(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内燃機関のシリンダ内に形成される燃焼室の軸方向端部に先端部が露出して配置され、前記先端部において互いに対向して設けられる中心電極および接地電極を有する点火プラグと、
前記燃焼室の軸方向端部に噴出した気流によって前記中心電極と前記接地電極との間に互いの対向方向と直交する方向へ略U字状に延びて形成された火花放電路を含む略二次元平面に対して、磁界ベクトルが略垂直に貫く方向に磁界を形成する磁界形成手段と、を備え、前記略二次元平面は前記燃焼室の軸方向と略直交する平面であり、前記磁界ベクトルは前記軸方向に沿うことを特徴とする、
内燃機関の点火装置。
【背景技術】
【0002】
従来、レールガンの原理を利用してローレンツ力でプラズマ(又は火花放電)を移動させて燃焼室に飛び出させ、燃焼室内の点火改善を図ったレールプラグが知られている。
図14及び
図15は、このようなレールプラグ100を示す図である。
図14に示すように、レールプラグ100は、互いに隙間3をあけて平行に配置された2本の電極1,2を備える。ここでは、電極1が陽極であり、電極2が陰極の例を示す。
【0003】
2本の電極1,2間に電圧を印加して電極1,2間の隙間3にプラズマPを発生させる。このプラズマPによって電極1から電極2へと電流が流れる放電路4が形成される。この放電路4には、そこを流れる電流によってローレンツ力Fが作用する。
図15は、導体に電流が流れたときにローレンツ力Fが作用する原理を示す。
図15に示すように、N極性の磁石M1とこれに対向して配置されたS極性の磁石M2との間に磁界Bが形成され、この磁界Bでは磁界ベクトルの向きは磁石M1から磁石M2に向かっている。ここで電流の流れ方向、磁界の方向およびローレンツ力の向きは互いに直交する関係になっている。
【0004】
このような磁界B中に置かれている導体Dに電流Iが
図15の紙面奥側から手前側に流れると、フレミング左手の法則にしたがって、導体Dには
図15中の
右側へ向かうローレンツ力Fが作用する。このときのローレンツ力FはF=(I×B)Lで表される。ここで、Lは磁界B中における導体Dの長さである。
【0005】
図14を再び参照すると、このようなローレンツ力Fを電極1,2間に発生したプラズマPに作用させることによって、プラズマPを弾体P1として電極1,2間の隙間3から燃焼室内に飛び出させることで、燃焼室内の点火改善を図ることができる。
【0006】
なお、特許文献1には、燃焼室に噴出されるプラズマの向きをローレンツ力によって変更することで、気中放電に中心電極及び
接地電極のそれぞれの特定位置が集中して使用されないようにして各電極の激しい消耗を防止する技術が記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。また、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの構成を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
【0024】
図1(a)は本発明の第1実施形態である内燃機関の点火装置(以下、単に「点火装置」とだけいう)10を示す図であり、
図1(b)は
図1(a)中のA−A断面図であり、
図1(c)は
図1(b)中のC−C断面図である。
【0025】
点火装置10は、例えばガソリン等の燃料を燃焼させて動力を得る内燃機関に適用される。内燃機関は、略円柱状の空間からなる燃焼室20を含む。燃焼室20は、シリンダ22内に形成されている。シリンダ22は、エンジンブロックEBの内部に中空状に設けられている。シリンダ22内には、ピストン24が配置されている。ピストン24は、シリンダ22の円筒状の内壁面に摺接しつつシリンダ軸方向に沿って往復移動可能に設けられている。
図1(a)では、ピストン24が上死点にある状態が示されており、シリンダ22およびピストン24の中心軸Xが一点鎖線で示されている。
【0026】
本実施形態では、シリンダ22の端面23は、略円錐状のテーパー面に形成されている。シリンダ23の略円錐状の端面23は、エンジンヘッドEHに形成される。シリンダ22の端面23と上死点位置にあるピストン24の頂面(端面)24aとの間には、略三角錐状の空間からなる燃焼室端部(燃焼室の軸方向端部)20aが形成されている。シリンダ22の端面23の中央位置には、点火プラグ26が配置されている。点火プラグ26は、シリンダ22内の燃焼室20に対して気密状態で取り付けられている。また、本実施形態では、点火プラグ26は、シリンダ22の中心軸Xと同心状に配置されている。
【0027】
点火プラグ26の先端部27は、燃焼室端部20aに露出した状態で配置されている。点火プラグ26は、
図1(c)に示すように、燃焼室端部20aに露出した先端部27に、中心軸Xに対応する位置で軸方向に突出する中心電極28を有する。また、点火プラグ26は、接地電極30を先端部27に有する。本実施形態では、接地電極30の突出長さが中心電極28よりも大きく形成されている。中心電極28と接地電極30とは、軸方向(X)と直交する方向に所定の隙間を隔てて互いに平行に対向している。
【0028】
なお、本実施形態では、中心電極28が陰極で、接地電極30が陽極である場合について例示するが、これに限定されるものではなく、これとは逆に中心電極28が陽極で接地電極30が陰極であってもよい。
【0029】
図1(a)を再び参照すると、シリンダ22の端面23には、吸気ポートおよび排気ポート(いずれも図示せず)が設けられる。吸気ポートからは例えば燃料と空気の混合ガスが燃焼室端部20a内に噴出されて気流Gが形成される。気流Gは、燃焼室端部20a内において旋回流を
形成してもよい。また、排気ポートは、燃焼室20内での燃焼によって生じた排ガスを排気する機能を有する。
【0030】
シリンダ22の端面23には、点火プラグ26に隣接して第1磁性体32が配置されている。また、ピストン24の頂面24aであって上記第1磁性体32に対向する位置には、第2磁性体34が配置されている。第1実施形態では、第1磁性体32がS極(一方側極性)の永久磁石で構成され、第2磁性体34がN極(他方側極性)の永久磁石で構成されている。
【0031】
図1(a),(b)に示すように、第1磁性体32は、点火プラグ26の先端部27の周囲を取り囲む円筒状をなしている。これに対し、第2磁性体34は、第1磁性体32と略同一の直径を有する円柱状をなしている。第1磁性体32は、テーパー面をなすシリンダ22の端面23と面一となるように配置され、第2磁性体34はピストン24の頂面24aと面一となるように配置されるのが好適である。このように各磁性体32,34が面一に配置すれば、燃焼室端部20aに噴出される気流の流れを阻害しない利点がある。ただし、各磁性体32,34は燃焼室端部20a側に僅かに突出して設けられてもよいし、あるいは、シリンダ22の端面23やピストン24に埋設されてもよい。
【0032】
このように配置された第1及び第2磁性体32,34によって、
図1(a),(c)に示すように、燃焼室端部20aにおいて第1磁性体32と第2磁性体34との間の空間には、第2磁性体34から第1磁性体32へ向かう磁界ベクトルB1を含む磁界Bが形成される。この磁界Bにおける磁界ベクトルB1は、中心軸Xに沿う軸方向に向いている。
【0033】
図1(a),(b)に示すように本実施形態の点火装置10では、点火プラグ26に電圧が印加されると、中心電極28と接地電極30との間に火花放電路Pが形成される。火花放電路Pは、燃焼室端部20a内に噴出した気流Gによって流されることで、中心電極28と接地電極30との間に互いの対向方向と直交する方向へ略U字状に延びて形成される。このように形成された火花放電路Pは、軸方向と直交する略二次元平面内に含まれるように形成される。
【0034】
より詳しくは、火花放電路Pは、
図1(b)に示すように、矢印で示される電流の流れ方向(反時計回り方向)に沿って順に、接地電極30から横方向(すなわち軸方向と直交する方向)へ延びる第1放電部分P1と、第1放電部分P1に連なって略円弧状に延びる第2放電部分P2と、第2放電部分P2に連なって中心電極28に戻るように横方向(すなわち軸方向と直交する方向)へ延びる第3放電部分P3からなる。そして、このような火花放電路Pを含む略二次元平面に対して、磁界Bを構成する磁界ベクトルB1が略垂直に貫く方向に形成されている。これにより、
図1(b),(c)に示されように、火花放電路Pのうち第1放電部分P1および第3放電部分P3には、外側へ向かうローレンツ力Fがそれぞれ作用し、その結果、火花放電路Pが伸長されることになる。
【0035】
図2は、火花放電路Pにローレンツ力が作用する原理を説明するための図である。
【0036】
永久磁石でそれぞれ構成された第1及び第2磁性体32,34の間には、N極の第2磁性体34からS極の第1磁性体32へ向かる磁界Bが形成され、この磁界B中に火花放電路Pが存在する。ここでは火花放電路Pにおいて、電流が紙面表面側から奥側へ流れる場合を想定する。火花放電路Pは磁界Bを形成する磁界ベクトルB1に垂直である。
【0037】
この場合、火花放電路Pを流れる電流Iはその作用によって火花放電路Pの周囲に磁界を形成するが、その磁界ベクトルB2の向きは火花放電路Pを中心とした時計回り方向の向きになる。そのため、火花放電路Pの左側では、第1および第2磁性体32,34で形成される磁界ベクトルB1の方向と、電流Iで形成される磁界ベクトルB2の方向が一致して、磁束密度が高くなる。
【0038】
これに対し、火花放電路Pの右側では、第1および第2磁性体32,34で形成される磁界ベクトルB1の方向と、電流Iで形成される磁界ベクトルB2の方向が反対になって、磁束密度が低くなる。このことによって、火花放電路Pには、火花放電路Pを右側へ移動させるローレンツ力Fが作用することになる。ここで、火花放電路Pに作用する単位長さ当たりのローレンツ力は、火花放電路Pに流れる電流Iと第1及び第2磁性体32,34によって形成される磁界Bの積(F=I×B)となる。
【0039】
その結果、
図1に示した形態の火花放電路Pでは、火花放電路Pを含む略二次元平面において、軸方向Xに垂直で、かつ、気流によって略U字状に伸長した火花放電路Pの第1放電部分P1と第3放電部分P3とを互いに広げる方向に引っ張るようにローレンツ力Fが作用する。このようなローレンツ力の作用によって、火花放電路Pの伸長長さがより長く引き延ばされ、火花放電路Pによって囲まれた領域の面積が広くなる。したがって、火花放電路Pが例えば混合ガスからなる気流Gと接触する長さが延長され、燃焼室端部20a内における点火性の改善を図ることができる。
【0040】
図3は、ローレンツ力の試算に用いたモデルを示す図である。このモデルでは、火花放電路Pの直径0.5mm、長さ1mm、温度2000Kの円柱状体と想定し、その周囲にある気流Gを直径2mm、長さ1mm、温度700Kの円筒状体と想定し、燃焼室端部20a内の磁界Bを1T、火花放電電流(I)を0.1Aとした。この場合、火花放電路3に作用するローレンツ力Fは、下記の式(1)のように算出できる。
・磁界B:1[T]=1[Wb/m
2]=1[V・s/m
2]
・電流I:0.1[A]
・ローレンツ力F(単位長さ当たり)=B×I=1[T]×0.1[A]
=1×0.1[V・A・s/m
2]=0.1[W][s/m
2]=0.1×0.1[kgf・m/s][s/m
2]
=1×10
-2[kgf/m]=10[kgf/mm]=100[N/mm] …(1)
【0041】
火花放電路Pの体積Vp及び質量Mp、気流Gの体積Vg及び質量Mg、並びに、合計質量Mpgは、下記の式(2),(3),(4)のように算出できる。
・Vp=0.2×10
-9[m
3]、密度ρp=1.8[kg/m
3]、Mp=0.04×10ー9[kg・s
2/m] …(2)
・Vg=2.9×10
-9[m
3]、密度ρg=5.7[kg/m
3]、Mp=1.1×10ー9[kg・s
2/m] …(3)
・Mpg=Mp+Mg=1.14×10ー9[kg・s
2/m] …(4)
【0042】
したがって、火花放電路Pに加わる加速度a、及び、火花放電路Pの移動速度v及と移動距離dは、下記の式(5),(6),(7)のように算出できる。
・加速度a=F/Mpg=1×10
4[m/s
2] …(5)
・移動速度v=a×t=10[m/s] …(6)
・移動距離d=(v×t)/2=0.5×10
-2[mm] …(7)
【0043】
上記の式(2)〜(7)を用いて、磁界Bと電流Iが変化したときのローレンツ力Fを計算して、
図4(a)のグラフを作成した。
図4(a)のグラフでは、横軸が磁界B、縦軸がローレンツ力Fを表す。また、
図4(a)に示したローレンツ力Fが時間tの期間だけ作用した場合の火花放電路Pの移動距離dを計算して、
図4(b)のグラフを作成した。
図4(b)のグラフでは、横軸が時間t、縦軸が移動距離dを表す。
【0044】
図4(a)のグラフ中に破線矢印で示されるように、磁界Bが1Tで放電電流Iが100mAのとき、ローレンツ力F100N/mmとなり、この状態が時間1msだけ継続したとすると、
図4(b)中に破線矢印で示されるように、火花放電路Pの速度vは0m/sから10m/sに増加して、その移動距離dが5mmとなる。
【0045】
以上の試算結果から明らかなように、本実施形態の点火装置10では、
図14ないし
図16を参照して上述した従来のレールプラグに比べて、より低い電流で同等水準の火花放電路(プラズマ)の移動が可能であることが判る。
【0046】
図5は、第1実施形態の点火装置10の作用を説明するための
図1(b)と同様の図である。
図5において、ローレンツ力Fが作用しない場合の火花放電路P´を破線状態で示している。上述したように、本実施形態の点火装置10によれば、気流Gによって略U字状に伸長した火花放電路Pが、ローレンツ力Fによって両側へ引っ張られることによって火花放電路Pの伸長長さがより長く引き延ばされ、火花放電路Pによって囲まれた領域の面積が広くなる。したがって、火花放電路Pが例えば混合ガスからなる気流Gと接触する長さが延長され、燃焼室端部20a内における初期火炎が拡大して点火性(着火性)を改善できる。
【0047】
なお、上記においては、シリンダ22の端面23を構成するエンジンヘッドEHにS極の第1磁性体32を設けるとともにピストン24にN極の第2磁性体34を設けてピストン24からエンジンヘッドEHに向かう磁界ベクトルB1を形成したが、これに限定されるものではない。これとは反対に、エンジンヘッドEHにN極の磁性体(永久磁石)、ピストン24にS極の磁性体(永久磁石)を設けて磁界ベクトルを逆向きに形成してもよい。この場合、火花放電路Pの電流流れ方向を上記とは逆方向、すなわち、陽極である中心電極28から陰極である接地電極30に流すようにすれば、ローレンツ力Fが火花放電路Pを広げるように作用することになる。
【0048】
次に、
図6を参照して第2実施形態の点火装置12について説明する。
図6は、点火装置12を示す
図1(a)と同様の図である。以下では、本実施形態の点火装置12が上記点火装置10と相違する構成について主として説明し、同一構成については同一の参照符号を用いて説明を省略する。
【0049】
点火装置12は、第1磁性体32および第2磁性体34からなる磁界形成手段を備える。第1磁性体32は、シリンダ22の端面23を形成するエンジンヘッドEHに設けられている点は上記点火装置10と同じである。すなわち、S極の永久磁石からなる円筒状の第1磁性体32は、点火プラグ26の先端部27の周囲において燃焼室端部20aに露出した状態で配置されている。
【0050】
本実施形態では、N極の永久磁石からなる第2磁性体34が、ピストン24にではなく、エンジンヘッドEHに設けられている。第2磁性体34は、第1磁性体32の外周側に間隔をあけた位置で燃焼室端部20aに円環状に露出した状態で配置されている。このように磁界形成手段が構成される場合でも、第2磁性体34から第1磁性体32に向かって曲線状に形成される磁界ベクトルB1が、火花放電路Pを含む略二次元平面を略垂直に貫く。その結果、上記点火装置10の場合と同様に、本実施形態の点火装置12においても、気流Gによって略U字状に伸長した火花放電路Pが、ローレンツ力Fによって両側へ引っ張られることによって火花放電路Pの伸長長さがより長く引き延ばされ、火花放電路Pによって囲まれた領域の面積が広くなる。したがって、火花放電路Pが例えば混合ガスからなる気流Gと接触する長さが延長され、燃焼室端部20a内における初期火炎が拡大して点火性(着火性)を改善できる。
【0051】
また、本実施形態の点火装置12によれば、永久磁石からなる第2磁性体34がエンジンヘッドEHに設けられているため、例えば水冷等のよってエンジンヘッドEHを冷却することによってキュリー温度以下の温度に保つことができ、第2磁性体34の磁力低下を抑制できる。
【0052】
図7は、第3実施形態の点火装置13を示す
図1(a)と同様の図である。以下では、本実施形点火装置13が上記点火装置10と相違する点について主として説明し、同一構成については同一の参照符号を用いて説明を省略する。
【0053】
本実施形態の点火装置13は、第1磁性体32及び第2磁性体34を含む磁界形成手段を備える。第1磁性体32は、点火プラグ26の先端部27に隣接する位置で燃焼室端部20aに露出してエンジンヘッドEHに設けられている。第1磁性体32の一方側端部は、燃焼室端部20a内において略U字状に形成される火花放電路Pに対向して配置されている。また、例えば棒状をなす第1磁性体32の他方側端部の周囲には、コイル36が巻回されている。コイル36には、電源38とスイッチ40とが直列に接続されている。本実施形態では、第1磁性体32は、永久磁石ではなく、例えば鉄又は鉄系等の強磁性体で構成され、スイッチ40がオンしてコイル36に電流が流れたとき一方側端部がS極に磁化される電磁石となっている。
【0054】
本実施形態では、第2磁性体34もまた、永久磁石ではなく、例えば鉄又は鉄系等の強磁性体で構成されている。第2磁性体34は、ピストン24の頂面24aにおいて第1磁性体32に対向する位置に配置されている。これにより、
図7に示す位置にピストン24が上昇したときに第1磁性体32がS極に磁化されると、第2磁性体34が分極によってN極に磁化されたような状態になる。これにより、第1磁性体32と第2磁性体34との間に、第2磁性体34から第1磁性体32へ向かう磁界ベクトルB1を含む磁界Bが形成される。この磁界Bにおける磁界ベクトルB1は、点火プラグ26の先端部27の中心電極28及び接地電極30に、気流Gによって略U字状に形成される火花放電路Pを含む略二次元平面に対して略垂直に貫く。その結果、上記点火装置10と同様の作用効果を奏する。
【0055】
また、本実施形態の点火装置13では、コイル36への通電は、消費電力低減のために、点火プラグ26によって火花放電路Pが形成されている期間(点火期間)だけで良い。これは、スイッチ40をオンさせる時間期間を、点火プラグ26に電圧印加する時間期間と同期させることによって実現できる。
【0056】
さらに、コイル36に流れる電流の大きさを内燃機関の負荷や、シリンダ22内の圧力、温度及び気流速度等に応じて変化させて、誘起される磁界Bの強度を変化させてもよい。これにより、内燃機関の作動状態に応じて、燃焼室端部20aにおける点火状態を最適化でき、内燃機関の燃費や出力を向上させることができる。
【0057】
なお、本実施形態では、コイルへの通電によって磁化される第1磁性体32を1つだけ設けた例について説明したが、複数の第1磁性体をシリンダ22の端面23に設けてもよい。また、ピストン24に設ける第2磁性体34は、第1磁性体32が磁化される極性と反対の極性を有する永久磁石を用いてもよい。
【0058】
次に、
図8を参照して、第4実施形態の点火装置14について説明する。
図8は、第4実施形態である点火装置14を示す、
図1(a)と同様の図である。以下においては、本実施形態の点火装置14が第1及び第3実施形態の点火装置10,13と相違する点について主として説明し、同一の構成については同一の参照符号を用いて説明を省略する。
【0059】
図8に示すように、点火装置14は、第3実施形態の点火装置13と同様に、シリンダ22の端面23に設けられた第1磁性体32と、ピストン24に設けられた第2磁性体34とによって磁界形成手段が構成される。第1磁性体32には、コイル36が巻回されている。図示を省略しているが、コイル36は、電源38及びスイッチ40に直列に接続されている。スイッチ40には、例えばトランジスタ等を用いるのが好適である。
【0060】
本実施形態では、第1磁性体32及び第2磁性体34は、シリンダ22の外部で磁性材からなる磁気回路構成部材42によって磁気的に接続されて、閉磁路を構成する。より詳しくは、第1磁性体32には、燃焼室端部20aとは反対側の端部に略L字状の第1磁気回路部材42aの一端が接続されている。第1磁気回路構成部材42aの他端部は、ブロック状の磁性体として形成され、シリンダ22の内壁面に露出して配置されている。ピストン24には、軸状の磁性体からなる第2磁気回路構成部材42cが配置されている。第2磁気回路構成部材42cの一端は第2磁性体34に接続され、その他端がピストン24の外周側面に露出している。この露出した位置で、第2磁気回路構成部材42cの他端部は、微小隙間を介して、第1磁気回路構成部材42aの他端部42bに対向している。このようにして、第1磁性体32と第2磁性体34とが磁気的に接続されて、閉磁路を構成している。このような閉磁路を構成することで磁界Bの形成効率が高まり、少ないコイル電流で燃焼室端部20a内に強い磁界Bを形成することが容易になる。
【0061】
次に、
図9〜
図11を参照して、第5実施形態の点火装置15について説明する。
図9は、点火装置15を示す
図1(a)と同様の図である。
図10は、点火装置15において、火花放電路Pに作用するローレンツ力Fを示す
図1(b)と同様の図である。以下においては、本実施形態の点火装置1
5が第1及び第3実施形態の点火装置10,13と相違する点について主として説明し、同一の構成については同一の参照符号を用いて説明を省略する。
【0062】
図9に示すように、点火装置15は、第1磁性体32及び第2磁性体34を含む磁界形成手段を備える。第1磁性体32は、上述した第3実施形態の点火装置13と同様に、巻回されたコイル36に第1電源38a及び第1スイッチ40aが直
列接続されている。これにより、点火装置15でも、第1スイッチ40aがオンしてコイル36に通電されることによって第1磁性体32が磁化されるようになっている。この場合、燃焼室端部20aに面した第1磁性体32の端部は、S極に磁化される。
【0063】
本実施形態の点火装置15は、さらに、第2電源38b及び第2スイッチ40bがコイル36に直列に接続されている。第2電源38bおよび第2スイッチ40bは、第1電源38aおよび第1スイット40aと並列の関係になっている。第2電源38bは、第1電源38aとは正極及び負極の向きが逆になっている。これにより、第1スイッチ40aをオフして第2スイッチ40bをオンすると、コイル36に対して電流が
図7とは逆方向に流れ、その結果、燃焼室端部20aに面した第1磁性体32の端部がN極に磁化されるようになっている。この場合、ピストン24に設けた第2磁性体34は、第1磁性体32によって生成される磁束の影響を受けて、燃焼室端部20aに面した端部がS極に磁化されることになる。
【0064】
このように形成される磁界Bでは、磁界ベクトルB1が第1磁性体32から第2磁性体34に向かって形成される。この磁界ベクトルB1もまた、気流Gによって略U字状に形成された火花放電路Pを含む略二次元平面に対して略垂直に貫くように形成される。
【0065】
第2スイッチ40bがオフ状態で第1スイッチ40aがオンされた場合、磁界Bによって火花放電路Pが広がるようにローレンツ力Fが作用することは
図7を参照して上述した第3実施形態の点火装置13の場合と同様である。これに対し、第1スイッチ40aがオフ状態で第2スイッチ40bがオンされた場合、コイル36への通電方向が逆になり、第1磁性体32がN極に磁化され、第1磁性体32から第2磁性体34へ向かう磁界ベクトルB1を含む磁界Bが形成される。この磁界Bの作用によって、火花放電路Pに作用するローレンツ力Fの向きが第1実施形態の点火装置10の場合とは逆になる。すなわち、
図10に示すように、この場合のローレンツ力Fは、火花放電路Pの伸長距離又は幅を抑える方向に作用し、換言すれば、火花放電路Pによって囲まれる領域の面積を小さくするように作用する。
【0066】
このように本実施形態の点火装置15では、コイル36に流れる電流の向きを変更することによって第1磁性体32の燃焼室端部20aに面した端部の極性をS極又はN極に切り替え可能に構成されている。点火装置15では、第1スイッチ40a及び第2スイッチ40b(すなわち第1電源38a及び第2電源38b)のオンオフを次のようにして切り替えるのが好適である。第1及び第2スイッチ40a,40bのオンオフ制御は、内燃機関が搭載された例えば車両等のコントローラによって実行することができる。ここで、
図10に示す火花放電路Pにおいて、軸方向と直交する方向の長さを「伸長距離」といい、軸方向の長さを「幅」という。
【0067】
燃焼室端部20a内における気流Gの速度が速い(気流乱れが強い)サイクルでは、略U字状に形成された火花放電路Pがより伸長しやすい状態になるため、第1スイッチ40aをオフする一方で第2スイッチ40bをオンする。これにより、ローレンツ力Fが火花放電路Pの伸長距離を抑えるように作用する。他方、燃焼室端部20a内における気流Gの速度が遅い(気流乱れが弱い)サイクルでは、略U字状に形成された火花放電路Pが伸長しにくい状態になるため、第2スイッチ40bをオフする一方で第1スイッチ40aをオンする。これにより、ローレンツ力Fが火花放電路Pの伸長距離を延ばすように作用する。このように第1及び第2スイッチ40a,40bをオンオフ制御することで、サイクル毎の火花放電路Pの伸長距離のばらつきが抑制され、初期火炎の成長が一定に近づく。そのため、燃焼(トルク)の変動が少ない内燃機関の運転が可能になる。
【0068】
ここで、各サイクルにおける気流Gの速度は、気流Gにより伸長する火花放電路Pの電気抵抗値から判別できる。火花放電路Pの電気抵抗値は、点火プラグ26に印加される電圧を、点火プラグ26に流れる電流で除算することによって算出できる。
【0069】
図11(a)は火花放電路Pの伸長距離と放電路抵抗の関係を示すグラフであり、
図11(b)火花放電路Pの最大伸長距離を示す図である。
図11(a)に示すように、火花放電路Pの電気抵抗値は、火花放電路Pの伸長距離が長くなるほど大きくなる傾向にある。したがって、実験やシミュレーション等によって内燃機関の運転が安定する火花放電路Pの最大伸長距離を予め求めて、コントローラに記憶させておき、この最大伸長距離(例えば5〜8mm)を越えないように火花放電路Pの伸長距離を抑制するように制御すればよい。ここで「最大伸長距離」とは、
図11(b)に示すように、点火プラグ26(すなわち中心電極28)の中心軸Xから、これと直交する方向へ計った火花放電路Pの長さである。
【0070】
他方、同様の考え方および方法で火花放電路Pの最小伸長距離(図示せず)を求めて記憶させておき、この最小伸長距離を下回らないように火花放電路Pの伸長距離を延ばすように制御すればよい。
【0071】
このようにして火花放電路Pの伸長距離を所定範囲内に制御することによって、初期火炎の成長が安定し、トルク変動が小さい内燃機関の運転を実現できる。
【0072】
なお、第5実施形態の点火装置15では、コイル36の電流の流れ方向を切り替えることで、磁界ベクトルB1の向きを変更するように構成したが、これに限定されるものでなく、第1及び第2磁性体32,34間の磁界Bの磁界ベクトルB1の向きは変更せずに、火花放電路Pを流れる電流の向きを切り替えるように構成してもよい。これによっても火花放電路Pの伸長距離について同様の制御を実行できる。
【0073】
図12は、第6実施形態である点火装置16を示す、
図1(a)と同様の図である。
図13は、
図12に示した点火装置16の要部を拡大して示す斜視図である。以下では、本実施形態の点火装置16が第1実施形態の点火装置10と相違する点について主として説明し、同一の構成については同一の参照符号を用いて説明を省略する。
【0074】
図12に示すように、本実施形態の点火装置16では、磁界形成手段を構成する第1磁性体32及び第2磁性体34がシリンダ22の端面23から燃焼室端部20a内に突出した状態で配置されている。この場合、
図13に示すように、第1磁性体32は、
S極を構成する永久磁石で構成され、第2磁性体34は
N極を構成する永久磁石で構成されている。第1磁性体32と第2磁性体34とは、それぞれリング状に形成されており、所定間隔をへだてて対向配置されている。これにより、第1磁性体32と第2磁性体34との間には、第2磁性体34から第1磁性体32へ向かって形成される磁界ベクトルB1を含む磁界Bが形成される。この磁界ベクトルB1は、点火プラグ26の中心軸Xとこれに平行な直線X´とを含む二次元平面に対して、略垂直に貫くように形成される。
【0075】
また、本実施形態の点火プラグ26は、その先端部27において、接地電極30が略L字状をなして中心電極28の下方位置まで延出しており、中心電極28と接地電極30とが軸方向Xに対向している。したがって、この場合、中心電極28と接地電極30との間に気流Gによって略U字状に伸長して形成される火花放電路Pは、気流Gの下流側に延びる略二次元平面内に含まれ、この略二次元平面に対して磁界ベクトルB1が略垂直に貫く(又は交差する)ように磁界Bが形成されている。
【0076】
本実施形態の点火装置16によっても、第1実施形態の点火装置10と同様の作用効果を奏することができる。すなわち、気流Gによって略U字状に伸長した火花放電路Pが、ローレンツ力Fによって軸方向両側へ引っ張られることによって火花放電路Pの軸方向の伸長長さがより長く引き延ばされ、火花放電路Pによって囲まれた領域の面積が広くなる。したがって、火花放電路Pが例えば混合ガスからなる気流Gと接触する長さが延長され、燃焼室端部20a内における初期火炎が拡大して点火性(着火性)を改善できる。
【0077】
なお、本発明は、上述した実施形態及びその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項及びその均等な範囲において種々の変更や改良が可能であることはいうまでもない。