特許第6573029号(P6573029)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573029
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】繊維強化複合材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/58 20060101AFI20190902BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20190902BHJP
   B29C 43/12 20060101ALI20190902BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20190902BHJP
   B29C 70/44 20060101ALI20190902BHJP
   B29K 101/10 20060101ALN20190902BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20190902BHJP
【FI】
   B29C43/58
   C08J5/24CFC
   B29C43/12
   B29C70/16
   B29C70/44
   B29K101:10
   B29K105:08
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-519973(P2018-519973)
(86)(22)【出願日】2018年4月5日
(86)【国際出願番号】JP2018014539
(87)【国際公開番号】WO2018207510
(87)【国際公開日】20181115
【審査請求日】2019年4月2日
(31)【優先権主張番号】特願2017-93711(P2017-93711)
(32)【優先日】2017年5月10日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐野健太郎
(72)【発明者】
【氏名】森 亜弓
(72)【発明者】
【氏名】黒田 泰樹
(72)【発明者】
【氏名】釜江 俊也
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−138622(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/040602(WO,A1)
【文献】 特表2016−504472(JP,A)
【文献】 特開2015−3938(JP,A)
【文献】 特開平1−275623(JP,A)
【文献】 特表2013−543035(JP,A)
【文献】 特開2002−187936(JP,A)
【文献】 特開2014−145018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/58
B29C 43/12
B29C 70/16
B29C 70/44
C08J 5/24
B29K 101/10
B29K 105/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂組成物が強化繊維に含浸されてなるプリプレグを成形型内に配置し、一次硬化として0.2〜2.5MPa、130〜200℃で加圧加熱した後、二次硬化として210〜270℃で10分以上さらに加熱する繊維強化複合材料の製造方法であって、
エポキシ樹脂組成物が、下記構成要素[A]〜[C]を含むエポキシ樹脂組成物であり、
構成要素[A]が、エポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂100質量部中80質量部以上含まれ、
エポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂のエポキシ基数に対する構成要素[B]中の活性水素基が0.2〜0.6であり、
エポキシ樹脂組成物が下記条件(2)を満たす、
繊維強化複合材料の製造方法。
[A]芳香環を有する3官能以上のエポキシ樹脂
[B]芳香族アミン硬化剤
[C]硬化促進剤
(2)40℃における樹脂粘度(η40)と最低粘度(ηmin)が下記関係式を満たす。
2.5≦Log(η40)−Log(ηmin)≦3.5
【請求項2】
該プリプレグの内側にチューブまたは袋状の内圧付与体を配置し、一次硬化の際に内圧付与体に高圧の気体を導入して圧力を付与する、請求項1に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項3】
エポキシ樹脂組成物が下記条件(1)を満たす、請求項1または2に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
(1)180℃で30分間硬化させた後、さらに240℃で30分間硬化させた硬化物のガラス転移温度が220℃以上である。
【請求項4】
エポキシ樹脂組成物が下記条件(3)を満たす、請求項1〜のいずれかに記載の繊維強化複合材料の製造方法。
(3)昇温速度1.5℃/分で粘度測定したときの最低粘度が90〜120℃の範囲内にあり、その値が4.0Pa・s以下である。
【請求項5】
構成要素[A]が、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ノボラック型エポキシ樹脂、および、一般式(i)で表されるエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
【化1】
【請求項6】
構成要素[B]が、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンおよび3,3’−ジアミノジフェニルスルホンからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1または5に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項7】
強化繊維が炭素繊維である、請求項1〜のいずれかに記載の繊維強化複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツ用途および一般産業用途に適した加圧成形による繊維強化複合材料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維やアラミド繊維などを強化繊維として用いた繊維強化複合材料は、その高い比強度・比弾性率を利用して、航空機や自動車などの構造材料や、テニスやバトミントンラケット、ゴルフシャフト、釣り竿、自転車などのスポーツ、一般産業用途などに広く利用されている。
【0003】
このような用途において、ゴルフシャフト、釣竿、自転車、ラケット等の複雑な形状の中空成形品を成形する方法としては、内圧成形法がよく用いられる。内圧成形法とは、熱可塑性樹脂製のチューブ等の内圧付与体にプリプレグを捲回したプリフォームを金型中にセットし、次いで内圧付与体に高圧の気体を導入して圧力を付与すると同時に金型を加熱せしめ、成形する方法である。また、筐体や自動車部品等の比較的単純な形状の成形品を成形する方法としては、プレス成形法がよく用いられる。
【0004】
近年、航空機のタービンケース、自動車の外板部材、自転車のリム材等は、繊維強化複合材料化が進行しつつあり、これらの用途では高い耐熱性が求められている。例えば、自転車のリムは、制動時のブレーキシューとの摩擦により発熱し、リムの温度が極めて高温になるため、従来よりも耐熱性の高い繊維強化複合材料が求められている。
【0005】
一般的に、耐熱性の高い繊維強化複合材料を得るためには、高い成形温度で繊維強化複合材料を成形する必要がある。また、通常、熱硬化性樹脂は高温になると粘度が低下する。上記の内圧成形法やプレス成形法において、繊維強化複合材料の耐熱性を上げるためプレス成形における硬化温度を高くした場合、硬化温度における熱硬化性樹脂の粘度が低下するため、熱硬化性樹脂が不必要に流れすぎ強化繊維の乱れによる表面外観の悪化や、成形品表面の強化繊維の浮き出し、樹脂かすれ等の外観品位の問題が生じる。また、プレス成形における硬化温度を高くした場合、昇温および降温に時間がかかるため、一回の成形における金型占有時間が長くなり、生産性が悪化するという問題も生じる。
【0006】
内圧成形やプレス成形を用いた繊維強化複合材料の製造方法として、特許文献1には、増粘粒子を配合した樹脂組成物を用い、成形時における樹脂フローを制御する製造方法が開示されている。特許文献2には、加圧圧力と粘度の関係および最低粘度を規定し、表面外観良好な繊維強化複合材料の製造方法が開示されている。特許文献3には、加圧圧力3MPa以上におけるプレス成形法において、特定のゲルタイムを有する樹脂組成物を用い、樹脂フローを適正化する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2015−080035号公報
【特許文献2】特開2012−196921号公報
【特許文献3】特開2004−331748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1および2に記載された製造方法では、外観品位に優れる繊維強化複合材料が得られるものの、耐熱性は不十分であった。また、特許文献3に記載された製造方法では、加圧圧力3MPa以上に適するものであったが、より低圧で成形する場合に適用するには十分な性能を有するものとは言えなかった。さらに、特許文献3に記載された製造方法でも、得られる繊維強化複合材料の耐熱性は不十分であった。
【0009】
本発明は、かかる従来技術の欠点を改良し、高い耐熱性を有し、外観品位に優れるスポーツ用途または一般産業用途などの各種用途に好適な繊維強化複合材料を得ることができる、繊維強化複合材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の製造条件を満たすことで、耐熱性と外観品位に優れる繊維強化複合材料を製造可能なことを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明は、以下の構成からなる。
【0011】
エポキシ樹脂組成物が強化繊維に含浸されてなるプリプレグを成形型内に配置し、一次硬化として0.2〜2.5MPa、130〜200℃で加圧加熱した後、二次硬化として210〜270℃で10分以上さらに加熱する、繊維強化複合材料の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の繊維強化複合材料の製造方法によれば、高い耐熱性を有し、外観品位に優れる繊維強化複合材料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の繊維強化複合材料の製造方法は、エポキシ樹脂組成物が強化繊維に含浸されてなるプリプレグを成形型内に配置し、一次硬化として0.2〜2.5MPa、130〜200℃で加圧加熱した後、二次硬化として210〜270℃で10分以上さらに加熱することを特徴とする。
【0014】
本発明の繊維強化複合材料の製造方法において、一次硬化時の圧力は、0.2〜2.5MPaであることが必要であり、0.3〜2.0MPaであることが好ましく、0.4〜1.5MPaであることがより好ましい。圧力が0.2MPa以上であれば、樹脂の適度な流動性が得られ、ピットの発生などの外観不良を防ぐことができる。また、プリプレグが金型に十分に密着するため、良好な外観の繊維強化複合材料を製造することができる。圧力が2.5MPa以下であれば、樹脂を必要以上に流動させることがないため、繊維の乱れや樹脂かすれの発生を防ぐことができ、得られる繊維強化複合材料の外観不良が生じにくい。また、金型に必要以上の負荷をかけることがないため、金型の変形等が生じにくい。さらに、内圧成形法に用いられるナイロンやシリコンゴムのような、可撓性がある内圧バッグが破壊されにくい。
【0015】
また、本発明の繊維強化複合材料の製造方法において、一次硬化時の温度は、130〜200℃である。一次硬化温度が130℃以上であれば、本発明に用いられるエポキシ樹脂組成物が十分に硬化反応を起こすことができ、高い生産性で繊維強化複合材料を得ることができる。また、一次硬化温度が200℃以下であれば、過剰な樹脂フローによる強化繊維の乱れを抑制することができ、外観品位に優れる繊維強化複合材料が得られる。さらに、金型の占有時間も短くすることができ、高い生産性で繊維強化複合材料を得ることができる。生産性と外観品位の観点から、一次硬化温度は、150〜190℃とすることが好ましく、より好ましくは160〜185℃である。また、一次硬化時間は15〜120分とすることが好ましい。一次硬化時間を15分以上とすることで本発明に用いられるエポキシ樹脂組成物が十分に硬化反応を起こすことができ、120分以下とすることで金型の占有時間を短くすることができ、高い生産性で繊維強化複合材料を得ることができる。
【0016】
本発明の繊維強化複合材料の製造方法では、一次硬化した後、二次硬化として210〜270℃で10分以上さらに加熱する必要がある。この加熱工程(二次硬化)を行うことで、外観品位を悪化させることなく、耐熱性に優れる繊維強化複合材料を得ることができる。加熱温度が210℃以上であれば、耐熱性に優れる繊維強化複合材料が得られる。加熱温度が270℃以下であれば、エポキシ樹脂組成物が熱により分解することなく、耐熱性に優れ、強度にも優れる繊維強化複合材料が得られる。また、加熱温度は耐熱性の観点から220〜255℃とすることがより好ましく、230〜250℃とすることがさらに好ましい。また、二次硬化の時間が10分以上であれば、耐熱性に優れる繊維強化複合材料を得ることができ、より好ましくは20分以上である。
【0017】
本発明に用いられるエポキシ樹脂組成物は、180℃で30分間硬化した後、240℃で30分間、さらに硬化した硬化物のガラス転移温度が220℃以上であることが好ましい。硬化物のガラス転移温度が220℃以上であるエポキシ樹脂組成物を用い、二次硬化を実施することで、耐熱性に優れる繊維強化複合材料が得られる。
【0018】
ここで、ガラス転移温度は、動的粘弾性測定装置(DMAQ800:ティー・エイ・インスツルメンツ社製)を用い、40℃〜270℃まで昇温速度5℃/分で昇温し、周波数1.0Hzの曲げモードで貯蔵弾性率の測定を行ったときの貯蔵弾性率のオンセット温度である。
【0019】
本発明に用いられるエポキシ樹脂組成物は、40℃における樹脂粘度(η40)と最低粘度(ηmin)が、
2.5≦Log(η40)−Log(ηmin)≦3.5
を満たすことが好ましい。ここで、η40およびηminは、動的粘弾性装置ARES−2KFRTN1−FCO−STD(ティー・エイ・インスツルメント社製)を用い、上下部測定冶具に直径40mmの平板のパラレルプレートを用い、上部と下部の冶具間距離が1mmとなるように該エポキシ樹脂組成物をセット後、ねじりモード(測定周波数:0.5Hz)で、測定温度範囲40〜160℃を昇温速度1.5℃/分で測定することで得られる値である。
【0020】
η40およびηminが上記関係式を満たすことで、0.2〜2.5MPaで加圧し一次硬化するときのエポキシ樹脂組成物の樹脂フロー量が適切な範囲となり、外観品位に優れる繊維強化複合材料が得られやすくなる。Log(η40)−Log(ηmin)が2.5以上であれば、適度な樹脂フローが発生し、得られる繊維強化複合材料表面のピットを抑制することができる。Log(η40)−Log(ηmin)が3.5以下であれば、過剰な樹脂フローによる強化繊維の乱れや樹脂かすれを抑制することができる。Log(η40)−Log(ηmin)の値は、より好ましくは2.8以上3.2以下である。
【0021】
本発明に用いられるエポキシ樹脂組成物は、昇温速度1.5℃/分で粘度測定したときの最低粘度が90〜120℃の範囲内にあり、その値が4.0Pa・s以下であることが好ましい。最低粘度が90〜120℃にあり、最低粘度が4.0Pa・s以下とすることで樹脂フロー量が最適になり、より外観品位に優れる繊維強化複合材料が得られる。
【0022】
本発明に用いられるエポキシ樹脂組成物は、下記構成要素[A]〜[C]を含むエポキシ樹脂組成物であることが好ましい。
[A]芳香環を有する3官能以上のエポキシ樹脂
[B]芳香族アミン硬化剤
[C]硬化促進剤。
【0023】
本発明におけるエポキシ樹脂組成物の構成要素[A]である芳香環を有する3官能以上のエポキシ樹脂は、得られる繊維強化複合材料の耐熱性を高めるため、好ましく配合される。かかるエポキシ樹脂としては、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型やザイロック型のエポキシ樹脂、N,N,O−トリグリシジル−m−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−4−アミノ−3−メチルフェノール、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール、テトラグリシジルキシレンジアミンなどのグリシジルアミン型エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0024】
本発明におけるエポキシ樹脂組成物の構成要素[B]である芳香族アミン硬化剤は、得られる繊維強化複合材料の耐熱性を高めるため、好ましく配合される。かかる芳香族アミン硬化剤としては、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミンが挙げられる。これらの中でも、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホンが、耐熱性に優れるため好適に用いられる。
【0025】
本発明におけるエポキシ樹脂組成物の構成要素[C]である硬化促進剤を配合することで、低温での反応性が向上し、過剰な樹脂フローを抑制するため、外観品位に優れる繊維強化複合材料が得られやすくなる。かかる硬化促進剤としては、例えば、芳香族ウレアやイミダゾール化合物が挙げられ、耐熱性の観点からイミダゾール化合物が好適に用いられる。芳香族ウレアとしては、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア、3−(4−クロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア、フェニルジメチルウレア、トルエンビスジメチルウレアなどが挙げられる。また、芳香族ウレアの市販品としては、DCMU99(保土ヶ谷化学工業(株)製)、“Omicure(登録商標)”24(ピィ・ティ・アイ・ジャパン(株)製)などを使用することができる。
【0026】
イミダゾール化合物としては、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−エチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾールなどが挙げられる。イミダゾール化合物は単独で用いても、複数種類を組み合わせて用いても良い。また、イミダゾール化合物は、イミダゾール化合物とビスフェノール型エポキシの反応物であることが好ましい。イミダゾール化合物とビスフェノール型エポキシの反応物を配合したエポキシ樹脂組成物は、低温での反応性と室温付近での安定性とのバランスに優れる。かかるイミダゾール化合物とビスフェノール型エポキシの反応物の市販品としては、“キュアダクト(登録商標)”P−0505(四国化成工業(株))や、“JERキュア(登録商標)”P200H50(三菱ケミカル(株))が挙げられる。
【0027】
構成要素[A]の芳香環を有する3官能以上のエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂100質量部中80質量部以上含まれることが好ましい。構成要素[A]の配合量を80質量部以上とすることで耐熱性に優れる繊維強化複合材料が得られやすくなり、より好ましくは90質量部以上配合することである。
【0028】
構成要素[A]の芳香環を有する3官能以上のエポキシ樹脂は、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ノボラック型エポキシ樹脂または一般式(i)で表されるエポキシ樹脂のいずれか1つを含むことが、耐熱性に優れる繊維強化複合材料が得られやすくなるため好ましい。これらの中でも、一般式(i)で表されるエポキシ樹脂が、耐熱性に優れ、さらには樹脂のフロー特性にも優れるため、外観品位が良好な繊維強化複合材料が得られやすくなるため、好適に用いられる。
【0029】
【化1】
【0030】
テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンの市販品としては、“スミエポキシ(登録商標)”ELM434(住友化学(株)製)、“ARALDITE(登録商標)”MY721(ハンツマン・ジャパン(株)製)が挙げられる。ノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、“JER(登録商標)”157S70(三菱ケミカル(株)製)、“JER(登録商標)”1032H60(三菱ケミカル(株)製)、NC7300L(日本化薬(株)製)が挙げられる。一般式(i)で表されるエポキシ樹脂の市販品としては、“JER(登録商標)”1031S(三菱ケミカル(株)製)が挙げられる。
【0031】
なお、本発明におけるエポキシ樹脂組成物には、構成要素[A]以外のエポキシ樹脂を配合することができる。構成要素[A]以外のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂、ジグリシジルレゾルシノール、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、N,N−ジグリシジルアニリンが挙げられる。エポキシ樹脂は、これらを単独で用いても、複数種を組み合わせても良い。
【0032】
本発明におけるエポキシ樹脂組成物の構成要素[B]の配合量は、エポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂中のエポキシ基数に対する構成要素[B]中の活性水素基が0.2〜0.6となる量であることが好ましい。活性水素基をこの範囲とすることで、二次硬化による耐熱性の向上効果が大きく、耐熱性に優れる繊維強化複合材料が得られやすくなるため好ましい。
【0033】
本発明におけるエポキシ樹脂組成物には、本発明の効果を失わない範囲において、熱可塑性樹脂を配合することができる。熱可塑性樹脂としては、エポキシ樹脂に可溶な熱可塑性樹脂や、ゴム粒子および熱可塑性樹脂粒子等の有機粒子等を配合することができる。
【0034】
エポキシ樹脂に可溶な熱可塑性樹脂としては、ポリビニルホルマールやポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール、フェノキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリビニルピロリドン、ポリスルホンを挙げることができる。
【0035】
ゴム粒子としては、架橋ゴム粒子、および架橋ゴム粒子の表面に異種ポリマーをグラフト重合したコアシェルゴム粒子を挙げることができる。
【0036】
本発明に用いられる強化繊維は特に限定されるものではなく、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維などが用いられる。これらの繊維を2種以上混合して用いても構わない。この中で、軽量かつ高剛性な繊維強化複合材料が得られる炭素繊維を用いることが好ましい。
【0037】
本発明に用いられるエポキシ樹脂組成物の調製には、例えばニーダー、プラネタリーミキサー、3本ロールおよび2軸押出機といった機械を用いて混練しても良いし、均一な混練が可能であれば、ビーカーとスパチュラなどを用い、手で混ぜても良い。
【0038】
本発明に用いられるプリプレグは、エポキシ樹脂組成物を強化繊維基材に含浸させて得ることができる。含浸させる方法としては、ホットメルト法(ドライ法)などを挙げることができる。
【0039】
ホットメルト法は、加熱により低粘度化したエポキシ樹脂組成物を直接強化繊維に含浸させる方法である。具体的には、離型紙などの上にエポキシ樹脂組成物をコーティングしたフィルムを作製しておき、次いで強化繊維を引き揃えたシート、もしくは強化繊維の織物(クロス)の両側または片側から前記フィルムを重ね、加熱加圧することにより強化繊維に樹脂を含浸させる方法である。
【0040】
本発明の繊維強化複合材料の製造方法としては、プレス成形法または内圧成形法が好ましく用いられる。内圧成形法は、プリプレグの内側にチューブまたは袋状の内圧付与体を配置し、内圧付与体に高圧の気体を導入して圧力を付与することで加圧加熱し一次硬化する成形方法である。
【0041】
本発明により製造された繊維強化複合材料は、スポーツ用途、一般産業用途および航空宇宙用途に好ましく用いられる。より具体的には、スポーツ用途では、ゴルフシャフト、釣り竿、テニスやバドミントンのラケット、ホッケーなどのスティック、およびスキーポールなどに好ましく用いられる。さらに一般産業用途では、自動車、二輪車、自転車、船舶および鉄道車両などの移動体の構造材や内装材、ドライブシャフト、板バネ、風車ブレード、圧力容器、フライホイール、製紙用ローラ、屋根材、ケーブル、および補修補強材料などに好ましく用いられる。
【実施例】
【0042】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
【0043】
特に断りのない限り、各種物性の測定は温度23℃・相対湿度50%の環境下で行った。
【0044】
各繊維強化複合材料を成形するために用いた材料は以下に示す通りである。
【0045】
<使用した材料>
構成要素[A]:芳香環を有する3官能以上のエポキシ樹脂
・“スミエポキシ(登録商標)”ELM434(ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、エポキシ当量:120、住友化学(株)製)
・“jER(商標登録)”1031S(テトラフェノール型エポキシ(一般式(i)で表される化合物)、エポキシ当量:200、三菱ケミカル(株)製)。
【0046】
構成要素[A]以外のエポキシ樹脂
・“jER(商標登録)”828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:189、三菱ケミカル(株)製)
・“TEPIC(登録商標)”−S(イソシアヌル酸型エポキシ樹脂、エポキシ当量:100、日産化学工業(株)製)。
【0047】
構成要素[B]:芳香族アミン硬化剤
・セイカキュア−S(4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、和歌山精化(株)製)。
【0048】
構成要素[C]:硬化促進剤
・“キュアゾール(登録商標)”2P4MHZ(2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、四国化成工業(株)製)
・“キュアダクト(登録商標)”P−0505(ビスフェノールAジグリシジルエーテルとイミダゾールのアダクト、四国化成工業(株)製)。
【0049】
その他の成分
・“スミカエクセル(登録商標)”PES5003P(ポリエーテルスルホン、住友化学(株)製)。
【0050】
<エポキシ樹脂組成物の調製方法>
ニーダー中に、構成要素[A]のエポキシ樹脂、構成要素[A]以外のエポキシ樹脂およびその他の成分を投入した。混練しながら、150℃まで昇温した後、同温度で1時間保持することで、透明な粘稠液を得た。混練を続けながら60℃まで降温した後、構成要素[B]および構成要素[C]を投入し、同温度で30分間混練することで、エポキシ樹脂組成物を得た。表1〜3に各実施例および比較例のエポキシ樹脂組成物の組成を示した。
【0051】
<エポキシ樹脂硬化物の作製方法>
上記<エポキシ樹脂組成物の調製方法>に従い調製したエポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、2mm厚の“テフロン(登録商標)”製スペーサーにより厚み2mmになるように設定したモールド中で、180℃で30分間硬化させ、厚さ2mmの板状のエポキシ樹脂硬化物を得た。その後、得られたエポキシ樹脂硬化物を240℃に加熱したオーブンで30分間加熱した。
【0052】
<プリプレグの作製方法>
上記<エポキシ樹脂組成物の調製方法>に従い調製したエポキシ樹脂組成物を、フィルムコーターを用いて離型紙上に塗布し、目付31g/mの樹脂フィルムを作製した。作製した樹脂フィルムをプリプレグ化装置にセットし、一方向に引き揃えたシート状にした炭素繊維“トレカ(登録商標)”T700S(東レ(株)製、目付125g/m)の両面から加熱加圧含浸しプリプレグを得た。プリプレグの樹脂含有率は67質量%であった。
【0053】
<繊維強化複合材料の作製方法1>
上記<プリプレグの作製方法>で得られた一方向プリプレグの繊維方向を揃え、19枚積層したプリプレグ積層体を得た。金型の下型上に前記プリプレグ積層体を配置し、上型を降ろして金型を閉めた。金型に所定の圧力をかけて、5℃/分の昇温速度で所定の温度まで昇温し60分保持し、プリプレグ積層体を一次硬化させた。次に、金型から成形品を取り出した後、所定の温度に加熱した熱風オーブンで二次硬化を実施し、平板状の繊維強化複合材料を得た。表1〜3に各実施例および比較例の硬化条件を示した。
【0054】
<繊維強化複合材料の作製方法2>
マンドレルにチューブ状の内圧付与体を差し込み、上記<プリプレグの作製方法>で得られた一方向プリプレグ7枚を、炭素繊維の配列方向が[0°/+45°/−45°/+45°/−45°/0°/0°]となるよう、チューブに巻き付けた。その後、チューブからマンドレルを抜き取りプリフォームを得た。金型の下型上に前記プリフォームを配置し、上型を降ろして金型を閉めた。チューブに空気圧を注入することで所定の圧力をかけ、5℃/分の昇温速度で所定の温度まで昇温し60分保持し、プリフォームを一次硬化させた。次に、金型から成形品を取り出した後、所定の温度に加熱した熱風オーブンで二次硬化を実施し、筒状の繊維強化複合材料を得た。表1〜3に各実施例および比較例の硬化条件を示した。
【0055】
<物性評価方法>
(1)エポキシ樹脂組成物の粘度特性
上記<エポキシ樹脂組成物の調製方法>で得られたエポキシ樹脂組成物の粘度は、動的粘弾性装置ARES−2KFRTN1−FCO−STD(ティー・エイ・インスツルメント社製)を用い、上下部測定冶具に直径40mmの平板のパラレルプレートを用い、上部と下部の冶具間距離が1mmとなるように該エポキシ樹脂組成物をセット後、ねじりモード(測定周波数:0.5Hz)で、測定温度範囲40〜140℃を昇温速度1.5℃/分で測定した。
【0056】
(2)エポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度
上記<エポキシ樹脂硬化物の作製方法>に従い作製したエポキシ樹脂硬化物から、幅10mm、長さ40mm、厚さ2mmの試験片を切り出し、動的粘弾性測定装置(DMA−Q800:TAインスツルメント社製)を用い、変形モードを片持ち曲げ、スパン間を18mm、歪みを20μm、周波数を1Hzとし、40℃から200℃まで5℃/分の等速昇温条件で測定した。得られた貯蔵弾性率−温度曲線における貯蔵弾性率のオンセット温度をガラス転移温度(Tg)とした。
【0057】
(3)繊維強化複合材料の外観品位評価
上記<繊維強化複合材料の作製方法1>または<繊維強化複合材料の作製方法2>に従い作製した繊維強化複合材料の外観品位を目視にてピット、繊維乱れ、樹脂かすれなどの欠陥の有無を評価した。欠陥のないものを“A”、欠陥が少し見られるが問題の無いレベルのものを“B”、欠陥が多く外観不良のものを“C”と判定した。
【0058】
(実施例1)
構成要素[A]として“スミエポキシ(登録商標)”ELM434を50質量部、“jER(商標登録)”1031Sを25質量部、その他のエポキシ樹脂として“jER(商標登録)”828を25質量部、構成要素[B]としてセイカキュア−Sを16.7質量部、構成要素[C]として“キュアゾール(登録商標)”P−0505を1.0質量部用い、上記<エポキシ樹脂組成物の調製方法>に従ってエポキシ樹脂組成物を調製した。
【0059】
このエポキシ樹脂組成物について動的粘弾性測定をしたところ、Log(η40)−Log(ηmin)は2.9であり、樹脂のフロー特性は良好であった。
【0060】
得られたエポキシ樹脂組成物から、<エポキシ樹脂硬化物の作製方法>に従って、エポキシ樹脂硬化物を作製した。このエポキシ樹脂硬化物についてガラス転移温度(Tg)を測定したところ、Tgは237℃であり耐熱性は良好であった。また、得られたエポキシ樹脂組成物から上記<繊維強化複合材料の作製方法1>に従って、平板状の炭素繊維強化複合材料(CFRP)を作製した。外観を評価したところ、繊維の乱れや樹脂かすれ、ピットは認められず、結果はAであった。
【0061】
(実施例2〜11、14、15)
樹脂組成および硬化条件をそれぞれ表1または表2に示したように変更した以外は、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂硬化物、平板状のCFRPを作製した。
【0062】
各実施例について、エポキシ樹脂組成物のフロー特性、エポキシ樹脂硬化物およびCFRPのTg、外観評価は表1または表2に記載の通りであり、いずれも良好であった。
【0063】
また、実施例5、7、9については、上記<繊維強化複合材料の作製方法2>に従って筒状のCFRPを作製した。外観を評価したところ、繊維の乱れや樹脂かすれ、ピットは認められず、結果はAであった。
【0064】
(実施例12)
樹脂組成を表2に示したように変更した以外は、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂硬化物、平板状のCFRPを作製した。エポキシ樹脂硬化物のTgは232℃であり、耐熱性は良好であった。エポキシ樹脂組成物の動的粘弾性測定の結果、Log(η40)−Log(ηmin)は3.6であり高かった。その結果、CFRPの外観評価では若干の繊維の乱れが見られたが問題ないレベルであった。
【0065】
また、上記<繊維強化複合材料の作製方法2>に従って筒状のCFRPを作製した。外観を評価したところ、若干の繊維の乱れが見られたが問題ないレベルであった。
【0066】
(実施例13)
樹脂組成を表2に示したように変更した以外は、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂硬化物、平板状のCFRPを作製した。エポキシ樹脂硬化物のTgは224℃であり、耐熱性は良好であった。エポキシ樹脂組成物の動的粘弾性測定の結果、Log(η40)−Log(ηmin)は2.4であり低かった。その結果、CFRPの外観評価では若干のピットが見られたが問題ないレベルであった。
【0067】
また、上記<繊維強化複合材料の作製方法2>に従って筒状のCFRPを作製した。外観を評価したところ、若干のピットが見られたが問題ないレベルであった。
【0068】
(比較例1)
実施例1と同じ樹脂組成、方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、表3に記載の硬化条件でエポキシ樹脂硬化物、平板状のCFRPを作製した。物性評価結果は表3に併せて示した。エポキシ樹脂硬化物のTgは良好であった。しかし、CFRP作製時の加圧圧力が0.05MPaと低く、成形時の樹脂フローが少なかったため、得られたCFRPの外観評価ではピットが多数見られ、外観品位は不良であった。
【0069】
(比較例2)
実施例1と同じ樹脂組成、方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、表3に記載の硬化条件でエポキシ樹脂硬化物、平板状のCFRPを作製した。物性評価結果は表3に併せて示した。エポキシ樹脂硬化物のTgは良好であった。しかし、CFRP作製時の加圧圧力が4.0MPaと高く、成形時の樹脂フローが多かったため、得られたCFRPの外観評価では繊維の乱れ、樹脂かすれが多数見られ、外観品位は不良であった。
【0070】
また、上記<繊維強化複合材料の作製方法2>に従って筒状のCFRPを作製した。外観を評価したところ、繊維の乱れ、樹脂かすれが多数見られ、外観品位は不良であった。
【0071】
(比較例3)
実施例1と同じ樹脂組成、方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、表3に記載の硬化条件でエポキシ樹脂硬化物、平板状のCFRPを作製した。物性評価結果は表3に併せて示した。エポキシ樹脂組成物のフロー特性、CFRPの外観は良好であった。しかし、二次硬化温度が200℃と低かったため、CFRPのTgが低く、耐熱性が不十分であった。
【0072】
(比較例4)
実施例1と同じ樹脂組成、方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、表3に記載の硬化条件でエポキシ樹脂硬化物、平板状のCFRPを作製した。物性評価結果は表3に併せて示した。エポキシ樹脂組成物のフロー特性、CFRPの外観は良好であった。しかし、二次硬化温度が280℃と高かったため、CFRPのTgが低く、耐熱性が不十分であった。
【0073】
(比較例5)
実施例1と同じ樹脂組成、方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、表3に記載の硬化条件でエポキシ樹脂硬化物、平板状のCFRPを作製した。物性評価結果は表3に併せて示した。エポキシ樹脂組成物のフロー特性、CFRPの外観は良好であった。しかし、二次硬化時間が5分と短かったため、CFRPのTgが低く、耐熱性が不十分であった。
【0074】
(比較例6)
実施例1と同じ樹脂組成、方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、表3に記載の硬化条件でエポキシ樹脂硬化物、平板状のCFRPを作製した。物性評価結果は表3に併せて示した。エポキシ樹脂組成物のフロー特性、CFRPの外観は良好であった。しかし、二次硬化を実施しなかったため、CFRPのTgが低く、耐熱性が不十分であった。
【0075】
(比較例7)
実施例1と同じ樹脂組成、方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、表3に記載の硬化条件でエポキシ樹脂硬化物、平板状のCFRPを作製した。物性評価結果は表3に併せて示した。CFRPのTgは良好であった。しかし、CFRP作製時に加圧しなかったため、成形時の樹脂フローが少なく、得られたCFRPの外観評価ではピットが多数見られ、外観品位は不良であった。
【0076】
(比較例8)
実施例1と同じ樹脂組成、方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、表3に記載の硬化条件でエポキシ樹脂硬化物、平板状のCFRPを作製した。物性評価結果は表3に併せて示した。CFRPのTgは良好であった。しかし、一次硬化温度が220℃と高かったため、成形時の樹脂フローが多くなり、得られたCFRPの外観評価では繊維の乱れ、樹脂かすれが多数見られ、外観品位は不良であった。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の繊維強化複合材料の製造方法によれば、高い耐熱性および外観品位に優れる繊維強化複合材料を得ることができる。本発明により製造された繊維強化複合材料は、スポーツ用途および一般産業用途に好ましく用いられる。