特許第6572764号(P6572764)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6572764-斜板式ピストンポンプ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6572764
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】斜板式ピストンポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 1/22 20060101AFI20190902BHJP
【FI】
   F04B1/22
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-251456(P2015-251456)
(22)【出願日】2015年12月24日
(65)【公開番号】特開2017-115677(P2017-115677A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】宇野 峰志
(72)【発明者】
【氏名】横町 尚也
(72)【発明者】
【氏名】松尾 力
(72)【発明者】
【氏名】上田 祐規
【審査官】 岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−292070(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0174758(US,A1)
【文献】 特開2002−070723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 1/12,1/22,53/00
F03C 1/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに回転可能に支持される回転軸と、
前記回転軸が挿入される筒状のシリンダブロックと、
前記シリンダブロックに形成される複数のシリンダボアと、
各シリンダボア内に収納されるピストンと、
各ピストンの端部に設けられるシューと、
各シューを保持する保持部材と、
前記ハウジング内に収容されるとともに前記回転軸の回転軸線に直交する方向に対して傾斜する斜板と、
前記回転軸が挿入される筒状のピボットと、
前記ピボットを前記斜板に向けて付勢する付勢部材と、を備え、
前記付勢部材により前記斜板に向けて付勢された前記ピボットが、前記保持部材を前記斜板に向けて押圧することで、各シューが前記斜板に密着しており、
前記回転軸の外周面と前記シリンダブロックの内周面とが凹凸嵌合されることにより、前記回転軸と前記シリンダブロックとが一体的に回転可能になっており、
前記回転軸の外周面と前記ピボットの内周面とが凹凸嵌合されることにより、前記回転軸と前記ピボットとが一体的に回転可能になっており、
前記ピボットの内周面に設けられる凹凸形状は、前記シリンダブロックの内周面に設けられる凹凸形状と同一形状になっている斜板式ピストンポンプであって、
前記シリンダブロックの内周面の凹凸と、前記ピボットの内周面の凹凸とが、前記シリンダブロック及び前記ピボットの軸方向から見たときに周方向で一致するように、前記シリンダブロック及び前記ピボットの周方向での相対位置を位置決めする位置決め機構を備え
前記シリンダブロックを貫通する複数の円柱状のピンを備え、
前記付勢部材の付勢力が前記複数の円柱状のピンを介して前記ピボットに伝達されており、
前記ピボットにおける前記シリンダブロック側の端面には、各ピンが嵌め込まれる凹部が設けられており、
前記位置決め機構は、前記ピン及び前記凹部により構成されており、
前記シリンダブロックの内周面には、凹凸を形成する複数のスプライン山歯とスプライン谷歯とが周方向に交互に連続して設けられており、
前記シリンダブロックの内周面には、前記ピンの外周面の形状に沿った円弧状のピン支持溝が設けられており、
前記ピンは、前記ピン支持溝に嵌め込まれるとともに、その一部が前記ピン支持溝から径方向に突出することによって、前記複数のスプライン山歯のうちの一つを形成しており、
前記凹部は、前記ピボットの内周面に設けられる凹凸を形成する複数のスプライン山歯のうちの一つと前記シリンダブロック及び前記ピボットの軸方向で重なる位置に設けられていることを特徴とする斜板式ピストンポンプ。
【請求項2】
前記凹部は、前記ピボットの内周から外周に亘って形成されている請求項1に記載の斜板式ピストンポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、斜板式ピストンポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
斜板式ピストンポンプは、例えば、エンジン式のフォークリフトに搭載される油圧ポンプとして使用されている。例えば特許文献1に開示されている斜板式ピストンポンプは、作動油(作動流体)の吐出容量を可変とする可変容量型である。斜板式ピストンポンプのハウジング内には回転軸が回転可能に支持されている。また、ハウジング内には、円筒状のシリンダブロックが設けられている。シリンダブロックの内側には、回転軸が挿入されている。そして、回転軸の外周面とシリンダブロックの内周面とがスプライン嵌合(凹凸嵌合)されることにより、回転軸とシリンダブロックとは一体的に回転可能になっている。シリンダブロックには、複数のシリンダボアが回転軸の周囲に形成されている。各シリンダボア内にはピストンが収納されている。各ピストンの端部にはシューがそれぞれ設けられている。各シューは、リテーナプレート(保持部材)によって保持されている。
【0003】
ハウジング内には、回転軸の回転軸線に直交する方向に対する傾斜角度(傾角)の変更が可能な斜板が収容されている。斜板におけるシリンダブロック側の端面は、各シューが摺接する平坦面状の摺接面になっている。リテーナプレートの内側には、円筒状のピボットが設けられている。ピボットの内側には、回転軸が挿入されている。そして、回転軸の外周面とピボットの内周面とがスプライン嵌合(凹凸嵌合)されることにより、回転軸とピボットとは一体的に回転可能になっている。ピボットの内周面に設けられる凹凸形状は、シリンダブロックの内周面に設けられる凹凸形状と同一形状になっている。ピボットは、シリンダブロックと回転軸との間に配設された付勢ばね(付勢部材)の付勢力がピンを介して伝達されて、斜板に向けて付勢されている。そして、斜板に向けて付勢されたピボットが、リテーナプレートを斜板に向けて押圧することで、各シューが斜板におけるシリンダブロック側の端面に密着している。
【0004】
回転軸が回転してシリンダブロックが回転軸と一体的に回転すると、各シューが斜板の摺接面を摺接しながら、各ピストンが回転軸の周囲を回転軸の周方向に沿って移動する。これにより、各ピストンは、シリンダブロックの回転に伴って斜板の傾角に応じたストロークでシリンダボア内を往復動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平4−32272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、回転軸を、シリンダブロック及びピボットの内側に挿入する際に、シリンダブロックの内周面の凹凸と、ピボットの内周面の凹凸とが、シリンダブロック及びピボットの軸方向から見たときに周方向で一致していないと、回転軸を、シリンダブロック及びピボットの内側に挿入し難くなってしまう。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、シリンダブロック及びピボットの内側に回転軸を挿入し易くすることができる斜板式ピストンポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する斜板式ピストンポンプは、ハウジングと、前記ハウジングに回転可能に支持される回転軸と、前記回転軸が挿入される筒状のシリンダブロックと、前記シリンダブロックに形成される複数のシリンダボアと、各シリンダボア内に収納されるピストンと、各ピストンの端部に設けられるシューと、各シューを保持する保持部材と、前記ハウジング内に収容されるとともに前記回転軸の回転軸線に直交する方向に対して傾斜する斜板と、前記回転軸が挿入される筒状のピボットと、前記ピボットを前記斜板に向けて付勢する付勢部材と、を備え、前記付勢部材により前記斜板に向けて付勢された前記ピボットが、前記保持部材を前記斜板に向けて押圧することで、各シューが前記斜板に密着しており、前記回転軸の外周面と前記シリンダブロックの内周面とが凹凸嵌合されることにより、前記回転軸と前記シリンダブロックとが一体的に回転可能になっており、前記回転軸の外周面と前記ピボットの内周面とが凹凸嵌合されることにより、前記回転軸と前記ピボットとが一体的に回転可能になっており、前記ピボットの内周面に設けられる凹凸形状は、前記シリンダブロックの内周面に設けられる凹凸形状と同一形状になっている斜板式ピストンポンプであって、前記シリンダブロックの内周面の凹凸と、前記ピボットの内周面の凹凸とが、前記シリンダブロック及び前記ピボットの軸方向から見たときに周方向で一致するように、前記シリンダブロック及び前記ピボットの周方向での相対位置を位置決めする位置決め機構を備えた。
【0009】
これによれば、回転軸を、シリンダブロック及びピボットの内側に挿入する際に、シリンダブロックの内周面の凹凸と、ピボットの内周面の凹凸とが、シリンダブロック及びピボットの軸方向から見たときに周方向でずれてしまうことを、位置決め機構によって抑制することができる。よって、シリンダブロック及びピボットの内側に回転軸を挿入し易くすることができる。
【0010】
上記斜板式ピストンポンプにおいて、前記シリンダブロックを貫通する複数のピンを備え、前記付勢部材の付勢力が前記複数のピンを介して前記ピボットに伝達されており、前記ピボットには、各ピンが嵌め込まれる凹部が設けられており、前記位置決め機構は、前記ピン及び前記凹部により構成されていることが好ましい。
【0011】
これによれば、既存の構成であるピンを利用して、位置決め機構を構成することができるため、位置決め機構を構成するために、新たな部材を別途設ける必要が無く、構成を簡素化することができる。
【0012】
上記斜板式ピストンポンプにおいて、前記回転軸の外周面と前記シリンダブロックの内周面とがスプライン嵌合されており、前記回転軸の外周面と前記ピボットの内周面とがスプライン嵌合されており、各ピンは、前記シリンダブロックの内周面に設けられる凹凸を形成する複数のスプライン山歯のうちの一つを形成しており、各凹部は、前記ピボットの内周面に設けられる凹凸を形成する複数のスプライン山歯のうちの一つと前記シリンダブロック及び前記ピボットの軸方向で重なる位置に設けられていることが好ましい。
【0013】
これによれば、各ピンが各凹部に嵌め込まれることにより、シリンダブロックの内周面に設けられる凹凸を形成する複数のスプライン山歯と、ピボットの内周面に設けられる凹凸を形成する複数のスプライン山歯とが、シリンダブロック及びピボットの軸方向から見たときに周方向で一致する。よって、回転軸を、シリンダブロック及びピボットの内側に挿入する際に、シリンダブロックの内周面の凹凸と、ピボットの内周面の凹凸とが、シリンダブロック及びピボットの軸方向から見たときに一致するため、シリンダブロック及びピボットの内側に回転軸を挿入し易くすることができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、シリンダブロック及びピボットの内側に回転軸を挿入し易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態における斜板式ピストンポンプを示す側断面図。
図2】(a)はシリンダブロックの縦断面図、(b)はピボットの縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、斜板式ピストンポンプを具体化した一実施形態を図1及び図2にしたがって説明する。なお、以下に説明する実施形態の斜板式ピストンポンプは、作動油(作動流体)の吐出容量を可変とする可変容量型であり、エンジン式のフォークリフトに搭載される油圧ポンプとして使用される。
【0017】
図1に示すように、斜板式ピストンポンプ10は、ハウジング11と、ハウジング11に回転可能に支持される回転軸12とを備えている。ハウジング11は、有底筒状の第1ハウジング13と、第1ハウジング13の開口側に連結される有底筒状の第2ハウジング14とを有する。
【0018】
第1ハウジング13の底壁13aには、回転軸12における第1ハウジング13側の部位が挿入される挿入孔13hが形成されている。そして、回転軸12における第1ハウジング13側の部位は、軸受15を介して第1ハウジング13の底壁13aに回転可能に支持されている。
【0019】
第2ハウジング14の底壁14aには、回転軸12における第2ハウジング14側の部位が挿入される挿入孔14hが形成されている。そして、回転軸12における第2ハウジング14側の部位は、軸受16を介して第2ハウジング14の底壁14aに回転可能に支持されている。
【0020】
回転軸12における第2ハウジング14側の端部は、第2ハウジング14から外部に突出している。そして、回転軸12における第2ハウジング14側の端部は、図示しない動力伝達機構を介して外部駆動源に連結されている。外部駆動源としてはエンジンや電動機などが用いられる。この実施形態では、回転軸12は、エンジンの出力軸に連結され、エンジンの駆動により回転する。
【0021】
第1ハウジング13内には、シリンダブロック17及び斜板18が収容されている。斜板18には、回転軸12が挿通される挿通孔18hが形成されている。そして、回転軸12が挿通孔18hに挿通される。斜板18は、回転軸12の回転軸線Lに直交する方向に対して傾斜しており、回転軸12の回転軸線Lに直交する方向に対する傾斜角度(傾角)の変更が可能である。
【0022】
シリンダブロック17は円筒状であり、斜板18よりも第1ハウジング13の底壁13a寄りに配置されている。シリンダブロック17には、回転軸12が挿入される挿入孔17aが形成されている。シリンダブロック17は、円筒状の小径部171と、小径部171よりも孔径が大きい円筒状の大径部172とを有する。小径部171は、大径部172よりも第2ハウジング14寄りに位置する。小径部171と軸受15との間には付勢ばね19が介在されている。
【0023】
図2(a)に示すように、小径部171の内周面には、凹凸40が設けられている。凹凸40は、複数のスプライン山歯40aと複数のスプライン谷歯40bとが周方向に交互に連続して設けられることで形成されている。小径部171の内周面には、ピン支持溝41が複数(本実施形態では3つ)形成されている。3つのピン支持溝41は、小径部171の内周面において、互いに周方向に120度ずつ離れた位置に配置されている。各ピン支持溝41には、円柱状のピン42がそれぞれ嵌め込まれている。よって、斜板式ピストンポンプ10はピン42を3つ備えており、3つのピン42は、互いに小径部171の周方向に120度ずつ離れた位置に配置されている。各ピン42は、各ピン支持溝41に嵌め込まれた状態において、その一部がピン支持溝41から径方向に突出している。そして、このピン42におけるピン支持溝41から径方向に突出した部位は、凹凸40を形成する複数のスプライン山歯40aのうちの一つを形成している。
【0024】
図1に示すように、回転軸12の一部は、外周面が凹凸形状であるスプライン部12aになっている。スプライン部12aは、凹凸40に嵌合可能になっている。そして、スプライン部12aが凹凸40に嵌め込まれて、回転軸12の外周面と小径部171の内周面とがスプライン嵌合(凹凸嵌合)されることにより、回転軸12とシリンダブロック17とが一体的に回転可能になっている。
【0025】
シリンダブロック17には、シリンダボア17hが回転軸12の周囲に複数(本実施形態では9つ)形成されている。複数のシリンダボア17hは、同心円上に等間隔置きに配列されている。各シリンダボア17h内には、ピストン20が往復動可能にそれぞれ収納されている。ピストン20における斜板18側の端部には、シュー21が設けられている。ピストン20には、ピストン20の軸方向に貫通する貫通孔20hが形成されている。シュー21には、貫通孔20hに連通するとともにシュー21を貫通する貫通孔21hが形成されている。
【0026】
各シュー21は、円環状のリテーナプレート22に保持されている。よって、リテーナプレート22は、各シュー21を保持する保持部材である。リテーナプレート22の内側には、円筒状のピボット23が設けられている。ピボット23は、シリンダブロック17の小径部171に対して回転軸12の軸方向に並んで設けられている。
【0027】
図2(b)に示すように、ピボット23の内周面には、凹凸50が設けられている。凹凸50は、複数のスプライン山歯50aと複数のスプライン谷歯50bとが周方向に交互に連続して設けられることで形成されている。ピボット23に設けられる凹凸形状は、小径部171の内周面に設けられる凹凸形状と同一形状になっている。ピボット23における小径部171側の端面には、各ピン42が嵌め込まれる凹部としての溝部51が設けられている。よって、ピボット23は溝部51を3つ有しており、それら3つの溝部51は、互いにピボット23の周方向に120度ずつ離れた位置に配置されている。各溝部51は、複数のスプライン山歯50aのうちの一つとシリンダブロック17及びピボット23の軸方向で重なる位置に設けられ、それぞれ放射状に延びている。
【0028】
図1に示すように、ピボット23の内側には、回転軸12が挿入されており、スプライン部12aは、凹凸50に嵌合可能になっている。そして、スプライン部12aが凹凸50に嵌め込まれて、回転軸12の外周面とピボット23の内周面とがスプライン嵌合(凹凸嵌合)されることにより、回転軸12とピボット23とが一体的に回転可能になっている。
【0029】
複数(本実施形態では3本)のピン42は、回転軸12の軸方向における先端部がシリンダブロック17の小径部171よりも突出するような状態でシリンダブロック17の小径部171を貫通して設けられている。そして、シリンダブロック17の小径部171から突出した各ピン42は、先端部がピボット23の各溝部51に嵌め込まれた状態で、ピボット23に当接している。図2(a)及び(b)に示すように、各ピン42が各溝部51に嵌め込まれることにより、小径部171の内周面の凹凸40と、ピボット23の内周面の凹凸50とが、シリンダブロック17及びピボット23の軸方向から見たときに周方向で一致する。よって、ピン42及び溝部51は、小径部171の内周面の凹凸40と、ピボット23の内周面の凹凸50とが、シリンダブロック17及びピボット23の軸方向から見たときに周方向で一致するように、シリンダブロック17及びピボット23の周方向での相対位置を位置決めする位置決め機構60を構成している。
【0030】
図1に示すように、ピボット23は、付勢ばね19の付勢力が、各ピン42を介して伝達されて、斜板18に向けて付勢されている。そして、斜板18に向けて付勢されたピボット23が、リテーナプレート22を斜板18に向けて押圧することで、各シュー21が斜板18におけるシリンダブロック17側の端面に密着している。付勢ばね19は、ピボット23を斜板18に向けて付勢する付勢部材である。
【0031】
回転軸12が回転してシリンダブロック17が回転軸12と一体的に回転すると、各シュー21が斜板18におけるシリンダブロック17側の端面を摺接しながら、各ピストン20が回転軸12の周囲を回転軸12の周方向に沿って移動する。これにより、各ピストン20は、シリンダブロック17の回転に伴って斜板18の傾角に応じたストロークでシリンダボア17h内を往復動する。
【0032】
斜板18は、一対の摺動部32(図1では一対の摺動部32の一方のみを図示)を備えている。一対の摺動部32はシリンダブロック17とは反対側に向けて膨出する弧状に湾曲した摺動面32aを有する。第2ハウジング14の内壁には、斜板18の傾角の変更を許容しつつ、且つ斜板18を保持するブッシュ25が設けられている。ブッシュ25は弧状に湾曲した板状であり、摺動面32aに沿って延びるとともに摺動面32aが摺動する被摺動面25aを備えている。そして、一対の摺動部32の摺動面32aが被摺動面25aを摺動することで、斜板18の傾角が変更される。
【0033】
斜板18は、シュー21が摺接する面よりも径方向外側の一部に延設される被押圧部33を備えている。被押圧部33におけるシリンダブロック17側の端面には収容凹部33aが形成されている。収容凹部33aには円柱状又は球状の接触部材34aが収容されている。接触部材34aは、収容凹部33aに収容された状態において、その一部が被押圧部33におけるシリンダブロック17側の端面から突出している。また、被押圧部33におけるシリンダブロック17とは反対側の端面には収容凹部33bが形成されている。収容凹部33bには円柱状又は球状の接触部材34bが収容されている。接触部材34bは、収容凹部33bに収容された状態において、その一部が被押圧部33におけるシリンダブロック17とは反対側の端面から突出している。
【0034】
第1ハウジング13の底壁13aには、吸入孔26及び吐出孔27が形成されている。吸入孔26及び吐出孔27は、回転軸12の周方向に沿って延びる半円弧状に形成されている。吸入孔26は、底壁13aにおいて、吸入行程中のピストン20が収納された各シリンダボア17hにそれぞれ連通可能な位置に設けられている。吐出孔27は、底壁13aにおいて、吐出行程中のピストン20が収納された各シリンダボア17hにそれぞれ連通可能な位置に設けられている。ここで、「吸入行程中のピストン20」とは上死点側から下死点側に向けて移動しているピストン20のことを言う。また、「吐出行程中のピストン20」とは、下死点側から上死点側に向けて移動しているピストン20のことを言う。
【0035】
シリンダブロック17と第1ハウジング13の底壁13aとの間には、円環状のバルブプレート28が設けられている。バルブプレート28の内側には、回転軸12が挿入されている。バルブプレート28は、シリンダブロック17に対して回転軸12の軸方向に並んで配置されている。バルブプレート28には、吸入孔26とシリンダボア17hとを連通する円弧状の連通孔28aが回転軸12の周囲に形成されるとともに、吐出孔27とシリンダボア17hとを連通する円弧状の連通孔28bが回転軸12の周囲に複数(本実施形態では3つ)形成されている。そして、ピストン20の往復動に伴って、作動油が吸入孔26から連通孔28aを介して吸入行程中のピストン20が収納された各シリンダボア17hに吸入されるとともに、吐出行程中のピストン20が収納された各シリンダボア17h内の作動油が連通孔28bを介して吐出孔27から吐出される。吸入孔26及び連通孔28aは各シリンダボア17hに連通可能な吸入ポート29を形成しており、吐出孔27及び連通孔28bは各シリンダボア17hに連通可能な吐出ポート30を形成している。
【0036】
第1ハウジング13におけるシリンダブロック17よりも回転軸12の径方向外側には、ピストン収納凹部35が形成されている。ピストン収納凹部35には、コントロールピストン36が収納されている。そして、ピストン収納凹部35とコントロールピストン36とによって制御圧室35aが区画されている。制御圧室35aには、吐出ポート30から吐出された作動油の一部が供給される。制御圧室35aに供給される作動油の供給量は、図示しない制御弁によって制御される。コントロールピストン36における斜板18側の端面は、接触部材34aに当接している。
【0037】
第2ハウジング14の底壁14aには、斜板傾角復帰機構37が設けられている。斜板傾角復帰機構37は、有底筒状のバネ受け凹状部材38と、バネ受け凹状部材38内に挿入される中空ピストン39と、中空ピストン39の内部に収容される傾角増大ばね39aとを備えている。バネ受け凹状部材38は、螺子38aによって底壁14aに取り付けられている。バネ受け凹状部材38は、斜板18に向けて開口している。中空ピストン39は、傾角増大ばね39aの付勢力によって、バネ受け凹状部材38の底部から離間する方向へ付勢されている。そして、中空ピストン39における斜板18側の端面は、接触部材34bに当接している。
【0038】
上記構成の斜板式ピストンポンプ10において、制御圧室35aに供給される作動油の供給量が増大すると、制御圧室35aの圧力が高くなり、コントロールピストン36が斜板18に向けて移動する。すると、コントロールピストン36は、傾角増大ばね39aの付勢力に抗して、斜板18の傾角を減少させるように接触部材34aを介して斜板18を押圧する。これにより、斜板18の傾角が減少して、ピストン20のストロークが小さくなり、吐出容量が減少する。一方、制御圧室35aに供給される作動油の供給量が減少すると、制御圧室35aの圧力が低くなり、傾角増大ばね39aの付勢力によって、中空ピストン39が、斜板18の傾角を増大させるように接触部材34bを介して斜板18を押圧する。これにより、斜板18の傾角が増大して、ピストン20のストロークが大きくなり、吐出容量が増大する。
【0039】
次に、本実施形態の作用について説明する。
各ピン42が各溝部51に嵌め込まれることにより、小径部171の内周面の凹凸40と、ピボット23の内周面の凹凸50とが、シリンダブロック17及びピボット23の軸方向から見たときに周方向で一致する。よって、回転軸12を、シリンダブロック17及びピボット23の内側に挿入する際に、小径部171の内周面の凹凸40と、ピボット23の内周面の凹凸50とが、シリンダブロック17及びピボット23の軸方向から見たときに周方向でずれてしまうことが、各ピン42における各溝部51への嵌め込みによって抑制される。
【0040】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)斜板式ピストンポンプ10は、小径部171の内周面の凹凸40と、ピボット23の内周面の凹凸50とが、シリンダブロック17及びピボット23の軸方向から見たときに周方向で一致するように、シリンダブロック17及びピボット23の周方向での相対位置を位置決めする位置決め機構60を備えた。これによれば、回転軸12を、シリンダブロック17及びピボット23の内側に挿入する際に、小径部171の内周面の凹凸40と、ピボット23の内周面の凹凸50とが、シリンダブロック17及びピボット23の軸方向から見たときに周方向でずれてしまうことを、位置決め機構60によって抑制することができる。よって、シリンダブロック17及びピボット23の内側に回転軸12を挿入し易くすることができる。
【0041】
(2)位置決め機構60は、ピン42及び溝部51により構成されている。これによれば、既存の構成であるピン42を利用して、位置決め機構60を構成することができるため、位置決め機構60を構成するために、新たな部材を別途設ける必要が無く、構成を簡素化することができる。
【0042】
(3)各ピン42は、小径部171の内周面に設けられる凹凸40を形成する複数のスプライン山歯40aのうちの一つを形成しており、各溝部51は、ピボット23の内周面に設けられる凹凸50を形成する複数のスプライン山歯50aのうちの一つとシリンダブロック17及びピボット23の軸方向で重なる位置に設けられている。これによれば、各ピン42が各溝部51に嵌め込まれることにより、小径部171の内周面に設けられる凹凸40を形成する複数のスプライン山歯40aと、ピボット23の内周面に設けられる凹凸50を形成する複数のスプライン山歯50aとが、シリンダブロック17及びピボット23の軸方向から見たときに周方向で一致する。よって、回転軸12を、シリンダブロック17及びピボット23の内側に挿入する際に、小径部171の内周面の凹凸40と、ピボット23の内周面の凹凸50とが、シリンダブロック17及びピボット23の軸方向から見たときに一致するため、シリンダブロック17及びピボット23の内側に回転軸12を挿入し易くすることができる。
【0043】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態において、例えば、ピボット23における小径部171側の端面に凸部が複数設けられるとともに、小径部171におけるピボット23側の端面に、ピボット23の各凸部と嵌合可能な凹部がそれぞれ設けられており、各凸部及び各凹部により位置決め機構を構成するようにしてもよい。
【0044】
○ 実施形態において、例えば、小径部171におけるピボット23側の端面に、溝部51に嵌合可能な凸部が、ピン42とは別に設けられていてもよい。この場合、ピン42は、溝部51に嵌め込まれなくてもよく、凸部及び溝部51が位置決め機構として構成されていればよい。
【0045】
○ 実施形態において、各ピン42が、凹凸40を形成する複数のスプライン山歯40aのうちの一つを形成していなくてもよく、スプライン山歯40aとはオフセットした位置で、シリンダブロック17を貫通して、各溝部51に嵌め込まれるようにしてもよい。
【0046】
○ 実施形態において、ピン42及び溝部51は、互いに小径部171又はピボット23の周方向で120度ずつ離れた位置に配置されていなくてもよい。
○ 実施形態において、ピン42及び溝部51の数は、1つであってもよいし、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0047】
○ 実施形態において、例えば、シリンダブロック17の内周面にキー溝が形成されており、回転軸12の外周面にキー溝に嵌め込まれる凸部が形成され、キー溝と凸部とが凹凸嵌合されることにより、回転軸12とシリンダブロック17とが一体的に回転可能になっていてもよい。この場合、ピボット23の内周面にも、シリンダブロック17の内周面と同一形状のキー溝が形成されており、キー溝と凸部とが凹凸嵌合されることにより、回転軸12とピボット23とが一体的に回転可能になっている。
【0048】
○ 実施形態において、凹部として、例えば、穴をピボット23に形成してもよい。
○ 実施形態において、斜板式ピストンポンプ10は、固定容量型であってもよい。
○ 実施形態において、作動流体は、作動油以外の流体であってもよく、斜板式ピストンポンプ10を、油圧ポンプ以外のポンプとして用いてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10…斜板式ピストンポンプ、11…ハウジング、12…回転軸、17…シリンダブロック、17h…シリンダボア、18…斜板、19…付勢部材である付勢ばね、20…ピストン、21…シュー、22…保持部材であるリテーナプレート、23…ピボット、40…凹凸、40a…スプライン山歯、42…ピン、50…凹凸、50a…スプライン山歯、51…凹部としての溝部、60…位置決め機構。
図1
図2