(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0009】
《第1実施形態》
図1は、本発明の実施形態に係る電力変換装置を含む電気自動車の駆動システムの概要図である。なお、パワーモジュール5等は筐体10に収容されているため、実際には外部から見ることはできないが、
図1では説明のために図示されている。他の図でも同様に図示している。本例の電気自動車は、三相交流電力モータなどの電動機300を駆動源として走行する車両であり、電動機300は電気自動車の車軸に結合されている。以下、電気自動車を例に説明するが、本発明は、ハイブリッド自動車(HEV)にも適用することができ、また車両以外の装置に搭載される電力変換装置にも適用可能である。
【0010】
本実施形態に係る電力変換装置を含む駆動システムは、電力変換装置100と、直流電源200と、電動機300と、シールド線7、8を備えている。直流電源200は、複数の電池により構成され、シールド線7により電力変換装置100に接続されている。直流電源200は、車両の動力源となり、電力変換装置100に直流電力を供給する。電力変換装置100は、直流電源200と電動機300との間に接続され、直流電源200から供給される直流電力を交流電力に変換し電動機300に供給する。シールド線7、8は、金属線を樹脂により被覆することで形成される電線である。シールド線7は、一対のシールド線で構成され、一方のシールド線7は直流電源200の正極端子と給電母線11とを接続し、他方のシールド線7は直流電源200の負極端子と給電母線12とを接続する。シールド線8は三本のシールド線により構成され、3本のシールド線8は、電動機300のU相、V相、W相と対応して、バスバ6と電動機300とを接続する。
【0011】
電力変換装置100は、筐体10と、給電母線11、12と、受動素子
部と、平滑コンデンサ4と、パワーモジュール5と、バスバ6とを備えている。筐体10は、給電母線11、12、受動素子
部、平滑コンデンサ4、パワーモジュール5、及びバスバ6を収容するためのケースであって、金属により構成されている。給電母線11は、板状(平板)の導電体により形成され、直流電源200の正極側から出力される電力をパワーモジュール5に給電する電源線であって、電力変換装置100を構成するインバータ回路のうち、P側の電源線に相当する。給電母線12は、板状(平板)の導電体により形成され、直流電源200の負極側から出力される電力をパワーモジュール5に給電する電源線であって、電力変換装置100を構成するインバータ回路のうち、N側の電源線に相当する。給電母線11の両主面のうち、一方の面は筐体10の内側の面と隙間を空けつつ対向している。また給電母線12の両主面のうち、一方の面は筐体10の内側の面と隙間を空けつつ対向している。給電母線11の他方の主面、及び、給電母線12の他方の主面は、隙間を空けつつ互いに対向している。給電母線11、12の一部、又は、給電母線11、12の先端部分が、電力変換装置100の端子(タブ)となって、シールド線7の先端に接続されている。給電母線11、12が板状に形成されることで、給電母線11、12の抵抗成分及びインダクタンス成分を低減することができる。
【0012】
給電母線11、12はそれぞれ電流の流れを分岐させるよう、平滑コンデンサ4の正極端子と負極端子にそれぞれ接続され、パワーモジュール5の正極端子と負極端子にそれぞれ接続されている。給電母線11、12と平滑コンデンサ4、及び、給電母線11、12とパワーモジュール5は、配線で接続されている。平滑コンデンサ4は、給電母線11及び給電母線12との間に接続されることで、直流電源200とパワーモジュール5との間に接続される。平滑コンデンサ4は、直流電源200に入出力される電力を整流するコンデンサである。
【0013】
パワーモジュール5は、給電母線11、12を介して、直流電源200とバスバ6との間に接続されている。パワーモジュール5は、IGBT又はMOSFET等のモジュール化された、複数の半導体スイッチング素子を基板上に複数有している。そして、図示しないコントローラからの制御信号に基づき、当該半導体スイッチング素子をオン及びオフさせることで直流電源からの電力を変換して、バスバ6を介して電動機300に電力を出力するインバータである。図示しないコントローラが、車両のアクセル開度と対応するトルク指令値から、当該半導体スイッチング素子のスイッチング信号を生成し、パワーモジュール5に出力することで、当該半導体スイッチング素子のオン及びオフが切り換えられて、電動機300において所望の出力トルクを得るための交流電力がパワーモジュール5から出力される。パワーモジュール5は電動機300の各相に対応させて、U相、V相及びW相の出力線で、三相の電動機300に電気的に接続されている。
【0014】
バスバ6は、導電材料により板状の、3本の導電板で形成されており、パワーモジュール5とシールド線8と接続する。バスバ6の先端部分が、電力変換装置100の端子(タブ)となって、シールド線8の先端に接続されている。
【0015】
複数の接続回路21、22は、給電母線11と給電母線12に生じる電気的な振動(ノイズ)を抑制する回路であって、抵抗性部材と容量性部材を有している。また、接続回路21、22は、抵抗性部材と容量性部材とを直列に接続した直列回路により構成されている。抵抗性部材は、抵抗器などの受動素子である。容量性部材は、コンデンサなどの回路素子である。そして、給電母線11、12に生じるノイズが接続回路21、22に流れた場合に、ノイズは抵抗性部分で消費され、直流成分は容量性部材によりカットされる。接続回路21、22は、給電母線11と給電母線12との間に接続されている。また、接続回路21及び接続回路22は、互いに間隔を空けた状態で、給電母線11、12の長手方向に並んだ状態で、筐体10内に配置されている。
【0016】
接続回路21のインピーダンスと、接続回路22のインピーダンスは異なる値である。なお、
図1の例では、2つの接続回路21、22が給電母線11、12に接続されているが、接続回路21、22の数は、2個に限らず、3個以上であってもよい。また、3つ以上の接続回路を接続する場合には、全ての接続回路のインピーダンスが異なるように、接続回路の回路設計をしてもよく、複数の接続回路が、少なくとも2つの異なるインピーダンスをもつように、回路設計を行ってもよい。
【0017】
ここで、接続回路21、22で抑制されるスイッチングノイズについて説明する。スイッチングノイズは、パワーモジュール5のスイッチング動作により、給電母線11と給電母線12との間に発生する。そして、このスイッチングノイズが、給電母線11、12から筐体10に伝搬することで、筐体10からノイズが放射される。
【0018】
給電母線11、12から筐体10に伝搬するノイズの周波数は、給電母線11、12の形状等により決まる。
図1に示した板状の給電母線11、12の幅をaとし、長さをb(給電母線11、12の主面の短辺をa、長辺をb)とし、給電母線11、12間の誘電率をε
rとすると、スイッチングノイズの周波数(f
mn)は下記(1)式で表される。ただし、m、nはモード番号であり、整数である。
【数1】
【0019】
例えば、式(1)において、a=0.9m、b=0.03m、ε
r=4を代入すると、(m、n)=(1、0)で、周波数(f
10)83.3MHzとなる。この周波数(f
10)はFM周波数帯域(76MHz〜90MHz、87.5MHz〜108MHz)に入るため、周波数(f
10)をもつスイッチングノイズが筐体10外に放射された場合には、車載ラジオと干渉する可能性がある。また、スイッチングノイズが、車両に搭載された他の電子機器へ悪影響を及ぼす可能性もある。
【0020】
本実施形態に係る電力変換装置は、給電母線11及び給電母線12との間に、接続回路21及び接続回路22を接続している。これにより、パワーモジュール5のスイッチング動作により、給電母線11、12でスイッチングノイズが発生した場合に、給電母線11、12から筐体10へのスイッチングノイズの伝搬が、接続回路21、22により抑制されている。その結果として、本発明はパワーモジュール5のスイッチングによるノイズを抑制できる。また、接続回路21、22を設けるだけでよいため、部品点数が大幅に増加することなく、さらに小さく安価な素子により、高周波ノイズの低減を可能とする。
【0021】
また本実施形態では、接続回路21及び接続回路22が、互いに間隔を空けた状態で、給電母線11、12の長手方向に並んだ状態で、筐体10内に配置されている。これにより、これにより、
図1に示すように、給電母線11、12はそれぞれ電流の流れを分岐させるよう、平滑コンデンサ4等が給電母線11、12に接続されている場合に、電流の分岐点を避けた上で、接続回路21を給電母線11、12に接続することができる。
【0022】
また本実施形態では、接続回路21、22に含まれる抵抗性部材が受動性部材により構成されている。これにより、接続回路21、22を容易に構成することができる。
【0023】
次に、接続回路21のインピーダンスと接続回路22のインピーダンスの関係について、
図2を用いて説明する。
図2(a)は給電母線11、12及び接続回路21、22の斜視図を示し、
図2(b)は、給電母線11、12で発生する定在波を示すグラフであり、
図2(c)は、接続回路21、22の接続点の位置に対する接続回路21、22のインピーダンスを表したグラフである。なお、
図2(b)及び(c)の横軸は、給電母線11、12の端部から、給電母線11、12の長手方向の位置を表している。
図2(b)の縦軸は電圧(V)を表し、
図2(c)の縦軸はインピーダンスの大きさ(Ω)を表す。
図2(c)のZ
1は接続回路21のインピーダンスを示し、Z
2は接続回路2
2のインピーダンスを示す。
【0024】
パワーモジュール5のスイッチング動作により、給電母線11と給電母線12との間に振動が発生した場合には、振動波が給電母線11、12を伝搬する。このとき、振動波は、様々なモードをもった波であって、給電母線11、12の端部で反射する。そのため、給電母線11、12を伝搬する振動波が重なり、給電母線11、12には、
図2(a)に示すような定在波が発生する。
【0025】
定在波は、振幅の大きい部分と振幅の小さい部分を有しており、定在波の腹は、給電母線11、12の長手方向の端部に位置する。
【0026】
接続回路21と給電母線11との接続点、及び、接続回路21と給電母線12との接続点は、給電母線11、12の長手方向の座標軸上では、同一の位置となる。また、接続回路22と給電母線11との接続点、及び、接続回路22と給電母線12との接続点は、給電母線11、12の長手方向の座標軸上では、同一の位置となる。以下、接続回路21と給電母線11との接続点と、接続回路21と給電母線12との接続点の総称として「第1接続点」と称する。また、接続回路22と給電母線11との接続点と、接続回路22と給電母線12との接続点の総称として、「第2接続点」と称する。
【0027】
第1接続点は、給電母線11、12の端部の腹と、節との間に位置する。第2接続点は、給電母線11、12の中点の腹と、節との間に位置する。給電母線11、12の中点は、給電母線11、12の一方の端部と他方の端部との中間点である。また、定在波の腹の位置から第1接続点までの距離(
図2に示すd
1)は、定在波の腹の位置から第2接続点までの距離(
図2に示すd
2)よりも短い。ただし、定在波の腹の位置から第1接続点までの距離は、第1接続点に最も近い腹からの距離とし、定在波の腹の位置から第2接続点までの距離は、第2接続点に最も近い腹からの距離とする。
【0028】
接続回路21、22のインピーダンスは、定在波の振幅の絶対値に対して相関性をもっており、腹から第1、第2の接続点までの距離に応じて決まる。
図2(b)に示すように、定在波の腹から第1、第2接続点までの距離が長くなるほど、定在波の振幅の絶対値は小さくなっている。一方、定在波の腹から第1、第2接続点までの距離が長くなるほど、接続回路21、22のインピーダンスは
大きくなる。
【0029】
また、接続回路21、22のインピーダンス(Z)は下記式(2)で表される。
【0030】
【数2】
ただし、Rは、接続回路21、22の抵抗性部材の抵抗値を示し、Cは接続回路21、22の容量性部材の容量値を示す。
【0031】
本実施形態では、定在波の腹から第1接続点までの距離は、定在波の腹から第2接続点までの距離より短い。そして、接続回路21のインピーダンスは、接続回路22のインピーダンスよりも
小さい。これにより、給電母線11と給電母線12との間に生じる電気的な振動を、接続回路21、22で抑制できる。
【0032】
本発明のノイズ抑制効果について、
図3を用いて説明する。
図3は、本発明及び比較例に係るノイズ特性を示すグラフである。横軸は周波数であり、縦軸はノイズレベルを示す。
図3において、グラフaは本発明のノイズ特性を示し、グラフbは比較例のノイズ特性を示す。
【0033】
比較例では、特定の周波数faでノイズレベルが急激に高くなっている。一方、本実施形態では、特定の周波数faでノイズレベルが抑制されており、周波数faを含む広い周波数帯域で、ノイズが抑制できる。すなわち、本実施形態では、接続回路21、22に異なるインピーダンスをもたせて、給電母線11及び給電母線12との間に接続回路21、22を接続することで、ノイズを抑制できる。
【0034】
なお、定在波を1/4周期毎に区分けした場合に、本実施形態において、第1の接続点と第2の接続点は、別の区分に位置するが、第1の接続点及び第2の接続点は、同じ区分内に位置してもよい。
【0035】
上記のパワーモジュール5が本発明に係る「インバータ」に相当し、給電母線11が本発明に係る「第1の給電母線」に相当し、給電母線12が本発明に係る「第2の給電母線」に相当し、接続回路21が本発明に係る「第1の接続回路」に相当し、接続回路22が本発明に係る「第2の接続回路」に相当する。
【0036】
《第2実施形態》
本発明の他の実施形態に係る電力変換装置について説明する。本例では上述した第1実施形態に対して、第1の接続点の位置と、第2の接続点の位置が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、その記載を援用する。
【0037】
図4(a)は、給電母線11、12で発生する定在波を示すグラフであり、
図4(b)は、接続回路21、22の接続点の位置に対する接続回路21、22のインピーダンスを表したグラフである。なお、
図4(a)及び
図4(b)の縦軸及び横軸の表示は、
図2(b)及び
図2(c)と同様である。また、
図2(b)及び
図2(c)と異なり、
図4(a)及び
図4(b)では、定在波の1/4周期に相当する特性が示されている。
【0038】
第1の接続点は、定在波の腹に位置する。第2の接続点は、定在波の腹と節との間に位置する。
【0039】
ここで、給電母線11と給電母線12との間の特性インピーダンス(Z
12)について、式を用いて説明する。
図5は給電母線11、12の断面図である。
図6は、給電母線11、12の斜視図である。
【0040】
図5において、給電母線11と第2の給電母線との間の距離をdとし、給電母線11と給電母線12の互いに対向する対向面の面積をSとする。また、真空の誘電率をε
0とし、ε
rは比誘電率をε
rとする。
【0041】
給電母線11と給電母線12との間の容量(C
12)は下記式(3)で表される。
【0043】
図6において、給電母線11、12の長さをL、幅をW、高さHとする。給電母線11、12の自己インダクタンス(L)、給電母線11、12の相互インダクタンス(M)、及び給電母線11と給電母線12との間のインダクタンス(L
12)は下記式(4)〜(6)で表される。
【0045】
そして、給電母線11と給電母線12との間の特性インピーダンス(Z
12)は下記式(7)で表される。
【0047】
次に、接続回路21のインピーダンスと、給電母線11、12で発生するノイズとの関係を、
図7を用いて説明する。
図7は、接続回路21のインピーダンスに対するノイズレベルの特性を示すグラフである。ノイズレベルは、給電母線11と給電母線12との間で発生する振動(ノイズ)の大きさである。
【0048】
図7に示すように、接続回路21のインピーダンスが、給電母線11と給電母線12との間のインピーダンス(Z
12)に設定された場合には、給電母線11、12と接続回路21との間で、インピーダンスマッチングをとることができる。そして、
給電母線11、12で発生したノイズは、接続回路21に流れ易くなるため、ノイズを抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態において、
図7に示すように、接続回路21のインピーダンス(Z
1)が下記式(8)で表される範囲内に設定されれば、ノイズレベルの低減効果を十分に得ることができる。
【数8】
【0050】
上記のように、本実施形態では、接続回路21を、定在波の腹の位置に相当する部分で、給電母線11、12に接続する。これにより、
図1に示すように、給電母線11、12はそれぞれ電流の流れを分岐させるよう、平滑コンデンサ4等が給電母線11、12に接続されている場合に、電流の分岐点を避けた上で、接続回路21を給電母線11、12に接続することができる。また、接続回路21の接続位置に応じて、給電母線11と給電母線12との間のインピーダンス(Z
12)とインピーダンスマッチングをとるように、接続回路21のインピーダンスを設定することで、パワーモジュール5のスイッチングによるノイズを抑制できる。
【0051】
《第3実施形態》
本発明の他の実施形態に係る電力変換装置について説明する。本例では上述した第1実施形態に対して、第1の接続点の位置と、第2の接続点の位置が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、その記載を援用する。
【0052】
図8(a)は、給電母線11、12で発生する定在波を示すグラフであり、
図8
(b)は、接続回路21、22の接続点の位置に対する接続回路21、22のインピーダンスを表したグラフである。なお、
図8(a)及び
図8(b)の縦軸及び横軸の表示は、
図2(b)及び
図2(c)と同様である。また、
図2(b)及び
図2(c)と異なり、
図8(a)及び
図8(b)では、定在波の1/4周期に相当する特性が示されている。
【0053】
次に、第1の接続点は、定在波の腹と節との間に位置する。第2の接続点は、定在波の節に位置する。接続回路22のインピーダンスは、接続回路21のインピーダンスよりも
大きい。
【0054】
次に、接続回路21のインピーダンスと接続回路22のインピーダンスとの比と、給電母線11、12で発生するノイズとの関係を、
図9を用いて説明する。
図9は、インピーダンスの比(Z
2/Z
1)に対するノイズレベルの特性を示すグラフであって、実験により得られた特性を示している。ノイズレベルは、給電母線11と給電母線12との間で発生する振動(ノイズ)の大きさである。なお
図9において、点線pは漸近線である。
【0055】
図9に示すように、インピーダンスの比(Z
2/Z
1)が2以上に設定された場合に、給電母線11と給電母線12との間で発生するノイズを抑制できる。
【0056】
《第4実施形態》
本発明の他の実施形態に係る電力変換装置について説明する。本例では上述した第1実施形態に対して、第1の接続点の位置と、第2の接続点の位置が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、その記載を援用する。
【0057】
図10(a)は給電母線11、12及び接続回路21、22の斜視図を示し、
図10(b)は、給電母線11、12で発生する定在波を示すグラフであり、
図10(c)は、接続回路21、22の接続点の位置に対する接続回路21、22のインピーダンスを表したグラフである。なお、
図10(b)及び(c)の横軸は、給電母線11、12の端部から、給電母線11、12の長手方向の位置を表している。また、
図10(c)の横軸で示される位置は、ラジアン表示としている。給電母線11、12の一方の端部を「0」とし、他方の端部「2π」とする。そして、両端部の中央部分を「π」とする。
【0058】
接続回路21、22のインピーダンス(Z
1、Z
2)は、定在波の振幅の絶対値に対して相関性をもっており、下記式(9)のような関係性をもっている。
【数9】
θは、
図10(b)に示す定在波の腹の位置を0とし、当該腹の位置から定在波の1周期分の位置を2πとした場合に、当該腹から第1接続点までの距離、及び、当該腹から第2接続点までの距離を、それぞれ角度で表したものである。
【0059】
図10(c)に示すように、接続回路21、22のインピーダンス(Z
1、Z
2)は、定在波の腹の位置で最小値となり、定在波の節の位置で最大値となるような特性をもっている。定在波の腹の位置におけるインピーダンス(Z
1、Z
2)は、Z
12である。
【0060】
そして、式(9)を満たすように、接続回路21、22のインピーダンス(Z
1、Z
2)が設定されることで、接続回路21、22と給電母線11、12との間で、インピーダンスマッチングがとられ、給電母線11、12で発生するノイズが、接続回路21、22に伝搬しやすくなる。
【0061】
上記のように、本実施形態では、接続回路21、22のインピーダンス(Z
1、Z
2)が上記の式(9)を満たすように、設定されている。これにより、給電母線11と給電母線12との間に生じる電気的な振動を、接続回路21、22で抑制できる。
【0062】
《第5実施形態》
本発明の他の実施形態に係る電力変換装置について説明する。本例では上述した第1実施形態に対して、接続回路21、22に含まれる容量性部材の容量と、給電母線11と給電母線12との間の容量(C
12)との関係を規定する点が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、その記載を援用する。
【0063】
給電母線11、12に生じるノイズのレベルは、接続回路21、22に含まれる容量性部材の容量と、給電母線11と給電母線12との間の容量(C
12)との関係によって異なる。
【0064】
図11は、接続回路21、22に含まれる容量性部材の容量に対するノイズレベルの特性を示したグラフである。なお、容量(C
12)は、上記の式(3)で表される。なお、
図11において、点線qは漸近線である。
【0065】
図11に示すように、接続回路21、22に含まれる容量性部材の容量が容量(C
12)よりも大きい場合に、給電母線11と給電母線12との間で発生するノイズを抑制できる。
【0066】
《第6実施形態》
図12は、発明の他の実施形態に係る電力変換装置を含む駆動システムの概要図である。本例では上述した第1実施形態に対して、給電母線11、12の構成が異なる。また、シールド線7の代わりに給電母線11、12を直接、電源200に接続している。これ以外の構成は、上述した第1実施形態と同じであり、第1〜5実施形態の記載を適宜、援用する。
【0067】
図12に示すように給電母線11は給電母線11aと給電母線11bを有している。給電母線11a及び給電母線11bは、板状の導電体によりそれぞれ形成されている。また、給電母線11aの長手方向に位置する端部は、給電母線11bの長手方向に位置する端部に接続されている。また、給電母線11aの主面と給電母線11bの主面が垂直になるように、給電母線11a、11bが接続されている。すなわち、給電母線11は屈曲した導電体で形成されている。
【0068】
給電母線12は、給電母線12aと給電母線12bを有している。給電母線12a及び給電母線12bの構成は、給電母線11a及び給電母線11bの構成と同様である。給電母線11aの主面と給電母線12aの主面は所定の隙間を空けた状態で対向し、給電母線11bの主面と給電母線12bの主面は所定の隙間を空けた状態で対向している。
【0069】
接続回路21、22は、第1実施形態と同様に、互いに異なるインピーダンスをもっている。接続回路21は、給電母線11aと給電母線12aとの間に接続されている。接続回路22は、給電母線11bと給電母線12bとの間に接続されている。給電母線11、12が屈曲していることで、接続回路21、22を接続しやすい部分と、接続回路21、22を接続しにくい部分がある場合には、接続回路21、22は、接続しやすい部分で給電母線11、12に接続すればよい。このとき、接続回路21、22のインピーダンスは、給電母線11、12との間でインピーダンスマッチングをとるように、接続位置に応じて設定されている。
【0070】
上記のように本実施形態では、給電母線11、12に屈曲した部分を設けることで、電源200の位置を変更することができる。これにより、電源200の位置等、レイアウトの自由度を高めつつ、給電母線11と給電母線12との間で生じる振動を抑制できる。
【0071】
《第7実施形態》
図13は、発明の他の実施形態に係る電力変換装置の構成のうち、給電母線11、12及び接続回路21の斜視図である。本例では上述した第1実施形態に対して、接続回路21の構成が異なる。これ以外の構成は、上述した第1実施形態と同じであり、第1〜6実施形態の記載を適宜、援用する。なお、
図12では図示を省略しているが、接続回路22は給電母線11と給電母線12との間に接続されている。
【0072】
接続回路21は、複数の直列回路21a、21bを有している。直列回路21aは、抵抗性部材と容量性部材との直列回路である。直列回路21bは抵抗性部材と容量性部材との直列回路である。複数の直列回路21a、21bは、直列回路21aと直列回路21bとの間に間隔を空けて、かつ、給電母線11、12の短手方向に並んだ状態で配置されている。
図13に示すように、給電母線11、12は、x方向を長手方向としつつ、当該長手方向に延在した板状の部材で形成されている。短手方向(
図13に示すy方向)は、給電母線11、12の主面上で、長手方向に対して垂直な方向である。
【0073】
直列回路21aの抵抗性部材の抵抗をR
1aとし、直列回路21aの容量性部材の容量をC
1aとし、直列回路21bの抵抗性部材の抵抗をR
1bとし、直列回路21bの容量性部材の容量をC
1bとする。接続回路21は、直列回路21aと直列回路21bとを並列
に接続した回路となるため、接続回路21の容量(C
1)はC
1a+C
1bとなり、接続回路21の抵抗は下記式(10)で表される。
【0075】
これにより、接続回路21を、直列回路21aと直列回路21bに分けて接続することができる。また、給電母線11、12と接続回路21との間でインピーダンスマッチングをとるためには、接続回路21の容量が大きい値になるような場合でも、接続回路21の容量は、直列回路21aと直列回路21bに分けることができる。そのため、接続回路21の容量性部材として用いる素子の容量を小さくすることができる。
【0076】
接続回路21に含まれる直列回路の数は、本実施形態のように2つに限らず、3つ以上であってもよい。また、接続回路22が、接続回路21と同様に、複数の直列回路を有してもよい。
【0077】
上記の直列回路21aが本発明に係る「第1の直列回路」に相当し、上記の直列回路21bが本発明に係る「第2の直列回路」に相当する。