【実施例】
【0073】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の表1、表2に示す組成で実施例1〜19及び比較例1〜12のCuボールを作製し、このCuボールの真球度、ビッカース硬さ、α線量及び耐変色性を測定した。
【0074】
また、上述した実施例1〜19のCuボールを、表3に示す組成例1〜2のはんだ合金によるはんだ層で被覆して実施例1A〜19AのCu核ボールを作製し、このCu核ボールの真球度を測定した。更に、上述した実施例1〜19のCuボールを金属層及び表4に示す組成例1〜2のはんだ合金によるはんだ層で被覆して実施例1B〜19BのCu核ボールを作製し、このCu核ボールの真球度を測定した。
【0075】
また、上述した比較例1〜12のCuボールを、表5に示す組成例1〜2のはんだ合金によるはんだ層で被覆して比較例1A〜12AのCu核ボールを作製し、このCu核ボールの真球度を測定した。また、上述した比較例1〜12のCuボールを金属層及び表6に示す組成例1〜2のはんだ合金によるはんだ層で被覆して比較例1B〜12BのCu核ボールを作製し、このCu核ボールの真球度を測定した。
【0076】
下記の表中、単位のない数字は、質量ppmまたは質量ppbを示す。詳しくは、表中のFe、Ag、Ni、P、S、Sb、Bi、Zn、Al、As、Cd、Pb、In、Sn、Auの含有割合を示す数値は、質量ppmを表す。「<1」は、該当する不純物元素のCuボールに対する含有割合が、1質量ppm未満であることを示す。また、表中のU、Thの含有割合を示す数値は、質量ppbを表す。「<5」は、該当する不純物元素のCuボールに対する含有割合が、5質量ppb未満であることを示す。「不純物合計量」は、Cuボールが含有する不純物元素の合計割合を示す。
【0077】
・Cuボールの作製
Cuボールの作製条件を検討した。金属材料の一例のCu材として、ナゲット材を準備した。実施例1〜13、19と、比較例1〜12のCu材として、純度が6Nのものを使用し、実施例14〜18のCu材として、純度が5Nのものを使用した。各Cu材を、るつぼの中に投入した後、るつぼの温度を1200℃に昇温し、45分間加熱してCu材を溶融させ、るつぼ底部に設けたオリフィスから溶融Cuを滴下し、生成した液滴を室温(18℃)まで急冷してCuボールに造球した。これにより、平均粒径が下記の各表に示す値となるCuボールを作製した。元素分析は、誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS分析)やグロー放電質量分析(GD−MS分析)を用いると高精度に分析ができるが、本例では、ICP−MS分析により行った。Cuボールの球径は、実施例1〜実施例19、比較例1〜12とも250μmとした。
【0078】
・Cu核ボールの作製
上述した実施例1〜19のCuボールを使用して、実施例1A〜19Aについては、片側23μmの厚さで組成例1〜2のはんだ合金により電気めっき法によるはんだ層を形成して実施例1A〜19AのCu核ボールを作製した。
【0079】
また、上述した実施例1〜19のCuボールを使用して、実施例1B〜19Bについては、金属層として片側2μmの厚さでNiめっき層を形成し、更に、片側23μmの厚さで組成例1〜2のはんだ合金により電気めっき法によるはんだ層を形成して実施例1B〜19Bを作製した。
【0080】
更に、上述した比較例1〜12のCuボールを使用して、片側23μmの厚さで組成例1〜2のはんだ合金によるはんだ層を形成して比較例1A〜12AのCu核ボールを作製した。また、上述した比較例1〜12のCuボールを使用して、金属層として片側2μmの厚さでNiめっき層を形成し、更に、片側23μmの厚さで組成例1〜2のはんだ合金によるはんだ層を形成して比較例1B〜12BのCu核ボールを作製した。
【0081】
以下に、Cuボール及びCu核ボールの真球度、Cuボールのα線量、ビッカース硬さ及び耐変色性の各評価方法を詳述する。
【0082】
・真球度
Cuボール及びCu核ボールの真球度はCNC画像測定システムで測定した。装置は、ミツトヨ社製のウルトラクイックビジョン、ULTRA QV350−PROである。
【0083】
[真球度の評価規準]
下記の各表において、Cuボール及びCu核ボールの真球度の評価規準は以下の通りとした。
○○〇:真球度が0.99以上であった
○〇:真球度が0.98以上0.99未満であった
〇:真球度が0.95以上0.98未満であった
×:真球度が0.95未満であった
【0084】
・ビッカース硬さ
Cuボールのビッカース硬さは、「ビッカース硬さ試験−試験方法 JIS Z2244」に準じて測定した。装置は、明石製作所製のマイクロビッカース硬度試験器、AKASHI微小硬度計MVK−F 12001−Qを使用した。
【0085】
[ビッカース硬さの評価基準]
下記の各表において、Cuボールのビッカース硬さの評価規準は以下の通りとした。
○:0HV超55.5HV以下であった
×:55.5HVを超えた
【0086】
・α線量
Cuボールのα線量の測定方法は以下の通りである。α線量の測定にはガスフロー比例計数器のα線測定装置を用いた。測定サンプルは300mm×300mmの平面浅底容器にCuボールを容器の底が見えなくなるまで敷き詰めたものである。この測定サンプルをα線測定装置内に入れ、PR−10ガスフローにて24時間放置した後、α線量を測定した。
【0087】
[α線量の評価基準]
下記の各表において、Cuボールのα線量の評価基準は以下の通りとした。
○:α線量が0.0200cph/cm
2以下であった
×:α線量が0.0200cph/cm
2を超えた
【0088】
なお、測定に使用したPR−10ガス(アルゴン90%−メタン10%)は、PR−10ガスをガスボンベに充填してから3週間以上経過したものである。3週間以上経過したボンベを使用したのは、ガスボンベに進入する大気中のラドンによりα線が発生しないように、JEDEC(Joint Electron Device Engineering Council)で定められたJEDEC STANDARD−Alpha Radiation Measurement in Electronic Materials JESD221に従ったためである。
【0089】
・耐変色性
Cuボールの耐変色性の測定のために、Cuボールを大気雰囲気下の恒温槽を用いて200℃設定で420秒間加熱し、明度の変化を測定して、経時変化に十分に耐えられるCuボールであるか否かを評価した。明度は、コニカミノルタ製CM−3500d型分光測色計を使用して、D65光源、10度視野でJIS Z 8722「色の測定方法―反射及び透過物体色」に準じて分光透過率を測定して、色彩値(L
*,a
*,b
*)から求めた。なお、(L
*,a
*,b
*)は、JIS Z 8729「色の表示方法−L
*a
*b
*表色系及びL
*u
*v
*表色系」にて規定されているものである。L
*は明度であり、a
*は赤色度であり、b
*は黄色度である。
【0090】
[耐変色性の評価基準]
下記の各表において、Cuボールの耐変色性の評価基準は以下の通りとした。
○:420秒後の明度が55以上であった
×:420秒後の明度が55未満であった。
【0091】
・総合評価
上述した評価方法及び評価基準で真球度、ビッカース硬さ、α線量及び耐変色性のいずれにおいても、○または○○または○○○であったCuボールを、総合評価における○とした。一方、真球度、ビッカース硬さ、α線量及び耐変色性のうち、いずれか1つでも×となったCuボールを、総合評価において×とした。
【0092】
また、上述した評価方法及び評価基準で真球度が○または○○または○○○であったCu核ボールを、Cuボールにおける評価と合わせて総合評価における○とした。一方、真球度が×となったCu核ボールを、総合評価において×とした。また、Cu核ボールの評価で真球度が〇または○○または○○○であっても、Cuボールの評価で真球度、ビッカース硬さ、α線量及び耐変色性のうち、いずれか1つでも×となったCu核ボールについては、総合評価を×とした。
【0093】
なお、Cu核ボールのビッカース硬さは、はんだ層、金属層の一例であるNiめっき層に依存するため、Cu核ボールのビッカース硬さは評価していない。但し、Cu核ボールにおいて、Cuボールのビッカース硬さが、本発明で規定される範囲内であれば、Cu核ボールであっても、耐落下衝撃性も良好でクラックを抑制でき、電極潰れ等も抑制でき、更に、電気伝導性の劣化も抑制できる。
【0094】
一方、Cu核ボールにおいて、Cuボールのビッカース硬さが、本発明で規定される範囲を超えて大きい場合、外部からの応力に対する耐久性が低くなり、耐落下衝撃性が悪くなると共にクラックが発生し易くなるという課題が解決できない。
【0095】
このため、ビッカース硬さが55.5HVを超えた比較例8〜11のCuボールを使用したCu核ボールは、ビッカース硬さの評価に適さないので、総合評価を×とした。
【0096】
また、Cu核ボールの耐変色性は、はんだ層、金属層の一例であるNiめっき層に依存するため、Cu核ボールの耐変色性は評価していない。但し、Cuボールの明度が、本発明で規定される範囲内であれば、Cuボール表面の硫化物や硫黄酸化物が抑制されており、はんだ層、Niめっき層等の金属層での被覆に適している。
【0097】
一方、Cuボールの明度が、本発明で規定される範囲を下回り低い場合、Cuボール表面の硫化物や硫黄酸化物が抑制されておらず、はんだ層、Niめっき層等の金属層での被覆に適さない。
【0098】
このため、420秒後の明度が55未満であった比較例1〜6のCuボールを使用したCu核ボールは、耐変色性の評価に適さないので、総合評価を×とした。
【0099】
また、Cu核ボールのα線量は、Cuボールを被覆するはんだ層を構成するめっき液原材料の組成、組成中の各元素に依存する。Cuボールを被覆する金属層の一例であるNiめっき層が設けられている場合、Ni層を構成するめっき液原材料にも依存する。
【0100】
Cuボールが本発明で規定された低α線量である場合、はんだ層、Niめっき層を構成するめっき液原材料が本発明で規定された低α線量であれば、Cu核ボールも本発明で規定された低α線量となる。これに対し、はんだ層、Niめっき層を構成するめっき液原材料が本発明で規定されたα線量を超えた高α線量であれば、Cuボールが上述した低α線量であっても、Cu核ボールも本発明で規定されたα線量を超えた高α線量となる。
【0101】
なお、はんだ層、Niめっき層を構成するめっき液原材料のα線量が本発明で規定される低α線量よりは若干高いα線量を示す場合、上述しためっきの行程で不純物が除去されることで、α線量が本発明で規定される低α線量の範囲にまで低減される。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】
【0105】
【表4】
【0106】
【表5】
【0107】
【表6】
【0108】
表1に示すように、4N5以上5N5以下の純度とした各実施例のCuボールは、いずれも総合評価において良好な結果を得られた。このことから、Cuボールの純度は、4N5以上5N5以下が好ましいといえる。
【0109】
以下、評価の詳細について説明すると、実施例1〜12、18のように、純度が4N5以上5N5以下で、Fe、Ag又はNiを5.0質量ppm以上50.0質量ppm以下含有するCuボールは、真球度、ビッカース硬さ、α線量及び耐変色性の総合評価において良好な結果を得られた。実施例13〜17、19に示すように、純度4N5以上5N5以下で、Fe、Ag及びNiを合計5.0質量ppm以上50.0質量ppm以下含有するCuボールも、真球度、ビッカース硬さ、α線量及び耐変色性の総合評価において良好な結果を得られた。なお、表には示さないが、実施例1、18、19からそれぞれ、Feの含有量を0質量ppm以上5.0質量ppm未満に、Agの含有量を0pp以上5.0質量ppm未満に、Niの含有量を0質量ppm以上5.0質量ppm未満に変えて、Fe、Ag及びNiの合計を5.0質量ppm以上としたCuボールも、真球度、ビッカース硬さ、α線量及び耐変色性の総合評価において良好な結果を得られた。
【0110】
また、実施例18に示すように、Fe、Ag又はNiを5.0質量ppm以上50.0質量ppm以下含有し、且つその他の不純物元素のSb、Bi、Zn、Al、As、Cd、Pb、In、Sn、Auがそれぞれ50.0質量ppm以下である実施例18のCuボールも、真球度、ビッカース硬さ、α線量及び耐変色性の総合評価において良好な結果を得られた。
【0111】
Cu核ボールについては、表3、表4に示すように、Cuを0.7質量%含有し、残部がSnである組成例1のはんだ合金によるはんだ層で、実施例1〜実施例19のCuボールを被覆した実施例1A〜19AのCu核ボール、実施例1〜実施例19のCuボールをNiめっき層で被覆し、更に組成例1のはんだ合金によるはんだ層で被覆した実施例1B〜19BのCu核ボールでも、真球度の総合評価において良好な結果を得られた。
【0112】
Cuを3.0質量%含有し、残部がSnである組成例2のはんだ合金によるはんだ層で、実施例1〜実施例19のCuボールを被覆した実施例1A〜19AのCu核ボール、実施例1〜実施例19のCuボールをNiめっき層で被覆し、更に組成例2のはんだ合金によるはんだ層で被覆した実施例1B〜19BのCu核ボールでも、真球度の総合評価において良好な結果を得られた。
【0113】
なお、表には示さないが、実施例1、18、19からそれぞれ、Feの含有量を0質量ppm以上5.0質量ppm未満に、Agの含有量を0pp以上5.0質量ppm未満に、Niの含有量を0質量ppm以上5.0質量ppm未満に変えて、Fe、Ag及びNiの合計を5.0質量ppm以上としたCuボールを、組成例1〜組成例2の何れかのはんだ合金によるはんだ層で被覆したCu核ボール、同CuボールをNiめっき層で被覆し、更に組成例1〜組成例2の何れかのはんだ合金によるはんだ層で被覆したCu核ボールでも、真球度の総合評価において良好な結果を得られた。
【0114】
一方、比較例7のCuボールはFe、Ag及びNiの含有量の合計が5.0質量ppmに満たない上に、U,Thが5質量ppb未満であり、その他の不純物元素も1質量ppm未満であって、比較例7のCuボール、比較例7のCuボールを、各組成例のはんだ合金によるはんだ層で被覆した比較例7AのCu核ボール、及び、比較例7のCuボールをNiめっき層で被覆し、更に各組成例のはんだ合金によるはんだ層で被覆した比較例7BのCu核ボールは、真球度が0.95に満たなかった。また、不純物元素を含有していても、Fe、Ag及びNiのうち少なくとも1種の含有量の合計が5.0質量ppmに満たない比較例12のCuボール、比較例12のCuボールを、各組成例のはんだ合金によるはんだ層で被覆した比較例12AのCu核ボール、及び、比較例12のCuボールをNiめっき層で被覆し、更に各組成例のはんだ合金によるはんだ層で被覆した比較例12BのCu核ボールも、真球度が0.95に満たなかった。これらの結果から、Fe、Ag及びNiのうち少なくとも1種の含有量の合計が5.0質量ppmに満たないCuボール、このCuボールを、各組成例のはんだ合金によるはんだ層で被覆したCu核ボール、及び、このCuボールをNiめっき層で被覆し、更に各組成例のはんだ合金によるはんだ層で被覆したCu核ボールは、高真球度を実現できないといえる。
【0115】
また、比較例10のCuボールはFe、Ag及びNiの含有量の合計が153.6質量ppmでその他の不純物元素の含有量がそれぞれ50質量ppm以下であるが、ビッカース硬さが55.5HVを超えて、良好な結果を得られなかった。更に、比較例8のCuボールは、Fe、Ag及びNiの含有量の合計が150.0質量ppmである上に、その他の不純物元素の含有量も、特にSnが151.0質量ppmと、50.0質量ppmを大幅に超えており、ビッカース硬さが55.5HVを超えて、良好な結果を得られなかった。そのため、純度が4N5以上5N5以下のCuボールであっても、Fe、Ag及びNiのうち少なくとも1種の含有量の合計が50.0質量ppmを超えるCuボールは、ビッカース硬さが大きくなってしまい、低硬度を実現できないといえる。このように、Cuボールのビッカース硬さが、本発明で規定される範囲を超えて大きい場合、外部からの応力に対する耐久性が低くなり、耐落下衝撃性が悪くなると共にクラックが発生し易くなるという課題が解決できない。更に、その他の不純物元素も、それぞれ50.0質量ppmを超えない範囲で含有することが好ましいといえる。
【0116】
これらの結果から、純度が4N5以上5N5以下で、Fe、Ag及びNiのうち少なくとも1種の含有量の合計を5.0質量ppm以上50.0質量ppm以下含有するCuボールは、高真球度及び低硬度を実現し、かつ、変色が抑制されるといえる。このようなCuボールを各組成例のはんだ合金によるはんだ層で被覆したCu核ボール、このようなCuボールをNiめっき層で被覆し、更に各組成例のはんだ合金によるはんだ層で被覆したCu核ボールは、高真球度を実現し、また、Cuボールが低硬度を実現することで、Cu核ボールとしても耐落下衝撃性も良好でクラックを抑制でき、電極潰れ等も抑制でき、更に、電気伝導性の劣化も抑制できる。更に、Cuボールの変色が抑制されることで、はんだ層、Niめっき層等の金属層での被覆に適している。その他の不純物元素の含有量は、それぞれ50.0質量ppm以下であることが好ましい。
【0117】
表には示さないが、これらの実施例と同じ組成で、球径が1μm以上1000μm以下のCuボールでは、いずれも真球度、ビッカース硬さ、α線量及び耐変色性の総合評価において良好な結果を得られた。このことから、Cuボールの球径は、1μm以上1000μm以下であることが好ましいといえ、50μm以上300μm以下がより好ましいといえる。
【0118】
実施例19のCuボールは、Fe、Ag及びNiの含有量の合計が5.0質量ppm以上50.0質量ppm以下であり、Pを2.9質量ppm含有しており、真球度、ビッカース硬さ、α線量及び耐変色性の総合評価において良好な結果を得られた。実施例19のCuボールを各組成例のはんだ合金によるはんだ層で被覆したCu核ボール、実施例19のCuボールをNiめっき層で被覆し、更に各組成例のはんだ合金によるはんだ層で被覆したCu核ボールでも、真球度の総合評価において良好な結果を得た。比較例11のCuボールは、Fe、Ag及びNiの含有量の合計が、実施例19のCuボールと同様に50.0質量ppm以下であるが、ビッカース硬さが5.5HVを超えて実施例19のCuボールとは異なる結果になった。また、比較例9も、ビッカース硬さが5.5HVを超えた。これは、比較例9、11のPの含有量が著しく多いためであると考えられ、この結果から、Pの含有量が増えると、ビッカース硬さが大きくなることが分かる。よって、Pの含有量は3質量ppm未満であることが好ましく、1質量ppm未満であることがより好ましいといえる。
【0119】
各実施例のCuボールでは、α線量が0.0200cph/cm
2以下であった。そのため、各実施例1〜19のCuボールを被覆する組成例1及び組成例2のはんだ合金において、各元素が本発明で規定された低α線量であることで、各実施例1A〜19AのCu核ボールも本発明で規定された低α線量となる。また、Cuボールを被覆する金属層の一例であるNiめっき層が設けられている場合、はんだ合金に加え、Niめっき層を構成する各元素が本発明で規定された低α線量であることで、各実施例1B〜19BのCu核ボールも本発明で規定された低α線量となる。
【0120】
更に、はんだ層、Niめっき層を形成するめっきの行程で、合金に含まれるα線を放射する不純物が除去されることで、めっき前の合金のα線量が、本発明で規定される低α線量よりは若干高いα線量を示す場合でも、めっき後のα線量が本発明で規定される低α線量の範囲にまで低減される。
【0121】
これにより、電子部品の高密度実装に各実施例のCu核ボールが使用される場合、はんだ層、Niめっき層を構成する原材料が本発明で規定された低α線量であることで、ソフトエラーを抑制することができる。
【0122】
比較例7のCuボールでは、耐変色性で良好な結果を得られた一方で、比較例1〜6では耐変色性で良好な結果を得られなかった。比較例1〜6のCuボールと、比較例7のCuボールを比べると、これらの組成の違いは、Sの含有量のみである。そのため、耐変色性で良好な結果を得るためには、Sの含有量を1質量ppm未満とする必要があるといえる。各実施例のCuボールでは、いずれもSの含有量が1質量ppm未満であることからも、Sの含有量は1質量ppm未満が好ましいといえる。
【0123】
続いて、Sの含有量と耐変色性の関係を確認するために、実施例14、比較例1及び比較例5のCuボールを200℃で加熱して、加熱前、加熱60秒後、180秒後、420秒後の写真を撮り、明度を測定した。表7及び
図5は、各Cuボールを加熱した時間と明度の関係をグラフにしたものである。
【0124】
【表7】
【0125】
この表から、加熱前の明度と、加熱して420秒後の明度とを比べると、実施例14、比較例1、5の明度は、加熱前に64や65付近で近い値だった。加熱して420秒後では、Sを30.0質量ppm含有する比較例5の明度が最も低くなり、続いてSを10.0質量ppm含有する比較例1、Sの含有量が1質量ppm未満の実施例14の順となった。このことから、Sの含有量が多いほど、加熱後の明度が低くなるといえる。比較例1、5のCuボールでは、明度が55を下回ったため、Sを10.0質量ppm以上含有するCuボールは、加熱時に硫化物や硫黄酸化物を形成して変色しやすいといえる。また、Sの含有量が0質量ppm以上1.0質量ppm以下であれば、硫化物や硫黄酸化物の形成が抑制され、濡れ性が良好であるといえる。なお、実施例14のCuボールを電極上に実装したところ、良好な濡れ性を示した。
【0126】
以上の通り、純度が4N5以上5N5以下であり、Fe、Ag及びNiのうち少なくとも1種の含有量の合計が5.0質量ppm以上50.0質量ppm以下であり、Sの含有量が0質量ppm以上1.0質量ppm以下であり、Pの含有量が0質量ppm以上3.0質量ppm未満である本実施例のCuボールでは、いずれも真球度が0.95以上であったため、高真球度を実現できた。高真球度を実現したことにより、Cuボールを電極等に実装した際のセルフアライメント性を確保できると共に、Cuボールの高さのばらつきを抑制できる。本実施例のCuボールをはんだ層で被覆したCu核ボール、本実施例のCuボールを金属層で被覆し、金属層を更にはんだ層で被覆したCu核ボールでも、同様の効果が得られる。
【0127】
また、本実施例のCuボールでは、いずれもビッカース硬さが55HV以下であったため、低硬度を実現できた。低硬度を実現したことにより、Cuボールの耐落下衝撃性を向上させることができる。Cuボールが低硬度を実現することで、本実施例のCuボールをはんだ層で被覆したCu核ボール、本実施例のCuボールを金属層で被覆し、金属層を更にはんだ層で被覆したCu核ボールでも、耐落下衝撃性も良好でクラックを抑制でき、電極潰れ等も抑制でき、更に、電気伝導性の劣化も抑制できる。
【0128】
また、本実施例のCuボールでは、いずれも変色が抑制された。Cuボールの変色が抑制されたことにより、硫化物や硫黄酸化物によるCuボールへの悪影響を抑制できるとともに、Cuボールを電極上に実装した際の濡れ性が向上する。Cuボールの変色が抑制されることで、はんだ層、Niめっき層等の金属層での被覆に適している。
【0129】
なお、本実施例のCu材には、純度が4N5超6N以下のCuナゲット材を使用して、純度が4N5以上5N5以下のCuボールを作製したが、4N5超6N以下のワイヤー材や板材等を使用しても、Cuボール、Cu核ボールの双方において総合評価において良好な結果を得られた。
【0130】
Cuボール1の表面に、Cuの含有量を0質量%超3.0質量%以下とし、残部をSnとしたAgを含まない組成のはんだ合金ではんだ層3が形成されたCu核ボール11A、11Bでは、接合対象物がCu層の表面にプリフラックス処理が施されたCu−OSP基板であっても、Cu層の表面に電解Ni/Auめっきが施された電解Ni/Auめっき基板であっても、落下等の衝撃に対する強度、及び、ヒートサイクルと称される温度変化による伸縮に対する強度とも、必要とされる所定の強度を得ることができた。
【0131】
Agを含まないはんだ合金で作成されたはんだボールでは、Agを含むはんだ合金で作成されたはんだボール比較して、ヒートサイクルに対する強度が低下する。各実施例のCu核ボール11A、11Bでは、はんだ層3がAgを含まないはんだ合金で形成されているが、Agを含むはんだ合金で作成されたCu核ボールと比較して、必要とされる落下強度が得られることに加えて、ヒートサイクルに対する強度が向上する。
【0132】
次に、Sn系のはんだ合金によるはんだ層でCuボールの表面を被覆したCu核ボールにおいて、はんだ層中におけるSn以外の元素の分布について説明する。Cuボールを被覆するはんだ層としては、特開2007−44718号公報(特許文献4と称す)、特許第5367924号公報(特許文献5と称す)に示すように、Snを主成分とするはんだ合金が用いられる。
【0133】
特許文献4では、Cuボールの表面をSnとBiからなるSn系はんだ合金で被覆してはんだ層を形成したものである。Biを含有したSn系はんだ合金は、その溶融温度が130〜140℃と比較的低温であり、低温はんだと称される。
【0134】
特許文献4では、はんだ層中に含まれるBiの含有量は、内側(内周側)が薄く、外側(外周側)に向かって濃くなるような濃度勾配でめっき処理されている。
【0135】
特許文献5でも、CuボールにSnとBiからなるSn系はんだ合金をめっき被膜したはんだバンプが開示されている。特許文献5におけるはんだ層中に含まれるBiの含有量は、内側(内周側)が濃く、外側(外周側)に向かって薄くなるような濃度勾配でめっき処理されている。
【0136】
特許文献5の技術は、特許文献4とは全く逆の濃度勾配となっている。これは、特許文献5による濃度制御の方が、特許文献4による場合よりも簡単であり、造り易いためと考えられる。
【0137】
上述したように、Snに他の元素を添加した二元以上のSn系はんだ合金をCuボールの表面にめっき被膜したCu核ボールを半導体チップの電極上に載置してリフロー処理した場合、添加した元素がはんだ層中で濃度勾配を持つ特許文献4及び5では、以下のような問題を惹起する。
【0138】
特許文献4に開示された技術は、Bi濃度が内周側で薄く、外周側で濃くなるような濃度勾配を有したはんだ層であるが、このような濃度勾配(内側が薄く、外側が濃い)である場合には、Bi溶融のタイミングが内周側と外周側とで僅かにずれるおそれがある。
【0139】
溶融タイミングにずれが起こると、Cu核ボールの外表面が溶融し始めていても、内周面側の領域ではまだ溶融が起きていないような、部分溶解が混在することになり、その結果核材料は溶融している側に僅かに位置ずれを起こす。挟ピッチの高密度実装では、この位置ずれによるはんだ処理は致命的な欠陥となるおそれがある。
【0140】
特許文献5は、Biの濃度勾配が特許文献1とは逆である。この場合でも、半導体パッケージを接続するためにはリフローによる加熱処理を行う。特許文献5のように、はんだ層中のBi濃度が内周側が濃く、外周側が薄い状態で加熱溶融すると、内周側のBi密度が高いため、内周側のBi領域からはんだが溶融し始める。内周側のBi領域が溶融しても外周側のBi領域はまだ溶融し始めていないので、内周側のBi領域側での体積膨張が早く起こる。
【0141】
この体積膨張の内外周側での遅速により、Biの内周側と外周側(外気)とで圧力差が生じ、Biの外周側が溶融し始めると、内周側の体積膨張による圧力差で核となっているCuボールがはじけ飛ぶような事態が発生する。このような事態の発生は避けなければならない。
【0142】
このようにSnとBiからなるSn系はんだ合金からなるはんだ層を有するCu核ボールは、はんだ層中のBiに濃度勾配がある場合、不良が発生していた。
【0143】
一般に、SnにCuを添加した二元以上のはんだ合金で核を被覆した核材料でも、Cuがはんだ層中で所定の濃度勾配を持つと、上述したBiと同様の問題が生じると考えられる。
【0144】
そこで、続いてはんだ層3中のCuの分布が均一であることの作用効果について説明する。はんだ層3におけるCuの濃度分布が目標値に相応した値となっていることを確認するため以下のような実験を行った。
(1)下記条件にてはんだ層3の組成が(Sn−0.7Cu)となるCu核ボール11Bを作成した。以下の実施例では、表1に示す実施例17の組成のCuボールを使用した。
・Cuボール1の直径:250μm
・金属層(Niめっき層)2の膜厚:2μm
・はんだ層3の膜厚:23μm
・Cu核ボール11Bの直径:300μm
【0145】
実験結果の測定を容易にするため、Cu核ボール11Bとしてはその厚みが比較的薄いはんだ層を有するCu核ボールを作製した。
【0146】
めっき方法は電気めっき工法にて作製した。
(2)試料としては、同一組成の(Sn−0.7Cu)系はんだ合金のはんだ層が形成されたCu核ボール11Bを10個用意した。これらを試料Aとして使用した。
(3)10個の試料Aを樹脂で封止する。
(4)封止した各試料Aを、樹脂ごと研磨して各試料Aの断面を観察する。観察機材は日本電子製のFE−EPMAJXA−8530Fを使用した。
【0147】
図6は、Cu核ボールのCuの濃度分布を測定する方法の一例を示す説明図である。はんだ層3のうちCuボール1の表面側から便宜上内層16a、中間層16b及び外層16cに分ける。内層16aはCuボール1の表面から9μmまで、中間層16bは9〜17μmまで、そして外層16cは17〜23μmとし、内層16a、中間層16b及び外層16cより、
図6のようにこの例では厚み5μmで幅が40μmの内層領域17a、中間層領域17b、外層領域17cをそれぞれ切り取り、各領域を計測領域として、定性分析によりCuの濃度の計測を行った。この作業を計10視野ずつ各内層16a、中間層16b及び外層16cについて行った。
【0148】
はんだ層の内層、中間層、外層のCuの濃度を計測して求めた各層の濃度比率を以下の表8に示す。
【0149】
表8は、試料Aにおいて、それぞれ10個のCu核ボールで計測したはんだ層の各層のCuの濃度の平均値と、目標とするCuの含有量(目標値)が0.7質量%の場合におけるCuの濃度比率を示す。
【0150】
試料Aは、上述したように、10個のCu核ボールについて、内層、中間層、外層のCuの濃度を計測している。試料Aについて、10個のCu核ボールそれぞれの内層、中間層、外層におけるCuの濃度の計測値は表8に示していない。
【0151】
試料Aは、目標とするCuの含有量(目標値)が0.7質量%である。この場合、試料Aにおける10個のCu核ボールのぞれぞれのCuの濃度比率(%)は、Cuの濃度の計測値から以下の(1)式で求められる。
濃度比率(%)=(計測値/0.7)×100・・・(1)
【0152】
また、Cuの濃度の平均値は、試料としたCu核ボールの数が10個の場合、以下の(2)式で求められる。
Cuの濃度の平均値=10個の計測値の合計値/10・・・(2)
【0153】
更に、目標とするCuの含有量(目標値)が0.7質量%である場合、試料Aの濃度比率(%)は、Cuの濃度の計測値の平均値から以下の(3)式で求められる。
濃度比率(%)=(計測値の平均値/0.7)×100・・・(3)
【0154】
【表8】
【0155】
表8に示すように、試料Aの実施例については、内層領域17aにおけるCuの濃度の平均値が0.58質量%、濃度比率82.9%であり、中間層領域17bにおけるCuの濃度の平均値が0.68質量%、濃度比率97.1%であり、外層領域17cにおけるCuの濃度の平均値が0.51質量%、濃度比率72.9%であった。
【0156】
このように、内層領域17a、中間層領域17b、外層領域17cのそれぞれにおいて、はんだ層中のCuの濃度は上記の0.51質量%〜0.68質量%の許容範囲内にあり、濃度比率が72.9%〜97.1%であるために、ほぼ目標値のCuの濃度比率である70%〜130%に収まっていることが判る。
【0157】
そして、これらの試料Aと同じロットで製造したCu核ボールそれぞれ例えば10個を抽出し、それぞれを基板に通常のリフロー処理により接合した。接合結果も併せて表8に示す。
【0158】
接合結果については、全てのサンプルにて一切の接合不良が測定されなかったものを「良」と判定した。
【0159】
いずれも内周側が外周側より早めに溶融して、内周側と外周側とで体積膨張差が生じてCu核ボール11Bがはじき飛ばされるような事態は、発生せず、またはんだ層3全体がほぼ均一に溶融するから、溶融タイミングのずれによって発生すると思われる核材料の位置ずれは生じていないので、位置ずれなどに伴う電極間の短絡などのおそれはない。よって接合不良は一切発生しない良好な結果が得られた為、「良」と判定した。
【0160】
上述したように、(Sn−0.7Cu)系はんだ合金である場合、表8の結果から、0.51質量%(濃度比率72.9%)〜0.68質量%(濃度比率97.1%)の範囲まで許容できることがわかった。
【0161】
次に、(Sn−3Cu)からなるSn系はんだ合金のはんだ層3を形成した場合について同様な計測を行った。このときのCuの分布は目標値としては3質量%であるが、許容範囲としては2.45質量%(濃度比率81.7%)〜3.26質量%(濃度比率108.7%)である。Cu核ボールの作製方法は、上述した(Sn−0.7Cu)のはんだ合金を使用したCu核ボールによる試料Aの実施例の場合と同じである。
【0162】
使用したCuボール及びCu核ボールの直径、金属層(Niめっき層)とはんだ層の膜厚等の仕様、及び実験条件についてははんだ層の組成以外、試料Aと同条件である。
【0163】
その結果を表8の試料Bとして示す。この場合には目標値となるCuは3質量%であるので、試料Bに示すように、2.45〜3.26質量%(何れも同一試料に付き10回計測した平均値)と、多少のバラツキ(平均値の最小2.45質量%(濃度比率81.7%)〜最大3.26質量%(濃度比率108.7%))程度はあるものの、許容範囲である。従って2.45質量%(濃度比率81.7%)〜3.26質量%(濃度比率108.7%)に収まっていることが分かる。接合判定は、試料Aの実施例と同じく接合不良は一切発生しない良好な結果が得られた為、「良」と判定した。
【0164】
試料Bは、目標とするCuの含有量(目標値)が3(質量%)である。そこで、表8中の試料Bの濃度比率(%)は、以下の(4)式で求められる。
濃度比率(%)=(計測値の平均値/3)×100・・・(4)
【0165】
上述した試料Aの実施例、試料Bの実施例の結果を表9にまとめた。Cuの濃度比率は72.9%〜108.7質量%である。ここで、試料Aの実施例、試料Bの実施例で作成したCu核ボールについて真球度を測定したところ、いずれも0.99以上であり、0.95以上を満たした。
【0166】
【表9】
【0167】
表9中の濃度比率(%)は、以下の(5)式で求められる。
濃度比率(%)=(計測値/目標値)×100・・・(5)
【0168】
なお、はんだ層3内のCu濃度を変えた場合には、位置ずれやCu核ボール11Bの吹き飛びなどの現象が発生した。
【0169】
以上説明したように、各実施例A、Bでは、はんだ層中のCuは均質であるので、はんだ層の膜厚に対しCuの内周側、外周側を含めてその全領域に亘りCu濃度比率が所定範囲内にある。このため、はんだ層中のCuが均質である本発明のCu核ボールでは、内周側が外周側より早めに溶融して、内周側と外周側とで体積膨張差が生じてCu核ボールがはじき飛ばされるような事態は発生しない。
【0170】
また、はんだ層中のCuが均質であるので、Cu核ボールの全面に亘りほぼ均一に溶融するから、はんだ層内での溶融タイミングに時間差が殆ど生じない。その結果溶融タイミングのずれによって発生するCu核ボールの位置ずれは生じないので、位置ずれなどに伴う電極間の短絡などのおそれはない。従って、このCu核ボールを使用することによって高品質なはんだ継手を提供できる。