(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アノードガス及びカソードガスの供給を受けて発電する燃料電池と、前記燃料電池に前記カソードガスを供給するコンプレッサと、前記燃料電池から排出されるカソード排ガスの供給を受けて動力を生成するタービンと、前記コンプレッサ及び前記タービンに連結され力行と回生を行う電動モータと、前記燃料電池と前記タービンの間に設置され前記カソードガスとアノードガスとを混合して燃焼させる燃焼器と、前記コンプレッサから前記燃料電池に供給される前記カソードガスを冷却する冷却器と、前記冷却器の上流から前記冷却器と前記燃料電池をバイパスして前記燃焼器に前記カソードガスを供給するバイパス通路と、前記バイパス通路に設けられたバイパス弁と、を備える燃料電池システムで実行される燃料電池システムの制御方法であって、
システム要求出力に基づいて前記バイパス弁を制御し、
システム要求出力が所定出力以上の場合に、システム要求出力の増大に対して前記バイパス弁の開度を増大させる、燃料電池システムの制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態における燃料電池システム100は、燃料電池スタック10と、カソード給排機構12と、アノード供給機構14と、熱供給機構15と、コンプレッサ50及びタービン52を有する動力回収機構としてのコンプレッサ動力供給機構16と、スタック冷却機構17と、コントローラ20と、を有している。
【0008】
燃料電池スタック10は、複数の燃料電池を積層した積層電池である。燃料電池スタック10は、アノード供給機構14からのアノードガス(水素)の供給及びカソード給排機構12からのカソードガス(空気)の供給を受けて、車両の走行に必要な電力を発電する。この発電電力は、燃料電池システム100を作動するときに使用されるコンプレッサ50等の各種の補機類や、図示しない車輪駆動用のモータで使用される。燃料電池スタック10の正極端子及び負極端子には、燃料電池スタック10に形成された電解質膜の湿潤状態に相関するインピーダンスを計測するインピーダンス計測装置11が接続されている。
【0009】
インピーダンス計測装置11は、燃料電池スタック10の正極端子に交流電流を供給し、燃料電池スタック10の正極端子と負極端子に生じる電圧の交流成分を検出する。そしてインピーダンス計測装置11は、供給した交流電流と検出した電圧の交流成分とに基づいて、燃料電池スタック10の交流抵抗、すなわちHFR(High frequency Resistance)を演算する。インピーダンス計測装置11は、演算したHFRをHFR計測値としてコントローラ20に入力する。なお、インピーダンス計測装置11は、燃料電池スタック10の出力電圧や出力電流などを計測してもよい。
【0010】
カソード給排機構12は、カソードガス供給通路22と、カソード排ガス通路24と、を備えている。
【0011】
カソードガス供給通路22は、燃料電池スタック10に供給される空気が流れる通路である。カソードガス供給通路22の一端はガスフィルタ23に接続され、他端は燃料電池スタック10に接続される。
【0012】
そして、カソードガス供給通路22には、上流から順に、エアフローセンサ26と、コンプレッサ吐出温度センサ27と、アフタークーラ28と、スタック供給空気温度センサ29と、空気圧力センサ30と、が設けられている。
【0013】
エアフローセンサ26は、カソードガス供給通路22において、コンプレッサ動力供給機構16のコンプレッサ50の吸気入口に設けられている。エアフローセンサ26は、コンプレッサ50に吸入される空気の流量(以下では「コンプレッサ流量」とも記載する)を検出する。以下では、このエアフローセンサ26の検出値を「コンプレッサ流量検出値」とも記載する。エアフローセンサ26で検出されたコンプレッサ流量検出値は、コントローラ20に入力される。
【0014】
コンプレッサ吐出温度センサ27は、コンプレッサ50から吐出され、アフタークーラ28より上流の空気温度(以下では「コンプレッサ吐出温度」とも記載する)を検出する。
【0015】
また、カソードガス供給通路22において、エアフローセンサ26とコンプレッサ吐出温度センサ27の間には、バイパス弁32を有するバイパス通路33が接続されている。このバイパス通路33は、カソードガス供給通路22とカソード排ガス通路24を連結する通路である。すなわち、バイパス通路33は、アフタークーラ28の上流から該アフタークーラ28と燃料電池スタック10をバイパスして後述する触媒燃焼器36にカソードガスを供給する通路である。
【0016】
アフタークーラ28は、コンプレッサ50から吐出されて燃料電池スタック10に送られる空気を冷却する。アフタークーラ28は、水冷式の熱交換器として構成されており、スタック冷却機構17と接続されている。すなわち、アフタークーラ28により、燃料電池スタック10の冷却に用いる冷却水と燃料電池スタック10に供給すべき空気との間で熱交換が行われる。
【0017】
スタック供給空気温度センサ29は、アフタークーラ28で冷却されて燃料電池スタック10に供給されるカソードガスの温度(以下では「スタック供給空気温度」とも記載する)を検出する。
【0018】
空気圧力センサ30は、カソードガス供給通路22内の圧力、すなわち燃料電池スタック10に供給される空気の圧力(以下では「空気圧力」とも記載する)を検出する。空気圧力センサ30で検出された空気圧力検出値は、コントローラ20に入力される。
【0019】
バイパス弁32は、燃料電池スタック10をバイパスしてカソード排ガス通路24に供給する空気流量を調節する調圧弁であり、コントローラ20によって開閉制御される。すなわち、バイパス弁32は、コンプレッサ50から供給された空気の内、バイパス通路33を介して燃料電池スタック10をバイパスしてカソード排ガス通路24に供給する空気流量を調節する弁である。
【0020】
また、本実施形態では、バイパス通路33は、既に述べたようにカソード排ガス通路24における触媒燃焼器36の上流に連通されている。したがって、このバイパス通路33により、カソードガス供給通路22内の空気をカソード排ガス通路24に供給し、触媒燃焼器36に供給するカソード排ガスの酸素濃度を向上させることができる。
【0021】
さらに、カソード排ガス通路24は、一端が燃料電池スタック10のカソード出口に接続されるとともに、他端がタービン52に連結されている。またカソード排ガス通路24には、熱供給機構15が設けられている。
【0022】
熱供給機構15は、上述の触媒燃焼器36と、タービン入口温度センサ38と、を有している。この触媒燃焼器36とタービン入口温度センサ38は、燃料電池スタック10からタービン52に向かってこの順で、カソード排ガス通路24に設けられている。
【0023】
触媒燃焼器36は、アノードガスとカソードガスを図示しないミキサで混合してなる混合ガスを、白金等による触媒作用で触媒燃焼させる。この触媒燃焼器36には、アノード供給機構14から燃焼用アノードガス供給通路64を介してアノードガスが供給される一方で、カソード排ガス通路24を介して燃料電池スタック10からカソード排ガス及びバイパス通路33から空気が供給される。したがって、触媒燃焼器36に供給されるカソードガスには、バイパス通路33を介して供給される空気と、燃料電池スタック10から排出されたカソード排ガスが含まれることとなる。
【0024】
なお、本実施形態では、燃焼器として触媒燃焼器36を用いることで、拡散燃焼方式の燃焼器や希薄予混合燃焼方式の燃焼器を用いる場合と比較して、窒素化合物(Nox)の発生が抑制される。しかしながら、拡散燃焼方式の燃焼器や希薄予混合燃焼方式の燃焼器等の触媒燃焼器以外の燃焼器を用いても良い。
【0025】
タービン入口温度センサ38は、触媒燃焼器36による燃焼の後に残った燃焼後ガスの温度、すなわちコンプレッサ動力供給機構16のタービン52に供給される燃焼後ガスの温度(以下では、「タービン入口温度」とも記載する)を検出する。なお、タービン入口温度センサ38で検出されたタービン入口温度の検出値は、コントローラ20に入力される。
【0026】
次に、アノード供給機構14について説明する。本実施形態におけるアノード供給機構14は、高圧タンク60と、スタック用アノードガス供給通路62と、燃焼用アノードガス供給通路64と、を備えている。
【0027】
高圧タンク60は、燃料電池スタック10に供給するアノードガスである水素を高圧状態に保って貯蔵するガス貯蔵容器である。
【0028】
スタック用アノードガス供給通路62は、高圧タンク60から排出される水素を燃料電池スタック10に供給する通路である。スタック用アノードガス供給通路62の一端は高圧タンク60に接続され、他端は燃料電池スタック10に接続される。
【0029】
また、スタック用アノードガス供給通路62には、アノードガス供給弁66と、水素圧力検出センサ67と、が設けられている。アノードガス供給弁66は、燃料電池スタック10への水素の供給量を任意に調節する調圧弁である。
【0030】
水素圧力検出センサ67は、燃料電池スタック10に供給される水素の圧力(以下では、「水素圧力」とも記載する)を検出する。なお、水素圧力検出センサ67で検出された水素圧力検出値は、コントローラ20に入力される。
【0031】
一方、燃焼用アノードガス供給通路64は、高圧タンク60から排出される水素の一部を、触媒燃焼器36に供給する通路である。そして、燃焼用アノードガス供給通路64は、その一端がスタック用アノードガス供給通路62に連通して分岐しており、他端が触媒燃焼器36に連結されている。
【0032】
また、燃焼用アノードガス供給通路64には、触媒燃焼器36への水素供給量を任意に調節する燃焼器水素供給弁68が設けられている。燃焼器水素供給弁68は、その開度が連続的又は段階的に調節されることで触媒燃焼器36への水素供給量を適宜調節する調圧弁である。
【0033】
なお、本実施形態にかかる燃料電池システム100において、燃料電池スタック10からのアノード排ガスは、たとえば循環型又は非循環型の図示しないアノード排気機構により処理することができる。
【0034】
次に、コンプレッサ動力供給機構16について説明する。コンプレッサ動力供給機構16は、コンプレッサ50と、タービン52と、電動モータとしてのコンプレッサ駆動モータ54と、を備えている。
【0035】
コンプレッサ50は、コンプレッサ駆動モータ54及びタービン52と回転駆動軸57を介して接続されている。コンプレッサ50は、回転駆動されて外気を吸入し、カソードガス供給通路22を介して燃料電池スタック10にカソードガスを供給するように構成されている。なお、コンプレッサ50は、コンプレッサ駆動モータ54及びタービン52の一方又は双方の動力の何れかにより駆動することができる。
【0036】
タービン52は、触媒燃焼器36から供給される燃焼後ガスによって回転駆動される。そして、タービン52は、この回転駆動力を、回転駆動軸57及びコンプレッサ駆動モータ54を介してコンプレッサ50に動力を出力する。すなわち、タービン52からの回収動力でコンプレッサ50を駆動することができる。また、タービン52の駆動に使用された後の燃焼後ガスは、タービン排気通路53を介して排出される。
【0037】
コンプレッサ50の動力要求が比較的大きく、タービン52による回収動力を増加させる必要がある場合などには、タービン52へ流入する燃焼後ガスの供給流量(以下では、「タービンガス流入流量」とも記載する)、温度(以下では、「タービン入口温度」)、及び圧力を増加させてコンプレッサ50へ好適に動力を供給することができる。
【0038】
なお、タービン52による回収動力を、コンプレッサ50の回転駆動力だけではなく、燃料電池システム100内の他の任意の動力要求機構において使用しても良い。
【0039】
さらに、本実施形態において、タービン52には、当該タービン52へ供給される燃焼後ガスの圧力を調節するノズルベーン58が設けられている。
【0040】
図2A及び
図2Bは、タービン52に設けられたノズルベーン58の概略構造を示す図である。特に、
図2Aは、ノズルベーン58が開放されている状態を示し、
図2Bは、ノズルベーン58が閉塞されている状態を示している。また、
図2A及び
図2Bにおいては、流入する燃焼後ガスの流れ方向を矢印Aで模式的に示している。
【0041】
図2Aに示すように、ノズルベーン58が開放されている状態では、ノズルベーン58からタービンホイール52aの入口流路の断面積が増加する。したがって、この状態では、カソード排ガス通路24からタービン52に流入する燃焼後ガスの圧力損失が相対的に小さくなる。
【0042】
一方、
図2Bに示すように、ノズルベーン58が閉塞されている状態では、タービンホイール52a入口流路の断面積が相対的に減少し、圧力損失が大きくなる。
【0043】
図1に戻り、コンプレッサ駆動モータ54は、回転駆動軸57の一方側でコンプレッサ50に接続されるとともに、回転駆動軸57の他方側でタービン52に接続される。コンプレッサ駆動モータ54は、図示しないバッテリ、燃料電池スタック10、及びタービン52等から電力の供給を受けて回転駆動する電動機としての機能(力行モード)、及び外力によって回転駆動されることで発電し、バッテリや燃料電池スタック10に電力を供給する発電機としての機能(回生モード)を有する。コンプレッサ駆動モータ54は、図示しないモータケースと、モータケースの内周面に固定されるステータと、ステータの内側に回転可能に配置されるロータと、ロータに設けられた回転駆動軸57と、を備える。
【0044】
また、コンプレッサ駆動モータ54には、トルクセンサ55及び回転速度センサ56が設けられている。トルクセンサ55は、コンプレッサ駆動モータ54のトルクを検出する。そして、トルクセンサ55で検出されたコンプレッサ駆動モータ54のトルク検出値は、コントローラ20に入力される。
【0045】
さらに、回転速度センサ56は、コンプレッサ駆動モータ54の回転速度を検出する。回転速度センサ56で検出されたコンプレッサ回転速度検出値は、コントローラ20に入力される。
【0046】
次に、スタック冷却機構17について説明する。スタック冷却機構17は、冷却水循環流路76と、冷却水循環流路76を流れる冷却水を外気等と熱交換し、当該冷却水を冷却するラジエータ77と、を有している。
【0047】
冷却水循環流路76は、図示しない燃料電池スタック10の冷却水通路を含む環状循環路として構成されている。この冷却水循環流路76には、冷却水循環ポンプ78が設けられており、これにより冷却水の循環が可能となっている。
【0048】
そして、冷却水循環流路76を循環する冷却水は、燃料電池スタック10の冷却水入口10aからスタック内に供給されるとともに、燃料電池スタック10の冷却水出口10bから排出される方向に流れる。
【0049】
さらに、冷却水循環流路76には、ラジエータ77よりも上流の位置において、ラジエータバイパス三方弁80が設けられている。ラジエータバイパス三方弁80は、ラジエータ77に供給される冷却水の量を調節する。例えば、冷却水の温度が比較的高い場合には、ラジエータバイパス三方弁80を開放状態として、冷却水をラジエータ77に循環させる。一方で、冷却水の温度が比較的高い場合には、ラジエータバイパス三方弁80を閉塞状態として、ラジエータ77をバイパスするように冷却水をバイパス路80aに流す。
【0050】
また、冷却水循環流路76には、燃料電池スタック10の冷却水入口10aの近傍に入口水温センサ81が設けられ、燃料電池スタック10の冷却水出口10bの近傍に出口水温センサ82が設けられている。
【0051】
入口水温センサ81は、燃料電池スタック10へ流入される冷却水の温度を検出する。出口水温センサ82は、燃料電池スタック10から排出される冷却水の温度を検出する。入口水温センサ81で検出されたスタック入口水温検出値と出口水温センサ82で検出されたスタック出口水温検出値は、コントローラ20に入力される。
【0052】
さらに、上述のように、冷却水循環流路76には、アフタークーラ28が接続されている。これにより、既に述べたように、冷却水循環流路76内の冷却水とカソードガス供給通路22内における燃料電池スタック10へ供給される空気との間で熱交換を行うことが可能である。したがって、例えば、燃料電池スタック10の暖機時等の熱量が要求される場合において、コンプレッサ50から吐出された高温の空気の熱により冷却水循環流路76内の冷却水を加熱することができ、熱量要求を満たすことができる。一方で、アフタークーラ28は、コンプレッサ50から吐出された高温の空気を冷却するので、空気が燃料電池スタック10の作動に好適な温度となって当該燃料電池スタック10に供給されることとなる。アフタークーラ28で交換された熱は冷却水を介してラジエータ77に運ばれ、システム外部に放熱される。
【0053】
さらに、上述のように構成される燃料電池システム100は、当該システムを統括的に制御するコントローラ20を有している。
【0054】
コントローラ20は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。
【0055】
コントローラ20には、燃料電池システム100の各種センサからの信号の他、大気の圧力を検出する大気圧センサ111などの燃料電池システム100の作動状態を検出する各種センサからの信号が入力される。
【0056】
さらに、コントローラ20には、負荷装置110による負荷に応じて燃料電池システム100に要求される出力電力(以下では、単に「要求出力」とも記載する)に関する出力要求信号が入力される。負荷装置110は、例えば、車輪駆動用のモータや二次電池などによって構成される。本実施形態では、例えば、図示されていないアクセルペダルセンサで検出されるアクセルペダルの踏込み量を示す検出信号が大きくなるほど、負荷装置110の要求電力は大きくなるため、コントローラ20に入力される出力要求信号の信号レベルは高くなる。
【0057】
コントローラ20は、これら入力信号等を用いて、コンプレッサ駆動モータ54、ノズルベーン58、冷却水循環ポンプ78、及びバイパス弁32を含む各種弁32、66、68、80等の駆動制御を行う。例えば、コントローラ20は、負荷装置110の発電要求信号に基づいて、コンプレッサ流量や空気圧力の目標値や、燃料電池スタック10への水素供給圧力の目標値を算出し、その算出結果に応じて、コンプレッサ駆動モータ54のトルク(動力)や、ノズルベーン58の開度、アノードガス供給弁66の開度を制御する。
【0058】
また、本実施形態では、コントローラ20は、上記要求出力の一部として、コンプレッサ駆動モータ54の消費電力に関連する情報も取得される。
【0059】
次に、本実施形態における燃料電池システム100における各種制御について、
図3〜
図7に示すブロック図を参照して詳細に説明する。なお、
図3〜
図7に示す各ブロックの機能は、コントローラ20により実現される。
【0060】
図3は、本実施形態にかかる、燃焼器水素供給弁68の開度、ノズルベーン58の開度、コンプレッサ駆動モータ54のトルク、及びバイパス弁32の開度に対するフィードバック(F/B)制御を説明する制御ブロック図である。
【0061】
図3に示す制御ブロックは、膜湿潤F/B制御ブロックB100と、空気圧力目標値演算ブロックB101と、空気流量目標値演算ブロックB102と、タービン入口温度目標値演算ブロックB103と、燃焼器水素量F/B制御ブロックB104と、空気系F/B制御ブロックB105と、バイパス空気量制御ブロックB106と、を有する。
【0062】
膜湿潤F/B制御ブロックB100は、燃料電池スタック10に形成される電解質膜の湿潤状態を適切に保つように、当該湿潤状態と相関するHFR値を制御する。
【0063】
本実施形態では、膜湿潤F/B制御ブロックB100には、HFR目標値と、HFR計測値とが入力される。HFR目標値は、燃料電池スタック10の発電電力とHFR目標値との関係を定めたマップ等を用いて予め定められる。HFR計測値は、燃料電池スタック10に設けられるインピーダンス計測装置11を用いて計測される。
【0064】
膜湿潤F/B制御ブロックB100は、HFR計測値がHFR目標値に近づくように、燃料電池システム100の作動状態を調節する観点から、要求される空気圧力(以下では、「湿潤要求空気圧力Ph_r」とも記載する)及び要求される空気流量(以下では、「湿潤要求空気流量Fh_r」とも記載する)を算出する。すなわち、膜湿潤F/B制御ブロックB100は、HFR目標値に基づいて、湿潤要求空気圧力Ph_rと、湿潤要求空気流量Fh_rとを算出する。
【0065】
さらに、膜湿潤F/B制御ブロックB100は、この湿潤要求空気圧力Ph_rを空気圧力目標値演算ブロックB101に出力するとともに、湿潤要求空気流量Fh_rを空気流量目標値演算ブロックB102に出力する。
【0066】
空気圧力目標値演算ブロックB101は、電流目標値Is_tに基づいて、燃料電池スタック10に供給すべき空気圧力の目標値である空気圧力目標値Pc_tを演算する。なお、電流目標値Is_tは、システム要求出力及びタービン52による回収動力に基づいて定まる、燃料電池スタック10から取り出すべき電流の目標値である。
【0067】
本実施形態では、空気圧力目標値演算ブロックB101には、電流目標値Is_tと、スタック温度検出値Ts_dと、膜湿潤F/B制御ブロックB100で算出された湿潤要求空気圧力Ph_rと、が入力される。スタック温度検出値Ts_dは、例えば、入口水温センサ81及び出口水温センサ82で検出された各検出値を平均した値である。なお、各検出値の何れか一方の値が用いられてもよい。空気圧力目標値演算ブロックB101は、上述の電流目標値Is_t、スタック温度検出値Ts_d、及び湿潤要求空気圧力Ph_rに基づいて、燃料電池スタック10に供給すべき空気圧力の目標値である空気圧力目標値Pc_tを算出し、これを空気流量目標値演算ブロックB102及びタービン入口温度目標値演算ブロックB103に出力する。
【0068】
図4は、空気圧力目標値演算ブロックB101により実行される空気圧力目標値Pc_tの算出方法の詳細を示すブロック図である。当図に示すブロックは、発電要求空気圧力算出ブロックB200と、マックスセレクトブロックB201と、を有する。
【0069】
発電要求空気圧力算出ブロックB200には、電流目標値Is_tとスタック温度検出値Ts_dと、が入力される。そして、発電要求空気圧力算出ブロックB200は、予め記憶されたマップに基づいて、電流目標値Is_t及びスタック温度検出値Ts_dから、燃料電池スタック10の発電に必要となる空気圧力である発電要求空気圧力Pg_rを算出する。さらに、発電要求空気圧力算出ブロックB200は、発電要求空気圧力Pg_rをマックスセレクトブロックB201に出力する。図に示す発電要求空気圧力算出ブロックB200の上記マップから理解されるように、電流目標値Is_tが大きくなるほど、発電要求空気圧力Pg_rは大きくなるとともに、スタック温度検出値Ts_dが高くなるほど発電要求空気圧力Pg_rは大きくなる。
【0070】
マックスセレクトブロックB201には、発電要求空気圧力算出ブロックB200で算出された発電要求空気圧力Pg_rと、膜湿潤F/B制御ブロックB100で算出された湿潤要求空気圧力Ph_rと、が入力される。そして、マックスセレクトブロックB201は、発電要求空気圧力Pg_r及び湿潤要求空気圧力Ph_rの内の大きい方の値を空気圧力目標値Pc_tとして空気流量目標値演算ブロックB102及びタービン入口温度目標値演算ブロックB103に出力する。
【0071】
したがって、
図4に示すブロックでは、燃料電池スタック10の発電状態を制御する上で要求される空気圧力(発電要求空気圧力Pg_r)、及び電解質膜の湿潤状態を操作する上で要求される空気圧力(湿潤要求空気圧力Ph_r)を考慮して、最大の値が空気圧力目標値Pc_tとして設定されることとなる。
【0072】
図3に戻り、空気流量目標値演算ブロックB102は、コンプレッサ流量目標値Fco_t及びスタック流量目標値Fs_tを演算する。スタック流量目標値Fs_tは、燃料電池スタック10が目標電力を発電したときに、燃料電池スタック10のカソード電極内で電極反応に必要なスタック流量に相当する。すなわち、スタック流量目標値Fs_tは、目標電力を発電するにあたり、出力電流を電流目標値Is_tとするために必要なスタック流量に相当する。
【0073】
本実施形態では、空気流量目標値演算ブロックB102には、空気圧力目標値演算ブロックB101により算出された空気圧力目標値Pc_t、電流目標値Is_t、スタック温度検出値Ts_d、湿潤要求空気流量Fh_r、水素圧力検出値Pan_d、及び大気圧検出値Pai_dが入力される。空気流量目標値演算ブロックB102は、これら空気圧力目標値Pc_t、電流目標値Is_t、スタック温度検出値Ts_d、湿潤要求空気流量Fh_r、水素圧力検出値Pan_d、及び大気圧検出値Pai_dに基づいて、コンプレッサ流量目標値Fco_t及びスタック流量目標値Fs_tを算出する。
【0074】
図5は、空気流量目標値演算ブロックB102により実行されるスタック流量目標値Fs_t及びコンプレッサ流量目標値Fco_tの算出方法の詳細を示すブロック図である。当図に示すブロックは、発電要求空気流量算出ブロックB300と、マックスセレクトブロックB301と、圧力比目標値演算ブロックB302と、スタック要求コンプレッサ流量算出ブロックB303と、希釈要求流量算出ブロックB304と、マックスセレクトブロックB305と、を有する。
【0075】
発電要求空気流量算出ブロックB300には、電流目標値Is_tが入力される。発電要求空気流量算出ブロックB300は、予め記憶されたマップに基づいて、電流目標値Is_tから、燃料電池スタック10において発電に必要な空気流量である発電要求空気流量Fg_rを算出する。
【0076】
図に示すように、発電要求空気流量算出ブロックB300の上記マップでは、電流目標値Is_tが増大するに伴い、発電要求スタック流量Fs_grも増大する。さらに、発電要求空気流量算出ブロックB300は、発電要求空気流量Fg_rをマックスセレクトブロックB301に出力する。
【0077】
マックスセレクトブロックB301には、発電要求空気流量算出ブロックB300で算出された発電要求空気流量Fg_rと、湿潤要求空気流量Fh_rと、が入力される。そして、マックスセレクトブロックB301は、発電要求空気流量Fg_r及び湿潤要求空気流量Fh_rの内の大きい方の値をスタック流量目標値Fs_tとして出力する。これにより、スタック流量目標値Fs_tには、発電要求に基づく空気流量及び湿潤要求に基づく空気流量の双方が考慮されることとなる。
【0078】
圧力比目標値演算ブロックB302には、空気圧力目標値Pc_tと大気圧検出値Pai_dが入力される。そして、圧力比目標値演算ブロックB302は、空気圧力目標値Pc_tを大気圧検出値Pai_dで除して圧力比目標値Pc_t/Pai_dを求め、スタック要求コンプレッサ流量算出ブロックB303に出力する。
【0079】
スタック要求コンプレッサ流量算出ブロックB303には、コンプレッサモータへの要求電力Wcoと、圧力比目標値Pc_t/Pai_dと、が入力される。ここで、コンプレッサモータへの要求電力Wcoとは、要求出力から、燃料電池スタック10の出力可能電力(以下、単に「出力可能電力」とも記載する)を減算した値として定義される。なお、燃料電池スタック10の出力可能電力は、燃料電池スタック10のサイズや燃料電池スタック10を搭載した車両の走行状態等に応じて定まる。
【0080】
すなわち、要求出力が出力可能電力を上回っている場合には、コンプレッサモータへの要求電力Wcoが正の値となる。このようにコンプレッサモータへの要求電力Wcoが正の値となることは、要求出力に対する燃料電池スタック10の発電電力が不足することを意味する。したがって、本実施形態では、この場合、電力不足分をタービン52の回収動力に基づくコンプレッサ駆動モータ54の回生電力で補償する。
【0081】
一方で、要求出力が出力可能電力を下回っている場合には、コンプレッサモータへの要求電力Wcoが負の値となる。これは、要求出力に対する燃料電池スタック10の発電電力が足りており、コンプレッサ駆動モータ54を力行モードで作動することを意図している。
【0082】
さらに、圧力比目標値Pc_t/Pai_dは、コンプレッサモータへの要求電力Wcoが大きくなるほど、大きく設定される。すなわち、圧力比目標値Pc_t/Pai_dの増減はコンプレッサモータへの要求電力Wcoの増減とリンクしているので、圧力比目標値Pc_t/Pai_dの大小を見れば、コンプレッサモータへの要求電力Wcoの大小も検出することができる。
【0083】
そして、スタック要求コンプレッサ流量算出ブロックB303は、入力されたコンプレッサモータへの要求電力Wco及び圧力比目標値Pc_t/Pai_dに基づいて、予め定められたマップにより、スタック要求コンプレッサ流量Fco_srを算出する。ここで、スタック要求コンプレッサ流量Fco_srとは、要求出力と出力可能電力との間の大小、すなわち燃料電池スタック10の発電電力が不足しているか否かに応じて定められるコンプレッサ流量の候補値である。
【0084】
図6は、圧力比目標値に応じたコンプレッサモータへの要求電力Wcoとスタック要求コンプレッサ流量の関係を示すマップである。
【0085】
図示のように、コンプレッサモータへの要求電力Wcoが負の値である場合(燃料電池スタック10の発電電力が不足していない場合)には、当該コンプレッサモータへの要求電力Wcoが所定値Wco1に到達するまで、圧力比目標値Pc_t/Pai_dの値にかかわらず、スタック要求コンプレッサ流量Fco_srを所定値Fco_sr1まで増加させる。この所定値Fco_sr1は、燃料電池スタック10の要求発電電力に応じて定められるスタック流量に相当する値である。すなわち、このように発電電力が不足していない状況においては、コンプレッサ駆動モータ54を力行モードで作動させるので、燃料電池スタック10の要求発電電力に基づく流量を越えたコンプレッサ流量を設定する必要は無く、燃料電池スタック10の要求発電電力に応じて定められるスタック流量に相当するコンプレッサ流量を設定する。
【0086】
一方、コンプレッサモータへの要求電力Wcoが正の値である場合(燃料電池スタック10の発電電力が不足している場合)には、圧力比目標値Pc_t/Pai_dに応じてスタック要求コンプレッサ流量Fco_srが設定される。
【0087】
先ず、圧力比目標値Pc_t/Pai_dを最も小さく設定する場合(低圧時)は、コンプレッサモータへの要求電力Wcoの大きさにかかわらず、スタック要求コンプレッサ流量Fco_srを増加させることなく上記所定値Fco_sr1に設定する。このように低圧時にスタック要求コンプレッサ流量Fco_srを所定値Fco_sr1を超えて増加させないようにしている理由は、低圧時はカソード系の圧力損失が大きくタービン52による回収動力が低くなるので、コンプレッサ流量を増やしてタービンガス流入流量を増加させたとしても、タービン52による回収動力の大幅な向上が望めないためである。
【0088】
次に、圧力比目標値Pc_t/Pai_dが上記低圧時よりも大きい中間値に設定する場合(中圧時)は、コンプレッサモータへの要求電力Wcoが所定値Wco2に到達した以降は、スタック要求コンプレッサ流量Fco_srを燃料電池スタック10の要求発電電力に基づく所定値Fco_sr1から所定値Fco_sr2まで増加させる。
【0089】
このように、中圧時においてスタック要求コンプレッサ流量Fco_srを燃料電池スタック10の要求発電電力に基づく所定値Fco_sr1より増加させる理由は、発電電力の不足を解消すべく、コンプレッサ駆動モータ54から回生電力を得るように、タービンガス流入流量を増やすためである。しかしながら、中圧時は、まだカソード系の圧力損失が大きいため、タービンガス流入流量を大きく増加させても一定以上の回収動力の増加は望めないため、タービン52による回収動力を増加させることできる限度でコンプレッサ流量を増加させるべく、スタック要求コンプレッサ流量Fco_srを所定値Fco_sr2まで増加させている。なお、本実施形態では、後述するように、スタック要求コンプレッサ流量Fco_srの増加に伴い、バイパス弁32の開度を増加させて、燃料電池スタック10により要求される流量以上のカソードガスを、アフタークーラ28に流さないようにする。この点は、後に詳細に説明する。
【0090】
さらに、圧力比目標値Pc_t/Pai_dを最も大きい値に設定する場合(高圧時)は、コンプレッサモータへの要求電力Wcoが所定値Wco3に到達する以降に、スタック要求コンプレッサ流量Fco_srを上記所定値Fco_sr1から増加させる。
【0091】
このように、高圧時においても、コンプレッサ駆動モータ54から回生電力を得るようにスタック要求コンプレッサ流量Fco_srを燃料電池スタック10の要求発電電力に基づく所定値Fco_sr1より増加させている。そして、高圧時においては、カソード系の圧力損失が小さいため、タービンガス流入流量を大きく増加させて、タービン52による回収動力を一定以上に増加させることができる。
【0092】
ここで、高圧時においても、スタック要求コンプレッサ流量Fco_srの増加に伴い、バイパス弁32の開度を増加させて、燃料電池スタック10により要求される流量以上のカソードガスをアフタークーラ28に流さないようにする。
【0093】
図5に戻り、スタック要求コンプレッサ流量算出ブロックB303は、スタック要求コンプレッサ流量算出ブロックB303で算出されたスタック要求コンプレッサ流量Fco_srをマックスセレクトブロックB305に出力する。
【0094】
一方、希釈要求流量算出ブロックB304には、スタック温度検出値Ts_dと、水素圧力検出センサ67で検出された水素圧力検出値Pan_dと、が入力される。そして、希釈要求流量算出ブロックB304は、予め定められたマップにより、燃料電池スタック10から排出されるアノード排ガスを希釈するために要求される空気流量である希釈要求コンプレッサ流量Fco_drを算出し、マックスセレクトブロックB305に出力する。
【0095】
図に示す希釈要求流量算出ブロックB304のマップでは、水素圧力検出値Pan_dが大きくなるほど、希釈要求コンプレッサ流量Fco_drも大きくなる。また、当該マップでは、スタック温度検出値Ts_dが高くなると、希釈要求コンプレッサ流量Fco_drは減少する。これは、スタック温度検出値Ts_dが高い状態ではアノード排ガス温度が高く、アノード排ガス排出流路の圧損が高くなって流量が低下する分、希釈に用いる空気量を減らす補正を行う必要があるためである。
【0096】
そして、希釈要求流量算出ブロックB304は、この希釈要求コンプレッサ流量Fco_drをマックスセレクトブロックB305に出力する。
【0097】
マックスセレクトブロックB305には、スタック要求コンプレッサ流量算出ブロックB303から出力されたスタック要求コンプレッサ流量Fco_sr、及び希釈要求流量算出ブロックB304で算出された希釈要求コンプレッサ流量Fco_drが入力される。そして、マックスセレクトブロックB305は、スタック要求コンプレッサ流量Fco_sr及び希釈要求コンプレッサ流量Fco_drの内の大きい方の値をコンプレッサ流量目標値Fco_tとして、各ブロックB103、B105、及びB106に出力する。
【0098】
すなわち、本実施形態では、コンプレッサ流量目標値Fco_tは、燃料電池スタック10の要求発電電力と、アノード排ガスの希釈要求とを考慮して決定されることになる。なお、これらの要求に加えて、コンプレッサ50のサージを回避するためのサージ回避要求を考慮してコンプレッサ流量目標値Fco_tを決定してもよい。
【0099】
図3に戻り、タービン入口温度目標値演算ブロックB103は、燃料電池スタック10に供給されるカソードガスの流量及び圧力に基づいて、触媒燃焼器36からタービン52に排出される燃焼後ガスの温度、すなわちタービン入口温度を制御する。
【0100】
本実施形態では、タービン入口温度目標値演算ブロックB103には、大気圧検出値Pai_dと、空気圧力目標値演算ブロックB101で算出された空気圧力目標値Pc_tと、空気流量目標値演算ブロックB102で演算されたコンプレッサ流量目標値Fco_tと、が入力される。タービン入口温度目標値演算ブロックB103は、大気圧検出値Pai_d、空気圧力目標値Pc_t、及びコンプレッサ流量目標値Fco_tに基づいて、タービン入口温度が目指すべきタービン52の入口温度の目標値(以下では「タービン入口温度目標値Tt_t」とも記載する)を求める。
【0101】
図7は、タービン入口温度目標値演算ブロックB103により実行されるタービン入口温度目標値Tt_tの算出方法の詳細を示すブロック図である。当図に示すブロックは、圧力比目標値演算ブロックB400と、タービン入口温度目標値設定ブロックB401と、を有している。
【0102】
圧力比目標値演算ブロックB400には、空気圧力目標値Pc_tと大気圧検出値Pai_dが入力される。そして、圧力比目標値演算ブロックB400は、空気圧力目標値Pc_tを大気圧検出値Pai_dで除して圧力比目標値Pc_t/Pai_dを求め、タービン入口温度目標値設定ブロックB401に出力する。
【0103】
タービン入口温度目標値設定ブロックB401には、コンプレッサ流量目標値Fco_tと、圧力比目標値演算ブロックB400で算出された圧力比目標値Pc_t/Pai_dと、が入力される。そして、タービン入口温度目標値設定ブロックB401は、予め記憶されたマップに基づいて、コンプレッサ流量目標値Fco_t及び圧力比目標値Pc_t/Pai_dからタービン入口温度目標値Tt_tを算出する。
【0104】
図8は、タービン入口温度目標値を定めるためのマップを示す図である。
【0105】
図8に示すように、タービン入口温度目標値Tt_tは、予め定められるタービン入口温度の下限値Tt_tminと、部品の耐熱温度を考慮して定められるタービン入口温度の許容上限温度Tt_tmaxの間で、圧力比目標値Pc_t/Pai_d及びコンプレッサ流量目標値Fco_tに応じて変動する。
【0106】
具体的に、先ず、圧力比目標値Pc_t/Pai_dが最も大きい値に設定される高圧時、圧力比目標値Pc_t/Pai_dが中間の値に設定される中圧時、圧力比目標値Pc_t/Pai_dが最も小さい値に設定される低圧時において、コンプレッサ流量目標値Fco_tがそれぞれ、所定値f1、f2、f3(f1<f2<f3)に到達するまでタービン入口温度目標値Tt_tが下限値Tt_tminに維持され、その後に増加する。
【0107】
このように、高圧であるほどより少ないコンプレッサ流量目標値Fco_tでタービン入口温度目標値Tt_tを増加させ始める理由は、同じコンプレッサ流量目標値Fco_tであっても、高圧であるほど燃料電池スタック10に対する要求発電電力が大きいので、タービン入口温度を上昇させてタービン52からの回収動力を増加させる必要があるためである。
【0108】
さらに、高圧時、中圧時、及び低圧時の何れの場合であっても、コンプレッサ流量目標値Fco_tが、上記タービン入口温度を上昇させ始める流量f1〜f3よりも大きい所定値f4に到達すると、タービン入口温度目標値Tt_tを許容上限温度Tt_tmaxに設定する。これは、コンプレッサ流量目標値Fco_tが一定以上に大きくなる場合には、要求出力が大きく、コンプレッサモータへの要求電力Wcoが大きい状態であるので、タービン52で得られる回収動力を増加させるべく、タービン入口温度を急激に上昇させるようにするためである。一方で、部品の耐熱温度の観点から、タービン入口温度は許容上限温度Tt_tmaxを越えて増加させないようにしている。
【0109】
図3に戻り、燃焼器水素量F/B制御ブロックB104には、タービン入口温度検出値Tt_dと、タービン入口温度目標値演算ブロックB103で演算されたタービン入口温度目標値Tt_tと、が入力される。燃焼器水素量F/B制御ブロックB104は、タービン入口温度検出値Tt_dがタービン入口温度目標値Tt_tに近くづくように、燃焼器水素供給弁68の開度をフィードバック制御する。
【0110】
本実施形態では、燃焼器水素供給弁68の開度は、燃料電池スタック10への要求負荷やタービン52からの要求動力が大きくなるほど大きくする。具体的には、スタック流量目標値Fs_t及びコンプレッサ流量目標値Fco_tの少なくとも何れか一方が増大すると、触媒燃焼器36に供給される空気が増加するため、燃焼器水素供給弁68の開度を大きくして当該空気を燃焼させるために触媒燃焼器36への水素供給量を増大させることとなる。
【0111】
空気系F/B制御ブロックB105には、各検出値として、コンプレッサ流量検出値Fco_dと、空気圧力検出値Pc_dと、が入力される。さらに、空気系F/B制御ブロックB105には、各目標値として、空気圧力目標値Pc_t、コンプレッサ流量目標値Fco_t、及びスタック流量目標値Fs_tが入力される。
【0112】
そして、空気系F/B制御ブロックB105は、入力された各検出値及び各目標値に基づいて、ノズルベーン58の開度、及びコンプレッサ駆動モータ54のトルクをフィードバック制御する。具体的に、空気系F/B制御ブロックB105は、燃料電池スタック10への要求負荷が高い場合やタービン52の要求動力が高い場合、すなわち、スタック流量目標値Fs_t及びコンプレッサ流量目標値Fco_tの少なくとも何れか一方が増大する場合には、ノズルベーン58の開度を大きくする。
【0113】
同様に、コンプレッサ駆動モータ54のトルク(動力)は、空気圧力目標値Pc_t、スタック流量目標値Fs_t、及びコンプレッサ流量目標値Fco_tのうちの少なくとも一つが増大するほど大きくするように制御される。
【0114】
バイパス空気量制御ブロックB106には、空気圧力目標値Pc_t、コンプレッサ流量目標値Fco_t、及びスタック流量目標値Fs_tが入力される。そして、バイパス空気量制御ブロックB106は、これら値に基づいて、バイパス弁32の開度を制御する。
【0115】
具体的に、バイパス空気量制御ブロックB106は、バイパス通路33に流れる空気流量がコンプレッサ流量目標値Fco_tとスタック流量目標値Fs_tとの差分となるように、バイパス弁32の開度を制御する。
【0116】
次に、既に説明した燃料電池システム100におけるコンプレッサ動力供給機構16(
図1参照)によるエネルギー収支について詳細に説明する。
【0117】
以下では、先ず、コンプレッサ50で用いられる仕事(以下では、「コンプレッサ仕事Wc」とも記載する)とタービン52から回収できる仕事(以下では、「タービン仕事Wt」とも記載する)との関係を説明する。
【0118】
先ず、コンプレッサ仕事Wcを求める理論式は、
Wc=Fco×Cpc×Tc×[(Prc)^0.286-1}/ηc・・・・(1)
と表される。ただし、Fcoはコンプレッサ流量、Cpcはコンプレッサ50により供給される空気の比熱、Tcはコンプレッサ吐出温度、Prcは圧力比、及びηcはコンプレッサ効率を意味する。本実施形態では、コンプレッサ50により供給される空気の比熱Cpcやコンプレッサ効率ηcは、コンプレッサ50の性質に基づいて予め定めた固定値を用いる。したがって、コンプレッサ仕事Wcは主として、コンプレッサ流量Fco、コンプレッサ吐出温度Tc、及び圧力比Prcに応じて変動することとなる。これにより、式(1)に基づけば、コンプレッサ仕事Wcは、コンプレッサ流量Fco、コンプレッサ吐出温度Tc、及び圧力比Prcの少なくとも何れかが増加すると増加する。
【0119】
また、タービン仕事Wtを求める理論式は、
Wt=Ft×Cpt×Tt×[1-(1/Prt)^0.286}×ηt ・・・・(2)
と表される。ただし、Ftはタービン52へ流入する燃焼後ガスの流量(以下では、「タービン流入流量」とも記載する)、Cptはタービン52へ流入する燃焼後ガスの比熱、Ttはタービン入口温度、Prtはタービン膨張比、ηtはタービン効率を意味する。ここで、本実施形態では、タービン52へ流入する燃焼後ガスの比熱Cptについては、燃焼後ガスの成分が空気とほぼ同じであるとみなすことなどにより予め定めることができる。またタービン効率ηtは、タービン52の性質に基づいて予め定めることができる。したがって、タービン仕事Wtは主として、タービン流入流量Ft、タービン入口温度Tt、及びタービン膨張比Prtに応じて変動することとなる。これにより、式(2)に基づけば、タービン仕事Wtは、タービン流入流量Ft、及びタービン入口温度Ttの少なくとも何れかが増加すると増加する。
【0120】
さらに、燃料電池スタック10の圧力損失ΔPsを求める理論式は、
ΔPs=(k×Fs×Prc×Ts)/T0・・・・(3)
と表される。ただし、kは燃料電池スタック10内のカソード流路における圧力損失係数、Fsはスタック流量、Tsはスタック温度、及びT0は標準状態の温度(≒273.15K)を意味する。また、式(3)中のPrcは、既に述べたタービン膨張比Prtを用いて以下の式により求められる。
【0121】
Prt=Prc+(ΔPs/Patm)・・・・(4)
したがって、燃料電池スタック10の圧力損失ΔPsは、主に、スタック流量Fs及びスタック温度Tsの少なくとも何れかが増加すると増加することとなる。
【0122】
さらに、燃料電池スタック10内の電気化学反応による生成水がシステム内で発生しない運転条件下であって大気中の酸素濃度を21%と仮定したときには、コンプレッサ流量Fcoとタービン流入流量Ftの間の関係は、以下の式で表される。
【0123】
Ft=Fs×[0.79+0.21×(1+SRc)/SRc]+1/2×FH・・・・・(5)
ただし、SRcはスタックの空気過剰率、FHは触媒燃焼器36に投入される水素流量を意味する。なお、水素供給流量FHは、例えば水素圧力検出センサ67による水素圧力検出値Pan_dと燃焼器水素供給弁68の開度等に基づいて、所定のマップにより求めることができる。
【0124】
また、タービン入口温度Ttは、基本的に触媒燃焼器36に供給されるガス流量、比熱、及び触媒燃焼器36への水素供給流量FHにより定まる発熱量から算出される。なお、タービン入口温度Ttは、さらに部品の耐熱温度を考慮した許容上限温度Tt_tmaxを越えないように調節される。
【0125】
さらに、コンプレッサ駆動モータ54が行う仕事(以下では、「駆動モータ仕事Wm」とも記載する)は、基本的には以下の式(6)で与えられる。
【0126】
Wm=Wc-Wt・・・・(6)
ただし、駆動モータ仕事Wmについては、コンプレッサ駆動モータ54のサイズによる制限と燃料電池スタック10の要求発電電力による制限を考慮する必要がある。したがって、駆動モータ仕事Wmは、以下の制限値Wmlに制限される。
【0127】
Wml=Min(Wmlm,Wstmax-Wreq) ・・・・(7)
ここで、Min(a,b)とは、aとbの内の小さい方の値(同一ならば何れでも良い)を意味する。式(7)中、Wstmaxは燃料電池スタック10の出力可能電力である。Wmlmは、コンプレッサ駆動モータ54のサイズによる制限値である。
【0128】
式(7)中の出力可能電力Wstmaxは既に述べたように、燃料電池スタック10が搭載される車両の走行状態やスタックサイズなどの要因に応じて決定される。したがって、例えば熱地における温度制限時などにおいては、出力可能電力Wstmaxが低下する。一方、Wreqは要求出力である。すなわち、式(7)中のWstmax−Wreqは、上述したコンプレッサモータへの要求電力Wcoに相当することとなる。したがって、コンプレッサ駆動モータ54の仕事Wmは、上記式(7)で定義される制限値Wmlを超えないように調節される。
【0129】
ここで、式(6)から理解されるように、タービン仕事Wtでコンプレッサ仕事Wcを賄うことができるので、燃料電池スタック10やバッテリからコンプレッサ駆動モータ54に供給する電力を低減することができる。
【0130】
また、駆動モータ仕事Wmが負の値、すなわちコンプレッサ駆動モータ54が回生モードで運転されており、コンプレッサ駆動モータ54からコンプレッサ50に動力が供給されない場合には、タービン仕事Wtによりコンプレッサ仕事Wcを確保することができる。さらに、タービン仕事Wtをより増加させると、コンプレッサ50の動力を確保した上で、コンプレッサ駆動モータ54の回生により得られる電力が向上するので、この電力を要求出力に対する燃料電池スタック10の出力電力の不足分に充てることができる。
【0131】
次に、要求出力に応じた燃料電池システム100の状態の変化について説明する。
【0132】
図9は、要求出力に応じた燃料電池システム100の状態の変化を示すタイムチャートである。具体的に
図9(a)〜
図9(g)は、それぞれ、要求出力に対する、要求スタック流量、要求空気圧力、コンプレッサ50が要求する動力(以下、「要求コンプレッサ動力」とも記載する)、水素燃料消費量、タービン入口温度Tt、コンプレッサ流量目標値Fco_t、及びバイパス弁開度の変化を示すタイムチャートである。
【0133】
以下では、要求出力がWreq1以下である区間I、要求出力がWreq1〜Wreq2である区間II、要求出力がWreq2〜Wreq3である区間III、要求出力がWreq3〜Wreq4である区間IV、及び要求出力がWreq4〜Wreq5である区間Vについて、システム状態の変化について説明する。
【0134】
先ず、区間Iにおいて、燃料電池スタック10の要求発電電力に対して電力が不足していない低負荷状態であり、
図9(a)及び
図9(b)に示すように、要求スタック流量及び要求空気圧力の値が比較的小さい。また、
図9(c)に示すように、要求出力の増加にともない要求コンプレッサ動力は増加しているが、いまだコンプレッサ駆動モータ54の出力の制限値Wml(図に破線で示す)に到達していない。
【0135】
したがって、この場合、タービン52による回収動力無しでも、燃料電池スタック10やバッテリからの電力によってコンプレッサ動力を賄うことができるので、コンプレッサ駆動モータ54を力行モードで稼動させる。
【0136】
さらに、区間Iにおいては、上述のようにタービン52の回収動力の確保は必須ではないので、タービン52の出力を比較的小さくすることができる。したがって、水素消費量、タービン入口温度Tt、及びタービン流入流量Ftを増加させる制御は行われない。また、この場合には、
図9(g)に示すようにバイパス弁32は基本的に全閉とされる。なお、
図9(g)には要求出力がゼロに近い領域でバイパス弁32が一定開度に設定されている。これは極低負荷では、要求スタック流量に対し
図5のB304で演算される希釈要求コンプレッサ流量Fco_drが大きくなるため、スタック流量に対して余剰のカソードガスをバイパス通路33を介してカソード排ガス通路24に流すことを意図したものである。
【0137】
以上説明したように、極低負荷以外の区間Iにおいては、タービン流入流量Ftを増加させるべく特別な制御を行わず、またバイパス弁32は基本的に全閉に設定される。したがって、要求スタック流量とコンプレッサ流量目標値Fco_tはほぼ等しくなり、これらはともに要求出力の増加とともに増加する(
図9(a)及び
図9(f)参照)。
【0138】
次に、区間IIにおいて、要求出力がWreq1に到達すると、要求コンプレッサ動力がコンプレッサ駆動モータ54の出力の制限値Wmlを越える。これにより、要求コンプレッサ動力に対するコンプレッサ駆動モータ54の出力の不足分(
図9(c)の斜線部に相当)を、タービン52の回収動力で賄うことができる。なお、このときに要求されるタービン52の回収動力を「要求タービン回収動力」とも記載する。
【0139】
したがって、この場合、タービン52の回収動力を増加させるべく、
図9(d)に示すように、触媒燃焼器36への水素燃料供給を開始し、この供給量を徐々に増加させていく。これにより、
図9(e)に示すようにタービン入口温度Ttが増加して、タービン回収動力を増加させることができる。
【0140】
一方で、既に述べたように、タービン回収動力を増加させるにはタービン入口温度Ttだけでなく、タービン流入流量Ftを増加させることも考えられる。しかしながら、区間IIの段階ではいまだ、空気圧力が十分に高くはなく、カソード系の圧力損失が大きいので、タービン流入流量Ftを増加させる制御を行ってもタービン52の回収動力を大幅に増加させることはできない。したがって、この場合も
図9(g)に示すようにバイパス弁32が全閉とされ、要求スタック流量とコンプレッサ流量目標値Fco_tはほぼ等しい状態で要求出力の増加とともに増加する(
図9(a)及び
図9(f)参照)。
【0141】
次に、区間IIIにおいて要求出力がWreq2に到達すると、燃料電池スタック10の発電電力が最大発電電力Wstmaxに達する。
【0142】
ここで、要求出力が最大発電電力Wstmax以上となった場合、要求出力に対して燃料電池スタック10の発電電力が不足することとなるので、コンプレッサ駆動モータ54等の補機電力を低下させて燃料電池スタック10の発電電力の不足を補う必要がある。したがって、コンプレッサ駆動モータ54の消費電力を低減させるべくコンプレッサ駆動モータ54の制限値Wmlを低下させる(
図9(c)参照)。一方で、当該制限値Wmlの低下に伴うコンプレッサ駆動モータ54の動力低下を補うために、タービン52による回収動力を増加させるべく、燃焼用アノードガス供給通路64を介した水素燃料供給量を増加させる(
図9(d)の斜線部参照)。これにより、タービン入口温度Ttが増加して(
図9(e)参照)、タービン52による回収動力が増加するので、要求コンプレッサ動力とコンプレッサ駆動モータ54の制限値Wmlとの差分を、タービン52による回収動力で補うことができる(
図9(c)の斜線部参照)。
【0143】
なお、区間IIIの段階では、タービン出口温度は上限温度に達していないため、バイパス量を増やさなくても、温度を上げることでタービン回収動力を増やすことが可能である。したがって、この場合、
図9(g)に示すようにバイパス弁32が全閉とされ、要求スタック流量とコンプレッサ流量目標値Fco_tは、相互にほぼ等しい状態で要求出力の増加とともに増加する(
図9(a)及び
図9(f)参照)。
【0144】
次に、区間IVは、要求出力がWreq3〜Wreq4となる区間である。すなわち、区間I〜区間IIIと比較してより負荷が高い区間である。この区間IVでは、要求出力が燃料電池スタック10の出力可能電力を超え且つ、コンプレッサ駆動モータ54の制限値Wmlをゼロ、すなわちコンプレッサ駆動モータ54への電力供給をゼロとしても要求出力が満たされない状況(回生が要求される状況)となっている。
【0145】
この区間IVでは、タービン52の回収動力により、コンプレッサ50の動力を確保し且つ要求出力を満たすべくコンプレッサ駆動モータ54を回生モードとして発電を行う。これにより、要求出力に対する電力の不足分がコンプレッサ駆動モータ54による発電で補われる。したがって、
図9(d)及び
図9(e)に示すように、燃焼用アノードガス供給通路64を介した触媒燃焼器36への水素燃料供給量をさらに増やしてタービン入口温度Ttを増大させ、タービン52による回収動力を増加させる。
【0146】
一方で、本実施形態では、区間IVの段階でも、タービン流入流量Ftを増加させる制御を行わない。そして、
図9(g)に示すようにバイパス弁32も全閉とされている。したがって、要求スタック流量とコンプレッサ流量目標値Fco_tはほぼ等しい状態で要求出力の増加とともに増加する(
図9(a)及び
図9(f)参照)。
【0147】
さらに、区間Vは、要求出力がWreq4〜Wreq5となる区間である。この区間は、要求出力が区間I〜区間IVと比較して最も大きいので、コンプレッサ駆動モータ54の制限値Wmlがさらに低くなっている。すなわち、要求出力に対して燃料電池スタック10の発電量がより不足する。
【0148】
しかしながら、区間Vでは、
図9(e)に示すように、タービン入口温度Ttが、部品の耐熱温度等の観点から定められる許容上限温度Tt_tmaxに達している。したがって、これ以上、タービン入口温度Ttを上昇させないようにしつつも、タービン52による回収動力を増加させることが要求される。
【0149】
したがって、本実施形態では、触媒燃焼器36への水素燃料供給量を増加させつつ、コンプレッサ流量Fcoを要求スタック流量よりも増大させる。そして、これに伴い、要求スタック流量に対して余剰な空気をバイパス通路33に流すべくバイパス弁32の開度を増加させる(
図9(f)及び
図9(g)参照)。
【0150】
これにより、バイパス通路33を介して、本来、触媒燃焼器36への水素燃料供給量を燃焼させるのに必要なカソード排ガス流量を越えた流量をタービン52に供給することができる。これにより、タービン入口温度Ttの上昇を抑制しつつも、タービン流入流量Ftを増加させてタービン52からの回収動力を向上させることができる。したがって、タービン52の回収動力に基づいたコンプレッサ駆動モータ54の発電電力をより向上させることができ、負荷の増大にともない増加した要求出力を満たすことができる。
【0151】
特に、本実施形態では、バイパス弁32の開度を増加させることにより、要求スタック流量に対して余剰な空気を、バイパス通路33を介して触媒燃焼器36へ供給することができる。これにより、要求スタック流量に対して過剰な流量をアフタークーラ28(
図1参照)に流すことが防止される。
【0152】
以上のように、本実施形態では、区間Vのようにタービン入口温度Ttが許容上限温度Tt_tmaxに達した場合に、コンプレッサ流量Fco及びバイパス弁32の開度を増加させてタービン52へのガス供給量を増加させることで、タービン入口温度Ttの上昇を抑えつつも、タービン52からの回収動力を向上させることができる。
【0153】
特に、本実施形態では、上記区間Vのように、タービン入口温度Ttが許容上限温度Tt_tmaxに達した場合で、空気圧力がある程度高い状態でコンプレッサ流量Fco及びバイパス弁32の開度を増加させてタービン流入流量Ftを増加させることが好ましい。以下では、その理由の詳細について説明する。
【0154】
図10は、タービン入口温度Ttが許容上限温度Tt_tmaxであるときにおいて、タービン流入流量Ft、タービン52による回収動力、及びコンプレッサ動力の関係を、空気圧力の高低に応じて示した図である。なお、図においては、タービン52による回収動力を実線で示し、要求コンプレッサ動力を破線で示している。
【0155】
図10(a)は低圧時(圧力比目標値Pc_t/Pai_dが最も小さく設定する場合)のタービン回収動力のグラフを示しており、
図10(b)は中圧時(圧力比目標値Pc_t/Pai_dが中間値に設定する場合)のタービン回収動力のグラフを示しており、
図10(c)は高圧時(圧力比目標値Pc_t/Pai_dが最も大きい値に設定する場合)のタービン回収動力のグラフを示している。
【0156】
図10(a)に示すように、低圧時においては、既に述べたように、カソード系の圧力損失が大きくなるので、コンプレッサ流量Fcoを大きくしてタービン流入流量Ftを増加させてもタービン52による回収動力を大幅に増加させることができない。これに対して、コンプレッサ流量Fcoの増加にもとない要求コンプレッサ動力は増加していき、コンプレッサ流量Fcoが所定値Fco1となったときには要求コンプレッサ動力がタービン52による回収動力を上回り始めてしまう。したがって、低圧時は、コンプレッサ流量Fcoをスタック流量Fsと同じ値にするとともに、バイパス弁32を全閉とし、バイパス通路33を介した触媒燃焼器36への空気の供給を行わないようにする。
【0157】
次に、
図10(b)に示すように、中圧時においては、タービン流入流量Ftの増加に対するタービン52による回収動力の増加量が、低圧時と比較してより大きくなる。したがって、コンプレッサ流量Fcoを一定程度まで増加していっても、タービン52による回収動力を増加させることができ、当該回収動力が要求コンプレッサ動力を上回っている状態を維持することができる。したがって、中圧時は、コンプレッサ流量Fcoがスタック流量Fsよりも大きくなるように調節する。
【0158】
一方で、このように調節した場合、スタック流量Fsに対して余剰の空気をそのまま、
図1のアフタークーラ28に流すようにすると、アフタークーラ28の放熱量が大きくなり、アフタークーラ28を大型化する必要性が生じる。さらに、余剰の空気が燃料電池スタック10に供給されることで、燃料電池スタック10の過乾燥や過電圧等の問題が生じる可能性がある。これに対して、本実施形態では、バイパス弁32の開度を増加させて、コンプレッサ50から吐出される空気を、バイパス通路33を介して触媒燃焼器36へ直接供給する。
【0159】
さらに、中圧時においては、低圧時よりは少ないものの、一定程度のカソード系の圧力損失が生じる。このため、タービン流入流量Ftが一定以上増加していくと、タービン52の回収動力の増加量が少なくなる。したがって、中圧時においては、コンプレッサ流量Fcoがスタック流量Fsを大きく越えてしまわないように調節されるとともに、バイパス弁32の開度もこれに合せて制限される。
【0160】
次に、
図10(c)に示すように、高圧時においては、コンプレッサ流量Fcoの増加に対して要求コンプレッサ動力の増加量が大きくなる。しかしながら、高圧時はカソード系の圧力損失が小さいため、コンプレッサ流量Fcoの増加に伴うタービン流入流量Ftの増加に対してタービン52の回収動力も大きく増加する。そして、コンプレッサ流量Fcoの増加によるタービン52の回収動力の増加量は、要求コンプレッサ動力の増加量を大きく上回っている。例えば、タービン52の回収動力を要求コンプレッサ動力よりΔPだけ大きくする場合であっても、高圧時では中圧時よりも少ないコンプレッサ流量Fcoによりこれを実現することができる(
図10(b)及び
図10(c)参照)。
【0161】
したがって、高圧時においては、タービン52の回収動力を大きくするために、可能な限りコンプレッサ流量Fcoを増加させる。そして、コンプレッサ流量Fcoがスタック流量Fsを上回る余剰な空気は、中圧時と同様に、バイパス弁32の開度を大きくすることで、バイパス通路33を介して触媒燃焼器36へ供給する。これにより、上述したアフタークーラ28の大型化や燃料電池スタック10の過乾燥等を防止することができる。
【0162】
なお、高圧時におけるコンプレッサ流量Fcoの増加量について、その上限は特に限定されるものではない。しかしながら、アフタークーラ28や燃料電池スタック10への余剰な空気の供給を極力回避する観点から、コンプレッサ流量Fcoからスタック流量Fsを減じて得られる流量の値が、バイパス弁32を通過可能な流量の上限値以下となるように、コンプレッサ流量Fcoの増加量を制限することが好ましい。
【0163】
以下では、本実施形態において特徴的なバイパス弁32の開閉制御の概要を説明する。
【0164】
図11は、本実施形態におけるバイパス弁32の開閉について説明するフローチャートである。
【0165】
図示のように、ステップS110において、コントローラ20及び各種計測装置により、コンプレッサ流量目標値Fco_t、スタック流量目標値Fs_t、及び空気圧力目標値Pc_tを取得する。
【0166】
次に、ステップS120において、コントローラ20はスタック流量目標値Fs_t及び空気圧力目標値Pc_tから、あらかじめ設計されたマップを用いてバイパス流量推定値Fb_eを算出する。バイパス流量推定値Fb_eは、スタック流量目標値Fs_tが大きいほど、及び空気圧力目標値Pc_tが大きいほど、大きく値として演算される。さらに、コンプレッサ流量目標値Fco_tからスタック流量目標値Fs_tを減算することで目標バイバス流量Fb_tを算出する。
【0167】
ステップS130において、コントローラ20は、バイパス流量推定値Fb_eが目標バイバス流量Fb_tより大きいか否かを判定する。そして、バイパス流量推定値Fb_eが目標バイバス流量Fb_t以下であると判定されると、ステップS140に進む。ステップS140において、コントローラ20は、バイパス弁32の開度を増加させる。一方、ステップS130において、バイパス流量推定値Fb_eが目標バイバス流量Fb_tより大きいと判定されると、ステップS150に進む。ステップS150において、コントローラ20はバイパス弁32の開度を減少させる。
【0168】
また、本実施形態では高圧タンク60から触媒燃焼器36に直接、水素を供給する構成であったが、これに限られず、例えば、アノード循環系の燃料電池システムにおいてアノード循環通路を流れるアノード排ガスの一部を触媒燃焼器36に供給する構成にしてもよい。
【0169】
さらに本実施形態における燃料電池システム100の制御では、
図3に示すようにではシステムの負荷要求を代表するパラメータとしてスタック電流目標値用いているが、これに限られず、負荷装置110における負荷量に相関するパラメータであれば、電力目標値や電圧目標値等の他の種々のパラメータを用いても良い。
【0170】
以上説明した本発明の第1実施形態にかかる燃料電池システム100及び燃料電池システム100の制御方法によれば、以下の作用効果を奏する。
【0171】
本実施形態によれば、燃料電池システム100は、アノードガス及びカソードガスの供給を受けて発電する燃料電池である燃料電池スタック10と、燃料電池スタック10にカソードガスを供給するコンプレッサ50と、燃料電池スタック10から排出されるカソード排ガスの供給を受けて動力を生成するタービン52と、コンプレッサ50及びタービン52に連結され力行と回生を行う電動モータとしてのコンプレッサ駆動モータ54と、燃料電池スタック10とタービン52の間に設置されカソードガスとアノードガスとを混合して燃焼させる燃焼器としての触媒燃焼器36と、コンプレッサ50から燃料電池スタック10に供給されるカソードガスを冷却する冷却器としてのアフタークーラ28と、アフタークーラ28の上流からアフタークーラ28と燃料電池スタック10をバイパスして触媒燃焼器36にカソードガスを供給するバイパス通路33と、バイパス通路33に設けられたバイパス弁32と、を備える。
【0172】
これによれば、コンプレッサ50のから吐出される空気の内、燃料電池スタック10の発電に対して余剰な空気を、バイパス通路33を介して触媒燃焼器36に供給することができる。したがって、タービン52の回収動力を向上させるように、コンプレッサ50の流量を増加させたとしても、余剰な空気をバイパス弁32を介して直接、触媒燃焼器36に供給することができる。
【0173】
これにより、タービン52の回収動力により、コンプレッサ50の動力やコンプレッサ駆動モータ54の回生のための動力を賄いつつ、燃料電池スタック10の発電に対して余剰な空気をアフタークーラ28に流すことを回避することができる。
【0174】
したがって、燃料電池スタック10の負荷への電力をタービン52の回収動力により補填して燃料電池スタック10が発電すべき電力量を減少させて、燃料電池スタック10の最高出力性能を抑制し、燃料電池スタック10のサイズを小型化することができる。
【0175】
そして、上述のように、タービン52による回収動力を向上させるためにコンプレッサ流量Fcoを増加させたとしても、余剰の空気は、アフタークーラ28の上流からバイパス通路33を介して触媒燃焼器36に供給されることとなる。これにより、タービン52による回収動力の増加を実現しつつ、アフタークーラ28への高温空気の多量の流入を抑制することができ、アフタークーラ28における放熱量を低減することができる。したがって、アフタークーラ28のサイズ及びラジエータ77のサイズを小型化することができる。
【0176】
以上のように、本実施形態によれば、燃料電池スタック10及びアフタークーラ28の双方の小型化を実現することができるので、燃料電池システム100全体の小型化に資することとなり、燃料電池システム100を車載する場合などのようにシステム設置スペースが限られている場合であっても対応することができる。
【0177】
したがって、本実施形態のコンプレッサ動力供給機構16が実装された燃料電池システム100は、PEM等の比較的低温で動作する燃料電池スタック10においても、好適に適用することができる。
【0178】
また、本実施形態による燃料電池システム100は、コントローラ20が、システムの負荷要求である要求出力に基づいてバイパス弁32を制御する制御部として機能する。これにより、要求出力に応じて必要とされるタービン52による回収動力に応じて増加したコンプレッサ流量Fcoに関し、スタック流量に対する余剰空気をより確実にバイパス通路33に流すことができる。
【0179】
さらに、本実施形態による燃料電池システム100では、コントローラ20が、大気圧に対するコンプレッサ50の圧力比Prcの目標値である圧力比目標値に基づいてバイパス弁32の開度を制御する制御部として機能する。
【0180】
これにより、コンプレッサ吐出温度と相関する圧力比Prcについて、その目標値である圧力比目標値に基づいてバイパス弁32の開度が定められることとなるので、コンプレッサ吐出温度を直接検出することなく、システムの高負荷状態(要求出力が相対的に高い状態)を高精度に検知することができる。これにより、バイパス弁32の開度の増加を、より確実にシステムの高負荷状態に合せて行うことができ、結果として、アフタークーラ28への余剰空気の流入をより確実に低減することができる。
【0181】
さらに、本実施形態による燃料電池システム100では、コントローラ20は、タービン52の入口温度(タービン入口温度Tt)が上限に達した後に、コンプレッサ流量Fcoを、燃料電池スタック10が要求する流量である要求スタック流量よりも増加させる制御部として機能する。
【0182】
ここで、タービン52の回収動力はタービン入口温度Ttが高いほど大きくなるが、タービン入口温度Ttは部品の耐熱等性等を考慮した許容上限温度Tt_tmaxよりも高くすることはできない。したがって、タービン入口温度Ttが許容上限温度Tt_tmaxに達した場合、タービン入口温度Ttが増加しないように、コンプレッサ流量Fcoを要求スタック流量よりも高くしてタービン流入流量Ftを増加させることでタービン52の回収動力をより増加させることができる。なお、この場合にバイパス弁32を増加させることで、アフタークーラ28への余剰空気の流入が生じる状況において的確にこれを防止することができる。
【0183】
また、本実施形態による燃料電池システム100では、コントローラ20は、燃料電池スタック10に接続される負荷に基づき定められるシステム要求出力(要求出力)と、燃料電池スタック10が出力することが可能である出力可能電力と、に基づいてコンプレッサ流量Fcoを制御する制御部として機能する。
【0184】
これにより、要求出力と出力可能電力に応じて好適にタービン流入流量Ftを調節することができ、タービン52の回収動力をより好適に得ることができる。
【0185】
特に、要求出力に対して出力可能電力がより不足するにつれて、コンプレッサ流量Fcoをより大きくすることによって、燃料電池スタック10の発電電力の不足分をタービン52から回収できる動力により適切に補填することができる。なお、この場合にバイパス弁32を増加させることで、アフタークーラ28への余剰空気の流入が生じる状況において的確にこれを防止することができる。
【0186】
さらに、本実施形態による燃料電池システム100では、アフタークーラ28で交換した熱を、冷却水を介して燃料電池スタック10に伝熱させることが可能である。これにより、例えば、暖機時等の燃料電池スタック10への熱供給が要求される場面において、コンプレッサ50から吐出された高温空気の熱を燃料電池スタック10に供給することができる。これにより、システムのエネルギー効率の向上に資することとなる。
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態における燃料電池システムについて説明する。なお、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0187】
図12は、本実施形態におけるスタック流量目標値及びコンプレッサ流量目標値Fco_tを算出する機能を示すブロック図である。本実施形態は、第1実施形態のように、スタック要求コンプレッサ流量算出ブロックB303に圧力比目標値Pc_t/Pai_dを入力することに代えて、コンプレッサ吐出温度センサ27で検出されるコンプレッサ吐出温度検出値Tc_dを入力する。
【0188】
そして、本実施形態では、スタック要求コンプレッサ流量算出ブロックB303は、入力されたコンプレッサモータへの要求電力Wco及びコンプレッサ吐出温度検出値Tc_dに基づいて、予め定められたマップにより、スタック要求コンプレッサ流量Fco_srを算出する。
【0189】
図13は、コンプレッサ吐出温度に応じたコンプレッサモータへの要求電力Wcoとスタック要求コンプレッサ流量Fco_srの関係を示すマップである。
【0190】
図示のように、コンプレッサモータへの要求電力Wcoが負の値である場合(燃料電池スタック10の発電電力が不足していない場合)には、当該コンプレッサモータへの要求電力Wcoが所定値Wco1に到達するまで、コンプレッサ吐出温度検出値Tc_dの値にかかわらず、スタック要求コンプレッサ流量Fco_srを所定値Fco_sr1まで増加させる。この所定値Fco_sr1は、燃料電池スタック10の要求発電電力に応じて定められるスタック流量に相当する値である。すなわち、このように発電電力が不足していない状況においては、コンプレッサ駆動モータ54を力行モードで作動させるので、燃料電池スタック10の要求発電電力に基づく流量を越えたコンプレッサ流量を設定する必要は無く、燃料電池スタック10の要求発電電力に応じて定められるスタック流量に相当するコンプレッサ流量を設定することを意図している。
【0191】
一方、コンプレッサモータへの要求電力Wcoが正の値である場合(燃料電池スタック10の発電電力が不足している場合)には、コンプレッサ吐出温度検出値Tc_dに応じてスタック要求コンプレッサ流量Fco_srが設定される。
【0192】
先ず、コンプレッサ吐出温度検出値Tc_dを最も小さく設定する場合(低温時)は、コンプレッサモータへの要求電力Wcoの大きさにかかわらず、スタック要求コンプレッサ流量Fco_srが増加させることなく上記所定値Fco_sr1に設定される。このように低温時にスタック要求コンプレッサ流量Fco_srを所定値Fco_sr1以上に増加させないようにしている理由は、低温時はカソード系の圧力損失が大きくタービン52による回収動力が低くなるので、コンプレッサ流量を増やしてタービンガス流入流量を増加させたとしても、タービン52による回収動力の大幅な向上が望めないためである。
【0193】
次に、コンプレッサ吐出温度検出値Tc_dが上記低音時よりも大きい中間値に設定する場合(中温時)は、コンプレッサモータへの要求電力Wcoが所定値Wco2に到達した以降は、スタック要求コンプレッサ流量Fco_srを燃料電池スタック10の要求発電電力に基づく所定値Fco_sr1から所定値Fco_sr2まで増加させる。
【0194】
このように、中温時においてスタック要求コンプレッサ流量Fco_srを燃料電池スタック10の要求発電電力に基づく所定値Fco_sr1より増加させる理由は、発電電力の不足を解消すべく、コンプレッサ駆動モータ54から回生電力を得るように、タービンガス流入流量を増やすためである。しかしながら、中温時は、まだカソード系の圧力損失が大きいため、タービンガス流入流量を大きく増加させても一定以上の回収動力は望めないため、タービン52による回収動力を増加させることできる限度でコンプレッサ流量を増加させるべく、スタック要求コンプレッサ流量Fco_srを所定値Fco_sr2まで増加させている。なお、本実施形態では、後述するように、スタック要求コンプレッサ流量Fco_srの増加に伴い、バイパス弁32の開度を増加させて、燃料電池スタック10により要求される流量以上のカソードガスを、アフタークーラ28に流さないようにする。
【0195】
さらに、コンプレッサ吐出温度検出値Tc_dを最も大きい値に設定する場合(高温時)は、コンプレッサモータへの要求電力Wcoが所定値Wco3に到達する以降に、スタック要求コンプレッサ流量Fco_srを上記所定値Fco_sr1から増加させる。
【0196】
このように、高温時においても、コンプレッサ駆動モータ54から回生電力を得るようにスタック要求コンプレッサ流量Fco_srを燃料電池スタック10の要求発電電力に基づく所定値Fco_sr1より増加させている。そして、高温時においては、カソード系の圧力損失が小さいため、タービンガス流入流量を大きく増加させて、タービン52による回収動力を一定以上に増加させることができる。
【0197】
ここで、高温時においても、スタック要求コンプレッサ流量Fco_srの増加に伴い、バイパス弁32の開度を増加させて、燃料電池スタック10により要求される流量以上のカソードガスを、アフタークーラ28に流さないようにする。
【0198】
なお、本実施形態におけるバイパス弁32の開閉制御は、
図11により説明した第1実施形態におけるバイパス弁32の開度制御と同様である。
【0199】
以上説明した本発明の第2実施形態にかかる燃料電池システム100は、以下の作用効果を奏する。
【0200】
本実施形態によれば、コントローラ20は、コンプレッサ50から吐出される空気の温度であるコンプレッサ吐出温度に基づいてバイパス弁32の開度を制御する制御部として機能する。
【0201】
これにより、燃料電池スタック10の負荷に応じて変化するコンプレッサ吐出温度に合せてバイパス弁32の開度を制御し、タービン流入流量Ftを調節することができる。例えば、システムの高負荷時に相対的に高温となるコンプレッサ吐出温度に合せてバイパス弁32の開度を増加させることで、バイパス弁32の開度の増加タイミングをシステムの高負荷状態により確実に合せることができ、結果として、アフタークーラ28への余剰空気の流入をより確実に低減することができる。
【0202】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0203】
本願は、2016年3月22日に日本国特許庁に出願された特願2016−056453号に基づく優先権を主張し、この出願の全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。