特許第6572711号(P6572711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6572711
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】鉛蓄電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/12 20060101AFI20190902BHJP
   H01M 2/18 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   H01M10/12 K
   H01M2/18 R
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-192809(P2015-192809)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-69023(P2017-69023A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100199691
【弁理士】
【氏名又は名称】吉水 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100127513
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 悟
(72)【発明者】
【氏名】京 真観
【審査官】 守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭52−161217(JP,U)
【文献】 実開平05−002369(JP,U)
【文献】 特開2003−092098(JP,A)
【文献】 実開昭60−003558(JP,U)
【文献】 欧州特許出願公開第0935299(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/12
H01M 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板と負極板とをセパレータを介して積層した極板群と、電解液と、前記極板群を収納した電槽を備えた鉛蓄電池であって、
正極ストラップ又は負極ストラップのうち少なくとも一方のストラップの直下における両端の耳の外端間の長さAが、前記少なくとも一方のストラップに接続された極板のうち両端に位置する極板における上部枠骨部の積層方向外端間の長さBより小さく、
前記セパレータは、正極板と向かい合う面及び負極板と向かい合う面のうち、少なくとも一方の面に複数のリブを有し、
前記リブは、前記セパレータの少なくとも一方の面において、前記正極板の幅方向の中央部又は前記負極板の幅方向の中央部に対向する第一リブの突出方向への高さ(T)が、前記正極板の幅方向の端部又は前記負極板の幅方向の端部に対向する第二リブの突出方向への高さ(T)より低いことを特徴とする鉛蓄電池。
【請求項2】
前記第一リブの突出方向への高さ(T)と第二リブの突出方向への高さ(T)との比T/Tが、T/T≧1.2の関係式を満たすことを特徴とする請求項1の鉛蓄電池。
【請求項3】
前記正極板の幅方向中央部における前記極板群の極板積層方向の厚さが、前記正極板の幅方向端部における前記極板群の極板積層方向の厚さ以上であることを特徴とする請求項1又は2の鉛蓄電池。
【請求項4】
前記鉛蓄電池はアイドリングストップ車用の鉛蓄電池であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の鉛蓄電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は鉛蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池を、不完全な充電状態(PSOC(Partial state of charge))で使用する用途が多くなっている。
例えば、アイドリングストップ車(IS)では、停車の都度エンジンを停止させることにより燃料消費量を少なくし、発進時に鉛蓄電池からの電力でエンジンを起動している。このため鉛蓄電池は、充電不足の状態で使用される。IS用途に限らず、エネルギー効率を向上させるために、鉛蓄電池への充電を避け、しかも鉛蓄電池から取り出す電力が増加しているので、鉛蓄電池は充電不足な状態に置かれることが多い。
【0003】
鉛蓄電池では、放電時に両極板で硫酸が消費され、正極では水が生成し、充電時に両極板から硫酸が放出され、下部に高比重の硫酸が蓄積しやすい。この結果、電解液の硫酸濃度に上下差が生じる成層化が起こるが、充電量が充分(過充電)な場合、充電末期に極板から発生するガスにより電解液が撹拌され、成層化は解消する。
しかし、PSOCで使用される鉛蓄電池では過充電量が少ないため、電解液の成層化が解消し難い。硫酸比重が高くなった下部では、充電受入性が低くなり、負極板下部においてサルフェーション(硫酸鉛の蓄積)が進行する。また、充放電反応が極板上部に集中するから、正極板上部の活物質の劣化が促進され、寿命性能が低下する。
【0004】
PSOCで使用される電池の成層化抑制を図る手段として、硫酸イオンの沈降速度や水の上昇速度を遅らせるために硫酸イオンや水の移動時の抵抗を大きくする方法が知られている。
特許文献1には、「ペースト式の正極板と負極板との間に、上下方向に延伸した複数の縦リブがベースとなる薄膜に形成されたセパレータが介在している液式鉛蓄電池であって、前記セパレータのベース厚さT1(mm)と、前記セパレータを介して対向する正極板と負極板との極板間の距離T2(mm)と、前記縦リブ形成箇所における前記セパレータの総厚さT3(mm)と、前記縦リブの間隔W(mm)とが、下記式(1)及び式(2)で表される関係を満たすことを特徴とする液式鉛蓄電池。
1.5≦(T2−T1)×W≦3.5・・・式(1)
0.8≦T3/T2≦1.1・・・式(2)」(請求項1)の発明が記載されている。
【0005】
また、セパレータに高さの異なる縦リブを形成することも知られている。
特許文献2には、「袋状セパレータの外表面には、前記両側縁間を幅方向としたときに、前記幅方向の中央部の大部分に、前記幅方向に概略直交する第1の縦リブの複数を相互に平行に配置し、前記袋状セパレータの外表面の両側部であって、かつ前記正極板の端部に対向する部分及びその近傍に、前記第1の縦リブに平行な第2の縦リブの複数を相互に平行に配置し、隣接しあう2本の前記第2の縦リブの間隔は、隣接しあう2本の前記第1の縦リブの間隔よりも短く、前記第2の縦リブの前記袋状セパレータの表面からの突出高さをT2、前記第1の縦リブの前記袋状セパレータの表面からの突出高さをT1としたときに、T2<T1、かつT2≧0.2mm以上であり、前記正極板は、縦枠骨を有しないエキスパンド格子を備え、前記縦枠骨を有さない正極板の端部が、前記第2の縦リブに対向する鉛蓄電池。」(請求項1)の発明が記載されている。
そして、具体的な比較例の電池A1、B1として、T2/T1比が1.11のものが表1に記載されている。
【0006】
特許文献3には、「表面に多数のリブを突設した袋状セパレータの中に負極板が収容され、前記袋状セパレータの前記リブに接触させて正極板が重ねられて極板群が形成されて電槽に収容されている鉛蓄電池において、前記袋状セパレータの前記負極板の幅寸法より外側に位置する部分に設けた前記リブの高さが、前記負極板の幅寸法の内側に位置する前記各リブの高さより高い鉛蓄電池。」(請求項1)の発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015−22921号公報
【特許文献2】特開2010−140772号公報
【特許文献3】特開2003−92098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
PSOCで使用される鉛蓄電池においては、過放電状態になりやすく、極板の表面付近では放電反応により硫酸が消費され、電解液の比重が低くなっている。低比重の電解液中では鉛イオンの量が増え、この鉛イオンが充電時に負極で還元・析出してデンドライトが成長し、セパレータ内に鉛が浸透する浸透短絡が加速する。しかし、浸透短絡が極板の全体で均一に発生するのか、あるいは特定領域で発生しやすいのかはこれまで完全には明らかになっていなかった。
【0009】
一方、鉛蓄電池の製法手段として、COS方式によるストラップ形成を行う場合がある。COS方式は、ストラップと同形状の凹部を彫り込んだ鋳型の該凹部に鉛又は鉛合金を溶融させた溶鉛を流し込み、該溶鉛中に同極性の極板の耳の先端を該溶鉛へ浸漬して該溶鉛の熱で前記耳を溶かした後、冷却凝固させて前記耳と一体化したストラップを形成するものである。
【0010】
耳とストラップの溶着を確実にするためには、同極性の両端の極板の耳の外側に溶鉛が流れ込む隙間が必要である。したがって、例えば図1に示す負極ストラップについてみると、ストラップの下面に接する両端の耳の外端間の長さA(以下、「ストラップ直下の耳群長A」又は「耳群長A」といい、単に「長さA」又は「A」ともいう。)は、前記鋳型の凹部の長さ、すなわちストラップの長さより短い。
また、COS方式においては、鋳型の形状を変更しない場合、極板枚数を多くするなどして積層方向における極板群の厚さ寸法が相当に長くなったとき、負極ストラップに接続された負極板のうち両端に位置する負極板の集電体における上部枠骨部の積層方向外端間の長さB(以下、「上部極板群長B」といい、単に「長さB」又は「B」ともいう。)が、ストラップ直下の耳群長Aと比べて長くなる。なお、上部極板群長Bは極板の幅方向中央における値とする。正極ストラップの下面に接する両端の耳の外端間の長さと正極ストラップに接続された正極板のうち両端に位置する正極板の集電体における上部枠骨部の積層方向外端間の長さについても同様の関係となる。
【0011】
本発明者は、上述した浸透短絡は、極板群の上部、中でもとくに極板の幅方向中央部で発生頻度が高いということを発見した。さらに、耳群長Aと上部極板群長Bの大小関係について検討した結果、A<Bであると、浸透短絡の発生が顕著となることを見出した。また、そのようなことに加えて、本発明者は、A<Bであると、耐浸透短絡性能は低下するが、低温高率放電特性が向上することも見出した。A≧Bであると、A<Bの場合と比べて浸透短絡は抑制される。しかし、A≧Bとするためには、A<Bとする場合と比べてストラップを大形化する必要が有り、その結果、たとえば、材料コストが高くなる、鋳型を更新する必要がある、あるいはJISD5301に規定されているような所定寸法の電槽内に収納することが困難になる、といったことが起こり得る。
【0012】
特許文献1に記載された発明は、セパレータのベース厚さ、総厚さ、リブ間隔及び極板距離の関係を特定することにより、正極板とセパレータとの間の空間を細かく分割し、イオンの沈降や水の上昇に適度な抵抗を与えることにより、PSOCで使用される電池の成層化抑制を図るものである(段落[0002]〜[0007])。しかし、耐浸透短絡性能について考慮したものではない。
【0013】
特許文献2,3に記載された発明は、正極板とセパレータの間隔を、セパレータの幅方向のリブ高さを端部と中央部とで異なるように調整することにより、正極板の腐食伸びによる活物質の脱落や、セパレータの破損による短絡を防止することを目的とするものであり、耐浸透短絡性能の向上を意図したものでない。なお、セパレータの破損による短絡と浸透短絡は全く異なる現象である。
特許文献3において、セパレータの幅方向端部の突出高さが高いリブは、正極板が幅方向に伸びたときに初めて正極板の端部を支えるものである。つまり、当該リブは正極板が幅方向に伸びていない状態では正極板の端部に対向しない。また、特許文献3に記載の発明は耐浸透短絡性能の向上を課題とするものでない。
【0014】
本発明は、ストラップ下面の耳群長Aが上部極板群長Bより小さく、耐浸透短絡性能が向上した鉛蓄電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、前記の課題を解決するために、以下の手段を有する。
本第一発明は、正極板と負極板とをセパレータを介して積層した極板群と、電解液と、前記極板群を収納した電槽を備えた鉛蓄電池であって、
正極ストラップ又は負極ストラップのうち少なくとも一方のストラップの直下における両端の耳の外端間の長さAが、前記少なくとも一方のストラップに接続された極板のうち両端に位置する極板における上部枠骨部の積層方向外端間の長さBより小さく、
前記セパレータは、正極板と向かい合う面及び負極板と向かい合う面のうち、少なくとも一方の面に複数のリブを有し、
前記リブは、前記セパレータの少なくとも一方の面において、前記正極板の幅方向の中央部又は前記負極板の幅方向の中央部に対向する第一リブの突出方向への高さ(T)が、前記正極板の幅方向の端部又は前記負極板の幅方向の端部に対向する第二リブの突出方向への高さ(T)より低いことを特徴とする。
【0016】
本第二発明は、前記第一発明において、前記第一リブの突出方向への高さ(T)と第二リブの突出方向への高さ(T)との比T/Tが、T/T≧1.2の関係式を満たすことを特徴とする。
【0017】
本第三発明は、前記第一又は第二発明において、前記正極板の幅方向中央部における前記極板群の極板積層方向の厚さが、前記正極板の幅方向端部における前記極板群の極板積層方向の厚さ以上であることを特徴とする。
【0018】
本第四発明は、前記第一乃至第三発明のいずれかにおいて、前記鉛蓄電池はアイドリングストップ車用の鉛蓄電池であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本第一発明によれば耐浸透短絡性能が向上した鉛蓄電池を提供することができる。
本第二発明によれば耐浸透短絡性能が一層向上した鉛蓄電池を提供することができる。
本第三発明によれば耐浸透短絡性能が顕著に向上した鉛蓄電池を提供することができる。
本第四発明によれば、浸透短絡を抑制する効果と、ストラップを小形化できる効果と、アイドリングストップ車用途に適した電極群を制限された電槽内の空間に収納できる設計が可能となる効果とを同時に得ることにより、アイドリングストップ用に特に適した鉛蓄電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ストラップ直下の耳群長Aと上部極板群長Bの説明図
図2】本発明に係るセパレータの上面図
図3】PSOC寿命試験のサイクルパターンの説明図
図4】T/Tと浸透短絡発生率との関係を示すグラフ
図5】T/TとPSOC寿命の関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の鉛蓄電池は、ストラップ直下の耳群長Aと上部極板群長BがA<Bであって、セパレータが、正極板と向かい合う面及び負極板と向かい合う面のうち、少なくとも一方の面に複数のリブを有し、前記リブは、前記セパレータの少なくとも一方の面において、前記正極板の幅方向の中央部又は前記負極板の幅方向の中央部に対向する第一リブの突出方向への高さ(T)が、前記正極板の幅方向の端部又は前記負極板の幅方向の端部に対向する第二リブの突出方向への高さ(T)より低いことを特徴とする。少なくとも負極ストラップと負極板、又は正極ストラップと正極板の少なくとも一方についてA<Bであればよいが、負極ストラップと負極板、及び正極ストラップと正極板の両方についてA<Bであるのが好ましい。
【0022】
以下に、本発明の実施形態を示す。本発明の実施に際しては、当業者の常識及び先行技術の開示に従い、実施形態を適宜に変更できる。なお、以下、負極電極材料を負極活物質と呼び、正極電極材料を正極活物質と呼ぶ。負極板は、負極集電体と負極活物質(負極電極材料)とから成り、正極板は、正極集電体と正極活物質(正極電極材料)とから成り、集電体以外の固形成分は活物質(電極材料)に属するものとする。集電体は、活物質が充填される格子部、格子部の縁に連接された上部枠骨部、下部枠骨部、上部枠骨部から突出する耳を備え、さらに横枠骨部と、下枠骨部から突出する足を備えるものがある。
本発明において、極板群(積層体)の上部とは、集電体において、格子部の高さを基準として、上から50%までを上部、下から50%までを下部という。極板の幅方向端部とは、極板の幅を基準として、極板の幅方向両端からそれぞれ極板幅の20%までの部分をいう。極板の幅方向中央部とは、極板において極板の幅方向端部を除いた部分をいう。なお、極板の幅方向は図2に示すとおりである。
【0023】
本発明に係る鉛蓄電池は、例えば、鉛を活物質とする負極板と、二酸化鉛を活物質とする正極板と、これら極板の間に介在するセパレータとからなる極板群を備えたものであり、当該極板群が電槽内に収納され、希硫酸を主成分とする流動可能な電解液に浸漬されてなるものである。
【0024】
前記負極板及び正極板は、Pb−Sb系合金やPb−Ca系合金、Pb−Ca−Sn系合金等からなる集電体の格子部にペースト状の活物質を充填して形成されたものである。これらの各構成部材は、目的・用途に応じて適宜公知のものから選択して用いることができる。
【0025】
セパレータは、液式鉛蓄電池のセパレータとして一般的に用いられているものを用いることができる。たとえば、微細孔を有するポリオレフィンを主成分とするシート、樹脂やガラスの繊維を主成分とするマットを用いることができる。とくに、取扱い性やコストの面で、微細孔を有するポリエチレンを主成分とするシートを用いることが好ましい。セパレータは平板状であってもよいが、活物質の脱落を防止するためには、正極板、負極板のいずれかを収納する袋状であることが好ましい。正極板は腐食伸びが大きいから、負極板を収納する袋状であることがより好ましい。
【0026】
袋状セパレータに負極板を収納する場合、このセパレータは、図2にその上面図を示すように、正極板と向かい合う面、負極板と向かい合う面の少なくとも一方の面に平板状の部分(以下、「ベース部」又は「ベース」という。)から突出する複数のリブを有し、前記リブのうち、前記正極板の幅方向の中央部又は前記負極板の幅方向の中央部に対向する第一リブの突出方向への高さ(T)が、前記正極板の幅方向の端部又は前記負極板の幅方向の端部に対向する第二リブの突出方向への高さ(T)より低いものである。なお、第一リブの突出方向への高さ(T)及び第二リブの突出方向への高さ(T)はそれぞれ突出する側のベース部の表面からの高さである。極板の幅方向の中央部に対向する第一リブは、極板の幅方向両端から極板幅の20%以内の部分を除く範囲と対向する領域にあることが好ましい。極板の幅方向の端部に対向する第二リブは、極板の幅方向端部を含み、端部から20%以内の部分と対向する領域にあることが好ましい。なお、セパレータが、前記一方の面とは他方の面にもリブを有することを排除するものではない。
正極板と向かい合う面にリブを有すると、セパレータのベースと正極板が接触することによるセパレータの酸化や損傷を防ぐことができる。したがって、少なくとも正極板と向かい合う面にリブを有するのが好ましい。
正極板と向かい合う面、負極板と向かい合う面の両面に複数のリブを有する場合、一方の面のリブにおいてT<Tであってもよいし、両方の面のリブにおいて、T<Tであってもよい。
ベースとリブの合計厚さをセパレータ総厚という。一方の面にリブを有する場合、セパレータ総厚は、ベース厚さと最も高いリブのリブ高さを合計した値であり、両方の面にリブを有する場合、セパレータ総厚は、ベースの厚さとそれぞれの面の最も高いリブのリブ高さを合計した値である。セパレータ総厚は、0.3〜1.0mm程度が好ましく、Tは、0.1〜0.8mm程度、Tは、0.15〜0.9mm程度でTはTより0.1mm〜0.5mm程度小さいことが好ましい。
なお、第一リブ、第二リブの伸びる方向は上下方向、左右方向、斜め方向等任意である。第一リブ、第二リブの形状は線状の突起、点状の突起が並んだ形状など形状は任意であるが、線状の突起であることが好ましい。また、極板の幅方向端部に対向する部分に第二リブよりも突出方向への高さが低い第三リブを有してもよい。また、第二リブはその全長に渡ってT<Tでなくてもよく、部分的に突出方向への高さが低い部分があってもよい。また、T<TとはT=0かつT>0でもよく、極板幅方向の中央部に対向する部分にリブ(第一リブ)を有さず、極板幅方向の端部に対向する部分のみにリブ(第二リブ)を有する実施形態も本発明の範囲内である。
【0027】
前記の正極板と前記の負極板とは前記のセパレータを介して積層されており、同極性の極板の耳がCOS方式による溶接により接続されて一体となった極板群を構成している。複数の極板の耳を溶接一体化してなる部分がストラップである。本発明の鉛蓄電池は、正極ストラップ又は負極ストラップのうち少なくとも一方のストラップ直下の耳群長Aが、前記少なくとも一方のストラップに接続された極板の上部極板群長Bより小さい。この長さAは、図1に示すように、ストラップの下面に接する両端の耳の外端間の長さである。そして、長さBは、図1に示すように、ストラップに接続された極板のうち両端に位置する極板の集電体の上部枠骨部の積層方向外端間の長さである。なお、長さA及び長さBは、極板群が電槽に収納され、かつ、化成された後であり、かつ、満充電の状態の寸法とする。この寸法の測定は、極板群の積層方向の寸法を電槽収納時の寸法とほぼ同じにしさえすれば、極板群を電槽から出した状態で行うことができる。
本発明においては、A<Bとすることによってストラップを小形化することが可能となる。その結果、たとえば、材料コストを低減し、極板群のサイズが変わっても鋳型を変更することを不要とし、あるいは、より多くの活物質を充填することにより積層方向に長くなった極板群をJISD5301に規定されているような所定寸法の電槽内に収納することが可能になる、といった効果がある。また、本発明においては、長さAと長さBとの差は、1mm以上とすることができ、本発明の効果が顕著であることから3mm以上とすることが好ましい。
【0028】
ストラップには、電槽内に複数のセル室が存在する場合、隣り合う電池セル間を接続するセル間接続部と、電池の端子と接続される極柱とがそれぞれ連接されている。電槽が単セル構造である場合は、ストラップに極柱が連接されている。ストラップ、セル間接続部、及び極柱は、例えば、Pb−Sn系合金や、Pb−Sb系合金などを用いて形成される。
【0029】
この極板群をポリプロピレン等の合成樹脂製の電槽に収納し、硫酸を加え、電槽化成を施して液式鉛蓄電池を作製する。
【0030】
本発明の鉛蓄電池では耐浸透短絡性能が向上する。この効果は、正極板の幅方向の中央部又は負極板の幅方向の中央部に対向する第一リブの突出方向への高さ(T)が、正極板の幅方向の端部又は負極板の幅方向の端部に対向する第二リブの突出方向への高さ(T)より低いセパレータを用いることにより、極板の幅方向中央部に位置する第一リブのリブ先端とリブの反対側に位置するセパレータ表面が正負極板に同時に接触することが防止され、特に浸透短絡の発生頻度が高い極板間の幅方向中央部において、浸透短絡の経路を絶つことができるためと推察される。
【0031】
また、ポリオレフィン系の合成樹脂等からなるセパレータは、一般にリブの密度がベース部に比べて高く、多孔度が低い。したがって、リブと極板の接触部分では、電解液の拡散が不十分となるため、極板表面のリブ接触部は、充放電反応に寄与しにくくなる。
本発明によれば、極板の幅方向中央部においては、第一リブのリブ先端とリブの反対側に位置するセパレータ表面が正負極板に同時に接触し難くし、端部においては第二リブにより極間距離を適度に保つことができるので、電解液の拡散性が向上するため、成層化が抑制され、PSOC寿命性能が向上すると推察される。
【0032】
耐浸透短絡性能が向上する効果は、長さAと長さBとの関係がA<Bとなっている場合に顕著に認められる。なぜなら、この場合においては、A≧Bの場合と比べて、極板の幅方向中央部で浸透短絡が発生する頻度が高いので、本発明を適用することによる浸透短絡抑制効果が明確に認められるからである。A≧Bの場合は、そもそも浸透短絡が発生する頻度が低く、極板群の上部の中でもとくに極板の幅方向中央部で発生頻度が高いということはこれまで知られていないので、そのような認識のない製造者や使用者が、他の箇所での浸透短絡や故障要因と区別できる程度に、当該現象を認知することはないと考えられる。
本発明においては、浸透短絡を抑制するとともに、ストラップを小形化できるという効果を同時に得ることができる。A<Bとすることによって極板群の上部の中でもとくに極板の幅方向中央部で浸透短絡の発生頻度が高くなるという現象は本発明者によって初めて見出された現象である。したがって、A<Bという構成とし、かつ、少なくとも一方の面において、極板の幅方向中央部に位置する第一リブの突出方向への高さが、極板の幅方向端部に位置する第二リブの突出方向への高さより低いセパレータを用いることで浸透短絡の抑制とストラップの小型化とを同時に達成できるという効果は発明者が初めて認識したものといえる。
【0033】
本発明は、また、上記の鉛蓄電池において、極板幅方向の中央部における極板群の極板積層方向の厚さを、前記極板幅方向端部における前記極板群の極板積層方向の厚さ以上とすることが好ましい。
COS方式でストラップを形成する場合、一般に極板群を構成する各極板の耳位置がずれるのを防ぐため、極板群の上部をクランプ等で挟んで固定した状態でストラップを形成する。極板の幅方向中央部のみをクランプ等で挟んで固定すると、極板群は幅方向中央部が特に圧迫される。この場合、T<Tである鉛蓄電池では幅方向中央部における極板群の極板積層方向の厚さが、幅方向端部における前記極板群の極板積層方向の厚さよりも小さくなる。その結果、T<Tである鉛蓄電池であっても、第一リブのリブ先端とリブの反対側に位置するセパレータ表面が正負極板に同時に接触しやすくなるため、耐浸透短絡性能は大きくは向上しない。
極板の幅方向全体をクランプ等で挟んで固定すると、極板群は幅方向で均一に圧迫される。また、極板の幅方向端部のみをクランプ等で挟んで固定すると、極板群は幅方向端部が特に圧迫される。これらの場合、T<Tである鉛蓄電池では幅方向中央部における極板群の極板積層方向の厚さが、幅方向端部における極板群の極板積層方向の厚さ以上になる。その結果、第一リブのリブ先端とリブの反対側に位置するセパレータ表面が正負極板に同時に接触するのをより確実に防止できるため、耐浸透短絡性能は顕著に向上する。なお、幅方向中央部における極板群の極板積層方向の厚さ及び幅方向端部における極板群の極板積層方向の厚さは極板群の極板積層方向の両端の極板の上部枠骨部における厚さとする。
【0034】
本発明は、アイドリングストップ車用の鉛蓄電池に適用することが好ましい。なぜなら、アイドリングストップ車用の鉛蓄電池は、PSOC条件下で使用されるので他の用途の電池と比べて浸透短絡が生じる確率が高く、その結果として、本発明を適用する意義が大きいからである。
また、本発明をアイドリングストップ車用の鉛蓄電池に適用することで初めて得られる効果もある。アイドリングストップ車用の鉛蓄電池は、非アイドリングストップ車用途のものと比べて、高い充電受入れ性能を達成するため多くの活物質が必要であり、その結果として、極板群の積層方向の寸法(たとえば長さB)は大きくなりがちである。このような極板群を用いた電池を製造する場合、A=BあるいはA>Bとしたときは、ストラップが大形化することとなるので、電槽に収納するのが困難となることがある。とくに、JISD5301に規定されている型式の電池は、電槽サイズに上限が設定されているため、ストラップが長すぎると実質的に電池を製造できなくなることもある。これに対して、A<Bとしたときは、ストラップを大形化する必要がないので、極板群の積層方向の寸法を大きくした場合でも、電槽に収納するのが困難という問題は解決可能となる。したがって、本発明においては、少なくとも一方の面において、極板の幅方向中央部に対向する第一リブの突出方向への高さが、極板の幅方向端部に対向する第二リブの突出方向への高さより低いセパレータを備え、かつ、A<Bとの構成とし、さらにアイドリングストップ車用の鉛蓄電池として用いることによって、浸透短絡を抑制する効果と、ストラップを小形化できる効果と、アイドリングストップ車用途に適した電極群を制限された電槽内の空間に収納できる設計が可能となる効果とを同時に得ることができる。すなわち、本発明を採用して初めて、極板上部における浸透短絡が抑制され、アイドリングストップ車用鉛蓄電池として十分な活物質量を備えた鉛蓄電池が製造可能となるのである。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の具体的な実施例、比較例を示す。
【0036】
<実施例1:A3電池>
(正極板)
ボールミル法による鉛酸化物、補強材である合成樹脂繊維、水及び硫酸を混合することによって正極ペーストを調製した。このペーストをアンチモンフリーのPb−Ca−Sn系合金から成るエキスパンドタイプの格子状の正極集電体に充填し、熟成、乾燥を施して、幅100mm、高さ110mm、厚さ1.6mmの未化成の正極板を作製した。
【0037】
(負極板)
ボールミル法による鉛酸化物、鱗片状グラファイト、硫酸バリウム、リグニン、及び補強材の合成樹脂繊維、水及び硫酸を混合することによって負極ペーストを調製した。このペーストをアンチモンフリーのPb−Ca−Sn系合金から成るエキスパンドタイプの負極格子に充填し、熟成、乾燥を施して、幅100mm、高さ110mm、厚さ1.3mmの未化成の負極板を作製した。
【0038】
(セパレータ)
ポリエチレンを基材とする合成樹脂製シートを用い、厚さ0.2mmのベース部から突出する縦リブを外側に有する袋状セパレータを作製した。このリブは、第一リブと第二リブからなる。第一リブは突出方向への高さ(T)が0.5mmで、極板幅方向の両端を含む極板の両端から15%(17mm)の部分を除く極板の幅方向の中央部と対向する位置に8個(リブ間のピッチ10mm)設けられている。第二リブは突出方向への高さ(T)が0.55mmで、極板の幅方向の両端を含む極板の両端から15%(17mm)の部分と対向する位置に4個(リブ間のピッチ3mm)設けられた第二リブからなる。なお、T、Tはリブが突出する側のベース表面からの高さである。
【0039】
(電池構成)
前記袋状セパレータに前記負極板を収納し、前記負極板7枚と、前記正極板6枚とを、負極板が外側になるように交互に積層した積層体とした。なお、セパレータは正極板と向かい合う面にのみリブを有するものとした。
この積層体の上部において、極板の幅方向中央部をクランプした状態で、前記正極板同士の耳、及び前記負極板同士の耳をそれぞれCOS方式により正極ストラップ、負極ストラップで溶接してA<Bとなるように極板群を作製した。この極板群をポリプロピレン製の電槽に収納し、硫酸を加え、電槽化成を施して、化成後の電解液比重が1.285、5hR容量が30Ahの液式鉛蓄電池である実施例1に係るA3電池を作製した。なお、電槽内では6個の極板群が直列に接続されている。また、寸法を確認するための電池を別途作成し、電槽化成のあと、さらに満充電した後、蓋を取り外して正極側及び負極側の長さA及び長さBをそれぞれ測定した。正極側も負極側もA<Bとなっているものについては以下の表では「A<B」と表記した。正極側も負極側もA=Bになっているものについては以下の表では「A=B」と表記した。正極側も負極側もA>Bとなっているものについては以下の表では「A>B」と表記した。
【0040】
<比較例3:A1電池、比較例4:A2電池>
第二リブの突出方向への高さ(T)をそれぞれ0.25mm、0.5mmとしたセパレータを用いた以外は実施例1と同様にして比較例3、4に係るA1、A2電池を作製した。
【0041】
<比較例1:X電池、比較例2:Y電池>
ストラップのサイズを大きくし、A>B、又はA=Bとなるように極板群を作製した以外は、比較例3と同様にしてX電池、Y電池を作製した。
【0042】
<実施例2:A4電池>
第二リブの突出方向への高さ(T)を0.6mmとしたセパレータを用いた以外は、実施例1と同様にして実施例2に係るA4電池を作製した。
【0043】
<実施例3:A7電池、実施例4:A8電池>
前記積層体の上部において、幅方向の両端部をクランプした状態でCOS方式により極板群を作製した以外は、実施例1と同様にして実施例3に係るA7電池を、実施例2と同様にして実施例4に係るA8電池をそれぞれ作製した。
【0044】
<比較例5:A5電池、比較例6:A6電池>
前記積層体の上部において、幅方向の両端部をクランプした状態でCOS方式により極板群を作製した以外は、それぞれ比較例3、4と同様にして比較例5に係るA5電池、比較例6に係るA6電池を作製した。
【0045】
<実施例5:A9電池、実施例6:A10電池>
第一リブの突出方向への高さ(T)を0.25mmとし、第二リブの同高さ(T)を0.5mmとしたセパレータを用いた以外は、それぞれ実施例1及び実施例3と同様にして、実施例5に係るA9電池、及び実施例6に係るA10電池を作製した。
【0046】
上記のX、Y、A1〜A10電池について、満充電後、以下の性能試験を行った。
(低温高率放電性能試験)
満充電状態の液式鉛蓄電池を16時間以上−15℃±1℃の冷却室に置いた後、150Aの放電電流で端子電圧が6Vに低下するまで放電し、放電持続時間を記録した(JIS D5301(2006年改正版)の高率放電特性試験に準拠)。
【0047】
(PSOC寿命試験)
40℃の恒温漕内で表1、及び図3に示す寿命試験パターンを繰り返し、端子電圧が7.2Vに到達するまでのサイクル数を記録した。なお、工程1から工程5で1サイクルとする。
【0048】
【表1】
【0049】
(浸透短絡試験)
満充電した上記の液式鉛蓄電池を、25℃の恒温水槽中で、表2に示す工程1〜5を実行した後に電池を解体して短絡の有無を調べた。各実施例及び比較例について、それぞれ20個の鉛蓄電池を試験し、浸透短絡の発生率を評価した。
【0050】
【表2】
【0051】
以下の表3、表4に、X、Y、A1〜A10電池の上記の試験結果を示す。
なお、「クランプ位置」は、極板上部の幅方向におけるクランプ位置であり、「低温HR」は、低温高率放電性能試験におけるA1電池の放電時間を100%とした比を示し、「PSOC寿命」は、A1電池のサイクル数を100%とした比を示し、浸透短絡発生率は5%刻みで示す。
【0052】
【表3】
【0053】
表3の結果から、A<BであるA1電池は、A>BであるX電池、A=BであるY電池よりも低温高率放電性能に優れていることがわかる。したがって、低温高率放電性能の観点からは、A<Bであることが重要である。一方で、A<BであるA1の鉛蓄電池は、A>BであるXの鉛蓄電池、A=BであるYの鉛蓄電池よりも耐浸透短絡性能に劣ることがわかる。これらの傾向はT=Tの場合にも同様であった。
【0054】
【表4】
【0055】
表4のA1〜A10電池は全てA<Bである。表4の結果から、第一リブの突出方向への高さ(T)が第二リブの突出方向への高さ(T)より低いA3、A4、A7〜A10電池は、TがTより高いA1電池、A5電池、TがTと同じA2電池、A6電池に対して、耐浸透短絡性能が優れていることがわかる。これは、T>Tの電池では、第一リブのリブ先端とリブの反対側に位置するセパレータ表面が正負極板に同時に接触することを防止することができるためと推察される。また、T>Tの電池では、T≦Tの電池に対してPSOC寿命性能が優れていることがわかる。これは、T>Tの電池では、第一リブのリブ先端とリブの反対側に位置するセパレータ表面が正負極板に同時に接触しにくくなり、電解液の拡散性が向上して電解液の成層化が抑制されるためと推察される。
【0056】
一方、A1電池は極板の幅方向中央部に対向するリブの突出方向への高さが極板の幅方向端部に対向するリブの突出方向への高さよりも高い電池であるが、幅方向中央部に対向するリブの突出方向への高さが幅方向端部に対向するリブの突出方向への高さと等しいA2電池と比較して耐浸透短絡性能の向上はみられない。A1電池では極板の幅方向端部に対向する第二リブのリブ先端とリブの反対側に位置するセパレータ表面が正負極板に同時に接触することを防止することができると考えられる。しかし、A1電池では耐浸透短絡性能の向上はみられないことから、耐浸透短絡性能を向上させるためには、極板の幅方向中央部に対向する第一リブのリブ先端とリブの反対側に位置するセパレータ表面が正負極板に同時に接触することを防止することが重要であると推察される。極板幅方向の中央部に対向するリブの突出方向への高さが、極板幅方向の端部に対向するリブの突出方向への高さより低い鉛蓄電池で耐浸透短絡性能が向上するというのは予想外の効果である。
【0057】
また、表4及び図4図5から、T/T≧1.2の鉛蓄電池において特に耐浸透短絡性能が優れていることがわかる。これは、特にT/T≧1.2の範囲で、第一リブのリブ先端とリブの反対側に位置するセパレータ表面が正負極板に同時に接触することをより確実に防止することができるためと推察される。また、T/T≧1.2の鉛蓄電池において特にPSOC寿命性能が優れていることがわかる。これは、特にT/T≧1.2の範囲で、第一リブのリブ先端とリブの反対側に位置するセパレータ表面が正負極板に同時に接触しにくくなり、電解液の拡散性が向上して電解液の成層化が一層抑制されるためと推察される
【0058】
表4及び図4図5から、セパレータのリブ構造が同じであるが、クランプ位置が異なるA3電池とA7電池を対比すると、クランプ位置が極板の幅方向端部であるA7電池が、クランプ位置が極板の幅方向中央部であるA3電池よりさらに耐浸透短絡性能が優れていることがわかる。これは、クランプ位置が極板の幅方向端部であるA7電池では極板幅方向の中央部における極板群の極板積層方向の厚さが、極板幅方向端部における極板群の極板積層方向の厚さ以上となり、第一リブのリブ先端とリブの反対側に位置するセパレータ表面が正負極板に同時に接触することをより確実に防止することができるためと推察される。また、PSOC寿命性能においてもA7電池がA3電池よりさらに優れていることがわかる。これは電解液の成層化が一層抑制されるためと考えられる。A4電池とA8電池、A9電池とA10電池の対比においても、同様に、クランプ位置が極板の幅方向端部であるA8電池、A10電池のほうが耐浸透短絡性能及びPSOC寿命性能に優れていた。一方、T≦Tの電池では、クランプ位置が極板の幅方向端部である電池(A5、A6)はクランプ位置が極板の幅方向中央部である電池(A1、A2)と比較して耐浸透短絡性能に違いはみられない。
【0059】
実施例中、最も上記各性能が優れていたのは、TとTの差が大きく、クランプ位置が端部であるA10電池であった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明により、ストラップ直下の耳群長Aと上部極板群長Bが、A<Bである電池において、耐浸透短絡性能を向上させることができる。また、PSOC寿命性能も向上させることができるので、PSOCで使用される機会の多いIS用途の鉛蓄電池等への適用が期待される。
【符号の説明】
【0061】
A ストラップ直下の耳群長
B ストラップに接続された極板のうち両端に位置する極板間の上部枠骨部における距離(上部極板群長)
図1
図2
図3
図4
図5