特許第6572944号(P6572944)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6572944
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】遮断棹の折損検出装置
(51)【国際特許分類】
   B61L 29/04 20060101AFI20190902BHJP
【FI】
   B61L29/04 B
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-123019(P2017-123019)
(22)【出願日】2017年6月23日
(65)【公開番号】特開2019-6229(P2019-6229A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2017年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】592061599
【氏名又は名称】株式会社近計システム
(72)【発明者】
【氏名】浅井 晃
(72)【発明者】
【氏名】古谷 茂
【審査官】 清水 康
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−042515(JP,U)
【文献】 特開2017−074897(JP,A)
【文献】 実開平07−040350(JP,U)
【文献】 特開2003−164076(JP,A)
【文献】 特開昭56−017757(JP,A)
【文献】 特開2007−261544(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0296442(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103643643(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 1/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏切の遮断棹の傾きを検出する複数のセンサー部と、前記センサー部からのデータを受信して前記遮断棹の折損の有無を判断する検出部と、前記検出部から検出結果の情報を受信して警報信号を出力する発報部および各部に電源を供給する電源部とからなり、
踏切の遮断棹に複数の上記センサー部を取り付け、同一の遮断棹に取り付けられた上記センサー部間の傾きの差が別途設定した許容値を超えた状態が一定時間以上継続した場合に遮断棹の折損有と判定し発報することを特徴とする遮断棹折損検出装置であって、センサー部に2軸もしくは3軸の加速度センサーを用いたことを特徴とし、各棹の根元および先端に取り付けられた2個のセンサー部AおよびBから得られる加速度ベクトルを(A,A,A)および(B,B,B)とし、(数式1)の条件が一定時間T[sec]間に渡って満たされた場合に遮断棹の折損有と判定し通報することを特徴とする遮断棹折損検出装置。
ただしΔθはこれ以下なら折損は無いと判断するために設けたセンサー部間の角度差の判定閾値である。(センサー部のセンサーが2軸の加速度センサーの場合は第3軸の計測値A、BについてA=B=0と置く。)

Δθ< Cos −1[ (A・B+A・B+A・B)/√{(A2+A2+A2)・(B2+B2+B2)}] (数式1)
【請求項2】
請求項1に記載の遮断棹折損検出装置であって、各棹の根元および先端に取り付けられたセンサーが3軸の加速度センサーの場合、根元に取り付けられたセンサー部Aおよび先端に取り付けられたセンサー部Bから得られる加速度ベクトルを(A,A,A)および(B,B,B)とし、(数式2)の条件が一定時間T[sec]間に渡って満たされたときに(数式3)の条件も同じく一定時間T[sec]間に渡って満たされれば遮断棹の折損有と判定し警報信号を出力することを特徴とする遮断棹折損検出装置。ただし、εは二個のセンサーの受ける加速度の大きさがほぼ等しいと判定するために設定する誤差範囲の閾値の二乗値であり、αは請求項1におけるΔθの余弦cos(Δθ)の値であり、Gは重力加速度である。

|(A2+A2+A2)−(B2+B2+B2)|<ε (数式2)

・B+A・B+A・B<α・G (数式3)
【請求項3】
請求項1、および請求項に記載の遮断棹折損検出装置であって、各棹の根元および先端に取り付けられたセンサーが2軸の加速度センサーの場合、根元に取り付けられたセンサー部Aおよび先端に取り付けられたセンサー部Bから得られる加速度ベクトルを(A,A)および(B,B)とし、(数式4)の条件が一定時間T[sec]間に渡って満たされたときに(数式5)の条件も同じく一定時間T[sec]間に渡って満たされれば遮断棹の折損有と判定し警報信号を出力することを特徴とする遮断棹折損検出装置。ただし、εは二個のセンサーの受ける加速度の大きさがほぼ等しいと判定するために設定する誤差範囲の閾値の二乗値であり、αは請求項1においてA=B=0と置いた場合の(数式1)におけるΔθの余弦cos(Δθ)の値であり、Gは重力加速度である。

|(A2+A2)−(B2+B2)|<ε (数式4)

・B+A・B<α・G (数式5)
【請求項4】
請求項1に記載の遮断棹折損検出装置であって、各棹の根元および先端に取り付けられたセンサー部のセンサーが3軸の加速度センサーの場合、根元に取り付けられたセンサー部Aおよび先端に取り付けられたセンサー部Bから得られる加速度ベクトルを(A,A,A)および(B,B,B)とし、(数式6)において定義された各軸の加速度の差分が一定時間T[sec]間に渡って(数式7)の少なくとも一つを満たした場合に遮断棹の折損有と判定し警報信号を出力することを特徴とする遮断棹折損検出装置。ただし、βは任意に定めた(0<β<1)の正の定数であり、Gは重力加速度である。

=|A−B|、S=|A−B|、S=|A−B| (数式6)

>β・G、S>β・G、または、S>β・G (数式7)
【請求項5】
請求項1に記載の遮断棹折損検出装置であって、各棹の根元および先端に取り付けられたセンサー部のセンサーが2軸の加速度センサーの場合、根元に取り付けられたセンサー部Aおよび先端に取り付けられたセンサー部Bから得られる加速度ベクトルを(A,A)および(B,B)とし、(数式8)において定義された各軸の加速度の差分が一定時間T[sec]間に渡って(数式9)の少なくとも一つを満たした場合に遮断棹の折損有と判定し警報信号を出力することを特徴とする遮断棹折損検出装置。ただし、βは任意に定めた(0<β<1)の正の定数であり、Gは重力加速度である。

=|A−B|、S=|A−B| (数式8)

>β・G、または、S>β・G (数式9)

【請求項6】
請求項1〜請求項に記載の遮断棹折損検出装置であって、センサーからの信号が一定時間以上に渡って受信できない場合に検出部が遮断棹の折損の可能性有と判定し警報信号を出力することを特徴とする遮断棹折損検出装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項のいずれかに記載の遮断棹折損検出装置であって、センサーの電源用配線とセンサーが検出した情報を載せる通信線とを共用していることを特徴とする遮断棹折損検出装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、踏切遮断棹の折損検出装置に関し、より詳しくは既設の遮断機の遮断棹に容易に付加できる踏切遮断棹の折損検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道線路の踏切に設置されている遮断機の遮断棹は通行する車両等によって折られることが多く、折られた後にその場所を通行人が通ると本来の遮断機能が果たせず、事故につながる危険があるので、折損時はいち早くこれを発見し、交換作業や交通整理等の対応が必要である。
【0003】
この発見方法としては、棹の根元に超音波発信機や無線発信機を設置し、棹の先端に反射器を設け、それが棹の先端で反射して帰ってくる性質を利用し、この反射波を検出できなくなった場合に棹が折れたと認識し警報発信する方式が有る。([非特許文献1]、[特許文献4]、[特許文献13])
【0004】
しかしながら、これらの方法は遮断棹の内部に発信機やセンサーを取り付ける必要があり、既設の設備に付加できるものではなく遮断棹そのものの交換が必要である。
【0005】
しかるに遮断棹には一本の棹でできているものの他に複数の棹を繋いで延長したものや上半部分が折れ曲がって先端部分は常に水平を保つ屈折式や根元がバネで半固定されていて根元で折れ曲がってもバネの力で復元可能なものなど実にいろいろなタイプがあり、また長さも異なることから、専用の遮断棹を事前に幾種類も用意して現場で交換することは現実的ではない。
【0006】
あるいは棹の表面に導電線を貼り付け、先端で折り返し、根元で電源や電流センサー等を接続し導電線に流れる電流の変化を計測し、また、導電線で消費される電力を測定して、それがゼロになった場合に導電線が切れ棹が折損したとして発報するものも有る。(特許文献8)
【0007】
しかしながら、この方法は遮断棹の先端が折れて完全に分離した場合は検出が容易であるが、僅かに折れ曲がった程度ではその検出は困難である上、表面に張り付けた導電線が車などに接触してこすり取られると遮断棹自体に問題がなくても異常を検出する可能性がある。
【0008】
あるいは、棹の先端に傾きセンサーを取り付け、遮断機の開閉状況とセンサーの傾斜信号出力とを比較し、不一致な状態が一定時間以上継続した場合に棹が折損したとして発報するものも有る。(特許文献14)
【0009】
しかし、この方式は前記屈折式の場合、棹の先端部分が水平なので使えない。また、水平常態か垂直状態かの二値しか見ていないので、遮断棹の完全な折損分離の場合は判断しやすいが、数十度折れ曲がった程度の場合は検出が困難である。
【0010】
なお、この方式では遮断機本体から動作信号を取り出す必要があり、種々のタイプの遮断機コントローラーがあることを考えると、現地での改造作業は容易ではない。
【0011】
以下に先行技術文献とその内容及びそれが使えない理由をまとめた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3126789号
【特許文献2】特許第4430379号
【特許文献3】特許第5635808号
【特許文献4】特願1989−063669
【特許文献5】特願2000−125581
【特許文献6】特願2000−355593
【特許文献7】特願2001−305223
【特許文献8】特願2006−049423
【特許文献9】特願2007−093068
【特許文献10】特願2008−083818
【特許文献11】特願2010−175061
【特許文献12】特願2010−203441
【特許文献13】特願2010−209533
【特許文献14】特願2014−216747
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】実開昭60−113267
【0014】
(非特許文献1)には中空の遮断棹の先端に反射部材を設け、遮断棹の根元から超音波を送出してその反射波を根元に設けたセンサーで捉え、以て遮断棹の正常状態を確認する方法が述べられている。しかし、この方法は遮断棹が揺れて棹が撓っている間は使えない。すなわち強風時や遮断時に子供が棹をゆすっている場合などは誤検出の可能性がある。 また、遮断棹自体の加工が必要であり、設置場所によって踏切の幅や遮断方式も異なるため規格の異なるあらゆる遮断棹に対応した交換用の遮断棹を用意しなければならず現実的ではない。
【0015】
(特許文献1)には遮断棹が上がっている非遮断状態において、遮断棹の先端に取り付けられた光反射シートが遮断機とは別の柱の上につけられた赤外線光源の赤外線を反射させ、その反射光を別途設けた赤外線センサーによって検出することで、棹が直立していることを判定し、棹の本来の動作状態と比較して正常か否かを判定する方法が述べられている。しかし、この方法は遮断時や上昇中に車などで大きく線路側に曲げられて、検出部のある別柱のセンサー部分に収まらなかった場合、棹自体は折れていなくても折損状態を検出する可能性がある。
【0016】
(特許文献2)には遮断棹の重量を検出する重量センサーと遮断棹への衝撃を検出する衝撃センサーとを使用して衝撃検出後に重量をチェックし、遮断棹の折損を判定する方法が述べられている。しかし、この方法は遮断棹が折損して完全に分離した場合は重量が軽くなるので検出できるが、単に折れ曲がっただけの場合は検出できない。積雪の場合も重量が変わるので折損していても判らず検出できない可能性がある。
【0017】
(特許文献3)には棹の各部分にRFIDを取り付けてそれが別の柱の上につけられた読み取り器に読み取れるか否かで折損を判定する方法が述べられている。しかし、この方法は遮断棹が完全に上向きの状態でないと検出できない。また、強風などで遮断棹が撓っている場合には誤検出の可能性がある。RFIDの反応距離はその幅がかなり大きいので正確なものでなく、また豪雨や積雪の場合に前記反応距離が変わる可能性があり正確性を欠くと思われる。
【0018】
(特許文献4)には遮断棹の中空部分の根元に超音波発信機を取り付け先端で反射して戻ってきたものを根元のセンサーで検出し、受信不可の場合折損と判断する方法および、先端にセンサーを設置して棹の先端で超音波を検出して折損の有無を検出する方法が書かれている。これは反射波の検出に関しては(非特許文献1)と同様の方法である。先端にセンサーを取り付けての検出に関しては遮断棹の内部に取り付ける必要があるので、現場で遮断棹を刳り貫いて作業するわけにもいかず、遮断棹の交換で対応することが必要である。
その場合、設置場所によって踏切の幅や遮断方式も異なるため規格の異なるあらゆる遮断棹に対応した交換用の遮断棹を用意しなければならず現実的ではない。また、強風時や、遮断時に子供が棹をゆすっている場合などは誤検出の可能性がある。
【0019】
(特許文献5)には中空棹内に(曲がると折れる鉛筆の芯のような長い)棒状物を取り付け、遮断棹が曲がってこれが折れると折れた下半分がバネで押し上げられ、その動きにより接点が入って異常検出する方法が述べられている。しかし、この方法は遮断棹が強風などで撓った場合、棹自体は折れていなくても上記棒状物のみが折れて誤検出する可能性がある。遮断棹が折れれば内部の上記棒状物は棹より弱体物なので折れると思われるが、既に棹が折れているのに上記棒状物が折れないとか、あるいは棹より先に上記棒状物が折れてしまうとかはいずれも誤検出につながる。棹と全く同じタイミングで折れることを期待するのは難しいと思われる。
【0020】
(特許文献6)には遮断機本体に対して回動軸を介して回動する遮断桿の先端部にGPSセンサーを設け、GPSセンサーで先端部の位置を測定し、測定された遮断桿先端部の位置が、予定の所定範囲にあるか否かを異常有無判定手段で判定し、所定範囲にあれば正常とし所定範囲になければ異常とする方法が述べられている。しかしながらGPSの位置精度は誤差が10m程度であり、GLONASSシステムを併用しても誤差は数m程度にしかならない。数cmの精度で測位するには数時間程度以上電波を受信して測位するか、または地上に設けた基準局からの電波で測位する必要があるが、ともに非現実的である。
【0021】
(特許文献7)には遮断棹が水平状態に閉じているのを検知する検知部と、遮断棹の先端部側にて電磁波を送信する送信部と、閉じた遮断棹の送信部からの電磁波を受信する受信部とを備えたものについて述べられている。これは幅の狭い小規模踏切やコインパーキングのような簡易型遮断装置に良く見られる遮断方式用遮断棹の折損検出方式であるが、遮断棹が水平位置の場合にしか折損検出できないので通常非遮断の状態にある遮断機の場合は電車が接近して遮断状態になるまで異常を検出できないという問題がある。
【0022】
(特許文献8)には断棹に導電部材を貼り付け、その抵抗値の変化による電流の変化、消費電力の変化を検出して折損の有無を判定する方法が述べられている。しかしながら
導電体の材料としては、導電性塗料や導電性樹脂フィルム、アルミニウムや銅等の金属の箔や線材等と書かれており、遮断棹が完全に切断された場合は検出できるが、多少折れ曲がっただけならその検出は確実ではないと思われる。
【0023】
(特許文献9)には遮断棹が降下したときに所定の警報音を発する踏切遮断機において、遮断棹の内外に警報音を検出する警報音検出手段としてのマイクロホンを配置して、遮断棹折損判定手段としてのレベル差検出回路と折損検知リレーとで、内マイクロホンと外マイクロホンとで検出された警報音に基づいて遮断棹の折損及び踏切警報音発生器の故障を検知する方法が述べられている。しかしながら、この方法では遮断棹が折れて開口した場合は内外の音量差がなくなると思われるが、折れずに曲がったままの場合は音量差にさほど変化もなく、従って遮断棹の曲がりは検出できないと思われる。
【0024】
(特許文献10)には遮断桿の昇降位置を検出する手段と、遮断桿のトルクを検出する手段とを設け、遮断桿の位置とトルクの関係から折損を判定する方法が述べられている。しかしながら、この方法では遮断棹が何かに引っかかっただけでも反応して誤検出する可能性があり、折れ曲がっているかどうかは直ぐには判らないので判定にはトルクが安定する一定の時間を要すると思われるが、遮断棹の先が折損し切断されて軽量になった場合と、メンテナンス等で回転ギア部分に潤滑剤が注入されて回転に必要なトルクが減った場合などとの識別が困難であろうと思われる。
【0025】
(特許文献11)には遮断棹が動作する時の電動モーターの電流値の時系列データの近似関数が判定許容範囲から逸脱するか否かにより、遮断棹の折損を判定する方法が述べられている。しかしながら、この方法ではバネで復帰できるタイプの遮断棹の場合、自動車等が棹に接触して一時的に遮断棹の根元の屈折できるバネの部分が折れ曲がると棹自体が折れていないにも関わらず一時的にモーターの過負荷を検出してしまう可能性があり、本当に棹の部分が折損した場合のみ検出できるかは疑問である。折損対策棹にはバネ方式の他にスリット型(縦に切れ込みを入れて棹が柔軟に撓るようにした方式)なども有る。そのような場合も車等が棹に触れて一時的に負荷が掛かっても折損なく復帰できる場合が多いので折損を誤検出する可能性がある。すなわち、棹が何かに接触して曲がり、モーターの電流値が変化した場合、それが単なる棹の撓りによるものであるかあるいは棹が非可逆的に曲がったり折れたりしているかの判断は困難である。
【0026】
(特許文献12)には、列車に搭載される撮影装置と、踏切遮断機に設けられた発信器と、撮影装置による撮像画像に基づく遮断桿の折損判定を行う判定装置とを備えて構成される遮断桿折損判定支援システムについて述べられている。
上記撮影装置は、列車が踏切遮断機の近傍を通過する際にこの踏切遮断機を撮影し、撮影データとして蓄積記憶し、一日の営業運転の終了後、撮影装置に蓄積記憶された撮影データが判定装置に入力され、判定装置では、撮影装置から取り込んだ撮影データをもとに、列車が走行した路線に設置されている踏切遮断機の遮断桿の折損を判定すると述べられている。しかしながら、この方法では夜間照明のない踏切もあり、また、自動車のライトなども有り得るので遮断棹の状態の自動認識は相当困難と思われる。また、高速で走行中は車両に近接した遮断機の映像をぶれなく撮影することも困難である。踏切待ちの人が黄色いバッグなどをふらふらさせると遮断棹の状態判定の困難さは更に増大すると思われる。また判定は一日の営業運転の終了後であり、即応性がないことも難点である。
【0027】
(特許文献13)には、棹の中空部分の末端に回転する羽根を付けて常時回転させ、それに電波を当てて、その反射波の変化から羽根の回転速度を認識する方法が述べられている。先端が折れれば反射波が無くなるので検出できるとのことであるが、この方法は遮断棹が揺れて棹が撓っている間は回転による反射波の変化にさらに撓りによる変化も重畳されて折損の有無の判定は困難である。また、常時可動する部分がある方式は可動部の摩耗などにより長期間の連続使用ができないので現実的ではない。
【0028】
(特許文献14)には、親機と子機から成り、子機が傾斜状態の変化を検出すると親機に知らせて親機が遮断機動作信号の有無から子機の状態変化の妥当性を確認し、折損の有無を判定する方法が述べられている。しかし、この方法では、遮断棹の水平常態か垂直状態かの2値の情報のみで判定するため数十度程度折れ曲がっただけの状態では判定ができない。また屈折式の遮断機では先端部分の折損状態の判定には使用できない。
【0029】
上記のように既存の技術では遮断棹が完全に切断されまたはほとんど切断に近い状態で棹の先端部がぶら下がっている場合には検出可能であるが、数十度程度折れ曲がっただけの状態では検出できないものが多い。また、センサーを棹の内部に組み込んだものでは棹の加工から行わなければならず、現場で行うには適切でないと思われる。また、GPSで棹の先端の位置を計測して棹の折損の有無を判断するなど、測位精度上現実的でないと思われるものや、モーターのトルクの僅かな変化を検出するものなど誤検出の可能性のあるもの、判定結果の正確さに疑問があると思われるものもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
こういった点に鑑みて、本願が解決すべき課題は、現場でいろいろなタイプの踏切用遮断棹に容易に設置でき、誤判定の可能性の少ない遮断棹折損検出装置を提供する。ことにある。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本願の発明者は傾斜の程度を測定し情報として発信できるセンサーネットワークの利用を検討した。ネットワークの要素となる各センサー部にはそれが取り付けられている棹の番号と棹の傾きの測定結果のデータが記録されている。各センサー部はコントローラーに情報を送信し、コントローラーは各センサー部から送られてくる情報を分析し、同一の棹に取り付けられた複数のセンサー部間で、傾斜状態を示す値がほぼ同じになっているか確認する。
【0032】
上記複数の傾斜センサー部の示す値が別途設定する時間幅内においてほぼ同じであれば遮断棹の前記複数のセンサー部間ではその間にある遮断棹に折損は無いと判定するか若しくは2個のセンサー部で観測された加速度ベクトル間の角度を計算し、それが別途設定する閾値以下であって0度に近ければ折損は無いと判定する。
【0033】
屈折式遮断棹の場合はその根元部分の棹と、先端部分の棹の2本の棹があるとみなし、各棹の根元部分と先端部分に上記のセンサー部を取り付ける。
【0034】
傾斜センサー部には2軸または3軸の加速度センサーを用い、それぞれ、X軸、Y軸またはX軸、Y軸、Z軸における重力加速度データを測定し、そのデータをもとにセンサーの傾きを計算で求める。
【0035】
2個のセンサー部から得られる加速度ベクトルを(A,A,A)および(B,B,B)とし、上記加速度ベクトル間のなす角度をΔθとすると、Δθは2個のベクトルのなす角度として(1)式によって求められる。

Δθ=Cos −1[ (A・B+A・B+A・B)/√{(A2+A2+A2)・(B2+B2+B2)}]
(1)
【0036】
各センサーには重力加速度が掛かっており静止状態ではどの方向を向いていても同じ大きさの(重力加速度を含む)加速度を受けるのであるから測定系の誤差をεとすると以下の(2)式が成立する。

|(A2+A2+A2)−(B2+B2+B2)|<ε (2)
【0037】
遮断棹が静止している場合、折れていると否とにかかわらず(2)式の条件は成立するので、(2)式は棹が静止しているかまたは折損していないことを示す条件であると言える。しかしながら、棹が折れて先端のセンサーが分離している場合はそもそもセンサーからの信号が受信できないのであるから(2)式の条件を考慮する必要がない。
【0038】
(2)式が成立する場合、Δθの値は(1)式の計算において√計算を省略した下記の(3)式で近似できる。

Δθ≒Cos −1[ (A・B+A・B+A・B)/ (A2+A2+A2)] (3)
【0039】
遮断棹が正常な場合は(3)式のΔθが別途に設定する十分小さな値εに対して(4式)が成立する。

Δθ<ε (4)
【0040】
棹が静止している場合、センサー部が受ける加速度は重力加速度G[m/s]のみであるから、(5)式のように置くことができる。

2+A2+A2=G (5)
【0041】
棹が曲がっていないと判定するΔθの判定限界値におけるcos(Δθ)の値をα(0<α<1)と置くと、棹が曲がっていると判定できる状態では(6)式が成り立つので、

・B+A・B+A・B<α・G (6)

(6)式の条件のみ確認して、これが一定時間T[sec]以上持続した場合に発報すれば良い。
【0042】
遮断棹が水平の状態の場合、遮断棹の先端が水平面内を移動しても先端に取り付けられたセンサーに対する重力の向きは変化しないので、車等によって水平方向に押されて先端が曲げられても、その時点では検出できないが、遮断機が上昇中もしくは上がりきった時点では検出可能である。
【0043】
また、通常遮断棹は水平方向に押し曲げられると上に上がるように設計されているので、水平方向に押されて折れ曲がった場合、棹全体が水平面内にとどまることはなく、重力の向きの変化は検出可能である。
それゆえ、加速度センサーは正常な遮断棹が運動する平面内の加速度を検出できれば良いので、2軸のものでも良い。
2軸の加速度センサーの場合(6)式は(7)式となる。

・B+A・B<α・G (7)
【0044】
また、より簡単な方法として、折れ曲がった場合にそれを判別する折れ曲がり角度の指定はできないが、変化が有ったことの検出のみ行う方法として、(7)式や(8)式によらず各センサーの軸毎の加速度の差を元にセンサーが検出する重力加速度の値の変化の有無を検出しても良い。
【0045】
すなはち、以下の(8)式を計算し、S1、2、のいずれかの値が一定時間(または一定サンプル回数分)に渡って、(9)式のように別途設定する閾値βを用いてβ・Gを超えた場合、異常有りと判定する。

=|A−B|、S=|A−B|、S=|A−B| (8)
>β・G、S>β・G、または、S>β・G (9)

上記のこの方法は発報するときの棹の折れ曲がり角を指定することはできないが、棹のセンサー間の傾きの差が許容値を超えたことを簡単な演算で検出できるので、容易に実現可能である。
【0046】
なお、これらの判定方法において、一定の時間T[sec]間同じ状態が継続していることを確認しなければならないのは遮断棹が動作中や風に揺れている場合の誤判定を除外するためである。
【0047】
以上の点から、本願の遮断棹折損検出装置は踏切の遮断棹の傾きを検出する複数のセンサー部と、前記センサー部からのデータを受信して前記遮断棹の折損の有無を判断する検出部と、前記検出部から検出結果の情報を受信して警報信号を出力する発報部および各部に電源を供給する電源部とからなることを特徴とし、傾きを検出する複数のセンサー部には2軸または3軸の加速度センサーを用いており、複数のセンサー部で検出された各軸の加速度のデータから重力の加わる向きの変化を検出して上記遮断棹の折損の有無を判定し、その結果を警報として出力することを特徴とする。
【0048】
また、本願の遮断棹折損有無の判定フローは以下のとおりである。
1.棹の根元側、先端側双方のセンサー部からのデータが受信できることを確認する。
一定時間受信できない場合は異常と判定する。
2.(2)式の条件が成立することを確認し、同じ棹に取り付けられた二個のセンサー間で観測された加速度がほぼ同じであることを確認する。
一定時間経過しても(2)式の条件が成立しない場合はセンサー異常かまたは折れた棹の先が風の影響などで揺れていると考えられる。
4.3軸センサーの場合は(3)式の値を計算し、その結果を用いて(6)式の条件を確認する。2軸センサーの場合は(7)式の条件を確認する。ただし、簡易には(8)式を算出し、その結果を用いて(9)式が成立することを確認しても良い。
5.上記4.において条件成立しない場合は遮断棹が折れ曲がっていると判定し、発報部から警報出力する。
6.次のデータ受信を待って上記1.に戻る。
【0049】
一方、センサー部には電源部から二本の電源用配線が接続されているが、センサー部から発報部(電源部と同一ケース内に有り)に送られる情報は上記電源用配線に乗せて送っている。
【0050】
より具体的には、通常の電源電流十数[mA]に対して、それを超える電流(例えば20[mA])を電源電流とは別に常時流しておき、検出部にて折損有と判断した場合はその電流をカットすることによって供給電流のトータル値を正常時の半分程度に低減させそれを発報部で検出して、警報接点を出力する。
【0051】
上記のこのような手法はセンサー部への配線量を減らし、現場での取り付け作業を簡略化する効果がある。
【0052】
また、必然的にセンサー部同志も2本の上記電源用配線によって接続されていることになるが、本願ではこれに調歩同期による1200bpsのシリアル通信信号を重畳させて先端側のセンサー部から根元側のセンサー部へ加速度の計測データを送っている。
【0053】
検出部は実際にはハードウェアではなく、遮断棹の根元部分に取り付けられたセンサー部内部のマイコンのソフトウェアの形で存在する。
【0054】
上記検出部は上記のように遮断棹の根元部分に取り付けられたセンサー部内部のマイコンのソフトウェアの形で実現しても良いが専用のハードウェアを持たせて発報部に付属させても良い。
【0055】
上記センサー部への電源用配線が切断された場合は、センサー部から発報部に送られる上記情報は途絶するが、その場合は上記フローの「1.」項のように異常と判断する。
【発明の効果】
【0056】
本願発明により、遮断棹が折れて完全に分離した場合は当然のことながら、分離せずに単に折れ曲がっただけの場合でも確実に折損検出が可能である。
【0057】
本願発明においては2個のセンサーとコントローラーおよびその間を接続する電源線を監視対象の遮断棹に取り付けるだけで良く、遮断棹そのものの取り外しや加工は必要ない。既存の遮断棹に容易に取り付けられる構造であるので、センサー類を取り付け加工した種々のタイプの遮断棹を現場での設置工事の前に用意しておく必要がない。
【0058】
本願発明のセンサー部は[図2]のような屈折式の遮断機にも取り付け可能である。
【0059】
折損防止の対策として、棹の根元部分が元から分かれていて棹の周囲に設置したバネの張力で接続固定され、接続部分が折れ曲がることで棹自体が折れないよう対策された棹の場合、駆動部の動作状態の情報から判定する方式では折損対策のための前記接続部が折れ曲がったのか棹自体が折れ曲がったのか確定できないが、本願の方式によればセンサー部は棹の任意の場所に取り付け可能なので、前記接続部分より先に取り付けることで棹部分の折損監視が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】概念図
図2】屈折式の遮断機の場合の概念図
図3】システム全体のブロック図
図4】センサー部の構成
図5】(棹の先端側)センサー部(2)および(4)内部のマイコン内の処理フロー図
図6】(棹の根元側)センサー部(1)および(3)内部のマイコン内の処理フロー図1
図7】(棹の根元側)センサー部(1)および(3)内部のマイコンでの処理フロー図2
図8】発報部内部のマイコンでの処理フロー図
図9】発報信号電流と各部の電流の関係図
図10】発報信号電流と各部の電流値とその合計値
図11】折れ曲がっている遮断棹の例1
図12】折れ曲がっている遮断棹の例2
【符号の説明】
【0061】
1 遮断機駆動部
2 センサー部(1)
3 遮断棹
4 センサー部(2)
5 センサー用電源信号兼用配線
6 電源部および発報部
7 電源および信号ケーブルの配線
8 遮断機駆動部
9 先端棹保持ワイヤー
10 遮断棹
11 センサー部(1)
12 センサー用電源信号兼用配線
13 センサー部(2)
14 センサー部(3)
15 センサー部(4)
16 遮断棹
17 電源部および発報部
18 電源および信号ケーブルの配線
19 (棹の根元側)センサー部(1)および(3)
20 (棹の先端側)センサー部(2)および(4)
21 検出部
22 電源部
23 発報部
24 電源部・発報部共用ケース
25 棹の根元側のセンサー部ケース
26 棹の先端側のセンサー部ケース
27 センサー部
28 X軸加速度センサー
29 Y軸加速度センサー
30 Z軸加速度センサー
31 マイコン
32 通信インターフェース
33 通信ライン
34 電源部
35 発報部内負荷電流計測回路
36 検出部の判定結果出力回路
37 根元側センサー部
38 先端側センサー部
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下に本願の実施形態を詳細に説明する。[図1]は本願のシステム全体を示す概念図である。
【0063】
図2]は屈折式の遮断機の場合を示す概念図である。
【0064】
センサー部(1)および、センサー部(3)は各々の棹部分の根元側に位置するセンサーであり、センサー部(2)および、センサー部(4)は各棹の先端側に位置するセンサーである。
【0065】
センサーは取り付け時、水平方向を例えばX軸、鉛直方向を例えばY軸として調整されている。Z軸は[図1]の紙面に垂直な向きである。棹の先端部が折れた場合、重力の方向は変わらないが、センサーが傾くのでX軸、Y軸の方向が傾き、したがってY軸だけではなくX軸方向にも重力加速度の成分が現れる。
【0066】
図3]はシステム全体のブロック図である。
棹の先端のセンサー部は検出部に対してN秒毎に各軸方向の加速度データを送っている。ただし、検出部を棹の根元側センサー内のマイコンのプログラムで実現した場合、先端側センサーのデータは根元側センサーユニットに送られ、根元側センサー内のマイコンで折損有無の判定処理が実施される。
【0067】
上記処理の結果、折損有と判定した場合、検出部によって発報部に警報発信のコマンドが送出され発報部が警報発信する。この警報発信は接点出力で実現しているが、計装信号や無線等の手段を用いても良い。
【0068】
図4]はセンサー部の構成図である。センサー部は主に各軸の加速度センサーとマイコンと通信インターフェースからなる。検出部は棹の根元側のセンサー部内のマイコンのソフトウェアで実現されている。
【0069】
図5]は棹の先端のセンサー部内のマイコンでの処理フローを示す。棹の先端のセンサー部では加速度センサーのデータを取り込み、N秒間隔で検出部にデータを送っている。
【0070】
図6]は棹の根元側のセンサー部(1)および(3)内部のマイコン内の処理フローを示す。
棹の根元側および先端側の各センサーは共に検出部にデータを送っているが、検出部は根元側のセンサー部内のマイコンのソフトウェアで実現しているので実際には先端側のセンサー部が根元側のセンサー部にデータを送る形となる。
【0071】
根元側のセンサー部および先端側センサー部からのデータが一定時間(T[sec]間)取得できなかった場合は遮断棹折損または装置異常と判定し、発報する。
【0072】
一定時間(T[sec]間)内に取得できた場合は(2)式の条件を確認し、双方のセンサー部が受ける重力加速度の大きさがほぼ同じであることを確認することによってセンサー部のデータに矛盾がないことを確かめる。矛盾があった場合は装置異常と判定し、発報する。
【0073】
矛盾がない場合、3軸センサーなら(6)式、2軸センサーなら(7)式の条件を満たしているか確認する。満たしている場合は折れ曲がり角の余弦がそれ以下の値なのであるから閾値以上に折れ曲がっていると判定し、発報する。
【0074】
図7]は折れ曲がり角によらず単にセンサーの検出した重力加速度に差が有った場合に折損有と判断する方式のフロー図である。
【0075】
上記方式は判定式のみが異なるだけで、基本的に折れ曲がり角による方法と同様である。すなわち、まず根元側のセンサー部および先端側センサー部からのデータが一定時間(T[sec]間)取得できなかった場合は遮断棹折損または装置異常と判定し、発報する。
【0076】
次に(8)式の結果を用いて(9)式の条件を確認する。センサー部が2軸の加速度センサーの場合はSに関する計算を省略する。(9)式の関係が成立した場合は検出された加速度のセンサー部間の差が大きいとして、その状態が一定時間継続すれば折損ありと判定し発報する。
【0077】
図8]は発報部内部のマイコンでの処理フロー図である。発報部は検出部からの発報コマンドを受信して折損検出状態であることを示す警報信号を出力する。警報信号は接点信号で出力しているが、他の通信方式であっても良い。
【0078】
図9]は発報信号電流と各部の電流の関係を示す図である。電源部34からは根元側センサー部37に1[mA]、検出部での判定結果出力回路36からは折損検出結果の出力として正常時には20[mA]、先端センサー部38に1[mA]、およびセンサー部間の通信用に10[mA]の計32[mA]程度の電流が供給されている。ただし、この通信用電流は調歩同期のシリアル信号等のデジタル伝送信号であって、0[mA]と10[mA]の間を矩形波状に変動する電流である。
【0079】
折損検出時には検出部(通常は根元側センサー部内のマイコン上のソフトウェア)の判定結果により、正常時に通電されていた20[mA]の電流がカットされ0[mA]となる。その結果電源から供給される電流値は12[mA]程度となる。
【0080】
発報部ではその電流値を監視しており、それが一定の値より下回ったときに接点出力する。上記一定の値はこの場合、正常時の最低電流値22[mA]と異常時の最大電流値12[mA]の中間値17[mA]が最も適切な値である。
【0081】
図10]は発報信号電流と各部の電流値および、その合計値を示す。折損によって先端側センサー部への電源線が切断された場合は通信異常となるので検出部で正常時に通電されていた20[mA]の電流はカットされ0[mA]となる。
【0082】
また当然のことながら先端側センサー部での消費電流もゼロとなるので、この場合、電流の合計値は根元側センサー部で消費される1[mA]のみとなり、上記の一定の値(例えば17[mA])より下回っているので発報部から接点出力される。
【0083】
以上のようにして本願では折損有無の判定結果を電源電流に重畳させた負荷電流の変化の形で発報部に送っている。
【0084】
上記の方法では正常時に一定量の電流を流しておいて、異常時にそれをカットしている。そのため電源線の電流値が判定閾値より少ない場合を異常状態と設定している。それゆえ遮断棹の先端分の折損によって電源線が切断された場合も同様に異常と判断できる。
【0085】
万一、先端部折損時に電源線が捩れて短絡した場合は電源部内のヒューズが溶断し電流ゼロとなるので、この場合も上記と同様に異常と判定できる。
【0086】
この点、異常の場合に電流値を増加させて異常を知らせる方法とは逆の発想であるが、上記の本願の方法によれば電源線断の場合の異常判定も折れ曲がり角度による異常判定と同様に電源電流の低下という結果に集約できるメリットがあり発報部での計測、判定が容易である。
【0087】
ところで、実際には遮断棹は折れても完全には分離せず、折れ曲がったままの状態の場合が多い。
【0088】
図11]、[図12]は折れた遮断棹の例を示す。遮断棹は折られても折れた先端が必ずしも分離するものではなく、したがって棹の重量は変わらないし、[図12]の場合のように先端が折れ曲がった程度の軽微な折れ曲がり方の場合、遮断機駆動部のモーターのトルクもほとんど変わらない。
【0089】
このような場合、加速度センサーを棹に複数取り付け、センサー間の加速度の差によって折損検出する本願の方法を用いると、遮断棹が折れ曲がったことをより正確に検出できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12