特許第6572744号(P6572744)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6572744
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/20 20060101AFI20190902BHJP
   H01F 38/30 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   G01R15/20 C
   H01F38/30
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-218736(P2015-218736)
(22)【出願日】2015年11月6日
(65)【公開番号】特開2017-90168(P2017-90168A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】宮腰 高明
(72)【発明者】
【氏名】奥村 健
(72)【発明者】
【氏名】神谷 彰
(72)【発明者】
【氏名】藤田 範章
(72)【発明者】
【氏名】津田 守
(72)【発明者】
【氏名】道下 修一
(72)【発明者】
【氏名】谷川 望
(72)【発明者】
【氏名】中村 仁
【審査官】 續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−14789(JP,A)
【文献】 国際公開第90/11529(WO,A1)
【文献】 特開2015−34701(JP,A)
【文献】 特開2014−20980(JP,A)
【文献】 特開2005−300170(JP,A)
【文献】 特開2014−185935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/20
H01F 38/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体で形成され、基部と前記基部に設けられて互いに離間する複数の腕部とを有するコアと、
一対の対向する前記腕部によって形成され開口を有する複数のギャップの内部の夫々に挿通される導体と、
前記ギャップの内部に配置され、前記導体に対して前記腕部の長手方向の開口側に離間して設けられた検出素子と、を備え、
前記複数の腕部のうち前記コアの両端部に設けられた腕部が他の腕部よりも前記長手方向に突出している電流センサ。
【請求項2】
前記複数のギャップのうち最も外側のギャップを除く少なくとも1つの内側のギャップを構成する一対の腕部の突出長さが互いに異なる請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
前記複数のギャップを構成する一対の腕部につき、前記コアの端部に近い腕部ほど前記長手方向に突出する請求項1または2に記載の電流センサ。
【請求項4】
前記コアの最外側に位置する腕部のうち、長手方向に沿った中間領域に凹部を形成することにより、前記腕部の先端に、前記検出素子側に突出する突起部を設けてある請求項1から3のいずれか一項に記載の電流センサ。
【請求項5】
前記複数のギャップのうち最も外側のギャップを除く内側のギャップを構成する一対の腕部の一方に、長手方向に沿った中間領域に凹部を形成することにより、当該腕部の先端から前記検出素子側に突出する突起部を設けてある請求項1から4のいずれか一項に記載の電流センサ。
【請求項6】
前記内側のギャップを構成する一対の腕部の両方に、前記凹部を形成することにより、当該腕部の先端から前記検出素子側に突出する突起部を設けてある請求項5に記載の電流センサ。
【請求項7】
前記複数のギャップを有し、両端部の腕部が他の腕部よりも長手方向に突出するコアの複数を連接して一体形成してある請求項1から6のいずれか一項に記載の電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のギャップを有するコアを備える電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動車等に搭載されるインバータ装置に用いられ、複数のコア部を有する電流センサが開示されている。複数のコア部は、隣接するコアの間にそれぞれギャップが形成され、複数のギャップに導電部材及びセンサ素子がそれぞれ配置されている。電流センサは、導電部材を流れる電流の変化に応じてギャップに生じる磁界変化をセンサ素子によって検出し、その検出信号を出力する。ギャップが形成される複数のコア部は一体化されて電流センサに装着されている。このため、電流センサはコンパクトに構成することができ、複数のコア部の組付け性も向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−20980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電流センサでは、センサ素子は複数のギャップにおいて検出誤差が最も低い位置、例えば幅方向の中央位置に夫々配置される。ただし、センサ素子をギャップに配置する際には多少の位置ずれが生じる。
【0005】
複数のコア部に並んで形成される複数のギャップのうち、両端側を除くギャップには、隣接する両側にもコアを挟んでギャップが存在する。これらのギャップは、その両側のギャップとの間で互いの磁束の影響を受けて磁束を打消し合うため、対称形の磁場が形成され易い。一方、両端側のギャップでは、隣接する両側のうち一方にはコアを挟んだ位置にギャップが存在しない。このため、これらのギャップには非対称の磁場が形成され、センサ素子の位置に発生する磁場の分布に偏りが生じる。そうなると、ギャップに対称形の磁場が存在する場合に比べてセンサ素子の位置ずれによる検出誤差は大きくなる。
【0006】
上記実情に鑑み、複数のギャップの一部に発生する磁場分布の偏りを抑制できる電流センサが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電流センサの特徴構成は、磁性体で形成され、基部と前記基部に設けられて互いに離間する複数の腕部とを有するコアと、一対の対向する前記腕部によって形成され開口を有する複数のギャップの内部の夫々に挿通される導体と、前記ギャップの内部に配置され、前記導体に対して前記腕部の長手方向の開口側に離間して設けられた検出素子と、を備え、前記複数の腕部のうち前記コアの両端部に設けられた腕部が他の腕部よりも前記長手方向に突出している点にある。
【0008】
複数のギャップを有するコアを用いた電流センサにあっては、ギャップに配置した導体に通電した場合、コアの中央部のギャップにおける磁界の形成態様と、コアの両端のギャップにおける磁界の形成態様とは異なる。これは、ギャップを取り囲む磁性体の形状や体積に関係すると考えられる。例えば、ギャップを挟んで対向する腕部の先端部どうしに亘って形成される磁場の分布が、ギャップの延出方向を挟んで左右均等とはならず、ギャップの延出方向に対して傾斜することが多い。そのため、検出素子の設置が正確に行われず、ギャップの幅方向の何れか一方に偏位した場合に、歪んだ磁界の影響を受け、検出誤差が発生し易いこととなる。
【0009】
そこで、本構成では、複数の腕部のうちコアの両端部に設けられた腕部が他の腕部よりも長手方向に突出する。これにより、ギャップの両側にある磁性体のボリュームの差などに起因する磁界の乱れを矯正し、検出素子を配置する位置での磁場をギャップの中心線を挟んで左右均等に分布させることができる。その結果、ギャップの内部において検出素子の位置ずれが生じても、磁力線の検出強度はそれほど影響されない。よって、検出素子の取付誤差に拘らず安定した検出精度を発揮する電流センサを得ることができる。
【0010】
本発明に係る電流センサにあっては、前記複数のギャップのうち最も外側のギャップを除く少なくとも1つの内側のギャップを構成する一対の腕部の突出長さが互いに異なっていてもよい。
【0011】
特定のギャップに着目した場合、腕部の幅が異なることでも磁界の不均衡が生じる。そこで、本構成のように、内側のギャッブを構成する一対の腕部の突出長さが互いに異なるように設定することで、夫々のギャップでの磁場分布の偏りを抑制することができる。
【0012】
本発明に係る電流センサにあっては、前記複数のギャップを構成する一対の腕部につき、前記コアの端部に近い腕部ほど前記長手方向に突出してもよい。
【0013】
特定のギャップに着目した場合、当該ギャップがコアの中央にある場合を除き、当該ギャップを挟んで両側に存在するコアのボリュームは異なる。そのため、オフセットした位置にあるギャップに配置された導体に通電したとき、上記のような磁界の不均衡が生じる。そこで本構成では、複数のギャップを構成する一対の腕部につき、コアの端部に近い腕部ほど長手方向に突出している。これにより、複数のギャップに発生する磁界の不均衡を解消し、検出素子の検出精度を高めることができる。
【0014】
本発明に係る電流センサは、前記コアの最外側に位置する腕部のうち、長手方向に沿った中間領域に凹部を形成することにより、前記腕部の先端に、前記検出素子側に突出する突起部を設けて構成することができる。
【0015】
本構成の如く、腕部の中間領域に凹部を形成することにより、腕部の先端に突起部を設け、しかも、当該突起部にギャップの延出方向に沿った幅を持たせることで、対向する突起部が夫々有する平面間に磁力線が集中し、安定した磁界が形成される。検出素子は、この安定した磁界の内部に配置されるから、検出素子の配置誤差の影響が出にくく、安定した検出性能を得ることができる。
【0016】
本発明に係る電流センサは、前記複数のギャップのうち最も外側のギャップを除く内側のギャップを構成する一対の腕部の一方に、長手方向に沿った中間領域に凹部を形成することにより、当該腕部の先端から前記検出素子側に突出する突起部を設けて構成することができる。
【0017】
最も外側のギャップに限らず、その他の内側のギャップにおいても検出素子側に突起部を設けることで、突起部の角部が基準となって、検出素子周辺における磁場の分布状態を整えることができる。つまり、検出素子の周辺の磁界を所期の状態に近付けることができ、検出素子の位置誤差に起因した検出誤差が生じ難くなる。このように、コアに形成された何れのギャップにおいても検出精度が高まる結果、検出精度のより高い電流センサを得ることができる。
【0018】
本発明に係る電流センサは、前記内側のギャップを構成する一対の腕部の両方に、前記凹部を形成することにより、当該腕部の先端から前記検出素子側に突出する突起部を設けて構成することができる。
【0019】
本構成の如く、一対の腕部の両方に凹部を形成することで、一対の両腕部の両方に検出素子側に突出する突起部が設けられ、検出素子周辺の磁界は、双方の突起部の角部等を基準に形成される。よって、磁力線の分布状態がより確定的なものとなり、しかも、磁力線の収束度も高まるなど、検出素子の近傍により適切な磁界を形成することができる。そのため、検出素子の配置誤差の許容度が高く、検出精度のより高い電流センサを得ることができる。
【0020】
本発明に係る電流センサにあっては、前記複数のギャップを有し、両端部の腕部が他の腕部よりも長手方向に突出するコアの複数を連接して一体形成することができる。
【0021】
例えば、自動車などでは、幾つもの電力供給先にケーブルを敷設する場合がある。その場合、ケーブルに流れる電流量を測定する必要があるが、この測定は例えば一か所に集約できれば便利である。
そこで、本構成の如く、両端部の腕部が他の腕部よりも長手方向に突出するコアを一つのユニットとし、複数のコアを一体形成することで、コアの設置の手間が軽減され、電流センサに係る各種配線作業やメンテナンス等が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態に係る電流センサの斜視図である。
図2】第1実施形態の同上正面図である。
図3】従来のコアの正面図である。
図4図3の領域Aのギャップでの磁場の分布を示す図である。
図5】領域Aのギャップでの素子位置のずれと検出誤差との関係を示すグラフである。
図6】領域Bのギャップでの素子の位置ずれと検出誤差との関係を示すグラフである。
図7】本実施形態における領域Aのギャップでの磁場の分布を示す図である。
図8】本実施形態における領域Aのギャップでの素子の位置ずれと検出誤差との関係を示すグラフである。
図9】第1実施形態の変形例の正面図である。
図10】第2実施形態に係る電流センサの正面図である。
図11】第2実施形態の変形例の正面図である。
図12】第3実施形態に係る電流センサの正面図である。
図13】第3実施形態の変形例の正面図である。
図14】第4実施形態に係る電流センサの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第1実施形態〕
〔全体構成〕
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態の電流センサは、検出素子が所期の位置と異なる位置に配置された場合でも、導体に流れる被測定電流を精度良く測定できるよう構成される。
【0024】
導体に電流が流れると、電流の大きさに応じて導体の周りに磁界が発生する(アンペールの右手の法則)。本電流センサは、このような磁界において磁束密度を検出し、検出された磁束密度に基づいて導体に流れる電流(電流値)を測定する。
【0025】
図1には本実施形態に係る電流センサ100の斜視図を示す。導体20は平板状を呈している。以下では理解を容易にするために、導体20の厚さ方向をX方向とし、導体20が延在する方向(延在方向)をY方向とし、導体20の幅方向をZ方向として説明する。これらXYZ方向は、夫々、互いに直交する。図2は、導体20のY方向視における電流センサ100の模式図である。
【0026】
本電流センサ100は、コア10、導体20、検出素子30を備えて構成される。コア10は、直線状あるいはU字状等のギャップ40を複数備えた磁性体で形成される。本実施形態では、コア10は金属磁性体からなる平板を積層して形成される。金属磁性体とは、軟磁性の金属であり、電磁鋼板(珪素鋼板)やパーマロイ、パーメンジュール等が相当する。平板は、このような金属磁性体を打ち抜き加工して形成される。
【0027】
コア10が基部10bと基部10bに設けられZ方向に突出形成されて互いに離間する複数の腕部11とを有し、一対の対向する腕部11の間に開口を有するギャップ40が夫々形成されている。本実施形態では、複数のギャップ40のうち最も外側のギャップ40が一対の腕部11a及び11と11b及び11とによって構成される。このうち、コア10の両端部に設けられた腕部11a,11bが、他の腕部11よりも長手方向に高さH1だけ突出しており、腕部11a,11bを除く腕部11の突出長さは全て同じに設定されている。
【0028】
導体20は、平板状であって所定の幅を有する長尺状に構成され、被測定電流が流される。被測定電流とは、電流センサ100で検出する検出対象としての電流である。このような導体20は、コア10に形成されたギャップ40に挿通される。本実施形態に係る導体20は、図1及び図2に示されるように、導体20のYZ面が、コア10の内壁10aと平行になるように挿通される。コア10と導体20とは離間しているため互いに絶縁状態にある。このような導体20は、例えば、図示しない3相モータと当該3相モータに通電するインバータとを接続するバスバーに直列接続される。
【0029】
検出素子30は、ギャップ40の内部であって、導体20よりもギャップ40の開口端部に近い側に配置される。検出素子30と導体20との間には空隙が形成され、互いに絶縁されている。導体20に通電されると、コア10に磁界が発生する。当該磁界は、検出素子30の近傍ではX方向に沿ったものとなる。
【0030】
検出素子30は、検出方向をX方向に一致させて配置される。これにより、検出素子30は、導体20に流れる被測定電流により形成される磁界の強さを効果的に検出することができる。
【0031】
比較例として、コア10に形成される複数の腕部11の突出長さが全て同じ電流センサを図3に示す。こうした電流センサでは、コア10の端部の領域Aと、コア10の中央部の領域Bとにおいては、それぞれのギャップ40に形成される磁界が異なる。
【0032】
図4は、図3の領域AのY方向(図1参照)における断面であり、導体20に所定の電流を流した際に、コア10の周囲に生じる磁場分布が示されている。図4では、所謂「等高線」のように同じ磁場の強度が線(以下「強度線」とする)で繋いで示される。したがって、図4において、強度線同士の間隔が広い部位は磁場の強度の変化量が小さく、強度線同士の間隔が狭い部位は磁場の強度の変化量が大きいことを示している。
【0033】
図4において、一対の腕部11が対向する部分には強度線の間隔が広い部位が存在する。ただし、ギャップ40の位置がコア10の両端部の何れかに偏位している場合には、当該ギャップ40に対して両側のコア10のボリュームが異なるため、領域Aでの強度線の分布がギャップ40の中心線を挟んで左右対称とはならない。このため、領域Aのギャップ40においても強度線の分布に偏りが生じており、検出素子30がプラス方向に位置ずれし強度線を越えたときに検出誤差が急激に増大する(図5参照)。一方、図3の領域Bのギャップ40では、両側のコア10のボリュームが同じである。このため、強度線の分布がギャップ40の中心線を挟んで左右対称となる。したがって、ギャップ40が何れの方向に位置ずれした場合でも検出誤差は少ない(図6参照)。
【0034】
本実施形態では、一般的なコア10の領域Aのギャップ40に生じる強度線の分布に偏りに対し、図7に示すように、最も外側のギャップ40を構成する双方の腕部11の突出長さのうち、コア10の端部に位置する腕部11aほど長くし、領域Aでの強度線の分布が左右均等に近づくように構成している。
【0035】
図7は本実施形態のコア10の領域AにおけるY方向での断面であり、図4と同様にコア10の周囲に生じる磁場分布が示されている。図7に示されるように、コア10の一対の腕部11のうち外側の腕部11aの突出長さを大きくすることで、検出素子30の上下に間隔を有して強度線が形成される。ギャップ40の両側にある磁性体のボリュームの差などに起因する磁界の乱れが矯正され、検出素子30を配置する位置での磁場をギャップの中心線を挟んで左右均等に分布させることができる。このため、検出素子30の位置が左右方向に多少ずれたとしても、磁力線の検出強度はそれほど影響されず、検出誤差の上昇度合は小さい(図8参照)。
このように、検出素子30の位置が所期の位置に対し特にX方向にずれた場合でも、検出素子30を通る磁束密度が大きく変化しないので、位置ずれに対するロバスト性を向上することができる。したがって、精度良く電流を検出することが可能となる。
【0036】
〔第1実施形態の変形例〕
上記の実施形態では、ギャップ40を形成する複数の腕部11のうち、両端部に位置する腕部11a,11bを除く腕部11の突出長さが全て同じ例を示した。本実施形態では、図9に示すように、複数のギャップ40を構成する一対の腕部11,11につき、コア10の端部に近い腕部11ほど長手方向に突出している。すなわち、複数の腕部11の突出長さがコア10の中央から両端部に向けて高さH1〜H3の順で段階的に大きく構成されている。なお、高さH1〜H3はギャップ40の磁界の形成状態に応じて適宜調整される。
【0037】
特定のギャップ40に着目した場合、当該ギャップ40がコア10の中央にある場合を除き、当該ギャップ40を挟んで両側に存在するコア10のボリュームは異なる。そのため、オフセットした位置にあるギャップ40に挿入配置された導体20に通電したとき、上記のような磁界の不均衡が生じる。そこで、複数のギャップ40を構成する一対の腕部11につき、コア10の端部に近い腕部11ほど、突出長さを長く構成している。これにより、複数のギャップ40に発生する磁界の不均衡を解消し、検出素子30の検出精度を高めることができる。
【0038】
夫々のギャップ40における検出素子30の位置は、当該ギャップ40を構成する一対の腕部11のうち長さの短い腕部11の先端位置を基準に設定する。具体的には、長さの短い腕部11の先端から、ギャップ40の幅の半分の寸法長さだけ引退した位置に検出素子30を配置する。ギャップ40の幅方向の位置については中央位置とする。この位置であれば、一対の腕部11に亘って形成される磁界がX方向に沿って最も変化が少なくなる。よって、検出素子30の設置位置に誤差が生じた場合でも、安定した検出結果を得ることができる。
【0039】
腕部11a,11bを除く複数の腕部11は、例えば、腕部11の並び方向に沿って腕部11の長さを変更し、腕部11の先端部が並び方向に沿って凹凸になってもよい。また、全ての腕部11の長さが異なるものであってもよい。ただし、この場合も、腕部11a,11bを除く複数の腕部11の突出長さは、腕部11a,11bの突出長さよりも小さく設定される。
【0040】
〔第2実施形態〕
本実施形態では、図10に示すように、コア10の腕部11のうち、長手方向に沿った中間領域に凹部12が形成されている。凹部12はギャップ40を形成する一対の腕部11,11のうち、端部側の腕部11に形成されている。凹部12により、腕部11の先端に検出素子30側に突出する突起部13が設けられる。なお、他の構成については第1実施形態と同様である。
【0041】
最も外側のギャップ40の形成する腕部11a、11bの中間領域に凹部12を形成することにより、腕部11a,11bの先端に突起部13を設け、しかも、当該突起部13にギャップ40の延出方向に沿った幅を持たせることで、対向する突起部13が夫々有する平面間に磁力線が集中し、安定した磁場が形成される。検出素子30は、この安定した磁場の内部に配置されるから、検出素子30の配置誤差の影響が出にくく、安定した検出性能を得ることができる。
【0042】
最も外側のギャップ40に限らず、その他の内側のギャップ40においても検出素子30側に突出する突起部13を形成することで、突起部13の角部が基準となって、検出素子周辺における磁場の分布状態を整えることができる。つまり、検出素子30の周辺の磁界を所期の状態に近付けることができ、検出素子30の位置誤差に起因した検出誤差が生じ難くなる。このように、コア10に形成された何れのギャップ40においても検出精度が高まる結果、検出精度のより高い電流センサ100を得ることができる。
【0043】
尚、ギャップ40の奥行き方向に沿った突起部13の幅は、例えば、ギャップ40の幅の半分程度を目安とする。こうすることで、対向する突起部13の角部どうしに亘って磁界が形成され、検出素子30の位置で安定した磁場分布を得ることができる。
【0044】
また、検出素子30の位置は、当該ギャップ40を構成する一対の腕部11のうち長さの短い腕部11の先端位置を基準とし、当該短い腕部11の突起部13のうちギャップの奥側に位置する角部の近傍に設定する。この位置であれば、形成される磁場の分布が検出素子30の周囲においてX方向に沿って変動の少ないものとなる。よって、検出素子30の位置誤差のうち、特にX方向に沿った位置誤差の影響を受け難くなり、検出精度に優れた電流センサを得ることができる。
【0045】
〔第2実施形態の変形例〕
本実施形態では、図11に示すように、複数の腕部11の突出長さをコア10の中央から両端側に向けて順に大きくなるように構成してある。ただし、この変形例は一例であって、腕部11a,11bを除く複数の腕部11は、突出長さの並びに凹凸が存在してもよく、全てを異なる突出長さで構成してもよい。
【0046】
〔第3実施形態〕
本実施形態では、図12に示すように、コア10において内側のギャップ40を構成する一対の腕部11において、ギャップ40に対向する部位の両方に凹部12が形成されている。これにより、腕部11の先端から検出素子30側に突出し、ギャップ40の延出方向に沿う突起部13が腕部11の両側に形成されるギャップ40に対して夫々設けられている。なお、他の構成については第1実施形態と同様である。
【0047】
一対の腕部11において、ギャップ40に対向する部位の両方に凹部12が形成されることで、一対の腕部11,11の両方に検出素子30側に突出する突起部13に設けられ、検出素子30の周辺の磁界は、双方の突起部13,13の角部等を基準に形成される。よって、磁力線の分布状態がより確定的なものとなり、しかも、磁力線の収束度も高まるなど、検出素子30の近傍により適切な磁界を形成することができる。そのため、検出素子30の配置誤差の許容度が高く、検出精度のより高い電流センサ100を得ることができる。
【0048】
〔第3実施形態の変形例〕
本実施形態では、図13に示すように、複数の腕部11の突出長さをコア10の中央から両端側に向けて順に大きくなるように構成してある。ただし、この変形例は一例であって、腕部11a,11bを除く複数の腕部11は、突出長さの並びに凹凸が存在してもよく、全てを異なる突出長さで構成してもよい。
【0049】
〔第4実施形態〕
上記実施形態では、単体のコア10の構成を例に示したが、本実施形態のように、複数のコア10を連接して一体形成してもよい。図14では、複数のギャップ40を有し、両端部の腕部11a、11bが他の腕部11よりも長手方向に突出するコア10Aと、同じく両端部の腕部15a、15bが他の腕部15よりも長手方向に突出するコア10Bとを連接して一体形成している。
【0050】
これにより、異なる電力供給先にケーブルを配設する場合等において、ケーブルに流れる電流量の測定を一か所に集約することができる。また、両端部の腕部の長さが長いコア10を一つのユニットとし、複数のコアを一体形成することで、コア10の設置の手間が軽減され、電流センサに係る各種配線作業やメンテナンス等が容易となる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る電流センサは、各種の電気機器に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
10 コア
10b 基部
11,11a,11b 腕部
12 凹部
13 突起部
20 導体
30 検出素子
40 ギャップ
100 電流センサ
図1
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図14