(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する主剤と、1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物を含有する硬化剤と、を有する2液ウレタン系接着剤組成物であって、
前記主剤と前記硬化剤のうちの一方又は両方が、(メタ)アクリルアミド化合物を含有し、
前記(メタ)アクリルアミド化合物が、ヒドロキシ基を有するN−アルキル(メタ)アクリルアミド及びエーテル結合を有するN−アルキル(メタ)アクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種である、2液ウレタン系接着剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の2液ウレタン系接着剤組成物(以下、これを「本発明の接着剤組成物」と略す。)は、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する主剤と、1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物を含有する硬化剤と、を有する2液ウレタン系接着剤組成物であって、前記主剤と前記硬化剤のうちの一方又は両方が、(メタ)アクリルアミド化合物を含有する、2液ウレタン系接着剤組成物である。
【0010】
本発明においては、上述したとおり、(メタ)アクリルアミド化合物を含有することによって、プライマーを用いずとも基材(特にオレフィン樹脂)との接着性が良好となる。
これは、詳細には明らかではないが、(メタ)アクリルアミド化合物が、基材に浸み込みやすく、(メタ)アクリルアミド化合物が基材に浸み込む際にウレタンプレポリマー及び/又は活性水素含有基を有する化合物を伴うため、本発明の接着剤組成物が硬化したのち、接着剤層と基材との接着性が良好になると考えられる。
なお上記メカニズムは本発明者らの推測であり、メカニズムが異なっていても本発明の範囲内である。
【0011】
〔主剤〕
本発明の接着剤組成物の主剤は、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する。
【0012】
<ウレタンプレポリマー>
本発明の接着剤組成物の主剤に含有されるウレタンプレポリマーは、1分子内に複数のイソシアネート基を分子末端に含有するポリマーである。
このようなウレタンプレポリマーとしては、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリイソシアネート化合物と1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(以下、これを「活性水素化合物」と略す。)とを、活性水素含有基に対してイソシアネート基が過剰となるように反応させることにより得られる反応生成物等を用いることができる。
本発明において、活性水素含有基は活性水素を含有する基を意味する。活性水素含有基としては例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、イミノ基が挙げられる。
【0013】
(ポリイソシアネート化合物)
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリイソシアネート化合物は、分子内にイソシアネート基を2個以上有するものであれば特に限定されない。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI。例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート)、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H
6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H
12MDI)のような、脂肪族及び/又は脂環式のポリイソシアネート;これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネートが挙げられる。
【0014】
このようなポリイソシアネート化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらのうち、硬化性に優れる理由から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、MDIがより好ましい。
【0015】
(活性水素化合物)
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用される1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(活性水素化合物)は特に限定されない。活性水素含有基としては、例えば、水酸(OH)基、アミノ基、イミノ基が挙げられる。
【0016】
上記活性水素化合物としては、例えば、1分子中に2個以上の水酸(OH)基を有するポリオール化合物、1分子中に2個以上のアミノ基および/またはイミノ基を有するポリアミン化合物等が好適に挙げられ、中でも、ポリオール化合物であるのが好ましい。
【0017】
上記ポリオール化合物は、OH基を2個以上有する化合物であれば、その分子量および骨格などは特に限定されず、その具体例としては、ポリエーテルポリオール;ポリエステルポリオール;アクリルポリオール、ポリブタジエンジオール、水素添加されたポリブタジエンポリオールなどの炭素−炭素結合を主鎖骨格に有するポリマーポリオール;低分子多価アルコール類;これらの混合ポリオールが挙げられる。なかでも、ポリエーテルポリオールが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0018】
ポリエーテルポリオールは、主鎖としてポリエーテルを有し、ヒドロキシ基を2個以上有する化合物であれば特に制限されない。ポリエーテルとは、エーテル結合を2以上有する基であり、その具体例としては、例えば、構造単位−R
a−O−R
b−を合計して2個以上有する基が挙げられる。ここで、上記構造単位中、R
aおよびR
bは、それぞれ独立して、炭化水素基を表す。炭化水素基は特に制限されない。例えば、炭素数1〜10の直鎖状のアルキレン基が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレンジオール(ポリエチレングリコール)、ポリオキシプロピレンジオール(ポリプロピレングリコール:PPG)、ポリオキシプロピレントリオール、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ポリテトラエチレングリコール、ソルビトール系ポリオール等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールは、ポリイソアネート化合物との相溶性に優れるという観点から、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレントリオールが好ましい。
ポリエーテルポリオールの重量平均分子量は、イソシアネート化合物との反応によって得られるウレタンプレポリマーの粘度が常温において適度な流動性を有するという観点から、500〜20,000であるのが好ましい。本発明において上記重量平均分子量は、GPC法(溶媒:テトラヒドロフラン(THF))により得られたポリスチレン換算値である。
活性水素化合物はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
ウレタンプレポリマーは、接着性により優れ、硬化性に優れるという観点から、ポリエーテルポリオールと芳香族ポリイソシアネート化合物とを反応させてなるウレタンプレポリマーであるのが好ましい。
ウレタンプレポリマーはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ウレタンプレポリマーの製造方法は特に制限されない。例えば、活性水素化合物が有する活性水素含有基(例えばヒドロキシ基)1モルに対し、1.5〜2.5モルのイソシアネート基が反応するようにポリイソシアネート化合物を使用し、これらを混合して反応させることによってウレタンプレポリマーを製造することができる。
【0020】
〔硬化剤〕
本発明の接着剤組成物の硬化剤は、1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物を含有する。
【0021】
<1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物>
本発明の接着剤組成物の硬化剤(広義の硬化剤)に含有される1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物は、上述した主剤に含有される上記ウレタンプレポリマーを硬化させる成分(狭義の硬化剤成分)である。
硬化剤に含有される1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物としては、上記ウレタンプレポリマーの製造に用いる活性水素化合物と同様の化合物が挙げられる。なかでも、ポリオール化合物であるのが好ましい。ポリオール化合物は上記と同様である。
特に、ポリオール化合物は、接着性がより優れ、硬化性に優れるという観点からポリエーテルポリオールが好ましい。ポリエーテルポリオールは上記と同様である。
硬化剤に含有される1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基と、硬化剤に含有される1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物が有する活性水素含有基のモル比(イソシアネート基/活性水素含有基)は、接着性により優れ、硬化性に優れるという観点から、1.0〜20であるのが好ましく、1.4〜10であるのがより好ましい。
【0023】
(メタ)アクリルアミド化合物について以下に説明する。
本発明の接着剤組成物に含有される(メタ)アクリルアミド化合物は、1分子中に少なくとも1個のCH
2=CR−CO−Nで表される基を有する化合物(Rは水素原子又はメチル基である。)であれば特に制限されない。
なお、本発明において、(メタ)アクリルアミド化合物は、(メタ)アクリルアミド化合物をモノマーとし、(メタ)アクリルアミド化合物が有する、ビニル基又はイソプロペニル基が重合して得られる重合体を含まない。
【0024】
(メタ)アクリルアミド化合物としては例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【化1】
【0025】
式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基を示す。
式(1)中、R
2、R
3はそれぞれ独立に、水素原子、又は、ヘテロ原子を有してもよい炭化水素基を示す。ヘテロ原子としては例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子が挙げられる。nが1であり、R
2及び/又はR
3がヘテロ原子を有してもよい炭化水素基である場合、R
2、R
3は互いに結合して環構造を形成してもよい。
【0026】
R
2及びR
3が水素原子である場合、式(1)で表される化合物は(メタ)アクリルアミドとなる。
式(1)中、nは1以上であり、1〜2であるのが好ましい。
【0027】
上記炭化水素基は特に制限されない。炭化水素基が有する炭素数は1〜20とすることができる。炭化水素基としては例えば、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、これらの組み合わせが挙げられる。炭化水素基は直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、不飽和結合を有してもよい。
炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、エイコシル基が挙げられる。
炭素数3〜20の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
炭素数6〜20の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフタレン環、アントラセン環が挙げられる。
炭化水素基は、なかでも、脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
【0028】
炭化水素基がヘテロ原子を有する場合、例えば、炭素数2以上の場合炭化水素基の中の炭素原子の少なくとも1つがヘテロ原子若しくはヘテロ原子を有する官能基(例えば、2価以上の官能基)に置換されてもよく、及び/又は、炭化水素基(この場合炭素数は制限されない)の中の水素原子の少なくとも1つがヘテロ原子を含む官能基(例えば、1価の官能基)に置換されてもよい。
【0029】
上記官能基としては例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、アルコキシシリル基のような1価の官能基;カルボニル基、ウレタン結合、尿素結合、アロファネート結合のような2価以上の官能基が挙げられる。
【0030】
炭化水素基の中の炭素原子の少なくとも1つがヘテロ原子に置換された場合、このようなヘテロ原子は、例えば、エーテル結合、第2級アミン、第3級アミン、スルフィド結合を形成することができる。
炭化水素基の中の炭素原子の少なくとも1つがヘテロ原子に置換された炭化水素基としては、例えば、N,N−ジメチルアミノプロピル基のような第3級アミン;−CH
2CH
2−O−CH
2CH
2−のようなエーテル結合が挙げられる。
【0031】
炭化水素基の中の炭素原子の少なくとも1つがヘテロ原子を含む官能基に置換された炭化水素基としては、例えば、1,1−ジメチル−3オキソブチル基のような、官能基としてカルボニル基を有する炭化水素基が挙げられる。
【0032】
上記式(1)において、R
2、R
3が互いに結合して環構造を形成した場合、結合したR
2、R
3としては、例えば、エーテル結合を有してもよい2価の炭化水素基が挙げられる。エーテル結合を有する2価の炭化水素基としては、例えば、−R
4−O−R
5−が挙げられる。上記式中のR
4、R
5はそれぞれ独立に2価の炭化水素基である。
【0033】
R
4、R
5としての2価の炭化水素基が有する炭素数は1〜20であるのが好ましい。R
4、R
5としての2価の炭化水素基は、2価の脂肪族炭化水素基であるのが好ましい。2価の脂肪族炭化水素基としては例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基が挙げられる。
【0034】
エーテル結合を有する2価の脂肪族炭化水素基としては例えば、−CH
2CH
2−O−CH
2CH
2−が挙げられる。
R
2、R
3が互いに結合して環構造を形成した場合、環構造としては例えば、モルホリノ基が挙げられる。
【0035】
なかでも、(メタ)アクリルアミド化合物は、接着性により優れ、ウレタンプレポリマー及び/又は1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(例えば、ポリオール)のようなマトリクス成分との相溶性に優れるという観点から、(メタ)アクリルアミド化合物が有するアミド結合の窒素原子にヘテロ原子を有してもよいアルキル基が少なくとも1個結合する化合物であるのが好ましく、式(1)中のR
2、R
3の一方又は両方が、ヘテロ原子を有してもよい炭化水素基であるのがより好ましい。また、(メタ)アクリルアミド化合物との相溶性に優れるという観点から、ウレタンプレポリマーは常温において液状であるのが好ましい。
【0036】
式(1)中のR
2、R
3の一方又は両方が、ヘテロ原子を有してもよい炭化水素基である化合物としては、例えば、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシ基を有するN−アルキル(メタ)アクリルアミド、エーテル結合を有するN−アルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0037】
なお、本発明において、N−アルキル(メタ)アクリルアミドはN−モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドを含む。また、N−アルキル(メタ)アクリルアミドにおいてアルキル基が有する炭素原子の少なくとも1つが上記ヘテロ原子で置換されていてもよい。
【0038】
また、ヒドロキシ基を有するN−アルキル(メタ)アクリルアミドは、アクリルアミド基の窒素原子に結合する少なくとも1個のアルキル基がヒドロキシ基を有することができる。アクリルアミド基の窒素原子に結合するアルキル基がヒドロキシ基を有する(メタ)アクリルアミド化合物を、N−ヒドロキシ基含有アルキル(メタ)アクリルアミドという。
【0039】
エーテル結合を有するN−アルキル(メタ)アクリルアミドは、アクリルアミド基の窒素原子に結合する少なくとも1個のアルキル基がエーテル結合を有することができる。アクリルアミド基の窒素原子に結合するアルキル基がエーテル結合を有する(メタ)アクリルアミド化合物を、N−エーテル結合含有アルキル(メタ)アクリルアミドという。N−エーテル結合含有アルキル(メタ)アクリルアミドにおいて、アクリルアミド基の窒素原子に結合する、エーテル結合を有するアルキル基が上記窒素原子に結合し、エーテル結合を有するアルキル基と窒素原子とが環構造を形成してもよい。
【0040】
式(1)中のR
2、R
3の一方又は両方が、ヘテロ原子を有してもよい炭化水素基である化合物としては、具体的には例えば、
N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド(DMAA)、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド(DEAA)のような無置換のN−アルキル(メタ)アクリルアミド;
【0041】
N−(N,N−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド(DMAPAA)のようなN−第3級アミン含有アルキル(メタ)アクリルアミド;
【0042】
下記式(2)で表されるN−エーテル結合含有アルキル(メタ)アクリルアミド
【0043】
【化2】
(式(2)中、R
1は水素原子又はメチル基を示し、R
4、R
5はそれぞれ独立に2価の脂肪族炭化水素基を示す。R
4、R
5としての2価の脂肪族炭化水素基は上記と同様である。)N−エーテル結合含有アルキル(メタ)アクリルアミドとしては具体的には例えば、下記式で表されるアクリロイルモルホリン(ACMO)、メタクリロイルモルホリンが挙げられる。
【化3】
;
【0044】
下記式(3)で表されるN−ヒドロキシ基含有アルキル(メタ)アクリルアミド
【化4】
(式(3)中、R
1は水素原子又はメチル基を示し、R
6は2価の脂肪族炭化水素基を示す。R
6としての2価の脂肪族炭化水素基はR
4、R
5としての2価の脂肪族炭化水素基と同様である。)N−ヒドロキシ基含有アルキル(メタ)アクリルアミドとしては具体的には例えば、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミドが挙げられる。;
【0045】
下記式で表されるN−(1,1−ジメチル−3オキソブチル)アクリルアミド(DAAM:ダイアセトンアクリルアミド)のようなN−カルボニル基含有アルキル(メタ)アクリルアミド
【化5】
;
【0046】
ポリイソシアネート化合物とN−ヒドロキシ基含有アルキル(メタ)アクリルアミドとの反応生成物が挙げられる。
【0047】
ポリイソシアネート化合物とN−ヒドロキシ基含有アルキル(メタ)アクリルアミドとの反応生成物としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネートの変性体とN−ヒドロキシ基含有アルキル(メタ)アクリルアミドとの反応生成物が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートの変性体は、1分子中イソシアネート基を2個以上有するのが好ましい態様の1つとして挙げられ、イソシアネート基の数が2個であるのが好ましい。
脂肪族ポリイソシアネートの変性体としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネートのアロファネート変性体が挙げられ、具体的には例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のアロファネート変性体が挙げられる。
N−ヒドロキシ基含有アルキル(メタ)アクリルアミドは、少なくとも1個のヒドロキシ基を有するアルキル基を有する(メタ)アクリルアミドであるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。当該化合物が有するヒドロキシ基の数は1分子中1個であるのが好ましい。
N−ヒドロキシ基含有アルキル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド(HEAA)が挙げられる。
【0048】
ポリイソシアネート化合物とN−ヒドロキシ基含有アルキル(メタ)アクリルアミドとの反応生成物は、ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基の少なくとも1個若しくは全てとN−ヒドロキシ基含有アルキル(メタ)アクリルアミドとが反応した化合物又はこれらの混合物であってもよい。
【0049】
(メタ)アクリルアミド化合物は、なかでも、接着性により優れ、ウレタンプレポリマー及び/又は1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物との相溶性に優れるという観点から、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシ基を有するN−アルキル(メタ)アクリルアミド、N−エーテル結合含有アルキル(メタ)アクリルアミドが好ましく、
式(3)で表されるN−ヒドロキシ基含有アルキル(メタ)アクリルアミド、式(2)で表されるN−エーテル結合含有アルキル(メタ)アクリルアミドがより好ましく、
DMAA、DEAA、HEAA、ACMOが更に好ましい。
【0050】
また、(メタ)アクリルアミド化合物は、耐温水接着性に優れるという観点から、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシ基を有するN−アルキル(メタ)アクリルアミド、N−エーテル結合含有アルキル(メタ)アクリルアミドが好ましく、
ヒドロキシ基を有するN−アルキル(メタ)アクリルアミド、N−エーテル結合含有アルキル(メタ)アクリルアミドがより好ましく、
式(3)で表されるN−ヒドロキシ基含有アルキル(メタ)アクリルアミド、式(2)で表されるN−エーテル結合含有アルキル(メタ)アクリルアミドが更に好ましく、
HEAA、ACMOが特に好ましい。
【0051】
耐温水接着性に優れるという観点から、(メタ)アクリルアミド化合物が硬化剤に含有されることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0052】
また、(メタ)アクリルアミド化合物は、初期接着性に優れるという観点から、エーテル結合を有するN−エーテル結合含有アルキル(メタ)アクリルアミドが好ましく、式(2)で表されるN−エーテル結合含有アルキル(メタ)アクリルアミドがより好ましく、ACMOが更に好ましい。
【0053】
初期接着性に優れるという観点から、(メタ)アクリルアミド化合物が主剤に含有されることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0054】
(メタ)アクリルアミド化合物はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。(メタ)アクリルアミド化合物はその製造について特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
【0055】
(メタ)アクリルアミド化合物の含有量は、接着性により優れ、(メタ)アクリルアミド化合物を含有した、主剤及び/又は硬化剤の粘度(例えば常温における粘度)が適正なものとなり作業性に優れるという観点から、2液ウレタン系接着剤組成物中の0.01〜30質量%であるのが好ましく、0.1〜5質量%であるのがより好ましい。
【0056】
本発明の接着剤組成物は、接着性により優れ、硬度など、2液ウレタン系接着剤組成物の硬化物の物性に優れるという観点から、主剤及び/又は硬化剤が、更にカーボンブラック及び/又は炭酸カルシウムを含有するのが好ましい。
【0057】
本発明の接着剤組成物に使用することができるカーボンブラックは特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。カーボンブラックはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明において、カーボンブラックの含有量は、2液ウレタン系接着剤組成物100質量部中、10〜80質量部であるのが好ましく、15〜60質量部であるのがより好ましい。
【0058】
本発明の接着剤組成物に使用することができる炭酸カルシウムは特に制限されない。例えば、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム)、コロイダル炭酸カルシウムが挙げられる。炭酸カルシウムは、例えば、脂肪酸、脂肪酸エステル等で表面処理がなされていてもよい。炭酸カルシウムはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0059】
本発明において、炭酸カルシウムの含有量は、2液ウレタン系接着剤組成物100質量部中の、1〜50質量部であるのが好ましく、3〜30質量部であるのがより好ましい。
【0060】
<任意成分>
本発明の接着剤組成物は、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、カーボンブラック、炭酸カルシウム以外の充填剤、硬化触媒、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、接着付与剤、帯電防止剤などの各種添加剤等を含有することができる。添加剤の量は特に制限されない。例えば従来公知と同様とすることができる。
【0061】
なお、本発明の接着剤組成物は水系でないのが好ましい態様の1つとして挙げられる。本発明の接着剤組成物が水を含有する場合、水の量は、2液ウレタン系接着剤組成物中の10質量%以下とすることができる。
【0062】
本発明の接着剤組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、ウレタンプレポリマーを含有する主剤を1つの容器に入れ、1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物を含有する硬化剤を別の容器に入れて、それぞれの容器内を窒素ガス雰囲気下で別々に混合する方法により製造することができる。このとき、主剤と硬化剤のうちの一方又は両方に、(メタ)アクリルアミド化合物を添加することができる。
【0063】
本発明の接着剤組成物は2液型である。
本発明において、主剤と硬化剤のうちの一方又は両方が、(メタ)アクリルアミド化合物を含有する。主剤と硬化剤のうちの一方が(メタ)アクリルアミド化合物を含有するのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
少なくとも硬化剤が(メタ)アクリルアミド化合物を含有する場合、接着性(特に耐温水接着性)に優れ、貯蔵安定性に優れるので好ましい。
少なくとも主剤が(メタ)アクリルアミド化合物を含有する場合、接着性(特に初期接着性)に優れるので好ましい。
本発明の接着剤組成物を使用する際、主剤と硬化剤とを混合して使用すればよい。混合の方法は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0064】
本発明の接着剤組成物を適用することができる基材としては、例えば、プラスチック、ガラス、ゴム、金属等が挙げられる。
プラスチックとしては、例えば、プロピレン、エチレンやシクロオレフィン系モノマーの重合体が挙げられる。上記の重合体は単独重合体、共重合体、水素添加物であってもよい。
具体的なプラスチックとしては例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、COP、COCのようなオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA樹脂)、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アセテート樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエンゴム・スチレン共重合体)、ポリアミド樹脂のような難接着性樹脂が挙げられる。
ここで、COCは、例えば、テトラシクロドデセンとエチレン等のオレフィンとの共重合体のようなシクロオレフィンコポリマーを意味する。
また、COPは、例えば、ノルボルネン類を開環重合し、水素添加して得られる重合体のようなシクロオレフィンポリマーを意味する。
基材は表面処理がなされていてもよい。表面処理としては例えば、フレーム処理やコロナ処理やイトロ処理が挙げられる。これらの処理は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
本発明の接着剤組成物を基材に適用する方法は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0065】
本発明の接着剤組成物は、湿気によって硬化することができる。例えば、5〜90℃、相対湿度5〜95(%RH)の条件下で本発明の接着剤組成物を硬化させることができる。
なお、本発明において、紫外線等の光を照射することによって本発明の接着剤組成物を硬化させないのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0066】
本発明の接着剤組成物の用途としては、例えば、ダイレクトグレージング剤、自動車用シーラント、建築部材用シーラントが挙げられる。
【実施例】
【0067】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、本明細書中、実施例1、2、4〜8、10をそれぞれ参考例1、2、4〜8、10と読み替えるものとする。
【0068】
下記第1表の各成分を、第1表に示す組成(質量部)で、撹拌機を用いて混合し、各主剤、各硬化剤を製造した。
次に、上記のとおり製造された主剤100gと、上記のとおり製造された硬化剤とを第1表に示す主剤/硬化剤混合比で混合し、接着剤組成物を得た。
製造された各接着剤組成物について、下記の方法により接着性を評価した。結果を第1表に示す。
【0069】
<接着性(剪断強度)>
ポリプロピレン樹脂(商品名ノーブレン、住友化学社製)からなる基板(幅:25mm、長さ:120mm、厚さ:3mm)の片面にフレーム処理を施した被着体を2枚用意した。
被着体をフレーム処理後、ぬれ張力試験用混合液(和光純薬工業社製)を用いて樹脂表面の濡れ性が45.0mN/m以上であることを確認した。
次いで、一方の被着体の表面(フレーム処理を施した面)に、調製(混合)直後の各接着剤組成物を幅25mm、長さ10mm、厚さ5mmとなるように塗布した後、他方の被着体の表面(フレーム処理を施した面)と張り合わせ、圧着させることで試験体を作製した。
作製した試験体を以下の条件で放置した後に、JIS K6850:1999に準じた引張試験(引っ張り速度50mm/分、20℃の環境下)を行い、剪断強度(MPa)を測定した。結果を下記第1表に示す。
・条件1:23℃、50%RHの条件下で3日間放置(初期)
・条件2:23℃、50%RHの条件下で3日間放置後、更にその後60℃の温水に3日間浸漬
剪断強度が2.5MPa以上である場合、接着強度に優れるといえる。
【0070】
<接着性(破壊状態)>
剪断強度を測定した試験体について、破壊状態を目視で確認し、接着剤が凝集破壊しているものを「CF」と評価し、被着体−接着剤間で界面剥離しているものを「AF」と評価した。「CF」「AF」の後ろの数値は、接着面において各破壊状態が占めるおおよその面積(%)である。結果を下記第1表に示す。
CFが占める面積が80%以上である場合、接着性に優れるといえる。
【0071】
【表1】
【0072】
上記第1表に示されている各成分の詳細は以下のとおりである。
・ウレタンプレポリマー:ポリオキシプロピレンジオール(商品名サンニックスPP2000、三洋化成工業社製、重量平均分子量2,000)70質量部とポリオキシプロピレントリオール(商品名サンニックスGP3000、三洋化成工業社製、重量平均分子量3,000)とMDI(商品名スミジュール44S、住化バイエルウレタン社製)とをNCO/OH(モル比)が2.0となるように混合し、混合物を80℃の条件下で5時間反応させて製造したウレタンプレポリマー
・アクリルアミド:CH
2=CH−CONH
2
・DMAA:N,N−ジメチルアクリルアミド
・DEAA:N,N−ジエチルアクリルアミド
・HEAA:N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド
・DMAPAA:N−(ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド
・ACMO:アクリロイルモルホリン
・HEAAのイソシアネート付加物:HEAA9.4gとイソアネート化合物(ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のアロファネート体、商品名タケネートD−178NL、三井化学社製。1分子中にイソシアネート基を2個有する。)89.6gとを混合し(このときNCO/OHはモル比で5であった。)、これらを窒素雰囲気下で60℃で9時間反応させ、反応生成物を得た。得られた反応生成物は、上記イソシアネート化合物が有する2つのイソシアネート基のうち1つがHEAAの水酸基と反応して生成した化合物(1分子中に、アクリルアミド基、アロファネート結合の他、ウレタン結合、イソシアネート基を有する。)と、上記イソシアネート化合物が有する2つのイソシアネート基の両方がHEAAの水酸基と反応して生成した化合物と、未反応のイソシアネート化合物とを少なくとも含む混合物である。上記のとおりにして製造された反応物をHEAAのイソシアネート付加物として使用した。
・カーボンブラック:商品名#200MP、新日化カーボン社製
・炭酸カルシウム1:重質炭酸カルシウム、商品名スーパーS、丸尾カルシウム社製
・炭酸カルシウム2:脂肪酸で表面処理された炭酸カルシウム、カルファイン200、丸尾カルシウム社製
・ポリエーテルポリオール:ポリオキシエチレンを少量含有するポリオキシプロピレントリオール、重量平均分子量6,000、商品名プレミノール7001K、旭硝子社製
・可塑剤 DINP:ジイソノニルフタレート、ジェイプラス社製
・触媒 DMDEE:化合物名ジモルフォリノジエチルエーテル、商品名UCAT−660M、サンアプロ社製
・(メタ)アクリレート化合物1:アクリル酸ブチル(BA)
・(メタ)アクリレート化合物2:ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)
・(メタ)アクリルアミド化合物の重合物:冷却管、窒素導入管、温度計と攪拌装置を備えた500mlの反応容器に、ジメチルアクリルアミド2.0g、アクリル酸ブチル23.0gをエタノール200mlに溶解し、室温で30分間攪拌しながら、窒素置換した後に、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)0.162gを重合開始剤として加え、60℃で6時間重合反応を行なった後、反応後の混合液からエバポレーターでエタノールを除去して、ジメチルアクリルアミド−アクリル酸ブチルコポリマーを得た。得られたジメチルアクリルアミド−アクリル酸ブチルコポリマーは室温で液状であった。上記のとおり得られたポリマーを(メタ)アクリルアミド化合物の重合物とする。(メタ)アクリルアミド化合物の重合物は二重結合を有さない。
【0073】
上記第1表に示す結果から、所定の(メタ)アクリルアミド化合物を配合せずに調製した接着剤組成物は、接着性が劣ることが分かった(比較例1)。
また、(メタ)アクリレート(比較例2、4)や(メタ)アクリルアミド化合物の重合物(比較例3、5)をして調製した接着剤組成物は、接着性が劣ることが分かった。
【0074】
これに対し、(メタ)アクリルアミド化合物を含有する接着剤組成物は、接着性に優れた(実施例1〜12)。また、(メタ)アクリルアミド化合物を含有する接着剤組成物は、剪断強度が高く、プライマーを用いずとも基材に対する接着性が良好であることが分かった(実施例1〜12)。
実施例1〜12の結果から、(メタ)アクリルアミド化合物は主剤及び/又は硬化剤に添加することができることが分かった。
(メタ)アクリルアミド化合物が有するアミド結合の窒素原子に、ヘテロ原子を有してもよいアルキル基が少なくとも1個結合する場合(実施例1〜6、8〜12)、上記窒素原子に水素原子が2個結合する場合(実施例7)より、剪断強度がより高く、接着性により優れた。
主剤中のイソシアネート基と硬化剤中のヒドロキシ基の比の等しい実施例1、2を比較すると、(メタ)アクリルアミド化合物が有する窒素原子に置換するアルキル基がエチル基である場合、メチル基より剪断強度に優れた。実施例5、6の結果も同様であった。
実施例3、9の結果(温水浸漬後に評価された引張試験後の破壊状態がCF100%)から、(メタ)アクリルアミド化合物がヒドロキシ基を有する場合、耐温水接着性により優れた。
【0075】
実施例11、12の結果から、(メタ)アクリルアミド化合物がエーテル結合を有する場合、接着性により優れることが分かった。
詳細には、(メタ)アクリルアミド化合物が硬化剤に含有される、実施例11と実施例1、2、4、7とを耐温水接着性について比較すると、(メタ)アクリルアミド化合物がエーテル結合を有する実施例11は、エーテル結合を有さない実施例1、2、4、7よりも破壊状態が良く耐温水接着性に優れた。
また、(メタ)アクリルアミド化合物が主剤に含有される、実施例12と実施例5、6、8とを初期接着性について比較すると、(メタ)アクリルアミド化合物がエーテル結合を有する実施例12は、エーテル結合を有さない実施例5、6、8よりも破壊状態が良く初期水接着性に優れた。