び検査精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】一実施形態に係る電池セルを備える電池モジュールを示す斜視図である。
【
図3】
図2に示す正極端子の近傍を拡大して示した断面図である。
【
図4】
図3に示すナットの検査孔を示した斜視図である。
【
図5】
図2に示す負極端子の近傍を拡大して示した断面図である。
【
図6】
図1の電池モジュールを第一方向から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して一実施形態について説明する。図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。また、説明中、「上」、「下」などの方向を示す語は、図面に示された状態に基づいた便宜的な語である。
【0023】
図1に示されるように、電池モジュール(蓄電モジュール)1は、一方向(配列方向D)に配列される複数の電池セル(蓄電装置)10を有する。複数の電池セル10は、拘束具3によって一体化されている。拘束具3は、例えば、複数の電池セル10を並設方向から挟み込む一対のエンドプレート3Aと、電池セル10の側方に配置されると共に一対のエンドプレート3A,3Aを連結する棒状の連結部材3Bと、複数の電池セル10をエンドプレート3Aによって挟み込んだ状態でエンドプレート3Aに連結部材3Bを固定するボルト3Cと、によって構成されている。この拘束具3により、複数の電池セル10に対して拘束荷重が付加されている。
【0024】
複数の電池セル10は、隣接する電池セル10,10の一方の電池セル10の負極端子70と、他方の電池セル10の正極端子50とがバスバー5によって接続されている。複数の電池セル10の配列方向は、一つのケース11に配置された正極端子50と負極端子70との軸を繋ぐ直線に略直交する方向である。言い換えれば、正極端子50と負極端子70とが互いに対向する方向(第一方向)に略直交する方向である。電池セル10間には、それらの電池セル10が短絡することを防止すると共に、放熱のために放熱板といった部材(図示せず)が設けられてもよい。
【0025】
図2に示されるように、電池セル10は、ケース11と電極組立体20とを備えている。ケース11は、例えば略直方体状の筐体であり、例えば、アルミニウム等の金属により形成されている。
【0026】
電極組立体20は、ケース11に収容されている。電極組立体20は、複数の正極電極30及び複数の負極電極40と、正極電極30と負極電極40との間に配置された複数のセパレータと、を備えている。正極電極30及び負極電極40は、セパレータを介して所定の方向(
図2の紙面奥行き方向)に沿って交互に積層されている。セパレータは、例えば微多孔膜であり、正極電極30と負極電極40との間で電解液を保持している。電解液は、例えば有機溶媒系又は非水系の電解液である。
【0027】
正極電極30は、例えばアルミニウム箔等の金属箔と、金属箔の両面に設けられた正極活物質層と、を有している。正極活物質層は、例えば、正極活物質とバインダとを含んで構成される。正極活物質としては、例えば、複合酸化物、金属リチウム、及び硫黄等が挙げられる。複合酸化物は、例えば、マンガン、ニッケル、コバルト、及びアルミニウムの少なくとも一つと、リチウムと、を含む。正極電極30は、上縁に形成されたタブ33を有する。タブ33には、正極活物質が担持されておらず、正極電極30は、タブ33を介して導電部材34に電気的に接続されている。
【0028】
負極電極40は、例えば銅箔等の金属箔と、金属箔の両面に設けられた負極活物質層と、を有している。負極活物質層は、例えば、負極活物質とバインダとを含んで構成される。負極活物質としては、例えば、黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、及びソフトカーボン等のカーボン、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、金属化合物、SiOx(0.5≦x≦1.5)等の金属酸化物、並びに、ホウ素添加炭素等が挙げられる。負極電極40は、上縁に形成されたタブ43を有する。タブ43には、負極活物質が担持されておらず、負極電極40は、タブ43を介して導電部材44に電気的に接続されている。
【0029】
次に、正極端子50及び負極端子70の端子構造について説明する。まず、正極端子50の端子構造について説明する。
図3に示されるように、正極端子50は、蓋部材(ケースの一側面部)12と、端子部材51と、ナット60と、第一絶縁部65と、第二絶縁部67と、封止部69と、を備えている。
【0030】
蓋部材12は、ケース11の一側面部を構成する板状の部材である。蓋部材12は、例えば、ケース11の上面を構成し、ケース11の蓋として機能する。蓋部材12は、ケース11と同様に、例えばアルミニウム等の金属により形成されている。蓋部材12は、ケース11の開口形状に対応するように、例えば長方形に形成されている。蓋部材12は、例えば、その外縁部がケース11に溶接されることによってケース11に接合され、ケース11の内部を気密に封止する。
【0031】
蓋部材12は、ケース11の内部と外部とを連通する連通孔13を有している。つまり、連通孔13は、蓋部材12の内面12aから外面12bまで貫通している。連通孔13は、例えば平面視において円形状に形成されている。連通孔13は、後述するように、ケース11内において電極組立体20に電気的に接続された端子部材51を、ケース11の外部に引き出すための孔である。
【0032】
端子部材51は、連通孔13においてケース11の内部から外部に突出する突出部53と、ケース11の内部において蓋部材12と対向する対向部55と、を有している。端子部材51は、例えば、アルミニウム等の金属によって形成される。
【0033】
突出部53は、略円筒形状に形成され、連通孔13においてケース11の内部と外部とにわたって延在している。突出部53の外周面53aには、後段にて詳述するナット60が締結される。外周面53aのうち、少なくともナット60が締結される部分には、ナット60の締結のためのねじ溝が形成されている。また、突出部53の上面53bには、上述したバスバー5の固定用のボルト6が締結される締結孔53cが形成されている。バスバー5は、上面53bで端子部材51に接触することにより端子部材51に電気的に接続されている。
【0034】
対向部55は、突出部53と一体に形成され、ケース11の内部において蓋部材12と対向する。対向部55は、例えば、内面12aに沿うように平板状に延在している。対向部55は、中央部において突出部53の基端に接続されている。
【0035】
端子部材51は、正極電極30に電気的に接続されている。具体的には、対向部55から延設された集電板57が、導電部材34に電気的に接続されている。上述したように、導電部材34は、正極電極30のタブ33に電気的に接続されている(
図2参照)。これにより、端子部材51は、導電部材34を介して正極電極30に電気的に接続されている。
【0036】
ナット60は、端子部材51を蓋部材12に対して固定する。ナット60は、ケース11の外部において突出部53に取り付けられている。具体的には、ナット60は、上述した突出部53の外周面53aに形成されたねじ溝に螺合されることにより、端子部材51をケース11の蓋部材12に固定する。ナット60は、例えば、ステンレス等の金属によって形成されている。また、ナット60は、当該ナット60の外形を形成する面に形成された開口部61aから端子部材51における突出部53の外周面53aにまで連通する検査孔61が形成されている。
【0037】
検査孔61は、端子部材51(突出部53)の延在する方向に直交する方向であって、蓋部材12の面方向に平行な方向に延在する。検査孔61は、
図4に示されるように、延在方向に直交する断面の形状が円形であり、その半径は、例えば、1.7mm〜2.0mmである。また、延在方向における開口部61aから突出部53の外周面53aまでの長さは、例えば、3.0mm〜5.0mmである。検査孔61は、例えば、六角ナットに孔加工を施すことにより形成することができる。
【0038】
検査孔61は、正極端子50の端子部材51及び負極端子70の端子部材51の一方に形成される検査孔61における開口部61aは、正極端子50及び負極端子70の他方が配置されている側とは反対側に形成されている。具体的には、
図6に示されるように、複数の電池セル10のそれぞれに形成される検査孔61の開口部61aは、一方向に配列された複数の電池セル10を、正極端子50と負極端子70とが互いに対向する方向(第一方向)から見たときに全て目視可能に配置されている。言い換えれば、検査孔61は、全て同じ方向に向かって開口している。
【0039】
このような構成とする場合、例えば、端子部材51の外周面に形成されたネジ溝に対するナット60の螺合開始位置と、開口部61aの位置との関係を一定にすることが好ましい。これにより、ナット60の締め付けトルクをほぼ一定にしたまま、検査孔61の開口部61aを同じ方向に向けることができる。
【0040】
検査孔61の内周面は、絶縁性のポリアセタール、超高分子量ポリエチレン、又はポリエチレンテレフタレートにより形成されたコーティング層63が形成されている。コーティング層63の厚みは、例えば、0.5mm〜1.0mmとすることができる。
【0041】
第一絶縁部65は、ナット60と蓋部材12との間に配置されている。第一絶縁部65は、ナット60と蓋部材12との間に配置される本体部65aと、本体部65aと一体に形成された延在部65b及び縁部65cと、を有している。第一絶縁部65は、蓋部材12の外面12b、蓋部材12の連通孔13、端子部材51、及びナット60に接触しており、蓋部材12と端子部材51とを電気的に絶縁する。第一絶縁部65は、例えば、ポリフェニレンスルフィド等の樹脂材料によって形成されている。
【0042】
本体部65aは、突出部53を囲むように形成され、例えば、円環状に形成されている。本体部65aの内周面は、突出部53の外周面53aに接触している。延在部65bは、本体部65aの中央部から下方に延設されている。延在部65bは、突出部53を囲むように筒状に形成されている。延在部65bは、突出部53と連通孔13との間で、ケース11の外部から内部まで延在している。縁部65cは、本体部65aの外周部から突設している。
【0043】
第二絶縁部67は、蓋部材12の内面12a及び対向部55に接触し、蓋部材12と端子部材51の対向部55とを電気的に絶縁する。第二絶縁部67は、例えば、ポリフェニレンスルフィド等の樹脂材料によって形成されている。
【0044】
封止部69は、ケース11の内部に充填される電解液がケース11の外部へ漏出することを防止する。封止部69は、例えば、ゴム等の弾性を有する材料によって形成されたOリングである。封止部69は、蓋部材12の内面12a、端子部材51、及び第二絶縁部67により囲われる空間に配置されている。
【0045】
次に、負極端子70の端子構造について説明する。
図5に示されるように、負極端子70は、蓋部材12と、端子部材51と、ナット60と、第一絶縁部65と、第二絶縁部67と、封止部69と、を備えている。なお、負極端子70の端子構造は、端子部材51が、例えば銅等の金属によって形成されている点と、端子部材51が導電部材44を介して負極電極40に電気的に接続されている点と、を除き同じ構成となっている。したがって、ここでは、同じ構成には、同じ参照符号を付して説明を省略する。
【0046】
電池モジュールは、以下のように組み立てられる。最初に、
図2に示されるような電池セル10が準備され(本実施形態では七個の電池セル10を準備する)、複数の電池セル10が一方向に配列される。一方向に配列された電池セル10は、拘束具3によって一体化される。具体的には、複数の電池セル10は、並設方向から一対のエンドプレート3A,3Aによって挟持され、電池セル10の側方に配置されると共に一対のエンドプレート3A,3Aを連結する棒状の連結部材3Bとボルト3Cによって拘束荷重が付加される。
【0047】
次に、端子部材51の上面53bにバスバー5が載置された状態で、ボルト6が締結孔53cに締結されることにより、バスバー5が端子部材51に固定される。このような方法で、隣接する電池セル10,10の一方の電池セル10の負極端子70と、他方の電池セル10の正極端子50とがバスバー5によって接続され、複数の電池セル10が直列に接続され、蓄電モジュールとなる。そして、上記検査孔61を介して直流抵抗計のリード棒が正極端子50の端子部材51と負極端子の端子部材51とに直接接触されて、正極端子50と負極端子との接触抵抗が測定される。
【0048】
上記実施形態の電池モジュール1では、端子部材51の外周面53aに取り付けられるナット60に、端子部材51の外周面53aにアクセスするための検査孔61が形成されている。すなわち、電池モジュール1として電池セル10が組み付けられた場合であっても、バスバー5を取り外すことなく、端子部材51へのアクセス経路が確保される。これにより、上記検査孔61を介して直流抵抗計のリード棒を正極端子50の端子部材51と負極端子の端子部材51に直接接触させて、正極端子50と負極端子との接触抵抗を測定できるようになる。このため、従来、電池モジュール1として組み立てる前に行っていた正極端子50の端子部材51と負極端子の端子部材51との接触抵抗の測定を省略することができる。また、抵抗計のリード棒を正極端子50の端子部材51と負極端子の端子部材51とに直接接触させることができるので、交流抵抗計だけでなく直流抵抗計を使用することができる。これらの結果、バスバー5を締結後の正極端子50と負極端子70との接触抵抗を検査する際の作業性及び検査精度を向上させることができる。
【0049】
上記実施形態では、端子部材51が延在する方向に直交する方向に検査孔61が延在しているので、検査孔61に挿入された抵抗計のリード棒を端子部材51に直交状態で接触させ易くなる。これにより、検査精度をより向上させることができる。
【0050】
上記実施形態では、検査孔61の内周面は、絶縁性材料により覆われるコーティング層63が形成されている。これにより、抵抗計のリード棒が検査孔61の内周面に接触した場合であっても、接触抵抗を精度高く測定することができる。
【0051】
上記実施形態では、複数の電池セル10のそれぞれに形成される検査孔61の開口部61aは、一方向に配列された複数の電池セル10を、正極端子50と負極端子70とが互いに対向する方向(第一方向)から見たときに全て目視可能に配置されている。これにより、正極端子50と負極端子70との接触抵抗を検査する際には、抵抗計のリード棒を正極端子50と負極端子70との間から検査孔61に挿入することはなく、常に電池セル110の外側方向から内側方向に向かってリード棒を挿入することになる。この結果、バスバー5締結後の正極端子50と負極端子70との接触抵抗を検査する際の作業性をより向上させることができる。
【0052】
以上、一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0053】
上記実施形態では、ナット60に一つの検査孔61が形成されている例を挙げて説明したが、複数の検査孔61が形成されていてもよい。例えば、固定部材として六角ナットを採用する場合には、六角ナットの外形を形成する六つの側面のうち、連続する2面の一方に開口部61aが形成される構成(合計三つの検査孔61が形成される構成)とすることができる。この場合、六角ナットに複数の検査孔61を設ける場合であっても、六角ナットの強度の低下を抑制することができる。
【0054】
このような構成とすれば、抵抗計のリード棒を挿入する検査孔61の選択肢が増えるので、電池セル10が電池モジュール1として組み付けられた際に、リード棒を挿入することができない事象が発生する確率を低減することができる。また、ナット60を端子部材51に締結する際にトルクによって締め付けが管理される場合であっても、正極端子50及び負極端子70の一方に形成される検査孔61における開口部61aが、正極端子50及び負極端子70の他方が配置されている側とは反対側に向く可能性が高くなる。この結果、バスバー5締結後の正極端子50と負極端子70との接触抵抗を検査する際の作業性をより向上させることができる。
【0055】
上記実施形態では、検査孔61が、端子部材51の突出部53の延在方向に直交するように延在する例を挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、検査孔61は、端子部材51の突出部53の延在方向に斜め方向に交差するように延在していてもよい。また、上記実施形態では、ナット60の外形を形成する面の一部である側面に開口部61aが形成されている例を挙げて説明したが、例えば、ナット60の上面の一部に開口部61aが形成されてもよい。また、検査孔61の開口部61aは、どの方向を向いていてもよい。
【0056】
また、例えば、積層型の電極組立体20に代えて巻回型の電極組立体が用いられてもよい。巻回型の電極組立体は、帯状の正極、帯状の負極及び帯状のセパレータを積層させた状態で軸線の周りに巻回することによって作製される。
【0057】
蓄電装置として、電池セル10の他に、例えば電気二重層キャパシタなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0058】
1…電池モジュール(蓄電モジュール)、3…拘束具、5…バスバー、6…ボルト、10…電池セル(蓄電装置)、11…ケース、12…蓋部材(ケースの一側面部)、13…連通孔、20…電極組立体、30…正極電極、40…負極電極、50…正極端子、51…端子部材、53…突出部、60…ナット(固定部材)、61…検査孔、61a…開口部、63…コーティング層、70…負極端子。