【実施例】
【0042】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
【0043】
特に断りのない限り、各種物性の測定は温度23℃・相対湿度50%の環境下で行った。
【0044】
各繊維強化複合材料を成形するために用いた材料は以下に示す通りである。
【0045】
<使用した材料>
構成要素[A]:芳香環を有する3官能以上のエポキシ樹脂
・“スミエポキシ(登録商標)”ELM434(ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、エポキシ当量:120、住友化学(株)製)
・“jER(商標登録)”1031S(テトラフェノール型エポキシ(一般式(i)で表される化合物)、エポキシ当量:200、三菱ケミカル(株)製)。
【0046】
構成要素[A]以外のエポキシ樹脂
・“jER(商標登録)”828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:189、三菱ケミカル(株)製)
・“TEPIC(登録商標)”−S(イソシアヌル酸型エポキシ樹脂、エポキシ当量:100、日産化学工業(株)製)。
【0047】
構成要素[B]:芳香族アミン硬化剤
・セイカキュア−S(4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、和歌山精化(株)製)。
【0048】
構成要素[C]:硬化促進剤
・“キュアゾール(登録商標)”2P4MHZ(2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、四国化成工業(株)製)
・“キュアダクト(登録商標)”P−0505(ビスフェノールAジグリシジルエーテルとイミダゾールのアダクト、四国化成工業(株)製)。
【0049】
その他の成分
・“スミカエクセル(登録商標)”PES5003P(ポリエーテルスルホン、住友化学(株)製)。
【0050】
<エポキシ樹脂組成物の調製方法>
ニーダー中に、構成要素[A]のエポキシ樹脂、構成要素[A]以外のエポキシ樹脂およびその他の成分を投入した。混練しながら、150℃まで昇温した後、同温度で1時間保持することで、透明な粘稠液を得た。混練を続けながら60℃まで降温した後、構成要素[B]および構成要素[C]を投入し、同温度で30分間混練することで、エポキシ樹脂組成物を得た。表1〜3に各実施例および比較例のエポキシ樹脂組成物の組成を示した。
【0051】
<エポキシ樹脂硬化物の作製方法>
上記<エポキシ樹脂組成物の調製方法>に従い調製したエポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、2mm厚の“テフロン(登録商標)”製スペーサーにより厚み2mmになるように設定したモールド中で、180℃で30分間硬化させ、厚さ2mmの板状のエポキシ樹脂硬化物を得た。その後、得られたエポキシ樹脂硬化物を240℃に加熱したオーブンで30分間加熱した。
【0052】
<プリプレグの作製方法>
上記<エポキシ樹脂組成物の調製方法>に従い調製したエポキシ樹脂組成物を、フィルムコーターを用いて離型紙上に塗布し、目付31g/m
2の樹脂フィルムを作製した。作製した樹脂フィルムをプリプレグ化装置にセットし、一方向に引き揃えたシート状にした炭素繊維“トレカ(登録商標)”T700S(東レ(株)製、目付125g/m
2)の両面から加熱加圧含浸しプリプレグを得た。プリプレグの樹脂含有率は67質量%であった。
【0053】
<繊維強化複合材料の作製方法1>
上記<プリプレグの作製方法>で得られた一方向プリプレグの繊維方向を揃え、19枚積層したプリプレグ積層体を得た。金型の下型上に前記プリプレグ積層体を配置し、上型を降ろして金型を閉めた。金型に所定の圧力をかけて、5℃/分の昇温速度で所定の温度まで昇温し60分保持し、プリプレグ積層体を一次硬化させた。次に、金型から成形品を取り出した後、所定の温度に加熱した熱風オーブンで二次硬化を実施し、平板状の繊維強化複合材料を得た。表1〜3に各実施例および比較例の硬化条件を示した。
【0054】
<繊維強化複合材料の作製方法2>
マンドレルにチューブ状の内圧付与体を差し込み、上記<プリプレグの作製方法>で得られた一方向プリプレグ7枚を、炭素繊維の配列方向が[0°/+45°/−45°/+45°/−45°/0°/0°]となるよう、チューブに巻き付けた。その後、チューブからマンドレルを抜き取りプリフォームを得た。金型の下型上に前記プリフォームを配置し、上型を降ろして金型を閉めた。チューブに空気圧を注入することで所定の圧力をかけ、5℃/分の昇温速度で所定の温度まで昇温し60分保持し、プリフォームを一次硬化させた。次に、金型から成形品を取り出した後、所定の温度に加熱した熱風オーブンで二次硬化を実施し、筒状の繊維強化複合材料を得た。表1〜3に各実施例および比較例の硬化条件を示した。
【0055】
<物性評価方法>
(1)エポキシ樹脂組成物の粘度特性
上記<エポキシ樹脂組成物の調製方法>で得られたエポキシ樹脂組成物の粘度は、動的粘弾性装置ARES−2KFRTN1−FCO−STD(ティー・エイ・インスツルメント社製)を用い、上下部測定冶具に直径40mmの平板のパラレルプレートを用い、上部と下部の冶具間距離が1mmとなるように該エポキシ樹脂組成物をセット後、ねじりモード(測定周波数:0.5Hz)で、測定温度範囲40〜140℃を昇温速度1.5℃/分で測定した。
【0056】
(2)エポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度
上記<エポキシ樹脂硬化物の作製方法>に従い作製したエポキシ樹脂硬化物から、幅10mm、長さ40mm、厚さ2mmの試験片を切り出し、動的粘弾性測定装置(DMA−Q800:TAインスツルメント社製)を用い、変形モードを片持ち曲げ、スパン間を18mm、歪みを20μm、周波数を1Hzとし、40℃から200℃まで5℃/分の等速昇温条件で測定した。得られた貯蔵弾性率−温度曲線における貯蔵弾性率のオンセット温度をガラス転移温度(Tg)とした。
【0057】
(3)繊維強化複合材料の外観品位評価
上記<繊維強化複合材料の作製方法1>または<繊維強化複合材料の作製方法2>に従い作製した繊維強化複合材料の外観品位を目視にてピット、繊維乱れ、樹脂かすれなどの欠陥の有無を評価した。欠陥のないものを“A”、欠陥が少し見られるが問題の無いレベルのものを“B”、欠陥が多く外観不良のものを“C”と判定した。
【0058】
(実施例1)
構成要素[A]として“スミエポキシ(登録商標)”ELM434を50質量部、“jER(商標登録)”1031Sを25質量部、その他のエポキシ樹脂として“jER(商標登録)”828を25質量部、構成要素[B]としてセイカキュア−Sを16.7質量部、構成要素[C]として“キュアゾール(登録商標)”P−0505を1.0質量部用い、上記<エポキシ樹脂組成物の調製方法>に従ってエポキシ樹脂組成物を調製した。
【0059】
このエポキシ樹脂組成物について動的粘弾性測定をしたところ、Log(η40)−Log(ηmin)は2.9であり、樹脂のフロー特性は良好であった。
【0060】
得られたエポキシ樹脂組成物から、<エポキシ樹脂硬化物の作製方法>に従って、エポキシ樹脂硬化物を作製した。このエポキシ樹脂硬化物についてガラス転移温度(Tg)を測定したところ、Tgは237℃であり耐熱性は良好であった。また、得られたエポキシ樹脂組成物から上記<繊維強化複合材料の作製方法1>に従って、平板状の炭素繊維強化複合材料(CFRP)を作製した。外観を評価したところ、繊維の乱れや樹脂かすれ、ピットは認められず、結果はAであった。
【0061】
(実施例2〜11、14、15)
樹脂組成および硬化条件をそれぞれ表1または表2に示したように変更した以外は、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂硬化物、平板状のCFRPを作製した。
【0062】
各実施例について、エポキシ樹脂組成物のフロー特性、エポキシ樹脂硬化物およびCFRPのTg、外観評価は表1または表2に記載の通りであり、いずれも良好であった。
【0063】
また、実施例5、7、9については、上記<繊維強化複合材料の作製方法2>に従って筒状のCFRPを作製した。外観を評価したところ、繊維の乱れや樹脂かすれ、ピットは認められず、結果はAであった。
【0064】
(実施例12)
樹脂組成を表2に示したように変更した以外は、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂硬化物、平板状のCFRPを作製した。エポキシ樹脂硬化物のTgは232℃であり、耐熱性は良好であった。エポキシ樹脂組成物の動的粘弾性測定の結果、Log(η40)−Log(ηmin)は3.6であり高かった。その結果、CFRPの外観評価では若干の繊維の乱れが見られたが問題ないレベルであった。
【0065】
また、上記<繊維強化複合材料の作製方法2>に従って筒状のCFRPを作製した。外観を評価したところ、若干の繊維の乱れが見られたが問題ないレベルであった。
【0066】
(実施例13)
樹脂組成を表2に示したように変更した以外は、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂硬化物、平板状のCFRPを作製した。エポキシ樹脂硬化物のTgは224℃であり、耐熱性は良好であった。エポキシ樹脂組成物の動的粘弾性測定の結果、Log(η40)−Log(ηmin)は2.4であり低かった。その結果、CFRPの外観評価では若干のピットが見られたが問題ないレベルであった。
【0067】
また、上記<繊維強化複合材料の作製方法2>に従って筒状のCFRPを作製した。外観を評価したところ、若干のピットが見られたが問題ないレベルであった。
【0068】
(比較例1)
実施例1と同じ樹脂組成、方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、表3に記載の硬化条件でエポキシ樹脂硬化物、平板状のCFRPを作製した。物性評価結果は表3に併せて示した。エポキシ樹脂硬化物のTgは良好であった。しかし、CFRP作製時の加圧圧力が0.05MPaと低く、成形時の樹脂フローが少なかったため、得られたCFRPの外観評価ではピットが多数見られ、外観品位は不良であった。
【0069】
(比較例2)
実施例1と同じ樹脂組成、方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、表3に記載の硬化条件でエポキシ樹脂硬化物、平板状のCFRPを作製した。物性評価結果は表3に併せて示した。エポキシ樹脂硬化物のTgは良好であった。しかし、CFRP作製時の加圧圧力が4.0MPaと高く、成形時の樹脂フローが多かったため、得られたCFRPの外観評価では繊維の乱れ、樹脂かすれが多数見られ、外観品位は不良であった。
【0070】
また、上記<繊維強化複合材料の作製方法2>に従って筒状のCFRPを作製した。外観を評価したところ、繊維の乱れ、樹脂かすれが多数見られ、外観品位は不良であった。
【0071】
(比較例3)
実施例1と同じ樹脂組成、方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、表3に記載の硬化条件でエポキシ樹脂硬化物、平板状のCFRPを作製した。物性評価結果は表3に併せて示した。エポキシ樹脂組成物のフロー特性、CFRPの外観は良好であった。しかし、二次硬化温度が200℃と低かったため、CFRPのTgが低く、耐熱性が不十分であった。
【0072】
(比較例4)
実施例1と同じ樹脂組成、方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、表3に記載の硬化条件でエポキシ樹脂硬化物、平板状のCFRPを作製した。物性評価結果は表3に併せて示した。エポキシ樹脂組成物のフロー特性、CFRPの外観は良好であった。しかし、二次硬化温度が280℃と高かったため、CFRPのTgが低く、耐熱性が不十分であった。
【0073】
(比較例5)
実施例1と同じ樹脂組成、方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、表3に記載の硬化条件でエポキシ樹脂硬化物、平板状のCFRPを作製した。物性評価結果は表3に併せて示した。エポキシ樹脂組成物のフロー特性、CFRPの外観は良好であった。しかし、二次硬化時間が5分と短かったため、CFRPのTgが低く、耐熱性が不十分であった。
【0074】
(比較例6)
実施例1と同じ樹脂組成、方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、表3に記載の硬化条件でエポキシ樹脂硬化物、平板状のCFRPを作製した。物性評価結果は表3に併せて示した。エポキシ樹脂組成物のフロー特性、CFRPの外観は良好であった。しかし、二次硬化を実施しなかったため、CFRPのTgが低く、耐熱性が不十分であった。
【0075】
(比較例7)
実施例1と同じ樹脂組成、方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、表3に記載の硬化条件でエポキシ樹脂硬化物、平板状のCFRPを作製した。物性評価結果は表3に併せて示した。CFRPのTgは良好であった。しかし、CFRP作製時に加圧しなかったため、成形時の樹脂フローが少なく、得られたCFRPの外観評価ではピットが多数見られ、外観品位は不良であった。
【0076】
(比較例8)
実施例1と同じ樹脂組成、方法でエポキシ樹脂組成物を作製し、表3に記載の硬化条件でエポキシ樹脂硬化物、平板状のCFRPを作製した。物性評価結果は表3に併せて示した。CFRPのTgは良好であった。しかし、一次硬化温度が220℃と高かったため、成形時の樹脂フローが多くなり、得られたCFRPの外観評価では繊維の乱れ、樹脂かすれが多数見られ、外観品位は不良であった。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】