(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板が、ガラス、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネートおよびシクロオレフィンポリマーからなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項1〜10のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
真空状態で封止用シートと有機EL素子基板とをラミネートすることで、ボイドの発生を防ぐことができる。しかし、そのためには真空ラミネーター等の真空設備が必要であり、コストがかかる。そこで、常圧下のラミネートで、ボイドを発生させずに、密着性に優れた封止層を形成できれば、有機ELデバイスの製造コストを低減させることができる。また有機EL素子を封止する前においては、有機EL素子を劣化させないため、不活性ガス雰囲気とするのが望ましい。この点、真空ラミネーター等の真空設備を使用すると、不活性ガス雰囲気の状態が解かれてしまい、有機EL素子の種類によっては真空状態でも水分の影響を受けて劣化するという問題が生じ得る。
【0006】
しかし上述のように、常圧下でのラミネート方法を採用した場合、ボイドの発生、支持体に対する封止層の密着性の低下といった問題が生じる場合がある。また、ディスプレイ用の有機EL素子基板では、該基板表面の凹凸(即ち、有機EL素子が存在する凸部分と該素子が存在しない凹部分との高さの差)により、封止層表面の平滑性が悪くなる傾向にある。平滑性が悪い封止層は、輝度ムラや色ムラの要因となるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであって、常圧下で封止用シートを有機EL素子基板にラミネートし、封止層を形成した場合でも、ボイドを発生させることなく、平滑性および密着性に優れた封止層を形成することができる封止体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意検討した結果、ロールラミネーターにより封止用シートを基板の有機EL素子面にラミネートし、次いでラミネートされた封止用シート表面を熱プレスすることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、以下の本発明を完成させた。
【0009】
[1] 基板上の有機EL素子が封止層で封止されている封止体の製造方法であって、
ロールラミネーターを用いて、支持体上に熱硬化性樹脂組成物層が形成された封止用シートを、熱硬化性樹脂組成物層が有機EL素子と接するように基板にラミネートするラミネート工程、
ラミネートされた封止用シート表面を熱プレスして平滑化する平滑化工程、および
熱硬化性樹脂組成物層を熱硬化させて封止層を形成する硬化工程
を含む製造方法。
【0010】
[2] ラミネートが、不活性ガス雰囲気下で行われる前記[1]に記載の製造方法。
[3] ラミネートが、常圧下で行われる前記[1]または[2]に記載の製造方法。
【0011】
[4] ロールラミネーターのロール速度が、0.01〜1.5m/分である前記[1]〜[3]のいずれか一つに記載の製造方法。
[5] ロールラミネーターのロール速度が、0.1〜0.5m/分である前記[1]〜[3]のいずれか一つに記載の製造方法。
【0012】
[6] ロールラミネーターのロール圧が、0〜0.5MPaである前記[1]〜[5]のいずれか一つに記載の製造方法。
[7] ロールラミネーターのロール圧が、0〜0.3MPaである前記[1]〜[5]のいずれか一つに記載の製造方法。
【0013】
[8] ラミネート温度が、60〜120℃である前記[1]〜[7]のいずれか一つに記載の製造方法。
[9] ラミネート温度が、80〜100℃である前記[1]〜[7]のいずれか一つに記載の製造方法。
【0014】
[10] 平滑化工程のプレス圧が、0.01〜0.5MPaである前記[1]〜[9]のいずれか一つに記載の製造方法。
[11] 平滑化工程のプレス圧が、0.01〜0.3MPaである前記[1]〜[9]のいずれか一つに記載の製造方法。
【0015】
[12] 平滑化工程のプレス温度が、60〜120℃である前記[1]〜[11]のいずれか一つに記載の製造方法。
[13] 平滑化工程のプレス温度が、80〜100℃である前記[1]〜[11]のいずれか一つに記載の製造方法。
【0016】
[14] 平滑化工程のプレス時間が、20〜450秒である前記[1]〜[13]のいずれか一つに記載の製造方法。
[15] 平滑化工程のプレス時間が、60〜300秒である前記[1]〜[13]のいずれか一つに記載の製造方法。
【0017】
[16] 支持体が、バリア層を有していてもよいプラスチックフィルムである前記[1]〜[15]のいずれか一つに記載の製造方法。
[17] 支持体の厚さが、30〜200μmである前記[1]〜[16]のいずれか一つに記載の製造方法。
[18] 基板が、ガラス、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネートおよびシクロオレフィンポリマーからなる群から選ばれる少なくとも一つである前記[1]〜[17]のいずれか一つに記載の製造方法。
[19] 基板の厚さが、0.1〜1.0mmである前記[1]〜[18]のいずれか一つに記載の製造方法。
[20] 硬化工程が、平滑化工程と同時に行われる前記[1]〜[19]のいずれか一つに記載の製造方法。
[21] 封止体が有機ELデバイスである、前記[1]〜[20]のいずれか一つに記載の製造方法。
【0018】
[22] 基板上の有機EL素子を封止する方法であって、
ロールラミネーターを用いて、支持体上に熱硬化性樹脂組成物層が形成された封止用シートを、熱硬化性樹脂組成物層が有機EL素子と接するように基板にラミネートする工程、
ラミネートされた封止用シート表面を熱プレスして平滑化する平滑化工程、および
熱硬化性樹脂組成物層を熱硬化させて封止層を形成する硬化工程
を含む方法。
【0019】
[23] ラミネートが、不活性ガス雰囲気下で行われる前記[22]に記載の方法。
[24] ラミネートが、常圧下で行われる前記[22]または[23]に記載の方法。
【0020】
[25] ロールラミネーターのロール速度が、0.01〜1.5m/分である前記[22]〜[24]のいずれか一つに記載の方法。
[26] ロールラミネーターのロール速度が、0.1〜0.5m/分である前記[22]〜[24]のいずれか一つに記載の方法。
【0021】
[27] ロールラミネーターのロール圧が、0〜0.5MPaである前記[22]〜[26]のいずれか一つに記載の方法。
[28] ロールラミネーターのロール圧が、0〜0.3MPaである前記[22]〜[26]のいずれか一つに記載の方法。
【0022】
[29] ラミネート温度が、60〜120℃である前記[22]〜[28]のいずれか一つに記載の方法。
[30] ラミネート温度が、80〜100℃である前記[22]〜[28]のいずれか一つに記載の方法。
【0023】
[31] 平滑化工程のプレス圧が、0.01〜0.5MPaである前記[22]〜[30]のいずれか一つに記載の方法。
[32] 平滑化工程のプレス圧が、0.01〜0.3MPaである前記[22]〜[30]のいずれか一つに記載の方法。
【0024】
[33] 平滑化工程のプレス温度が、60〜120℃である前記[22]〜[32]のいずれか一つに記載の方法。
[34] 平滑化工程のプレス温度が、80〜100℃である前記[22]〜[32]のいずれか一つに記載の方法。
【0025】
[35] 平滑化工程のプレス時間が、20〜450秒である前記[22]〜[34]のいずれか一つに記載の方法。
[36] 平滑化工程のプレス時間が、60〜300秒である前記[22]〜[34]のいずれか一つに記載の方法。
【0026】
[37] 支持体が、バリア層を有していてもよいプラスチックフィルムである前記[22]〜[36]のいずれか一つに記載の方法。
[38] 支持体の厚さが、30〜200μmである前記[22]〜[37]のいずれか一つに記載の方法。
[39] 基板が、ガラス、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネートおよびシクロオレフィンポリマーからなる群から選ばれる少なくとも一つである前記[22]〜[38]のいずれか一つに記載の方法。
[40] 基板の厚さが、0.1〜1.0mmである前記[22]〜[39]のいずれか一つに記載の方法。
[41] 硬化工程が、平滑化工程と同時に行われる前記[22]〜[40]のいずれか一つに記載の方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明の方法によれば、ボイドを発生させることなく、平滑性および密着性の高い封止層で有機EL素子が封止された封止体(特に、有機ELデバイス)を製造することができ、また真空ラミネーターを使用する必要がないためコスト的にも有利である。また本発明の方法によれば、有機EL素子へのダメージが少ない不活性ガス下でラミネートを実施できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の製造方法は、ロールラミネーターによるラミネート(以下「ロールラミネート」と略称することがある)の後に、熱プレスによる平滑化を行うことを特徴とする。
まず、本発明の製造方法における、ロールラミネートによるラミネート工程、熱プレスによる平滑化工程について順に説明する。
【0029】
[ロールラミネート]
本発明の製造方法は、封止用シートと有機EL素子基板のラミネートをロールラミネートで行い、その後に熱プレスで平滑化を行うことによって、ボイドを発生させることなく、平滑性および密着性に優れた封止層を形成することができる。ラミネート時の周囲圧力は特に限定されないが、真空ラミネーターを使用せずにコスト的有利に製造する観点などから常圧下とすることができる。ここで、常圧とは、真空ラミネータ―等の真空装置を用いて人為的に真空(減圧)状態とした状態ではないことを意味する。
【0030】
またラミネートは、不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。本発明においては、真空ラミネーターを使用して真空(減圧)下でラミネートを行う必要がないため、ラミネート時に有機ELへのダメージの少ない窒素雰囲気下でラミネートすることができる。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等が挙げられる。これらの中で窒素が好ましい。不活性ガス雰囲気下でのラミネートは、常圧下で行うことができる。不活性ガス雰囲気下でラミネートを行う場合の周囲圧力(不活性ガスの圧力)は、好ましくは911.925〜1215.9hPa、より好ましくは1013.25〜1114.575hPaである。
【0031】
ロールラミネーターのロール速度は、支持体に対する封止層(熱硬化性樹脂組成物層の硬化物)の良好な密着性を達成するために、好ましくは0.01〜1.5m/分、より好ましくは0.1〜0.5m/分である。
【0032】
ロールラミネーターのロール圧は、有機EL素子へのダメージを避けるために、好ましくは0〜0.5MPa、より好ましくは0〜0.3MPaである。ここでロール圧とは、エアシリンジによる加圧力を意味し、ゲージ圧(元圧)として表示される。また、ロール圧が0であるとは、加圧力が0を意味する。
【0033】
ロールラミネーターによるラミネート温度は、熱硬化樹脂を軟化し、基板への追従性を向上させるために、好ましくは60〜120℃、より好ましくは80〜100℃である。ここでラミネート温度とは、ロールにヒーターを内蔵し、デジタル制御したロール表面の温度を意味し、表面接触型K熱電対によって測定することができる。
【0034】
ロールラミネートには市販のロールラミネーターを使用することができる。市販のロールラミネーターとしては、例えば、大成ラミネーター社製「ロールラミネーターVA770H」、「ロールラミネーターVA700」、「ロールラミネーターVAII−700」、伯東社製「Mach630up」などが挙げられる。ロールラミネーターのロールの材質としては、例えば、ステンレス鋼、シリコーンゴムなどが挙げられ、シリコーンゴムが好ましい。
【0035】
[熱プレス]
本発明の製造方法では、ロールラミネートによるラミネート工程の後に熱プレスによる平滑化工程を行う。ラミネート工程でラミネートされた封止用シート表面は、基板の有機EL素子面の凹凸に追従して起伏が生じている。これを熱プレスにより平滑化する。熱プレスは金属板等の平板を用いて(例えば、平板プレス機等を用いて)行うのが好ましい。
熱プレスは、大気雰囲気中で行ってもよく、不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。大気雰囲気中で熱プレスを行う場合、その周囲圧力は、好ましくは大気圧である。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、ネオン、ヘリウム等が挙げられる。不活性ガス雰囲気下での熱プレスは、常圧下で行うことができる。不活性ガス雰囲気中で熱プレスを行う場合、その周囲圧力(即ち、不活性ガスの圧力)は、好ましくは911.925〜1215.9hPa、より好ましくは1013.25〜1114.575hPa、さらに好ましくは1013.75〜1017.75hPaである。
【0036】
プレス圧は、圧力によるEL素子へのクラックを防ぐために、好ましくは0.01〜0.5MPa、より好ましくは0.01〜0.3MPaである。ここでプレス圧とは、真空油圧シリンダーや荷重によって制御された被プレス体にかかる圧力(即ち、封止用シート表面にかかる圧力)を意味し、熱プレス装置によって調整することができる。
【0037】
プレス温度は、平滑性を確保するために、好ましくは60〜120℃、より好ましくは80〜100℃である。ここでプレス温度とは、熱プレス装置のプレス部分(例えば、金属板等の平板)表面にカートリッジヒーターを内蔵し、デジタル制御したプレス部分表面の温度を意味し、表面接触型K熱電対によって測定することができる。
【0038】
プレス時間は、平滑化が達成されれば特に限定されないが、例えば金属板等の平板を用いて熱プレスした場合、好ましくは20〜450秒、より好ましくは60〜300秒である。
【0039】
熱プレスには市販の熱プレス装置を使用することができる。市販の熱プレス装置としては、例えば、モートン社製「バッチ式真空加圧ラミネーターCVP−300」、北川精機社製、真空加圧プレス機「VHI−2051」などの平板プレス機が挙げられる。プレス用の平板の材質としては、例えば、ステンレス鋼、鉄等の合金などが挙げられ、ステンレス鋼が好ましい。
【0040】
[封止層の形成]
封止層の形成(即ち、熱硬化性樹脂組成物層の熱硬化)は、封止用シートの支持体を剥離してから行ってもよく、支持体を付けたまま行ってもよい。熱硬化は、例えば、熱風循環式オーブン、赤外線ヒーター、ヒートガン、高周波誘導加熱装置などで行うことができる。熱硬化は、熱プレスの後に行ってもよく、熱プレスによる加熱によって、熱プレスと同時に行ってもよい。硬化温度は、使用する熱硬化性樹脂組成物層および支持体により異なるが、通常80〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、硬化時間は、通常10〜120分、好ましくは10〜30分である。形成される封止層の厚さは、好ましくは3〜100μm、より好ましくは5〜50μm、さらに好ましくは5〜20μmである。
【0041】
[封止用シート]
次に、本発明で使用する封止用シートについて説明する。本発明において封止用シートに特に制限は無く、例えば、特許文献1〜3に記載されているものを使用することができる。以下、好ましい封止用シートについて説明する。
【0042】
熱硬化性樹脂組成物は、好ましくは、エポキシ樹脂および硬化剤を含有する。エポキシ樹脂および硬化剤に特に限定は無く、従来公知のものを使用することができる。熱硬化性樹脂組成物は、さらに吸湿性金属酸化物、熱可塑性樹脂、無機充填材(吸湿性金属酸化物を除く)等を含有していてもよい。
【0043】
[エポキシ樹脂]
エポキシ樹脂は、平均して1分子あたり2個以上のエポキシ基を有するものであれば制限なく使用できる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂(例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、ジグリシジルトルイジン、ジグリシジルアニリン等)、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のグリシジルエーテル化物、およびアルコール類のジグリシジルエーテル化物、並びにこれらのエポキシ樹脂のアルキル置換体、ハロゲン化物および水素添加物等が挙げられる。かかるエポキシ樹脂はいずれか1種を使用するか2種以上を混合して用いることができる。
【0044】
エポキシ樹脂は、中でも、透過率が80%以上のものが好ましく、透過率が85%以上のものがより好ましく、透過率が90%以上のものが特に好ましい。かかる好適なエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂等を挙げることができる。ここで透過率とは、全光線透過率を指し、材料を通して明るさがどの程度伝わるかを調べる目的で測定される反射や散乱を考慮した光線透過率である。入射光には可視光線や紫外線を利用し、透過した光を積分球で集める方法で測定される。
【0045】
エポキシ樹脂は、液状であっても、固形状であってもよく、液状エポキシ樹脂および固形状エポキシ樹脂の両方を用いてもよい。ここで、「液状」および「固形状」とは、常温(25℃)でのエポキシ樹脂の状態である。塗工性、加工性、接着性の観点から、使用するエポキシ樹脂全体の少なくとも10質量%以上が液状であるのが好ましい。
【0046】
また、反応性の観点から、エポキシ樹脂のエポキシ当量は100〜1000g/eqが好ましく、120〜1000g/eqがより好ましく、150〜1000g/eqがさらに好ましい。ここでエポキシ当量とは、1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数(g/eq)であり、JIS K 7236に規定された方法に従って測定される。また、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5,000以下である。
【0047】
熱硬化性樹脂組成物におけるエポキシ樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂組成物(不揮発分)全体あたり、20〜80質量%であるのが好ましく、30〜70質量%であるのがより好ましく、50〜65質量%であるのがさらにより好ましい。
【0048】
[吸湿性金属化合物]
本発明の樹脂組成物は、耐透湿性をより向上させるために、さらに吸湿性金属酸化物を含有させることができる。ここで、「吸湿性金属酸化物」とは、水分を吸収する能力をもち、吸湿した水分と化学反応して水酸化物になる金属酸化物を意味する。具体的には、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化アルミニウム、酸化バリウム等から選ばれる1種か、または2種以上の混合物若しくは固溶物である。2種以上の混合物若しくは固溶物の例としては、具体的には、焼成ドロマイト(酸化カルシウム及び酸化マグネシウムを含む混合物)、焼成ハイドロタルサイト(酸化カルシウムと酸化アルミニウムの固溶物)等が挙げられる。中でも、吸湿性が高い点、コスト、原料の安定性の点から、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイトが好ましく、より好ましくはハイドロタルサイトである。ハイドロタルサイトは吸水性を有するものであれば特に限定されない。ハイドロタルサイトとしては、例えば天然のハイドロタルサイト(Mg
6Al
2(OH)
16CO
3・4H
2O)および/または合成のハイドロタルサイト(ハイドロタルサイト様化合物)を挙げることができるが、吸湿剤として使用する場合、一般には、吸水性を向上させるためにハイドロタルサイトを焼成処理して化学構造中のOH量を減少させるか、または消失させた焼成ハイドロタルサイトが好ましく用いられる。好ましいハイドロタルサイトは、例えば、下記一般式(I)で表される合成ハイドロタルサイト(ハイドロタルサイト様化合物)の焼成体、下記一般式(II)で表される合成ハイドロタルサイト(ハイドロタルサイト様化合物)の焼成体等が挙げられる。
【0049】
[M
2+1−xM
3+x(OH)
2]
x+・[(A
n−)
x/n・mH
2O]
x− (I)
(式中、M
2+はMg
2+、Zn
2+などの2価の金属イオンを表し、M
3+はAl
3+、Fe
3+などの3価の金属イオンを表し、A
n−はCO
32−、Cl
−、NO
3−などのn価のアニオンを表し、0<x<1であり、0≦m<1であり、nは正の数である。)
【0050】
M
2+xAl
2(OH)
2x+6−nz(A
n−)
z・mH
2O (II)
(式中、M
2+はMg
2+、Zn
2+などの2価の金属イオンを表し、A
n−はCO
32−、Cl
−、NO
3−などのn価のアニオンを示し、xは2以上の正の数であり、zは2以下の正の数であり、mは正の数であり、nは正の数である。)
【0051】
焼成ハイドロタルサイトは、好ましくは天然ハイドロタルサイト(Mg
6Al
2(OH)
16CO
3・4H
2O)および/または合成のハイドロタルサイト(ハイドロタルサイト様化合物)を焼成して、層間のアニオンと水分子を気化させて得られる、複合酸化物であり、好適には、400〜900℃、より好ましくは、500〜700℃で、30分〜5時間、より好ましくは30分〜3時間、さらに好ましくは45分〜2時間焼成して得られる複合酸化物が挙げられる。
【0052】
好ましい焼成ハイドロタルサイトは、上記式(II)の複水酸化物等のMg−Al系ハイドロタルサイト様化合物を焼成して得られるMg−Al系複合酸化物であり、該Mg−Al系複合酸化物は、MgとAlの組成比をMg:Al=x:2とした場合のxが2≦x≦6である組成比の複合酸化物がより好ましく、該xが3≦x≦6である組成比の複合酸化物がさらに好ましく、該xが4≦x≦6である組成比の複合酸化物が特に好ましい。
【0053】
吸湿性金属酸化物は、種々の技術分野において吸湿材として公知であり、市販品を使用することができる。具体的には、酸化カルシウム(三共製粉社製「モイストップ#10」等)、酸化マグネシウム(協和化学工業社製「キョーワマグMF−150」、「キョーワマグMF−30」、タテホ化学工業社製「ピュアマグFNMG」等)、軽焼酸化マグネシウム(タテホ化学工業社製の「TATEHOMAG#500」、「TATEHOMAG#1000」、TATEHOMAG#5000」等)、焼成ドロマイト(吉澤石灰社製「KT」等)、焼成ハイドロタルサイト(協和化学工業社製「KW2200」、「DHT−4A」、「DHT−4A−2」、「DHT−4C」等)等が挙げられる。
【0054】
吸湿性金属酸化物は、表面処理剤で表面処理したものを用いることができる。表面処理に使用する表面処理剤としては、例えば、高級脂肪酸、アルキルシラン類、シランカップリング剤等を使用することができ、なかでも、高級脂肪酸、アルキルシラン類が好適である。表面処理剤は、1種または2種以上を使用できる。
【0055】
高級脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、モンタン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸などの炭素数18以上の高級脂肪酸が挙げられ、中でも、ステアリン酸が好ましい。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。アルキルシラン類としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、n−オクタデシルジメチル(3−(トリメトキシシリル)プロピル)アンモニウムクロライド等が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。シランカップリング剤としては、例えば、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシランおよび2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ系シランカップリング剤;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン及び11−メルカプトウンデシルトリメトキシシランなどのメルカプト系シランカップリング剤;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランおよびN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルジメトキシメチルシランなどのアミノ系シランカップリング剤;3−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのウレイド系シランカップリング剤、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランおよびビニルメチルジエトキシシランなどのビニル系シランカップリング剤;p−スチリルトリメトキシシランなどのスチリル系シランカップリング剤;3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシランおよび3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリレート系シランカップリング剤;3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどのイソシアネート系シランカップリング剤、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド系シランカップリング剤;フェニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン等を挙げることができる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0056】
吸湿性金属酸化物の表面処理は、例えば、未処理の吸湿性金属酸化物を混合機で常温にて攪拌分散させながら、表面処理剤を添加噴霧して5〜60分間攪拌することによって行なうことができる。混合機としては、公知の混合機を使用することができ、例えば、Vブレンダー、リボンブレンダー、バブルコーンブレンダー等のブレンダー、ヘンシェルミキサー及びコンクリートミキサー等のミキサー、ボールミル、カッターミル等が挙げられる。また、ボールミルなどで吸湿性金属酸化物を粉砕する際に、前記の高級脂肪酸、アルキルシラン類またはシランカップリング剤を混合し、表面処理する方法も可能である。表面処理剤の処理量は吸湿性金属酸化物の種類または表面処理剤の種類等によっても異なるが、吸湿性金属酸化物に対して1〜10質量%が好ましい。
【0057】
熱硬化性樹脂組成物中の吸湿性金属酸化物の含有量は、エポキシ樹脂80質量部に対して、好ましくは3〜38質量部であり、耐透湿性、透過性の観点から、より好ましく5〜35質量部であり、さらに好ましくは10〜35質量部である。なお、吸湿性金属酸化物の含有量は熱硬化性樹脂組成物(不揮発分)全体あたり、2〜24質量%であるのが好ましく、5〜23質量%であるのがより好ましい。
【0058】
[無機充填材]
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、樹脂組成物の水分遮断性、封止シートを調製する際の樹脂組成物ワニスの塗工性(はじき防止)等の観点から、上述の吸湿性金属化合物以外の無機充填材をさらに含有させることができる。無機充填材としては、例えば、タルク、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、クレー、マイカ、雲母、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、ケイ酸塩などが挙げられる。なお、高い透過率を維持する等の観点から、無機充填材の一次粒子の粒経は5μm以下が好ましく、更には1μm以下が好ましい。例えば、一次粒子の粒経が1〜100nmのもの、より好ましくは1〜50nmのもの、さらに好ましくは10〜20nmのもの、とりわけ好ましくは10〜15nmのものを用いることができる。1μm以下となるような無機充填材の1次粒子径の測定は比較的困難な場合があることから、比表面積測定値(JIS Z8830に準拠)からの換算値が用いられることがある。例えば、ナノ無機充填材は、BET比表面積が2720〜27m
2/gのもの、好ましくは2720〜54m
2/gであるもの、より好ましくは272〜136m
2/gであるもの、より好ましくは272〜181m
2/gであるものを用いることができる。
【0059】
無機充填材の粒子形態は特に限定されず、略球状、直方体状、板状、繊維のような直線形状、枝分かれした分岐形状を用いることができる。無機充填材は、タルク、シリカ、ゼオライト、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、ケイ酸塩、雲母、マイカ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が好ましく、より好ましくはシリカである。シリカとしては、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカ(水分散型、有機溶剤分散型、気相シリカ等)が好ましく、沈殿、沈降しにくく、樹脂との複合化がしやすいという観点から、有機溶剤分散型コロイダルシリカ(オルガノシリカゾル)が特に好ましい。
【0060】
無機充填材は、市販品を使用でき、例えば、日本タルク社製「FG−15F」(タルク粉末)、日産化学工業社製「MEK−EC−2130Y」(アモルファスシリカ粒径10〜15nm、不揮発分30質量%、MEK溶剤)、日産化学工業社製「PGM−AC−2140Y」(シリカ粒径10〜15nm、不揮発分40質量%、PGM(プロピレングリコールモノメチルエーテル)溶剤)、日産化学工業社製「MIBK−ST」(シリカ粒径10〜15nm、不揮発分30質量%、MIBK(メチルイソブチルケトン)溶剤)、扶桑化学工業社製コロイド状シリカゾル「PL−2L−MEK」(シリカ粒径15〜20nm、不揮発分20質量%、MEK(メチルエチルケトン)溶剤)などが挙げられる。
【0061】
本発明において、無機充填材は1種または2種以上を使用できる。本発明の樹脂組成物が無機充填材を含有する場合、無機充填材の含有量は、樹脂組成物(不揮発分)全体あたり、10質量%以下であるのが好ましく、9質量%以下がより好ましい。
【0062】
[熱可塑性樹脂]
熱硬化性樹脂組成物には、熱硬化性樹脂組成物層を硬化して得られる封止層への可撓性の付与、封止用シートを調製する際の熱硬化性樹脂組成物ワニスの塗工性(はじき防止)等の観点から、熱可塑性樹脂を含有させることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂等を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂はいずれか1種を使用しても2種以上を混合して用いてもよい。熱硬化性樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂組成物(不揮発分)全体あたり1〜40質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。
【0063】
熱可塑性樹脂は、封止層への可撓性の付与、封止用シートを調製する際の熱硬化性樹脂組成物ワニスの塗工性(はじき防止)等の観点から、重量平均分子量が15,000以上であるのが好ましく、20,000以上がより好ましい。しかし、重量平均分子量が大きすぎると、エポキシ樹脂との相溶性が低下する等の傾向があることから、重量平均分子量は1,000,000以下であるのが好ましく、800,000以下がより好ましい。なお、ここでいう「熱可塑性樹脂の重量平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレンン換算)で測定される。GPC法による重量平均分子量は、具体的には、測定装置として島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工社製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0064】
熱可塑性樹脂は、透過率が80%以上のものが好ましく、透過率が90%以上のものがより好ましい。熱可塑性樹脂は、上述した例示物の中でも、フェノキシ樹脂が特に好ましい。フェノキシ樹脂はエポキシ樹脂との相溶性が良く、熱硬化性樹脂組成物の透過性、耐透湿性に有利に作用する。
【0065】
フェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格等から選択される1種以上の骨格を有するものが挙げられる。フェノキシ樹脂は1種または2種以上を使用できる。フェノキシ樹脂の市販品としては、例えば、三菱化学社製YX7200B35、1256、YX6954BH35等を好適に使用することができる。
【0066】
[カップリング剤]
熱硬化性樹脂組成物には、熱硬化性樹脂組成物の接着強度向上の観点から、カップリング剤を含有させることができる。かかるカップリング剤としては、例えば、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、シランカップリング剤等を挙げることができる。中でも、シランカップリング剤が好ましい。カップリング剤は1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0067】
シランカップリング剤としては、例えば、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシランおよび2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ系シランカップリング剤;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランおよび11−メルカプトウンデシルトリメトキシシランなどのメルカプト系シランカップリング剤;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランおよびN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルジメトキシメチルシランなどのアミノ系シランカップリング剤;3−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのウレイド系シランカップリング剤、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランおよびビニルメチルジエトキシシランなどのビニル系シランカップリング剤;p−スチリルトリメトキシシランなどのスチリル系シランカップリング剤;3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシランおよび3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリレート系シランカップリング剤;3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどのイソシアネート系シランカップリング剤、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド系シランカップリング剤;フェニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン等を挙げることができる。これらの中でも、エポキシ系シランカップリング剤が特に好適である。
【0068】
カップリング剤を使用する場合、熱硬化性樹脂組成物中のカップリング剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物(不揮発分)全体あたり、0.5〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。カップリング剤の含有量がこの範囲外である場合、カップリング剤添加による密着性の改善効果を得ることができない。
【0069】
[硬化剤]
エポキシ樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物は、通常、エポキシ樹脂の硬化剤を含有する。硬化剤はエポキシ樹脂を硬化する機能を有するものであれば特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物の硬化処理時における有機EL素子等の発光素子の熱劣化を抑制する観点から、140℃以下(好ましくは120℃以下)の温度下でエポキシ樹脂を硬化し得るものが好ましい。
【0070】
硬化剤として、例えば、一級アミン、二級アミン、三級アミン系硬化剤、ポリアミノアミド系硬化剤、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド等が挙げられる。中でも、速硬化性の点から、アミンアダクト系化合物(アミキュアPN−23、アミキュアMY−24、アミキュアPN−D、アミキュアMY−D、アミキュアPN−H、アミキュアMY−H、アミキュアPN−31、アミキュアPN−40、アミキュアPN−40J等(いずれも味の素ファインテクノ社製))、有機酸ジヒドラジド(アミキュアVDH−J、アミキュアUDH、アミキュアLDH等(いずれも味の素ファインテクノ社製))等が特に好ましい。
【0071】
また、140℃以下(好ましくは120℃以下)の温度下でエポキシ樹脂を硬化し得るイオン液体、即ち、140℃以下(好ましくは120℃以下)の温度領域で融解しうる塩であって、エポキシ樹脂の硬化作用を有する塩も、硬化剤として特に好適に使用することができる。該イオン液体は、エポキシ樹脂に均一に溶解している状態で使用されるのが望ましい。また、イオン液体は、熱可塑性樹脂組成物の硬化物の耐透湿性向上に有利に作用する。
【0072】
かかるイオン液体を構成するカチオンとしては、イミダゾリウムイオン、ピペリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピラゾニウムイオン、グアニジニウムイオン、ピリジニウムイオン等のアンモニウム系カチオン;テトラアルキルホスホニウムカチオン(例えば、テトラブチルホスホニウムイオン、トリブチルヘキシルホスホニウムイオン等)等のホスホニウム系カチオン;トリエチルスルホニウムイオン等のスルホニウム系カチオン等が挙げられる。
【0073】
また、かかるイオン液体を構成するアニオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物系アニオン;メタンスルホン酸イオン等のアルキル硫酸系アニオン;トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヘキサフルオロホスホン酸イオン、トリフルオロトリス(ペンタフルオロエチル)ホスホン酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、トリフルオロ酢酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン等の含フッ素化合物系アニオン;フェノールイオン、2−メトキシフェノールイオン、2,6−ジ−tert−ブチルフェノールイオン等のフェノール系アニオン;アスパラギン酸イオン、グルタミン酸イオン等の酸性アミノ酸イオン;グリシンイオン、アラニンイオン、フェニルアラニンイオン等の中性アミノ酸イオン;N−ベンゾイルアラニンイオン、N−アセチルフェニルアラニンイオン、N−アセチルグリシンイオン等の下記式(1)で示されるN−アシルアミノ酸イオン;ギ酸イオン、酢酸イオン、デカン酸イオン、2−ピロリドン−5−カルボン酸イオン、α−リポ酸イオン、乳酸イオン、酒石酸イオン、馬尿酸イオン、N−メチル馬尿酸イオン、安息香酸イオン等のカルボン酸系アニオンが挙げられる。
【0075】
(式中、Rは炭素数1〜5の直鎖または分岐鎖の炭化水素基、或いは、置換または無置換のフェニル基であり、Xはアミノ酸の側鎖を表す。アミノ酸としては、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、アラニン、フェニルアラニンなどが挙げられる。)
【0076】
上述の中でも、カチオンは、アンモニウム系カチオン、ホスホニウム系カチオンが好ましく、イミダゾリウムイオン、ホスホニウムイオンがより好ましい。イミダゾリウムイオンは、より詳細には、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムイオン等である。
【0077】
また、アニオンは、フェノール系アニオン、式(1)で示されるN−アシルアミノ酸イオンまたはカルボン酸系アニオンが好ましく、N−アシルアミノ酸イオンまたはカルボン酸系アニオンがより好ましい。
【0078】
フェノール系アニオンの具体例としては、2,6−ジ−tert−ブチルフェノールイオンが挙げられる。また、カルボン酸系アニオンの具体例としては、酢酸イオン、デカン酸イオン、2−ピロリドン−5−カルボン酸イオン、ギ酸イオン、α−リポ酸イオン、乳酸イオン、酒石酸イオン、馬尿酸イオン、N−メチル馬尿酸イオン等が挙げられ、中でも、酢酸イオン、2−ピロリドン−5−カルボン酸イオン、ギ酸イオン、乳酸イオン、酒石酸イオン、馬尿酸イオン、N−メチル馬尿酸イオンが好ましく、酢酸イオン、N−メチル馬尿酸イオン、ギ酸イオンが殊更好ましい。また、式(1)で示されるN−アシルアミノ酸イオンの具体例としては、N−ベンゾイルアラニンイオン、N−アセチルフェニルアラニンイオン、アスパラギン酸イオン、グリシンイオン、N−アセチルグリシンイオン等が挙げられ、中でも、N−ベンゾイルアラニンイオン、N−アセチルフェニルアラニンイオン、N−アセチルグリシンイオンが好ましく、N−アセチルグリシンイオンが殊更好ましい。
【0079】
具体的なイオン液体としては、例えば、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムラクテート、テトラブチルホスホニウム−2−ピロリドン−5−カルボキシレート、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムデカノエート、テトラブチルホスホニウムトリフルオロアセテート、テトラブチルホスホニウムα−リポエート、ギ酸テトラブチルホスホニウム塩、テトラブチルホスホニウムラクテート、酒石酸ビス(テトラブチルホスホニウム)塩、馬尿酸テトラブチルホスホニウム塩、N−メチル馬尿酸テトラブチルホスホニウム塩、ベンゾイル−DL−アラニンテトラブチルホスホニウム塩、N−アセチルフェニルアラニンテトラブチルホスホニウム塩、2,6−ジ−tert−ブチルフェノールテトラブチルホスホニウム塩、L−アスパラギン酸モノテトラブチルホスホニウム塩、グリシンテトラブチルホスホニウム塩、N−アセチルグリシンテトラブチルホスホニウム塩、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムラクテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、ギ酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム塩、馬尿酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム塩、N−メチル馬尿酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム塩、酒石酸ビス(1−エチル−3−メチルイミダゾリウム)塩、N−アセチルグリシン1−エチル−3−メチルイミダゾリウム塩が好ましく、N−アセチルグリシンテトラブチルホスホニウム塩、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、ギ酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム塩、馬尿酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム塩、N−メチル馬尿酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウム塩が殊更好ましい。
【0080】
上記イオン液体の合成法としては、アルキルイミダゾリウム、アルキルピリジニウム、アルキルアンモニウムおよびアルキルスルホニウムイオン等のカチオン部位と、ハロゲンを含むアニオン部位から構成される前駆体に、NaBF
4、NaPF
6、CF
3SO
3NaやLiN(SO
2CF
3)
2等を反応させるアニオン交換法、アミン系物質と酸エステルとを反応させてアルキル基を導入しつつ、有機酸残基が対アニオンになるような酸エステル法、およびアミン類を有機酸で中和して塩を得る中和法等があるが、これらに限定されない。アニオンとカチオンと溶媒による中和法では、アニオンとカチオンとを等量使用し、得られた反応液中の溶媒を留去して、そのまま用いることも可能であるし、さらに有機溶媒(メタノール、トルエン、酢酸エチル、アセトン等)を差し液濃縮しても構わない。
【0081】
熱硬化性樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物中に含まれるエポキシ樹脂の総量(不揮発分)に対し、0.1〜50質量%であるのが好ましい。該含有量が0.1質量%よりも少ないと、充分な硬化性が得られないおそれがあり、50質量%より多いと、熱硬化性樹脂組成物の保存安定性が損なわれることがある。なお、イオン液体を使用する場合、その量は、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の耐透湿性等の観点から、エポキシ樹脂の総量(不揮発分)に対し0.1〜10質量%が好ましい。
【0082】
硬化剤としてイオン液体を使用する場合、イオン液体とともに分子内にチオール基を2個以上有するポリチオール化合物を熱硬化性樹脂組成物に含有させてもよい。分子内にチオール基を2個以上有するポリチオール化合物を含有させることで硬化速度を速めることができる。分子内にチオール基を2個以上有するポリチオール化合物の具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)、ジペンタエリスリトールポリ(β−チオプロピオネート)等のポリオールとメルカプト有機酸のエステル化反応によって得られるチオール化合物が挙げられる。かかるチオール化合物は、製造上塩基性物質の使用を必要としない、分子内にチオール基を2個以上有するチオール化合物である。
【0083】
また、分子内にチオール基を2個以上有するポリチオール化合物としては、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,10−デカンジチオール等のアルキルポリチオール化合物;末端チオール基含有ポリエーテル;末端チオール基含有ポリチオエーテル;エポキシ化合物と硫化水素との反応によって得られるチオール化合物;ポリチオール化合物とエポキシ化合物との反応によって得られる末端チオール基を有するチオール化合物等を挙げることができる。なお、エポキシ化合物と硫化水素との反応によって得られるチオール化合物や、ポリチオール化合物とエポキシ化合物との反応によって得られる末端チオール基を有するチオール化合物等で、その製造工程上反応触媒として塩基性物質を使用するものにあっては、脱アルカリ処理を行い、アルカリ金属イオン濃度を50ppm以下としたものを使用するのが好ましい。かかる脱アルカリ処理の方法としては、例えば処理を行うポリチオール化合物をアセトン、メタノールなどの有機溶媒に溶解し、希塩酸、希硫酸等の酸を加えることにより中和した後、抽出・洗浄等により脱塩する方法やイオン交換樹脂を用いて吸着する方法、蒸留により精製する方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
かかるポリチオール化合物を使用する場合、ポリチオール化合物の配合量/SH当量とエポキシ樹脂の配合量/エポキシ当量の比(即ち、「(ポリチオール化合物の配合量/SH当量)/(エポキシ樹脂の配合量/エポキシ当量)」)が0.2〜1.2となるように、エポキシ樹脂とポリチオール化合物を混合することが好ましい。この比が0.2よりも小さいと、充分な速硬化性が得られない場合があり、他方、1.2より多いと、耐熱性などの硬化物の物性が損なわれる場合がある。接着性が安定するという観点から、この比は0.5〜1.0であるのがより好ましい。ここで「SH当量」とは「ポリチオール化合物の分子量/SH基の数」を意味し、「エポキシ当量」とは「エポキシ樹脂の分子量/エポキシ基の数」を意味する。
【0085】
[硬化促進剤]
エポキシ樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物は、硬化時間を調整する等の目的で硬化促進剤を含有してもよい。硬化促進剤としては、例えば、有機ホスフィン化合物、イミダゾール化合物、アミンアダクト化合物(例えば、エポキシ樹脂に3級アミンを付加させて反応を途中で止めているエポキシアダクト化合物等)、3級アミン化合物などが挙げられる。有機ホスフィン化合物の具体例としては、TPP、TPP−K、TPP−S、TPTP−S(北興化学工業社の商品名)などが挙げられる。イミダゾール化合物の具体例としては、キュアゾール2MZ、2E4MZ、C11Z、C11Z−CN、C11Z−CNS、C11Z−A、2MZOK、2MA−OK、2PHZ(四国化成工業社の商品名)などが挙げられる。アミンアダクト化合物の具体例としては、フジキュア(富士化成工業社の商品名)などが挙げられる。3級アミン化合物の具体例としては、DBU(1,8-diazabicyelo[5.4.0]undec-7-ene)、DBUの2−エチルヘキサン酸塩、オクチル酸塩などのDBU−有機酸塩、U−3512T(サンアプロ社製)等の芳香族ジメチルウレア、U−3503N(サンアプロ社製)等の脂肪族ジメチルウレアなどが挙げられる。中でも防湿性の点からウレア化合物が好ましく、芳香族ジメチルウレアが特に好ましく用いられる。熱硬化性樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物中のエポキシ樹脂の総量を100質量%(不揮発分)とした場合、通常0.05〜5質量%である。0.05質量%未満であると、硬化が遅くなり熱硬化時間が長く必要となる傾向にあり、5質量%を超えると熱硬化性樹脂組成物の保存安定性が低下する傾向となる。
【0086】
熱硬化性樹脂組成物は、上述した成分以外の各種添加剤を任意で含有させても良い。このような添加剤としては、例えば、シリコーンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素樹脂パウダー等の有機充填剤、オルベン、ベントン等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤またはレベリング剤、トリアゾール化合物、チアゾール化合物、トリアジン化合物、ポルフィリン化合物等の密着性付与剤等を挙げることができる。
【0087】
熱硬化性樹脂組成物は、成分を、必要により有機溶剤等をさらに加えて、混練ローラーや回転ミキサーなどを用いて混合することで調製される。
【0088】
封止用シートは、当業者に公知の方法、例えば、有機溶剤に熱硬化性樹脂組成物を溶解したワニスを調製し、支持体上にワニスを塗布し、さらに加熱または熱風吹きつけ等によって有機溶剤を乾燥させて熱硬化性樹脂組成物層を形成させることによって製造することができる。乾燥後の熱硬化性樹脂組成物層の厚さは、好ましくは3〜100μm、より好ましくは5〜50μm、さらに好ましくは5〜20μmである。
【0089】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ等のセロソルブ類、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。かかる有機溶剤はいずれか1種を単独で使用しても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0090】
封止用シートのための支持体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリ塩化ビニル等のプラスチックフィルムが挙げられる。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマーが好ましい。
【0091】
封止用シートの防湿性を向上させるために、バリア層を有するプラスチックフィルムを支持体として用いてもよい。バリア層としては、例えば、窒化ケイ素等の窒化物、酸化アルミニウム等の酸化物、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属等が挙げられる。バリア層を有するプラスチックフィルムを支持体としては、プラスチックフィルムが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネートおよびシクロオレフィンポリマーからなる群から選ばれる少なくとも一つであるものが好ましく、プラスチックフィルムが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよびシクロオレフィンポリマーからなる群から選ばれる少なくとも一つであるものがより好ましく、プラスチックフィルムがポリエチレンテレフタレートであるものがさらに好ましい。バリア層を有するプラスチックフィルムは市販品を使用してもよい。アルミ箔付きポリエチレンテレフタレートフィルムの市販品としては、例えば、東海東洋アルミ販売社製「アルペット1N30」、福田金属社製「アルペット3025」等が挙げられる。
【0092】
支持体には、シリコーン樹脂系離型剤、アルキッド樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤等による離型処理、マット処理、コロナ処理等が施されていてもよい。支持体の厚さは、特に限定されないが、封止用シートの取扱い性等の観点から、好ましくは20〜200μm、より好ましくは20〜125μmである。
【0093】
熱硬化性樹脂組成物層は、その表面へのゴミ等の付着やキズを防止するため、カバーフィルムで保護されていてもよい。なお該カバーフィルムは、封止用シートと有機EL素子基板とのラミネート前に剥離される。カバーフィルムは、支持体と同様のプラスチックフィルムを用いることが好ましい。また、カバーフィルムには、シリコーン樹脂系離型剤、アルキッド樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤等による離型処理、マット処理、コロナ処理等が施されていてもよい。カバーフィルムの厚さは特に制限されないが、例えば15〜75μm、好ましくは15〜50μmである。
【0094】
[有機EL素子基板]
有機EL素子基板の基板(以下「基板」と略称することがある)は特に限定されず、公知のものを使用することができる。基板は、好ましくはガラス、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)およびシクロオレフィンポリマー(COP)からなる群から選ばれる少なくとも一つである。
【0095】
基板の厚さは、好ましくは0.1〜1.0mm、より好ましくは0.1〜0.7mmである。有機EL素子の厚さは、通常0.01〜1μm、好ましくは0.05〜0.5μmである。
【0096】
有機EL素子からの光を取り出すために、有機EL素子基板の基板および封止用シートの支持体のいずれか一方が透明であることが必要である。例えば、封止用シートに不透明な支持体(例えば、不透明なバリア層を有するプラスチックフィルム)を使用する場合、基板側から光を取り出すために、透明な基板を使用する必要がある。
【実施例】
【0097】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0098】
<イオン液体硬化剤の作製>
テトラブチルホスホニウムハイドロキサイド水溶液(北興化学工業社製、濃度41.4質量%)20.0gに対し、0℃にてN−アセチルグリシン(東京化成工業社製)3.54gを加え10分間攪拌した。エバポレーターを用いて40〜50mmHgに減圧し、60〜80℃にて2時間、90℃にて5時間濃縮した。室温にて酢酸エチル(純正化学社製)14.2mLに再度溶解し、エバポレーターを用いて40〜50mmHgに減圧し、減圧下70〜90℃にて3時間濃縮して、N−アセチルグリシンテトラブチルホスホニウム塩11.7g(純度96.9%)をオイル状化合物として得た。
【0099】
<封止用シート1の作製>
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「jER828EL」、エポキシ当量約185g/eq)56質量部と、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM403」)1.2質量部と、タルク粉末(日本タルク社製「FG−15F」)2質量部、および焼成ハイドロタルサイト(協和化学工業社製「KW2200」)15質量部を混練後、3本ロールミルにて分散を行い、混合物を得た。
【0100】
硬化促進剤(サンアプロ社製「U−3512T」)1.5質量部を、フェノキシ樹脂のメチルエチルケトン(MEK)溶液(三菱化学社製「YX7200B35」、濃度35質量%)81質量部(フェノキシ樹脂28.4質量部)に溶解させた混合物に、3本ロールミルにより分散して調製した上記混合物と、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「jER1001」、エポキシ当量約475g/eq)のMEK溶液(濃度80質量%)30質量部と、有機溶剤分散型コロイダルシリカ(シリカ粒径10〜15nm、不揮発分30質量%、MEK溶剤、日産化学工業社製「MEK−EC−2130Y」)20質量部と、イオン液体硬化剤(N−アセチルグリシンテトラブチルホスホニウム塩)3質量部を配合し、高速回転ミキサーで均一に分散して樹脂組成物ワニスを得た。
【0101】
次に、得られた樹脂組成物ワニスをアルキッド系離型剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(以下「支持体PETフィルム」と略称する)(厚さ38μm)上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが20μmとなるようにダイコーターにて均一に塗布し、80〜100℃(平均90℃)で5分間乾燥した(樹脂組成物層中の残留溶媒量約2質量%)。次いで、カバーフィルムとしてアルキッド系離型剤で処理された厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下「カバーPETフィルム」と略称する)を樹脂組成物層の表面に貼り合わせながらロール状に巻き取った。ロール状の封止用シートを幅507mmにスリットし、507×336mmサイズの封止用シート1を得た。
【0102】
<封止用シート2〜4の作製>
封止用シート1および以下の支持体2〜4のいずれかを用いて、封止用シート2〜4を作製した。
・バリア層を有するプラスチックフィルム
支持体2:東海東洋アルミ販売社製「アルペット1N30」(プラスチックフィルム:厚さ25μmのPET、バリア層:厚さ30μmのアルミニウム箔)
支持体3:プラスチックフィルム(厚さ125μmのPET)上に接着層、バリア層(無機物蒸着層)が順に設けられたフィルム
・バリア層を有さないプラスチックフィルム
支持体4:東レ社製「ルミラーT60」(厚さ100μmのPET)
【0103】
幅25mmおよび長さ100mmにカットした支持体に、カバーPETフィルムを剥離した封止用シート1(幅20mm、長さ50mm)を、熱硬化性樹脂組成物層が支持体2〜4のいずれかに接触するように重ね合わせた。なお、バリア層を有する支持体2または3を使用する場合、該バリア層に熱硬化性樹脂組成物層が接触するように、カバーPETフィルムを剥離した封止用シート1と支持体2または3とを重ね合わせた。重ね合わせたものを、ロールラミネーターVA770H(大成ラミネーター社製、ラミネート温度80℃、ロール速度0.5mL/分、ロール圧0.1MPa)を用いてラミネートし、熱硬化性樹脂組成物層を各支持体2〜4上に有する各封止用シート2〜4を得た。
【0104】
<実施例1>
(1)平滑性およびボイド評価用サンプルの作製
線状の銅箔と銅箔が無い部分とで縞模様を構成するようにエッチングされた銅箔付ポリイミドテープ(三井金属社製、品名「AJ−C0002−30/40」、銅箔厚さ5μm、ポリイミド厚さ40μm、(線状の銅箔(ライン)の幅15μm、銅箔が無い部分(スペース)の幅15μm)をパターン基板として用いて、以下のようにして平滑性およびボイド評価用サンプルを作製した。
【0105】
厚さ0.8mmのステンレス鋼(SUS)板の上にパターン基板を仮止めした。封止用シート1からカバーPETフィルムを剥離し、熱硬化性樹脂組成物層がパターン基板と接するようにパターン基板と重ね合わせ、ロールラミネーターVA770H(大成ラミネーター社製、ロールの材質:シリコーンゴム)を、ラミネート温度80℃、ロール速度0.1m/分、ロール圧0MPa、大気雰囲気中の大気圧下の条件で用いて、これらをラミネートした。続けて、熱プレス装置(平板プレス機)としてバッチ式真空加圧ラミネーターCVP−300(モートン社製、平板の材質:SUS 603H)を、プレス温度90℃、プレス圧0.15MPaし、プレス時間300秒、大気雰囲気中の大気圧下の条件で用いて、封止用シートをラミネートしたパターン基板を熱プレスした。次いで、プレスされた封止用シートから支持体PETフィルムを剥離した。その後、110℃、30分で熱硬化性樹脂層を硬化させて封止層(熱硬化性樹脂組成物層の硬化物)を形成し、平滑性およびボイド評価用サンプルを作製した。
【0106】
(2)密着性およびボイド評価用サンプルの作製
厚さ0.8mmのSUS板の上にガラス板(幅26mm、長さ76mm、厚さ1mm)を仮止めした。各封止用シート2〜4から支持体PETフィルムを剥離し、熱硬化性樹脂組成物層がガラス板と接するように、封止用シートとガラス板とを重ねあわせ、ロールラミネーターVA770H(大成ラミネーター社製)を、ラミネート温度80℃、ロール速度0.1m/分、ロール圧0MPa、大気雰囲気中の大気圧下の条件で用いて、これらをラミネートした。続けて、熱プレス装置(平板プレス機)としてバッチ式真空加圧ラミネーターCVP−300(モートン社製)を、プレス温度90℃、プレス圧0.15MPaとし、プレス時間300秒、大気雰囲気中の大気圧下の条件で用いて、封止用シートをラミネートしたガラス板を熱プレスした。その後、110℃、30分で熱硬化性樹脂層を硬化させて封止層(熱硬化性樹脂組成物層の硬化物)を形成し、密着性およびボイド評価用サンプルを作製した。
【0107】
<実施例2>
ロール速度を0.1m/分から1.0m/分に変更したこと以外は実施例1と同様にして、平滑性およびボイド評価用サンプル並びに密着性およびボイド評価用サンプルを作製した。
【0108】
<実施例3>
ロールラミネートの工程を不活性ガス(窒素)雰囲気下(圧力:1013.25hPa)、グローブボックス内で実施したこと以外は実施例2と同様にして、平滑性およびボイド評価用サンプル並びに密着性およびボイド評価用サンプルを作製した。
【0109】
<比較例1>
ロールラミネーターによるラミネート後に熱プレスを行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、平滑性およびボイド評価用サンプル並びに密着性およびボイド評価用サンプルを作製した。
【0110】
<比較例2>
ロール速度を0.1m/分から1.0m/分に変更したこと以外は比較例1と同様にして、平滑性およびボイド評価用サンプル並びに密着性およびボイド評価用サンプルを作製した。
【0111】
<比較例3>
ロール圧を0MPaから0.15MPaに変更したこと以外は比較例1と同様にして、平滑性およびボイド評価用サンプル並びに密着性およびボイド評価用サンプルを作製した。
【0112】
<比較例4>
ロールラミネーターによるラミネートを行わずに、熱プレスのみを行ったこと以外は実施例1と同様にして、平滑性およびボイド評価用サンプル並びに密着性およびボイド評価用サンプルを作製した。
【0113】
<比較例5>
プレス温度を90℃から110℃に変更し、プレス時間を300秒から1800秒に変更したこと以外は比較例4と同様にして、平滑性およびボイド評価用サンプル並びに密着性およびボイド評価用サンプルを作製した。
【0114】
<比較例6>
(1)平滑性およびボイド評価用サンプルの作製
実施例1と同様に、銅箔付ポリイミドテープをパターン基板として用いて、以下のようにして平滑性およびボイド評価用サンプルを作製した。
【0115】
厚さ0.8mmのSUS板の上にパターン基板を仮止めした。封止用シート1からカバーPETフィルムを剥離し、熱硬化性樹脂組成物層がパターン基板と接するように、封止用シートとパターン基板とを重ね合わせ、ダイヤフラム式真空加圧ラミネーターV−160(モートン社製)を、設定温度80℃、真空度1.2hPaの条件にて20秒間保持した後、真空状態を大気雰囲気に戻し、大気雰囲気中の大気圧下、ラミネート圧0.1MPa、ラミネート時間20秒の条件で、これらをラミネートした。次いで、プレスされた封止用シートから支持体PETフィルムを剥離した。その後、110℃、30分で熱硬化性樹脂層を硬化させて封止層(熱硬化性樹脂組成物層の硬化物)を形成し、平滑性およびボイド評価用サンプルを作製した。
【0116】
(2)密着性およびボイド評価用サンプルの作製
厚さ0.8mmのSUS板の上にガラス板(幅26mm、長さ76mm、厚さ1mm)を仮止めした。各封止用シート2〜4から支持体PETフィルムを剥離し、熱硬化性樹脂組成物層がガラス板と接するように、封止用シートとガラス板とを重ね合わせ、ダイヤフラム式真空加圧ラミネーターV−160(モートン社製)にて、設定温度80℃、真空度1.2hPaの条件にて、20秒間保持した後、真空状態を大気雰囲気に戻し、大気雰囲気中の大気圧下、ラミネート圧0.1MPa、ラミネート時間20秒の条件で、これらをラミネートした。その後、110℃、30分で熱硬化性樹脂層を硬化させて封止層(熱硬化性樹脂組成物層の硬化物)を形成し、密着性およびボイド評価用サンプルを作製した。
【0117】
上述の実施例および比較例で作製した平滑性およびボイド評価用サンプル並びに密着性およびボイド評価用サンプルを用いて、以下のようにしてボイド、平滑性および密着性を評価した。
【0118】
<ボイドの評価>
目視および光学顕微鏡(倍率150倍)にて、平滑性およびボイド評価用サンプル並びに密着性およびボイド評価用サンプルにおける封止層とパターン基板またはガラス板との間にボイドが存在するか否かを観察した。光学顕微鏡でボイドが観察されなかった場合を良好(○)と評価し、目視または光学顕微鏡でボイドが観察された場合を不良(×)と評価した。
【0119】
<平滑性評価(ギャップの測定)>
非接触型表面粗さ計(ビーコインスツルメンツ製WYKO、GT−3)を、VSIコンタクトモード、50倍レンズ、測定範囲126μm×94μmの条件で用いて、平滑性およびボイド評価用サンプルの封止層表面で、パターン基板において線状の銅箔(ライン)がある部分と、銅箔が無い部分(スペース)部分との高さの差(ギャップ)を測定した。
【0120】
<密着性評価(ピール強度の測定)>
JIS C6481に準拠して、インストロン万能試験機を、室温、50mm/分の速度の条件で用いて、密着性およびボイド評価用サンプルから支持体を垂直方向に20mm引き剥がした時の荷重を、支持体と封止層との間のピール強度として測定した。
【0121】
実施例および比較例の封止方式および条件を表1に、評価結果を表2に示す。
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
表1および2に示すように、ロールラミネートに続けて熱プレスを行う実施例1〜3では、ボイドを発生させることなく、平滑性および密着性の高い封止層が得られた。
【0125】
一方、ロールラミネートしか行わない比較例1〜3では、得られた封止層の平滑性が低い。また、熱プレスしか行わない比較例4および5では、得られた封止層にボイドが発生し、平滑性および密着性も低い。また、高コストである真空ラミネートを行った比較例6では、ボイドを発生させることなく、密着性の高い封止層が得られたが、実施例1および2と比べて、封止層の平滑性が劣っていた。