特許第6572766号(P6572766)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6572766-分散型電源システム 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6572766
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】分散型電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20190902BHJP
【FI】
   H02J3/38 110
   H02J3/38 170
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-252132(P2015-252132)
(22)【出願日】2015年12月24日
(65)【公開番号】特開2017-118700(P2017-118700A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】川浦 智規
(72)【発明者】
【氏名】安藤 泰明
【審査官】 田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−72760(JP,A)
【文献】 特開平9−80105(JP,A)
【文献】 特開2010−190645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00−5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに並設されている複数の第一電線を介して交流電力を供給する系統電源と、
前記複数の第一電線のうちいずれか2つの互いに異なる第一電線の間にそれぞれ接続されて使用者により選択的に使用される複数の第一の電力負荷と、
前記各第一の電力負荷に接続されている前記2つの第一電線にそれぞれ接続されている2つの第二電線の間に前記各第一の電力負荷に対してそれぞれ並列に設けられた複数の第二の電力負荷と、
互いに異なる前記複数の第一電線であって前記第二電線との接続点より前記系統電源側の位置にそれぞれ装着されるべき電流センサであって、装着された前記第一電線を流れる交流の電流値および流れる方向をそれぞれ検出する複数の電流センサと、
前記電流センサが装着されるべき前記第一電線に接続されている前記第二電線にそれぞれ設けられ、前記系統電源から前記各第二の電力負荷への交流電力の供給・遮断を行う複数のスイッチと、
前記各第一電線の電圧を検出する電圧センサと、
発電した電力を前記第一および第二の電力負荷に供給可能である発電装置と、
前記各電流センサおよび前記電圧センサの検出結果を取得したり、前記各スイッチを開閉制御したり、前記発電装置を制御したりする制御装置と、を備えた分散型電源システムであって、
前記制御装置は、
前記電流センサからの検出結果である電流値を取得する第一取得部と、
前記電圧センサからの検出結果である電圧を取得する第二取得部と、
前記第二取得部から前記電圧を取得し、前記各第一電線の電圧位相を算出する電圧位相算出部と、
前記第一取得部から前記電流値を取得するとともに前記電圧位相算出部から前記電圧位相を取得し、前記電流値および前記電圧位相に基づいて前記電流値から基本波成分を抽出する抽出部と、
前記抽出部によって抽出された前記基本波成分および前記電圧位相算出部によって算出された前記電圧位相から、前記各電流センサが装着されている電線および前記各電流センサの装着向きを判定・補正する判定補正部と、
を備えた分散型電源システム。
【請求項2】
前記抽出部は、前記第一取得部から取得した前記電流値に対してフーリエ変換を行うことにより、前記基本波成分を抽出する請求項1記載の分散型電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散型電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
分散型電源システムの一形式として、特許文献1に示されているものが知られている。特許文献1の図1に示されているように、分散型電源システムは、第1〜第3の電線のうち第3の電線が中性線である3線式の電力系統に連系する分散型発電システムである。この分散型電源システムは、発電装置(105)と、第1〜3の電線(101a〜101c)のうち、任意の2本の電線を内部電力負荷(111)と接続するように構成されている接続機構(110)と、第1の電線の電流値を検出する第1電流センサ(109a)と、第2の電線の電流値を検出する第2電流センサ(109b)と、接続機構が任意の2本の電線を内部電力負荷と接続する前後における第1電流センサ及び第2電流センサが検知する電流値の変化量が、内部電力負荷の消費電力量に対応した変化量であるかどうかを判定することにより、第1電流センサ及び第2電流センサが配置されている電線及びその設置方向を判断する運転制御器(112)と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5134145号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載されている分散型電源システムにおいては、接続機構が任意の2本の電線を内部電力負荷と接続する前後における第1電流センサ及び第2電流センサが検知する電流値の変化量が、内部電力負荷の消費電力量に対応した変化量であるかどうかを判定することにより、第1電流センサ及び第2電流センサが配置されている電線及びその設置方向を判断するようにしている。しかし、第1電流センサ及び第2電流センサは、家庭内負荷に係る電流値の変化量も検出しており、第1電流センサ及び第2電流センサの検出した電流波形は、家庭内負荷の変動によるノイズが乗った電流波形(例えば歪んだ正弦波波形)となるという問題がある。その結果、電線に装着された電流センサの装着位置および装着向きに関する判定を誤って実施し、ひいては判定結果に基づく自動補正を適切に実施できないという問題があった。
【0005】
本発明は、上述した問題を解消するためになされたもので、分散型電源システムにおいて、電線に装着された電流センサの装着位置および装着向きの判定および自動補正を的確に実施することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る分散型電源システムの発明は、互いに並設されている複数の第一電線を介して交流電力を供給する系統電源と、複数の第一電線のうちいずれか2つの互いに異なる第一電線の間にそれぞれ接続され、かつ使用者により選択的に使用される複数の第一の電力負荷と、各第一の電力負荷に接続されている2つの第一電線にそれぞれ接続されている2つの第二電線の間に各第一の電力負荷に対してそれぞれ並列に設けられた複数の第二の電力負荷と、互いに異なる複数の第一電線であって第二電線との接続点より系統電源側の位置にそれぞれ装着されるべき電流センサであって、装着された第一電線を流れる交流の電流値および流れる方向をそれぞれ検出する複数の電流センサと、電流センサが装着されるべき第一電線に接続されている第二電線にそれぞれ設けられ、系統電源から各第二の電力負荷への交流電力の供給・遮断を行う複数のスイッチと、各第一電線の電圧を検出する電圧センサと、発電した電力を第一および第二の電力負荷に供給可能である発電装置と、各電流センサおよび電圧センサの検出結果を取得したり、各スイッチを開閉制御したり、発電装置を制御したりする制御装置と、を備えた分散型電源システムであって、制御装置は、電流センサからの検出結果である電流値を取得する第一取得部と、電圧センサからの検出結果である電圧を取得する第二取得部と、第二取得部から電圧を取得し、各第一電線の電圧位相を算出する電圧位相算出部と、第一取得部から電流値を取得するとともに電圧位相算出部から電圧位相を取得し、電流値および電圧位相に基づいて電流値から基本波成分を抽出する抽出部と、抽出部によって抽出された基本波成分および電圧位相算出部によって算出された電圧位相から、各電流センサが装着されている電線および各電流センサの装着向きを判定・補正する判定補正部と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
上記のように構成した請求項1に係る発明においては、判定補正部が、抽出部によって抽出された基本波成分および電圧位相算出部によって算出された電圧位相から、各電流センサが装着されている電線および各電流センサの装着向きを判定・補正する。よって、第一の電力負荷(家庭内負荷)が変動して電流検出値にノイズが乗ったとしても、このノイズの影響を受けることなく、電線に装着された電流センサの装着位置および装着向きに関する判定を的確に実施し、ひいては判定結果に基づく自動補正を適切に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明による分散型電源システムの一実施形態の概要を示す概要図である。
図2図1に示す分散型電源システムの回路構成の一部を示す図である。
図3図1に示す制御装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明による分散型電源システムの一実施形態について説明する。図1はこの分散型電源システムの概要を示す概要図である。この分散型電源システムは、発電する発電装置10と、発電装置10の排熱を回収した湯水を貯湯するとともに湯利用機器26aに該湯水を供給する貯湯槽30と、発電量指示値に応じた発電量となるように発電装置10を制御する制御装置40とを備えている。
【0010】
発電装置10は、燃料電池発電装置であり、直流電力を発生する発電器11と、発電器11から供給された直流電力を交流電力に変換して出力する変換器(例えばインバータ)12とを備えている。発電装置10は、発電した電力を変換器12を介して第一の電力負荷21および第二の電力負荷23に供給可能である。なお、発電装置10としては、燃料電池発電装置の他に、ディーゼルエンジン、ガスエンジン、ガスタービン、マイクロガスタービンなどの原動機とこの原動機によって駆動される発電機から構成されたものでもよい。
【0011】
燃料電池発電装置は、燃料ガス(水素ガス)および酸化剤ガス(酸素を含む空気)が供給されて水素と酸素の化学反応により発電して直流電圧を出力する図略の燃料電池(固体酸化物形燃料電池)と、燃料(改質用燃料)を水蒸気改質し水素リッチな改質ガスを燃料電池に供給する改質器(図示省略)と、を備えている。燃料としては天然ガス、LPG、灯油、ガソリン、メタノールなどがある。なお、燃料電池発電装置は、固体酸化物形燃料電池に限られず、高分子電解質形燃料電池やその他のタイプの燃料電池で構成するようにしてもよい。
【0012】
発電器11は、燃料供給源13に接続されており、燃料供給源13から燃料が投入されて、その投入された燃料を利用して発電するものである。燃料供給源13と発電器11の間には、発電器11に投入される燃料量を検出する燃料投入量検出手段である流量計13aが設けられており、流量計13aは検出した燃料投入量を制御装置40に送信するようになっている。なお、燃料電池発電装置の場合の燃料投入量は、改質器に供給される燃料の投入量を指す。
【0013】
変換器12は、電力使用場所20に設置されている複数の第一の電力負荷21と系統電源16とを接続する電線15(第一電線)に電線17を介して接続されている。変換器12から出力される交流電力は、電線17および電線15を介して各第一の電力負荷21に必要に応じて供給されている。変換器12には、発電装置10から出力される発電出力量および系統電源16から発電器11に供給される電力量を検出する電力量検出手段である電力計10aが設けられている。
【0014】
電力計10aは、電流を検出する電流センサと電圧を検出する電圧センサとにより構成するようになっており、電力計10aは検出した電流および電圧(または電流と電圧とから導出した電力)を制御装置40に送信するようになっている。電力計10aは、電流センサ52(52a,52b)が装着されている電線15(第一電線)の電圧の位相を検出する電圧センサとしても機能する。電力計10aは、図2に示すように、U相線17aの電流および電圧(または電力)を検出する電力計10a1(電圧センサ)とV相線17bの電流および電圧(または電力)を検出する電力計10a2(電圧センサ)とから構成されている。
【0015】
図1に示すように、電線17には、切替スイッチ51が設けられている。切替スイッチ51は、制御装置40からの指令を受けて、系統電源16が停電になった場合に発電器11(発電装置10)と系統電源16とを切り離し(解列し)、系統電源16から正常に電力が供給されている(または正常に電力が供給可能である)場合に発電器11と系統電源16とを接続する(連系する)。
【0016】
第一の電力負荷21は、電灯、アイロン、テレビ、洗濯機、電気コタツ、電気カーペット、エアコン、冷蔵庫などの電気器具である。第一の電力負荷21にて消費された電力消費量は電力計10aと発電装置10の発電量の和により検出できる。なお、電力消費量は、電力使用場所20で使用される全ての第一の電力負荷21の合計電力消費量を検出する電力計によって検出し、制御装置40に送信するようにしてもよい。発電装置10は、その最大出力電力までは総電力消費量に追従して発電し、最大出力電力を超える範囲ではその最大出力電力にて発電する。なお、発電装置10の発電量より第一の電力負荷21(21a,21b)の総電力消費量が上回った場合、その不足電力を系統電源16から受電して補うようになっている。
【0017】
電線15には、電線17との接続点より系統電源16側に電流センサ52が設けられている。電流センサ52は、電線15を流れる電流(交流)の電流値を検出するものである。各電流センサ52は、互いに異なる複数の第一電線15であって電線17との接続点より系統電源16側の位置にそれぞれ装着されるべき電流センサであって、装着された第一電線15を流れる交流の電流値および流れる方向をそれぞれ検出するものである。具体的には、電流センサ52は、いわゆるクランプ式交流電流センサやいわゆるホール電流センサである。クランプ式交流電流センサは、一般的によく知られているものであり、リング状のコアの貫通穴に被検出電線を配設し、コアに巻いたコイルの巻線比に応じた二次側電流を負荷抵抗に接続することにより電圧として検出する。クランプ式交流電流センサは、分割式のクランプ式交流電流センサが好ましい。既設の分電盤などに後付できるからである。ホール電流センサは、一般的によく知られているものであり、ホール素子を一部に配設したリング状のコアの貫通穴に被検出電線を配設し、被検出電流をホール素子の出力電圧として検出する。いずれの電流センサも検出方向があり、逆方向に装着すると、出力が正負逆になる。電流センサ52の検出結果は、制御装置40に送信されるようになっている。
【0018】
電線17には、電線15との接続点から切替スイッチ51までの間に電線18を介して第二の電力負荷23が接続されている。電線18には、スイッチ54が設けられている。スイッチ54は、系統電源16から第二の電力負荷23への交流電力の供給・遮断を制御装置40からの指令を受けて実施するものである。
【0019】
第二の電力負荷23は、発電器11に設けられて燃焼部を着火させる着火用ヒータ、貯湯槽30に設けられ貯湯槽30内の湯水を加熱する加熱用ヒータ、内蔵の水タンクや水循環回路(図示省略)の凍結防止用ヒータなどがある。
各第二の電力負荷23は、各第一の電力負荷21に接続されている2つの電線15にそれぞれ接続されている2つの電線18の間に各第一の電力負荷21に対してそれぞれ並列に設けられている。なお、電線18と電線17(電線15との接続点から電線18との接続点との間の電線17)とから第二電線19が構成されている。第二電線19は、U相線19a、V相線19b及び中性線19c(N相線)から構成されている。U相線19aは、U相線18aとU相線17aとから構成されている。V相線19bは、V相線18bとV相線17bとから構成されている。中性線19c(N相線)は、中性線18cと中性線17cとから構成されている。
【0020】
系統電源16からの電線15は単相3線式の回路構成であり、図2に示すように、U相線15a、V相線15b及び中性線15c(N相線)から構成されている。系統電源16は、互いに並設されている複数の電線15a,15b,15cを介して交流電力を供給するようになっている。U相線15aと中性線15cとの間に例えば100Vの電位差があり、V相線15bと中性線15cとの間に例えば100Vの電位差があり、またU相線15aとV相線15bとの間に例えば200Vの電位差がある。
【0021】
複数の第一の電力負荷21a,21bは、複数の電線15a,15b,15cのうちいずれか2つの互いに異なる電線の間にそれぞれ接続されて使用者により選択的に使用されるものである。本実施形態において単相3線式の電線15の回路構成では、第一の電力負荷21は、その一部21a(U相電力負荷)についてはU相線15aと中性線15cとの間に接続された構成となり、またその残部21b(V相電力負荷)についてはV相線15bと中性線15cとの間に接続された構成となる。なお、第一の電力負荷21aを、U相線15aと中性線15cとの間またはV相線15bと中性線15cとの間に接続するとともに、第一の電力負荷21bを、U相線15aとV相線15bとの間に接続するようにしてもよい。
【0022】
U相線15aには、U相線17aとの接続点より系統電源16側の位置に電流センサ52aが装着されている。電流センサ52aは、U相線15aを流れる交流の電流値および流れる方向を検出する。V相線15bには、V相線17bとの接続点より系統電源16側の位置に電流センサ52bが装着されている。電流センサ52bは、V相線15bを流れる交流の電流値および流れる方向を検出する。
【0023】
本実施形態では、分散型電源システムの発電装置10からの電線17は単相3線式のものである。電線17のU相線17aが電線15のU相線15aに連結され、電線17のV相線17bが電線15のV相線15bに連結され、電線17の中性線17cが電線15の中性線15cに連結されている。U相線17aには、U相線17aを連通・遮断する切替スイッチ51aが設けられ、V相線17bには、V相線17bを連通・遮断する切替スイッチ51bが設けられている。切替スイッチ51a、51bは切替スイッチ51を構成する。
【0024】
電線18のU相線18aは電線17のU相線17aに連結され、電線18のV相線18bは電線17のV相線17bに連結され、電線18の中性線18cは電線17の中性線17cに連結されている。
【0025】
第二の電力負荷23のうちの一部23a(U相補機)はU相線18aと中性線18cとの間に接続された構成となり、第一の電力負荷21aに対して並列に設けられている。第二の電力負荷23aでは、供給された交流電力が消費される。本実施形態においては、例えば第二の電力負荷23aは発電器11に設けられている上述した着火用ヒータである。
【0026】
系統電源16から第二の電力負荷23aまでの電線、すなわちU相線18aには、系統電源16から第二の電力負荷23a(U相線15aに接続されている第二の電力負荷)への交流電力の供給・遮断を行うスイッチ(U相スイッチ)54aが設けられている。U相スイッチ54aが制御装置40の指示を受けて連通される(閉状態となる)と、系統電源16からの交流電力が第二の電力負荷23aに供給されて第二の電力負荷23aが作動する。U相スイッチ54aが制御装置40の指示を受けて遮断される(開状態となる)と、系統電源16からの交流電力が第二の電力負荷23aに供給されなくなって第二の電力負荷23aの作動が停止する。
【0027】
第二の電力負荷23のうちの残部23b(V相補機)は中性線18cとV相線18bとの間に接続された構成となり、第一の電力負荷21bに対して並列に設けられている。第二の電力負荷23bでは、供給された交流電力が消費される。本実施形態においては、例えば第二の電力負荷23bは貯湯槽30に設けられている加熱用ヒータである。
【0028】
系統電源16から第二の電力負荷23bまでの電線、すなわちV相線18bには、系統電源16から第二の電力負荷23b(V相線15bに接続されている第二の電力負荷)への交流電力の供給・遮断を行うスイッチ(V相スイッチ)54bが設けられている。V相スイッチ54bが制御装置40の指示を受けて連通される(閉状態となる)と、系統電源16からの交流電力が第二の電力負荷23bに供給されて第二の電力負荷23bが作動する。V相スイッチ54bが制御装置40の指示を受けて遮断される(開状態となる)と、系統電源16からの交流電力が第二の電力負荷23bに供給されなくなって第二の電力負荷23bの作動が停止する。
【0029】
なお、第一の電力負荷21aを、U相線15aと中性線15cとの間またはV相線15bと中性線15cとの間に接続するとともに、第一の電力負荷21bを、U相線15aとV相線15bとの間に接続するようにする場合には、第二の電力負荷23aを、U相線18aと中性線18cとの間またはV相線18bと中性線18cとの間に接続するとともに、第二の電力負荷23bを、U相線18aとV相線18bとの間に接続するようにしてもよい。
【0030】
上述したように、分散型電源システムは、各第一の電力負荷21a,21bに接続されている2つの電線15a,15cまたは15c,15bの間に該各第一の電力負荷21a,21bに対してそれぞれ並列に設けられて供給された交流電力が消費される第二の電力負荷23a,23bを備えている。また、分散型電源システムは、電流センサ52a,52bが装着されるべき第一電線15に接続されている電線18にそれぞれ設けられ、系統電源16から各第二の電力負荷23a,23bへの交流電力の供給・遮断をそれぞれ行う複数(本実施形態では例えば2つ)のスイッチ54a,54bを備えている。さらに、分散型電源システムは、各電線15a,15b,15cであって各電線17a,17b,17cとの接続点より系統電源16側の位置にそれぞれ装着されるべき電流センサであって、その装着された各電線を流れる交流の電流値および流れる方向をそれぞれ検出する複数(本実施形態では例えば2つ)の電流センサ52a,52bを備えている。
【0031】
また、図1に示すように、発電器11には、発電器11の排熱を回収して発電器11を冷却する熱媒体が循環する冷却回路31が接続されている。冷却回路31上には、熱交換器32が配設されている。一方、後述する貯湯槽30には、貯湯槽30内の湯水(貯湯水)を加熱するための湯水循環回路33が接続されている。湯水循環回路33上には、熱交換器32が配設されている。熱交換器32は、冷却回路31を循環する熱媒体と湯水循環回路33を循環する湯水との間で熱交換が行われるものである。冷却回路31上にはポンプ31aが配設され、湯水循環回路33上にはポンプ33aが配設されている。これにより、発電器11の発電中にポンプ31aが駆動されて冷却回路31を熱媒体が循環し、ポンプ33aが駆動されて湯水循環回路33を湯水が循環すると、発電器11の排熱が熱媒体および熱交換器32を通って湯水に回収されて湯水が加熱されるようになっている。発電器11の排熱とは、例えば、燃料電池発電装置の場合、燃料電池50の排熱や改質器の排熱などをいい、エンジン発電装置の場合、エンジンの排熱などが挙げられる。しかし、それに限定せず発電機それ自体の熱など回収可能な排熱なら何でも利用できる。
【0032】
貯湯槽30は、1つの柱状容器を備えており、その内部に温水が層状に、すなわち上部の温水が最も高温であり下部にいくにしたがって低温となり下部の温水が最も低温であるように貯留されるようになっている。貯湯槽30に貯留されている高温の温水が貯湯槽30の柱状容器の上部から導出され、その導出された分を補給するように水供給源14からの水道水などの水(低温の水)が貯湯槽30の柱状容器の下部から導入されるようになっている。このように構成された貯湯槽30は、発電装置10の近くに設置されている。
【0033】
貯湯槽30には、給湯管35が接続されている。給湯管35には、湯水使用場所25に設置されており貯湯槽30に貯留している湯水を給湯として利用する複数の湯利用機器26a(浴槽、シャワ、キッチン(キッチンの蛇口)、洗面所(洗面所の蛇口)など)が接続されている。
【0034】
制御装置40は、マイクロコンピュータ(図示省略)を有しており、マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続された入出力インターフェース、CPU、RAMおよびROM(いずれも図示省略)を備えている。CPUは、各電流センサ52a,52bおよび各電圧センサ10a1,10a2の検出結果を取得したり、各スイッチ54a,54bを開閉制御したり、発電装置10を制御したりする。RAMは同プログラムの実行に必要な変数を一時的に記憶するものであり、ROMは前記プログラムを記憶するものである。
【0035】
制御装置40は、電流センサ52(第一および第二電流センサ52a,52b)から検出結果をアナログ信号で入力し、デジタル化してデジタル信号として出力する計測回路41を備えている。計測回路41は、第一および第二の計測回路41a,41bから構成されている。第一の計測回路41aは、比較的小さい電流を狭い範囲で計測するためのものであり、その入力レンジ(すなわち計測可能なレンジ)は例えば数アンペアである。第二の計測回路41bは、第一の計測回路41aより比較的大きい電流を広い範囲で計測するためのものであり、その入力レンジは例えば百数十アンペアである。第一および第二の計測回路41a,41bを使い分けることにより、計測対象の電流値の大きさに応じて適切かつ正確に電流を計測することができる。
また、制御装置40には、報知器46が接続されている。報知器46は、具体的には、表示器やスピーカなどで構成されている。
【0036】
制御装置40は、図3に示すように、第一取得部42、第二取得部43、電圧位相算出部43a、抽出部44、および判定補正部45を備えている。
第一取得部42は、電流センサ52(52a,52b)からの検出結果である電流値を取得する。第二取得部43は、電圧センサ10aからの検出結果である電圧を取得する。電圧位相算出部43aは、第二取得部43から電圧を取得し、各第一電線15a,15bの電圧位相を算出する。例えば、電圧位相算出部43aは、電圧センサ10aから取得した電圧から電圧波形を生成し、電圧波形から電圧位相(所定時間毎)を算出する。
【0037】
抽出部44は、第一取得部42から電流値を取得するとともに電圧位相算出部43aから電圧位相を取得し、電流値および電圧位相に基づいて電流値から基本波成分を抽出する。抽出部44は、第一取得部42から取得した電流値に対してフーリエ変換を行うことにより、基本波成分を抽出する。
【0038】
具体的に、基本波成分の算出について説明する。抽出部44は、所定時間(例えば100μ秒)毎の周期で電流センサ52(52aまたは52b)から電流計測値Xnを取得する(サンプリングする)。抽出部44は、所定時間毎の周期で電圧センサ10a(10a1または10a2)から電圧位相角sinωt(電圧位相)を取得する。抽出部44は、所定時間毎に、電流計測値Xnに電圧位相角sinωtを乗算し、一周期分(系統電圧の一周期分)の積算をとり、その積算値の正の平方根から、基本波成分を算出する。基本波成分をInormとすると、基本波成分Inormは、下記数1で示される。
【数1】
【0039】
なお、電流計測値は、上記数1により処理されることにより、フーリエ変換され、電流計測値から基本波成分が抽出される。このとき、フーリエ変換は、フーリエ変換を離散化した離散フーリエ変換であることが好ましい。
フーリエ変換は、位相、周期、振幅の異なる複数の正弦波(高次成分の正弦波)が重なった波形から、基本の正弦波である基本波形(基本波成分)を抽出することができる。なお、電圧位相と電流値とは、関連づけられており、また、電圧位相から電流のゼロクロス(正から負になるゼロクロスと、負から正になるゼロクロスの両方)も算出することができる。
【0040】
また、抽出部44は、第二の電力負荷23をオン(通電)したときの基本波成分Inormon、および第二の電力負荷23をオフ(非通電)したときの基本波成分Inormoffを抽出する。第二の電力負荷23をオンしたとき、電流計測値は、第一の電力負荷21の消費電力の状況に応じて、きれいな正弦波波形ではなく、歪んだ正弦波波形となる。換言すると、第一の電力負荷21における消費電力の変動がなければ、電流計測値は、きれいな正弦波波形となる。なお、第二の電力負荷23をオンしたとき、電流計測値には、第二の電力負荷23分の消費電流値が第一の電力負荷21分の消費電流値に上乗せされている。
【0041】
一方、第二の電力負荷23をオフしたときも、電流計測値は、第一の電力負荷21の消費電力の状況に応じて、きれいな正弦波波形ではなく、歪んだ正弦波波形となる。なお、第二の電力負荷23をオフしたとき、電流計測値は、第二の電力負荷23分の消費電流値は上乗せされず、第一の電力負荷21分の消費電流値となる。
また、スイッチ54がオンされると、第二の電力負荷23がオンされ、スイッチ54がオフされると、第二の電力負荷23がオフされる。
【0042】
第二の電力負荷23をオン(通電)したときの基本波成分Inormonは、上記数1を変形して算出した下記数2で示される。
【数2】
ここで、i(t)は、第二の電力負荷23分の電流値であり、i(t)は、第一の電力負荷21分の電流値である。
【0043】
さらに、第二の電力負荷23をオフ(非通電)したときの基本波成分Inormoffは、上記数1を変形して算出した下記数3で示される。
【数3】
【0044】
また、第二の電力負荷23の電流をi(t)=Asinωt、系統電源16の歪んだ電流をf(t)とすると、第二の電力負荷23をオン(通電)したときの基本波成分Inormonと、第二の電力負荷23をオフ(非通電)したときの基本波成分Inormoffとの差電流Inormon−Inormoffは、A/2である。以下の理由による。
基本波成分Inormonは、下記数4で示される。
【数4】
【0045】
基本波成分Inormoffは、下記数5で示される。
【数5】
ここで、sinωtは、規格化用正弦波である。
【0046】
判定補正部45は、抽出部44によって抽出された基本波成分および電圧位相算出部43aによって算出された電圧位相から、各電流センサ52a,52bが装着されている電線15および各電流センサ52a,52bの装着向きを判定・補正する。具体的には、判定補正部45は、スイッチ54a(または54b)のオンオフ前後における電流センサ52a(または/および52b)に係る基本波成分の変動から、電流センサ52a,52bが装着されている電線15を判定する。また、電流センサ52a(または/および52b)に係る基本波成分の位相と、および電圧位相算出部43aによって算出された電圧位相とから、電流センサ52a,52bの装着向きを判定する。
【0047】
さらに、判定補正部45は、判定結果が「正常」である場合には、第一および第二電流センサ52a,52bは正常な取付位置および取付方向で取り付けられているので、第一および第二電流センサ52a,52bから取得した検出結果をそのまま使用すればよい。判定補正部45は、判定結果が「補正」である場合には、第一および第二電流センサ52a,52bは正常な取付位置および取付方向で取り付けられていないが、第一および第二電流センサ52a,52bから取得した検出結果の正負を逆にしたり取得した検出結果を交換したり(入れ替えたり)して使用すればよい。判定補正部45は、判定結果が「異常」である場合には、前述したように補正することができないため、第一および第二電流センサ52a,52bから取得した検出結果を使用することができない。よって、判定補正部45は、ユーザにその旨を報知器46を介して警告する。
【0048】
上述した説明から明らかなように、本実施形態に係る分散型電源システムは、互いに並設されている複数の第一電線15a,15bを介して交流電力を供給する系統電源16と、複数の第一電線15a,15bのうちいずれか2つの互いに異なる第一電線15a,15bの間にそれぞれ接続され、かつ使用者により選択的に使用される複数の第一の電力負荷21a,21bと、各第一の電力負荷21a,21bに接続されている2つの第一電線15a,15bにそれぞれ接続されている2つの第二電線19a,19bの間に各第一の電力負荷21a,21bに対してそれぞれ並列に設けられた複数の第二の電力負荷23a,23bと、互いに異なる複数の第一電線15a,15bであって第二電線19a,19bとの接続点より系統電源16側の位置にそれぞれ装着されるべき電流センサであって、装着された第一電線15a,15bを流れる交流の電流値および流れる方向をそれぞれ検出する複数の電流センサ52a,52bと、電流センサ52a,52bが装着されるべき第一電線15a,15bに接続されている第二電線19a,19bにそれぞれ設けられ、系統電源16から各第二の電力負荷23a,23bへの交流電力の供給・遮断を行う複数のスイッチ54a,54bと、各第一電線15a,15bの電圧を検出する電圧センサ10a1,10a2と、発電した電力を第一および第二の電力負荷23a,23bに供給可能である発電装置10と、各電流センサ52a,52bおよび電圧センサ10a1,10a2の検出結果を取得したり、各スイッチ54a,54bを開閉制御したり、発電装置10を制御したりする制御装置40と、を備えた分散型電源システムである。制御装置40は、電流センサ52a,52bからの検出結果である電流値を取得する第一取得部42と、電圧センサ10a1,10a2からの検出結果である電圧を取得する第二取得部43と、第二取得部43から電圧を取得し、各第一電線の電圧位相を算出する電圧位相算出部43aと、第一取得部42から電流値を取得するとともに電圧位相算出部43aから電圧位相を取得し、電流値および電圧位相に基づいて電流値から基本波成分を抽出する抽出部44と、抽出部44によって抽出された基本波成分および電圧位相算出部43aによって算出された電圧位相から、各電流センサ52a,52bが装着されている電線および各電流センサ52a,52bの装着向きを判定・補正する判定補正部45と、を備えている。
【0049】
本実施形態においては、判定補正部45が、抽出部44によって抽出された基本波成分および電圧位相算出部43aによって算出された電圧位相から、各電流センサ52a,52bが装着されている電線および各電流センサ52a,52bの装着向きを判定・補正する。よって、第一の電力負荷21a,21b(家庭内負荷)が変動して電流検出値にノイズが乗ったとしても、このノイズの影響を受けることなく、電線に装着された電流センサ52a,52bの装着位置および装着向きに関する判定を的確に実施し、ひいては判定結果に基づく自動補正を適切に実施することができる。
【0050】
また、抽出部44は、第一取得部42から取得した電流値に対してフーリエ変換を行うことにより、基本波成分を抽出する。
これによれば、各電流センサ52a,52bの検出値から基本波成分をより簡便かつ適切に抽出することができ、ひいては判定・補正の精度を向上させることができる。
【0051】
なお、上述した実施形態においては、単相3線式の回路構成であったが、3相3線式の回路構成にも本発明は適用可能であり、4線式の回路構成にも適用可能である。上述したいずれの場合にも電流センサ52は2つでなく3つ以上の場合にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
10…発電装置、10a(10a1,10a2)…電力計(電圧センサ)、11…発電器、12…変換器、13…燃料供給源、13a…流量計、14…水供給源、15…電線(第一電線)、15a…U相線、15b…V相線、15c…N相線、16…系統電源、17,18…電線、19…第二電線、23…第二の電力負荷、23a…U相補機、23b…V相補機、21…第一の電力負荷、26a…湯利用機器、26b…熱利用機器、30…貯湯槽、36…流量センサ、40…制御装置、42…第一取得部、43…第二取得部、43a…電圧位相算出部、44…抽出部、45…判定・補正部、46…報知器、52…電流センサ、52a…第一電流センサ、52b…第二電流センサ、54…スイッチ、54a…U相スイッチ、54b…V相スイッチ。
図1
図2
図3