(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【実施例】
【0023】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
図1は、実施例に係る移動型X線装置の概略構成を示した側面図であり、
図2は、実施例に係る移動型X線装置のX線回路の回路図であり、
図3は、
図2との比較に用いられる従来のX線回路の回路図である。本実施例では、X線装置として、院内回診撮影や緊急時の病室撮影、手術室での撮影(侵襲的な検査における透視も含む)に用いられる移動型X線装置を例に採って説明する。ここで、「侵襲的な検査」とは外科に準じた検査を意味する。
【0024】
図1に示すように、本実施例に係る移動型X線装置1は、被検体Mを載置する載置台2(手術台やベッドや天板)とは独立して、X線管3(
図2も参照)およびX線検出器4が移動するように構成されている。X線管3は被検体MにX線を照射し、X線検出器4は被検体Mを透過したX線を検出する。
図1では、X線検出器4はイメージインテンシファイア(I.I)で構成されているが、通常において用いられるX線検出器であれば、フラットパネル型X線検出器(FPD)などに例示されるように特に限定されない。特に、デジタル撮影を行う場合にはFPDが有用である。移動型X線装置1は、この発明におけるX線装置に相当する。
【0025】
この他に、移動型X線装置1は、一端でX線管3を保持し、他端でX線検出器4を保持するCアーム5と、床面に対して水平移動可能に構成された移動式台車6と、X線検出器3で得られたX線画像を出力表示するモニタ(図示省略)と、ユーザなどの操作者が握るハンドスイッチ(図示省略)とを備えている。移動式台車6には、蓄電池7(
図2も参照)とX線回路8(
図2も参照)とを内蔵しており、外部電源であるコンセントC(
図2を参照)に挿入可能なプラグ付きの電源ケーブル9(
図2も参照)を移動式台車6に備えている。
【0026】
Cアーム5は、移動式台車6に保持され当該移動式台車6に対して移動可能に構成されている。Cアーム5は、回転中心軸x方向に湾曲状に形成されている。Cアーム5は、本実施例では、Cアーム5自身に沿って回転中心軸xと直交する軸yの軸心周りに(矢印RA方向に)回転することで、Cアーム5に保持されたX線管3およびX線検出器4も同方向に回転することが可能である。さらに、Cアーム5は回転中心軸xの軸心周りに(矢印RB方向に)回転することで、X線管4およびX線検出器5も同方向に回転することが可能であり、Cアーム5は鉛直軸の軸心周りに(矢印RC方向に)回転(すなわち旋回)することで、X線管4およびX線検出器5も同方向に回転(旋回)することが可能である。
【0027】
具体的に、Cアーム5は、
図1に示すように、支柱11,水平支持部12およびアーム保持部13を介して、移動式台車6に保持されている。支柱11は鉛直軸に沿って上下に昇降移動可能に回転可能で、支柱11に保持されたCアーム5ごとX線管4およびX線検出器5を昇降移動させることができる。水平支持部12は、回転中心軸x方向に平行な水平方向に進退移動可能であり、水平支持部12に保持されたCアーム5ごとX線管4およびX線検出器5を進退移動させることができる。
【0028】
また、水平支持部12に対してアーム保持部13を回転中心軸xの軸心周りに回転可能に保持することで、アーム保持部13に保持されたCアーム5ごとX線管3およびX線検出器4を回転中心軸xの軸心周りに(矢印RA方向に)回転させることができる。アーム保持部13に対してCアーム5を回転中心軸xと直交する軸yの軸心周りに回転可能に保持することで、Cアーム5ごとX線管3およびX線検出器4を軸yの軸心周りに(矢印RB方向に)回転させることができる。支柱11に対して水平保持部12を鉛直軸の軸心周りに保持することで、水平保持部12およびアーム保持部13に保持されたCアーム5ごとX線管3およびX線検出器4を鉛直軸の軸心周りに(矢印RC方向に)回転(旋回)させることができる。
【0029】
また、Cアーム5には、手動操作用のハンドル14を設けており、ユーザなどの操作者が手動操作用のハンドル14を握って、Cアーム5ごとX線管3およびX線検出器4を軸yの軸心周りに(矢印RA方向に)手動で回転させ、Cアーム5ごとX線管3およびX線検出器4を回転中心軸xの軸心周りに(矢印RB方向に)手動で回転させ、Cアーム5ごとX線管4およびX線検出器5を鉛直軸の軸心周りに(矢印RC方向に)手動で回転(旋回)させることができる。また、支柱11を鉛直軸に沿って上下に手動で昇降移動させて、支柱11に保持されたCアーム5ごとX線管4およびX線検出器5を手動で昇降移動させ、水平支持部12を水平方向に手動で進退移動させて、水平支持部12に保持されたCアーム5ごとX線管4およびX線検出器5を手動で進退移動させることができる。
【0030】
なお、これらのX線管3,X線検出器4,Cアーム5,移動式台車6,支柱11,水平支持部12およびアーム保持部13はパワーバランス(重量バランス)が保たれるようにそれぞれが設計されており、これらがどの位置に移動しても重量により軸が傾くことがない。よって、ユーザなどの操作者はこれらを手動で簡単に動かすことができる。
【0031】
移動式台車6の底部には前輪6aおよび後輪6bが設けられている。モータ6Mにより前輪6aを駆動させて、ユーザなどの操作者が移動式台車6を押し引きして後輪6bを転がすことで、床面に対してCアーム5ごとX線管4およびX線検出器5を水平方向に自在に移動させることができる。このように、本実施例に係る移動式台車6は、モータ6Mにより手動をアシスト(支援)するように構成されている。もちろん、X線検出器4,Cアーム5,移動式台車6,支柱11,水平支持部12およびアーム保持部13を含んだ移動型X線装置1の総重量が軽ければ、必ずしもモータにより手動をアシスト(支援)しなくてもよい。なお、モータや駆動軸やピニオン等(いずれも図示省略)を備えて、X線管3,X線検出器4およびCアーム5などの手動をアシスト(支援)するように構成してもよい。
【0032】
このようにCアーム5および移動式台車6が手動で動くことにより、X線管3,X線検出器4の両方が被検体Mに対して手動により動く。また、X線検出器4で検出されたX線に基づいて透視あるいは撮影を行う。撮影を行う場合には、通常の線量でX線管3から照射されて被検体Mを透過したX線をX線検出器4が検出して得られたX線検出信号に対してラグ補正やゲイン補正などの各種の処理を行ってX線画像を出力して、RAM(Random-Access Memory)などで形成された記憶媒体(図示省略)に書き込んで記憶し、適宜必要に応じて、記憶媒体から読み出して、モニタ(図示省略)に出力表示あるいはプリンタやフィルム等(図示省略)に出力印刷する。一方、透視を行う場合には、撮影のときよりも少ない線量でX線管3から連続的に照射されて被検体Mを透過したX線をX線検出器4が検出して得られた各々のX線検出信号に対してラグ補正やゲイン補正などの各種の処理をそれぞれ行って各々のX線画像を逐次に連続的にモニタに出力表示する。このように記憶媒体を介さずにモニタに直接的に出力表示することで、透視で得られた各々のX線画像を動画としてリアルタイムに表示することができる。なお、透視で得られた各々のX線画像を記憶媒体に書き込んで記憶してもよい。
【0033】
図2に示すように、X線回路8(
図1も参照)は、上述した蓄電池7(
図1も参照)の他に、コンバータ付きの充電回路21とトランス22とタイマー23を有した制御回路24とキースイッチ回路25とインバータ付きの高電圧発生回路26とを備えるとともに、上述したX線管3(
図1も参照)を備えている。トランス22は、この発明における接続検出手段に相当し、制御回路24は、この発明における制御手段に相当し、キースイッチ回路25は、この発明における接続分離切替回路に相当し、高電圧発生回路26は、この発明におけるX線用電圧発生手段に相当する。
【0034】
電源ケーブル9(
図1も参照)は、充電回路21およびトランス22に電気的に接続され、複数の回路(図示省略)を介して、キースイッチ回路25は電源ケーブル9に切り替え接続され(
図2の(a)を参照)、制御回路24は電源ケーブル9に切り替え接続される(
図2の(a)を参照)。
図2の(a)では、上述した複数の回路が介在するが、本実施例の特徴に関連した構成でないので、その説明および図示を省略する。
【0035】
また、キースイッチ回路25のスイッチSW2によって、電源ケーブル9を介してコンセントCと高電圧発生回路26とを接続または分離するように切り替える。また、スイッチSW2によって、蓄電池7と高電圧発生回路26とを接続または分離するように切り替える。スイッチSW2によって蓄電池7と高電圧発生回路26とが電気的に接続されているときは、複数の回路(図示省略)を介して、制御回路24はスイッチSW2の下流に切り替え接続されることで蓄電池7に切り替え接続される(
図2の(b)を参照)。
図2の(a)と同様に
図2の(b)では、上述した複数の回路が介在するが、本実施例の特徴に関連した構成でないので、その説明および図示を省略する。
【0036】
充電回路21は、直列接続された蓄電池7に電気的に接続され、複数の回路(図示省略)を介して、キースイッチ回路25は蓄電池7に切り替え接続される(
図2の(c)を参照)。
図2の(a),
図2の(b)と同様に
図2の(c)では、上述した複数の回路が介在するが、本実施例の特徴に関連した構成でないので、その説明および図示を省略する。また、キースイッチ回路25のスイッチSW2によって、蓄電池7と高電圧発生回路26とを接続または分離するように切り替える。
【0037】
トランス22の二次回路は、タイマー23に電気的に接続される。制御回路24は、電源ケーブル9を介してコンセントC(
図2の(a)を参照)、または蓄電池7(
図2の(b)を参照)のいずれかに切り替え接続される。キースイッチ回路25は、電源ケーブル9を介してコンセントC(
図2の(a)を参照)、または蓄電池7(
図2の(c)を参照)のいずれかに切り替え接続される。制御回路24は充電回路21やキースイッチ回路25や高電圧発生回路26やX線管3に電気的に接続される。
図2では図示を省略するが、制御回路24は、X線検出器4(
図1を参照)やモータ6M(
図1を参照)などにも電気的に接続される。制御回路24は、中央演算処理装置(CPU)などを搭載した回路で構成されている。
【0038】
高電圧発生回路26はX線管3に電気的に接続される。高電圧発生回路26はインバータを有しており、実際には、高電圧発生回路26とX線管3との間にはトランス(図示省略)が介在しており、高電圧発生回路26とX線管3とは磁気的に結合(相互誘導)されている。
【0039】
本実施例との比較のために、従来のX線回路の回路図を
図3に示す。
図3に示すように、従来のX線回路108は、蓄電池107とコンバータ付きの充電回路121と制御回路124とキースイッチ回路125とインバータ付きの高電圧発生回路126とを備えるとともに、X線管103を備えている。本実施例と相違するのは、従来では、本実施例のようなトランス22(
図2を参照)を備えない点と、キースイッチ回路125は蓄電池107のみに接続されている点である。
【0040】
また、本実施例ではスイッチSW2によって蓄電池7と高電圧発生回路26とを接続または分離するように切り替える構成であったのに対して、従来では、スイッチSW2がオフのときに蓄電池107と高電圧発生回路126との接続を切り離して、スイッチSW2がオンのときに蓄電池107と高電圧発生回路126とを電気的に接続している。つまり、本実施例ではスイッチSW2が双投式(2つの回路を切り替えるスイッチ)であるのに対して、従来のスイッチSW2は単投式(1つの回路をオンまたはオフに切り替えるスイッチ)である。なお、双投式は単投式としても使用することができる。また、従来でもタイマー(
図3では図示省略)を制御回路124は有しているが、本実施例のように装置が操作されていない時間や、本実施例のようなトランス22などに代表される接続検出手段による接続状態の時間を、従来のタイマーは監視しない。
【0041】
本実施例の説明に戻ると、電源ケーブル9のプラグをコンセントCに差し込むことで、装置本体とコンセントCとを電気的に接続する。充電回路21は、上述したようにコンバータ(整流器)を有しており、装置本体がコンセントCに電気的に接続されているときは、コンセントCから供給されるAC電源から、コンバータにより交流から直流に変換して、蓄電池7の充電を制御する。
【0042】
装置本体がコンセントCに電気的に接続されているときは、電源ケーブル9を介してコンセントC(
図2の(a)を参照)に制御回路24が接続されるように切り替えることで、コンセントCから制御回路24に給電をする。同様に、装置本体がコンセントCに電気的に接続されているときは、電源ケーブル9を介してコンセントC(
図2の(a)を参照)にキースイッチ回路25が接続されるように切り替えることで、コンセントCからキースイッチ回路25に給電をする。
【0043】
一方、装置本体がコンセントCに電気的に接続されていないときは、キースイッチ回路25のスイッチSW2が蓄電池7と高電圧発生回路26とを接続する(
図2の(b)を参照)ように切り替えることで、蓄電池7から制御回路24に給電をする。同様に、装置本体がコンセントCに電気的に接続されていないときは、蓄電池7(
図2の(c)を参照)にキースイッチ回路25が接続されるように切り替えることで、蓄電池7からキースイッチ回路25に給電をする。
【0044】
トランス22は電気ケーブル9の電位差を検出して、検出結果(二次電流または二次電圧)をトランス22の二次回路からタイマー23に送り込む。装置本体がコンセントCに電気的に接続されているときは、電気ケーブル9の電圧線と接地線との電位差をトランス22が検出することにより、装置本体がコンセントCに電気的に接続されていることを検出する。逆に、装置本体がコンセントCに電気的に接続されていないときは、電気ケーブル9の電圧線と接地線との電位差が生じないので、トランス22の二次回路に電流・電圧が生じず、装置本体がコンセントCに電気的に接続されていないとして検出する。
【0045】
装置が操作されていない時(例えば待機時)には、制御指令に関する信号が制御回路24に入力されない。制御指令に関する信号が制御回路24に入力されない時間をt
1とし、トランス22の検出によるコンセントCと装置本体との接続状態の時間をt
2とすると、本実施例のタイマー23は、当該時間t
1,t
2をそれぞれ監視する。当該時間t
1,t
2がそれぞれ設定された所定時間を超えたときに、制御回路24はキースイッチ回路25を介してスイッチ回路25のスイッチSW2によって蓄電池7と高電圧発生回路26との接続を切り離して制御して、コンセントCによる蓄電池7の充電を開始して制御する。
【0046】
すなわち、タイマー23によって監視された装置が操作されていない時間(制御指令に関する信号が制御回路24に入力されない時間t
1)が、設定された所定時間を超え、かつタイマー23によって監視されたトランス22による接続状態の時間t
2が、設定された所定時間を超えたときに、制御回路24は、蓄電池7と高電圧発生回路26との接続を切り離して制御して、コンセントCによる蓄電池7の充電を開始して制御する。なお、各々の所定時間についてはユーザが設定可能である。
【0047】
逆に、タイマー23によって監視された装置が操作されていない時間t
1が、設定された所定時間以下、またはタイマー23によって監視されたトランス22による接続状態の時間t
2が、設定された所定時間以下のときに、コンセントCによる蓄電池7の充電を少なくとも行わない。
【0048】
次に、各々の制御について、上述した
図2とともに、
図4〜
図6を参照して説明する。
図4は、装置が操作されていない時間をタイマーが監視する一連のフローチャートであり、
図5は、トランスによる接続状態の時間をタイマーが監視する一連のフローチャートであり、
図6は、タイマーによって監視された各時間がそれぞれ設定された所定時間を超えたときの一連のフローチャートである。
【0049】
(ステップS1)時間t
1のリセット
図4のフローチャートについて説明する。
図4のフローチャートでは、制御指令に関する信号が制御回路24に入力されなくなった直後を起点とする。先ず、装置が操作されていない時間t
1を“0”にリセットする。
【0050】
(ステップS2)時間t
1>所定時間?
ステップS1で“0”にリセットされた時点を起点として、タイマー23は、制御指令に関する信号が制御回路24に入力されない時間t
1を監視する。制御指令に関する信号が制御回路24に入力されない時間t
1、すなわちタイマー23によって監視された装置が操作されていない時間t
1が、設定された所定時間を超えた(時間t
1>所定時間)か?否かを制御回路24が判断する。時間t
1が、設定された所定時間以下(
図4のフローチャートでは「No」で表記)の場合には、ステップS3に進む。時間t
1が、設定された所定時間を超えた(
図4のフローチャートでは「Yes」で表記)場合には、
図4のフローチャートに示すように、当該条件(時間t
1>所定時間)をAとするとAに進む。
【0051】
(ステップS3)信号入力?
ステップS2で、時間t
1が、設定された所定時間以下であると制御回路24が判断した場合には、制御指令に関する信号が制御回路24に入力された(信号入力)か?否かを制御回路24が判断する。ステップS1で“0”にリセットされた時点を起点とした所定時間内に、制御指令に関する信号が制御回路24に入力された(
図4のフローチャートでは「Yes」で表記)場合には、ステップS1に戻って装置が操作されていない時間t
1を“0”にリセットする。ステップS1で“0”にリセットされた時点を起点とした所定時間内に、制御指令に関する信号が制御回路24に入力されていない(
図4のフローチャートでは「No」で表記)の場合には、ステップS2に戻って当該条件(時間t
1>所定時間)を満たすか?否かを判断する。
【0052】
(ステップT1)接続有り?
続いて、
図5のフローチャートについて説明する。先ず、装置本体がコンセントCに電気的に接続されたか(接続有り)?否かをトランス22が判断する。装置本体がコンセントCに電気的に接続されていない(
図5のフローチャートでは「No」で表記)場合には、ステップT1に戻って、装置本体がコンセントCに電気的に接続されたのをトランス22が検出するまでループして待機する。装置本体がコンセントCに電気的に接続された(
図5のフローチャートでは「Yes」で表記)場合には、ステップT2に進む。
【0053】
(ステップT2)時間t
2のリセット
ステップT1で装置本体がコンセントCに電気的に接続された直後を起点として、トランス22による接続状態の時間t
2を“0”にリセットする。
【0054】
(ステップT3)時間t
2>所定時間?
ステップT2で“0”にリセットされた時点(すなわちステップT1で装置本体がコンセントCに電気的に接続された直後)を起点として、タイマー23は、トランス22による接続状態の時間t
2が、設定された所定時間を超えた(時間t
2>所定時間)か?否かを制御回路24が判断する。時間t
2が、設定された所定時間以下(
図5のフローチャートでは「No」で表記)の場合には、ステップT4に進む。時間t
2が、設定された所定時間を超えた(
図5のフローチャートでは「Yes」で表記)場合には、
図5のフローチャートに示すように、当該条件(時間t
2>所定時間)をBとするとBに進む。
【0055】
(ステップT4)接続有り?
ステップT3で、時間t
2が、設定された所定時間以下であると制御回路24が判断した場合には、装置本体がコンセントCに電気的に接続されている状態を保っているか(接続有り)?否かをトランス22が判断する。ステップT1と相違するのは、ステップT2で“0”にリセットされた時点(すなわちステップT1で装置本体がコンセントCに電気的に接続された直後)を起点として、時間t
2をタイマー23が監視している点である。ステップT2で“0”にリセットされた時点を起点とした所定時間内に、装置本体がコンセントCから分離された(
図5のフローチャートでは「No」で表記)場合には、ステップT1に戻って、装置本体がコンセントCに電気的に接続されたのをトランス22が検出するまでループして待機する。ステップT2で“0”にリセットされた時点を起点とした所定時間内に、装置本体がコンセントCに電気的に接続されている状態を保っている(
図5のフローチャートでは「Yes」で表記)場合には、ステップT3に戻って当該条件(時間t
2>所定時間)を満たすか?否かを判断する。
【0056】
(ステップU1)A∧B
続いて、
図6のフローチャートについて説明する。時間t
1>所定時間(A)かつ時間t
2>所定時間(B)を満たす(
図6のフローチャートでは「A∧B」で表記)、すなわち、タイマー23によって監視された装置が操作されていない時間t
1が、設定された所定時間を超え、かつタイマー23によって監視されたトランス22による接続状態の時間t
2が、設定された所定時間を超えたときに、ステップU2に進む。
【0057】
(ステップU2)蓄電池の充電開始
ステップU1で、時間t
1>所定時間(A)かつ時間t
2>所定時間(B)を満たす場合、制御回路24は、蓄電池7と高電圧発生回路26との接続を切り離して制御して、コンセントCによる蓄電池7の充電を開始して制御する。
【0058】
本実施例に係る移動型X線装置1によれば、X線を発生するための電圧を発生するX線用電圧発生手段(本実施例では高電圧発生回路26)や、蓄電池7の他に、時間を監視するタイマー23と、外部電源(本実施例ではコンセントC)と装置本体との接続の有無を検出する接続検出手段(本実施例ではトランス22)と、下記のように制御する制御手段(本実施例では制御回路24)とを備えている。すなわち、タイマー23によって監視された装置が操作されていない時間が、設定された所定時間を超え、かつタイマー23によって監視された接続検出手段(トランス22)による接続状態の時間が、設定された所定時間を超えたときに、蓄電池7とX線用電圧発生手段(高電圧発生回路26)との接続を切り離して制御して、外部電源(コンセントC)による蓄電池7の充電を開始して制御する。つまり、装置が操作されていない時間が、設定された所定時間を超えることは、装置を使用していないことを意味し、接続検出手段(トランス22)による接続状態の時間が、設定された所定時間を超えることは、当該所定時間を超えて装置本体が外部電源(コンセントC)に接続し続けていることを意味する。したがって、装置本体を外部電源(コンセントC)に接続するだけで、タイマー23による結果に基づいて、蓄電池7とX線用電圧発生手段(高電圧発生回路26)との接続を切り離し蓄電池7の充電を開始する。その結果、装置の起動・停止に依存せずに、外部電源(コンセントC)に接続するだけで蓄電池7の充電を自動的に行うことができる。また、外部電源(コンセントC)に接続するだけで蓄電池7の充電を自動的に行うので、ユーザが装置の蓄電池7の充電を忘れてしまう可能性が低くなるという効果をも奏する。
【0059】
また、FPDなどのデジタル撮影の普及により、手術室などで装置を起動させたまま待機させ、術後などに撮影を即時に行いたいというユーザのニーズがある。その場合、装置を起動したまま壁コンセントに接続し待機させている。この待機期間中に装置本体をコンセントCに接続するだけで、充電が必要な否かを装置(ここでは制御回路24)が自動で判断し蓄電池7の充電を行う。したがって、蓄電池7の充電により蓄電池7の残容量を装置が使用可能な状態に保つので、タイムロスがなく撮影あるいは透視することができる。また、本実施例の移動型X線装置1に使用される鉛蓄電池は、充電を自動的に行うことで蓄電池を常に満充電に近い状態で保持することにより、蓄電池の寿命が長くなるという効果をも奏する。
【0060】
また、本実施例では、移動型X線装置1は、X線用電圧発生手段(高電圧発生回路26)での消費電力よりも低い電力を消費する回路または機器を備えている。ここで、X線用電圧発生手段(高電圧発生回路26)での消費電力よりも低い電力を消費する回路/機器とは、「課題を解決するための手段」の欄でも述べたように、短時間での大電流による消費電力を必要としない、すなわち蓄電池7の高率放電性能を必要としない回路/機器を意味する。当該回路/当該機器としては、上述したような接続分離切替回路(本実施例ではキースイッチ回路25),上述した制御手段(制御回路24),充電を司る充電回路21,FPD,パーソナルコンピューターのモニタなどがある。
【0061】
これらの回路または機器へ、装置本体が外部電源(コンセントC)に電気的に接続されているときは当該外部電源(コンセントC)から、装置本体が外部電源(コンセントC)に電気的に接続されていないときは蓄電池7から、電力が供給されるのが好ましい。これらの回路/機器は蓄電池7の高率放電性能を必要としない回路/機器であるので、装置本体が外部電源(コンセントC)に電気的に接続されているときに充電が自動的に行われ、蓄電池7の充電と当該回路/当該機器への電力供給とが同時に行われても、蓄電池7の急激な電圧降下が発生せずに蓄電池7への充電制御が正しく行われる。一方、装置本体が外部電源(コンセントC)に電気的に接続されていないときは蓄電池7から、当該回路/当該機器へ電力が供給される。このように、外部電源(コンセントC)による装置本体の接続状態に関係なく、当該回路/当該機器へ電力を供給して、当該回路/機器による処理を行うことができる。
【0062】
本実施例では、上述したように、これらの回路/機器へ、装置本体が外部電源(コンセントC)に電気的に接続されているときは当該外部電源(コンセントC)から、装置本体が外部電源(コンセントC)に電気的に接続されていないときは蓄電池から、電力が供給されていたが、本実施例のような給電(電力の供給)でない場合においても、蓄電池7とX線用電圧発生手段(高電圧発生回路26)とを接続または分離するように切り替える接続分離切替回路を備えてもよい。本実施例では、接続分離切替回路は、外部からスイッチで操作可能に構成された回路であり、当該回路として、キースイッチ回路25を例に採って説明すると、キースイッチ回路25は、
図7に示すように機能する。
図7は、キースイッチ回路のオン・オフのモードである。
【0063】
「課題を解決するための手段」の欄でも述べたように、キースイッチ回路25のオン・オフのモードとしては3通りである(
図7の「○」を参照)。ユーザがスイッチ(SW1)をオンにキー操作すると、対象となる2つの電気回路/機器間のスイッチ(SW2)をオンに切り替えて、2つの電気回路/機器間を短絡して電気的に接続するモードがある。逆に、ユーザがスイッチ(SW1)をオンにキー操作すると、対象となる2つの電気回路/機器間のスイッチ(SW2)をオフに切り替えて、2つの電気回路/機器間を開放して分離するモードがあり、接続による待機電力を抑制することを目的としたECOモードとして機能する。通常、キースイッチ回路は装置の電源スイッチに適用され、ユーザがスイッチ(SW1)をオフにキー操作することは、装置の電源スイッチをオフにすることを意味する。したがって、ユーザがスイッチ(SW1)をオフにキー操作すると、対象となる2つの電気回路/機器間のスイッチ(SW2)は自動的にオフに切り替わる。このように、ユーザがスイッチ(SW1)をオフにキー操作すると、装置の電源スイッチがオフになるので、ユーザがスイッチ(SW1)をオフにキー操作すると、対象となる2つの電気回路/機器間のスイッチ(SW2)がオンに切り替わるモードはあり得ない(
図7の「×」を参照)。
【0064】
このキースイッチ回路25のような外部からスイッチで操作可能に構成された接続分離切替回路を、本実施例のように蓄電池7とX線用電圧発生手段(高電圧発生回路26)との間の接続・分離に適用すると、
図7に示すようになる。スイッチ(SW1)をオンに操作すると、蓄電池7とX線用電圧発生手段(高電圧発生回路26)との間のスイッチ(SW2)をオンに切り替えて電気的に接続するモードでは、蓄電池7からX線用電圧発生手段(高電圧発生回路26)に給電して装置を使用するときに用いられる(
図7の「使用モード」を参照)。スイッチ(SW1)をオンに操作すると、蓄電池7とX線用電圧発生手段(高電圧発生回路26)との間のスイッチ(SW2)をオフに切り替えて分離するモードでは、上述したように装置の待機時などのECOモードとして用いられる(
図7の「ECOモード」を参照)。スイッチ(SW1)をオフに操作すると、蓄電池7とX線用電圧発生手段(高電圧発生回路26)との間のスイッチ(SW2)が自動的にオフに切り替わるモードでは、蓄電池7の充電に専ら用いられる(
図7の「充電モード」を参照)。
【0065】
従来のキースイッチ回路のような外部からスイッチで操作可能に構成された接続分離切替回路は、メインとなる制御手段(例えば制御回路)とは異なり、蓄電池に接続され、蓄電池から接続分離切替回路に給電をしていた(従来の
図3の(c)を参照)。この従来の構成の場合には、例えば上述したECOモードで蓄電池を充電すると、直列接続された蓄電池からの大電流が、蓄電池から分離されたX線用電圧発生手段(高電圧発生回路)に流れ込まずに、蓄電池に接続された接続分離切替回路(キースイッチ回路)に流れ込む。接続分離切替回路(キースイッチ回路)は、上述したように蓄電池の高率放電性能を必要としない回路である。その結果、大電流による高周波電流が接続分離切替回路(キースイッチ回路)に流れ込み、ノイズの原因にもなり得る。
【0066】
そこで、装置本体が外部電源(コンセントC)に電気的に接続されているときは、
図2に示すように、接続分離切替回路(キースイッチ回路25)は当該外部電源(コンセントC)に接続され、当該外部電源(コンセントC)から当該接続分離切替回路(キースイッチ回路25)に電力が供給され、装置本体が外部電源(コンセントC)に電気的に接続されていないときは、接続分離切替回路(キースイッチ回路25)は蓄電池7に接続され、当該蓄電池7から当該接続分離切替回路(キースイッチ回路25)に電力が供給されるのが好ましい。この場合には、上述したECOモードで蓄電池7を充電したとしても、蓄電池7の充電時には装置本体が外部電源(コンセントC)に電気的に接続されているので、当該外部電源(コンセントC)から当該接続分離切替回路(キースイッチ回路25)に電力が供給(給電)され、蓄電池7からの大電流が接続分離切替回路(キースイッチ回路25)に流れ込むのを防止することができる。
【0067】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0068】
(1)上述した実施例では、院内回診撮影や緊急時の病室撮影、手術室での撮影に用いられる移動型X線装置を例に採って説明したが、X線を発生するための電圧を発生するX線用電圧発生手段(実施例では高電圧発生回路26)を備えたX線装置であれば、特に限定されない。例えば、据え付け型のX線装置であってもよい。ただし、通常時に壁コンセントなどの外部電源が装置の周囲に設置されておらず、蓄電池からの電力を用いて撮影あるいは透視を行うことが前提であるので、移動型X線装置に適用するのが有用である。
【0069】
(2)上述した実施例では、外部電源はコンセントであったが、発電機の機能を有した外部電源であってもよい。
【0070】
(3)上述した実施例では、外部電源(実施例ではコンセントC)と装置本体との接続の有無を検出する接続検出手段として、
図2に示すようなトランス22を用いたが、接続の有無を検出する接続検出手段は、必ずしもトランスに限定されない。例えば、
図8に示すように、高電圧発生回路(
図8では図示省略)などを内蔵した基板回路31を備えるとともに、基板回路31に挿入可能に構成されたコネクタ32と、接続検出回路33とを備えてもよい。基板回路31はコネクタ32を介して電源ケーブル9およびジャンパ線Jに電気的に接続され、ジャンパ線Jは接続検出回路33に電気的に接続されている。装置本体とコンセントCを電気的に接続するためには、電源ケーブル9のプラグをコンセントCに差し込み、かつコネクタ32を基板回路31に差し込む。これによって、ジャンパ線Jも基板回路31に電気的に接続されるので、接続検出回路33がジャンパ線Jの電位を検出することで、装置本体がコンセントCに電気的に接続されていることを検出する。
【0071】
(4)上述した実施例や上述した変形例(3)では、電位を検出することで、外部電源(実施例や変形例(3)ではコンセントC)と装置本体との接続の有無を検出したが、電源ケーブルに流れる電流の有無を検出することで、外部電源(コンセントC)と装置本体との接続の有無を検出してもよい。例えば、
図9に示すように電流検出回路34を備えてもよい。電流検出回路34は、電源ケーブル9に流れる電流の有無を検出する。装置本体とコンセントCを電気的に接続するためには、電源ケーブル9のプラグをコンセントCに差し込む。これによって、電源ケーブル9に流れる電流を電流検出回路34が検出することで、装置本体がコンセントCに電気的に接続されていることを検出する。
【0072】
(5)上述した実施例では、制御手段は、CPUなどを搭載した回路で構成された制御回路であったが、プログラムデータに応じて内部の使用するハードウェア回路(例えば論理回路)が変更可能なプログラマブルデバイス(例えばFPGA(Field Programmable Gate Array))であってもよい。
【0073】
(6)上述した実施例では、制御回路24(
図2を参照)はタイマー23(
図2を参照)を有したが、制御回路24などに代表される制御手段がタイマーを必ずしも内蔵する必要はない。制御手段とタイマーとを別々に備えてもよい。
【0074】
(7)上述した実施例では、X線用電圧発生手段(実施例では高電圧発生回路26)での消費電力よりも低い電力を消費する回路または機器へ、装置本体が外部電源(実施例ではコンセントC)に電気的に接続されているときは当該外部電源(コンセントC)から、装置本体が外部電源(コンセントC)に電気的に接続されていないときは蓄電池7から、電力が供給されていたが、必ずしもこの給電(電力の供給)に限定されない。装置本体が外部電源(コンセントC)に電気的に接続されていても、蓄電池の充電時には蓄電池から当該回路/当該機器へ電力を供給してもよい。また、蓄電池の残容量に応じて蓄電池・外部電源(コンセントC)から当該回路/当該機器への給電を切り替えてもよい。例えば、蓄電池の充電時でなく、かつ蓄電池の残容量が少ないときには外部電源(コンセントC)から当該回路/当該機器へ電力を供給して、蓄電池の残容量が多いときあるいは蓄電池の充電時には蓄電池から当該回路/当該機器へ電力を供給するように切り替える。
【0075】
(8)上述した実施例では、接続分離切替回路は、外部からスイッチで操作可能に構成された回路(実施例ではキースイッチ回路25)であったが、必ずしも外部からスイッチで操作可能に構成された回路である必要はない。また、外部からスイッチで操作可能に構成された回路は、必ずしもキー操作に同期してスイッチで操作するキースイッチ回路に限定されない。例えば、スイッチの押下に同期してスイッチで操作する回路であってもよい。
【0076】
(9)蓄電池の自動充電時に、過充電防止のために、大電流で充電を開始する前に微小な電流を流し蓄電池の電圧変化を検出(チェック)することで蓄電池の残容量を検出(チェック)して、残容量が一定量以下のときに充電を行うように制御してもよい。