(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記外側ケースの上記開口面となる側面に取り付けられて、当該外側ケースの上記開口面と上記内側ケースとの間を覆う枠状のカバーをさらに備えてなる、請求項3に記載のリアクトル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の構成では、リアクトルの端子となるコイルの引出線をポッティング材を介して冷却することで、リアクトルの端子に接続された他部品へ端子を介して伝達される熱を抑制する作用は得られるものの、リアクトルの端子に接続されていない他の部品へコイルやコアから空気を介してあるいは放射により伝わる熱を低減することはできない。特に、コイルやコアは冷却器と接する面以外は露出しているので、他部品へ伝わる熱を遮断することができない。
【0007】
特許文献2の構成では、金属製の冷却管がケースの中を通して配置されているが、コイルと冷却管との間の絶縁距離の確保やリアクトル性能を満たす上で冷却管の位置が制約されるため、冷却管を含めたケースの小型化が困難である。また、冷却管から離れた部位の熱の回収は十分に行えず、全体的に冷却することができない。そのため、相対的に高温となっている部位から他部品へ熱が伝わる懸念がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の一つの態様のリアクトルは、
一つの側面が開口面をなす箱状の内側ケースと、
上記内側ケースの上記開口面以外の面の外側を囲み、該内側ケースとの間に冷媒流路となる隙間を構成するとともに、冷媒入口と冷媒出口とを備えた外側ケースと、
上記開口面を通して上記内側ケースの中に配置され、両端の端子が上記開口面に位置するコイルと、
上記コイルが上記端子を残して埋まるように上記内側ケースの中に充填された磁性粉末混合樹脂からなるコアと、
を備えて構成されている。
【0009】
このような構成では、冷媒入口から流入した冷媒は、端子が位置する開口面を除いた全ての面を囲む冷媒流路を通して流れる。これにより、コイルならびにコアの周囲が冷媒流路で囲まれた形となり、コイルならびにコアが効果的に冷却される。特に、磁性粉末混合樹脂からなるコアが内側ケースの内壁面に密着しており、該内側ケースを介して冷媒に確実に熱が伝達されるので、効果的な熱の回収がなされる。また、外側ケースの外側の表面温度は、冷媒流路によって実質的にコイルから断熱されることから、端子が位置する開口面を除くいずれの面においても低く抑制される。そのため、隣接して配置される他の部品への熱的影響が少なくなる。
【0010】
また他の一つの態様では、
一つの側面が開口面をなす箱状の内側ケースと、
上記内側ケースの上記開口面以外の面の外側を囲み、該内側ケースとの間に冷媒流路となる隙間を構成するとともに、冷媒入口と冷媒出口とを備えた外側ケースと、
上記開口面を通して上記内側ケースの中に配置され、両端の端子が上記開口面に位置するコイルおよびコアを含むリアクトルアッセンブリと、
上記リアクトルアッセンブリが上記端子を残して埋まるように上記内側ケースの中に充填された熱伝導性ポッティング材と、
を備えてリアクトルが構成されている。
【0011】
このような構成においても、同様に、端子が位置する開口面を除いた全ての面を冷媒流路が囲っており、冷媒入口から冷媒出口へと冷媒流路を通して冷媒が流れることにより、周囲が冷媒流路で囲まれた形となるリアクトルアッセンブリが効果的に冷却される。コイルおよびコアを含むリアクトルアッセンブリが熱伝導性ポッティング材の中に埋まっており、この熱伝導性ポッティング材は内側ケースの内壁面に密着する。従って、内側ケースを介して冷媒に確実に熱が伝達されるので、効果的な熱の回収がなされる。また、外側ケースの外側の表面温度は、冷媒流路によって実質的にコイルから断熱されることから、端子が位置する開口面を除くいずれの面においても低く抑制される。そのため、隣接して配置される他の部品への熱的影響が少なくなる。
【0012】
冷媒としては、例えば、水を主たる成分とする冷却水や、絶縁性を有する冷却油(例えば鉱油)などの液相冷媒を用いることができるが、ガス状の冷媒や気液混合型の冷媒などであってもよい。
【0013】
好ましい一つの実施例では、
上記内側ケースおよび上記外側ケースは、それぞれ直方体形状の箱状をなし、
上記外側ケースは、上記内側ケースの上記開口面に対応した一つの側面が開口面をなすとともに、この外側ケースの上記開口面を通して上記内側ケースが上記外側ケースの中に組付可能であり、
上記外側ケースの長手方向の一端部に上記冷媒入口が、他端部に上記冷媒出口が、それぞれ設けられている。
【0014】
従って、冷媒は直方体形状をなす内側ケースおよび外側ケースの長手方向に沿って流れ、効率よく熱交換がなされる。そして、直方体形状の6つの面の中で端子が位置する開口面を除く5つの面が冷媒流路で囲まれた形となる。
【0015】
一つの態様では、この発明のリアクトルは、上記外側ケースの上記開口面となる側面に取り付けられて、当該外側ケースの上記開口面と上記内側ケースとの間を覆う枠状のカバーをさらに備えている。外側ケースの開口面は内側ケースを内部に組付可能なように内側ケースよりも大きなものとなるが、外側ケースと内側ケースとの間を枠状のカバーが覆っており、このカバーによって冷媒流路が密閉された形となる。
【0016】
上記冷媒流路に接する上記内側ケースの外側面の少なくとも一部に、冷却フィンが設けられていてもよい。この冷却フィンによって熱交換面積が拡大する。
【0017】
さらに本発明の一つの態様では、ポッティング材を用いずに、内側ケースの中に冷媒となる絶縁油が充填される。
【0018】
すなわち、リアクトルは、
一つの側面が開口面をなす箱状をなし、冷媒となる絶縁油が充填されるとともに該絶縁油が通流可能な連通口を有する内側ケースと、
上記内側ケースの上記開口面以外の面の外側を囲み、該内側ケースとの間に冷媒流路となる隙間を構成するとともに、冷媒入口と冷媒出口とを備えた外側ケースと、
上記開口面を通して上記内側ケースの中に配置され、端子が上記開口面に位置するコイルおよびコアを含むリアクトルアッセンブリと、
上記端子が導出された状態で上記開口面を覆う蓋部材と、
を備えて構成されている。
【0019】
この構成では、連通口を介して内側ケースの中に絶縁油が充填された状態となり、この絶縁油によって、リアクトルアッセンブリが絶縁されると同時に、リアクトルアッセンブリから内側ケースへの熱の伝達がなされる。そして、内側ケースと外側ケースとの間の冷媒流路を流れる絶縁油によって、内側ケースひいてはリアクトルアッセンブリが冷却される。なお、この冷媒流路と内側ケース内部とは、内側ケース内部が絶縁油で満たされるように連通口を介して互いに連通していればよく、内側ケースの中で必ずしも絶縁油が積極的に流動する必要はない。
【発明の効果】
【0020】
この発明に係るリアクトルによれば、コイルおよびコアを収容した内側ケースの端子が位置する開口面以外の全ての面が冷媒流路によって囲まれており、コイルおよびコアが効果的に冷却される。特に、コアとなる磁性粉末混合樹脂やポッティング材あるいは絶縁油が内側ケースの中に充填されており、内側ケースの内壁面に密着しているので、冷媒に確実に熱が回収される。また外側ケースの表面温度も低くなることから、他の部品への熱的影響が少なくなる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明に係るリアクトル1の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1は、例えば電気自動車やハイブリッド型自動車におけるインバータの構成部品として用いられるリアクトル1の第1実施例を示す斜視図である。
図2は第1実施例のリアクトル1の平面図、
図3は正面図、
図4は
図3のA−A線に沿った断面図、である。このリアクトル1は、直方体形状をなす外側ケース2と、
図4に示すように、外側ケース2の中に収容された同じく直方体形状をなす内側ケース3と、内側ケース3の中に配置されたコイル4と、このコイル4とともに内側ケース3の中に収容されたコア5と、を備えている。
図5は、外側ケース2と内側ケース3とを分解して示した分解斜視図である。このように車両に搭載されるリアクトル1にあっては、コイル4が発熱することに加えて、リアクトル1が配置されるエンジンルーム内等の雰囲気温度が比較的に高温(一例では100°以上)となり得ることから、冷媒を用いた強制的な冷却が必要である。第1実施例では、冷媒として、例えば、水を主たる成分とする冷却水が用いられる。
【0024】
外側ケース2は、金属好ましくは熱伝導に優れた金属から形成されており、例えば、アルミニウム合金母材の切削加工あるいはアルミニウムダイキャストによって一体に形成されている。外側ケース2は、直方体を構成する6面の中の一つの側面が開口した箱状をなす。すなわち、外側ケース2は、長手方向の両端の端面を構成する一対の端部壁11と、相対的に広い幅(W1)を有する側面を構成する一対の側壁12と、相対的に狭い幅(W2)を有する側面を構成する一つの底壁13と、この底壁13に対向する相対的に狭い幅(W2)の側面に相当する開口面14と、を備えている。上記開口面14には、さらに、矩形の枠状をなすカバー6が取り付けられている。
【0025】
一対の端部壁11の中心部には、一方が冷媒入口となり他方が冷媒出口となる冷媒配管コネクタ15がそれぞれ接続されている。これらの冷媒配管コネクタ15は、外側ケース2の長手方向に沿って延びた円管状をなしており、図示せぬポンプを含む冷却水循環系に接続されている。
【0026】
内側ケース3は、外側ケース2と同様に金属好ましくは熱伝導に優れた金属から形成されており、例えば、アルミニウム合金母材の切削加工あるいはアルミニウムダイキャストによって一体に形成されている。内側ケース3は、外側ケース2とほぼ相似形でかつ外側ケース2よりも小さな直方体形状をなし、外側ケース2と同じく直方体を構成する6面の中の一つの側面が開口した箱状に形成されている。すなわち、内側ケース3は、
図5の分解斜視図に示すように、長手方向の両端の端面を構成する一対の端部壁21と、相対的に広い幅(W3)を有する側面を構成する一対の側壁22と、相対的に狭い幅(W4)を有する側面を構成する一つの底壁23と、この底壁23に対向する相対的に狭い幅(W4)の側面に相当する開口面24と、を備えている。一対の側壁22および底壁23の表面には、内側ケース3の長手方向に沿って直線状に延びた冷却フィン25が多数形成されている。例えば、側壁22および底壁23の全面に、等ピッチで多数の冷却フィン25が並んで形成されている。
【0027】
内側ケース3の開口面24は、外側ケース2の開口面14に対応した面にある。つまり、外側ケース2と内側ケース3とが組み合わされた状態では、外側ケース2の開口面14の中に内側ケース3の開口面24が位置する。そして、この開口面14,24を除く5面においては、内側ケース3と外側ケース2との間に、冷媒流路27となる隙間が構成されている。換言すれば、外側ケース2が内側ケース3の開口面24以外の5面の外側を囲っており、それぞれの面に冷媒流路27を構成している。
図4に示すように、内側ケース3のフィン25は外側ケース2の内壁面に近付くように突出しているが、冷却フィン25先端は外側ケース2の内壁面に接しておらず、冷却水が冷却フィン25を横切って流れ得るように僅かな隙間が残存している。
【0028】
枠状のカバー6は、外側ケース2の開口縁と内側ケース3の開口縁とに跨って設けられており、両者間に形成された冷媒流路27の開口面を閉塞している。例えば、一つの例では、カバー6は、外側ケース2および内側ケース3と同様の材質の金属板からなり、外周縁が外側ケース2の開口縁に溶接(あるいはロー付け)され、かつ内周縁が内側ケース3の開口縁に溶接(あるいはロー付け)されている。これにより、冷媒流路27が密閉されていると同時に、内側ケース3と外側ケース2とが堅固に一体化されている。あるいは、カバー6を外側ケース2ならびに内側ケース3に対してネジ等で固定し、各々の接合面を、例えば、液体ガスケット等のシール材でもってシールするようにしてもよい。あるいはカバー6に相当する部分を内側ケース3と一体に形成し、外側ケース2の開口縁に溶接(あるいはロー付け)もしくはネジ止めするようにしてもよい。
【0029】
内側ケース3内に収容されるコイル4は、
図6に示すように、内側ケース3の直方体形状に対応して偏平な略長方形に沿った形に素線を巻回したものである。例えば、素線として比較的断面積の大きな長方形断面のもの(いわゆる平角状の素線)を用い、この素線を径方向に重ねることなく螺旋状に巻いた構成となっている。そして、素線の両端がそれぞれ端子4a,4bとして引き出されている。これら2つの端子4a,4bは、全体として細長い形に構成されたコイル4の長手方向両端部に互いに離れて位置しており、かつ互いに平行に延びている。なお、このコイル4は、当該コイル4の中心軸線(磁気的な中心軸線)が内側ケース3の幅の広い方の側面(側壁22)と直交するような形で巻回されている。
【0030】
上記コイル4は、一対の端子4a,4bが開口面24から突出した姿勢でもって内側ケース3の中に配置されている。そして、内側ケース3の中には、上記コイル4が端子4a,4bを残して埋まるように磁性粉末混合樹脂が充填されており、この磁性粉末混合樹脂によってコア5が形成されている。
【0031】
磁性粉末混合樹脂としては、例えば、未硬化時に適宜な流動性を有する液状をなすエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂に、鉄、フェライト、等の磁性粉末を混合したものが用いられる。この場合には、コイル4を配置した内側ケース3の中に液状をなす磁性粉末混合樹脂を注入ないし充填した後に、加熱炉等で加熱することにより硬化し、コア5が形成される。あるいは熱可塑性樹脂に磁性粉末を混合し、加熱溶融した状態で内側ケース3の中に射出するようにしてもよい。あるいは、いわゆる圧粉コアの形成と同様に、予めバインダとなる樹脂で表面をコーティングしてなる磁性粉末を内側ケース3内に充填し、加圧かつ加熱してコア5を形成するようにしてもよい。
【0032】
なお、ケース2,3の組立とコア5の充填・形成の2つの工程の順序は任意である。つまり、外側ケース2と内側ケース3とを組み立てた後に内側ケース3の中にコイル4を配置するとともに磁性粉末混合樹脂の充填を行ってもよく、あるいは、内側ケース3内にコイル4を配置して磁性粉末混合樹脂の充填を行った後に、この内側ケース3と外側ケース2とを組み立てるようにしてもよい。外側ケース2と内側ケース3とをカバー6の溶接ないしロー付けを介して一体化するようにした実施例の場合には、外側ケース2と内側ケース3とを一体化した後に、コイル4の挿入およびコア5の形成が行われる。
【0033】
図6は、リアクトル1の製造工程の一例を示しており、外側ケース2と内側ケース3とを一体化した上で、工程(a)に示すように内側ケース3の中にコイル4が挿入・配置される。その後、工程(b)に示すように、内側ケース3の中に磁性粉末混合樹脂を注入ないし充填して、コア5が形成される。
【0034】
上記のように構成されたリアクトル1にあっては、外側ケース2の冷媒配管コネクタ15の一方を冷媒入口とし他方を冷媒出口として図外のポンプにより冷却水が強制的に通流する。
図7は、リアクトル1内部の冷却水の流れを矢印で示した説明図であり、図示するように、冷媒入口から流入した冷却水は外側ケース2の端部壁11と内側ケース3の端部壁21との間の冷媒流路27において放射状に拡がり、さらに、外側ケース2の側壁12ならびに底壁13と内側ケース3の側壁22ならびに底壁23との間の冷媒流路27をこれらケース2,3の長手方向に沿って流れる。そして、他方の外側ケース2の端部壁11と内側ケース3の端部壁21との間の冷媒流路27を介して冷媒出口へと流れ出る。つまり、冷却水は、端子4a,4bが位置する開口面14,24を除いた5面に沿って流れ、これら5面に囲まれたコイル4ならびにコア5を効果的に冷却する。特に、磁性粉末混合樹脂からなるコア5が内側ケース3の内壁面に密着しており、該内側ケース3を介して冷却水に確実に熱が伝達されるので、効果的な熱の回収がなされる。内側ケース3が冷却フィン25を備えることで内側ケース3と冷却水との間の熱交換面積が大きくなり、内側ケース3から冷却水への熱伝達が向上する。また、外側ケース2の外側の表面温度は、冷媒流路27によって内側ケース3から実質的に断熱されることから、開口面14を除くいずれの面においても低くなり、従って、隣接して配置される他の部品への熱的影響が少なくなる。
【0035】
ここで、上記実施例では、直方体の長手方向に沿った4つの側面の中で相対的に幅の狭い側面が開口面14,24となっているため、冷媒流路27を具備しない面積が最小限となる。つまり、逆に冷媒流路27で覆われる面積が最大限に大きくなっており、コイル4ならびにコア5が効果的に冷却されるとともに外部への放熱が少なくなる。前述したように、車両用のリアクトル1にあってはコイル4が発熱体であると同時に周囲雰囲気も高温となるが、広い面積に冷却水が流れることで、コイル4ならびに外側ケース2を比較的低い温度に維持することができる。
【0036】
なお、図示例では内側ケース3の外側面である側壁22および底壁23の計3面に冷却フィン25が設けられているが、1面もしくは2面に冷却フィン25を設けるようにしてもよく、あるいは、圧力損失と流量とのバランスや加工コスト低減等のために冷却フィン25を具備しない構成であってもよい。
【0037】
また、図示例では外側ケース2の端部壁11の中央部に冷媒入口および冷媒出口となる冷媒配管コネクタ15がそれぞれ取り付けられているが、外側ケース2の端部壁11と内側ケース3の端部壁21との間に形成される冷媒流路27(つまり長手方向の両端部の冷媒流路27)に冷媒入口および冷媒出口が連通していればよく、他の構成も可能である。例えば、冷媒配管コネクタ15と他の部品との干渉を回避するために、端部壁11の面と平行に延びた冷媒配管コネクタ15が外側ケース2の側壁12ないし底壁13の端部(具体的には端子4a,4bの外側面よりも外側ケース2の長手方向で外側となる領域)に接続された構成であってもよい。
【0038】
次に、リアクトル1の第2実施例を、
図8〜
図13に基づいて説明する。なお、第1実施例のものと基本的に同様の箇所には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
図8は、第2実施例のリアクトル1の斜視図、
図9は第2実施例のリアクトル1の平面図、
図10は正面図、
図11は
図10のB−B線に沿った断面図、である。
【0039】
このリアクトル1は、第1実施例のリアクトル1と同様に、直方体形状をなす外側ケース2と、外側ケース2の中に収容された同じく直方体形状をなす内側ケース3と、外側ケース2の開口縁と内側ケース3の開口縁とに跨って設けられた矩形の枠状をなすカバー6と、を備えている。
図12は、これらの外側ケース2と内側ケース3とカバー6との分解斜視図を示している。これらの外側ケース2、内側ケース3、カバー6の構成は、第1実施例のものと基本的に変わりがない。
【0040】
この第2実施例では、上記内側ケース3の中に、コイル4ならびにコア5Aを含むリアクトルアッセンブリ31が収容されている。
図13は、第2実施例のリアクトル1の製造工程の一例を示した工程説明図である。
図13に示すように、コイル4は前述した第1実施例のものと特に変わりはなく、いわゆる平角状の素線を径方向に重ねることなく偏平な略長方形に沿った螺旋状に巻回した形となっている。このコイル4が巻き付けられるコア5Aは、例えば一般的な積層鋼板製のものであってもよく、あるいは、バインダ樹脂でコーティングした磁性粉末を用いて所定形状に成形したいわゆる圧粉コアであってもよい。コア5Aの形状は特に限定されるものではないが、例えば、前述した偏平なコイル4の形状に対応して偏平な矩形の外形状を有するようにコア5Aが形成されている。このコア5Aは、コイル4の内周側を埋めているほか、偏平なコイル4の長辺側部分の外周を囲むように形成されている。
【0041】
コイル4の素線の両端は、前述した第1実施例と同様に、それぞれ端子4a,4bとして引き出されている。これら2つの端子4a,4bは、全体として細長い形に構成されたコイル4の長手方向両端部に互いに離れて位置しており、かつ互いに平行に延びている。なお、端子4a,4bは、コア5Aと干渉しない位置にある。
【0042】
このようにコイル4ならびにコア5Aを含むリアクトルアッセンブリ31は、内側ケース3の開口面24を通過し得る大きさを有しており、
図13の工程(a)に示すように、開口面24を通して内側ケース3の中に挿入され、かつ一対の端子4a,4bが開口面24から突出した姿勢でもって内側ケース3の中に配置される。そして、工程(b)に示すように、内側ケース3の中には、上記リアクトルアッセンブリ31が端子4a,4bを残して埋まるように熱伝導性ならびに絶縁性を有するポッティング材32が充填されている。ポッティング材32としては、例えば回路基板用ポッティング材として一般に市販されているエポキシ系ポッティング材等を用いることができる。このポッティング材32は、未硬化時に適宜な流動性を有する液状をなし、充填後に加熱炉等で加熱することにより硬化する。ポッティング材32として、主剤と硬化剤とを混合して用いる二液混合型のものであってもよい。
【0043】
なお、ケース2,3の組立とポッティング材32の充填の2つの工程の順序は任意である。つまり、外側ケース2と内側ケース3とを組み立てた後に内側ケース3の中にリアクトルアッセンブリ31を配置するとともにポッティング材32の充填を行ってもよく(
図13参照)、あるいは、内側ケース3内にリアクトルアッセンブリ31を配置してポッティング材32の充填を行った後に、この内側ケース3と外側ケース2とを組み立てるようにしてもよい。外側ケース2と内側ケース3とをカバー6の溶接ないしロー付けを介して一体化するようにした実施例の場合には、外側ケース2と内側ケース3とを一体化した後に、リアクトルアッセンブリ31の挿入およびポッティング材32の充填が行われる。
【0044】
上記のように構成されたリアクトル1にあっては、外側ケース2の冷媒配管コネクタ15の一方を冷媒入口とし他方を冷媒出口として図外のポンプにより冷却水が強制的に通流する。リアクトル1内部の冷却水の流れは、前述した
図7に基づいて説明した通りである。冷媒入口から流入した冷却水は外側ケース2の端部壁11と内側ケース3の端部壁21との間の冷媒流路27において放射状に拡がり、さらに、外側ケース2の側壁12ならびに底壁13と内側ケース3の側壁22ならびに底壁23との間の冷媒流路27をこれらケース2,3の長手方向に沿って流れる。そして、他方の外側ケース2の端部壁11と内側ケース3の端部壁21との間の冷媒流路27を介して冷媒出口へと流れ出る。つまり、冷却水は、端子4a,4bが位置する開口面14,24を除いた5面に沿って流れ、これら5面に囲まれたリアクトルアッセンブリ31を効果的に冷却する。特に、この第2実施例では、ポッティング材32が内側ケース3の内壁面に密着しており、該内側ケース3を介して冷却水に確実に熱が伝達されるので、効果的な熱の回収がなされる。しかも内側ケース3が冷却フィン25を備えることで内側ケース3と冷却水との間の熱交換面積が大きくなり、内側ケース3から冷却水への熱伝達が向上する。また、外側ケース2の外側の表面温度は、冷媒流路27によって内側ケース3から実質的に断熱されることから、開口面14を除くいずれの面においても低くなり、従って、隣接して配置される他の部品への熱的影響が少なくなる。
【0045】
第2実施例においても、直方体の長手方向に沿った4つの側面の中で相対的に幅の狭い側面が開口面14,24となっているため、冷媒流路27を具備しない面積が最小限となる。つまり、逆に冷媒流路27で覆われる面積が最大限に大きくなっており、コイル4ならびにコア5Aが効果的に冷却されるとともに外部への放熱が少なくなる。前述したように、車両用のリアクトル1にあってはコイル4が発熱体であると同時に周囲雰囲気も高温となるが、広い面積に冷却水が流れることで、コイル4ならびに外側ケース2を比較的低い温度に維持することができる。
【0046】
なお、内側ケース3の冷却フィン25を形成する面や冷媒配管コネクタ15の構成等を種々変更できることは、前述した第1実施例と同様である。
【0047】
次に
図14は、第1実施例ないし第2実施例のリアクトル1の変形例を示している。この例では、外側ケース2の外側面に、冷却することが好ましい相対的に小型の他の電子部品41が取り付けられている。電子部品41としては、抵抗等の発熱部品であってもよく、あるいは、それ自身は大きな発熱はしないものの比較的に耐熱性が低く雰囲気温度に対して冷却が必要な適当な電子部品であってもよい。図示例では、内側の冷媒流路27が最も広い面積を有することとなる側壁12に電子部品41が取り付けられている。特に、外側ケース2の長手方向の中で、冷却水温度が相対的に低い冷媒入口に近い側に電子部品41が配置されている。
【0048】
前述したように、外側ケース2は、熱伝導性に優れたアルミニウム合金等の金属から形成されているため、この外側ケース2を介して冷却水と電子部品41との間で熱の授受が可能であり、冷却水の通流によって内部のコイル4等とともに外側の電子部品41が冷却される。特に、周囲の雰囲気温度が例えば100℃にも達するような使用環境下では、冷却水温度の方が雰囲気温度よりも低くなるので、冷却水によって電子部品41の効果的な冷却が図れる。
図14では、1個の電子部品41を図示しているが、必要に応じて複数個の電子部品41を外側ケース2に取り付けることも可能である。
【0049】
なお、
図14のように外側ケース2を一種の冷却プレートとして利用する場合には外側ケース2を熱伝導性に優れた材料から形成することが好ましいが、それ以外の場合には、外側ケース2は必ずしも熱伝導性に優れた部材でなくてもよい。従って、第1実施例および第2実施例のいずれにおいても、例えば硬質合成樹脂等から外側ケース2を形成することも可能である。
【0050】
次に、リアクトル1の第3実施例を説明する。第3実施例のリアクトル1の基本的な構造は、前述した第1実施例もしくは第2実施例のリアクトル1と同様であるので、図示は省略するが、第3実施例においては、冷媒流路27を流れる冷媒として、絶縁性を有する冷却油つまり絶縁油が用いられる。例えば、鉱油を主たる成分とする絶縁油が用いられ、オイルポンプによって外側ケース2と内側ケース3との間の冷媒流路27を通して強制的に流れる。
【0051】
このような絶縁油を冷媒として用いる構成によれば、水を主成分とする冷媒を用いる場合に比較して、油の方が水よりも熱伝導性に優れることから第1実施例のコイル4や第2実施例のリアクトルアッセンブリ31に対する冷却効果が高くなる。また外側ケース2や内側ケース3が金属製である場合に、冷媒との接触面の腐食が生じにくくなる。
【0052】
次に、
図15および
図16に基づいて、リアクトル1の第4実施例を説明する。この第4実施例は、前述した第2実施例におけるポッティング材32に代えて、冷媒となる絶縁油でもって内側ケース3の内部を満たすようにしたものである。すなわち、前述した第2実施例と同様に、リアクトル1は、直方体形状をなす外側ケース2と、外側ケース2の中に収容された同じく直方体形状をなす内側ケース3と、内側ケース3の中に配置されたリアクトルアッセンブリ31と、を備えている。また、前述した枠状のカバー6に代えて、長方形の板状をなす第1蓋部材50および第2蓋部材51を備えている。
【0053】
外側ケース2は、金属好ましくは熱伝導に優れた金属から形成されており、例えば、アルミニウム合金母材の切削加工あるいはアルミニウムダイキャストによって一体に形成されている。外側ケース2は、直方体を構成する6面の中の一つの側面が開口した箱状をなす。すなわち、外側ケース2は、長手方向の両端の端面を構成する一対の端部壁11と、相対的に広い幅を有する側面を構成する一対の側壁12と、相対的に狭い幅を有する側面を構成する一つの底壁13と、この底壁13に対向する相対的に狭い幅の側面に相当する開口面14と、を備えている。上記開口面14には、上記第1蓋部材50が取り付けられている。
【0054】
一対の端部壁11の中心部には、一方が冷媒入口となり他方が冷媒出口となる冷媒配管コネクタ15がそれぞれ接続されている。これらの冷媒配管コネクタ15は、外側ケース2の長手方向に沿って延びた円管状をなしており、図示せぬオイルポンプを含む絶縁油循環系に接続されている。
【0055】
内側ケース3は、外側ケース2と同様に金属好ましくは熱伝導に優れた金属から形成されており、例えば、アルミニウム合金母材の切削加工あるいはアルミニウムダイキャストによって一体に形成されている。内側ケース3は、外側ケース2とほぼ相似形でかつ外側ケース2よりも小さな直方体形状をなし、外側ケース2と同じく直方体を構成する6面の中の一つの側面が開口した箱状に形成されている。すなわち、内側ケース3は、長手方向の両端の端面を構成する一対の端部壁21と、相対的に広い幅を有する側面を構成する一対の側壁22と、相対的に狭い幅を有する側面を構成する一つの底壁23と、この底壁23に対向する相対的に狭い幅の側面に相当する開口面24と、を備えている。なお、図示例では、前述した第1実施例のような冷却フィン25は具備していないが、第1実施例と同様に一対の側壁22および底壁23の表面に冷却フィン25を形成してもよい。
【0056】
一対の端部壁21には、絶縁油の通流が可能な連通口52がそれぞれ開口形成されている。連通口52は、例えば円形の孔であり、端部壁21のほぼ中心となる位置にそれぞれ形成されている。
【0057】
内側ケース3の開口面24は、外側ケース2の開口面14に対応した面にある。つまり、外側ケース2と内側ケース3とが組み合わされた状態では、外側ケース2の開口面14の中に内側ケース3の開口面24が位置する。そして、この開口面14,24を除く5面においては、内側ケース3と外側ケース2との間に、冷媒流路27となる隙間が構成されている。換言すれば、外側ケース2が内側ケース3の開口面24以外の5面の外側を囲っており、それぞれの面に冷媒流路27を構成している。内側ケース3の開口面24には、第2蓋部材51が取り付けられている。
【0058】
第1蓋部材50と第2蓋部材51は、第1蓋部材50が外側となるようにして重ねられており、第2蓋部材51が内側ケース3の開口縁に接合(例えば溶接ないしロー付け)されて内側ケース3の開口面24を覆うとともに、第1蓋部材50が外側ケース2の開口縁に接合(例えば溶接ないしロー付け)されて外側ケース2の開口面14つまり冷媒流路27の上端の開口部を覆っている。例えば、一つの例では、第1蓋部材50および第2蓋部材51は、外側ケース2および内側ケース3と同様の材質の金属板からなり、溶接あるいはロー付けによって外側ケース2および内側ケース3の開口縁に取り付けられる。
【0059】
第1蓋部材50および第2蓋部材51は、コイル4の端子4a,4bを導出するための一対の端子用開口部53をそれぞれ備えている。この一対の端子用開口部53は、例えば矩形状にそれぞれ開口形成されている。
【0060】
内側ケース3内に収容されるリアクトルアッセンブリ31は、上述した第2実施例のものと同様に、コイル4およびコア5Aを含んでいる。コイル4は、いわゆる平角状の素線を径方向に重ねることなく偏平な略長方形に沿った螺旋状に巻回した形となっており、コア5Aは、例えば一般的な積層鋼板製のものや磁性粉末を所定形状に成形した圧粉コアからなる。
【0061】
コイル4の素線の両端は、それぞれ端子4a,4bとして引き出されている。図示例では、第2実施例とは端子4a,4bの配置が僅かに異なっており、全体として細長い形に構成されたコイル4の長手方向中央部に並んで配置されている。
【0062】
ここで、各々の端子4a,4bの基部には、第1蓋部材50および第2蓋部材51の端子用開口部53に嵌合するシールキャップ54がそれぞれ設けられている。シールキャップ54は、適宜な弾性を有するゴムもしくは合成樹脂材料から成形されており、端子用開口部53に圧入可能な角柱部54aと蓋部材51の内側面に圧接するフランジ部54bと、を備えている。なお、シールキャップ54は、端子4a,4bをインサートした状態で成形してもよく、成形後に端子4a,4bを挿入して取り付けてもよい。シールキャップ54が第1,第2蓋部材50,51の端子用開口部53に密に取り付けられることで、第1,第2蓋部材50,51を貫通して導出される端子4a,4bと第1,第2蓋部材50,51との間がシールされる。
【0063】
上記のように構成された第4実施例のリアクトル1にあっては、外側ケース2の冷媒配管コネクタ15の一方を冷媒入口とし他方を冷媒出口として図外のポンプにより冷媒となる絶縁油が強制的に通流する。この絶縁油は、
図7に示した第1実施例の流れと同様に、冷媒流路27を流れ、内側ケース3を冷却する。また同時に、絶縁油は、一対の連通口52を介して内側ケース3の内部に流れ込み、リアクトルアッセンブリ31を収容した内側ケース3の内部空間に充填される。絶縁油は、前述した第2実施例のポッティング材32と同様に、絶縁性ならびに熱伝導性を有するので、リアクトルアッセンブリ31を絶縁しつつリアクトルアッセンブリ31の熱を内側ケース3へ伝達する。これにより、リアクトルアッセンブリ31が効果的に冷却される。そのほか、第1実施例等で述べた前述の作用効果が同様に得られる。内側ケース3の内部に流入した絶縁油は、該内側ケース3の内部と冷媒流路27とが連通口52を介して連通しているため、滞留して劣化してしまうようなことはない。但し、内側ケース3の内部を満たす絶縁油は、基本的には第2実施例のポッティング材32の代替物であり、冷媒流路27を流れる絶縁油のように十分な流速で流れる必要はない。
【0064】
この第4実施例では、前述した第2実施例におけるポッティング材32の充填工程が不要となる利点がある。
【0065】
なお、上記第4実施例では、積層された2つの蓋部材50,51を備えているが、1つの板状の蓋部材によって内側ケース3の開口面24とその外周側における冷媒流路27の上端開口の双方を覆うように構成することもできる。例えば、外側ケース2および内側ケース3と同様の材質の金属板からなる蓋部材(第1蓋部材50と概ね同様の形状となる)を内側ケース3の開口縁に溶接(あるいはロー付け)した後に、内側ケース3を外側ケース2内に組み込み、最後に外側ケース2の開口縁と蓋部材を溶接(あるいはロー付け)することで、内側ケース3および冷媒流路27を覆うと同時に、内側ケース3と外側ケース2とを一体化することができる。
【解決手段】箱状をなす外側ケース2の中に同じく箱状をなす内側ケース3が収容されており、両者間の隙間によって、開口面24以外の5面に冷媒流路が形成されている。外側ケース2の開口縁と内側ケース3の開口縁との間は、枠状のカバー6によって覆われている。コイル4が内側ケース3の中に配置された上で、端子4a,4bを残してコイル4が埋まるように、磁性粉末混合樹脂が充填される。この磁性粉末混合樹脂によって、コア5が構成される。冷媒配管コネクタの一方を冷媒入口、他方を冷媒出口として、外側ケース2の長手方向に沿って冷却水が通流する。コイル4ならびにコア5を囲む5面に沿って冷却水が通流するので、効果的に冷却される。