(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作表ソフトウェアを用いて工業値積算カウント装置によって算出された工業値の積算値の差分値を帳票に出力する場合、差分値の出力精度以下の端数が四捨五入されて出力される。例えば差分値が0.433333であり、出力精度が小数点以下1桁に設定されている場合、差分値は0.4と表示される。結果、出力精度以下の端数が積み上げられることによって、例えば
図5に示すように、帳票に出力されている差分値を足し合わせた値が帳票に出力されている差分値の合計値と一致しないことがある。具体的には、
図5に示す例では、帳票に出力されている各時刻の1分値を足し合わせた値は4.8(=0.4×12)であるが、帳票上では1分値の合計値は5.2と出力される。このような背景から、帳票に出力されている各時刻における差分値を足し合わせた値が帳票に出力されている差分値の合計値と一致しなくなることを抑制可能な技術の提供が求められていた。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、帳票に出力されている各時刻における工業値の差分値を足し合わせた値が帳票に出力されている工業値の差分値の合計値と一致しなくなることを抑制可能な工業値積算カウント装置、工業値積算カウント方法、及び工業値積算カウントプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る工業値積算カウント装置は、整数型の工業値の積算値における表示精度以下の端数を算出する端数算出手段と、前記積算値から前記端数算出手段によって算出された端数を減算し、減算値を、前記積算値を求める際に用いられた所定倍率値で除算した値を実数型の工業値の積算値として算出する実数型工業値算出手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る工業値積算カウント方法は、整数型の工業値の積算値における表示精度以下の端数を算出し、算出された端数を前記積算値と関連付けさせて記憶手段に記憶させる端数算出ステップと、前記記憶手段に記憶されている前記積算値及び該積算値と関連付けされている前記端数を読み出し、前記積算値から前記端数を減算し、減算値を、前記積算値を求める際に用いられた所定倍率値で除算した値を実数型の工業値の積算値として算出し、算出された実数型の工業値の積算値を前記記憶手段に記憶させる実数型工業値算出ステップと、を含むことを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る工業値積算カウントプログラムは、整数型の工業値の積算値における表示精度以下の端数を算出し、算出された端数を前記積算値と関連付けさせて記憶手段に記憶させる端数算出処理と、前記記憶手段に記憶されている前記積算値及び該積算値と関連付けされている前記端数を読み出し、前記積算値から前記端数を減算し、減算値を、前記積算値を求める際に用いられた所定倍率値で除算した値を実数型の工業値の積算値として算出し、算出された実数型の工業値の積算値を前記記憶手段に記憶させる実数型工業値算出処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る工業値積算カウント装置、工業値積算カウント方法、及び工業値積算カウントプログラムによれば、帳票に出力されている各時刻における工業値の差分値を足し合わせた値が帳票に出力されている工業値の差分値の合計値と一致しなくなることを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態である工業値積算カウント装置の構成について説明する。
【0012】
〔監視システムの構成〕
初めに、
図1を参照して、本発明の一実施形態である工業値積算カウント装置が適用される監視システムの構成について説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態である工業値積算カウント装置が適用される監視システムの構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本発明の一実施形態である工業値積算カウント装置が適用される監視システム1は、電力量等の工業値を監視するシステムであり、積算メータ2、パルス積算カウンタ3、監視装置4、端末装置5、及び出力装置6を主な構成要素として備えている。
【0014】
積算メータ2は、工業値を積算し、積算値が所定値変化する度毎にパルス積算カウンタ3にパルス信号を出力する装置である。
【0015】
パルス積算カウンタ3は、0〜9999999等の整数範囲内でサイクリックに積算メータ2から出力されたパルス信号の数(以下、パルス数と表記)を積算する装置である。
【0016】
監視装置4は、パーソナルコンピュータやワークステーション等の情報処理装置によって構成され、整数型工業値積算カウンタ41、実数型工業値積算カウンタ42、帳票データ収集部43、及び帳票データデータベース(帳票データDB)44を備えている。実数型工業値積算カウンタ42は、本発明に係る端数算出手段及び実数型工業値算出手段として機能する。
【0017】
整数型工業値積算カウンタ41は、1分等の所定周期毎にパルス積算カウンタ3のカウント値を取得し、取得したカウント値を用いて整数型の工業値の積算値を算出するカウント装置である。整数型工業値積算カウンタ41の詳細な構成については後述する。整数型工業値積算カウンタ41は、回路要素によって構成してもよいし、監視装置4を構成する情報処理装置がコンピュータプログラムを実行することによって実現される機能として構成してもよい。
【0018】
実数型工業値積算カウンタ42は、1分等の所定周期毎に整数型工業値積算カウンタ41から整数型の工業値の積算値を取得し、取得した積算値を用いて実数型の工業値の積算値を算出するカウント装置である。実数型工業値積算カウンタ42の構成の詳細については後述する。実数型工業値積算カウンタ42は、回路要素によって構成してもよいし、監視装置4を構成する情報処理装置がコンピュータプログラムを実行することによって実現される機能として構成してもよい。
【0019】
帳票データ収集部43は、実数型工業値積算カウンタ42によって算出された実数型の工業値の積算値に関するデータを帳票データとして1分等の所定周期毎に収集し、収集した帳票データを帳票データDB44内に格納する装置である。帳票データ収集部43は、監視装置4を構成する情報処理装置がコンピュータプログラムを実行することによって実現される。
【0020】
帳票データDB44は、LAN(Local Area Network)等の電気通信回線を介して読み取り可能な形態で帳票データを格納する記憶装置である。
【0021】
端末装置5は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置によって構成され、電気通信回線を介して監視装置4に接続されている。端末装置5には、作表ソフトウェアがインストールされている。端末装置5内の情報処理装置は、作表ソフトウェアを実行することによって、電気通信回線を介して帳票データDB44内に格納されている帳票データを読み取り、読み取られた帳票データを用いて帳票を作成する。
【0022】
出力装置6は、表示装置や印刷装置等の公知の出力装置によって構成されている。出力装置6は、端末装置5からの制御信号に従って端末装置5が作成した帳票Pを出力する。
【0023】
〔整数型工業値積算カウンタの構成〕
次に、
図2,
図3を参照して、整数型工業値積算カウンタ41の構成について説明する。
図2,
図3は、整数型工業値積算カウンタ41によって積算された整数型の工業値の一例を示す図である。
【0024】
整数型工業値積算カウンタ41は、初めに、1分等の所定周期毎にパルス積算カウンタ3のカウント値を取得し、前回のカウント値と今回のカウント値との差分値を算出する。次に、整数型工業値積算カウンタ41は、内部で積算誤差を発生させないように差分値に所定倍率値を乗算する。例えば、整数型工業値積算カウンタ41は、1000000倍値を所定倍率値として差分値に乗算する。これにより、差分値が0.000001である場合、乗算値は整数値の1となり、積算誤差が作られることを抑制できる。次に、整数型工業値積算カウンタ41は、乗算値を工業値に変換するためのパルスの重みを乗算値に乗算することによって工業値の差分値を算出する。そして、整数型工業値積算カウンタ41は、算出された差分値を前回の処理までの積分値に加算することによって、工業値の積算値を算出し、算出された積算値をメモリ等の記憶手段に記憶させる。例えばカウント値が1分当たり13カウントずつ増加し、所定倍率値が1000000に設定され、パルスの重みが30パルス数で規定されている場合、1分毎の工業値の積算値は
図2に示すように算出される。すなわち、工業値の積算値は1分当たり13×1000000/30ずつ加算されていく。なお、パルスの重みを規定するパルス信号数は、1パルス信号当たりではなく、30パルスで1立米等、工業値変換後の単位に基づいて決められる。
【0025】
ここで、所定倍率値を乗算しても乗算値に小数点以下の端数が発生した場合、その端数が切り捨てられるために積算誤差が発生する。具体的には、
図2に示す例では、小数点以下の端数が切り捨てられているために、本来は積算値が1300000と算出されるべき所、積算値が1299999と算出されている。そこで、所定倍率値を乗算しても乗算値に小数点以下の数字が発生する場合、整数型工業値積算カウンタ41は、小数点以下の端数を記憶し、端数を次回の処理に持ち越しながら工業値の積算値を算出する。具体的には、整数型工業値積算カウンタ41は、以下に示す式(1)を用いて今回の処理におけるパルス数の端数(今回パルス端数)を算出すると共に、以下に示す式(2)を用いて今回の処理において積算値に加算する工業値(今回加算整数値)を算出する。そして、整数型工業値積算カウンタ41は、以下に示す式(3)を用いて工業値の積算値を算出し、以下に示す式(4)を用いて前回の処理におけるパルス端数(前回パルス端数)の値を今回パルス端数の値に置き換える。ここで、式(1)におけるMod(X,Y)は、パラメータXをパラメータYで除算した時の剰余を演算する演算子を示している。これにより、
図3に示すように工業値に積算誤差が発生することを抑制できる。
【0026】
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【0027】
なお、整数型工業値積算カウンタ41によって算出される工業値の積算値には上限値(積算最大値)が設けられ、工業値の積算値が積算最大値に到達した場合、整数型工業値積算カウンタ41は、以下の式(5)に示すように工業値の積算値を0にリセットした後に再び工業値の積算を開始する。
【0029】
〔実数型工業値積算カウンタの構成〕
次に、
図4〜
図7を参照して、実数型工業値積算カウンタ42の構成について説明する。
図4は、整数型の工業値の積算値を実数型の工業値の積算値に変換した一例を示す図である。
図5は、
図4に示す差分値の帳票出力の一例を示す図である。
図6は、本発明の一実施形態である変換処理の流れを示すフローチャートである。
図7は、本発明の一実施形態である変換処理によって得られた差分値の帳票出力の一例を示す図である。
【0030】
図4に示すように、所定倍率値を1000000倍として整数型工業値積算カウンタ41によって算出された工業値の積算値を1000000で割ることによって、単純に整数型の工業値の積算値(以下、整数型積算値と表記)を実数型の工業値の積算値(以下、実数型積算値と表記)に変換し、所定周期毎(本例では1分毎)の実数型積算値の差分値を算出する。そして、作表ソフトウェアを用いて所定周期毎の実数型積算値の差分値の帳票を作成し、差分値の表示精度を小数点以下1桁とすると、
図5に示すように、各時刻における差分値を足し合わせた値が帳票に表示されている差分値の合計値と合わなくなる。具体的には、
図5に示す例では、各時刻における1分値を足し合わせた値は4.8(=0.4×12)であるが、帳票上では1分値の合計値は5.2と出力される。これは、整数型積算値をそのまま実数型積算値に変換しても、帳票上では表示精度以下の端数が隠れてしまうためである。
【0031】
そこで、実数型工業値積算カウンタ42は、以下に示す変換処理を実行することによって、各時刻における実数型積算値の差分値を足し合わせた値が帳票Pに出力されている差分値の合計値と一致しなくなることを抑制する。以下、
図6に示すフローチャートを参照して、変換処理を実行する際の実数型工業値積算カウンタ42の動作について説明する。
【0032】
図6に示すフローチャートは、監視装置4の電源がオンになったタイミングで開始となり、変換処理はステップS1の処理に進む。変換処理は、監視装置4の電源がオンになっている間、所定の制御周期毎に繰り返し実行される。
【0033】
ステップS1の処理では、実数型工業値積算カウンタ42が、メモリ等の記憶手段に記憶されている整数型積算値を取得する。これにより、ステップS1の処理は完了し、変換処理はステップS2の処理に進む。
【0034】
ステップS2の処理では、実数型工業値積算カウンタ42が、ステップS1の処理において取得した整数型積算値における表示精度以下の端数を算出する。具体的には、整数型積算値を求める際に用いられた所定倍率値が1000000である場合、表示精度をDIGITとすると、表示精度以下の端数(表示精度端数)は以下に示す式(6)によって算出される。そして、実数型工業値積算カウンタ42は、算出された表示精度の端数を整数型積算値と関連付けさせてメモリ等の記憶手段に記憶させる。なお、式(6)において、Power(X,Y)はパラメータXのY乗を演算する演算子を示している。これにより、ステップS2の処理は完了し、変換処理はステップS3の処理に進む。
【0036】
ステップS3の処理では、実数型工業値積算カウンタ42が、メモリ等の記憶手段から整数型積算値と整数型積算値に関連付けされている表示精度以下の端数を読み出し、整数型工業値から表示精度以下の端数を減算する。すなわち、実数型工業値積算カウンタ42は、整数型積算値の表示精度以下の端数を切り下げる。そして、実数型工業値積算カウンタ42は、減算値を、整数型積算値を求める際に用いられた所定倍率値で除算した値を実数型工業値として算出し、算出された整数型工業値をメモリ等の記憶手段に記憶させる。具体的には、実数型工業値積算カウンタ42は、以下に示す式(7)を用いて実数型積算値を算出する。この処理によれば、
図5に示す帳票は
図7に示す帳票のように変更される。すなわち、
図7に示す帳票における差分値では、表示精度以下の端数が繰り上がり、所々で値0.1が加算されて差分値が0.5になっている。結果、各時刻における差分値を足し合わせた値は5.2(=0.4×8+0.5×4)となり、帳票上の差分値の合計値と一致する。これにより、ステップS3の処理は完了し、一連の変換処理は終了する。
【0038】
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態である変換処理では、実数型工業値積算カウンタ42が、整数型の工業値の積算値における表示精度以下の端数を算出し、整数型の工業値の積算値から表示精度以下の端数を減算し、減算値を、整数型の工業値の積算値を求める際に用いられた所定倍率値で除算した値を実数型の工業値の積算値として算出するので、帳票に出力されている各時刻における工業値の差分値を足し合わせた値が帳票に出力されている工業値の差分値の合計値と一致しなくなることを抑制できる。
【0039】
以上、本発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。