【実施例】
【0030】
(実施例1〜3、参考例4〜5、実施例6、参考例7〜8、実施例9〜10、比較例1〜2)
[1. 試料の作製]
非特許文献1を参考にし、次に記載する方法で白金ブロンズを合成した。酸化白金(PtO
2)と金属硝酸塩とをモル比で3:1になるように秤取し、乳鉢で混合した。金属硝酸塩には、Co(NO
3)
2・6H
2O(実施例1)、Ce(NO
3)
3・6H
2O(実施例2)、
Ca(NO
3)
2・4H
2O(実施例3)、LiNO
3(参考例4)、
NaNO
3(
参考例5)、Bi(NO
3)
3・5H
2O(実施例6)、
AgNO
3(参考例7)、Cu(NO
3)
2・3H
2O
(参考例8)、
Mn(NO
3)
2・6H
2O(実施例9)、又はIn(NO
3)
3・5H
2O(実施例10)
を用いた。
【0031】
次に、混合物を、空気通気下(1L/min)、650℃で5時間熱処理した。さらに、得られた反応物(白金ブロンズとメタル白金の混合物)を熱王水に30分間浸漬し、上澄み液を除去することでメタル白金を除去した。
比較として、白金担持カーボンの代表例としてPt/Vulcan(登録商標)(COパルス比表面積:158m
2/g)(比較例1)、及び酸化イリジウム粉末(BET比表面積:53.6m
2/g)(比較例2)を用いた。
【0032】
[2. 評価]
[2.1. 合成直後の白金ブロンズのXRD測定及びSEM観察]
図2に、熱処理後の試料(Co
xPt
3O
4+Pt)及び熱処理前の原料混合物(PtO
2+Co硝酸塩)のXRDパターンを示す。また、
図3に、熱処理後の試料(
図3(A))及び熱処理前の原料混合物(
図3(B))のSEM像を示す。
図2及び
図3より、
(a)粗大な原料混合物から、微細な反応物が得られること、及び、
(b)反応物は、白金ブロンズ(Co
xPt
3O
4)とメタル白金との混合物からなること、
がわかる。
図4に、王水処理前後の試料のXRDパターンを示す。
図4より、王水処理によりメタル白金が除去され、白金ブロンズが単離されたことが確認できる。
【0033】
[2.2. BET比表面積]
各白金ブロンズについて、窒素吸着測定によりBET比表面積を求めた。表1に、その結果を示す。得られた白金ブロンズは、いずれも高い比表面積を有していた。
【0034】
【表1】
【0035】
[2.3. 水素酸化活性及び水電解活性]
白金ブロンズ粉末をアセトンに分散させた後、グラッシーカーボン(GC)電極表面に塗布して乾燥させた。これを作用極として電気化学測定を行い、白金有効表面積、水素酸化活性、及び水電解(酸素発生)活性を評価した。参照電極は可逆水素電極、対極は金メッシュ、電解液は0.1Mの過塩素酸とし、液温は30℃に調整した。白金の有効表面積は、水素の吸着波の電気量と脱着波の電気量の平均値から求めた。水電解活性は、1.7Vでの電流値をBET比表面積で規格化した値を指標とした。
【0036】
図5に、Pt/Vulcan(登録商標)、IrO
2、及びM
xPt
3O
4(M=Co、Ce、Li、Mn、Cu、In、Na、Ag、Bi、Ca)の水電解活性を示す。
図5より、白金ブロンズの水電解活性は、金属元素Mの種類によらず、Pt/Vulcan(登録商標)並み、或いは、それ以上であることがわかる。
図6に、Co−PtブロンズとPt/Vulcan(登録商標)の水素酸化活性及び水電解酸素発生活性の評価を示す。
図6より、Co白金ブロンズは、Pt/Vulcan(登録商標)並みの水素酸化活性を示すことがわかる。図示はしないが、Co以外の金属元素Mを含む白金ブロンズも同様であり、水素酸化活性を示すことが確認された。
【0037】
[2.4. 電気化学評価後の白金ブロンズのXRD測定、TEM観察及びXPS測定]
電気化学評価後の試料をXRD測定、TEM観察、及びXPS測定で評価した。
図7に、電気化学評価後のCo
xPt
3O
4/GCのXRDパターンを示す。なお、
図7には、GC、Pt
metal(シミュレーションパターン)、及びCo
xPt
3O
4(粉末)のXRDパターンも併せて示した。
図7に示すように、電気化学評価後のCo
xPt
3O
4/GCのXRDパターンにおいて、Co
xPt
3O
4のピークは見られるが、メタル白金のピークは見られない。従って、電位サイクルにより、バルク層は白金ブロンズのまま、表層のみがXRD測定では検出できないくらい小さい粒子又は薄い層のメタル白金になったと推定される。これは、以下のSTEM像からも確認できる。
【0038】
図8に、電気化学評価後のCo
xPt
3O
4のSTEM像(
図8(A):低倍率像、
図8(B):高倍率像)を示す。
図8(B)は、
図8(A)の破線で囲った領域を拡大したものである。
図8より、白金ブロンズの表面に粒子状又はアイランド状のメタル白金があることが分かる。
図9に、電気化学評価前後のCo
xPt
3O
4のXPSスペクトルを示す。
図9より、白金層の厚みは、1.6nm以下と推定される。計算の詳細は、後述の通りである。
【0039】
[2.5. 白金ブロンズ表面のメタル白金層の厚みの計算]
図10に、表面及びバルク層にある原子のXPSスペクトルのシグナルへの寄与を説明するための模式図を示す。一般に、表面及びバルク層にある原子のXPSのシグナルへの寄与は、
図10(A)に示すように、指数関数的に減衰する(参考文献1、2)。
[参考文献1] Carley, A. F.; Robert, M. W. Proc. R. Soc. London, Ser. A, 363, 403-424(1978)
[参考文献2] Tanuma, S.; Powell, C. J.; Penn, D. R. Surf. Interface Anal. 11, 577-589(1988)
【0040】
ここで、強度が1/eとなる表面からの距離は、非弾性平均自由工程(IMFP、以下、「λ」という)とcosφの積λ'(=λ×cosφ)で近似できる。φは、検出角度で、45°である。
白金ブロンズ表面の厚みΔxの部分が、メタル白金化した場合のO
1sピークの強度変化を考える。この場合、Δxの領域の酸素原子が失われるため、O
1sシグナル強度は、
図10(B)の上図のハッチングを施した部分の面積の分だけ減少する。その減少率は、次の式(1)で表される。
【0041】
【数1】
【0042】
以上は、白金ブロンズ表面のすべての領域でメタル白金が生成した場合の考察である。Co
xPt
3O
4の場合、実際には、BET比表面積:18.8m
2/gに対して、電気化学測定により求めたメタル白金の有効表面積(ECSA)は3.7m
2/gであったことから、白金ブロンズ表面の20%がメタル白金化したと考えられる。従って、実際のO
1sシグナルの減少率は、式(2)で表される。
【0043】
【数2】
【0044】
図11に、式(2)より見積もられた、メタルPtの厚み(Δx/λ')とΔS'/S
Ptとの関係を示す。ここで、横軸(厚みのスケール)は、λ’との比で表した。白金ブロンズのIMFPの文献値は見つかっていないが、文献値が得られた白金族酸化物のIMFPの中で最も大きな値(λ=2.3nm for IrO
2、@電子エネルギー958eV(X線源: AlKα(1486.6eV))の場合)を用いると、λ’=1.6nmが得られる。
図11から分かる通り、仮にΔx=λ’であったとすると、O
1sシグナルの減少率は、0.12〜0.13になる。
【0045】
表2に、今回の実験で得られた、メタル白金生成前後のO
1sシグナル強度の変化を示す。なお、表2では、メタル化前後で白金ブロンズ重量当たりの原子数が変化しないPtのシグナル強度で規格化している。上で見積もられたように、仮に1.6nmのメタル白金層が生成していれば、O
1sシグナル強度が10%以上減少するはずであるが、今回の実験では実質的にO
1sシグナル強度は減少していない。従って、生成したメタル白金層は、1.6nmより非常に薄いこと(せいぜい、1ML程度の厚みであること)が示唆される。この結果は、XRDの結果とも整合している。
【0046】
【表2】
【0047】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。