(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記補助装置は、上記ツールユニットを上記旋回アームに上下動可能に繋留する繋留体と、上記繋留体を上方へ付勢する付勢部材と、を備える、請求項1に記載の車両組立装置。
上記ツールユニットと上記ロボットとを連結する連結部に着脱可能に取付けられる固定部材を備え、上記ツールユニットは、上記固定部材が上記連結部に取付けられた状態で上記ロボットによって駆動される一方で、上記固定部材が上記連結部から取外された状態で上記ロボットから分離される、請求項3に記載の車両組立装置。
上記ツールユニットは、ワークの締め付けを行う締め付け装置であり、上記ガイド部は、上記ツールユニットの上記シャフトに相対回転不能に連結されており、上記旋回アームは、上記ツールユニットが上記ワークの締め付けを行う際に発生するトルク反力を上記ガイド部において受ける反力吸収アームとして構成されている、請求項3又は4に記載の車両組立装置。
上記本体ベースは、車輪と、上記車両を搬送する搬送台車に設けられたブロックに係合可能な係合部と、を備え、予め設定された同期期間に上記係合部において上記ブロックに係合し上記搬送台車の搬送面に沿って延びる並走面を上記車両と同期して並走するように構成されている、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の車両組立装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上述の態様の好ましい実施形態について説明する。
【0015】
上記の車両組立装置において、上記補助装置は、上記ツールユニットを上記旋回アームに上下動可能に繋留する繋留体と、上記繋留体を上方へ付勢する付勢部材と、を備えるのが好ましい。
【0016】
これにより、ツールユニットを旋回アームに繋留する繋留体の張力によって、ロボットによるツールユニットの持ち上げを補助することができる。即ち、ツールユニットが上下動する場合、この補助装置において付勢部材によって繋留体に常時に張力が作用している。このため、補助装置の構造を簡素化できる。
【0017】
上記の車両組立装置において、上記ツールユニットは、上下方向に延在するシャフトを備え、上記旋回アームは、上記ツールユニットの上記シャフトを上下動可能にガイドするガイド部を備え、上記ガイド部において上記ツールユニットに連結されているのが好ましい。
【0018】
この場合、旋回アームは、ロボットからシャフト及びガイド部を介して伝達された荷重によって水平旋回することができる。即ち、ロボットを旋回アームの水平旋回動作時のアクチュエータに利用できる。従って、旋回アームに専用のアクチュエータを設ける必要がない。一方で、この旋回アームは、ガイド部を備えることでツールユニットの上下動作を邪魔しない。これにより、ツールユニットの上下方向の円滑な動作を実現できる。
【0019】
上記の車両組立装置は、上記ツールユニットと上記ロボットとを連結する連結部に着脱可能に取付けられる固定部材を備え、上記ツールユニットは、上記固定部材が上記連結部に取付けられた状態で上記ロボットによって駆動される一方で、上記固定部材が上記連結部から取外された状態で上記ロボットから分離されるのが好ましい。
【0020】
これにより、車両組立装置を自動機と手動機とに切り替えて使用できる。固定部材を連結部に取付けた自動運転モードによれば、車両組立装置を自動機として使用できる。自動運転モードの場合、ツールユニットは、ロボットによって旋回アームとともに駆動される。一方で、固定部材を連結部から取外した手動運転モードによれば、車両組立装置を手動機として使用できる。手動運転モードの場合、ツールユニットがロボットから物理的に切り離される。このため、作業者から付与される荷重によってツールユニットを上下方向及び水平旋回方向に自在に動かすことができる。
【0021】
上記の車両組立装置において、上記ツールユニットは、ワークの締め付けを行う締め付け装置であり、上記ガイド部は、上記ツールユニットの上記シャフトに相対回転不能であり、上記旋回アームは、上記ツールユニットが上記ワークの締め付けを行う際に発生するトルク反力を上記ガイド部において受ける反力吸収アームとして構成されているのが好ましい。
【0022】
この場合、ツールユニットの軸回転によるワークの締め付け力と反対方向にトルク反力が生じ、このトルク反力がシャフト及びガイド部を介して旋回アームに伝達する。このとき、ツールユニットから伝達したトルク反力を旋回アームで受けることができる。
【0023】
上記の車両組立装置において、上記本体ベースは、車輪と、上記車両を搬送する搬送台車に設けられたブロックに係合可能な係合部と、を備え、予め設定された同期期間に上記係合部において上記ブロックに係合し上
記搬送台車の搬送面に沿って延びる並走面を上記車両と同期して並走するように構成されているのが好ましい。
【0024】
本構成によれば、車両組立装置を同期期間に車両と同期して並走させることができる。
【0025】
上記の車両組立装置において、上記ロボットは、いずれも垂直方向に延在する複数の駆動軸を有する多関節ロボットとして構成されているのが好ましい。
【0026】
本構成によれば、複数の駆動軸を有する多関節ロボットを使用してツールユニットを駆動するため、ツールユニットの水平旋回方向の動作範囲を広げることができる。
【0027】
(実施形態)
以下、本実施形態の、車両組立ラインにおける車両組立装置(以下、単に「組立装置」ともいう。)について、図面を参照しつつ説明する。
【0028】
なお、本明細書の説明で参照する図面では、特に断わらない限り、車両の搬送方向である第1方向を矢印Xで示し、車両の搬送面の幅方向である第2方向を矢印Yで示し、上下方向(垂直方向)である第3方向を矢印Zで示している。
【0029】
図1に示されるように、組立装置10は、車両(「車体」ともいう。)1を組立てるための装置であり、車両組立ラインLに対して使用される。この車両組立ラインLにおいて、車両1は、搬送台車2の搬送面2aに固定された支柱3によって支持され、第1方向Xのうちの一方向である搬送方向に搬送される。
【0030】
組立装置10は、本体ベース20と、組立作業用のツールユニット30と、ロボット40と、旋回アーム50と、補助装置55と、ガイド部58と、ツールユニット30及びロボット40の制御を行う制御装置60と、を備えている。
【0031】
本体ベース20は、車輪21と、搬送台車2の搬送面2aから突出したブロック2bに係合可能な係合部22と、を備えている。係合部22は、予め設定された同期期間の開始時に、即ちブロック2bの位置に到達したときに、このブロック2bに係合するように動作する。一方で、係合部22は、同期期間の終了時にブロック2bとの係合を解除するように動作する。
【0032】
このため、本体ベース20は、同期期間に係合部22においてブロック2bに係合し搬送面2aに沿って延びる並走面4を車両1と同期して並走するように構成されている。また、本体ベース20は、ガイド機構(図示省略)によって第1方向Xに沿ってガイドされている。このガイド機構によれば、本体ベース20は、並走時に並走面4から脱落するのが阻止されている。
【0033】
本体ベース20には、ツールユニット30の動作領域内に進入した進入物を検知するセンサ23が設けられている。このセンサ23は、ツールユニット30の動作領域に向けてレーザー光を照射するレーザースキャンセンサとして構成されている。このセンサ23によれば、進入物までの距離を検知できる。このセンサ23によって検知された情報は、制御装置60に伝送される。そして、制御装置60は、センサ23が進入物を検知したときにロボット40を停止する制御、或いはロボット40の動作速度を下げる制御を行う。これにより、ツールユニット30やロボット40が進入物に干渉するのを防止できる。
【0034】
図2に示されるように、ツールユニット30は、車両1に仮止めされたナットW(ワーク)を増し締めするためのナットランナーとして構成されている。即ち、このツールユニット30は、ワークであるナットWの締め付けを行う締め付け装置である。
【0035】
ツールユニット30は、ユニット本体31と、シャフト32と、ステー34と、操作ハンドル35と、を備えている。
【0036】
ユニット本体31は、上下方向Zに延在する軸状部材であり、その上端に回転駆動部31aを備えている。この回転駆動部31aは、上側が開口する係合凹部31bを備えている。この係合凹部31bは、ナットWの形状に相当する凹部である。このため、回転駆動部31aは、係合凹部31bにおいてナットWに係合可能なソケットとして構成されている。また、回転駆動部31aは、電動或いはエア駆動によってその軸周りに回転可能に構成されている。このため、ユニット本体31は、車両1側のナットWに係合して回転する実質的な回転工具として構成されている。このユニット本体31自体を「ツールユニット」ということもできる。
【0037】
なお、ツールユニット30の回転駆動部31aが係合するワークは、ナット以外にボルトであってもよい。また、ツールユニット30の回転駆動部31aは、ソケットに代えてビットであってもよい。
【0038】
シャフト32は、上端部32aと下端部32bとの間で上下方向Zに長軸状に延在している。このシャフト32は、上端部32aがユニット本体31に固定されている。
【0039】
組立装置10は、ツールユニット30とロボット40とを連結する連結部37に着脱可能に取付けられる固定部材44を備えている。連結部37は、ツールユニット30のうち水平方向に延在するステー34と、ロボット40のうち水平方向に延在するアーム部43と、によって構成されている。このとき、ステー34の一端部34aは、軸受33を介してシャフト32の下端部32bに回転自在に連結されている。一方で、ステー34の他端部34bは、固定部材44を介してロボット40のアーム部43に分離可能且つ相対回転不能に連結されている。
【0040】
ここで、固定部材44は、ステー34の他端部34bに貫通形成された貫通穴34cと、ロボット40のアーム部43に貫通形成された貫通穴43aに順次挿入される。このとき、ステー34とアーム部43との間の隙間に抜け止め部材45が挿入されることによって、固定部材44がステー34に固定される。一方で、抜け止め部材45が隙間から抜き出されることによって、固定部材44を貫通穴43a及び貫通穴34cから順次抜き出すことができる。
なお、固定部材44及び抜け止め部材45のそれぞれの詳細な構造については後述する。
【0041】
ツールユニット30は、固定部材44が連結部37に取付けられた状態でロボット40によって自動で駆動される。一方で、ツールユニット30は、固定部材44が連結部37から取外された状態でロボット40から分離される。即ち、ツールユニット30がロボット40から物理的に切り離される。この場合、ロボット40の駆動力がツールユニット30に伝達されないため、ツールユニット30を自動で駆動させることができない。
【0042】
そこで、ツールユニット30をロボット40から切り離したときには、このツールユニット30を作業者から付与される外力によって手動で駆動する必要がある。このときに、ツールユニット30の操作ハンドル35を使用することができる。
【0043】
操作ハンドル35は、上端部35aと下端部35bとの間で上下方向Zに長軸状に延在している。この操作ハンドル35は、上端部35aがユニット本体31に固定されている。この操作ハンドル35は、作業者の手指で把持されて操作される。操作ハンドル35の下端部35bには、ユニット本体31の回転駆動部31aの動作を制御するための操作スイッチ36が設けられている。作業者は、この操作スイッチ36の操作によって、回転駆動部31aの起動及び停止を行うことができる。
【0044】
旋回アーム50は、本体ベース20から延出し、ツールユニット30の水平旋回動作に連動して水平旋回するように構成されている。この旋回アーム50は、その延出先端部において第2方向Yに延在する先端アーム部54を備え、この先端アーム部54に補助装置55及びガイド部58の双方が設けられている。これら補助装置55及びガイド部58は予め一体化された状態で旋回アーム50の先端アーム部54に取付けられている。
なお、この旋回アーム50の詳細な構造については後述する。
【0045】
補助装置55は、ロボット40によるツールユニット30の持ち上げを補助するための装置である。この目的のために、補助装置55は、ケーブル56及びスプリング57を備えている。この補助装置55は、所謂「スプリングバランサー」の構造を利用したものである。これにより、補助装置55の構造を簡素化できる。
【0046】
ケーブル56は、ツールユニット30のステー34を旋回アーム50の先端アーム部54に上下動可能に繋留する繋留体として構成されている。スプリング57は、ケーブル56をツールユニット30のステー34の持ち上げ方向に付勢する付勢部材として構成されている。ケーブル56は、回転ドラム(図示省略)に対して巻取り及び巻出しが可能とされ、且つ先端部56aがステー34に固定されており、スプリング57の付勢力によってケーブル巻取り方向に付勢されている。このため、スプリング57の付勢力をツールユニット30の持ち上げ補助力に利用できる。
【0047】
ステー34が補助装置55によって上方から吊り下げられた状態では、スプリング57のケーブル巻取り方向の付勢力とケーブル56に作用する下向きの引っ張り荷重(重力による荷重)とがバランスするまでケーブル56が巻出される。このとき、ステー34に作用するツールユニット30の重量は、一部がロボット40のアーム部43に作用し、残りが補助装置55のケーブル56を介して旋回アーム50に作用する。従って、ツールユニット30の重量をロボット40と旋回アーム50とで分担して負担している。
【0048】
ガイド部58は、ツールユニット30のシャフト32を第3方向Zに上下動可能にガイドする機能を有する。この機能を実現するために、ガイド部58は、上下方向Zに貫通形成されたガイド穴59を備えている。ガイド穴59は、ツールユニット30のシャフト32が微小隙間を隔ててスライド可能な断面形状を有する。
【0049】
このため、旋回アーム50は、このガイド部58においてツールユニット30に連結されている。このとき、ガイド部58は、ツールユニット30の水平旋回動作に連動して旋回アーム50を水平旋回させる機能を有する。ここで、ガイド部58は、ツールユニット30のシャフト32に相対回転不能に連結されている。従って、旋回アーム50は、ツールユニット30がナットWの締め付けを行う際に発生するトルク反力をこのガイド部58において受ける反力吸収アームとして構成されている。
【0050】
図3に示されるように、シャフト32は、いずれも径方向に突出し、且つ周方向に等間隔で配置された複数(
図3では6つ)の凸部32cを備えている。このため、シャフト32の外表面には、凸部32cと凹部32dとが周方向に交互に配置されている。このような外表面形状を有するシャフト32は、「スプラインシャフト」とも称呼される。これに対して、ガイド穴59の断面形状はシャフト32の断面形状と概ね相似形である。即ち、ガイド穴59の内周面には、凹部59aと凸部59bが周方向に交互に配置されている。
【0051】
従って、ガイド部58のガイド穴59にツールユニット30のシャフト32が挿入された状態では、ガイド穴59の凹部59aにシャフト32の凸部32cが嵌まり込み、且つシャフト32の凹部32dにガイド穴59の凸部59bが嵌まり込む。その結果、シャフト32は、ガイド部58に対する上下方向Zのスライドは許容される一方で、ガイド部58に対する周方向の回転動作は阻止される。シャフト32が上記のようなスプラインシャフトである場合には、ガイド部58との協働によって過大な回転力に対抗できる。
【0052】
図4に示されるように、ステー34の他端部34bには、四角形断面の貫通穴34cが形成されている。このステー34と同様に、ロボット40のアーム部43には、貫通穴34cと同形状である四角形断面の貫通穴43aが形成されている。
【0053】
抜け止め部材45は、固定部材44の抜け止めのために、ステー34とアーム部43との間に挿入される平板部45aを有する。平板部45aには、第2方向Yに延び且つ一端が開口したスリット45bが設けられている。また、この抜け止め部材45には、作業者が手指で操作するための取っ手45cが設けられている。
【0054】
固定部材44の連結軸44aは、円形断面の縮径部44bと、縮径部44bの上下に設けられた四角形断面の2つの角柱部44c,44cと、によって構成されている。また、この固定部材44には、作業者が手指で操作するための取っ手44dが設けられている。
【0055】
この固定部材44において、縮径部44bの径寸法は、角柱部44cの縦寸法及び横寸法を下回る。上側の角柱部44cは、ステー34の貫通穴34cの大きさを若干下回る大きさであり、且つステー34の上下方向Zの厚みと同様の軸高さ(「軸長さ」ともいう。)を有する。下側の角柱部44cは、アーム部43の貫通穴43aの大きさを若干下回る大きさであり、且つアーム部43の上下方向Zの厚みと同様の軸高さを有する。縮径部44bは、抜け止め部材45のスリット45bのスリット幅を若干下回る径を有し、且つ抜け止め部材45の平板部45aの上下方向Zの厚みと同様の軸高さを有する。
【0056】
上記の固定部材44は、以下の取付け手順にしたがってステー34に取付けられる。
作業者は、固定部材44の取っ手44dを手指で掴んで、連結軸44aをステー34の貫通穴34cに挿入し、更にこの連結軸44aをアーム部43の貫通穴43aに挿入する。
【0057】
次に、作業者は、ステー34とアーム部43との間に抜け止め部材45の厚み分の隙間を確保した状態で、抜け止め部材45の取っ手45cを手指で掴んで、この隙間に抜け止め部材45を挿入する。このとき、上側の角柱部44cがステー34の貫通穴34cに嵌合し、下側の角柱部44cがアーム部43の貫通穴43aに嵌合する。また、抜け止め部材45のスリット45bに固定部材44の縮径部44bが嵌まり込む。
【0058】
その結果、ステー34及びアーム部43は固定部材44によって相対回転不能に連結され、且つ固定部材44の上方への抜け出しが抜け止め部材45によって阻止される。
【0059】
図5に示されるように、ロボット40は、本体ベース20に設けられている。ロボット40は、いずれも垂直方向に延在する複数(本実施形態では3つ)の駆動軸B1,B2,B3を有し水平方向にアームが動作する水平多関節ロボットとして構成されている。特に図示しないものの、各駆動軸には、制御装置60によって制御される、アクチュエータとしてのモータが設けられている。このような水平多関節ロボットは、「スカラロボット」とも称呼される。
【0060】
このロボット40は、3つのアーム部41,42,43を備えている。アーム部41は、本体部40aから水平方向に延出し、駆動軸B1が回転動作することによって駆動軸B1を中心に水平旋回可能に構成されている。アーム部42は、アーム部41から水平方向に延出し、駆動軸B2が回転動作することによって駆動軸B2を中心に水平旋回可能に構成されている。アーム部43は、駆動軸B3を介してアーム部42に連結され、水平方向に延在している。駆動軸B3は、回転動作及び上下動作の双方を行うことができるように構成されている。
【0061】
このため、アーム部43は、駆動軸B3を中心に水平旋回可能であるとともに、駆動軸B3に沿って上下方向Zに上下動可能に構成されている。このように、本実施形態のロボット40は、ツールユニット30を上下方向Z及び水平旋回方向に駆動可能なロボットである。このロボット40のように、複数の駆動軸を有する多関節ロボットを使用してツールユニット30を駆動するため、ツールユニット30の水平旋回方向の動作範囲を広げることができる。
【0062】
制御装置60は、ツールユニット30の駆動のためにロボット40の3つの駆動軸B1,B2,B3を制御する。この場合、制御装置60は、予め教示された或いは記憶された複数の移動軌跡の中から選択された所定の移動軌跡(移動経路)を使用し、この移動軌跡に基づいてロボット40の3つの駆動軸B1,B2,B3のそれぞれのアクチュエータに制御信号を出力する。この場合、制御装置60は、3つの駆動軸B1,B2,B3のそれぞれの実際の回転位置を検出し、この回転位置と目標回転位置とに基づいて3つの駆動軸B1,B2,B3のそれぞれをフィードバック制御するのが好ましい。
【0063】
図6に示されるように、旋回アーム50は、本体ベース20に固定され上下方向Zに延在する支柱51から水平方向に延出したアームである。この旋回アーム50は、3つのアーム部52,53,54を備え、いずれも垂直方向である上下方向Zに延在する旋回軸A1,A2を中心に左右に水平旋回可能に構成されている。
【0064】
第1アーム部52は、支柱51の上端部に固定され、水平方向である第2方向Yに延在している。
【0065】
第2アーム部53は、水平方向である第2方向Yに延在し、旋回軸A1によって第1アーム部52に水平旋回可能に連結されている。このため、第2アーム部53は、旋回軸A1を中心に左右に水平旋回可能である。この旋回軸A1は、第2アーム部53の水平旋回位置にかかわらず本体ベース20に対する相対位置が変わらない軸である。
【0066】
先端アーム部54は、旋回アーム50を構成する各アーム部のうち最も先端側に設けられたアーム部である。この先端アーム部54は、水平方向である第2方向Yに延在し、旋回軸A2によって第2アーム部53に水平旋回可能に連結されている。このため、先端アーム部54は、旋回軸A2を中心に左右に水平旋回可能である。この旋回軸A2は、アーム部53の水平旋回位置に応じて本体ベース20に対する相対位置が変わる軸である。
【0067】
また、この先端アーム部54に固定されている補助装置55及びガイド部58も同様に、旋回軸A1或いは旋回軸A2を中心に水平旋回可能である。
【0068】
次に、
図7〜
図13を参照しつつ、上記構成の組立装置10の運転モードについて具体的に説明する。この運転モードには、自動運転モードと手動運転モードが含まれる。
【0069】
(自動運転モード)
図7に示されるように、自動運転モードは、固定部材44を連結部37に取付けることによって組立装置10を自動機として使用する運転モードである。このとき、固定部材44は、前述の取付け手順にしたがって予め取付けられる。この自動運転モードにおいて、制御装置60は、ユニット本体31の回転駆動部31aが車両1側のナットWに係合するようにロボット40を制御する。この制御によれば、ロボット40のアーム部43は、駆動軸B3に沿った上下動作と、駆動軸B3を中心とした水平旋回動作と、を行う。これにより、ツールユニット30は、ロボット40によって旋回アーム50とともに駆動される。
【0070】
(自動運転モード時の上下動作)
ロボット40のアーム部43は、駆動軸B3がアーム部42から下方へ移動する動作にしたがって下降する。固定部材44を介してアーム部43に固定されているステー34は、このアーム部43とともに下降する。そして、このステー34に連結されているシャフト32は、ガイド部58によってガイドされつつ下降する。このとき、ステー34の下降量に相当する長さのケーブル56が補助装置55から巻き出される。その結果、ツールユニット30が所望の高さまで下降する。
【0071】
一方で、ロボット40のアーム部43は、駆動軸B3がアーム部42から上方へ移動する動作にしたがって上昇する。ステー34は、アーム部43とともに上昇する。そして、シャフト32は、ガイド部58によってガイドされつつ上昇する。このとき、ステー34の上昇量に相当する長さのケーブル56が補助装置55に巻き取られる。その結果、ツールユニット30が所望の高さまで上昇する。
【0072】
(自動運転モード時の水平旋回動作)
図8に示されるように、ロボット40のアーム部43は、駆動軸B3がその軸周りに右回転することによって右側に水平旋回する。このため、ステー34は、アーム部43とともに矢印D1で示されるように右側に水平旋回する。ステー34に軸受33(
図7参照)を介して連結されているシャフト32は、ステー34とともに水平旋回する。このとき、軸受33の作用によってステー34に対するシャフト32の周方向の相対回転が許容される。
【0073】
ここで、ガイド部58によってシャフト32に連結されている旋回アーム50は、シャフト32とともにステー34の移動軌跡にしたがって、例えば第1位置P1から第2位置P2まで右側に水平旋回する。このときの旋回アーム50の動作は、アーム部53が旋回軸A1を中心に旋回する動作と、第2アーム部53及び先端アーム部54が旋回軸A2を中心に相対的に旋回する動作と、が複合された動作になる。その結果、ツールユニット30の回転駆動部31aは、第1位置Q1から第2位置Q2まで右側に水平旋回する。
【0074】
図9に示されるように、ロボット40のアーム部43は、駆動軸B3が更に右回転することによって右側に水平旋回する。このため、ステー34は、アーム部43とともに矢印D1で示されるように更に右側に水平旋回する。旋回アーム50は、シャフト32とともにステー34の移動軌跡にしたがって、例えば第2位置P2から第3位置P3まで右側に水平旋回する。その結果、ツールユニット30の回転駆動部31aは、第2位置Q2から第3位置Q3まで右側に水平旋回する。
【0075】
なお、ロボット40のアーム部43が左側に水平旋回する場合、ツールユニット30は
図8及び
図9に示される位置と左右対称な位置に配置されることが明確であるため、ここではその説明を省略する。
【0076】
(自動運転モード時の締め付け動作)
ロボット40の上下動作及び水平旋回動作の組み合わせによってツールユニット30が目標位置に到達すると、回転駆動部31aの係合凹部31bが車両1側のナットWに係合する。このとき、ビジョンセンサ(図示省略)等を使用して、ナットWに対する係合凹部31bの位置補正を行うのが好ましい。その後、制御装置60は、ナットWを締め付けるように回転駆動部31aを制御する。
【0077】
上記の締め付け動作において、ツールユニット30では、回転駆動部31aの軸回転によるナットWの締め付け力と反対方向にトルク反力が生じる。このトルク反力は、シャフト32及びガイド部58を介して旋回アーム50に伝達する。このとき、ツールユニット30から伝達したトルク反力を旋回アーム50で受けることができる。
【0078】
図8及び
図9に示されるように、回転駆動部31aが第2位置Q2或いは第3位置Q3にあるときの締め付け動作においては、ナットWの締め付け力が作用する方向(図中の矢印D2で示される方向)と反対方向(図中の矢印D3で示される方向)にトルク反力が生じる。このトルク反力は、先端アーム部54から支柱51までの至る旋回アーム50全体によって吸収される。
【0079】
なお、旋回アーム50が受けたトルク反力は支柱51に作用する。このため、組立装置10の設計においては、このトルク反力に打ち勝つことができる剛性を支柱51に付与するのが好ましい。
【0080】
(手動運転モード)
図10に示されるように、手動運転モードは、固定部材44を連結部37から取外すことによって組立装置10を手動機として使用する運転モードである。作業者は、固定部材44を連結部37から取外すために、抜け止め部材45をその取っ手45cを把持して水平方向に抜き出す。その後、固定部材44をその取っ手44dを把持して上方へ抜き出す。
【0081】
この手動運転モードの場合、ツールユニット30がロボット40から物理的に切り離される。このとき、ツールユニット30は、補助装置55の作用によってほぼ無重力に近いバランス状態で保持される。このため、作業者から付与される荷重によってツールユニット30を上下方向及び水平旋回方向に自在に動かすことができる。
【0082】
(手動運転モード時の上下動作)
図11に示されるように、作業者がツールユニット30の操作ハンドル35を把持し、この操作ハンドル35に下向きの荷重を加えることによって、シャフト32は、ガイド部58によってガイドされつつ下降する。このときの下向きの荷重は、スプリング57によるケーブル56の巻取り方向の力に打ち勝つことができる荷重でなければならない。そして、シャフト32の固定されているステー34の下降量に相当する長さのケーブル56が補助装置55から巻き出される。その結果、ツールユニット30が所望の高さまで下降する。
【0083】
一方で、作業者がツールユニット30の操作ハンドル35を把持し、この操作ハンドル35に上向きの荷重を加えることによって、シャフト32は、ガイド部58によってガイドされつつ上昇する。このときの上向き荷重は、スプリング57によるケーブル56の巻取り方向の力によって補助されるため、ツールユニット30を下降させるときよりも小さい。このため、ツールユニット30の持ち上げについて作業者の負担を低く抑えることができる。そして、ステー34の上昇量に相当する長さのケーブル56が補助装置55に巻き取られる。その結果、ツールユニット30が所望の高さまで上昇する。
【0084】
(手動運転モード時の水平旋回動作)
図12に示されるように、作業者がツールユニット30の操作ハンドル35を把持し、この操作ハンドル35に図中の右方向の荷重を加えることによって、シャフト32は、ガイド部58とともに右側に水平旋回する。
【0085】
ここで、ガイド部58によってシャフト32に連結されている旋回アーム50は、シャフト32とともに、例えば第1位置P1から第2位置P2まで右側に水平旋回する。その結果、ツールユニット30の回転駆動部31aは、第1位置Q1から第2位置Q2まで右側に水平旋回する。
【0086】
図13に示されるように、作業者がツールユニット30の操作ハンドル35に更に右方向の荷重を加えることによって、シャフト32は、ガイド部58とともに更に右側に水平旋回する。旋回アーム50は、シャフト32とともに、例えば第2位置P2から第3位置P3まで右側に水平旋回する。その結果、ツールユニット30の回転駆動部31aは、第2位置Q2から第3位置Q3まで右側に水平旋回する。
【0087】
なお、作業者が操作ハンドル35に左方向の荷重を加える場合、ツールユニット30は
図12及び
図13に示される位置と左右対称な位置に配置されることが明確であるため、ここではその説明を省略する。
【0088】
(手動運転モード時の締め付け動作)
作業者は、目標位置に到達したツールユニット30に対して、更にユニット本体31の回転駆動部31aの係合凹部31bが車両1側のナットWに係合するように操作ハンドル35を操作する。そして、作業者は、操作スイッチ36の操作によって回転駆動部31aを起動してナットWの締め付けを行う。
【0089】
手動運転モードのときと同様に、上記の締め付け動作において、ツールユニット30では、回転駆動部31aの軸回転によるナットWの締め付け力と反対方向にトルク反力が生じる。このトルク反力は、シャフト32及びガイド部58を介して旋回アーム50に伝達する。このとき、ツールユニット30から伝達したトルク反力を旋回アーム50で受けることができる。従って、手動運転モードにおいて、作業者がトルク反力を受けにくくなり、作業者への負担を軽減できる。
【0090】
上記の実施形態によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0091】
上記の車両組立装置10は、ロボット40を使用してツールユニット30を上下方向及び水平旋回方向のそれぞれの方向に駆動することができる。このとき、ツールユニット30の上下方向動作と水平旋回方向動作とを組み合わせることによって、ツールユニット30を任意の位置まで移動させることができる。このため、1つのツールユニット30を車両1側の複数のナットWに兼用できる。従って、車種の変更や追加に対して大掛かりな設備改造が必要とならず、汎用性が高い。
【0092】
また、補助装置55は、ツールユニット30を旋回アーム50に繋留するケーブル56の張力によって、ロボット40によるツールユニット30の持ち上げを補助することができる。即ち、ツールユニット30が上下動する場合、この補助装置55においてスプリング57によってケーブル56に常時に張力が作用している。この場合、この補助装置55は、ツールユニット30の水平旋回動作に連動して水平旋回する旋回アーム50に設けられているため、ツールユニット30が水平旋回する各位置において、ツールユニット30の持ち上げを補助する機能を常時に発揮できる。
【0093】
このため、ナットランナーのような重量物であるツールユニット30を、ロボット40単独ではなくロボット40と補助装置55との協働で持ち上げて移動させることができる。従って、車両組立装置10のロボット40に最大可搬質量を小さく抑えた小型のロボットを使用することができ、装置全体を小型化できる。また、ロボット40の小型化によって、作業者が移動するための広いスペースを確保できる。
【0094】
上記の車両組立装置10において、旋回アーム50は、ロボット40からシャフト32及びガイド部58を介して伝達された荷重によって水平旋回することができる。即ち、ロボット40を旋回アーム50の水平旋回動作時のアクチュエータに利用できる。従って、旋回アーム50に専用のアクチュエータを設ける必要がない。一方で、この旋回アーム50は、ガイド部58を備えることでツールユニット30の上下動作を邪魔しない。これにより、ツールユニット30の上下方向の円滑な動作を実現できる。
【0095】
本発明は、上記の典型的な実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記の実施形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0096】
上記の実施形態では、ツールユニット30が締め付け装置である場合について記載したが、このツールユニット30に代えてその他のツールユニットを採用することもできる。その他のツールユニットとして、典型的には、ワークを車両に押し込むことによって加締める加締め装置、刷毛部材によって塗料を塗布する塗布装置などが挙げられる。
【0097】
なお、ツールユニット30が軸回転を伴わない場合であって、旋回アーム50がツールユニット30からの反力を受ける必要がない場合には、上記ガイド部58がツールユニット30のシャフト32に相対回転可能に連結された構成や、ガイド部58が省略された構成などを採用することもできる。
【0098】
上記の実施形態では、ツールユニット30とロボット40とが分離可能である構成について例示したが、本構成に代えて、ツールユニット30とロボット40とが常時に連結された構成を採用することもできる。この場合、自動運転モードのみを実施可能である。
【0099】
上記の実施形態では、いずれも垂直方向に延在する2つの旋回軸A1,A2を中心に水平旋回可能な旋回アーム50について例示したが、この旋回アーム50のための旋回軸は、必要に応じて1つ或いは3つ以上であってもよい。
【0100】
上記の実施形態では、いずれも垂直方向に延在する3つの駆動軸B1,B2,B3を有するロボット40について例示したが、このロボット40のための駆動軸は、必要に応じて1つ或いは4つ以上であってもよい。
【0101】
上記の実施形態では、スプリング57の付勢力を利用した補助装置55について例示したが例示したが、この補助装置55に代えて、空気圧やアクチュエータなどを利用した補助装置を採用することもできる。
【0102】
上記の実施形態では、本体ベース20が車輪21を有する場合について例示したが、本体ベース20を設置面に固定する場合には、車輪21を省略することもできる。