(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面を参照して、実施形態としての吸収性物品について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0023】
本実施形態の吸収性物品は、着用者に装着され、尿や経血といった液体を吸収する衛生用品である。この吸収性物品としては、テープ型やパンツ型の紙おむつ(いわゆる「使い捨ておむつ」)、尿パッド、生理用ナプキン、パンティーライナーなどが挙げられる。以下の実施形態では、吸収性物品としてテープ型の紙おむつを例示する。
【0024】
本実施形態では、紙おむつについて、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が位置する。また、紙おむつが着用者に装着された状態(以下「装着状態」と略称する)において、着用者の肌に向かう側(装着された状態で内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(装着された状態で外側)を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。
【0025】
[I.第1実施形態]
[1.紙おむつ]
[1−1.基本的な構成]
まず、
図1および
図2を参照して、紙おむつ1の基本的な構成を説明する。この紙おむつ1は、幅方向の中心線Cを基準として対称に形成されている。なお、
図2では、各部材における幅方向の中心線を示す符号について、各部材を示す符号を符号「C」に下付きで追記している。
紙おむつ1は、長手方向に沿って前身頃1A、股下部1Bおよび後身頃1Cの三つの領域に大別される。
【0026】
この紙おむつ1には、後身頃1Cで幅方向に突出する止着テープ2が設けられ、前身頃1Aの最も非肌面側にフロントパッチ3(
図1では破線で示す)が設けられている。ここでは、通気性のフロントパッチ3が用いられている。止着テープ2がフロントパッチ3に止め付けられることで、紙おむつ1が着用者に装着される。
また、股下部1Bの幅方向寸法は、一般的な着用者の両脚部の付け根間の寸法よりもやや大きく設定されている。そのため、装着状態では、幅方向に挟まれた股下部1Bが折り曲げられた状態となる。この状態では、長手方向に折れ目が延びる。
【0027】
つぎに、
図1〜
図3を参照して、紙おむつ1を構成するシート類について述べる。
紙おむつ1には、前身頃1A、股下部1Bおよび後身頃1Cに亘って長手方向に延びる吸収体12(
図1では太破線で示す)が設けられている。
図1および
図2では、前身頃1Aおよび後身頃1Cよりも股下部1Bのほうが幅方向寸法の小さい吸収体12を例示する。ただし、幅方向寸法が一定の吸収体12を用いてもよい。
【0028】
吸収体12は、着用者から排泄される液体を吸収して保持する部材である。この吸収体12については、この例ではマット状であるため、以下の説明では「マット12」と呼ぶが、吸収体の形状については、マット状に限られず当技術分野で知られる種々の形状のものを採用することができる。
たとえば、粉砕あるいは解繊されたパルプ(いわゆる「フラッフパルプ」)に高吸水性樹脂(いわゆるSAP〈Superabsorbent polymer〉、高吸水性高分子あるいは高吸水性ポリマーとも称される)が混合されたコアをラップシートで被包(ラップ)したものがマット12に用いられる。
【0029】
このマット12に対して肌面側および非肌面側には、以下に述べる種々のシートが積層されている。
マット12の肌面側には、トップシート11が積層されている。
トップシート11は、紙おむつ1で最も肌面側に配置される。このトップシート11は、着用者から排泄された液体をマット12に吸収させるために、液体を透過させる性質(液透過性)をもつ。そして、トップシート11は、マット12の肌面側を被覆する。
【0030】
さらに、トップシート11およびマット12に対して幅方向側方のそれぞれには、サイドシート10が設けられている。
サイドシート10は、トップシート11と同様に紙おむつ1で最も肌面側に配置される。このサイドシート10は、排泄された液体の漏れを防止するために、液体を透過させない性質(液不透過性)をもつ。
【0031】
図1および
図2に示すように、カバーシート14は、紙おむつ1の股下部1Bおよび後身頃1Cにおいては最も非肌面側に配置される。このカバーシート14は、バックシート13を補強するとともに触感(たとえば手触り)を向上させるために設けられ、バックシート13を非肌面側から被覆する。
バックシート13は、マット12からの液漏れを防ぐために、液不透過性をもつ。このバックシート13は、マット12を非肌面側から被覆する。たとえば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)といった熱可塑性の樹脂シートがバックシート13に用いられる。
【0032】
カバーシート14は、紙おむつ1で最も非肌面側に配置される。このカバーシート14は、バックシート13を補強するとともに触感(たとえば手触り)を向上させるために設けられ、バックシート13を非肌面側から被覆する。
なお、カバーシート14は、単層構造に限らず、インナカバーシートおよびアウターカバーシートを有する多層構造であってもよい。
【0033】
カバーシート14の非肌面側には、フロントパッチ3が貼着されている。
このフロントパッチ3は、止着テープ2とともにファスニング機構を構成するものであり、止着テープ2は、後身頃1Cの幅方向両端部のそれぞれに設けられる。
図1および
図2では、後身頃1Cの幅方向両側に二つずつ設けられた止着テープ2を例示する。ただし、少なくとも幅方向両側に一つずつの止着テープ2が設けられていればよい。これらの止着テープ2は、後身頃1Cの両縁部のそれぞれから幅方向外側へ延設される。
【0034】
本実施形態では、止着テープ2とフロントパッチ3とを固定するファスニング機構として、フック材(雄部材)とループ材(雌部材)との機械的結合により固定する面状ファスナーが用いられる。
面状ファスナーは、表面に多数の突起(たとえば鉤状やきのこ状など)が形成されたフック材と、表面にループ状の繊維が配置されたループ材との組み合わせにより構成される。すなわち、止着テープ2およびフロントパッチ3のうちの何れか一方にフック材が設けられ、他方にループ材が設けられる。面状ファスナーを用いることで、フック材およびループ材を剥離可能な状態としつつ強固に固着させることができ、繰り返しの使用も可能となる。
ただし、粘着剤や粘着テープなどをファスニング機構に用いてもよい。
【0035】
[1−2.詳細な構成]
つぎに、
図1〜
図3を参照して紙おむつ1の詳細な構成を説明する。
ここでは、装着状態において、股下部1Bを所定形状に折り曲げて保持するための構造(以下「折曲保持構造」という)を述べる。なお、股下部1Bの不規則な折れ曲がりや捩れが着用者の快適性を低下させることから、股下部1Bを所定形状に折り曲げることで着用者の快適性を確保するために、折曲保持構造が紙おむつ1に設けられている。
この折曲保持構造として、股下部1Bの形状を所定形状に折り曲げるための溝状部として一次元状のエンボス部(以下、単にエンボス部と言う)20が設けられ、所定形状に折り曲げられた股下部1Bの形状を保持するためのサポートギャザー31が設けられている。そのうえ、エンボス部20によって股下部1Bを所定形状へ確実に折り曲げるための構成がマット12に設けられている。
【0036】
さらに、エンボス部20によって股下部1Bを所定形状に折り曲げた状態を長時間維持できるようにするための構成がマット12に設けられている。
つまり、マット12の全面に凹部および凸部で構成される凹凸パターン(二次元状エンボス部とも言う)121が形成されている。なお、凹凸パターン121については、
図1にその凹部を示し、
図2〜
図4では省略する。
【0037】
〈エンボス部〉
エンボス部20は、股下部1Bにおいて長手方向に延びて凹設され、少なくとも一対(二本)の部位である。なお、前身頃1Aや後身頃1Cにはエンボス部20が設けられていない。
ここでは、トップシート11およびマット12にエンボス部20が設けられている。すなわち、紙おむつ1の肌面側にエンボス部20が配置される。なお、エンボス部20は、少なくともマット12に設けられていればよく、トップシート11には設けられていなくてもよい。
【0038】
このエンボス部20は、少なくともトップシート11が積層されたマット12を部分的にプレス(圧搾)することで凹設(エンボス加工)することができる。この場合には、エンボス部20の設けられたマット12が圧搾(圧密化)された状態をなしている。言い換えれば、エンボス部20は、マット12の圧搾により形成されてなるものである。
図1および
図2では、幅方向の中心線Cを基準として対称に配置され、互いに平行であって二本で一対をなす直線状のエンボス部20を例示する。ただし、エンボス部20は、長手方向の一方から他方に向かうにつれて離間あるいは接近する形状であってもよいし、弧状や波型といった他の形状であってもよい。さらに、三本以上のエンボス部20が設けられてもよい。
【0039】
〈凹凸パターン〉
本実施形態では、凹凸パターン121は、トップシート11が積層されたマット12に形成されているが、凹凸パターン121は、少なくともマット12に設けられていればよく、トップシート11には設けられていなくてもよい。
【0040】
図1に示すように、本実施形態では、凹凸パターン121は、トップシート11、サイドシート10およびマット12の正面視で、凹部が格子状に形成された溝状であるパターン、即ち、格子状パターンに形成されている。格子状パターン121は、互いに等間隔で平行な直線状の溝群2組が、所定の角度(ここでは90°)をもって互いに交差して形成される。なお、ここでは、格子状パターン121は、各溝群が幅方向の中心線Cに対してそれぞれ所定の角度(ここでは45°或いは−45°)だけ傾斜し、幅方向の中心線Cを基準に対称(線対称)或いは略対称に形成される。
【0041】
この凹凸パターン121も、少なくともトップシート11、サイドシート10が積層されたマット12を、凹凸パターン121の凹部に対応する箇所をプレス(圧搾、パターンプレスとも言う)することで凹設(エンボス加工)することができる。この場合には、マット12において、凹凸パターン121の凹部に当たる箇所は圧搾によって厚みが減少すると同時に密度が高まって(圧密化されて)硬化する。ただし、凹凸パターン121の凸部は、圧搾されないので柔軟性が残っている。
【0042】
そこで、本実施形態では、凹凸パターン121をマット12の肌面側にトップシート11、サイドシート10と共に形成し、柔軟性があり触感の良い凹凸パターン121の凸部が着用者の肌に触れて、硬化して剛性は高まるが触感は低下する凹凸パターン121の凹部は着用者の肌に触れないようにしている。凹凸パターン121の凹部によりマット12の剛性が高まるため、エンボス部20によって股下部1Bを所定形状に折り曲げた状態を長時間維持できるようになる。
【0043】
なお、単にマット12の剛性を高めるという観点では、凹凸パターン121をマット12の非肌面側に形成してもよい。もちろん、凹凸パターン121をマット12の肌面側および非肌面側の双方に形成してもよく、この場合は肌面側では、触感の良い凹凸パターン121の凸部が着用者の肌に触れて、触感が低下する凹凸パターン121の凹部は着用者の肌に触れない。
【0044】
本実施形態のように、格子状パターン121の各溝群が幅方向の中心線Cに対してそれぞれ傾斜していると、マット12は長手方向にも幅方向にも剛性が適度に高まるので、マット12が所定形状に折り曲げられる際に折り曲げの抵抗になり難く、且つ折り曲げ後はその形状を幅方向にも長手方向にも保持し易くなる。
なお、エンボス部20が股下部1Bを所定形状に折り曲げるのを案内する際に、凹凸パターン121がこれを妨げることのないように、凹凸パターン121は、エンボス部20よりも弱めのプレスを加えるようにしている。
また、たとえば、複数層からなる場合のマット12において、凹凸パターン121は全層ではなく単層あるいは一部の層に対してのみ形成し、一方で、エンボス部20は、少なくともパルプを含む層の全て(2層以上)など、凹凸パターン121の層よりも多くの層に対して形成するようにしてもよい。これらにより、凹凸パターン121の凹部直下におけるマット12の密度は、エンボス部20の直下におけるマット12の密度よりも低くなる。
【0045】
〈サポートギャザー〉
サポートギャザー31は、装着状態において、マット12を肌面側に持ち上げて支持するための部位である。このサポートギャザー31は、エンボス部20よりも幅方向外側に配置される。ここでは、股下部1Bの領域内において、厚み方向において(平面視で)少なくとも一部がマット12と重なる位置にサポートギャザー31が配置される。
また、サポートギャザー31では、皺寄せられた紙おむつ1が長手方向に延びている。ここでは、前身頃1Aおよび股下部1Bに亘ってサポートギャザー31が設けられている。
【0046】
このサポートギャザー31は、一対の第一弾性部材41(弾性部、
図1では二点鎖線で示す)によって形成される。
第一弾性部材41は、サポートギャザー31と同様に、股下部1Bの領域内において、平面視で少なくとも一部がマット12と重なる位置に、エンボス部20よりも幅方向外側に配置され、長手方向に沿って設けられる。ここでは、エンボス部20と平行に第一弾性部材41が配置される。
この第一弾性部材41は、長手方向にマット12を収縮させるように設けられる。具体的に言えば、バックシート13とカバーシート14との間に第一弾性部材41が介装され、これらのシート13、14と伸張状態の第一弾性部材41の少なくとも股下部1Bの範囲内に位置する部分とが糊付けや縫合などによって互いに固定される。そのため、第一弾性部材41の収縮方向への弾性力によって、シート13、14が皺寄せられ、マット12が長手方向に収縮させられる。
【0047】
上記したサポートギャザー31のほか、立体ギャザー32およびレッグギャザー33も紙おむつ1に設けられている。
立体ギャザー32は、排泄された液体が幅方向外側に漏れることを防ぐために設けられる。この立体ギャザー32では、サイドシート10の幅方向内側端縁部が第二弾性部材42(
図1および
図2では密破線で示す)によって肌面側に立設されるとともに皺寄せられる。
レッグギャザー33は、着用者の脚部への追従性を高めるために設けられる。このレッグギャザー33は、幅方向に突出しており、サイドシート20の幅方向外側端縁部、カバーシート14の幅方向外側端縁部およびバックシート13の幅方向外側端縁部が第三弾性部材43(
図1では疎破線で示す)によって皺寄せられる。
【0048】
図1および
図2では、幅方向の一方および他方のそれぞれに、三本ずつ設けられた第一弾性部材41、一本ずつ設けられた第二弾性部材42、二本ずつ設けられた第三弾性部材43を例示する。ただし、紙おむつ1において設計されたギャザー31、32、33の幅方向領域やサポーギャザー31、32、33に要求される弾性力(収縮力)などに応じて、種々の本数、弾性力あるいは種類の弾性部材41、42、43を採用することができる。弾性部材41、42、43としては、たとえば、糸ゴム、天然ゴムあるいは伸縮フィルムなどを用いることができる。
【0049】
[2.装着状態の紙おむつ]
つぎに、
図4を参照して、装着状態の股下部1Bを説明する。
装着状態では、股下部1Bが所定形状に折り曲がった状態となる。具体的には、股下部1Bの幅方向断面が「W」字状の所定形状に折り曲げられる。この「W」字状をなす部分を二つの並んだV字に準えて、一方のV字部分および他方のV字部分をV字部51、52と呼ぶ。また、折れ目の位置が肌面側であれば山折りと呼び、非肌面側であれば谷折れと呼ぶ。
【0050】
この装着状態では、エンボス部20が折れ目となって股下部1Bの谷折れを案内している。具体的に言えば、二つのエンボス部20を折れ目として股下部1Bを谷折りすることで、二つの谷折りが案内される。そして、V字部51、52のそれぞれの角部に対応する部位に二つのエンボス部20が位置する。このときの股下部1Bでは、二つのエンボス部20の幅方向中間部が逆V字状に山折りされ、幅方向中心が折れ目となる。
このように所定形状に折り曲げられた股下部1Bでは、V字部51、52のそれぞれの幅方向外側に、第一弾性部材41で形成されるサポートギャザー31が位置する。これらの第一弾性部材41あるいはサポートギャザー31によって、マット12が長手方向に収縮され、全体的に股下部1Bが肌面側に持ち上げられる。
[3.製造方法]
【0051】
つぎに、本実施形態に係る吸収性物品の製造方法を説明する。
図5に示すように、まず、マット12の形成を行なう(ステップS10)。つまり、フラッフパルプにSAPが混合されたコアをラップシートで被包(ラップ)して、所定の長さにカットする。
【0052】
つぎに、何れも帯状のトップシート11、サイドシート10、バックシート13およびカバーシート14を走行させながら、トップシート11およびサイドシート10と、バックシート13との間にマット12を挟むようにして、積層工程を開始する(ステップS20)。なお、止着テープ2はカバーシート14あるいはサイドシート10に予め貼り付けられているものとする。この積層工程は、各シート10〜14を所定の層配置で走行させながら、貼り合わせていく。
【0053】
そして、積層工程の処理と並行して、マット12に(ここでは、マット12の肌面側に)プレス加工によって凹凸パターン121を加工する第1プレス工程(第1工程、ステップS30)と、マット12の肌面側にプレス加工によってエンボス部20(溝状部)を凹設する第2プレス工程(第2工程、ステップS40)と、エンボス部20(溝状部)の外側に第一弾性部材(弾性部)41や第二弾性部材42や第三弾性部材43を配設するギャザー加工工程(第3工程、ステップS50)とを実施する。
【0054】
このうち、ギャザー加工工程は第1プレス工程、第2プレス工程と並行に同時に行えるが、第1プレス工程、第2プレス工程は、互いに並行に同時に行うことはできない。そこで、第1プレス工程、第2プレス工程をこの順で実施する。つまり、凹凸パターン121を加工した後に、エンボス部20(溝状部)を凹設する。
【0055】
このように、第1プレス工程、第2プレス工程の順で加工することにより、マット12には後加工の第2プレス工程の溝の方が強く残るので、エンボス部20が凹凸パターン121に対して優先して形成される。
また、第2プレス工程では第1プレス工程よりも高い加圧力でプレス加工を行なう。つまり、第1プレス工程では中圧でプレスし、第2プレス工程では高圧でプレスする。これによっても、エンボス部20が凹凸パターン121に対してより優先して形成される。
【0056】
なお、第1プレス工程、第2プレス工程の際、マット12の加工箇所に水スプレーを実施してからプレスを行なってもよい。水スプレーによってマット12に水分が含まれた状態で加圧成形すると、その後の水分の蒸発によって、加圧成形した形状がよりくっきりとした状態に保持され易くなる。
【0057】
第1プレス工程、第2プレス工程、ギャザー加工工程は積層工程の終了までにそれぞれ終了し、積層工程が終了したら(ステップS60)、股繰りカットやサイドシート10側をトップシート11側に折り曲げるホールド処理をして(ステップS70)、製品カットを行なって(ステップS80)、製造が完了する。
【0058】
[3.作用および効果]
上述したように紙おむつが構成されるため、以下のような作用および効果を得ることができる。
本実施形態の紙おむつ1によれば、エンボス部20においてマット12を確実に折り曲げることができる。さらに、第一弾性部材41によってマット12が長手方向に収縮されることで、マット12を肌面側に持ち上げ、エンボス部20でのマット12の折り曲げを確実に保持することができる。
よって、装着状態において紙おむつ1の股下部1Bが所定形状に折り曲げて保持され、触感や吸液性を確保して着用者の快適性を向上させることができる。
【0059】
特に、トップシート11が積層されたマット12には、凹凸パターン121が形成されているので、これによってマット12の剛性が高められ、エンボス部20および第一弾性部材41によってマット12が折り曲げられると、この状態を保持しやすくなる。
したがって、紙おむつ1を長期間継続して使用した場合にも、マット12が折り曲げられた状態が保持され易くなり、触感や吸液性を確保して着用者の快適性を長期にわたって向上させることができる。
【0060】
本実施形態の凹凸パターン121は、格子状パターンであって、各溝群が幅方向の中心線Cに対してそれぞれ傾斜しているので、マット12は長手方向にも幅方向にも剛性が高まりマット12が所定形状に折り曲げられる際に折り曲げの抵抗になり難く、且つ折り曲げ後はその形状を幅方向にも長手方向にも保持し易くなる。
また、凹凸パターン121は、幅方向の中心線Cを基準に対称に形成されるので、マット12が中心線Cを基準に対称な形状に折り曲げられた状態を保持しやすい。
【0061】
また、凹凸パターン121がエンボス部20よりも弱めのプレスを加えられて形成されていることや、凹凸パターン121のプレス加工後にエンボス部20のプレス加工を実施していることで、エンボス部20の形状が優先されて形成され、マット12が所定形状に折り曲げられる際に凹凸パターン121がこれを妨げ難くなり、この点からも、触感や吸液性を確保して着用者の快適性を長期にわたって向上させることができる。
【0062】
また、凹凸パターン121は肌面側に形成されているので、柔軟性があり触感の良い凹凸パターン121の凸部が着用者の肌に触れて、硬化して剛性は高まるが触感は低下する凹凸パターン121の凹部は着用者の肌に触れないようになり、マット12の剛性を高めながらも良好な触感を確保することができ、この点からも着用者の快適性を確保することができる。
【0063】
エンボス部20よりも幅方向外側にサポートギャザー31、第一弾性部材41が配置されるため、エンボス部20での谷折りの幅方向外側からマット12を肌面側へ持ち上げるように付勢させることができ、所定形状の折り曲げを確実に保持することができる。
また、止着テープ2の止め付けられるフロントパッチ3が通気性を有するため、紙おむつ1の蒸れを抑えることができる。
【0064】
以下、凹凸パターンの他の構成例を第2〜4実施形態として説明する。
第1実施形態および以下の第2〜4実施形態の凹凸パターン121~124は、何れも、凹凸パターンが幅方向及び長手方向の二次元的な領域に配設されており、第2、4実施形態の凹凸パターン122、124は、第1実施形態の凹凸パターン121と同様に、凹部が少なくとも幅方向に線状に延びた複数の溝状である線状パターンを含んでいる。
【0065】
[II.第2実施形態]
第2実施形態について説明する。
図6に示すように、本実施形態の紙おむつ1は第1実施形態と凹凸パターンのみが異なり、他の構成は同様である。また、その製造方法も第1実施形態と同様である。
【0066】
図6に示すように、本実施形態の凹凸パターン122は、凹部が幅方向に互いに平行な線状に延びた複数の溝状である線状パターンであり、特に、波線状に延びた複数の溝で構成された波線状パターンである。
波線状パターン122は、マット12の幅方向の剛性を適度に高めるため、マット12が所定形状に折り曲げられる際に折り曲げの抵抗になり難く、且つ折り曲げ後はその形状を幅方向にも長手方向にも保持し易くなる。
【0067】
したがって、波線状パターン122によって、紙おむつ1を長期間継続して使用した場合にも、マット12が折り曲げられた状態が保持され易くなり、触感や吸液性を確保して着用者の快適性を長期にわたって向上させることができる。
なお、凹部が幅方向に互いに平行な線状に延びた複数の溝状である線状パターンには、波線状パターン122のほかに、波線に替えて直線とした直線状パターンや、波線に替えて他の曲線とした曲線状パターンや、円又は楕円の曲線を用いた曲線状パターンも考えられる。
【0068】
[III.第3実施形態]
つぎに、第3実施形態について説明する。
図7に示すように、本実施形態の紙おむつ1は第1実施形態と凹凸パターンのみが異なり、他の構成は同様である。また、その製造方法も第1実施形態と同様である。
【0069】
図7に示すように、本実施形態の凹凸パターン123は、凹部が複数のドット状であるドット状パターンとなっている。
ドット状パターン123は、マット12の幅方向の剛性を適度に高めるため、マット12が所定形状に折り曲げられる際に折り曲げの抵抗になり難く、且つ折り曲げ後はその形状を幅方向にも長手方向にも保持し易くなる。
【0070】
したがって、ドット状パターン123によって、紙おむつ1を長期間継続して使用した場合にも、マット12が折り曲げられた状態が保持され易くなり、触感や吸液性を確保して着用者の快適性を長期にわたって向上させることができる。
【0071】
[IV.第4実施形態]
つぎに、第4実施形態について説明する。
図8に示すように、本実施形態の紙おむつ1は第1実施形態と同様に凹凸パターンが格子状パターンであるが、凹部の密度がエンボス部20の相互間領域のみ高められている変形格子状パターン124となっている。
つまり、変形格子状パターン124は、エンボス部20の相互間領域では、格子状パターンの凹部の幅が太くされて、他の部分124aよりも凹部が高密度な格子状パターン124bとされている。
【0072】
このような格子状パターン124によれば、エンボス部20の相互間領域では凹部の高密度な格子状パターン124bが形成されるためエンボス部20の相互間領域の剛性が部分的に高められ、マット12が所定形状に折り曲げられた状態を長手方向にも保持し易くなる。また、エンボス部20の相互間領域以外は、剛性向上が抑えられ、良好な触感を確保しやすくなる。
なお、格子状パターンの凹部を高密度にさせるには、凹凸パターンの凹部の溝幅やドット径を大きくする以外に、凹部の溝やドット径の単位面積当たりの数を増やすようにしてもよい。或いは、格子状パターンの凹部をプレスする圧力を部分的に高めて、凹部の深さを深くして、マット12の密度が高い格子状パターンとしてもよい。
【0073】
[V.その他]
サポートギャザー31、第一弾性部材41は、幅方向に対称に設けられるものに限らず、幅方向中心に沿って長手方向に延びていてもよい。この場合には、幅方向の中心線Cに沿って紙おむつ1を折り曲げやすくなり、着用者の快適性を向上させることができる。
さらに、溝状部はプレス加工以外で加工してもよく、例えばエンボス部20に替えて、対応する部分のマット12が肉抜きあるいは貫通した溝状部がマット12に凹設されてもよい。
【0074】
なお、凹凸パターンは、上記の実施形態で例示した種々のパターンを組み合わせたものにしてもよい。
さらに、凹凸パターンは、幅方向の中心線Cに対して線対称或いは略線対称でなくてもよい。
【0075】
また、凹凸パターンもプレス加工以外で加工してもよい。プレス加工を用いて凹凸パターンを形成すると、プレスされた凹部の剛性が高まるが、プレス加工を用いずに凹凸パターンを形成すると、凹部の剛性が高まらない場合があるが、例えばマットの目付量を同量にした場合、凹凸パターンのないマットに比べて凹凸パターンのあるマットの方が断面二次モーメントを高くでき剛性を確保しやすい。したがって、着用者の快適性を長期にわたって向上させることができる。
また、エンボス部20は、マット12の非肌面側に設けられていてもよく、マット12の肌面側と非肌面側とに設けられていてもよい。
なお、エンボス部20は、前身頃1Aや後身頃1Cの一部に設けられてもよい。