(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記収納部に前記容器を収納するにあたり、当該容器と同じ種別に属する前記容器が収納されていない場合には、全ての前記収納部に前記容器が収納されていない空の前記収納部群に属するいずれかの前記収納部に当該容器を搬送するように前記搬送装置の動作を制御するとともに、その搬送先の前記収納部が属する前記収納部群を、当該容器と同じ種別に属する他の前記容器の収納先に設定する請求項1に記載の容器収納設備。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
同じ収納部群に属する収納部に収納される複数の容器間で、実際に供給される浄化気体の流量を極力均一化することができる容器収納設備の実現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る容器収納設備は、
複数の収納部を複数の収納部群に区分された状態で有する収納棚と、
それぞれの前記収納部に対して、前記収納部群毎に浄化気体を供給する気体供給装置と、
前記収納部に対して容器を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置の動作を制御する制御部と、を備え、
前記容器が、その内部を前記浄化気体が流通する際の通気抵抗の大きさに応じて複数種別に区別されており、
前記制御部は、前記収納部に複数の前記容器を収納するにあたり、同じ種別に属する前記容器どうしを同じ前記収納部群に属する前記収納部に搬送するように前記搬送装置の動作を制御する。
【0008】
この構成によれば、内部を浄化気体が流通する際の通気抵抗の大きさが同程度の容器どうしが、同じ収納部群に属する収納部に収納される。つまり、通気抵抗の大きさが同程度の複数の容器どうしが、通気抵抗の大きさに応じて分けられて、いずれかの収納部群に集約して収納される。従って、同じ収納部群に属する収納部に収納される複数の容器間で、実際に供給される浄化気体の流量を極力均一化することができる。
【0009】
以下、本発明の好適な態様について説明する。但し、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定される訳ではない。
【0010】
一態様として、
前記制御部は、前記収納部に前記容器を収納するにあたり、当該容器と同じ種別に属する前記容器が収納されていない場合には、全ての前記収納部に前記容器が収納されていない空の前記収納部群に属するいずれかの前記収納部に当該容器を搬送するように前記搬送装置の動作を制御するとともに、その搬送先の前記収納部が属する前記収納部群を、当該容器と同じ種別に属する他の前記容器の収納先に設定することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、例えば収納棚に収納される容器の種別が予め分かっていない場合でも、事後的に、特定の収納部群に対して特定種別の容器を割り当てることができる。また、特定の収納部群に対して特定種別の容器を事後的に割り当てるので、収納棚に容器を収納するにあたって、その収納位置に関して過度の制約を受けることがない。
【0012】
一態様として、
前記気体供給装置は、前記浄化気体の流量を調整する流量調整部を前記収納部群毎に1つずつ含み、
前記収納部群毎の前記流量調整部は、当該収納部群に属する前記収納部に収納された前記容器の種別に応じて前記浄化気体の流量を調整することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、互いに異なる収納部群に属する収納部に収納される複数の容器間でも、実際に供給される浄化気体の流量を極力均一化することができる。収納部群毎に容器の種別に応じた流量調整を行うという簡単な制御で、収納棚全体において、容器に実際に供給される浄化気体の流量を極力均一化することができる。
【0014】
一態様として、
前記気体供給装置は、それぞれの前記収納部に対して、前記収納部群毎に、複数の分岐管を有する供給配管を介して気体供給源から前記浄化気体を供給し、
前記収納部群は、基準個数の前記収納部が属する通常収納部群と、前記基準個数よりも少ない個数の前記収納部が属する特別収納部群と、を含み、
前記制御部は、前記通気抵抗が予め定められた基準抵抗値以上の前記容器を、前記特別収納部群に属する前記収納部に搬送するように前記搬送装置の動作を制御することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、特別収納部群に属する収納部の個数は通常収納部群に属する収納部の個数よりも少ないので、それに応じて、特別収納部群の各収納部への供給配管の分岐数は通常収納部群の各収納部への供給配管の分岐数よりも少なくなる。このため、気体供給源から供給される浄化気体の大がかりな流量調整を行わずとも、特別収納部群の各収納部への浄化気体の供給流量を多くすることができる。よって、通気抵抗が大きい容器に対しても、それを特別収納部群の収納部に収納するという簡単な制御で、容器内の浄化を適切に行うことができる。
【0016】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1実施形態〕
容器収納設備の第1実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態の容器収納設備1は、物品収納設備の一種であり、物品としての容器7を収容する。この容器収納設備1は、例えば工業製品の製造プロセスにおいて、工程待ち等の間に原料や中間製品等を一時的に保管したり、完成品を保管したりするために用いられる。
【0019】
図1に示すように、容器収納設備1は、複数の収納部Sを有する収納棚2と、収納部Sに対して容器7を搬送する搬送装置4と、搬送装置4の動作を制御する制御部5(
図6を参照)とを備えている。本実施形態では、搬送装置4として、天井搬送車41と、コンベヤ44と、スタッカークレーン45とを含む容器収納設備1を例示している。また、容器収納設備1は、それぞれの収納部Sに対して浄化気体を供給する気体供給装置3を備えている。
【0020】
本実施形態の容器収納設備1は、クリーンルーム内に設置されている。このクリーンルームは、天井部92側から床部91側に向けて気体が流れるダウンフロー式に構成されている。床部91は、下床部91Aと、下床部91Aよりも上側に配設された上床部91Bとを含む。下床部91Aは、例えばコンクリートで構成されている。この下床部91Aには、走行レール94が敷設されている。上床部91Bは、例えば通気孔が複数形成されたグレーチング床で構成されている。天井部92は、本実施形態では二重天井に構成されている。この天井部92には、天井レール95が敷設されている。
【0021】
収納棚2は、上床部91Bと天井部92との間に設けられた仕切壁97の内部空間に設置されている。収納棚2は、搬送装置4を構成するスタッカークレーン45を挟んで対向する状態で一対備えられている。本実施形態では、一対の収納棚2の配列方向を「前後方向X」と言い、各収納棚2の横幅方向を「左右方向Y」と言う。
図2及び
図3に示すように、一対の収納棚2は、左右方向Yに配列された複数の支柱21と、左右方向Yに隣り合う一対の支柱21に亘って、上下方向Zに配列される状態で固定された複数の棚板22とを有する。棚板22は、容器7を載置支持する。こうして、上下方向Zに隣り合う一対の棚板22どうしの間の空間として、収納部Sが形成されている。
図4に示すように、収納棚2は、上下方向Z及び左右方向Yに並ぶ状態で、複数の収納部Sを有する。
【0022】
図2及び
図3に示すように、棚板22は、前後方向Xにおける一端側で支柱21に固定支持され、他方側は開放されている。こうして、棚板22は、片持ち姿勢で支柱21に固定されている。棚板22は、平面視でU字状に形成されている。「U字状」とは、アルファベットのU字、又は、多少の異形部分を有していても全体としては概略的にU字とみなすことができる形状を意味する(以下、形状等に関して「状」を付して用いる他の表現に関しても同趣旨である)。U字状の棚板22は、容器7の底面の3辺を支持する。棚板22には、上方に向かって突出する突出ピン22Pが、U字の底部及び両側部の計3箇所に設けられている。
【0023】
本実施形態では、容器7として、レチクル(フォトマスク)を収容するレチクルポッドを用いている。容器7は、レチクルを収容する本体部71と、本体部71よりも上方において本体部71と一体化されたフランジ部76とを有する。本体部71は、平面視で矩形状に形成されている。容器7の本体部71の底面には、上下方向Zの上方に向かって窪んだ凹部74が3箇所に設けられている。凹部74は、上方ほど細い先細り形状に形成されており、凹部74の内面は傾斜面となっている。この凹部74は、棚板22に設けられた突出ピン22Pに対して上方から係合する。容器7が棚板22に載置される際には、凹部74の内面と突出ピン22Pとの係合作用により、仮に棚板22に対する容器7の位置が水平方向にずれていたとしても、その相対位置が適正な位置に修正される。
【0024】
図5に示すように、容器7には、給気口72と排気口73とが設けられている。
図5の模式図では理解のしやすさを優先しているために正確性を欠いているが、実際には、給気口72及び排気口73は、いずれも容器7の底面に形成されている。給気口72には、後述する気体供給装置3の吐出ノズル36が嵌合される。
【0025】
気体供給装置3は、それぞれの収納部Sに対して浄化気体を供給する。気体供給装置3は、複数の収納部Sのそれぞれにおいて、容器7が収納されている場合には、当該収納された容器7の内部に浄化気体を供給する。本実施形態の気体供給装置3は、複数の収納部Sを一定基準に従ってグループ化した上で、グループ(以下、「収納部群G」と言う。)毎に浄化気体を供給するように構成されている。なお、本実施形態では、同じ列に属する一群の収納部Sによって収納部群Gが構成されており、気体供給装置3は収納棚2の列毎に浄化気体を供給する(
図4を参照)。このように、本実施形態では、収納棚2は、複数の収納部Sを複数の収納部群Gに区分された状態で有し、気体供給装置3は、それぞれの収納部Sに対して、収納部群G毎に浄化気体を供給するように構成されている。
【0026】
図4及び
図5に示すように、気体供給装置3は、気体供給源31(GS : Gas Source)と、母配管32と、流量調整部33(MFC : Mass Flow Controller)と、接続配管34と、供給配管35とを備えている。気体供給源31は、浄化気体を貯蔵するタンクであり、複数の供給配管35で共用されている。浄化気体は、例えば窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスや、塵埃及び湿気が除去された清浄乾燥空気(clean dry air)等である。気体供給源31には、収納部群Gの個数(収納棚2の列数)に応じた個数の流量調整部33が、母配管32を介して接続されている。流量調整部33は、浄化気体の流量を計測する流量センサと、浄化気体の流量を変更調節する流量調節弁と、当該流量調節弁の作動を制御する内部制御部とを含む。流量調整部33は、流量センサによる検知結果に基づいて流量調節弁の作動を制御して、所定の目標流量となるように浄化気体の流量を調整する。
【0027】
複数の流量調整部33のそれぞれは、接続配管34及び供給配管35を介して、対応する収納部群Gに属する各収納部Sを構成する棚板22に設置された吐出ノズル36に接続されている。本実施形態では、供給配管35は分岐型に構成されている。供給配管35は、収納部群G毎に1つの主管35Aと、この主管35Aから分岐する複数の分岐管35Bとを有する。本実施形態では、収納棚2の段数と同数の分岐管35Bが、主管35Aから分岐している。分岐管35Bの先端部には吐出ノズル36が設けられており、この吐出ノズル36から浄化気体が吐出される。こうして、気体供給装置3は、それぞれの収納部Sに対して、収納部群G毎に、分岐管35Bを有する分岐型の供給配管35を介して、気体供給源31から浄化気体を供給する。
【0028】
上述したように、吐出ノズル36は、各収納部Sに収納された容器7の給気口72に嵌合される。容器7の給気口72には、給気用開閉弁(図示せず)が設けられている。給気用開閉弁は、スプリング等の付勢体によって閉じ状態に付勢されている。吐出ノズル36が給気口72に嵌合された状態で、吐出ノズル36から浄化気体が吐出されると、その圧力によって給気用開閉弁が開き、給気口72から容器7の内部に浄化気体が供給される。また、容器7の排気口73には、排気用開閉弁(図示せず)が設けられている。排気用開閉弁も、スプリング等の付勢体によって閉じ状態に付勢されている。所定量の浄化気体が供給されて容器7の内圧が高くなると、その圧力によって排気用開閉弁が開き、容器7の内部の浄化気体が排気口73から排出される。
【0029】
ここで、容器7の内部を浄化気体が流通する際の通気抵抗の大きさ(圧力損失)は、一律に定まる訳ではなく、各容器7に応じて異なり得る。具体的には、例えば製造主体の異なる容器7が混在している場合には、製造主体毎に、各容器7の内部を浄化気体が流通する際の通気抵抗の大きさが異なり得る。また、製造主体が同一であっても、例えば型式の異なる容器7が混在している場合には、同様に、各容器7の内部を浄化気体が流通する際の通気抵抗の大きさが異なり得る。この点を考慮し、本実施形態では、容器7が、その内部を浄化気体が流通する際の通気抵抗の大きさに応じて複数種別に区別されている。区別の単純化の観点からは、容器7は、その製造主体及び型式の少なくとも一方に応じて複数種別に区別されることが好ましい。本実施形態では、一例として、容器7がその製造主体だけに応じて複数種別に区別されているものとする。
【0030】
また、収納棚2は複数の収納部Sを有しているが、常に全ての収納部Sに容器7が収納されている訳ではない。それぞれの収納部Sに設けられた吐出ノズル36は、容器7が収納されておらず、容器7の給気口72に接続されていない状態では開放されており、浄化気体は吐出ノズル36から流れ出ていくことになる(
図5を参照)。
【0031】
気体供給装置3の説明に戻ると、本実施形態では、流量調整部33の下流側の接続配管34は、供給配管35のうち、主管35Aの中間部(より具体的には、中間点よりも一方の端部側にずれた位置)に接続されている。供給配管35(具体的には主管35A)は、接続部35cにて、接続配管34、流量調整部33、及び母配管32を介して気体供給源31に接続されている。そして、供給配管35は、接続部35cを含む接続領域Rcと、接続領域Rcよりも気体通流方向で下流側にある2つの端部領域Re(近位側端部領域Rep及び遠位側端部領域Red)とを含んでいる(
図7を参照)。近位側端部領域Repは、2つの端部領域Reのうち、接続部35cからの流路長が相対的に短い方の配管部における端部領域Reであり、遠位側端部領域Redは、接続部35cからの流路長が相対的に長い方の配管部における端部領域Reである。近位側端部領域Rep及び遠位側端部領域Redは、それぞれ下流側端部35eを含んでいる。なお、接続領域Rc、近位側端部領域Rep、及び遠位側端部領域Redは、それぞれ、例えば供給配管35における主管35Aの全長の5%〜40%程度の長さを占める領域とすることができる。
【0032】
本実施形態では、供給配管35は、接続領域Rcと遠位側端部領域Redとの間に中間領域Rmをさらに含んでいる。この中間領域Rmは、複数の領域にさらに細かく区分されても良いし、接続領域Rcと近位側端部領域Repとの間にも設けられても良い。
【0033】
搬送装置4は、収納部Sに対して物品としての容器7を搬送する。
図1に示すように、本実施形態の搬送装置4は、天井搬送車41と、コンベヤ44と、スタッカークレーン45とを含む。天井搬送車41は、天井レール95に沿って走行する走行体42と、走行体42から吊下支持された移載ユニット43とを有する。移載ユニット43は、容器7の上部のフランジ部76を把持した状態で、当該容器7をコンベヤ44に対して搬入及び搬出する。コンベヤ44は、例えばローラ式やベルト式等に構成され、仕切壁97の内部空間と外部空間との間で容器7を移動させる。
【0034】
スタッカークレーン45は、走行レール94(左右方向Y)に沿って走行する走行台車46と、走行台車46に立設されたマスト47と、このマスト47に案内される状態で昇降移動する昇降体48とを有する。昇降体48には、収納部Sとの間で容器7を移載する移載装置49が設置されている。移載装置49は、例えば前後方向Xに出退移動するフォーク等で構成される。
【0035】
制御部5(CU : Control Unit)は、搬送装置4の動作を制御する。
図6に示すように、制御部5は、搬送装置4を構成する天井搬送車41(OHV : Overhead Hoist Vehicle)、コンベヤ44(CV : Conveyor)、及びスタッカークレーン45(SC : Stacker Crane)の各動作を個別に制御する。また、本実施形態の制御部5は、収納部群G毎に1つずつ設けられる流量調整部33(
図6においてMFC1、MFC2、MFC3、・・・と表示)の動作を個別に制御する。また、本実施形態の制御部5は、後述する情報取得手段で得られる各種情報に基づいて、各容器7の種別を判定する。このように、本実施形態の制御部5は、搬送制御部と、流量制御部と、種別判別部とを含んでいる。
【0036】
各収納部Sに収納される容器7について、全ての容器7内の浄化を十分に行うためには、各収納部Sに供給される浄化気体の流量を極力均一化することが好ましい。かかる課題解決のためには、各収納部Sに一対一に対応させて流量調整部33を設けることも考えられる。しかし、一般に流量調整部33は高価であるため、収納部Sと同数の流量調整部33を設けるのでは、容器収納設備1の製造コストが大幅に上昇してしまう。特に、収納対象の容器7が小型のレチクルポッドであり、収納棚2の棚数(収納部Sの個数)が膨大となりがちな容器収納設備1では、製造コストの上昇が顕著となってしまう。そこで本実施形態では、収納棚2の各列に対応させて設定された収納部群G毎に1つずつ流量調整部33を設け、1つの収納部群Gに属する収納部Sについては、浄化気体の供給流量を単一の流量調整部33によって共通に制御する構成が採用されている。
【0037】
もちろん、収納部群G毎に1つずつの流量調整部33だけでは、収納部S毎の細かい流量調整は困難である。例えば上述したように、容器7の内部を浄化気体が流通する際の通気抵抗の大きさは各容器7に応じて異なり得る。また、発明者らの検討によれば、各流量調整部33から対応する供給配管35を通って供給される浄化気体の流れやすさは、当該供給配管35の全域で必ずしも等しい訳ではなく、供給配管35中の位置に応じて異なることが明らかになった。このため、1つの供給配管35(流量調整部33)からの浄化気体の流量は、同じ収納部群Gに属する全ての収納部Sにおいて必ずしも等しい訳ではなく、供給配管35の配管経路に対する収納部Sの位置に応じて異なることになる。
【0038】
例えば
図7に模式的に示すように、注目している収納部群Gに容器7が収納されていない状態で、供給配管35の接続領域Rcに対応する収納部Sにおける浄化気体の流量(排出量)は、端部領域Reに対応する収納部Sにおける浄化気体の流量よりも小さくなる。また、2つの端部領域Reの中でも、近位側端部領域Repに対応する収納部Sにおける浄化気体の流量は、遠位側端部領域Redに対応する収納部Sにおける浄化気体の流量よりも小さくなる。なお、
図7では、供給配管35の各分岐管35Bに併記された矢印の長さによって、浄化気体の流量の大小関係を定性的に表している。
【0039】
流量調整部33を収納部群G毎に1つずつ設けるようにした構成において、各容器7の通気抵抗の差異や、収納部Sの位置に応じた浄化気体の流量の差異を吸収するため、例えば収納部S毎にオリフィス(流体抵抗体の一例)を設置することも考えられる。しかし、微小なサイズのオリフィスを所望の内径を有するように形成するには高い加工精度が要求される。そして、本実施形態のように収納棚2の棚数(収納部Sの個数)が膨大となりがちな容器収納設備1では、多数のオリフィスを多くの異なる内径にて高精度に形成することは製造コストの観点から現実的ではない。コスト面の制約も考慮する場合には、加工精度をある程度低く抑えざるを得ないため、オリフィスの設置によって浄化気体の流量の均一化を図るには限界がある。
【0040】
そこで本実施形態では、収納棚2に容器7を収納するにあたり、各容器7の通気抵抗の差異や、収納部Sの位置に応じた浄化気体の流量の差異による影響が現れにくいように、搬送装置4の動作が制御される。言い換えれば、高精度加工のオリフィスを多数設置してコストアップを招くことなく、搬送装置4の動作制御だけによって、極力、各収納部Sに供給される浄化気体の流量の均一化を図っている。
【0041】
以下、
図8を参照して、浄化気体の流量均一化のための物品収納制御について説明する。物品収納制御において、制御部5は、大きく分けて2つの観点に基づいて搬送装置4の動作を制御する。第1の観点は、各容器7の通気抵抗の差異による影響を極力排除するという観点である。第2の観点は、各収納部群Gにおいて、収納部Sの位置に応じた浄化気体の流量の差異による影響を極力排除するという観点である。
【0042】
制御部5は、収納部Sに複数の容器7を収納するにあたり、第1の観点に基づき、同じ種別に属する容器7どうしを同じ収納部群Gに属する収納部Sに搬送するように搬送装置4の動作を制御する。天井搬送車41及びコンベヤ44によって容器7が入庫されてくると、当該容器7の種別が判定される(ステップ#01)。本実施形態では、容器収納設備1には、各容器7の種別に関する基礎情報を取得するための情報取得手段が設置されている。情報取得手段は、例えば各容器7に貼付されたバーコード又はICタグを読み取るリーダーや、容器の外観を撮影するカメラ等であって良い。例えばバーコード又はICタグが当該容器7の製造主体や型式等に関する情報を示すものとされ、制御部5(種別判別部)は、リーダーからなる情報取得手段によって読み取った製造主体の情報に基づいて容器種別を判別するように構成されると良い。或いは、製造主体毎の容器7の外観に係る複数のテンプレート画像が予め整備され、制御部5は、テンプレート画像とカメラからなる情報取得手段で得られる撮影画像との画像認識処理(マッチング処理)に基づいて容器種別を判別するように構成されても良い。
【0043】
容器7の種別が判定されると、同じ種別に属する他の容器7が既にいずれかの収納部Sに収納されているか否かが判定される。言い換えれば、当該種別の容器7に対して割り当てられた収納部群Gが既に存在するか否かが判定される(#02)。割り当てられた収納部群Gが存在する場合には(#02:Yes)、その収納部群Gに対して容器7を搬送する(#03)。一方、割り当てられた収納部群Gが存在しない場合、言い換えれば当該容器7と同じ種別に属する容器7が未だ収納されていない場合には(#02:No)、空の収納部群Gのいずれかに対して容器7を搬送する(#04)。そして、その搬送先の収納部群Gを、当該容器7と同じ種別に属する他の容器7の収納先に設定する(#05)。
【0044】
ステップ#01〜ステップ#05の処理において搬送先の収納部群Gが決定されると、次に、当該収納部群Gの中でいずれの収納部Sに容器7を収納するかが判定される。本実施形態では、制御部5は、それぞれの収納部群Gにおいて、当該収納部群Gに含まれる全ての収納部Sに容器7が収納されていない状態から最初に容器7を収納するにあたり、上述した第2の観点に基づき、供給配管35の端部領域Reから浄化気体が供給される収納部Sに対して容器7を搬送するように搬送装置4の動作を制御する。このとき、制御部5は、2つの端部領域Reのうち、接続部35cからの流路長が相対的に長い方の配管部における端部領域Re(遠位側端部領域Red)から浄化気体が供給される収納部Sに対して最初に容器7を搬送するように搬送装置4の動作を制御する。
【0045】
具体的には、まず、供給配管35の遠位側端部領域Redに対応付けられた複数の収納部Sに、容器7が未収納のものが存在するか否かが判定される(#06)。各収納部Sにおける容器7の収納状態は、例えば各棚板22に設置された在荷センサによる検知結果に基づいて判定しても良いし、容器収納設備1の全体を統合制御するより上位の制御装置から管理情報を取得して当該情報に基づいて判定しても良い。
【0046】
判定の結果、未収納の収納部Sが存在していれば(#06:Yes)、遠位側端部領域Redに対応付けられた未収納の収納部Sのうち、いずれかの収納部Sに容器7を収納する(#07)。遠位側端部領域Redに対応付けられたいずれかの収納部Sに容器7を収納するにあたっては、制御部5は、供給配管35の下流側端部35e(
図7を参照)から浄化気体が供給される収納部Sに対して優先的に容器7を搬送するように搬送装置4の動作を制御することが好ましい。例えば、供給配管35の下流側端部35eから浄化気体が供給される収納部Sがその時点で未収納であれば、当該下流側端部35eに対応付けられた収納部Sに対して容器7を搬送すると良い(
図9を参照)。また、下流側端部35eに対応付けられた収納部Sが既に収納済であれば、未収納の収納部Sのうち、より下流側にある収納部Sに対して容器7を搬送すると良い。
【0047】
遠位側端部領域Redに対応付けられた全ての収納部Sが収納済であれば(#06:No)、制御部5は、下流側端部35eにより近い位置にある(接続部35cからより離れた位置にある)領域に対応付けられた収納部Sに対して優先的に容器7を搬送するように搬送装置4の動作を制御する。本実施形態では、制御部5は、供給配管35の近位側端部領域Rep→中間領域Rm→接続領域Rcの順に優先的に、各領域に対応付けられた収納部Sに対して容器7を搬送する(
図10を参照)。言い換えれば、制御部5は、供給配管35の接続領域Rcから浄化気体が供給される収納部Sに対して劣後的に容器7を搬送するように搬送装置4の動作を制御する。なお、「劣後的」は、「優先的」とは反対の概念であり、順序をより遅らせることを意味する。
【0048】
具体的には、供給配管35の近位側端部領域Repに対応付けられた複数の収納部Sに、容器7が未収納のものが存在するか否かが判定される(#08)。未収納の収納部Sが存在していれば(#08:Yes)、近位側端部領域Repに対応付けられた未収納の収納部Sのうち、いずれかの収納部Sに容器7を収納する(#09)。近位側端部領域Repに対応付けられたいずれかの収納部Sに容器7を収納するにあたっては、制御部5は、供給配管35の下流側端部35eから浄化気体が供給される収納部Sに対して優先的に容器7を搬送するように搬送装置4の動作を制御することが好ましい。この点は、遠位側端部領域Redでの動作制御と同様に考えることができる。
【0049】
近位側端部領域Repに対応付けられた全ての収納部Sが収納済であれば(#08:No)、次に、供給配管35の中間領域Rmに対応付けられた複数の収納部Sに、容器7が未収納のものが存在するか否かが判定される(#10)。未収納の収納部Sが存在していれば(#10:Yes)、中間領域Rmに対応付けられた未収納の収納部Sのうち、いずれかの収納部Sに容器7を収納する(#11)。中間領域Rmに対応付けられたいずれかの収納部Sに容器7を収納するにあたっては、未収納の収納部Sのうち、より下流側にある収納部Sに対して容器7を搬送すると良い。
【0050】
中間領域Rmに対応付けられた全ての収納部Sが収納済であれば(#10:No)、接続領域Rcに対応付けられた未収納の収納部Sのうち、いずれかの収納部Sに容器7を収納する(#12)。接続領域Rcに対応付けられたいずれかの収納部Sに容器7を収納するにあたっては、未収納の収納部Sのうち、より下流側にある収納部Sに対して容器7を搬送すると良い。
【0051】
このように、本実施形態の制御部5は、同じ種別に属する容器7どうしを同じ収納部群Gに属する収納部Sに搬送するように、搬送装置4の動作を制御する(#01〜#05)。このようにすれば、内部を浄化気体が流通する際の通気抵抗の大きさが同程度の容器7どうしが、同じ収納部群Gに属する収納部Sに搬送される。つまり、通気抵抗の大きさが同程度の複数の容器7どうしが、通気抵抗の大きさに応じて分けられて、いずれかの収納部群Gに集約して収納される(
図10を参照)。よって、同じ収納部群Gに属する収納部Sに収納される複数の容器7間で、実際に供給される浄化気体の流量を極力均一化することができる。なお、
図10では、各容器7の内部に表示された大文字のアルファベットは、製造主体(A社、B社、C社、・・・)を表している。
【0052】
また、本実施形態の制御部5は、供給配管35の端部領域Re(遠位側端部領域Red)に対応付けられた収納部Sに対して優先的に、かつ、接続領域Rcに対応付けられた収納部Sに対して劣後的に容器7を搬送するように、搬送装置4の動作を制御する(#06〜#12)。このようにすれば、容器7が未収納の状態での浄化気体の供給流量が相対的に高い収納部Sから、供給流量が相対的に低い収納部Sに向かって順に容器7が収納されていく。この場合、収納済の容器7が比較的少ない状態では、浄化気体が流れやすい収納部Sにおいて優先的に吐出ノズル36が容器7の給気口72に嵌合され、開放状態とされるのは浄化気体が流れにくい収納部Sの吐出ノズル36が主となる。このため、容器7が未収納の収納部Sからの浄化気体の排出量を少なく抑えることができる。よって、実際に収納された容器7内に、目標流量に近い流量の浄化気体を適切に供給することができる。同様の制御を繰り返すことで、その都度、実際に収納された容器7内に目標流量に近い流量の浄化気体を適切に供給することができる。結果的に、分岐型の供給配管35を介して各収納部Sに供給される浄化気体の流量を極力均一化することができる。
【0053】
上記のようにして、特定の収納部群Gに属する特定の収納部Sに搬送対象の容器7が収納されると、当該収納部群Gに対応付けて設けられた流量調整部33により、浄化気体の流量を調整する(#13)。流量調整部33は、例えば当該収納部群Gに収納されている容器7の個数とその種別とに応じて浄化気体の流量を調整する。例えば流量調整部33は、容器7の種別に応じて種別毎に設定された基準流量に、容器7の収納数と当該収納数が小さいほど大きくなる補正係数とを乗じて算出される目標流量となるように、浄化気体の流量を調整する。
【0054】
以上の処理を、容器7が入庫されてくる毎に繰り返し実行する。この場合において、特定の収納部群Gにおける特定の収納部Sへの実際の搬送処理(#06〜#12)と、次に入庫されてくる容器7についての搬送先の収納部群Gの決定処理(#01〜#05)とを、並行して実行するようにしても良い。
【0055】
〔第2実施形態〕
容器収納設備の第2実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態の容器収納設備1は、収納棚2の具体的構成が上記の第1実施形態とは異なっている。また、それに伴い、浄化気体の流量均一化のための物品収納制御の具体的処理内容も、上記の第1実施形態とは一部異なっている。以下、本実施形態に係る容器収納設備1について、主に第1実施形態との相違点について説明する。なお、特に明記しない点に関しては、第1実施形態と同様であり、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0056】
本実施形態では、
図11に示すように、収納棚2に備えられる収納部S(棚板22)の段数が全ての列(収納部群G)において同一ではなく、一部の列の段数が他の列の段数とは異なっている。例えば、第1実施形態と同様の収納棚2の一部の列において、いくつかの棚板22を支柱に固定しないようにすることで、一部の列の段数が他の列の段数よりも少なくなっている。ここで、第1実施形態の収納棚2と同じ構造を維持している部分の段数(収納部Sの個数)を「基準個数」と定義する。この基準個数の収納部Sが属する収納部群Gを、本実施形態では「通常収納部群Gn」と言う。また、いくつかの棚板22が固定されておらず基準個数よりも少ない個数の収納部Sが属する収納部群Gを、本実施形態では「特別収納部群Gs」と言う。本実施形態の収納棚2は、収納部群Gとして、通常収納部群Gn及び特別収納部群Gsの両方を有している。なお、通常収納部群Gnと特別収納部群Gsとで、供給配管35の接続領域Rc、中央領域Rm、及び端部領域Reの位置が多少ずれていても良い(
図12を参照)。
【0057】
また、本実施形態では、容器7は、その製造主体及び型式の両方に基づき、製造主体と型式との組み合わせに応じて複数種別に区別されている。製造主体と型式との組み合わせに応じた種別分けを行うことで、各容器7の内部を浄化気体が流通する際の通気抵抗の大きさに応じた区別を、比較的簡単な手法によって比較的精緻に行うことができる。特定の製造主体による特定の型式の容器7では、その内部を浄化気体が流通する際の通気抵抗が、他の容器7における通気抵抗に比べて有意に高くなる場合がある。この突出する通気抵抗(予め定められた基準抵抗値以上の通気抵抗)を有する容器7は、制御部5(種別判別部)による容器種別の判別と同時に抽出することができる。
【0058】
本実施形態では、制御部5は、通気抵抗が予め定められた基準抵抗値以上の容器7を、特別収納部群Gsに属する収納部Sに搬送するように搬送装置4の動作を制御する。特別収納部群Gsの各収納部Sへの供給配管35の分岐数は、通常収納部群Gnの各収納部Sへの供給配管35の分岐数よりも少ないので、供給される浄化気体の大がかりな流量調整を行わずとも、特別収納部群Gsの各収納部Sへの供給流量を多くすることができる。よって、通気抵抗が大きい容器7に対しても、それを特別収納部群Gsの収納部Sに収納するという簡単な制御で、容器7内の浄化を適切に行うことができる。
【0059】
本実施形態でも、制御部5は、同じ種別に属する容器7どうしを同じ収納部群G(通常収納部群Gn又は特別収納部群Gs)に属する収納部Sに搬送するように、搬送装置4の動作を制御する(
図12を参照)。このようにすれば、通気抵抗が大きい容器7に対しても簡単な制御でその内部の浄化を適切に行いつつ、同じ収納部群Gに属する収納部Sに収納される複数の容器7間で、実際に供給される浄化気体の流量を極力均一化することができる。なお、
図12では、各容器7の内部に表示された大文字のアルファベットは製造主体(A社、B社、C社、・・・)を表し、小文字のアルファベットは型式(x型、y型、z型、・・・)を表している。
【0060】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の各実施形態では、それぞれの収納部群Gに容器7を収納するにあたり、供給配管35の端部領域Reに対応付けられた収納部Sに対して優先的に、かつ、接続領域Rcに対応付けられた収納部Sに対して劣後的に容器7を搬送する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば
図13に示すように、供給配管35の各領域とは無関係に、搬送先の収納部群Gに属するいずれかの収納部Sに対してランダムに容器7を搬送しても良い。
【0061】
(2)上記の各実施形態では、それぞれの収納部群Gにおいて当該収納部群Gに含まれる収納部Sに容器7を収納するにあたり、供給配管35の下流側端部35eから浄化気体が供給される収納部Sに対して最初に容器7を搬送する構成を主に想定して説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば
図14に示すように、端部領域Reのうち、下流側端部35e以外の位置に設けられた分岐管35Bから浄化気体が供給される収納部Sに対して最初に容器7を搬送しても良い。
【0062】
(3)上記の各実施形態では、近位側端部領域Repに対応付けられた収納部Sに比べて、遠位側端部領域Redに対応付けられた収納部Sに対して優先的に容器7を搬送する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば
図15に示すように、近位側端部領域Repと遠位側端部領域Redとの間に優劣をつけずに、それらに対応付けられた収納部Sに対して適宜振り分けて容器7を搬送しても良い。
【0063】
(4)上記の各実施形態では、収納棚2に容器7を収納する際の収納位置に関する制約を少なくするべく、収納部群Gに対する容器種別の割り当てを事後的に行う構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、各収納部群Gに対して容器種別を予め割り当てておき、容器7を収納するにあたり、同じ種別に属する容器7が未収納の場合でも、当初からの割り当てに応じた収納部群Gに、容器7を搬送するようにしても良い。
【0064】
(5)上記の各実施形態では、接続配管34が供給配管35の中間部に接続され、供給配管35が接続領域Rcの両側に2つの端部領域Reを含む構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば供給配管35が流量調整部33に直接接続され、供給配管35が接続領域Rcの下流側に端部領域Reを1つだけ含んでも良い。
【0065】
(6)上記の各実施形態では、同じ列に属する一群の収納部Sによって収納部群Gが構成されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば同じ段に属する一群の収納部Sによって収納部群Gが構成されても良い。或いは、例えば
図16に示すように、複数段複数列をなすように格子状に配列された一群の収納部Sによって収納部群Gが構成されても良い。或いは、その他の各種形状をなすように配列された一群の収納部Sによって収納部群Gが構成されても良い。
【0066】
(7)上記の各実施形態では、容器7がレチクルを収容するレチクルポッドである構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば容器7は、複数枚の半導体ウェハを収納するFOUP(Front Opening Unified Pod)であっても良いし、食品や医薬品等を収容するものであっても良い。
【0067】
(8)上述した各実施形態(上記の各実施形態及びその他の実施形態を含む;以下同様)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。