(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6572740
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】封着用ガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 8/02 20060101AFI20190902BHJP
C03C 8/06 20060101ALI20190902BHJP
C03C 3/089 20060101ALI20190902BHJP
C03C 3/085 20060101ALI20190902BHJP
C03C 3/087 20060101ALI20190902BHJP
C03C 3/112 20060101ALI20190902BHJP
C03C 3/078 20060101ALI20190902BHJP
C03C 8/12 20060101ALN20190902BHJP
C03C 3/091 20060101ALN20190902BHJP
C03C 3/093 20060101ALN20190902BHJP
F25B 49/02 20060101ALN20190902BHJP
【FI】
C03C8/02
C03C8/06
C03C3/089
C03C3/085
C03C3/087
C03C3/112
C03C3/078
!C03C8/12
!C03C3/091
!C03C3/093
!F25B49/02 560
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-216260(P2015-216260)
(22)【出願日】2015年11月4日
(65)【公開番号】特開2017-71543(P2017-71543A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2018年10月2日
(31)【優先権主張番号】特願2015-198169(P2015-198169)
(32)【優先日】2015年10月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 将行
【審査官】
有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2004/031088(WO,A1)
【文献】
特開昭56−145132(JP,A)
【文献】
特開2010−006627(JP,A)
【文献】
特開2015−069732(JP,A)
【文献】
特表2012−531375(JP,A)
【文献】
特開2012−074268(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/018357(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00−14/00
F25B 49/02
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス組成として、モル%表示で、SiO2 60〜75%、B2O3 0〜5.9%、Li2O+Na2O+K2O 12.7〜20%、Li2O+Na2O 11.5〜20%、MgO+CaO+SrO+BaO 2〜9%を含有し、モル比SiO2/B2O3が12.7以上であることを特徴とする封着用ガラス。
【請求項2】
モル比SiO2/B2O3が13.5以上であることを特徴とする請求項1に記載の封着用ガラス。
【請求項3】
MgO+CaO+SrO+BaOの含有量が4〜7.2モル%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の封着用ガラス。
【請求項4】
Li2O+Na2Oの含有量が12.7モル%以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の封着用ガラス。
【請求項5】
更に、ガラス組成中にF2を0.1〜2モル%含むことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の封着用ガラス。
【請求項6】
顆粒形状であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の封着用ガラス。
【請求項7】
焼結体であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の封着用ガラス。
【請求項8】
気密端子の封着に用いることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の封着用ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封着用ガラスに関し、特に冷凍機等に使用される冷媒コンプレッサーの気密端子の封着に好適な封着用ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒コンプレッサーの気密端子は、気密性を維持するために、金属ステムと金属ピンを封着用ガラスで封着することにより作製される。
【0003】
この封着用ガラスは、以下のようにして作製、使用される。まずガラス原料を溶融、成形し、その成形体をボールミルで粉砕した後、所定の篩を通過させることによって微粉末にし、次いでこの微粉末をバインダーと混合して造粒し、顆粒を作製する。その後、この顆粒を打錠成型して貫通孔を有する圧粉体を作製し、これを常温から昇温して、バインダーの分解除去と焼結を行う。次に、得られた焼結体の貫通孔に金属ピンを挿入し、更にこの焼結体を環状の金属ステム内に収容した後、電気炉に投入し、窒素雰囲気下において、ガラス転移点より高い温度で焼成して封着する。その結果、封着用ガラスは、金属ステムによって圧縮された状態となる。なお、金属ステムの熱膨張係数は、一般的に140×10
−7/℃であり、封着用ガラスの熱膨張係数は、一般的に90×10
−7〜100×10
−7/℃である。
【0004】
図1(a)は、気密端子1を示す概念図であり、気密端子1は、金属ステム11、金属ピン12及び封着用ガラス13を有している。
図1(b)は、
図1(a)の気密端子1の要部について、焼成前の金属ステム11、金属ピン12及び封着用ガラス13の状態を示す概念図であり、
図1(c)は、
図1(a)の気密端子1の要部について、焼成後の金属ステム11、金属ピン12及び封着用ガラス13の状態を示す概念図である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−175069号公報
【特許文献2】特開2015−064928号公報
【特許文献3】特開2015−069732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
金属ステムと封着用ガラスは、ガラス転移点よりも高い温度で固着した後、室温まで冷却されるが、冷却時に、金属ステムと封着用ガラス間の収縮差によって応力が発生する。そして、その収縮差は、封着用ガラスの変形で解消されず、その殆どが、金属ステムと封着用ガラス間の応力として残存することになる。詳述すると、封着用ガラスは、金属ステムと封着用ガラスを固着した後、冷却する過程で、ガラス転移点付近の温度で異常収縮し、一時的に金属ステムから大きな引張応力を受けることになる。
【0007】
この引張応力は、封着用ガラスにクラックを生じさせて、冷凍機等に組み込んだ際に、冷媒の気密リークを引き起こす虞がある。
【0008】
また、封着用ガラスの固着温度が高い程、冷却後に発生する残留応力が大きくなり、気密リークの発生確率が上昇する。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、その技術的課題は、冷却時にガラス転移点付近の温度で異常収縮し難く、且つ固着温度が低い封着用ガラスを創案することにより、気密端子等の気密信頼性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、種々の実験を繰り返した結果、SiO
2に対するB
2O
3の含有割合を低減しつつ、アルカリ金属酸化物(Li
2O、Na
2O及びK
2O)とアルカリ土類金属酸化物(MgO、CaO、SrO及びBaO)の含有量を所定範囲に規制することにより、上記技術的課題を解決し得ることを見出し、本発明として、提案するものである。すなわち、本発明の封着用ガラスは、ガラス組成として、モル%表示で、SiO
2 60〜75%、B
2O
3 0〜5.9%、Li
2O+Na
2O+K
2O 12.7〜20%、Li
2O+Na
2O 11.5〜20%、MgO+CaO+SrO+BaO 2〜9%を含有し、モル比SiO
2/B
2O
3が12.7以上であることを特徴とする。ここで、「Li
2O+Na
2O+K
2O」は、Li
2O、Na
2O及びK
2Oの合量を指す。「Li
2O+Na
2O」は、Li
2OとNa
2Oの合量を指す。「MgO+CaO+SrO+BaO」は、MgO、CaO、SrO及びBaOの合量を指す。「SiO
2/B
2O
3」は、SiO
2の含有量をB
2O
3の含有量で割った値を指す。
【0011】
本発明の封着用ガラスは、B
2O
3の含有量が5.9モル%以下であり、且つモル比SiO
2/B
2O
3が12.7以上である。これにより、ガラス転移点付近の温度で熱膨張曲線の屈曲が小さくなり、冷却時にガラスが異常収縮し難くなる。その結果、ガラス転移点付近の温度で金属ステムとの熱膨張差が小さくなるため、冷凍機等に組み込んだ際に、封着用ガラスにクラックが発生し難くなる。
【0012】
また、本発明の封着用ガラスは、Li
2O+Na
2O+K
2Oの含有量が20モル%以下であり、且つLi
2O+Na
2Oの含有量が11.5モル%以上である。これにより、熱膨張係数の上昇を抑制しつつ、固着温度を低下させることが可能になる。
【0013】
更に、本発明の封着用ガラスは、MgO+CaO+SrO+BaOの含有量が2〜9モル%である。これにより、熱膨張係数の上昇を抑制しつつ、固着温度を低下させることが可能になる。
【0014】
第二に、本発明の封着用ガラスは、モル比SiO
2/B
2O
3が13.5以上であることが好ましい。
【0015】
第三に、本発明の封着用ガラスは、MgO+CaO+SrO+BaOの含有量が4〜7.2モル%であることが好ましい。
【0016】
第四に、本発明の封着用ガラスは、Li
2O+Na
2Oの含有量が12.7モル%以上であることが好ましい。
【0017】
第五に、本発明の封着用ガラスは、更に、ガラス組成中にF
2を0.1〜2モル%含むことが好ましい。
【0018】
第六に、本発明の封着用ガラスは、顆粒形状であることが好ましい。
【0019】
第七に、本発明の封着用ガラスは、焼結体であることが好ましい。
【0020】
第八に、本発明の封着用ガラスは、気密端子の封着に用いることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】(a)は、気密端子を示す概念図である。(b)は、焼成前の金属ステム、金属ピン及び封着用ガラスの状態を示す概念図であり、(c)は、焼成後の金属ステム、金属ピン及び封着用ガラスの状態を示す概念図である。
【
図2】金属ステムの熱膨張曲線と実施例の欄における試料No.1の熱膨張曲線とを重ね合わせたデータを示している。
【
図3】金属ステムの熱膨張曲線と実施例の欄における試料No.2の熱膨張曲線とを重ね合わせたデータを示している。
【
図4】金属ステムの熱膨張曲線と実施例の欄における試料No.3の熱膨張曲線とを重ね合わせたデータを示している。
【
図5】金属ステムの熱膨張曲線と実施例の欄における試料No.4の熱膨張曲線とを重ね合わせたデータを示している。
【
図6】金属ステムの熱膨張曲線と実施例の欄における試料No.5の熱膨張曲線とを重ね合わせたデータを示している。
【
図7】金属ステムの熱膨張曲線と実施例の欄における試料No.6の熱膨張曲線とを重ね合わせたデータを示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の封着用ガラスは、ガラス組成として、モル%表示で、SiO
2 60〜75%、B
2O
3 0〜5.9%、Li
2O+Na
2O+K
2O 12.7〜20%、Li
2O+Na
2O 11.5〜20%、MgO+CaO+SrO+BaO 2〜9%を含有し、モル比SiO
2/B
2O
3が12.7以上であることを特徴とする。上記のように各成分の含有量を限定した理由を下記に説明する。なお、各成分の含有量の説明箇所において、%表示は、モル%を指す。
【0023】
SiO
2は、ガラス骨格を形成するための主成分であり、その含有量は60〜75%であり、好ましくは65〜73%、より好ましく67〜72%である。SiO
2の含有量が少な過ぎると、熱膨張係数が不当に高くなる虞がある。一方、SiO
2の含有量が多過ぎると、固着温度が上昇し易くなる。
【0024】
B
2O
3は、溶融性を高めると共に、固着温度を低下させる成分であるが、冷却時にガラス転移点付近の温度で異常収縮を助長する成分である。B
2O
3の含有量は0〜5.9%であり、好ましくは0.5〜5.5%、より好ましくは1〜5.2%、特に好ましくは1.5〜5%である。B
2O
3の含有量が少な過ぎると、固着温度が上昇し易くなる。一方、B
2O
3の含有量が多過ぎると、ガラス転移点付近の温度で熱膨張曲線の屈曲が大きくなり、冷却時にガラスが異常収縮し易くなる。
【0025】
モル比SiO
2/B
2O
3は12.7以上であり、好ましくは13以上、より好ましくは13.5以上、更に好ましくは14以上、特に好ましくは14.5〜55である。モル比SiO
2/B
2O
3が小さ過ぎると、ガラス転移点付近の温度で熱膨張曲線の屈曲が大きくなり、冷却時にガラスが異常収縮し易くなる。
【0026】
アルカリ金属酸化物(Li
2O、Na
2O及びK
2O)は、溶融性を高めると共に、固着温度を低下させる成分であるが、冷却時にガラス転移点付近の温度で異常収縮を助長する成分であり、また耐水性や耐候性を低下させる成分である。なお、耐水性が低いと、造粒工程でガラスの取り扱いに制約が生じる虞がある。Li
2O+Na
2O+K
2Oの含有量は12.7〜20%であり、好ましくは13.5〜19%、より好ましくは15〜18%、更に好ましくは16〜17.5%である。Li
2Oの含有量は、好ましくは0〜12%、より好ましくは1〜8%、更に好ましくは2〜7%、特に好ましくは3〜6%である。Na
2Oの含有量は、好ましくは3〜17%、より好ましくは4〜15%、更に好ましくは6〜13%、特に好ましくは7〜12%である。K
2Oの含有量は、好ましくは0〜12%、より好ましくは0.1〜8%、更に好ましくは0.5〜6%、特に好ましくは1〜4%である。アルカリ金属酸化物の含有量が少な過ぎると、固着温度が高くなり易い。一方、アルカリ金属酸化物の含有量が多過ぎると、冷却時にガラス転移点付近の温度で異常収縮が大きくなり易く、また耐水性や耐候性が低下し易くなる。
【0027】
Li
2O+Na
2O+K
2Oの含有量を上記のように規制した上で、更にLi
2O+Na
2Oの含有量を11.5%以上、12%以上、12.7%以上、13.5%以上、特に14%以上に規制することが好ましい。Li
2O+Na
2Oの含有量が少な過ぎると、イオン半径が大きいK
2Oの含有割合が大きくなるため、ガラス骨格が寸断され易くなる。これにより、固着温度を低下させる効果よりも熱膨張曲線の直線域における熱膨張係数を高める効果が大きくなる。結果として、封着用ガラスが金属ステムによって圧縮され難くなり、気密端子の封着強度が低下し易くなる。
【0028】
アルカリ土類金属酸化物(MgO、CaO、SrO及びBaO)は固着温度を低下させる成分である。MgO+CaO+SrO+BaOの含有量は2〜9%であり、好ましくは3〜7.2%、より好ましくは4〜6.5%、特に好ましくは4.5〜5.5%である。MgOの含有量は、好ましくは0〜5%、より好ましくは0〜3%、更に好ましくは0〜1%である。CaOの含有量は、好ましくは0〜5%、より好ましくは0〜3%、更に好ましくは0〜1%である。SrOの含有量は、好ましくは0〜5%、より好ましくは0〜3%、更に好ましくは0〜1%である。BaOの含有量は、好ましくは1〜7%、より好ましくは2〜6.5%、更に好ましくは3〜6%である。アルカリ土類金属酸化物の含有量が少な過ぎると、固着温度が高くなるため、冷却後に発生する残留応力が大きくなり、気密リークの発生確率が上昇し易くなる。一方、アルカリ土類金属酸化物が多過ぎると、熱膨張曲線の直線域における熱膨張係数が不当に高くなり易い。結果として、封着用ガラスが金属ステムによって圧縮され難くなり、気密端子の封着強度が低下し易くなる。
【0029】
Al
2O
3は、耐水性や耐候性を高める成分であり、その含有量は、好ましくは0〜8%、より好ましくは1〜6%、更に好ましくは2〜4%である。Al
2O
3の含有量が少な過ぎると、耐水性や耐候性が低下し易くなる。一方、Al
2O
3の含有量が多過ぎると、固着温度が上昇し易くなる。
【0030】
TiO
2とZrO
2は、耐水性や耐候性を高める成分であり、それらの個別の含有量は、好ましくは0〜4%、より好ましくは0〜2%、更に好ましくは0.1〜1%である。TiO
2とZrO
2の含有量が少な過ぎると、耐水性や耐候性が低下し易くなる。一方、TiO
2とZrO
2の含有量が多過ぎると、固着温度が上昇し易くなる。
【0031】
F
2は、高温粘性を低下させつつ、ガラス転移点付近の温度で異常収縮を低減する成分である。F
2の含有量は、好ましくは0〜2%、より好ましくは0.1〜1%である。F
2の含有量が多過ぎると、環境負荷が増大し易くなる。
【0032】
上記成分以外にも、本発明の効果を不当に妨げない限り、例えば、Cl
2、La
2O
3、MnO
2、Cr
2O
3、Fe
2O
3、Co
2O
3等を個別に0.1〜3%導入してもよい。
【0033】
本発明の封着用ガラスにおいて、熱膨張係数は、好ましくは100×10
−7/℃以下、より好ましくは98×10
−7/℃以下、更に好ましくは75×10
−7〜96×10
−7/℃、特に好ましくは85×10
−7〜94×10
−7/℃である。熱膨張係数が高過ぎると、気密端子の作製後に、封着用ガラスが金属ステムによって十分に圧縮された状態にならず、封着強度を維持し難くなる。一方、熱膨張係数が低過ぎると、気密端子の作製後に、封着用ガラスが金属ステムによって過度に圧縮された状態になり、封着用ガラスが破損する虞がある。なお、「熱膨張係数」は、30〜380℃の温度範囲において、押棒式熱膨張係数測定装置(TMA)で測定した平均線熱膨張係数を指す。
【0034】
本発明の封着用ガラスにおいて、固着温度は、好ましくは585℃以下、より好ましくは550℃以下、更に好ましくは480〜535℃、特に好ましくは500〜525℃である。固着温度が高過ぎると、冷却後に発生する残留応力が大きくなり、気密リークの発生確率が上昇し易くなる。なお、「固着温度」は、押棒式熱膨張係数測定装置(TMA)による熱膨張曲線において、ガラス転移点をTg(℃)、屈伏点をTf(℃)とした時に、Tf−(Tf−Tg)/3の式から算出される温度を指す。
【0035】
本発明の封着用ガラスは、顆粒形状であることが好ましい。このようにすれば、打錠成型により、所定形状の圧粉体、特に金属ピンを通すための貫通孔を有する圧粉体を容易に作製することができる。
【0036】
本発明の封着用ガラスは、焼結体であることが好ましい。このようにすれば、金属ピンを挿入した後、金属ステム内に収容する際に、封着用ガラスの欠けを抑制することができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、以下の実施例は単なる例示である。本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
【0038】
表1は、本発明の実施例(試料No.1〜4)及び比較例(試料No.5、6)を示している。
【0039】
【表1】
【0040】
まず表中のガラス組成になるように、ガラス原料を調合したガラスバッチを白金坩堝に入れ、1500℃で4時間溶融した。ガラスバッチの溶解に際しては、白金スターラーを用いて攪拌し、均質化を行った。次いで、溶融ガラスをカーボン板上に流し出し、板状に成形した後、徐冷点より20℃程度高い温度から、3℃/分で常温まで徐冷した。得られた各ガラス試料について、種々の特性を評価した。
【0041】
固着温度は、押棒式熱膨張係数測定装置(TMA)による熱膨張曲線において、ガラス転移点をTg(℃)、屈伏点をTf(℃)とした時に、Tf−(Tf−Tg)/3の式から算出される温度を指す。
【0042】
熱膨張係数α
30〜380は、30〜380℃の温度範囲においてTMAで測定した平均線熱膨張係数である。
【0043】
金属ステムとの熱膨張差は、金属ステムの熱膨張曲線とガラス試料の熱膨張曲線を重ね合わせた後、ガラス転移点における熱膨張係数の差を評価したものである。
【0044】
図2は、金属ステムの熱膨張曲線と試料No.1の熱膨張曲線とを重ね合わせたデータを示している。
図3は、金属ステムの熱膨張曲線と試料No.2の熱膨張曲線とを重ね合わせたデータを示している。
図4は、金属ステムの熱膨張曲線と試料No.3の熱膨張曲線とを重ね合わせたデータを示している。
図5は、金属ステムの熱膨張曲線と試料No.4の熱膨張曲線とを重ね合わせたデータを示している。
図6は、金属ステムの熱膨張曲線と試料No.5の熱膨張曲線とを重ね合わせたデータを示している。
図7は、金属ステムの熱膨張曲線と試料No.6の熱膨張曲線とを重ね合わせたデータを示している。なお、
図2〜7において、点線は金属ステムの熱膨張曲線を示しており、実線はガラス試料の熱膨張曲線を示している。
【0045】
表1、
図2〜7から明らかなように、試料No.1〜4は、ガラス転移点において金属ステムとの熱膨張差が小さかった。一方、試料No.5、6は、モル比SiO
2/B
2O
3が小さいため、ガラス転移点において金属ステムとの熱膨張差が大きかった。よって、試料No.5、6を用いて、気密端子を作製すると、封着用ガラスにクラックが発生するものと考えられる。
【符号の説明】
【0046】
1 気密端子
11 金属ステム
12 金属ピン
13 封着用ガラス