特許第6572713号(P6572713)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6572713
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】車両のロールロッド
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/08 20060101AFI20190902BHJP
   F16F 7/12 20060101ALI20190902BHJP
   B60K 5/12 20060101ALI20190902BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   F16F15/08 T
   F16F7/12
   B60K5/12 Z
   B62D25/20 C
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-196581(P2015-196581)
(22)【出願日】2015年10月2日
(65)【公開番号】特開2017-67256(P2017-67256A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年9月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】西田 智晴
(72)【発明者】
【氏名】藤 企三宜
(72)【発明者】
【氏名】坂本 徹
(72)【発明者】
【氏名】植田 祐史
(72)【発明者】
【氏名】小野田 晃
(72)【発明者】
【氏名】藤井 隆史
【審査官】 保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−173682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K1/00−6/12
7/00−8/00
16/00
B62D17/00−25/08
25/14−29/04
F16F1/00−7/14
15/00−15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワープラントの底部に前ブッシュを介して連結される前ブッシュ取り付け部と、前記パワープラントの車両後方に配置されたサスペンションクロスメンバに後ブッシュを介して連結される後ブッシュ取り付け部と、車両前後方向に延在し、前ブッシュ取り付け部と後ブッシュ取り付け部とを連結する胴部とを有する車両のロールロッドであって、
前記前ブッシュ取り付け部は、前記前ブッシュが嵌合される前筒部を有し、
前記後ブッシュ取り付け部は、前記後ブッシュが嵌合される後筒部を有し、
車幅方向の幅を有して前記胴部の長手方向の中間部の下端から前記後筒部の前端の下端にわたって延在する長さの補強プレートが設けられ、
前記補強プレートの後部の幅方向の両側が前記胴部の下端に接合されることなく、前記補強プレートの前部の幅方向の両側が、前記胴部の下端に接合されると共に前記補強プレートの後端が前記後筒部の前端の下端に接合され、
前記前ブッシュ取り付け部と前記胴部との境の箇所に、上部の剛性が下部の剛性よりも高い前変形誘発部が設けられ、
前記後ブッシュ取り付け部と前記胴部との境の箇所に、上部の剛性が下部の剛性よりも低い後変形誘発部が設けられている、
ことを特徴とする車両のロールロッド。
【請求項2】
前記前ブッシュ取り付け部は、前記前筒部に加え、環状の前上板部と、前記前上板部の外周部から下方に突設された前外縁部とを有し、前記前筒部は、前記前上板部の内周部から下方に突設され、
前記胴部は、前記前上板部の後部に接続され前記前上板部の外径よりも小さい寸法の車幅方向の幅を有して車両後方向に延在する中間上板部と、前記中間上板部の幅方向の両端から下方に突設され前記前外縁部に接続する中間外縁部と、前記中間外縁部の下端から前記中間上板部の幅方向外側に突設されたフランジとを有し、
前記後ブッシュ取り付け部は、前記後筒部に加え、前記中間上板部の後部に接続され前記前上板部の外径よりも大きい外径の環状の後上板部と、前記後上板部の外周部から下方に突設され前記中間外縁部に接続する後外縁部とを有し、前記後筒部は、前記後上板部の内周部から下方に突設され前記前筒部よりも大きい内径を有し、
前記補強プレートの前部の幅方向の両側が接合される前記胴部の下端は、前記フランジである、
ことを特徴とする請求項1記載の車両のロールロッド。
【請求項3】
前記中間外縁部と前記フランジは前記胴部の全長にわたって延在している、
ことを特徴とする請求項2記載の車両のロールロッド。
【請求項4】
前記中間上板部の後部で前記中間上板部の幅方向の中央の前記補強プレートの上方に位置する箇所に、孔が形成されている、
ことを特徴とする請求項2または3記載の車両のロールロッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のロールロッドに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のパワープラントとサスペンションクロスメンバとを連結することにより、パワープラントが発生するトルクの反力や振動が車体に伝わることを抑制するロールロッドが提供されている。
このようなロールロッドとして、車両の衝突時に発生する衝突荷重によりロールロッドを破断、あるいは、変形させることでパワープラントを車室の下方に導く技術が提案されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−210074号公報
【特許文献2】特開2014−173682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献では、車両衝突時、衝撃荷重の入力の大きさによっては、パワープラントが、パワープラントの後方下方に位置するサスペンションクロスメンバと干渉するおそれがあり、衝撃荷重を抑制する上で改善の余地がある。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、確実にパワープラントとサスペンションクロスとの干渉を回避し、車両衝突時に車体に加わる衝撃荷重を抑制する上で有利な車両のロールロッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、パワープラントの底部に前ブッシュを介して連結される前ブッシュ取り付け部と、前記パワープラントの車両後方に配置されたサスペンションクロスメンバに後ブッシュを介して連結される後ブッシュ取り付け部と、車両前後方向に延在し、前ブッシュ取り付け部と後ブッシュ取り付け部とを連結する胴部とを有する車両のロールロッドであって、前記前ブッシュ取り付け部は、前記前ブッシュが嵌合される前筒部を有し、前記後ブッシュ取り付け部は、前記後ブッシュが嵌合される後筒部を有し、車幅方向の幅を有して前記胴部の長手方向の中間部の下端から前記後筒部の前端の下端にわたって延在する長さの補強プレートが設けられ、前記補強プレートの後部の幅方向の両側が前記胴部の下端に接合されることなく、前記補強プレートの前部の幅方向の両側が、前記胴部の下端に接合されると共に前記補強プレートの後端が前記後筒部の前端の下端に接合され、前記前ブッシュ取り付け部と前記胴部との境の箇所に、上部の剛性が下部の剛性よりも高い前変形誘発部が設けられ、前記後ブッシュ取り付け部と前記胴部との境の箇所に、上部の剛性が下部の剛性よりも低い後変形誘発部が設けられていることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、板部の外周部から下方に突設された前外縁部とを有し、前記前筒部は、前記前上板部の内周部から下方に突設され、前記胴部は、前記前上板部の後部に接続され前記前上板部の外径よりも小さい寸法の車幅方向の幅を有して車両後方向に延在する中間上板部と、前記中間上板部の幅方向の両端から下方に突設され前記前外縁部に接続する中間外縁部と、前記中間外縁部の下端から前記中間上板部の幅方向外側に突設されたフランジとを有し、前記後ブッシュ取り付け部は、前記後筒部に加え、前記中間上板部の後部に接続され前記前上板部の外径よりも大きい外径の環状の後上板部と、前記後上板部の外周部から下方に突設され前記中間外縁部に接続する後外縁部とを有し、前記後筒部は、前記後上板部の内周部から下方に突設され前記前筒部よりも大きい内径を有し、前記補強プレートの前部の幅方向の両側が接合される前記胴部の下端は、前記フランジであることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、前記中間外縁部と前記フランジは前記胴部の全長にわたって延在していることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、前記中間上板部の後部で前記中間上板部の幅方向の中央の前記補強プレートの上方に位置する箇所に、孔が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、車両の前部が衝突した場合、前変形誘発部は上部の剛性が下部の剛性よりも高いため、前変形誘発部は上方に凸状に折れ曲がり、後変形誘発部は上部の剛性が下部の剛性よりも低いため、後変形誘発部は下方に凸状に折れ曲がる。
したがって、サスペンションクロスメンバは、パワープラントの底部の下方に変位し、パワープラントとサスペンションクロスメンバとが接触した場合に比較して車体に加わる衝撃荷重を抑制する上で有利となる。
また、補強プレートの後部の幅方向の両側が胴部の下端に接合されていないため、胴部と後ブッシュ取り付け部との境の箇所で胴部が下方へ凸状に折れ曲がることができ、後変形誘発部の下方へ凸状の折れ曲がりを誘発する上で有利となる。
請求項2記載の発明によれば、補強プレートの胴部への接合が確実に行なわれ、後変形誘発部の下部の剛性が高められ、後変形誘発部の下方へ凸状の折れ曲がりを誘発する上で有利となる。
請求項3記載の発明によれば、フランジは胴部の全長にわたって延在しているため、前ブッシュ取り付け部と胴部との境の箇所、および、胴部と後ブッシュ取り付け部との境の箇所における形状をより大きく変化させることができ、前変形誘発部と後変形誘発部とでの変形の誘発を促進する上で有利となる。
請求項4記載の発明によれば、後変形誘発部の上部の剛性を低くし、後変形誘発部の下方へ凸状の折れ曲がりを誘発する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態の車両のロールロッドの取り付け状態を示す説明図である。
図2】車両衝突時におけるロールロッドの変形状態を示す説明図である。
図3】ロールロッドの平面図である。
図4】ロールロッドの底面図である。
図5図4のAA線断面図である。
図6図4のBB線断面図である。
図7図4のCC線断面図である。
図8図4のDD線断面図である。
図9】ロールロッドの側面図である。
図10】(A)から(D)は、前ブッシュ取り付け部が後ブッシュ取り付け部よりも高い箇所に位置し、ロールロッドが車両前後方向の後方に至るにつれて上方に変位する傾斜を有した状態で衝撃荷重が入力した場合のロールロッドの挙動を時間経過に沿って示す説明図である。
図11】(A)から(D)は、車両の衝突前に前ブッシュ取り付け部と後ブッシュ取り付け部とが等しい高さの箇所に位置し、ロールロッドがほぼ水平状態で衝撃荷重が入力した場合のロールロッドの挙動を時間経過に沿って示す説明図である。
図12】(A)から(D)は、前ブッシュ取り付け部が後ブッシュ取り付け部よりも低い箇所に位置し、ロールロッドが車両前後方向の後方に至るにつれて下方に変位する傾斜を有した状態で衝撃荷重が入力した場合のロールロッドの挙動を時間経過に沿って示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
なお、図1から図12において、符号FRは車両前方、符号RRは車両後方、符号UPは車両上方、符号HLは車幅方向を示している。
【0009】
図1に示すように、車室の前方に位置する前部空間Sにパワープラント10が配置されている。
パワープラント10は、エンジンおよびトランスミッションを含んで構成されている。
パワープラント10の車両後方に前輪をロアアームを介して支持するサスペンションクロスメンバ12が配置されている。
サスペンションクロスメンバ12は、前輪懸架構造を構成し、左右の前輪の間で車幅方向に延在しその車幅方向両端がサイドメンバに取着されている。
サスペンションクロスメンバ12は、互いに上下に間隔をおいたロアメンバプレート12Aとアッパメンバプレート12Bの縁部が合わされることで構成されている。
サスペンションクロスメンバ12の車幅方向中央で車両の前方に向けられた前面に、ロアメンバプレート12Aとアッパメンバプレート12Bとで形成された内部空間1202に連通する開口1204が形成されている。
パワープラント10の底部1002の車幅方向中央部と、サスペンションクロスメンバ12の車幅方向中央部とがロールロッド14で連結されている。
ロールロッド14は、このようにパワープラント10とサスペンションクロスメンバ12とを連結することにより、車両の通常走行時、パワープラント10が発生するトルクの反力や振動がサスペンションクロスメンバ12を介して車体に伝わることを抑制するものである。
【0010】
図1に示すように、ロールロッド14は板金製であり、前ブッシュ取り付け部16と、後ブッシュ取り付け部18と、胴部20と、補強プレート22とを有している。
前ブッシュ取り付け部16は、パワープラント10の底部1002および底部1002に設けられたブラケット1004に、前ブッシュ24とボルト2を介して連結される箇所である。
後ブッシュ取り付け部18は、開口1204から内部空間1202に挿入され、内部空間1202において後ブッシュ26と、アッパメンバプレート12Bの上面部とロアメンバプレート12Aの下面部と後ブッシュ26とを貫通するボルト2と、ナット4を介してサスペンションクロスメンバ12に連結される箇所である。
胴部20は、車両前後方向に延在し、前ブッシュ取り付け部16と後ブッシュ取り付け部18とを連結する箇所である。
【0011】
図3から図5に示すように、前ブッシュ取り付け部16は、環状の前上板部1602と、前上板部1602の内周部から下方に突設された前筒部1604と、前上板部1602の外周部から下方に突設された前外縁部1606とを有している。
前筒部1604の内周面に前ブッシュ24の外周面が嵌合されている。
【0012】
図3から図5図7に示すように、胴部20は、中間上板部2002と、中間外縁部2004と、フランジ2006とを有している。
中間上板部2002は、前上板部1602の後部に接続され前上板部1602の外径よりも小さい寸法の車幅方向の幅を有して車両後方向に延在している。
中間外縁部2004は、中間上板部2002の幅方向の両端から下方に突設され前外縁部1606に接続している。
フランジ2006は、中間外縁部2004の下端から中間上板部2002の幅方向外側に突設されている。
中間外縁部2004とフランジ2006は胴部20の全長にわたって延在している。
中間上板部2002の後部で中間上板部2002の幅方向の中央に孔2010が形成されている。
【0013】
図3から図5図8に示すように、後ブッシュ取り付け部18は、後上板部1802と、後筒部1804と、後外縁部1806とを有している。
後上板部1802は、中間上板部2002の後部に接続され前上板部1602の外径よりも大きい外径の環状を呈している。
後筒部1804は、後上板部1802の内周部から下方に突設された前筒部1604よりも大きい内径で形成されている。
後筒部1804の内周面に後ブッシュ26の外周面が嵌合されている。
後外縁部1806は、後上板部1802の外周部から下方に突設され中間外縁部2004に接続している。
【0014】
図3から図5図7に示すように、補強プレート22は、車幅方向の幅を有して胴部20の長手方向の中間部の中間外縁部2004の下端から後筒部1804の前端の下端にわたって延在する長さを有している。
補強プレート22の胴部20および後ブッシュ取り付け部18への取り付けは、次のようになされている。
すなわち、補強プレート22の後部の幅方向の両側が胴部20の中間外縁部2004の下端に接合されることなく、補強プレート22の前部の幅方向の両側が、中間外縁部2004の下端であるフランジ2006に接合されると共に補強プレート22の後端が後筒部1804の前端の下端に接合されている。
したがって、中間上板部2002に設けられた孔2010は、補強プレート22の上方に位置している。
補強プレート22の幅方向の中央に、補強プレート22の前部から後部にわたって延在する下方に凸の凸状部2202が設けられ、補強プレート22の幅方向中央の剛性が高められている。
【0015】
ロールロッド14は、前ブッシュ取り付け部16と胴部20との境の箇所、および、胴部20と後ブッシュ取り付け部18との境の箇所で形状が変化している。
したがって、前面衝突時、ロールロッド14に衝撃荷重が加わると、前ブッシュ取り付け部16と胴部20との境の箇所と、胴部20と後ブッシュ取り付け部18との境の箇所とは、変形が誘発される箇所となる。
すなわち、前ブッシュ取り付け部16と胴部20との境の箇所は前変形誘発部28となり、胴部20と後ブッシュ取り付け部18との境の箇所は後変形誘発部30となる。
本実施の形態では、前ブッシュ取り付け部16の前上板部1602と胴部20の中間上板部2002とが接続されていることから、上部の剛性が下部の剛性よりも高い前変形誘発部28が形成されている。
また、補強プレート22が設けられていることから、上部の剛性が下部の剛性よりも低い後変形誘発部30が形成されている。本実施の形態では、中間上板部2002に孔2010が形成されていることから、後変形誘発部30の上部の剛性が下部の剛性よりもより低くなっている。
【0016】
次に作用効果について説明する。
車両の前部が衝突した場合、衝撃荷重がパワープラント10からロールロッド14に入力され、ロールロッド14からサスペンションクロスメンバ12に伝達される。
パワープラント10とサスペンションクロスメンバ12の剛性はロールロッド14に比べて極めて高いため、衝撃荷重によりロールロッド14の前変形誘発部28と後変形誘発部30とに変形が生じる。
前変形誘発部28は上部の剛性が下部の剛性よりも高いため、図2に示すように、前変形誘発部28は上方に凸状に折れ曲がる。
後変形誘発部30は上部の剛性が下部の剛性よりも低いため、後変形誘発部30は下方に凸状に折れ曲がる。
【0017】
したがって、サスペンションクロスメンバ12は、パワープラント10に接近する方向に移動するものの、パワープラント10の底部1002の下方に変位するため、パワープラント10とサスペンションクロスメンバ12との接触が回避される。
そのため、パワープラント10とサスペンションクロスメンバ12とが接触した場合に比較して車体に加わる衝撃荷重を抑制する上で有利となる。
本実施の形態では、補強プレート22が設けられていることから、後変形誘発部30の下方へ凸状の折れ曲がりを確実に誘発でき、サスペンションクロスメンバ12をパワープラント10の底部1002の下方へ変位させ、パワープラント10とサスペンションクロスメンバ12との接触を回避する上で有利となる。
また、補強プレート22の後部の幅方向の両側が胴部20の下端に接合されていないため、胴部20と後ブッシュ取り付け部18との境の箇所で胴部20が下方へ凸状に折れ曲がることができ、後変形誘発部30の下方へ凸状の折れ曲がりを誘発する上で有利となる。
【0018】
また、本実施の形態では、補強プレート22の前部の幅方向の両側は、胴部20の下端であるフランジ2006に接合されるため、補強プレート22の胴部20への接合を確実に行え、後変形誘発部30は下部の剛性を高め、後変形誘発部30の下方へ凸状の折れ曲がりを誘発する上で有利となる。
【0019】
また、本実施の形態では、フランジ2006は胴部20の全長にわたって延在しているため、前ブッシュ取り付け部16と胴部20との境の箇所、および、胴部20と後ブッシュ取り付け部18との境の箇所における形状をより大きく変化させることができ、前変形誘発部28と後変形誘発部30とでの変形の誘発を促進する上で有利となり、パワープラント10とサスペンションクロスメンバ12との接触を回避する上で有利となる。
【0020】
また、本実施の形態では、中間上板部2002の後部で中間上板部2002の幅方向の中央の補強プレート22の上方に位置する箇所に、孔2010が形成されているので、後変形誘発部30の上部の剛性を低くし、後変形誘発部30の下方へ凸状の折れ曲がりを誘発する上で有利となる。
【0021】
次に、パワープラント10とサスペンションクロスメンバ12との相対的な上下方向の位置関係に応じたロールロッド14の変形について説明する。
すなわち、車両走行時、パワープラント10とサスペンションクロスメンバ12とは、相対的に常に一定の上下方向の位置関係を保っていない。そこで、車両の衝突前に前ブッシュ取り付け部16が後ブッシュ取り付け部18よりも低い箇所に位置する場合、前ブッシュ取り付け部16と後ブッシュ取り付け部18とが等しい高さの箇所に位置する場合、前ブッシュ取り付け部16が後ブッシュ取り付け部18よりも高い箇所に位置する場合について説明する。
【0022】
(車両の衝突前に前ブッシュ取り付け部16が後ブッシュ取り付け部18よりも低い箇所に位置する場合)
図10(A)から(D)は、前ブッシュ取り付け部16が後ブッシュ取り付け部18よりも低い箇所に位置し、ロールロッド14が車両前後方向の後方に至るにつれて上方に変位する傾斜を有した状態で衝撃荷重が入力した場合のロールロッド14の挙動を時間経過に沿って示す説明図である。
図10(A)に示すように、車両衝突時の初期においてロールロッド14は車両前後方向の後方に至るにつれて上方に変位する後上がりの傾斜を有した状態となっている。
仮にロールロッド14が後上がりの傾斜のままで、パワープラント10からロールロッド14に衝撃荷重が入力されると、前変形誘発部28に対して後変形誘発部30が上方に位置していることから、前変形誘発部28の上方への凸状の折れ曲がり、および、後変形誘発部30の下方への凸状の折れ曲がりを誘発しにくくなり、サスペンションクロスメンバ12をパワープラント10の底部1002の下方に変位させにくくなる。
しかしながら、本実施の形態では、後変形誘発部30の下部の剛性は上部の剛性よりも補強プレート22により高められているため、ロールロッド14に入力された衝撃荷重は、後変形誘発部30の上部に比較して下部により効率よく伝達される。
すなわち、後変形誘発部30の下部からサスペンションクロスメンバ12に伝達される衝撃荷重は、後変形誘発部30の上部からサスペンションクロスメンバ12に伝達される衝撃荷重よりもより大きなものとなる。
そのため、サスペンションクロスメンバ12から後変形誘発部30の下部に作用する反力が、サスペンションクロスメンバ12から上部に作用する反力よりも大きなものとなるため、図10(B)に示すように、ロールロッド14の前部が上方に変位され、ロールロッド14の姿勢はほぼ水平状態となる。
そして、図10(C)、(D)に示すように、前変形誘発部28が上方に凸状に折れ曲がると共に、後変形誘発部30は下方に凸状に折れ曲がる。
したがって、前ブッシュ取り付け部16が後ブッシュ取り付け部18よりも低い箇所に位置し、ロールロッド14が車両前後方向の後方に至るにつれて上方に変位する傾斜を有した状態となっている場合であっても、前変形誘発部28の上方への凸状の折れ曲がり、および、後変形誘発部30の下方への凸状の折れ曲がりを誘発する上で有利となり、サスペンションクロスメンバ12をパワープラント10の底部1002の下方に変位させる上で有利となる。
【0023】
(車両の衝突前に前ブッシュ取り付け部16と後ブッシュ取り付け部18とが等しい高さの箇所に位置する場合)
図11(A)から(D)は、車両の衝突前に前ブッシュ取り付け部16と後ブッシュ取り付け部18とが等しい高さの箇所に位置し、ロールロッド14がほぼ水平状態で衝撃荷重が入力した場合のロールロッド14の挙動を時間経過に沿って示す説明図である。
図11(A)に示すように、車両衝突時の初期においてロールロッド14は車両前後方向に沿ってほぼ水平面に沿って延在した状態となっている。
この状態で、前変形誘発部28および後変形誘発部30に衝撃荷重が入力されると、サスペンションクロスメンバ12から後変形誘発部30の下部に作用する反力がサスペンションクロスメンバ12から上部に作用する反力よりも大きなものとなるため、図11(B)に示すように、ロールロッド14の前部が上方に変位され、ロールロッド14は車両前後方向の後方に至るにつれて下方に変位する後下がりの傾斜を有した状態となる。
そして、図11(C)、(D)に示すように、前変形誘発部28が上方に凸状に折れ曲がると共に、後変形誘発部30は下方に凸状に折れ曲がる。
したがって、車両の衝突前に前ブッシュ取り付け部16と後ブッシュ取り付け部18とが等しい高さの箇所に位置し、ロールロッド14がほぼ水平状態となっている場合も、前変形誘発部28の上方への凸状の折れ曲がり、および、後変形誘発部30の下方への凸状の折れ曲がりを誘発する上で有利となり、サスペンションクロスメンバ12をパワープラント10の底部1002の下方に変位させる上で有利となる。
【0024】
(車両の衝突前に前ブッシュ取り付け部16が後ブッシュ取り付け部18よりも高い箇所に位置する場合)
図12(A)から(D)は、前ブッシュ取り付け部16が後ブッシュ取り付け部18よりも高い箇所に位置し、ロールロッド14が車両前後方向の後方に至るにつれて下方に変位する傾斜を有した状態で衝撃荷重が入力した場合のロールロッド14の挙動を時間経過に沿って示す説明図である。
図12(A)に示すように、車両衝突時の初期においてロールロッド14は車両前後方向の後方に至るにつれて下方に変位する後下がりの傾斜を有した状態となっている。
この状態で、前変形誘発部28および後変形誘発部30に衝撃荷重が入力されると、サスペンションクロスメンバ12から後変形誘発部30の下部に作用する反力がサスペンションクロスメンバ12から上部に作用する反力よりも大きなものとなるため、図12(B)に示すように、ロールロッド14の前部が上方に変位され、ロールロッド14は車両前後方向の後方に至るにつれて下方に変位する後下がりの傾斜がより大きくなった状態となる。
そして、図12(C)、(D)に示すように、前変形誘発部28が上方に凸状に折れ曲がると共に、後変形誘発部30は下方に凸状に折れ曲がる。
したがって、前ブッシュ取り付け部16が後ブッシュ取り付け部18よりも高い箇所に位置し、ロールロッド14が車両前後方向の後方に至るにつれて下方に変位する傾斜を有した状態となっている場合も、前変形誘発部28の上方への凸状の折れ曲がり、および、後変形誘発部30の下方への凸状の折れ曲がりを誘発する上で有利となり、サスペンションクロスメンバ12をパワープラント10の底部1002の下方に変位させる上で有利となる。
【0025】
以上説明したように、パワープラント10とサスペンションクロスメンバ12とが相対的にどのような上下方向の位置関係にあっても、前変形誘発部28の上方への凸状の折れ曲がり、および、後変形誘発部30の下方への凸状の折れ曲がりを誘発する上で有利となり、サスペンションクロスメンバ12をパワープラント10の底部1002の下方に変位させる上で有利となる。
【符号の説明】
【0026】
10 パワープラント
1002 底部
12 サスペンションクロスメンバ
14 ロールロッド
16 前ブッシュ取り付け部
1602 前上板部
1604 前筒部
1606 前外縁部
18 後ブッシュ取り付け部
1802 後上板部
1804 後筒部
1806 後外縁部
20 胴部
2002 中間上板部
2004 中間外縁部
2006 フランジ
2010 孔
22 補強プレート
2202 凸状部
24 前ブッシュ
26 後ブッシュ
28 前変形誘発部
30 後変形誘発部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12