(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
クレーン本体と、前記クレーン本体に対して起伏可能なブームと、前記ブームの後方の位置で前記クレーン本体に対して回動可能となるように当該クレーン本体に接続されており、前記ブームを起伏させるためのマストと、前記ブームの上端部と前記マストの上端部との距離が変更されるように前記ブームの上端部及び前記マストの上端部に連結されたブーム起伏ロープと、前記ブームの上端部及び前記マストの上端部間の距離が変更されるように前記ブーム起伏ロープの巻取り及び繰り出しを行うブーム起伏ウインチと、前記マストの上端部と前記クレーン本体のうち前記マストの下端部よりも後方に位置する部位とを連結する連結部材と、前記マストに対して着脱自在に接続可能なウエイトであって、前記マストに接続された状態において前記マストの下端部を中心として前記マストの上端部が後方に向かうように当該マストを回動させるモーメントである後方モーメントを前記マストに発生させるものと、を備えるクレーンの操作方法であって、
前記連結部材に生じている張力の値が閾値以上となったときに前記ブーム起伏ウインチを停止させる停止工程を含み、
前記停止工程では、前記張力の値が前記閾値以上となったときの前記ブームの操作方向と同じ方向に前記ブームが操作されている場合の前記ブーム起伏ウインチの駆動を禁止するとともに、前記張力の値が前記閾値以上となったときの前記ブームの操作方向と逆方向に前記ブームが操作されている場合の前記ブーム起伏ウインチの駆動を許容する、クレーンの操作方法。
【背景技術】
【0002】
従来、比較的大きな吊り上げ能力を有するクレーンとして、特許文献1等に見られるように、ラチスマストを備えるものが知られている。具体的に、このクレーンは、上部旋回体と、上部旋回体に対して起伏可能なブームと、前記ラチスマストと、ラチスマストの上端部と上部旋回体とを連結する連結部材と、台車連結ケーブルを介してラチスマストの上端部に連結されたウエイト台車と、を備えている。
【0003】
前記ラチスマストは、ブームを起伏させるための部材であり、ラチス構造を有している。このラチスマストは、ブームの後方で上部旋回体に対して回動可能となるように上部旋回体に取り付けられている。
【0004】
ブームの上端部及びラチスマストの上端部間は、ブームガイライン及びブーム起伏ロープによって連結されている。ブーム起伏ロープが繰出されることによってブームの上端部及びラチスマストの上端部間の距離が大きくなるので、ブームが倒伏する。一方、ブーム起伏ロープが巻き取られることによってブームの上端部及びラチスマストの上端部間の距離が小さくなるので、ブームが起立する。
【0005】
連結部材は、マスト支持ケーブルとマスト起伏ロープとを有している。マスト起伏ロープが繰出されることによってラチスマストの上端部及び上部旋回体間の距離が大きくなるので、ラチスマストが前方へ回動する。一方、マスト起伏ロープが巻き取られることによってラチスマストの上端部及び上部旋回体間の距離が小さくなるので、ラチスマストが後方へ回動する。
【0006】
ウエイト台車は、ラチスマストに対して当該ラチスマストの下端部回りの後方モーメント(ラチスマストの上端部が後方に向かうように当該ラチスマストを回動させるモーメント)を発生させるための重りである。この後方モーメントは、ブーム、ブームガイライン及びブーム起伏ロープを介してラチスマストに作用する前記下端部回りの前方モーメント(ラチスマストの上端部が前方に向かうように当該ラチスマストを回動させるモーメント)に対応するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されるようなクレーンでは、クレーンの組立て時にブームを起立させる際、あるいは、クレーンの格納時にブームを倒伏させる際に、ウエイトの重量が不足している場合、ラチスマストと上部旋回体とを連結する連結部材に作用する張力が大きくなる。具体的に、ブームを起立させる際及び倒伏させる際、ブームガイライン及びブーム起伏ロープを介してブームがラチスマストの上端部を前方に引っ張ることに起因してラチスマストには前記下端部回りの前方モーメントが発生する。よって、ウエイトの重量(前記下端部回りの後方モーメント)が不足している場合、ラチスマストは、当該ラチスマストの上端部が前方に向かうように回動しようとする。このため、連結部材に作用する張力が大きくなる。
【0009】
本発明の目的は、連結部材に過大な張力が作用するのを抑制可能なクレーン及びその操作方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、クレーン本体と、前記クレーン本体に対して起伏可能なブームと、前記ブームの後方の位置で前記クレーン本体に対して回動可能となるように当該クレーン本体に接続されており、前記ブームを起伏させるためのマストと、前記ブームの上端部と前記マストの上端部との距離が変更されるように前記ブームの上端部及び前記マストの上端部に連結されたブーム起伏ロープと、前記ブームの上端部及び前記マストの上端部間の距離が変更されるように前記ブーム起伏ロープの巻取り及び繰り出しを行うブーム起伏ウインチと、前記マストの上端部と前記クレーン本体のうち前記マストの下端部よりも後方に位置する部位とを連結する連結部材と、前記マストに対して着脱自在に接続可能なウエイトであって、前記マストに接続された状態において前記マストの下端部を中心として前記マストの上端部が後方に向かうように当該マストを回動させるモーメントである後方モーメントを前記マストに発生させるものと、前記連結部材に生じている張力の状態を検出する張力検出部と、前記張力検出部の検出値が閾値以上となったときに前記ブーム起伏ウインチを停止させるウインチ制御部と、を備える、クレーンを提供する。
【0011】
本クレーンでは、連結部材に生じている張力の状態を検出する張力検出部の検出値が閾値以上となったときにブーム起伏ウインチが停止するので、それ以降のブームの起伏が停止される。よって、連結部材に生じる張力が過大になることが抑制される。
【0012】
本発明では、前記ブームの操作方向を検出する操作方向検出部をさらに備え、前記ウインチ制御部は、前記張力検出部の検出値が前記閾値以上となったときに前記操作方向検出部によって検出された前記操作方向と同じ方向に前記ブームが操作されていることが前記操作方向検出部によって検出されている場合の前記ブーム起伏ウインチの駆動を禁止するとともに、前記張力検出部の検出値が前記閾値以上となったときに前記操作方向検出部によって検出された前記操作方向と逆方向に前記ブームが操作されていることが前記操作方向検出部によって検出されている場合の前記ブーム起伏ウインチの駆動を許容す
る。
【0013】
このようにすれば、張力検出部の検出値が閾値以上になったときのブームの操作方向とは逆方向へのブームの操作、つまり、張力検出部の検出値が小さくなる方向へのブームの操作が許容されるので、連結部材に生じている張力が有効に低減される。
【0014】
また、前記クレーンにおいて、前記ブームと当該ブームを起立させる又は倒伏させるのに必要な前記後方モーメントを発生させるための前記ウエイトの重量との関係を示す情報を記憶する記憶部と、前記張力検出部の検出値が前記閾値以上となったときに、前記ブームと前記情報とから得られる値に基づく値を前記ウエイトの重量として通知する通知部と、をさらに備えることが好ましい。
【0015】
このようにすれば、張力検出部の検出値が前記閾値以上となったときにブーム起伏ウインチが停止されるとともに、そのときに装着されているブームを起立又は倒伏させるのに必要な後方モーメントを発生させるためのウエイトの重量がキャビン内のモニター等に通知される。よって、ブーム起伏ウインチが停止した際に、ブームを起立又は倒伏させるのに必要な重量を有するウエイトの設置が容易になる。
【0016】
また、本発明は、クレーン本体と、前記クレーン本体に対して起伏可能なブームと、前記ブームの後方の位置で前記クレーン本体に対して回動可能となるように当該クレーン本体に接続されており、前記ブームを起伏させるためのマストと、前記ブームの上端部と前記マストの上端部との距離が変更されるように前記ブームの上端部及び前記マストの上端部に連結されたブーム起伏ロープと、前記ブームの上端部及び前記マストの上端部間の距離が変更されるように前記ブーム起伏ロープの巻取り及び繰り出しを行うブーム起伏ウインチと、前記マストの上端部と前記クレーン本体のうち前記マストの下端部よりも後方に位置する部位とを連結する連結部材と、前記マストに対して着脱自在に接続可能なウエイトであって、前記マストに接続された状態において前記マストの下端部を中心として前記マストの上端部が後方に向かうように当該マストを回動させるモーメントである後方モーメントを前記マストに発生させるものと、を備えるクレーンの操作方法であって、前記連結部材に生じている張力の値が閾値以上となったときに前記ブーム起伏ウインチを停止させる停止工程を含む、クレーンの操作方法を提供する。
【0017】
本方法においても、連結部材に生じる張力が過大になることが抑制される。
【0018】
また、前記停止工程では、前記張力の値が前記閾値以上となったときの前記ブームの操作方向と同じ方向に前記ブームが操作されている場合の前記ブーム起伏ウインチの駆動を禁止するとともに、前記張力の値が前記閾値以上となったときの前記ブームの操作方向と逆方向に前記ブームが操作されている場合の前記ブーム起伏ウインチの駆動を許容す
る。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、連結部材に過大な張力が作用するのを抑制可能なクレーン及びその操作方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態のクレーンについて、
図1〜
図8を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本実施形態のクレーンの全体構成を示す。具体的に、このクレーンは、クレーン本体に相当する上部旋回体1と、この上部旋回体1を旋回可能に支持する下部走行体2と、ブーム10と、マスト20と、ブームガイライン32及びブーム起伏ロープ34と、ブーム起伏ウインチ38と、連結部材40と、ウエイト50と、を備えている。
【0023】
ブーム10は、上部旋回体1に対して起伏可能となるように当該ブーム10の下端部が上部旋回体1に取り付けられている。具体的に、ブーム10の下端部は、上部旋回体1の前端部に接続されている。ブーム10は、ラチス構造を有している。このブーム10は、ブーム10を起立又は倒伏させる操作が可能な操作部材(操作レバー等)によって操作される。操作部材は、上部旋回体1に搭載されたキャビン(図示略)内に設けられる。
【0024】
ブーム10には、吊り荷を吊るためのフック8が吊り下げられている。フック8は、ブーム10の上端部に取り付けられたシーブ7を介して主巻ロープ5によって吊り下げられている。上部旋回体1には、前記主巻ロープ5の巻取り及び繰出しを行う主巻用ウインチ3が搭載されている。
【0025】
マスト20は、ブーム10を起伏させるための部材である。本実施形態では、マスト20として、ラチス構造を有するもの(以下、「ラチスマスト20」と表記する。)が用いられている。ラチスマスト20は、ブーム10の後方の位置で上部旋回体1に対して回動可能となるように当該上部旋回体1に接続されている。ラチスマスト20の下端部は、上部旋回体1の前端部に接続されている。なお、マストは、ラチスマストに限られない。
【0026】
ブームガイライン32及びブーム起伏ロープ34は、ブーム10の上端部とラチスマスト20の上端部とを連結している。具体的に、ブームガイライン32の一端は、ブーム10の上端部に接続されている。ブームガイライン32の他端は、上部スプレッダ35に接続されている。ブーム起伏ロープ34は、ラチスマスト20の上端部に接続された下部スプレッダ36と上部スプレッダ35との間に掛け回されている。
【0027】
ブーム起伏ウインチ38は、ブーム起伏ロープ34の巻取り及び繰出しを行う。本実施形態では、ブーム起伏ウインチ38は、ラチスマスト20の下部に取り付けられている。このブーム起伏ウインチ38がブーム起伏ロープ34を巻き取ることにより、上部スプレッダ35及び下部スプレッダ36間の距離、すなわち、ブーム10の上端部及びラチスマスト20の上端部間の距離が小さくなるので、ブーム10が起立する方向に回動する。逆に、ブーム起伏ウインチ38がブーム起伏ロープ34を繰出すことにより、上部スプレッダ35及び下部スプレッダ36間の距離、すなわち、ブーム10の上端部及びラチスマスト20の上端部間の距離が大きくなるので、ブーム10が倒伏する方向に回動する。なお、
図1は、起立姿勢(作業可能な姿勢)のブーム10を示しており、
図2は、倒伏姿勢(ブーム10の先端部が地面に接した姿勢)のブーム10を示している。
【0028】
連結部材40は、ラチスマスト20と上部旋回体1のうちラチスマスト20の下端部よりも後方に位置する部位とを連結する。具体的に、連結部材40の一端は、ラチスマスト20の上端部に接続されており、連結部材40の他端は、上部旋回体1の後端部に接続されている。本実施形態では、連結部材40は、マスト連結ロープ42と、マスト起伏ロープ44と、を有する。
【0029】
マスト連結ロープ42は、ラチスマスト20の上端部とクレーンマスト46の上端部とを連結している。クレーンマスト46は、ラチスマスト20の後方において上部旋回体1に対して回動可能となるように当該上部旋回体1の前端部に接続されている。
【0030】
マスト起伏ロープ44は、クレーンマスト46の上端部に接続されたシーブ47と上部旋回体1の後端部に接続されたシーブ48との間で掛け回されている。このマスト起伏ロープ44の巻取り及び繰出しは、上部旋回体1に搭載されたマスト起伏ウインチ39により行われる。具体的に、マスト起伏ウインチ39がマスト起伏ロープ44を巻き取ることにより、クレーンマスト46の上端部及び上部旋回体1間の距離、すなわち、ラチスマスト20の上端部及び上部旋回体1間の距離が小さくなるので、ラチスマスト20は後方(
図1の左側)に回動(倒伏)する。逆に、マスト起伏ウインチ39がマスト起伏ロープ44を繰出すことにより、クレーンマスト46の上端部及び上部旋回体1間の距離、すなわち、ラチスマスト20の上端部及び上部旋回体1間の距離が大きくなるので、ラチスマスト20が前方(
図1の右側)に回動(起立)する。
【0031】
ウエイト50は、ウエイト連結ケーブル52を介してラチスマスト20の上端部に連結されている。ウエイト50は、ラチスマスト20に対して当該ラチスマスト20の下端部回りの後方モーメント(ラチスマスト20の上端部を後方に向かわせるモーメント)を発生させるための重りである。後方モーメントは、ウエイト50がウエイト連結ケーブル52を介し吊り荷を地切りして浮き上がった時、ウエイト50がウエイト連結ケーブル52で吊り上げられた状態になりウエイト連結ケーブル20にテンションがかかっている場合、ラチスマスト20に発生する。また、地切りせずウエイト50が浮き上がっていない時であっても、ラチスマスト20が前側に回動し、連結ケーブル52にテンションがかかる状態になっている場合にも、ラチスマスト20に後方モーメントが発生する。この後方モーメントは、ブーム10、ブームガイライン32及びブーム起伏ロープ34を介してラチスマスト20に作用する前記下端部回りの前方モーメントに対応するものである。ウエイト50の重量は、重りの追加等によって変更可能である。
【0032】
次に、以上に説明したクレーンの組立ての仕方について説明する。
図2に示されるように、クレーンの組立て前は、ブーム10は、倒伏姿勢となっており、ラチスマスト20の上端部からウエイト50を吊り下げられている。この状態において、ブーム起伏ウインチ38によってブーム起伏ロープ34が巻き取られる。これにより、ラチスマスト20の上端部及びブーム10の先端部間の距離が小さくなるので、ブーム10が起立する。このとき、ラチスマスト20には、当該ラチスマスト20の下端部回りの前方モーメントが発生する。一方、ラチスマスト20にはウエイト50が接続されていることから、このラチスマスト20には、前記下端部回りの後方モーメントも発生している。このため、ブーム起伏ウインチ38によってブーム起伏ロープ34が巻き取られる間、ラチスマスト20はほとんど回動することなくブーム10が起立する。
【0033】
このようにして組立てられたクレーンでは、ウエイト50がラチスマスト20に連結された状態で作業される場合や、上部旋回体1の旋回の必要があるときにはウエイト50がラチスマスト20から切り離された状態で作業される場合がある。
【0034】
続いて、クレーンの格納の仕方について説明する。クレーンの格納時は、ウエイト50がラチスマスト20に連結された状態でブーム10が起立姿勢から倒伏姿勢にされる。具体的に、ブーム10が起立姿勢の状態において、ブーム起伏ウインチ38によってブーム起伏ロープ34が繰出される。これにより、ラチスマスト20の上端部及びブーム10の先端部間の距離が大きくなるので、ブーム10が倒伏する。このとき、上記の組立て時と同様に、ラチスマスト20には、ブーム10の重量に起因する前方モーメントとウエイト50の重量に起因する後方モーメントとが発生している。このため、ブーム起伏ウインチ38によってブーム起伏ロープ34が繰出される間、ラチスマスト20はほとんど回動することなくブーム10が倒伏する。
【0035】
ここで、クレーンの組立て時や格納時において、ラチスマスト20にウエイト50が取り付けられていない場合、あるいは、ウエイト50の重量が不足している場合、ブーム起伏ウインチ38によるブーム起伏ロープ34の巻取り又は繰出しに起因してラチスマスト20に発生する前方モーメントにつり合う後方モーメントがラチスマスト20に発生しないので、ラチスマスト20は、前方に回動しようとする。この結果、ブーム起伏ウインチ38によるブーム起伏ロープ34の巻取り又は繰出しに伴って連結部材40に作用する張力が次第に大きくなる。
【0036】
本実施形態のクレーンは、連結部材40に過大な張力が作用するのを抑制可能に構成されている。具体的に、本クレーンは、張力検出部62(
図1及び
図2を参照)と、コントローラ64(
図3を参照)と、を備えている。
【0037】
張力検出部62は、連結部材40に設けられており、連結部材40に作用する張力を検出する。本実施形態では、張力検出部62として、ロードセルが用いられている。このロードセルは、マスト連結ロープ42の下端部に設けられている。
【0038】
コントローラ64は、ウインチ制御部65と、警報発信部66と、記憶部67と、通知部68と、を有する。
【0039】
ウインチ制御部65は、連結部材40に作用する張力、すなわち、張力検出部62の検出値Tが閾値T2以上となったときにブーム起伏ウインチ38を停止させる。より詳細には、ウインチ制御部65は、検出値Tが閾値T2以上となったときの前記操作部材の操作方向と同じ方向に操作部材が操作されている場合のブーム起伏ウインチ38の駆動を禁止するとともに、検出値Tが閾値T2以上となったときの前記操作部材の操作方向と逆方向に操作部材が操作されている場合のブーム起伏ウインチ38の駆動を許容する。操作部材の操作方向は、当該操作方向を検出可能な操作方向検出部63によって検出される。操作方向検出部63は、操作部材がブーム10を起立させる方向に操作されているときにそのことを示す信号(以下、「上げ操作信号」と称する。)をウインチ制御部65に送り、操作部材がブーム10を倒伏させる方向に操作されているときにそのことを示す信号(以下、「下げ操作信号」と称する。)をウインチ制御部65に送る。つまり、ウインチ制御部65は、検出値Tが閾値T2以上となったときに操作方向検出部63から受信していた操作信号(上げ操作信号又は下げ操作信号)と同じ操作信号を操作方向検出部63から受信している場合のブーム起伏ウインチ38の駆動を禁止するとともに、検出値Tが閾値T2以上となったときに操作方向検出部63から受信していた操作信号とは異なる操作信号を操作方向検出部63から受信している場合のブーム起伏ウインチ38の駆動を許容する。例えば、ウインチ制御部65は、操作方向検出部63からの上げ操作信号の受信中に張力検出部62から受信する検出値Tが閾値T2以上となった場合、ブーム10を起立させる方向のブーム起伏ウインチ38の駆動(ブーム起伏ロープ34の巻取り)のみを禁止する一方、ブーム10を倒伏させる方向のブーム起伏ウインチ38の駆動(ブーム起伏ロープ34の繰出し)は許容する。また、操作方向検出部63は、前記上げ操作信号及び下げ操作信号を警報発信部66にも送る。
【0040】
警報発信部66は、張力検出部62の検出値Tが閾値T2以上となったときに、キャビン内に警報(ブザー)を発する。より詳細には、警報発信部66は、張力検出部62の検出値Tが閾値T2以上で、かつ、検出値Tが閾値T2以上となったときに操作方向検出部63から受信している操作信号(上げ操作信号又は下げ操作信号)と同じ操作信号の受信を継続している間警報の発信を継続する。
【0041】
記憶部67は、ブーム10と、ブーム10を起立姿勢から倒伏姿勢にする又はブーム10を倒伏姿勢から起立姿勢にするのに必要な後方モーメントを発生させるためのウエイト50の重量と、の関係を示す情報(マップ)を記憶している。記憶部67は、前記情報を通知部68に送信する。
【0042】
通知部68は、張力検出部62の検出値Tが閾値T2以上となったときに、エラー情報をキャビン内に設けられたモニター69に送信する。エラー情報は、連結部材40に作用している張力が大きいことが原因でブーム起伏ウインチ38が停止したことと、ブーム10と記憶部67から受信した前記情報とに基づいて求められる値(ブーム10を起立姿勢と倒伏姿勢との間で回動させるのに必要な後方モーメントを発生させることが可能なウエイト50の重量)と、を含む。つまり、張力検出部62の検出値Tが閾値T2以上となったとき、モニター69には、連結部材40に作用している張力が大きいことが原因でブーム起伏ウインチ38が停止したことと、現在装着されているブーム10を起立姿勢と倒伏姿勢との間で回動させるのに必要なウエイト50の重量と、が表示される。なお、モニター69に表示するウエイト50の重量は、現在装着されているブーム10を起立姿勢と倒伏姿勢との間で回動させるのに必要なウエイト50の重量(絶対値)でもよいし、その重量と現在吊下げられているウエイト50の重量との差でもよい。
【0043】
以下、
図4〜
図8を参照しながら、コントローラ64の具体的な制御フローについて説明する。
【0044】
図4に示されるように、まず、コントローラ64は、ラチスマスト20にウエイト50が連結されているか否かを判断する(ステップS11)。この結果、ラチスマスト20にウエイト50が連結されている場合、コントローラ64は、張力検出部62の検出値Tが前記閾値T2よりも小さな値である基準値T1以上か否かを判断する(ステップS13)。この結果、検出値Tが基準値T1以上であった場合、コントローラ64は、閾値T2以上であるか否かを判断する(ステップS16)。この結果、検出値Tが閾値T2以上であった場合、すなわち、連結部材40に比較的大きな張力が作用している場合、コントローラ64は、操作方向検出部63から前記上げ操作信号を受信しているかを判断する(ステップS17)。この結果、上げ操作信号を受信している(操作部材がブーム10を起立させる方向に操作されている)場合、コントローラ64は、前回値フラグとして上停止フラグをセットし(ステップS18)、上停止処理に移行する一方(ステップS19)、上げ操作信号を受信していない場合、換言すれば、下げ操作信号を受信している(操作部材がブーム10を倒伏させる方向に操作されている)場合、コントローラ64は、前回値フラグとして下停止フラグをセットし(ステップS20)、下停止処理に移行する(ステップS21)。
【0045】
前記上停止処理は、ブーム10を起立させる方向への操作部材の操作中に張力検出部62の検出値Tが閾値T2に達したときに、それ以上の同方向への操作部材の操作を禁止する制御である。この上停止処理の制御について、
図6を参照しながら説明する。上停止処理が開始されると、コントローラ64のウインチ制御部65は、ブーム10を起立させる方向についてのブーム起伏ウインチ38の駆動(ブーム起伏ロープ34の巻取り)のみを停止させる(ステップS111)。そして、コントローラ64は、操作方向検出部63から上げ操作信号の受信を継続しているか否かを判断する(ステップS112)。その結果、上げ操作信号の受信を継続している場合、コントローラ64の警報発信部66は、警報を発する一方(ステップS113)、上げ操作信号の受信を継続していない場合、警報発信部66は、警報を停止する(ステップS114)。このため、キャビン内の作業者は、ブーム10が起立する方向への操作部材の操作を停止するように促される。そして、コントローラ64の通知部68は、エラー情報をモニター69に送信する。このため、キャビン内の作業者は、モニター69の表示に基づいて、ウエイト50の重量が適切となるように当該ウエイト50の重りを調整するように促される。以上で上停止処理が終了し、再びスタートに戻る。
【0046】
前記下停止処理は、ブーム10を倒伏させる方向への操作部材の操作中に張力検出部62の検出値Tが閾値T2に達したときに、それ以上の同方向への操作部材の操作を禁止する制御である。この下停止処理について、
図7を参照しながら説明する。下停止処理が開始されると、コントローラ64のウインチ制御部65は、ブーム10を倒伏させる方向についてのブーム起伏ウインチ38の駆動(ブーム起伏ロープ34の繰出し)のみを停止させる(ステップS121)。そして、コントローラ64は、操作方向検出部63から下げ操作信号の受信を継続しているか否かを判断する(ステップS122)。その結果、下げ操作信号の受信を継続している場合、コントローラ64の警報発信部66は、警報を発する一方(ステップS123)、下げ操作信号の受信を継続していない場合、警報発信部66は、警報を停止する(ステップS124)。このため、キャビン内の作業者は、ブーム10が倒伏する方向への操作部材の操作を停止するように促される。そして、コントローラ64の通知部68は、エラー情報をモニター69に送信する。このため、キャビン内の作業者は、モニター69の表示に基づいて、ウエイト50の重量が適切となるように当該ウエイト50の重りを調整するように促される。以上で下停止処理が終了し、再びスタートに戻る。
【0047】
ここで、作業者は、上停止処理又は下停止処理において受けた警報やエラー情報に基づいて、張力検出部62の検出値Tが閾値T2以上となったときの操作部材の操作方向と逆方向への操作部材の操作、あるいは、ウエイト50の重りの追加を行う。その結果、張力検出部62の検出値Tが小さくなる。
【0048】
そして、検出値Tが閾値T2未満となった場合(ステップS16でNO)、コントローラ64は、前回値処理に移行する(ステップS22)。
【0049】
前回値処理は、張力検出部62の検出値Tについてヒステリシスを持たせる制御である。この前回値処理について、
図8を参照しながら説明する。前回値処理が開始されると、コントローラ64は、前回値フラグが通常フラグか否かを判断する(ステップS131)。この結果、前回値フラグが通常フラグであった場合、コントローラ64は、通常操作処理へ移行する(ステップS132)。通常操作処理については後述する。一方、前回値フラグが通常フラグではなかった場合(ステップS131でNO)、コントローラ64は、前回値フラグが上停止フラグか否かを判断する(ステップS133)。この結果、前回値フラグが上停止フラグであった場合、コントローラ64は、上停止処理へ移行する(ステップS134)。つまり、検出値Tが閾値T2未満に低下したものの、依然としてブーム10を起立させる方向の操作が禁止された状態が維持される。一方、前回値フラグが上停止フラグでもなかった場合(ステップS133でNO)、コントローラ64は、下停止処理へ移行する(ステップS135)。つまり、検出値Tが閾値T2未満に低下したものの、依然としてブーム10を倒伏させる方向の操作が禁止された状態が維持される。
【0050】
このため、作業者は、張力検出部62の検出値Tがさらに下がる方向への操作部材の操作、あるいは、ウエイト50の重りの追加を行う。その結果、張力検出部62の検出値Tがさらに小さくなる。
【0051】
そして、検出値Tが基準値T1未満となった場合(ステップS13でNO)、つまり、連結部材40にそれほど大きな張力が作用していない状態になった場合、コントローラ64は、前回値フラグとして通常フラグをセットし(ステップS14)、通常操作処理へ移行する(ステップS15)。
【0052】
ここで、通常操作処理について、
図5を参照しながら説明する。通常操作処理が開始されると、コントローラ64は、ブーム10を起立させる方向及び倒伏させる方向の両方についてのブーム起伏ウインチ38の駆動が可能な状態とする(ステップS101)。そして、コントローラ64の警報発信部66は、警報(ブザー)の発信を停止し(ステップS102)、コントローラ64の通知部68は、モニター69へのエラー情報の送信を停止する(ステップS103)。これにより、通常操作処理が終了し、再びスタートに戻る。なお、ステップS101〜ステップS103は、いずれの順に行われてもよく、また、同時に行われてもよい。
【0053】
以上に説明したように、本実施形態のクレーンでは、連結部材40に生じている張力の状態を検出する張力検出部62の検出値Tが閾値T2以上となったときにブーム起伏ウインチ38が停止するので、それ以降のブーム10の起立又は倒伏が停止される。よって、連結部材40に生じる張力が過大になることが抑制される。
【0054】
また、ウインチ制御部65は、検出値Tが閾値T2以上となったときに操作方向検出部63から受信していた操作信号(上げ操作信号又は下げ操作信号)と同じ操作信号を操作方向検出部63から受信している場合のブーム起伏ウインチ38の駆動を禁止するとともに、検出値Tが閾値T2以上となったときに操作方向検出部63から受信していた操作信号とは異なる操作信号を操作方向検出部63から受信している場合のブーム起伏ウインチ38の駆動を許容する。このため、張力検出部62の検出値Tが閾値T2以上になったときのブーム10の操作方向とは逆方向へのブーム10の操作、つまり、張力検出部62の検出値Tが小さくなる方向へのブーム10の操作が許容される。よって、連結部材40に生じている張力が有効に低減される。
【0055】
さらに、コントローラ64の通知部68は、張力検出部62の検出値Tが閾値T2以上となったときに、現在装着されているブーム10と記憶部67に記憶された情報とから得られる値に基づいて、ブーム10を起立姿勢と倒伏姿勢との間で回動させるのに必要なウエイト50の重量をモニター69に通知する。よって、張力検出部62の検出値Tが閾値T2以上となることによってブーム起伏ウインチ38が停止した際に、ブーム10を起立又は倒伏させるのに必要な重量を有するウエイト50の設置が容易になる。
【0056】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0057】
例えば、連結部材40は、ラチスマスト20の上端部と上部旋回体1の後端部とを連結する単一のガイラインで構成されてもよい。