(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の電極のうち第1の電極に接続する前記2軸シースケーブルの内被が、前記第1の電極を包囲する前記ガードに接続し、前記複数の電極のうち第2の電極に接続する前記2軸シースケーブルの内被と接続し、前記第1の電極に接続する2軸シースケーブルと前記第2の電極に接続する2軸シースケーブルの内被全体が、前記電極とは電気的に絶縁されると共に接地される外被で覆われる、請求項1に記載の静電容量式ひずみ計。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
測定対象物の2点間のひずみ量(離隔)を対象物の表面に取り付け測定するため、この2箇所に離隔方向と垂直に平行平板電極を対向するよう取り付け、この電極間の静電容量値の変動量から、電極間隔の変位量を換算し、取得する計測においては、以下の式(1)に示す無限遠の平行平板電極の静電容量の基本式を基準として、換算することができる。
【0005】
【数1】
【0006】
しかし、電極面積が有限の場合、
図10に示すような電極外周部の縁端容量により、静電容量の測定値は、向かい合った電極面積と電極間隔とから基本式を用いた換算により得られる静電容量値より大きくなる。すなわち、測定される静電容量値と向かい合った電極面積とから、基本式により得られる電極間隔は、実際の電極間隔よりみかけ上小さくなる。これにより、正確なひずみ量を得ることができない。
【0007】
電極外周部の縁端容量による基本式からのずれは、計器のサイズ、構造、電気特性の点で、当該計器固有の特性に依存する。そこで、この特性を計測し、基本式からの補正を行う方法があるが、この方法では、計器特性の計測、及び補正における誤差が加味されることとなる。
【0008】
また、対向する電極を測定表面に取り付ける際、各電極の中心軸がずれた場合も、同様に基本式からのずれが生じ、誤差が発生する原因となる。
【0009】
また、配管の周溶接部のクリープひずみを測定するために、この溶接部を跨ぎ配管表面に対向して取り付ける電極間隔の測定において、溶接部の均一な伸びに加え曲げ変形が生じる場合があることから電極面の角度ズレや角度の変動により、あらかじめ設定した特性曲線からのズレが生じることになる。
【0010】
高温環境下において静電容量を測定する各電極に接続する信号ケーブルは、被覆の腐食や近接する部材等、外界との浮遊容量の変動により、測定回路全体のコンダクタンスの変動により、測定値が安定しない。
【0011】
本発明は、ひずみ量の測定において、誤差の発生を極力防止することにより、静電容量の基本式からのずれ量を低減し、より正確なひずみ量を得ることが可能な、静電容量式ひずみ計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、本発明は、次に記載する構成を備えている。
【0013】
(1) 互いに対向する複数の電極と、前記複数の電極の各々を前記対向面側が開放された状態で包囲し、導電性を有するガード及びシールドと、前記複数の電極の各々と、前記電極間の静電容量を計測する計測装置とを接続する、複数の2軸シースケーブルとを備える、静電容量式ひずみ計。
【0014】
(2) (1)に記載の静電容量式ひずみ計において、前記ガード及びシールドのうち、前記ガードは、前記計測装置の中性点に接続されてゼロ電位が保たれ、前記シールドは前記ガード及び前記電極とは電気的に絶縁されている。
【0015】
(3) (1)又は(2)に記載の静電容量式ひずみ計において、前記複数の電極のうち第1の電極に接続する前記2軸シースケーブルの内被が、前記第1の電極を包囲する前記ガード、及び前記複数の電極のうち第2の電極に接続する前記2軸シースケーブルの内被と接続し、前記第1の電極に接続する前記2軸シースケーブルと前記第2の電極に接続する前記2軸シースケーブルの内被全体が、前記電極とは電気的に絶縁されると共に接地される外被で覆われる。
【0016】
(4) (1)〜(3)のいずれかに記載の静電容量ひずみ計であって、前記複数の電極の大きさが同一である。
【0017】
(5) (1)〜(3)のいずれかに記載の静電容量ひずみ計であって、前記複数の電極の大きさが互いに異なり、前記ガードは小径電極を包囲し、前記シールドは大径電極を包囲する。
【0018】
(6) (1)〜(5)のいずれかに記載の静電容量式ひずみ計と、前記計測装置とを備える、ひずみ計測システム。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、静電容量式ひずみ計を用いたひずみ量の測定において、誤差の発生を極力防止することにより、静電容量の基本式からのずれ量を低減し、より正確なひずみ量を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るひずみ計測システムの全体構成図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係るひずみ計測システムの全体構成図である。
【
図3A】従来技術における、電極の中心軸のずれを示す図である。
【
図3B】本発明の実施形態における、電極の中心軸のずれを示す図である。
【
図4】通常時における電極に対するガード/シールドの有無及び対向する電極径による線形特性を比較するグラフである。
【
図5】通常時における電極に対するガード/シールドの有無及び対向する電極径による線形特性を比較するグラフである。
【
図6】通常時における残差の値を各ひずみ計ごとに示したグラフである。
【
図7A】電極間に傾きがある場合における電極に対するガード/シールドの有無及び対向する電極径による線形特性を比較するグラフである。
【
図7B】電極間に傾きがある場合における電極に対するガード/シールドの有無及び対向する電極径による線形特性を比較するグラフである。
【
図8A】電極間に傾きがある場合における電極に対するガード/シールドの有無及び対向する電極径による線形特性を比較するグラフである。
【
図8B】電極間に傾きがある場合における電極に対するガード/シールドの有無及び対向する電極径による線形特性を比較するグラフである。
【
図9】電極間に傾きがある場合における残差の値を各ひずみ計ごとに示したグラフである。
【
図10】従来技術としての静電容量式ひずみ計における電気力線の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔1 第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について各図面を参照しながら詳述する。
〔1.1 発明の構成〕
図1は、第1実施形態に係るひずみ計測システム1の全体構成図である。ひずみ計測システム1は、静電容量式ひずみ計10と、計測装置20とを備える。
【0022】
静電容量式ひずみ計10は、互いに対向し、対向面の大きさが同一の電極11A及び11Bと、電極11A及び11Bの各々を対向面側が開放された状態で包囲する、導電性を有するガード12A及びシールド12Bと、電極11Aと計測装置20とを接続するケーブル30Aと、電極11Bと計測装置20とを接続するケーブル30Bとを備える。また、電極11Aとガード12Aとの間には、絶縁体13Aが備わり、電極11Bとシールド12Bとの間には、絶縁体13Bが備わる。なお、絶縁体13A及び絶縁体13Bは、気中(空気雰囲気)であるとよい。
【0023】
より具体的には、電極11A及び11Bは、各々の対向面が、ひずみの計測方向に直交するように配置され、電極11Aと電極11Bとが向かい合う対向面の面積は同一である。これにより、後述の実施例に記載するように、大きさに限りのある電極でも、電極の縁端効果の最小化によって、線形特性が、無限遠の並行平板電極のモデルの線形特性に近似するよう向上し、計器校正時の特性曲線の取得においてこの精度が向上する。なお、電極11A及び電極11Bは、例えば、高温腐食の影響が少ないプラチナ又はプラチナ合金の電極を用いて実現することが可能である。
【0024】
また、導電性を有するガード12Aは、電極11Aの電極11Bに対する対向面が開放された状態で、電極11Aを包囲する。同様に、導電性を有するシールド12Bは、電極11Bの電極11Aに対する対向面が開放された状態で、電極11Bを包囲する。更に、後述のように、ガード12Aは計測装置20の中性点に接続され、ゼロ電位が保たれる一方で、シールド12Bはガード12A及び双方の電極11A及び11Bとは電気的に絶縁され、浮遊している。なお、ガード12A及びシールド12Bの材質は、熱膨張率が電極材と同等の金属等の導電体で、かつ高温腐食の影響が少ないインコネル等の耐高温材料が適する。
【0025】
計測装置20は、自動平衡ブリッジ回路を備えたLCRメータであり、電極11A及び電極11B間の静電容量を測定する。LCRメータは、交流の自動平衡ブリッジ回路により、中性点を計測回路のゼロ電位に調整する。
【0026】
ケーブル30は、電極11Aと計測装置20とを接続するケーブル30Aと、電極11Bと計測装置20とを接続するケーブル30Bとを備える。
【0027】
ケーブル30Aは、MIケーブル等の耐熱性の2軸シースケーブルであって、芯線31Aと、芯線31Aを包囲し導通のある内被32Aと、内被32Aを包囲し導通のある外被33Aと、内被32Aと外被33Aとの間の耐熱性の絶縁体(不図示)とを備える。同様に、ケーブル30Bも、MIケーブル等の耐高温の2軸シースケーブルであって、芯線31Bと、芯線31Bを包囲し導通のある内被32Bと、内被32Bを包囲し導通のある外被33Bと、内被32Bと外被33Bとの間の、耐熱性の絶縁体(不図示)とを備える。
【0028】
ケーブル30Aの芯線31Aは、電極11Aと、計測装置20のHigh側の電流端子(Hc)及びHigh側の電圧端子(Hp)とを接続する。ケーブル30Bの芯線31Bは、電極11Bと、計測装置20のLow側の電流端子(Lc)及びLow側の電圧端子(Lp)とを接続する。
【0029】
更に、ケーブル30Aの内被32Aのガード12A側端部と、ケーブル30Bの内被32Bのシールド12B側端部とは、導線35によって接続される。また、ケーブル30Aの内被32Aの全体が、電極11A及び電極11Bとは電気的に絶縁されると共に接地される外被33Aで覆われ、ケーブル30Bの内被32Bの全体が、電極11A及び電極11Bとは電気的に絶縁されると共に接地される外被33Bで覆われる。電極11A及び電極11B間の静電容量を計測する際、ガード12Aと13Aに芯線(導体)31Aと芯線(導体)31Bとは逆向きの電流が流れることになり、ケーブル30A及びケーブル30Bのインダクタンスによる影響を抑えることで、計測装置20による測定値は安定する。
【0030】
ケーブル30Aの内被32Aの、ガード12Aと反対側の端部と、ケーブル30Bの内被32Bの、シールド12Bと反対側の端部とは、導線36によって接続される。導線36は、更にこれら両端部と、計測装置20の中性点とを接続する。このように、計測装置20の中性点と、ケーブル30Aの内被32A、及びケーブル30Bの内被32Bとが接続されることにより、計測装置20による測定値は安定する。
【0031】
ケーブル30Aの内被32Aとガード12Aとは、導線37によって接続される。一方、シールド12Bは、ケーブル30Bの内被32Bとは互いに接続されず、シールド12Bは浮遊する。更に、ケーブル30Aの外被33Aとケーブル30Bの外被33Bとは、接地される。このため、静電容量の基本式を用いた電極間隔の換算式において、線形性が向上し、測定結果に混入するノイズの量が減少する。
【0032】
上記のように、ひずみ計測システム1の静電容量式ひずみ計10においては導電性を有するガード12Aは、電極11Aの電極11Bに対する対向面が開放された状態で、電極11Aを包囲する。同様に、導電性を有するシールド12Bは、電極11Bの電極11Aに対する対向面が開放された状態で、電極11Bを包囲する。これにより、電極11Aと電極11Bの外周部の縁端容量を抑えることにより、静電容量の測定値と、基本式を用いた換算により得られる静電容量値とのずれが減少し、より正確なひずみ量を得ることが可能となる。
【0033】
〔1.2 第1実施が奏する効果〕
以上、説明したように構成された本実施形態によれば、静電容量ひずみ計1は、互いに対向する複数の電極11A及び11Bと、複数の電極11A及び11Bの各々を対向面側が開放された状態で包囲し、導電性を有するガード12A及びシールド12Bと、複数の電極11A及び11Bの各々と、電極間の静電容量を計測する計測装置20とを接続する、複数の2軸シースケーブル30A及び30Bとを備える。
電極外周部の縁端容量を抑えるガード及びシールドを備えることにより、静電容量の基本式からのずれ量を低減し、より正確なひずみ量を得ることが可能となる。
【0034】
また、本実施形態によれば、ガード12Aは、計測装置20の中性点に接続されてゼロ電位が保たれ、シールド12Bはガード12Aおよび電極11A及び11Bとは電気的に絶縁されている。
これにより、ガード12Aは、計測装置20の中性点に接続されゼロ電位に保たれる。また、シールド12Bは、電気的に浮遊している。このため、両電極11A及び11Bの縁端容量を抑えることにより、静電容量の基本式を用いた電極間隔の換算式において、線形性が向上すると同時に、測定結果に混入するノイズの量が減少する。更に、電極の取付台座に若干の傾きが生じた場合に、正確なひずみ量を得ることが可能となる。
【0035】
また、本実施形態によれば、ケーブル30Aの内被32Aが、電極11Aを包囲するガード12Aに接続し、電極11Bに接続するケーブル30Bの内被32Bと接続し、ケーブル30Aの内被32Aの全体が、電極11A及び電極11Bとは電気的に絶縁されると共に接地される外被33Aで覆われ、ケーブル30Bの内被32Bの全体が、電極11A及び電極11Bとは電気的に絶縁されると共に接地される外被33Bで覆われる。
これにより、静電容量の基本式を用いた電極間隔の換算式において、線形性が向上すると同時に、測定結果に混入するノイズの量が減少する。より詳細には、複数の電極のうち第1の電極に接続する2軸シースケーブルの内被が、第1の電極を包囲するガードに接続し、複数の電極のうち第2の電極に接続する2軸シースケーブルの内被と接続することで、各電極に接続するシースケーブルの内被間の電位差を打ち消すと共に、LCRメータの中性点電位に安定させ、2軸シースケーブルの芯線とシース間の浮遊容量が低減されることで、測定する電極間の静電容量以外の静電容量を低減すると同時に、測定値が安定する。
更に、2軸シースケーブルの内被全体が、電極とは電気的に絶縁されると共に接地された外被で覆われ、2軸シースケーブル内被と外側との浮遊容量を安定させることで、測定値が安定する。とりわけ、高温環境下においても、シースの浮遊容量の変動が抑制されることで、正確なひずみ量を得ることが可能となる。
【0036】
また、本実施形態によれば、電極11Aと電極11Bの大きさは同一である。これにより、とりわけ電極の縁端効果の最小化により線形特性が向上する。
【0037】
〔2 第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態について各図面を参照しながら詳述する。なお、以下では説明の簡略化のため、主として第2実施形態に係るひずみ計測システム1Aが、第1実施形態に係るひずみ計測システム1と異なる点について説明する。
【0038】
〔2.1 発明の構成〕
図2は、本実施形態に係るひずみ計測システム1Aの全体構成図である。ひずみ計測システム1Aは、ひずみ計測システム1と異なり、電極11Aと電極11Bの大きさが異なる。より詳細には、電極11Aの半径は、電極11Bの半径よりも小さい。これに伴い、電極11Aを包囲するガード12Aと、電極11Bを包囲するシールド12Bとを比較すると、互いに対向する対向面の大きさは、ガード12Aの方がシールド12Bよりも大きい。
【0039】
仮に電極11Aと電極11Bの大きさが同一であれば、双方の中心軸がずれた場合、
図3Aに示すように、双方の電極が対向しない面が新たに発生する。これにより、静電容量の測定値と、基本式を用いた換算により得られる静電容量値との間にずれが発生する。
しかし、
図3Bに示すように、第2実施形態においては、電極11Aと電極11Bの対向面の大きさが互いに異なることにより、電極11Aの中心軸と、電極11Bの中心軸とが互いにずれたとしても、双方の電極が対向しない面の広さに変化はなく、静電容量の測定値と、基本式を用いた換算により得られる静電容量値とのずれが、より小さな値に留まるため、より正確なひずみ量を得ることが可能となる。
【0040】
すなわち、第2実施形態に係るひずみ計測システム1Aは、第1実施形態に係るひずみ計測システム1に比較して、後述の実施例に記載のように、通常時には線形特性の点で劣るものの、電極間で軸芯のズレが生じた場合には線形特性の点で顕著な効果を発揮する。
【0041】
〔2.2 第2実施形態が奏する効果〕
以上、説明したように構成された本実施形態によれば、複数の電極の大きさが互いに異なり、前記ガードは小径電極を包囲し、前記シールドは大径電極を包囲する。
これにより、とりわけ電極の軸芯のズレや振動の影響が抑制され、静電容量式ひずみ計の取り付け面の段差に対する許容度が上昇する。
【0042】
〔3 実施例〕
複数の電極が同径か否か、及び、電極をガードやシールドが包囲するか否かに応じて、線形特性がどのように変化するかを、電界シミュレーションにより数値解析した。なお、シミュレーションは、標準メッシュサイズ3mm、空気メッシュサイズ0.1mmの3次元モデルを用いた有限要素解析によるものであり、電場解析を実行した。シミュレーションソフトとしては、ムラタソフトウェア製のFemtet(登録商標)ver.2017.1.2を用いた。
【0043】
〔3.1 軸芯方向の線形特性〕
図4は、通常時、すなわち2つの電極の芯線間にズレがなく、2つの電極が並行しているときの、電極に対するガード/シールドの有無及び対向する電極径による線形特性を比較するグラフである。横軸は、並行に向かい合う電極面の電極間隔を垂直方向に段階的に広げた時の電極間隔であり、縦軸は、電場解析モデルの静電容量解析値を、並行平板電極の静電容量換算式(上記の式(1))にて回帰して得られる、換算値としての電極間隔である。
【0044】
図4から分かるように、電極をガードが包囲しないひずみ計より、電極をガード又はシールドが包囲するひずみ計の方が、縦軸の値と横軸の値との相違が小さい。更に、High電極をガードが、Low電極をシールドが包囲するひずみ計の方が、High電極とLow電極の双方をガードが包囲するひずみ計や、High電極のみをガードが包囲するひずみ計よりも、縦軸の値と横軸の値との相違が小さい。
【0045】
図5は、横軸は
図4と同一である一方で、縦軸を上記の相違、すなわち
図4における縦軸の値から横軸の値を差し引いた残差としたグラフである。
【0046】
図5のグラフから明らかなように、残差の絶対値は、High電極がガードによって包囲され、Low電極がシールドによって包囲されると共に、2つの電極が同径であるひずみ計が最も小さい。同様に、High電極がガードによって包囲され、Low電極がシールドによって包囲されると共に、2つの電極の大きさが異なるひずみ計での残差の絶対値が2番目に小さい。
一方、その他のひずみ計における残差の絶対値は、これらのひずみ計における残差の絶対値よりもはるかに大きい。
【0047】
図6は、
図5において、横軸の値が500μmと1,000μmのときの残差の値を、各ひずみ計ごとに示したグラフである。
図6からも明らかなように、残差の絶対値は、High電極がガードによって包囲され、Low電極がシールドによって包囲されると共に、2つの電極が同径であるひずみ計が最も小さく、High電極がガードによって包囲され、Low電極がシールドによって包囲されると共に、2つの電極の大きさが異なるひずみ計が、2番目に小さい。
【0048】
すなわち、2つの電極間で芯線間にズレがなく、2つの電極が並行している場合には、High電極をガードが包囲し、Low電極をシールドが包囲するひずみ計が、その他のひずみ計よりも線形特性が高く、High電極をガードが包囲し、Low電極をシールドが包囲するひずみ計の中でも、2つの電極が同径のひずみ計の方が、2つの電極が異径のひずみ計よりも線形特性が高い。
【0049】
〔3.2 傾き状態の線形特性〕
図7Aは、2つの15Φ電極の中心線における間隔が0.2mmのときにおいて、電極端部の近接距離が0.1mmとなる傾き状態(偏角:0.77°)を維持しながら、中心線における間隔を、垂直方向に1mmまで段階的に広げた時の電極間隔であり、縦軸は、電場解析モデルの静電容量解析値を、並行平板電極の静電容量換算式(上記の式(1))にて回帰して得られる、換算値としての電極間隔である。
また、
図7Bは、2つの15Φ電極の中心線における間隔が0.2mmのときにおいて、電極端部の近接距離が0.2mmとなる傾き状態(偏角:1.52°)を維持しながら、中心線における間隔を、垂直方向に1.2mmまで段階的に広げた時の電極間隔であり、縦軸は、電場解析モデルの静電容量解析値を、並行平板電極の静電容量換算式(上記の式(1))にて回帰して得られる、換算値としての電極間隔である。
【0050】
図7A及び
図7Bから分かるように、High電極及びLow電極の双方をガードが包囲しているひずみ計や、High電極のみをガードが包囲しているひずみ計よりも、電極が同径であれ異径であれ、High電極がガードによって包囲され、Low電極がシールドによって包囲されるひずみ計の方が、縦軸の値と横軸の値との相違が小さい。
【0051】
図8A及び
図8Bの各々は、横軸は
図7A及び
図7Bと同一である一方で、縦軸を上記の相違、すなわち
図7A及び
図7Bの各々における縦軸の値から横軸の値を差し引いた残差としたグラフである。
【0052】
図8A及び
図8Bのグラフから明らかなように、残差の絶対値は、High電極がガードによって包囲され、Low電極がシールドによって包囲されると共に、2つの電極が同径であるひずみ計が最も小さい。同様に、High電極がガードによって包囲され、Low電極がシールドによって包囲されると共に、2つの電極の大きさが異なるひずみ計での残差の絶対値が2番目に小さい。
一方、その他のひずみ計における残差の絶対値は、これらのひずみ計における残差の絶対値よりもはるかに大きい。
【0053】
更に、
図8Aのグラフと
図8Bのグラフとを比較すると、偏角が0.77°から1.52°に増加した際の残差の絶対値の変動は、電極が同径であれ異径であれ、High電極がガードによって包囲され、Low電極がシールドによって包囲されるひずみ計の方が、その他のひずみ計よりも小さい。
【0054】
図9は、
図8A及び
図8Bにおいて、横軸の値が1,000μmのときの残差の値を、各ひずみ計ごとに示した棒グラフである。
図8A及び
図8Bと同様、
図9からも明らかなように、残差の絶対値は、High電極がガードによって包囲され、Low電極がシールドによって包囲されると共に、2つの電極が同径であるひずみ計が最も小さく、High電極がガードによって包囲され、Low電極がシールドによって包囲されると共に、2つの電極の大きさが異なるひずみ計が、2番目に小さい。
【0055】
すなわち、2つの電極が互いに傾いている場合にも、High電極をガードが包囲し、Low電極をシールドが包囲するひずみ計が、その他の電極よりも線形特性が高いと共に、電極間の傾きや傾きの変動による線形特性への影響は小さい。
【0056】
更に、High電極をガードが包囲し、Low電極をシールドが包囲するひずみ計の中でも、2つの電極が同径のひずみ計の方が、2つの電極が異径のひずみ計よりも線形特性が高い。
ただし、偏角が0.77°のときと、1.53°のときとでの残差の相違は、2つの電極が同径のひずみ計と2つの電極が異径のひずみ計とで同一の値(Δ10)を示す。すなわち偏角の変化に伴う残差の変化は、2つの電極が同径のひずみ計と2つの電極が異径のひずみ計とで変わらない。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
ひずみ量の測定において、誤差の発生を極力防止することにより、基本式からのずれ量を低減し、より正確なひずみ量を得ることが可能な、静電容量式ひずみ計を提供する。
互いに対向する複数の電極11と、前記複数の電極の各々を前記対向面側が開放された状態で包囲し、導電性を有するガード12A及びシールド12Bと、複数の電極11の各々と計測装置20とを接続する、複数の2軸シースケーブル30とを備える。