【実施例】
【0066】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の表1、表2に示す組成で実施例1〜22及び比較例1〜12のCuボールを作製し、このCuボールの真球度、ビッカース硬さ、α線量及び耐変色性を測定した。
【0067】
また、上述した実施例1〜22のCuボールを、表3に示す組成例1〜13のはんだ合金によるはんだ層で被覆して実施例1A〜22AのCu核ボールを作製し、このCu核ボールの真球度を測定した。更に、上述した実施例1〜22のCuボールを金属層及び表4に示す組成例1〜13のはんだ合金によるはんだ層で被覆して実施例1B〜22BのCu核ボールを作製し、このCu核ボールの真球度を測定した。
【0068】
なお、Biを含まないはんだ合金によるはんだ層、または、Biの量が本発明で規定される範囲を下回るはんだ合金によるはんだ層、Biの量が本発明で規定される範囲を超えるはんだ合金によるはんだ層でCuボールを被覆したCu核ボールについても、真球度の評価を行うため、上述した実施例1〜22のCuボールを、表5に示す組成例14〜20のはんだ合金によるはんだ層で被覆して参考例1A〜22AのCu核ボールを作製し、このCu核ボールの真球度を測定した。また、上述した実施例1〜22のCuボールを金属層及び表6に示す組成例14〜20のはんだ合金によるはんだ層で被覆して参考例1B〜22BのCu核ボールを作製し、このCu核ボールの真球度を測定した。
【0069】
更に、上述した比較例1〜12のCuボールを、表7に示す組成例1〜20のはんだ合金によるはんだ層で被覆して比較例1A〜12AのCu核ボールを作製し、このCu核ボールの真球度を測定した。また、上述した比較例1〜12のCuボールを金属層及び表8に示す組成例1〜20のはんだ合金によるはんだ層で被覆して比較例1B〜12BのCu核ボールを作製し、このCu核ボールの真球度を測定した。
【0070】
下記の表中、単位のない数字は、質量ppmまたは質量ppbを示す。詳しくは、表中のFe、Ag、Ni、P、S、Sb、Bi、Zn、Al、As、Cd、Pb、In、Sn、Auの含有割合を示す数値は、質量ppmを表す。「<1」は、該当する不純物元素のCuボールに対する含有割合が、1質量ppm未満であることを示す。また、表中のU、Thの含有割合を示す数値は、質量ppbを表す。「<5」は、該当する不純物元素のCuボールに対する含有割合が、5質量ppb未満であることを示す。「不純物合計量」は、Cuボールが含有する不純物元素の合計割合を示す。
【0071】
・Cuボールの作製
Cuボールの作製条件を検討した。金属材料の一例のCu材として、ナゲット材を準備した。実施例1〜13、22と、比較例1〜12のCu材として、純度が6Nのものを使用し、実施例14〜21のCu材として、純度が5Nのものを使用した。各Cu材を、るつぼの中に投入した後、るつぼの温度を1200℃に昇温し、45分間加熱してCu材を溶融させ、るつぼ底部に設けたオリフィスから溶融Cuを滴下し、生成した液滴を室温(18℃)まで急冷してCuボールに造球した。これにより、平均粒径が下記の各表に示す値となるCuボールを作製した。元素分析は、誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS分析)やグロー放電質量分析(GD−MS分析)を用いると高精度に分析ができるが、本例では、ICP−MS分析により行った。Cuボールの球径は、実施例1〜実施例17、実施例21、実施例22、比較例1〜12については250μm、実施例18は200μm、実施例19は100μm、実施例20は50μmとした。
【0072】
・Cu核ボールの作製
上述した実施例1〜22のCuボールを使用して、実施例1A〜17A、21A、22Aについては、実施例1〜17、21、22のCuボールに、片側23μmの厚さで組成例1〜13のはんだ合金によるはんだ層を形成して、実施例1A〜17A、21A、22AのCu核ボールを作製した。実施例18A〜20AのCu核ボールについては、Cuボールの球径が異なるため、実施例18のCuボールに、片側20μmの厚さで組成例1〜13のはんだ合金によるはんだ層を形成して、実施例18AのCu核ボールを作製した。また、実施例19、20のCuボールに、片側15μmの厚さで組成例1〜13のはんだ合金によるはんだ層を形成して、実施例19A、20AのCu核ボールを作製した。
【0073】
また、上述した実施例1〜22のCuボールを使用して、実施例1B〜17B、21B、22Bについては、実施例1〜17、21、22のCuボールに、金属層として片側2μmの厚さでNiめっき層を形成し、更に、片側23μmの厚さで組成例1〜13のはんだ合金によるはんだ層を形成して、実施例1B〜17B、21B、22BのCu核ボールを作製した。実施例18B〜20BのCu核ボールについては、Cuボールの球径が異なるため、実施例18のCuボールに、金属層として片側2μmの厚さでNiめっき層を形成し、更に、片側20μmの厚さで組成例1〜13のはんだ合金によるはんだ層を形成して、実施例18BのCu核ボールを作製した。また、実施例19、20のCuボールに、金属層として片側2μmの厚さでNiめっき層を形成し、更に、片側15μmの厚さで組成例1〜13のはんだ合金によるはんだ層を形成して、実施例19B、20BのCu核ボールを作製した。
【0074】
更に、上述した実施例1〜22のCuボールを使用して、参考例1A〜17A、21A、22Aについては、実施例1〜17、21、22のCuボールに、片側23μmの厚さで組成例14〜20のはんだ合金によるはんだ層を形成して、参考例1A〜17A、21A、22AのCu核ボールを作製した。参考例18A〜20AのCu核ボールについては、Cuボールの球径が異なるため、実施例18のCuボールに、片側20μmの厚さで組成例14〜20のはんだ合金によるはんだ層を形成して、参考例18AのCu核ボールを作製した。また、実施例19、20のCuボールに、片側15μmの厚さで組成例14〜20のはんだ合金によるはんだ層を形成して、参考例19A、20AのCu核ボールを作製した。
【0075】
また、上述した実施例1〜22のCuボールを使用して、参考例1B〜17B、21B、22Bについては、実施例1〜17、21、22のCuボールに、金属層として片側2μmの厚さでNiめっき層を形成し、更に、片側23μmの厚さで組成例14〜20のはんだ合金によるはんだ層を形成して、参考例1B〜17B、21B、22BのCu核ボールを作製した。参考例18B〜20BのCu核ボールについては、Cuボールの球径が異なるため、参考例18のCuボールに、金属層として片側2μmの厚さでNiめっき層を形成し、更に、片側20μmの厚さで組成例14〜20のはんだ合金によるはんだ層を形成して、参考例18BのCu核ボールを作製した。また、参考例19、20のCuボールに、金属層として片側2μmの厚さでNiめっき層を形成し、更に、片側15μmの厚さで組成例14〜20のはんだ合金によるはんだ層を形成して、参考例19B、20BのCu核ボールを作製した。
【0076】
更に、上述した比較例1〜12のCuボールを使用して、片側23μmの厚さで組成例1〜20のはんだ合金によるはんだ層を形成して比較例1A〜12AのCu核ボールを作製した。また、上述した比較例1〜12のCuボールを使用して、金属層として片側2μmの厚さでNiめっき層を形成し、更に、片側23μmの厚さで組成例1〜20のはんだ合金によるはんだ層を形成して比較例1B〜12BのCu核ボールを作製した。
【0077】
以下に、Cuボール及びCu核ボールの真球度、Cuボールのα線量、ビッカース硬さ及び耐変色性の各評価方法を詳述する。
【0078】
・真球度
Cuボール及びCu核ボールの真球度はCNC画像測定システムで測定した。装置は、ミツトヨ社製のウルトラクイックビジョン、ULTRA QV350−PROである。
【0079】
[真球度の評価規準]
下記の各表において、Cuボール及びCu核ボールの真球度の評価規準は以下の通りとした。
○○〇:真球度が0.99以上であった
○〇:真球度が0.98以上0.99未満であった
〇:真球度が0.95以上0.98未満であった
×:真球度が0.95未満であった
【0080】
・ビッカース硬さ
Cuボールのビッカース硬さは、「ビッカース硬さ試験−試験方法 JIS Z2244」に準じて測定した。装置は、明石製作所製のマイクロビッカース硬度試験器、AKASHI微小硬度計MVK−F 12001−Qを使用した。
【0081】
[ビッカース硬さの評価基準]
下記の各表において、Cuボールのビッカース硬さの評価規準は以下の通りとした。
○:0HV超55.5HV以下であった
×:55.5HVを超えた
【0082】
・α線量
Cuボールのα線量の測定方法は以下の通りである。α線量の測定にはガスフロー比例計数器のα線測定装置を用いた。測定サンプルは300mm×300mmの平面浅底容器にCuボールを容器の底が見えなくなるまで敷き詰めたものである。この測定サンプルをα線測定装置内に入れ、PR−10ガスフローにて24時間放置した後、α線量を測定した。
【0083】
[α線量の評価基準]
下記の各表において、Cuボールのα線量の評価基準は以下の通りとした。
○:α線量が0.0200cph/cm
2以下であった
×:α線量が0.0200cph/cm
2を超えた
【0084】
なお、測定に使用したPR−10ガス(アルゴン90%−メタン10%)は、PR−10ガスをガスボンベに充填してから3週間以上経過したものである。3週間以上経過したボンベを使用したのは、ガスボンベに進入する大気中のラドンによりα線が発生しないように、JEDEC(Joint Electron Device Engineering Council)で定められたJEDEC STANDARD−Alpha Radiation Measurement in Electronic Materials JESD221に従ったためである。
【0085】
・耐変色性
Cuボールの耐変色性の測定のために、Cuボールを大気雰囲気下の恒温槽を用いて200℃設定で420秒間加熱し、明度の変化を測定して、経時変化に十分に耐えられるCuボールであるか否かを評価した。明度は、コニカミノルタ製CM−3500d型分光測色計を使用して、D65光源、10度視野でJIS Z 8722「色の測定方法―反射及び透過物体色」に準じて分光透過率を測定して、色彩値(L
*,a
*,b
*)から求めた。なお、(L
*,a
*,b
*)は、JIS Z 8729「色の表示方法−L
*a
*b
*表色系及びL
*u
*v
*表色系」にて規定されているものである。L
*は明度であり、a
*は赤色度であり、b
*は黄色度である。
【0086】
[耐変色性の評価基準]
下記の各表において、Cuボールの耐変色性の評価基準は以下の通りとした。
○:420秒後の明度が55以上であった
×:420秒後の明度が55未満であった。
【0087】
・総合評価
上述した評価方法及び評価基準で真球度、ビッカース硬さ、α線量及び耐変色性のいずれにおいても、○または○○または○○○であったCuボールを、総合評価における○とした。一方、真球度、ビッカース硬さ、α線量及び耐変色性のうち、いずれか1つでも×となったCuボールを、総合評価において×とした。
【0088】
また、上述した評価方法及び評価基準で真球度が○または○○または○○○であったCu核ボールを、Cuボールにおける評価と合わせて総合評価における○とした。一方、真球度が×となったC核uボールを、総合評価において×とした。また、Cu核ボールの評価で真球度が〇または○○または○○○であっても、Cuボールの評価で真球度、ビッカース硬さ、α線量及び耐変色性のうち、いずれか1つでも×となったCu核ボールについては、総合評価を×とした。
【0089】
なお、Cu核ボールのビッカース硬さは、はんだ層、金属層の一例であるNiめっき層に依存するため、Cu核ボールのビッカース硬さは評価していない。但し、Cu核ボールにおいて、Cuボールのビッカース硬さが、本発明で規定される範囲内であれば、Cu核ボールであっても、耐落下衝撃性も良好でクラックを抑制でき、電極潰れ等も抑制でき、更に、電気伝導性の劣化も抑制できる。
【0090】
一方、Cu核ボールにおいて、Cuボールのビッカース硬さが、本発明で規定される範囲を超えて大きい場合、外部からの応力に対する耐久性が低くなり、耐落下衝撃性が悪くなると共にクラックが発生し易くなるという課題が解決できない。
【0091】
このため、ビッカース硬さが55.5HVを超えた比較例8〜11のCuボールを使用したCu核ボールは、ビッカース硬さの評価に適さないので、総合評価を×とした。
【0092】
また、Cu核ボールの耐変色性は、はんだ層、金属層の一例であるNiめっき層に依存するため、Cu核ボールの耐変色性は評価していない。但し、Cuボールの明度が、本発明で規定される範囲内であれば、Cuボール表面の硫化物や硫黄酸化物が抑制されており、はんだ層、Niめっき層等の金属層での被覆に適している。
【0093】
一方、Cuボールの明度が、本発明で規定される範囲を下回り低い場合、Cuボール表面の硫化物や硫黄酸化物が抑制されておらず、はんだ層、Niめっき層等の金属層での被覆に適さない。
【0094】
このため、420秒後の明度が55未満であった比較例1〜6のCuボールを使用したCu核ボールは、耐変色性の評価に適さないので、総合評価を×とした。
【0095】
また、Cu核ボールのα線量は、Cuボールを被覆するはんだ層を構成するめっき液元材料の組成、組成中の各元素に依存する。Cuボールを被覆する金属層の一例であるNiめっき層が設けられている場合、Ni層を構成するめっき液原材料にも依存する。
【0096】
Cuボールが本発明で規定された低α線量である場合、はんだ層、Niめっき層を構成するめっき液原材料が本発明で規定された低α線量であれば、Cu核ボールも本発明で規定された低α線量となる。これに対し、はんだ層、Niめっき層を構成するめっき液原材料が本発明で規定されたα線量を超えた高α線量であれば、Cuボールが上述した低α線量であっても、Cu核ボールも本発明で規定されたα線量を超えた高α線量となる。
【0097】
なお、はんだ層、Niめっき層を構成するめっき液原材料のα線量が本発明で規定される低α線量よりは若干高いα線量を示す場合、上述しためっきの行程で不純物が除去されることで、α線量が本発明で規定される低α線量の範囲にまで低減される。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
【表3】
【0101】
【表4】
【0102】
【表5】
【0103】
【表6】
【0104】
【表7】
【0105】
【表8】
【0106】
表1に示すように、4N5以上5N5以下の純度とした各実施例のCuボールは、いずれも総合評価において良好な結果を得られた。このことから、Cuボールの純度は、4N5以上5N5以下が好ましいといえる。
【0107】
以下、評価の詳細について説明すると、実施例1〜12、21のように、純度が4N5以上5N5以下で、Fe、Ag又はNiを5.0質量ppm以上50.0質量ppm以下含有するCuボールは、真球度、ビッカース硬さ、α線量及び耐変色性の総合評価において良好な結果を得られた。実施例13〜20、22に示すように、純度4N5以上5N5以下で、Fe、Ag及びNiを合計5.0質量ppm以上50.0質量ppm以下含有するCuボールも、真球度、ビッカース硬さ、α線量及び耐変色性の総合評価において良好な結果を得られた。なお、表には示さないが、実施例1、18〜22からそれぞれ、Feの含有量を0質量ppm以上5.0質量ppm未満に、Agの含有量を0pp以上5.0質量ppm未満に、Niの含有量を0質量ppm以上5.0質量ppm未満に変えて、Fe、Ag及びNiの合計を5.0質量ppm以上としたCuボールも、真球度、ビッカース硬さ、α線量及び耐変色性の総合評価において良好な結果を得られた。
【0108】
また、実施例21に示すように、Fe、Ag又はNiを5.0質量ppm以上50.0質量ppm以下含有し、且つその他の不純物元素のSb、Bi、Zn、Al、As、Cd、Pb、In、Sn、Auがそれぞれ50.0質量ppm以下である実施例21のCuボールも、真球度、ビッカース硬さ、α線量及び耐変色性の総合評価において良好な結果を得られた。
【0109】
Cu核ボールについては、表3、表4に示すように、Agを3.0wt%、Cuを0.8wt%、Biを0.5wt%含み、残部がSnである組成例1のはんだ合金によるはんだ層で、実施例1〜実施例22のCuボールを被覆した実施例1A〜22AのCu核ボール、実施例1〜実施例22のCuボールをNiめっき層で被覆し、更に組成例1のはんだ合金によるはんだ層で被覆した実施例1B〜22BのCu核ボールでも、真球度の総合評価において良好な結果を得られた。
【0110】
Agを3.0wt%、Cuを0.8wt%、Biを1.5wt%含み、残部がSnである組成例2のはんだ合金によるはんだ層で、実施例1〜実施例22のCuボールを被覆した実施例1A〜22AのCu核ボール、実施例1〜実施例22のCuボールをNiめっき層で被覆し、更に組成例2のはんだ合金によるはんだ層で被覆した実施例1B〜22BのCu核ボールでも、真球度の総合評価において良好な結果を得られた。
【0111】
Agを4.5wt%、Cuを0.8wt%、Biを1.5wt%含み、残部がSnである組成例3のはんだ合金によるはんだ層で、実施例1〜実施例22のCuボールを被覆した実施例1A〜22AのCu核ボール、実施例1〜実施例22のCuボールをNiめっき層で被覆し、更に組成例3のはんだ合金によるはんだ層で被覆した実施例1B〜22BのCu核ボールでも、真球度の総合評価において良好な結果を得られた。
【0112】
Agを3.0wt%、Cuを0.8wt%、Biを3.0wt%、Niを0.1wt%含み、残部がSnである組成例4のはんだ合金によるはんだ層で、実施例1〜実施例22のCuボールを被覆した実施例1A〜22AのCu核ボール、実施例1〜実施例22のCuボールをNiめっき層で被覆し、更に組成例4のはんだ合金によるはんだ層で被覆した実施例1B〜22BのCu核ボールでも、真球度の総合評価において良好な結果を得られた。
【0113】
Agを3.0wt%、Cuを0.8wt%、Biを3.0wt%、Niを0.02wt%含み、残部がSnである組成例5のはんだ合金によるはんだ層で、実施例1〜実施例22のCuボールを被覆した実施例1A〜22AのCu核ボール、実施例1〜実施例22のCuボールをNiめっき層で被覆し、更に組成例5のはんだ合金によるはんだ層で被覆した実施例1B〜22BのCu核ボールでも、真球度の総合評価において良好な結果を得られた。
【0114】
Agを3.0wt%、Cuを0.8wt%、Biを5.0wt%含み、残部がSnである組成例6のはんだ合金によるはんだ層で、実施例1〜実施例22のCuボールを被覆した実施例1A〜22AのCu核ボール、実施例1〜実施例22のCuボールをNiめっき層で被覆し、更に組成例6のはんだ合金によるはんだ層で被覆した実施例1B〜22BのCu核ボールでも、真球度の総合評価において良好な結果を得られた。
【0115】
Agを0.1wt%、Cuを0.8wt%、Biを1.5wt%含み、残部がSnである組成例7のはんだ合金によるはんだ層で、実施例1〜実施例22のCuボールを被覆した実施例1B〜22BのCu核ボール、実施例1〜実施例22のCuボールをNiめっき層で被覆し、更に組成例7のはんだ合金によるはんだ層で被覆した実施例1B〜22BのCu核ボールでも、真球度の総合評価において良好な結果を得られた。
【0116】
Agを3.5wt%、Cuを0.8wt%、Biを1.5wt%含み、残部がSnである組成例8のはんだ合金によるはんだ層で、実施例1〜実施例22のCuボールを被覆した実施例1A〜22AのCu核ボール、実施例1〜実施例22のCuボールをNiめっき層で被覆し、更に組成例8のはんだ合金によるはんだ層で被覆した実施例B〜22BのCu核ボールでも、真球度の総合評価において良好な結果を得られた。
【0117】
Agを3.0wt%、Cuを0.1wt%、Biを1.5wt%含み、残部がSnである組成例9のはんだ合金によるはんだ層で、実施例1〜実施例22のCuボールを被覆した実施例1A〜22AのCu核ボール、実施例1〜実施例22のCuボールをNiめっき層で被覆し、更に組成例9のはんだ合金によるはんだ層で被覆した実施例1B〜22BのCu核ボールでも、真球度の総合評価において良好な結果を得られた。
【0118】
Agを3.0wt%、Cuを3.0wt%、Biを1.5wt%含み、残部がSnである組成例10のはんだ合金によるはんだ層で、実施例1〜実施例22のCuボールを被覆した実施例1A〜22AのCu核ボール、実施例1〜実施例22のCuボールをNiめっき層で被覆し、更に組成例10のはんだ合金によるはんだ層で被覆した実施例1B〜22BのCu核ボールでも、真球度の総合評価において良好な結果を得られた。
【0119】
Cuを0.75wt%、Biを0.5wt%含み、残部がSnである組成例11のはんだ合金によるはんだ層で、実施例1〜実施例22のCuボールを被覆した実施例1A〜22AのCu核ボール、実施例1〜実施例22のCuボールをNiめっき層で被覆し、更に組成例11のはんだ合金によるはんだ層で被覆した実施例1B〜22BのCu核ボールでも、真球度の総合評価において良好な結果を得られた。
【0120】
Cuを0.75wt%、Biを3.0wt%含み、残部がSnである組成例12のはんだ合金によるはんだ層で、実施例1〜実施例22のCuボールを被覆した実施例1A〜22AのCu核ボール、実施例1〜実施例22のCuボールをNiめっき層で被覆し、更に組成例12のはんだ合金によるはんだ層で被覆した実施例1B〜22BのCu核ボールでも、真球度の総合評価において良好な結果を得られた。
【0121】
Cuを0.75wt%、Biを5.0wt%含み、残部がSnである組成例13のはんだ合金によるはんだ層で、実施例1〜実施例22のCuボールを被覆した実施例1A〜22AのCu核ボール、実施例1〜実施例22のCuボールをNiめっき層で被覆し、更に組成例13のはんだ合金によるはんだ層で被覆した実施例1B〜22BのCu核ボールでも、真球度の総合評価において良好な結果を得られた。
【0122】
なお、表には示さないが、実施例1、18〜22からそれぞれ、Feの含有量を0質量ppm以上5.0質量ppm未満に、Agの含有量を0pp以上5.0質量ppm未満に、Niの含有量を0質量ppm以上5.0質量ppm未満に変えて、Fe、Ag及びNiの合計を5.0質量ppm以上としたCuボールを、組成例1〜組成例13の何れかのはんだ合金によるはんだ層で被覆したCu核ボール、同CuボールをNiめっき層で被覆し、更に組成例1〜組成例13の何れかのはんだ合金によるはんだ層で被覆したCu核ボールでも、真球度の総合評価において良好な結果を得られた。
【0123】
また、Biを含まないはんだ合金によるはんだ層、または、Biの量が本発明で規定される範囲を下回るはんだ合金によるはんだ層、Biの量が本発明で規定される範囲を超えるはんだ合金によるはんだ層で、実施例1〜実施例22のCuボールを被覆したCu核ボールについても、真球度の評価を行った。
【0124】
Agを3.0wt%、Cuを0.5wt%含み、残部がSnである組成例14のはんだ合金によるはんだ層で、実施例1〜実施例22のCuボールを被覆した参考例1A〜22AのCu核ボール、実施例1〜実施例22のCuボールをNiめっき層で被覆し、更に組成例14のはんだ合金によるはんだ層で被覆した参考例1B〜22BのCu核ボールでも、真球度の総合評価において良好な結果を得られた。
【0125】
Agを3.0wt%、Cuを0.8wt%含み、残部がSnである組成例15のはんだ合金によるはんだ層で、実施例1〜実施例22のCuボールを被覆した参考例1A〜22AのCu核ボール、実施例1〜実施例22のCuボールをNiめっき層で被覆し、更に組成例15のはんだ合金によるはんだ層で被覆した参考例1B〜22BのCu核ボールでも、真球度の総合評価において良好な結果を得られた。
【0126】
Cuを0.75wt%含み、残部がSnである組成例16のはんだ合金によるはんだ層で、実施例1〜実施例22のCuボールを被覆した参考例1A〜22AのCu核ボール、実施例1〜実施例22のCuボールをNiめっき層で被覆し、更に組成例16のはんだ合金によるはんだ層で被覆した参考例1B〜22BのCu核ボールでも、真球度の総合評価において良好な結果を得られた。
【0127】
Agを3.0wt%、Cuを0.8wt%、Biを0.2wt%含み、残部がSnである組成例17のはんだ合金によるはんだ層で、実施例1〜実施例22のCuボールを被覆した参考例1A〜22AのCu核ボール、実施例1〜実施例22のCuボールをNiめっき層で被覆し、更に組成例17のはんだ合金によるはんだ層で被覆した参考例1B〜22BのCu核ボールでも、真球度の総合評価において良好な結果を得られた。
【0128】
Agを3.0wt%、Cuを0.8wt%、Biを10.0wt%含み、残部がSnである組成例18のはんだ合金によるはんだ層で、実施例1〜実施例22のCuボールを被覆した参考例1A〜22AのCu核ボール、実施例1〜実施例22のCuボールをNiめっき層で被覆し、更に組成例18のはんだ合金によるはんだ層で被覆した参考例1B〜22BのCu核ボールでも、真球度の総合評価において良好な結果を得られた。
【0129】
Cuを0.75wt%、Biを0.2wt%含み、残部がSnである組成例19のはんだ合金によるはんだ層で、実施例1〜実施例22のCuボールを被覆した参考例1A〜22AのCu核ボール、実施例1〜実施例22のCuボールをNiめっき層で被覆し、更に組成例19のはんだ合金によるはんだ層で被覆した参考例1B〜22BのCu核ボールでも、真球度の総合評価において良好な結果を得られた。
【0130】
Cuを0.75wt%、Biを10.0wt%含み、残部がSnである組成例20のはんだ合金によるはんだ層で、実施例1〜実施例22のCuボールを被覆した参考例1A〜22AのCu核ボール、実施例1〜実施例22のCuボールをNiめっき層で被覆し、更に組成例20のはんだ合金によるはんだ層で被覆した参考例1B〜22BのCu核ボールでも、真球度の総合評価において良好な結果を得られた。
【0131】
一方、比較例7のCuボールはFe、Ag及びNiの含有量の合計が5.0質量ppmに満たない上に、U,Thが5質量ppb未満であり、その他の不純物元素も1質量ppm未満であって、比較例7のCuボール、比較例7のCuボールを、各組成例のはんだ合金によるはんだ層で被覆した比較例7AのCu核ボール、及び、比較例7のCuボールをNiめっき層で被覆し、更に各組成例のはんだ合金によるはんだ層で被覆した比較例7BのCu核ボールは、真球度が0.95に満たなかった。また、不純物元素を含有していても、Fe、Ag及びNiのうち少なくとも1種の含有量の合計が5.0質量ppmに満たない比較例12のCuボール、比較例12のCuボールを、各組成例のはんだ合金によるはんだ層で被覆した比較例12AのCu核ボール、及び、比較例12のCuボールをNiめっき層で被覆し、更に各組成例のはんだ合金によるはんだ層で被覆した比較例12BのCu核ボールも、真球度が0.95に満たなかった。これらの結果から、Fe、Ag及びNiのうち少なくとも1種の含有量の合計が5.0質量ppmに満たないCuボール、このCuボールを、各組成例のはんだ合金によるはんだ層で被覆したCu核ボール、及び、このCuボールをNiめっき層で被覆し、更に各組成例のはんだ合金によるはんだ層で被覆したCu核ボールは、高真球度を実現できないといえる。
【0132】
また、比較例10のCuボールはFe、Ag及びNiの含有量の合計が153.6質量ppmでその他の不純物元素の含有量がそれぞれ50質量ppm以下であるが、ビッカース硬さが55.5HVを超えて、良好な結果を得られなかった。更に、比較例8のCuボールは、Fe、Ag及びNiの含有量の合計が150.0質量ppmである上に、その他の不純物元素の含有量も、特にSnが151.0質量ppmと、50.0質量ppmを大幅に超えており、ビッカース硬さが55.5HVを超えて、良好な結果を得られなかった。そのため、純度が4N5以上5N5以下のCuボールであっても、Fe、Ag及びNiのうち少なくとも1種の含有量の合計が50.0質量ppmを超えるCuボールは、ビッカース硬さが大きくなってしまい、低硬度を実現できないといえる。このように、Cuボールのビッカース硬さが、本発明で規定される範囲を超えて大きい場合、外部からの応力に対する耐久性が低くなり、耐落下衝撃性が悪くなると共にクラックが発生し易くなるという課題が解決できない。更に、その他の不純物元素も、それぞれ50.0質量ppmを超えない範囲で含有することが好ましいといえる。
【0133】
これらの結果から、純度が4N5以上5N5以下で、Fe、Ag及びNiのうち少なくとも1種の含有量の合計を5.0質量ppm以上50.0質量ppm以下含有するCuボールは、高真球度及び低硬度を実現し、かつ、変色が抑制されるといえる。このようなCuボールを各組成例のはんだ合金によるはんだ層で被覆したCu核ボール、このようなCuボールをNiめっき層で被覆し、更に各組成例のはんだ合金によるはんだ層で被覆したCu核ボールは、高真球度を実現し、また、Cuボールが低硬度を実現することで、Cu核ボールとしても耐落下衝撃性も良好でクラックを抑制でき、電極潰れ等も抑制でき、更に、電気伝導性の劣化も抑制できる。更に、Cuボールの変色が抑制されることで、はんだ層、Niめっき層等の金属層での被覆に適している。その他の不純物元素の含有量は、それぞれ50.0質量ppm以下であることが好ましい。
【0134】
実施例18〜20のCuボールは、実施例17のCuボールと同じ組成だが球径が異なっており、いずれにおいても真球度、ビッカース硬さ、α線量及び耐変色性の総合評価において良好な結果を得た。実施例18〜20のCuボールを各組成例のはんだ合金によるはんだ層で被覆したCu核ボール、実施例18〜20のCuボールをNiめっき層で被覆し、更に各組成例のはんだ合金によるはんだ層で被覆したCu核ボールでも、真球度の総合評価において良好な結果を得た。表には示さないが、これらの実施例と同じ組成で、球径が1μm以上1000μm以下のCuボールでは、いずれも真球度、ビッカース硬さ、α線量及び耐変色性の総合評価において良好な結果を得られた。このことから、Cuボールの球径は、1μm以上1000μm以下であることが好ましいといえ、50μm以上300μm以下がより好ましいといえる。
【0135】
実施例22のCuボールは、Fe、Ag及びNiの含有量の合計が5.0質量ppm以上50.0質量ppm以下であり、Pを2.9質量ppm含有しており、真球度、ビッカース硬さ、α線量及び耐変色性の総合評価において良好な結果を得られた。実施例22のCuボールを各組成例のはんだ合金によるはんだ層で被覆したCu核ボール、実施例22のCuボールをNiめっき層で被覆し、更に各組成例のはんだ合金によるはんだ層で被覆したCu核ボールでも、真球度の総合評価において良好な結果を得た。比較例11のCuボールは、Fe、Ag及びNiの含有量の合計が、実施例22のCuボールと同様に50.0質量ppm以下であるが、ビッカース硬さが5.5HVを超えて実施例22のCuボールとは異なる結果になった。また、比較例9も、ビッカース硬さが5.5HVを超えた。これは、比較例9、11のPの含有量が著しく多いためであると考えられ、この結果から、Pの含有量が増えると、ビッカース硬さが大きくなることが分かる。よって、Pの含有量は3質量ppm未満であることが好ましく、1質量ppm未満であることがより好ましいといえる。
【0136】
各実施例のCuボールでは、α線量が0.0200cph/cm
2以下であった。そのため、各実施例1〜22のCuボールを被覆する組成例1〜13のはんだ合金において、各元素が本発明で規定された低α線量であることで、各実施例1A〜22AのCu核ボールも本発明で規定された低α線量となる。また、Cuボールを被覆する金属層の一例であるNiめっき層が設けられている場合、はんだ合金に加え、Niめっき層を構成する各元素が本発明で規定された低α線量であることで、各実施例1B〜22BのCu核ボールも本発明で規定された低α線量となる。
【0137】
更に、はんだ層、Niめっき層を形成するめっきの行程で、合金に含まれるα線を放射する不純物が除去されることで、めっき前の合金のα線量が、本発明で規定される低α線量よりは若干高いα線量を示す場合でも、めっき後のα線量が本発明で規定される低α線量の範囲にまで低減される。
【0138】
なお、各実施例1〜22のCuボールを被覆する組成例14〜20のはんだ合金においても、各元素が本発明で規定された低α線量であることで、各参考例1A〜22AのCu核ボールも本発明で規定された低α線量となる。また、Cuボールを被覆する金属層の一例であるNiめっき層が設けられている場合、はんだ合金に加え、Niめっき層を構成する各元素が本発明で規定された低α線量であることで、各参考例1B〜22BのCu核ボールも本発明で規定された低α線量となる。
【0139】
これにより、電子部品の高密度実装に各実施例のCu核ボールが使用される場合、はんだ層、Niめっき層を構成するめっき液元材料が本発明で規定された低α線量であることで、ソフトエラーを抑制することができる。
【0140】
比較例7のCuボールでは、耐変色性で良好な結果を得られた一方で、比較例1〜6では耐変色性で良好な結果を得られなかった。比較例1〜6のCuボールと、比較例7のCuボールを比べると、これらの組成の違いは、Sの含有量のみである。そのため、耐変色性で良好な結果を得るためには、Sの含有量を1質量ppm未満とする必要があるといえる。各実施例のCuボールでは、いずれもSの含有量が1質量ppm未満であることからも、Sの含有量は1質量ppm未満が好ましいといえる。
【0141】
続いて、Sの含有量と耐変色性の関係を確認するために、実施例14、比較例1及び比較例5のCuボールを200℃で加熱して、加熱前、加熱60秒後、180秒後、420秒後の写真を撮り、明度を測定した。表9及び
図4は、各Cuボールを加熱した時間と明度の関係をグラフにしたものである。
【0142】
【表9】
【0143】
この表から、加熱前の明度と、加熱して420秒後の明度とを比べると、実施例14、比較例1、5の明度は、加熱前に64や65付近で近い値だった。加熱して420秒後では、Sを30.0質量ppm含有する比較例5の明度が最も低くなり、続いてSを10.0質量ppm含有する比較例1、Sの含有量が1質量ppm未満の実施例14の順となった。このことから、Sの含有量が多いほど、加熱後の明度が低くなるといえる。比較例1、5のCuボールでは、明度が55を下回ったため、Sを10.0質量ppm以上含有するCuボールは、加熱時に硫化物や硫黄酸化物を形成して変色しやすいといえる。また、Sの含有量が0質量ppm以上1.0質量ppm以下であれば、硫化物や硫黄酸化物の形成が抑制され、濡れ性が良好であるといえる。なお、実施例14のCuボールを電極上に実装したところ、良好な濡れ性を示した。
【0144】
以上の通り、純度が4N5以上5N5以下であり、Fe、Ag及びNiのうち少なくとも1種の含有量の合計が5.0質量ppm以上50.0質量ppm以下であり、Sの含有量が0質量ppm以上1.0質量ppm以下であり、Pの含有量が0質量ppm以上3.0質量ppm未満である本実施例のCuボールでは、いずれも真球度が0.95以上であったため、高真球度を実現できた。高真球度を実現したことにより、Cuボールを電極等に実装した際のセルフアライメント性を確保できると共に、Cuボールの高さのばらつきを抑制できる。本実施例のCuボールをはんだ層で被覆したCu核ボール、本実施例のCuボールを金属層で被覆し、金属層を更にはんだ層で被覆したCu核ボールでも、同様の効果が得られる。
【0145】
また、本実施例のCuボールでは、いずれもビッカース硬さが55HV以下であったため、低硬度を実現できた。低硬度を実現したことにより、Cuボールの耐落下衝撃性を向上させることができる。Cuボールが低硬度を実現することで、本実施例のCuボールをはんだ層で被覆したCu核ボール、本実施例のCuボールを金属層で被覆し、金属層を更にはんだ層で被覆したCu核ボールでも、耐落下衝撃性も良好でクラックを抑制でき、電極潰れ等も抑制でき、更に、電気伝導性の劣化も抑制できる。
【0146】
また、本実施例のCuボールでは、いずれも変色が抑制された。Cuボールの変色が抑制されたことにより、硫化物や硫黄酸化物によるCuボールへの悪影響を抑制できるとともに、Cuボールを電極上に実装した際の濡れ性が向上する。Cuボールの変色が抑制されることで、はんだ層、Niめっき層等の金属層での被覆に適している。
【0147】
なお、本実施例のCu材には、純度が4N5超6N以下のCuナゲット材を使用して、純度が4N5以上5N5以下のCuボールを作製したが、4N5超6N以下のワイヤー材や板材等を使用しても、Cuボール、Cu核ボールの双方において総合評価において良好な結果を得られた。
【0148】
続いて、Biの含有量とエレクトロマイグレーション(EM)の抑制効果の関係を確認するために、以下の表10に示す組成のはんだ合金によりはんだ層を形成した実施例及び比較例のCu核ボール、表10に示す組成のはんだ合金により形成した比較例のはんだボールを作成し、大電流印加時のエレクトロマイグレーションに対する耐性を測定するエレクトロマイグレーション試験を行った。表10における組成率はwt%である。
【0149】
実施例101〜113、比較例101〜107では、表1に示す実施例17の組成で、球径が250μmのCuボールに、金属層として片側2μmの厚さでNiめっき層を形成し、更に、片側23μmの厚さではんだ層を形成して、球径が300μmのCu核ボールを作製した。実施例101〜113に示すはんだ合金の組成は、表1における組成例1〜13に示すはんだ合金である。比較例101〜107に示すはんだ層の組成は、表1における組成例14〜20に示すはんだ合金である。比較例8〜11では、直径が300μmのはんだボールを作成した。
【0150】
はんだ層は、公知のめっき法により形成した。公知のめっき法としては、上述したように、電解めっき法、めっき槽に接続されたポンプがめっき槽中にめっき液に乱流を発生させ、めっき液の乱流により球状の核にめっき被膜を形成する方法、めっき槽に振動板を設けて所定の周波数で振動させることによりめっき液が乱流攪拌され、球状の核にめっき被膜を形成する方法等がある。
【0151】
エレクトロマイグレーション試験は、表10に示す各実施例の核ボールと、比較例の核ボール及びはんだボールを使用して、直径0.24mmのCu電極を有するサイズ13mm×13mmのパッケージ基板上に水溶性フラックスを用いてリフローはんだ付けをし、パッケージを作製した。その後、サイズ30mm×120mm、厚み1.5mmのガラスエポキシ基板(FR−4)にソルダペーストを印刷して、上記で作製したパッケージを搭載して、220℃以上の温度域で40秒間保持し、ピーク温度を245℃とする条件でリフローを行いサンプルを作製した。
【0152】
エレクトロマイグレーション試験に使用する半導体パッケージ基板には、膜厚が15μmのレジスト膜を形成し、レジスト膜に開口径が240μmの開口部を形成して、リフロー炉で実施例あるいは比較例の核ボールあるいははんだボールを接合した。
【0153】
このように核ボールあるいははんだボールが接合された半導体パッケージ基板を、プリント配線板に実装した。プリント配線板には、はんだ合金の組成がSn−3.0Ag−0.5Cuであるソルダペーストを、厚さを100μm、径を240μmとして印刷し、実施例または比較例の核ボールあるいははんだボールが接合された半導体パッケージ基板を、リフロー炉でプリント配線板に接続した。リフロー条件としては、大気でピーク温度を245℃とし、予備加熱を140〜160℃で70秒、本加熱を220℃以上で40秒行った。
【0154】
EM試験は上記にて作製したサンプルをコンパクト可変スイッチング電源(菊水電子工業株式会社製:PAK35−10A)に接続し、150℃に保持したシリコンオイルバス中で電流密度12kA/cm
2となるように電流を流す。電流印加中は連続的にサンプルの電気抵抗を測定し、初期抵抗値から20%上昇時を試験終了とし、試験時間を記録した。EM試験の結果、試験時間が800時間を超えたものについて、エレクトロマイグレーションの評価(EM評価)を満たすものとした。
【0155】
【表10】
【0156】
Biの含有量が0.5質量%以上5.0質量%以下であるSn−Ag−Cu−Bi系のはんだ合金によるはんだ層を有した実施例101〜110のCu核ボール、Biの含有量が0.5質量%以上5.0質量%以下であるSn−Cu−Bi系のはんだ合金によるはんだ層を有した実施例111〜113のCu核ボールでは、EM評価の試験時間が800時間を超えた。
【0157】
Biの含有量が1.5質量%である実施例102のCu核ボールでは、EM評価の試験時間が1300時間を超えた。Biの含有量が5.0質量%以上でEM評価の試験時間が減少する傾向にあるが、Biの含有量が5.0質量%である実施例106のCu核ボールでも、EM評価の試験時間が800時間を超えた。
【0158】
これに対し、Biを含有しないSn−Ag−Cu系のはんだ合金によるはんだ層を有した比較例101、102のCu核ボール、Biを含有しないSn−Cu系のはんだ合金によるはんだ層を有した比較例103のCu核ボールでは、EM評価の試験時間が800時間未満であった。
【0159】
また、Sn−Ag−Cu−Bi系のはんだ合金によるはんだ層を有したCu核ボールであっても、Biの含有量が0.2質量%の比較例104、Biの含有量が10.0質量%の比較例105では、EM評価の試験時間が800時間未満であった。このように、Sn−Ag−Cu−Bi系のはんだ合金によるはんだ層を有したCu核ボールであっても、Biの含有量が0.5質量%未満、または、5.0質量%超であると、EM評価の試験時間が800時間未満であり、EMに対する所望の耐性が得られなかった。
【0160】
更に、Sn−Cu−Bi系のはんだ合金によるはんだ層を有したCu核ボールであっても、Biの含有量が0.2質量%の比較例106、Biの含有量が10.0質量%の比較例107では、EM評価の試験時間が800時間未満であった。このように、Sn−Cu−Bi系のはんだ合金によるはんだ層を有したCu核ボールであっても、Biの含有量が0.5質量%未満、または、5.0質量%超であると、EM評価の試験時間が800時間未満であり、EMに対する所望の耐性が得られなかった。
【0161】
Biの含有量が3.0質量%、Niの含有量が0.02質量%であるSn−Ag−Cu−Bi−Ni系のはんだ合金による比較例108のはんだボールでは、はんだ合金の組成が実施例105と同じであっても、EM評価の試験時間が800時間を大幅に下回った。
【0162】
Biの含有量が0.5質量%であるSn−Ag−Cu−Bi系のはんだ合金による比較例109のはんだボールでは、はんだ合金の組成が実施例101と同じであっても、EM評価の試験時間が800時間を大幅に下回った。
【0163】
Biを含有しないSn−Ag−Cu系のはんだ合金による比較例110のはんだボール、Biを含有しないSn−Cu系のはんだ合金による比較例111のはんだボールでも、EM評価の試験時間が800時間を大幅に下回った。
【0164】
以上のことから、Cuボールを被覆するはんだ層が、Sn−Ag−Cu−Bi系のはんだ合金、または、Sn−Cu−Bi系のはんだ合金で構成されるCu核ボールにおいて、Biの含有量を0.5質量%以上5.0質量%以下とすることで、エレクトロマイグレーションの抑制効果が得られることが判った。また、Biの好ましい含有量は、1.5質量%以上3.0質量%以下であることが判った。
【0165】
なお、Cuの含有量を0.1質量%以上3.0質量%以下とすることで、エレクトロマイグレーションの抑制効果が阻害されないことが判った。また、Agの含有量を0質量%超4.5質量%以下とすることで、Agを含有しないはんだ合金よりもエレクトロマイグレーションの抑制効果が得られることが判った。Agの含有量を4.5質量%とした実施例3では、EM評価の試験時間が1300時間を超えた。更に、Niの含有量を0質量%超0.1質量%以下含有しても、エレクトロマイグレーションの抑制効果が得られることが判った。Niの含有量を0.1質量%とした実施例104では、EM評価の試験時間が1400時間を超えた。
【0166】
上述したEM評価を含めた総合評価を考えると、4N5以上5N5以下の純度とした実施例14のCuボールをNiめっき層で被覆し、更に表1の組成例1〜13に示すBiの含有量が0.5質量%以上5.0質量%以下であるSn−Ag−Cu−Bi系のはんだ合金、または、Biの含有量が0.5質量%以上5.0質量%以下であるSn−Cu−Bi系のはんだ合金によるはんだ層で被覆したCu核ボールは、真球度にEM評価を加えた総合評価において良好な結果を得られた。
【0167】
なお、表には示さないが、4N5以上5N5以下の純度とした実施例1〜13、実施例15〜22のCuボールをNiめっき層で被覆し、更に表1の組成例1〜13のはんだ合金によるはんだ層で被覆したCu核ボールも、真球度にEM評価を加えた総合評価において良好な結果を得られる。また、4N5以上5N5以下の純度とした実施例1〜13、実施例15〜22のCuボールを、表1の組成例1〜13のはんだ合金によるはんだ層で被覆したCu核ボールも、真球度にEM評価を加えた総合評価において良好な結果を得られる。