【文献】
衣笠 潤一郎 他,複合サイクル試験による高強度鋼板の遅れ破壊評価,神戸製鋼技報,2011年 8月,Vol.61,No.2,pp.65-68
【文献】
島田 隆登志 他,定露点型サイクル試験中の1100アルミニウム合金の腐食挙動における付着塩の影響,材料と環境,2013年,V0l.62,No.244,pp.56-60
【文献】
SCHINDELHOLZ E. et al.,Effect of Relative Humidity on Corrosion of Steel under Sea Salt Aerosol Proxies,Journal of The Electrochemical Society,2014年 7月,Vol.161,No.10,pp.C450-C459
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基本工程における、少なくとも1回の基本サイクルにおいて、前記湿潤工程、前記乾燥工程及び高湿潤工程を1回ずつ行い、前記乾燥工程と前記高湿潤工程との間で前記湿潤工程を行い、
前記高湿潤工程を、85(%)≦Hp≦100(%)(Hpは高湿潤工程における相対湿度(%)である。)の条件で行う、
ことを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の水素脆化特性の評価方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明者らが検討したところ、従来のサイクル試験による水素脆化特性の評価方法では、実環境の水素脆化現象(割れの頻度、割れ発生の限界応力)が正確に再現されないことがわかった。その理由を明らかにするため、実環境(融雪塩環境)に薄鋼板のサンプルを設置するとともに、一般的な複合サイクル腐食試験(日本自動車規格JASO M609)によって薄鋼板のサンプルを試験し、一定期間経過後に、実環境に設置したサンプルと複合サイクル腐食試験に供したサンプルのそれぞれについて、鋼中水素濃度を昇温脱離分析で定量化した。その結果、複合サイクル腐食試験を実施した鋼板は、実環境に設置した鋼板よりも鋼中水素濃度が低くなることが判明した。
そこで、発明者らは複合サイクル腐食試験において、自動車走行環境と同等の水素を鋼中に侵入させ、応力を印加した試験片での割れの有無が、印加した応力水準と一致する条件を検討した。発明者らは複合サイクル腐食試験の各工程における腐食反応や水素の発生、金属材料中の水素の増減について詳細に調査し、以下の知見を得た。
【0019】
複合サイクル腐食試験において、金属塩を含む液膜を付着させた金属材料を、湿潤環境と、湿潤環境よりも相対湿度が低い乾燥環境とに交互に暴露させると、湿潤環境においては液膜中の塩化物イオンによる腐食反応により水素が発生し、この水素が金属材料中に侵入する。乾燥環境においては、金属材料の表面に付着した液膜の厚みが減少し、これに伴い金属塩の濃度が上昇して腐食反応が促進される。この腐食反応の促進により水素発生量が増加し、金属材料中(例えば鋼中)への水素の侵入量が増大する。更に乾燥環境での暴露を継続させ乾燥が進行し、液膜がほぼなくなると、腐食が進まなくなるため水素発生速度が低下し、水素の侵入量も低下する。その後、更に乾燥を続けると、金属材料からの水素の放出量が侵入量を上回り、金属材料中の水素濃度が低下する。
【0020】
乾燥の進行により金属材料からの水素放出量が増大する傾向は、乾燥環境での温度が高いほど顕著となる。一般的に腐食反応は温度が高い方が進行するため、従来の複合サイクル腐食試験では、乾燥工程の温度は腐食を促進するために比較的高い温度に設定される場合が多い(例えば60℃)。
このため、従来の複合サイクル腐食試験においては湿潤工程および乾燥工程初期に金属材料中に侵入した水素の大部分が乾燥工程で放出されてしまう。発明者らは、これが、従来の複合サイクル試験における水素放出挙動が実環境での水素放出挙動と大きく異なる原因の一つであると考えた。
【0021】
さらに発明者らは、複合サイクル腐食試験の湿潤工程における環境条件と金属材料への水素侵入量について詳細な調査、検討を行った。その結果、従来は、湿潤工程における相対湿度が高いほど金属材料への水素の侵入量が多くなると考えられていた。しかし、所定の条件で金属材料の表面に金属塩を付着させる場合、金属材料への水素の侵入量は、試験に用いる金属塩の潮解湿度による影響が大きいことが分かった。そして、用いる金属塩の潮解湿度に近い湿度で金属材料の暴露を行ったときに、水素の発生量が増加し、金属材料への水素侵入量が増大することを見出した。
本発明は、乾燥工程における設定温度に関する新たな知見、並びに、湿潤工程における塩化物の潮解湿度による金属材料への水素侵入挙動に関する新たな知見に基づき、発明者らが鋭意検討を重ね、完成に至ったものである。
【0022】
以下、本発明の実施形態である水素脆化特性の評価方法について説明する。
本実施形態の水素脆化特性の評価方法では、金属材料の表面に、塩化物を含む金属塩を付着させる塩付着工程と、当該塩付着工程後に行う工程であって、当該金属材料を相対湿度H
hの雰囲気中に暴露させる湿潤工程と、当該金属材料を相対湿度H
lo(ただし、H
lo<H
h)の雰囲気中に暴露させる乾燥工程とを1回ずつ行う操作を基本サイクルとし、当該基本サイクルを1回以上含む基本工程と、を有する。
さらに、基本工程における少なくとも1回の湿潤工程を、H
s−10(%)≦H
h≦H
s+10(%)(H
hは湿潤工程における相対湿度(%)であり、H
sは前記金属塩の潮解湿度(%)である。)の条件で行う。
【0023】
本実施形態の水素脆化特性では、基本工程における少なくとも1回の湿潤工程における相対湿度を金属塩の潮解湿度と同程度(±10%)にすることで、湿潤工程において金属材料への水素の侵入量を増加させる。その結果、実環境よりも金属材料中の水素濃度が低くなることを抑制し、実環境での水素脆化特性を正確に模擬することが可能になる。
【0024】
(金属材料)
本実施形態の評価方法に供される金属材料としては、鉄鋼材料を例示できる。金属材料の形態は特に限定がなく、板材、棒材、管材のいずれでもよいが、本実施形態の評価方法は板厚が比較的薄い板材や管材への評価に特に適する。
また、水素脆化特性を評価するため、試験中の金属材料には、引張、曲げ、ねじりなどの応力を付与することが必要となる。金属材料に応力を付与する方法としては、小型の冶具を作成し、金属材料からなる試験片に引張応力を付与しても構わない。また、金属板をU字状やL字状に曲げることで自動車用部品を模擬した塑性変形を付与した後、更にボルトなどでの締め付けにより曲げ応力を付与することで、金属板の曲げの外周面側に引張応力を付与してもよい。金属材料に対しては、加工により応力が付与されていればよく、金属材料の特性に応じて、U字状の曲げでなくとも適宜曲げの角度を調整してもよい。
【0025】
試験片の形状や端面の処理は、実際に評価したい対象に合わせて設定すればよい。例えば、切断端面の影響を考慮する場合は、実際の自動車部品製造工程に類似した端面状況を達成するため、金型での打ち抜きや、シャーでのせん断を行い、端面の影響を考慮しても構わない。この場合にも、本実施形態の評価方法を好ましく用いることができる。また、試験片に対して、めっき処理、化成処理、塗装などの表面処理が施されていてもよい。
【0026】
本実施形態の評価方法は、特に、実際の自動車部品として用いられる、張力780MPa以上の鉄鋼材料に好ましく用いることができる。本実施形態の評価方法が好ましく用いられる鋼種としては、Dual Phase鋼などの複相鋼や残留γ鋼、およびマルテンサイト組織を有する焼入れ鋼が挙げられる。
【0027】
本実施形態では、水素脆化特性を評価するため、湿潤工程、乾燥工程、及び塩付着工程の各工程を少なくとも含む全工程を、金属材料に引張応力を付与した状態で行う。そして、これらの各工程を1回以上行った後、金属材料の表面における割れの有無を確認することで、水素脆化特性の評価を行う。
【0028】
以下、各工程について説明する。
(塩付着工程)
塩付着工程は、金属材料の表面に金属塩を付着させる工程である。塩付着工程により、金属材料の表面に金属塩を含む液膜を形成させる。
【0029】
金属材料に付着させる金属塩としては、塩化物を含むものが好ましい。具体的には、金属塩は、NaCl、MgCl
2、CaCl
2、KClの何れか1種または2種以上を含むものがよい。塩化物以外の成分としては、硫化物や硝酸化合物などが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、塩化物以外の成分としてMgSO
4やNaHCO
3を例示できる。
【0030】
実際の腐食環境を考慮すると、例えば海岸近くの地域における水素脆化特性を模擬する場合は、金属塩としてNaClを主体とする成分(NaClが全成分の50質量%超である成分)であることが好ましい。また、冬期に融雪剤を頻繁に散布する地域における水素脆化特性を模擬する場合は、金属塩の組成を、その地域に散布される融雪剤の成分に近い組成にすることが好ましい。融雪剤に近い成分としては、金属塩としてCaCl
2を主体とする成分(CaCl
2が全成分の50質量%超である成分)、MgCl
2を主体とする成分(MgCl
2が全成分の50質量%超である成分)、NaClを主体とする成分(NaClが全成分の50質量%超である成分)などを例示できる。
複数の金属塩を組み合わせて用いる例として、例えば、米国自動車技術会規格(SAE J2334)(0.5%NaCl−0.1%CaCl
2−0.075%NaHCO
3)、人工海水(2.5%NaCl−0.5%MgCl
2−0.12%CaCl
2−0.07%KCl他(例えば、八洲薬品株式会社製アクアマリン(登録商標)の水溶液))などを例示できる。
【0031】
金属材料の表面に金属塩を付着させる手段としては、金属塩を含む溶液を金属材料の表面に噴霧してもよいし、金属塩を含む溶液中に金属材料を浸漬させてもよい。金属塩を含む溶液における溶媒としては、水を用いることが好ましい。
金属塩を含む溶液中の金属塩の濃度が0.1質量%以上であると、十分に腐食が促進されるため、好ましい。また、金属塩の濃度が10質量%以下であると、腐食挙動や水素侵入挙動が実環境と乖離することがなく、好ましい。
【0032】
塩付着工程では、腐食が顕著に進行するため、液膜中での水素発生量が増加し、金属材料に対する水素侵入量が金属材料からの水素放出量より大きくなる。塩付着工程の温度は、40℃以下であることが好ましい。塩付着工程の温度を40℃以下に設定することで、金属塩を含む溶液が金属材料に付着した後、すぐに乾燥してしまうことを防ぎ、塩付着工程における試験面内の均一性を確保できるという効果がある。
噴霧によって金属材料に金属塩の液膜を形成させる場合、金属材料に十分に金属塩を付着させるために、金属塩の溶液の噴霧時間は1秒以上とすることが好ましい。また、噴霧時間が10時間以下であると、腐食挙動や水素侵入挙動が実環境と乖離することが多くなく、好ましい。また、噴霧時間は4時間以下がより好ましい。噴霧の際の噴霧量は、80cm
2の漏斗に1〜3g/時間が望ましい。
【0033】
また、噴霧によって金属材料に金属塩の液膜を形成させる場合、金属材料の表面の傾斜角度を水平面に対して0°とするのが好ましい。傾斜角度を水平にした金属材料の表面に金属塩の液膜が溜る場合には、金属材料の表面を水平面に対して傾斜させても構わない。
【0034】
本実施形態の評価方法では、基本工程の前又は基本工程の後に、塩付着工程を1回以上行ってもよい。後述する基本工程は、湿潤工程と乾燥工程とを1回ずつ行う基本サイクルを1〜7回含むことが好ましい。基本工程における基本サイクルの回数が7回を超えると、金属材料に付着させた金属塩の大部分が基本工程の実施中に流れ落ち、腐食と水素発生が顕著に抑制される虞がある。
【0035】
(基本サイクル)
本実施形態の水素脆化特性の評価方法では、湿潤工程と乾燥工程とを交互に1回ずつ行う操作を基本サイクルとする。基本サイクルは、湿潤工程後に乾燥工程を行うものであってもよいし、乾燥工程後に湿潤工程を行うものであってもよい。
図1に、基本サイクルの一例を示す。
図1には、相対湿度30%で乾燥工程を行い、その後、一定の変化速度で湿度を増加させ、相対湿度80%で湿潤工程を行う例を示している。
図1は横方向が時間の経過を表しており、縦方向が湿度の高低を表している。
【0036】
基本サイクルは、少なくとも1回以上実施する。基本サイクルの繰り返し回数は、模擬したい実環境に応じて決定すればよい。また、基本サイクルにおいては、塩付着工程と同様に、金属材料の表面の傾斜角度を水平面に対して0°とするのが好ましく、金属材料の表面を水平面に対して傾斜させてもよい。
【0037】
(基本工程)
基本工程は、上記の基本サイクルを1回以上含む。基本工程は、湿潤工程と乾燥工程とを1回ずつ行う基本サイクルを1〜7回含むことが好ましい。
なお、最初の基本工程の前に、上述の条件で塩付着工程を実施してもよく、この塩付着工程は上述の条件と異なってもよい。また、最後の工程が基本工程であってもよい。
【0038】
(乾燥工程)
乾燥工程は、金属塩が付着した金属材料を、相対湿度H
loの雰囲気中に暴露させる工程である。乾燥工程では、相対湿度H
loが、湿潤工程における相対湿度H
hよりも低い(H
lo<H
h)。これにより、金属塩を含む液膜の厚みが徐々に減少する。乾燥工程では、乾燥工程の初期に水素を金属材料に侵入させる。乾燥工程は、腐食をある程度進める工程でもある。
乾燥工程を行うことで、液膜が減少して液膜中の金属塩が濃縮される際に、水素発生量が増加する。本実施形態の評価方法を実環境により近づけるためには、乾燥工程においてできるだけ多くの水素を発生させるとともに、発生した水素を金属材料中に侵入させることが好ましい。
【0039】
乾燥工程においては、保持温度を40℃以下とすることが好ましい。保持温度を40℃以下とすることで、金属材料から放出される水素量を低減し、金属材料中の水素濃度を顕著に増大させることができる。その理由は次の通りである。乾燥工程において液膜がほぼ消失すると、水素発生速度が低下する。更に乾燥工程を進めると、金属材料からの水素の放出量が侵入量を上回り、金属材料中の水素濃度が低下する。この傾向は温度が高いほど顕著となる。金属材料からの水素の放出をさらに抑制するためには、基本工程における少なくとも1回の乾燥工程における保持温度を30℃以下とすることが好ましい。保持温度が30℃以下であると、実環境との乖離がより小さくなる。全ての乾燥工程における温度を30℃以下にしてもよい。
【0040】
乾燥工程においては、相対湿度を0%〜60%の範囲とすることが好ましい。このことにより、乾燥工程において発生した水素を十分に金属材料に侵入させることができる。乾燥工程における相対湿度は、0%〜50%の範囲であれば更によく、0%〜45%の範囲であれば最もよい。また、上記相対湿度は、金属材料からの水素の放出を抑制するために、金属塩の潮解湿度よりも低い湿度であることが好ましい。なお、全ての乾燥工程における相対湿度を0%〜60%の範囲としてもよい。また、相対湿度の下限は、例えば10%であってもよい。
【0041】
乾燥工程においては、液膜の減少による腐食と水素発生の促進の効果を得るため、乾燥工程の保持時間を1分以上にすることが好ましい。上記条件における保持時間は、望ましくは10分以上、より望ましくは20分以上、更に望ましくは30分以上、最も望ましくは60分以上である。液膜が十分に減少してからの乾燥工程の時間が長いと、金属材料からの水素の放出量が増加し、実環境と合わなくなる。このため、乾燥工程は6時間以下であることが望ましい。上記の保持時間は、より望ましくは4時間以下、更に望ましくは2時間以下である。なお、全ての乾燥工程における保持時間を1分以上6時間以下にしてもよい。
【0042】
本実施形態では、基本工程における少なくとも1回の乾燥工程を、温度30℃以下、相対湿度0%〜60%、1分以上、好ましくは10分以上6時間以下の条件で行うことが好ましい。この条件で乾燥工程を実施することにより、乾燥工程における金属材料からの水素の放出が抑制され、実環境での水素脆化特性を正確に模擬できる。本実施形態では、実環境での水素脆化特性をより正確に模擬するために、全ての乾燥工程を上記条件で行うことが、より好ましい。なお、全ての乾燥工程を、温度30℃以下、相対湿度0%〜60%、1分以上、好ましくは10分以上6時間以下の条件で行ってもよい。
【0043】
(湿潤工程)
湿潤工程は、金属塩が付着した金属材料を、相対湿度H
hの雰囲気中に暴露させる工程である。湿潤工程により、金属材料の表面に付着した金属塩を潮解させて、液膜を成長させる。湿潤工程における液膜中では、金属材料が腐食されることに伴って水素が発生する。発生した水素は、金属材料中に侵入する。
【0044】
本実施形態の評価方法では、基本工程における少なくとも1回の湿潤工程を、H
s−10(%)≦H
h≦H
s+10(%)の条件で行う。ここで、H
hは湿潤工程における相対湿度(%)であり、H
sは金属塩の潮解湿度(%)である。なお、全ての湿潤工程を、H
s−10(%)≦H
h≦H
s+10(%)の条件で行ってもよい。
【0045】
本発明者らは、金属塩の潮解湿度に近い湿度に暴露したときに、水素の発生量が増加することを知見している。これは、腐食速度が湿度に伴って単調に増加することとは異なる傾向である。
湿潤工程における相対湿度H
hを金属塩の潮解湿度H
sの±10(%)の範囲に保持することで、相対湿度H
hが上記範囲外である場合と比較して、実環境での水素脆化特性をより正確に模擬できる理由は、以下のように推定される。すなわち、上記条件で塩付着工程および湿潤工程を行った場合、金属材料の表面における液膜量が適度に減少して塩濃度が増加する。その結果、下記式で示されるように、濃厚塩化物溶液中の加水分解反応が生じ、水素の発生が促進されるものと推定される。
【0046】
Fe
2+→Fe
3++e
−
Cl
−+Fe
3+ →hydrolysis
(Fe
3++3H
2O→Fe(OH)
3+3H
+)
【0047】
なお、従来、金属塩の潮解湿度H
sよりも低い相対湿度中に金属材料を暴露すると、表面の液膜がなくなり、水素発生が促進されないと考えられていた。しかし、本発明者らが検討したところ、金属塩の潮解湿度H
sよりも10%低い湿度でも水素侵入促進の効果が得られることが判明した。これは、金属塩に製造由来または大気由来の不純物が含まれているため、実際の金属塩の潮解湿度が、理論上の潮解湿度H
sよりも低くなったことが原因であると推測される。
【0048】
また、湿潤工程における相対湿度H
hが金属塩の潮解湿度H
sと同じか僅かに高い場合には、金属材料の表面の液膜が減少するのに長時間を要する。その結果、金属材料の表面に薄い液膜が存在している時間が長く維持され、水素侵入が促進されたと考えられる。
【0049】
実環境では、H
s−10≦H
h≦H
s+10の環境になることは頻繁に起こり得る。しかし、腐食の促進を目的とした既存の複合サイクル腐食条件では、通常、湿潤工程における相対湿度が高く設定されている。例えば、SAEの規格では100%に設定されている。このことからも、従来の水素脆化特性の評価方法では、湿潤工程における水素侵入挙動の乖離があったことも、評価結果が実環境と乖離していた一因であると考えられる。
【0050】
本実施形態の評価方法では、基本工程における少なくとも1回の湿潤工程における相対湿度H
hを、金属塩の潮解湿度と同程度(H
s±10(%))にするので、湿潤工程における水素の侵入量が増加し、実環境よりも金属材料中の水素濃度が低くなることが抑制される。したがって、実環境での水素脆化特性をより正確に模擬できる。
湿潤工程の相対湿度H
hがH
s−10(%)以上であると、液膜量が減少しすぎることがなく、上記の反応式が進みやすくなるため、水素侵入促進の効果が顕著になると推測される。また、湿潤工程の相対湿度H
hがH
s+10(%)以下であると、液膜量の減少により容易に濃厚塩化物溶液が生成され、上記加水分解反応が生じやすくなるため、水素侵入促進の効果が顕著になると推測される。
【0051】
本実施形態の評価方法では、実施する塩付着工程のうち少なくとも1回の塩付着工程を上述の条件で行い、湿潤工程のうち少なくとも1回の湿潤工程における相対湿度H
hを、金属塩の潮解湿度と同程度(H
s±10(%))にすることで、金属塩の付着量が十分に確保されて濃厚塩化物溶液が生成されやすくなり、上記加水分解反応が生じやすくなる。
【0052】
また、本実施形態の評価方法では、基本工程における少なくとも1回の湿潤工程を、H
s−10(%)≦H
h≦75(%)の条件で行ってもよい。ここで、H
hは湿潤工程における相対湿度(%)であり、H
sは前記金属塩の潮解湿度(%)である。この場合にも湿潤工程において、液膜の厚さが適度に減少して塩濃度が増加するため、実環境での水素脆化特性をより正確に模擬できる。全ての湿潤工程を、H
s−10(%)≦H
h≦75(%)の条件で行ってもよい。
【0053】
湿潤工程における相対湿度H
hは、高くなるほど液膜の厚さが増加するため、水素侵入促進の効果が低下する。本実施形態の評価方法では、液膜の厚さを減少させて、湿潤工程における水素侵入促進を図るために、湿度H
hを75%以下とすることがより好ましい。
【0054】
なお、本実施形態において、金属塩が、複数の塩を含有する場合には、それぞれの塩の潮解湿度と重量濃度により、当該塩の潮解湿度を推定するものとする。例えば、潮解湿度75%のNaClを3%、潮解湿度33%のMgCl
2を0.6%含有する水溶液を使用する場合には、重量比(NaCl:MgCl
2)が5:1であるため、潮解湿度は33%と75%の間の5:1でNaCl寄りとなる。この場合の潮解湿度は、33+(5/6)×(75−33)=68%である。
また、各金属塩の潮解湿度は、NaCl:75%、CaCl
2:50%、MgCl
2:33%、MgSO
4:93%、KCl:34%として計算してもよい。
【0055】
湿潤工程の保持時間は、10分〜12時間が好ましく、30分〜8時間がより好ましい。保持時間が10分未満では、金属材料表面が十分に湿潤せず、水素の侵入が十分に促進されないおそれがあるし、評価結果がばらつくおそれもあるので好ましくない。また、保持時間が12時間を超えると、腐食形態の実環境との乖離が大きくなるので、好ましくない。
【0056】
湿潤工程における保持温度T
2は、40℃以下とすることが好ましい。湿潤工程における温度が高すぎると、金属材料からの水素の放出量が多くなり、金属材料への水素の侵入量を上回り、金属材料中の水素濃度が低下する。金属材料からの水素の放出は、湿潤工程における温度が高いほど顕著となる。湿潤工程における保持温度T
2が40℃以下であると、金属材料からの水素の放出を抑制でき、好ましい。
【0057】
乾燥工程における温度T
1(℃)と、湿潤工程における温度T
2(℃)との関係は、T
1<T
2−5(℃)であることが好ましい。乾燥工程における保持温度T
1を、湿潤工程における保持温度T
2−5℃未満とすることで、乾燥工程における水素の放出を更に抑制できる。
【0058】
(高湿潤工程)
本実施形態の評価方法では、基本工程における、少なくとも1回の基本サイクルが、湿潤工程、乾燥工程及び高湿潤工程を1回ずつ行うものであることが好ましい。また、湿潤工程は、乾燥工程と高湿潤工程との間で行うことが好ましい。ここで、基本サイクルのうち、1回のみの基本サイクルが、湿潤工程、乾燥工程及び高湿潤工程をそれぞれ1回ずつ行うものであってもよいし、全ての基本サイクルが、湿潤工程、乾燥工程及び高湿潤工程をそれぞれ1回ずつ行うものであってもよい。
【0059】
具体的には、少なくとも1回の基本サイクルが、高湿潤工程を行い、その後、湿潤工程を行い、次いで、乾燥工程を行うものであればよい。また、少なくとも1回の基本サイクルが、乾燥工程を行い、その後、湿潤工程を行い、次いで、高湿潤工程を行うものであってもよい。
図2に、高湿潤工程を加えた場合の基本サイクルの一例を示す。
図2には、相対湿度30%で乾燥工程を行い、その後、一定の変化速度で湿度を増加させ、相対湿度約80%で湿潤工程を行い、次いで、一定の変化速度で湿度を増加させ、相対湿度95%で高湿潤工程を行い、その後、次のサイクルの乾燥工程に移行する例を示している。
図1と同様に、
図2では横方向が時間の経過を表しており、縦方向が湿度の高低を表している。また、
図2では、湿潤工程内で相対湿度を約80%まで緩やかに高くする例を示している。
【0060】
高湿潤工程は、湿潤工程よりも相対湿度が高い雰囲気で行う。具体的には、高湿潤工程は、85(%)≦H
p≦100(%)の条件で行うことが好ましい。ここで、H
pは高湿潤工程における相対湿度(%)である。
【0061】
本実施形態における高湿潤工程は、実環境における腐食挙動を再現させる工程と位置づけられる。本実施形態では、基本サイクルにおいて湿潤工程を行うが、湿潤工程は、金属材料に水素を侵入させる工程と位置づけられており、実環境における水素侵入挙動を促進し、模擬している。しかし、湿潤工程及び乾燥工程のみを含む基本サイクルは、実環境の腐食挙動を必ずしも正確に模擬するものではない。
【0062】
水素脆化は、基本的には初期に試験片に負荷した応力と水素の侵入量とに依存して生じる。このため、水素の侵入挙動を模擬することで、水素脆化の促進試験が可能である。しかし、鋼種によっては、腐食によって生じた腐食ピットが応力集中部となり、水素脆化が促進される要因になるものがある。そのような鋼種からなる金属材料を評価する場合、水素の侵入挙動のみでなく、腐食ピットの生成挙動も同時に模擬する必要がある。
そこで、発明者らは、腐食挙動が比較的よく再現される、乾燥工程と高湿潤工程(湿度85%以上)との繰り返しサイクルに、水素の侵入を促進する工程である湿潤工程を組み込んだ。このことにより、腐食挙動を模擬しながら水素侵入挙動を模擬できることを知見するに至った。そして、乾燥工程から高湿潤工程への遷移期間中、または、高湿潤工程から乾燥工程への遷移期間中に、水素の侵入を促進する湿潤工程を段階的に組み込むことで、最も実環境の腐食挙動の再現性がよい評価方法となることを知見した。
【0063】
高湿潤工程の相対湿度H
pが85%以上であると、腐食挙動が再現されやすくなり、腐食挙動を模擬しながら水素侵入挙動を模擬できる。高湿潤工程の相対湿度H
pの上限は100%である。腐食促進の面から、高湿潤工程の相対湿度H
pは、液膜が増加しすぎない95%未満がより望ましい。
【0064】
高湿潤工程の保持時間は、10分以上12時間以下であることが好ましく、20分以上6時間以下がより好ましい。高湿潤工程の保持時間が10分以上であると、高湿度工程を行うことによる効果が十分に得られる。一方、保持時間が12時間以下であると、腐食生成物および腐食ピットの形状などが実環境から乖離することがなく、好ましい。
【0065】
高湿潤工程における保持温度は、45℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましく、30℃以下がさらに好ましい。高湿潤工程における保持温度が40℃以下であると、金属材料からの水素の放出を抑制でき、好ましい。
また、乾燥工程における温度は、高湿潤工程における温度よりも低いことが好ましい。乾燥工程における保持温度を、高湿潤工程における保持温度未満とすることで、乾燥工程における水素の放出を更に抑制できる。
【0066】
高湿潤工程を実施する場合の湿潤工程は、湿潤工程中で相対湿度を一定に保っても良いし、
図2に示すように、湿潤工程の相対湿度の範囲内で、相対湿度を緩やかに変化させてもよい。湿潤工程における相対湿度を変化させる場合、湿潤工程内での相対湿度の変化速度は、乾燥工程から高湿潤工程に至る遷移期間全体、または高湿潤工程から乾燥工程に至る遷移期間全体における相対湿度の平均変化速度の3/4以下とするとよく、より望ましくは1/2以下がよい。湿潤工程内で相対湿度を緩やかに変化させることで、金属材料に対する水素の侵入をより促進させることができる。
また、湿潤工程から高湿潤工程への遷移期間における相対湿度は、平均変化速度が20%/時間以下であることがより好ましい。平均変化速度が20%/時間以下であれば、環境が乱れて制御が困難となる可能性が低い。
【0067】
(冷凍工程)
本実施形態の評価方法では、基本工程の前又は基本工程の後で、金属材料を0〜−50℃の雰囲気に暴露させる冷凍工程を1回以上行うことが好ましい。冷凍工程を実施することで、特に融雪剤が散布されるような寒冷地における腐食環境を再現でき、実環境での水素脆化特性を正確に模擬することが可能になる。また、冷凍工程を行うことにより、金属材料に塗膜を設けた場合、塗膜にダメージを与え、その後の腐食をより有効に進めることができる。
【0068】
冷凍工程における雰囲気温度は、0〜−50℃であることが好ましく、−20〜−40℃であることがより好ましい。冷凍工程の温度が0℃を超えると、寒冷地の実環境を模擬できなくなる。また、冷凍工程の温度が−50℃以上であると、実環境での水素脆化特性を正確に模擬することが可能になる。
【0069】
また、冷却工程の保持時間は、30分〜6時間とすることが好ましく、より好ましくは40分〜2時間とする。冷凍工程の保持時間が30分以上であると、寒冷地の実環境をより正確に模擬でき、好ましい。また、冷凍工程の保持時間が6時間以下であると、実環境からの乖離が大きくなることがなく、好ましい。
なお、冷凍工程は、塗膜を塗布した場合に塗膜にダメージを与える意図で行うものである。冷凍工程では、金属材料からの水素の放出速度がかなり低下するので、冷凍工程における湿度は、積極的に制御する必要はない。
【0070】
本実施形態の評価方法では、湿潤工程、乾燥工程及び塩付着工程を40℃以下の雰囲気中で行うようにしてもよい。湿潤工程、乾燥工程及び塩付着工程を40℃以下の雰囲気中で行うことで、金属材料から放出される水素量を低減し、金属材料中の水素濃度を顕著に増大させることができ、促進効果を高めることができる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により、本発明をより詳細に説明する。
先ず、板厚1.4mmのSCM435鋼の鋼板にせん断および穴開け加工を施し、
図3に示す形状を有する鋼板を作製した。この鋼板を900℃まで加熱し、U曲げ加工(曲率半径10mmで曲げ角160°)を施すと同時に、金型冷却にて焼き入れを施す事で、U字状に曲げが付与されかつ、1800MPa級のマルテンサイト単相組織を有する鋼板を得た。その後、300℃で3時間焼き戻しを行い、U字状に曲げが付与された1470MPa級の鋼板を製造した。この鋼板を用いて、下記の方法により水素脆化評価用の試験片を作製し、さらに曲げ応力を付与してサイクル試験機に配置した。
【0072】
曲げが付与された鋼板に対して、
図4に示す様に、試験片の穴部にSUS304で作成したボルト及びナットを通し、ボルト締め付け量を変えることでU曲げ頂点部に曲げ応力を付与した。このような曲げが付与された鋼板により、自動車用鋼板に特有なプレス成形による塑性ひずみを模擬した。
なお、ボルトおよびナットと、評価対象とすると鋼板が直接接触すると、それぞれの腐食電位の差から局部電池を形成し、局所的な腐食を誘発する虞がある。このため、試験片の穴部に、テフロン(登録商標)製の絶縁材を配設した。これにより、ボルトおよびナットと、評価対象としているU曲げ加工された鋼板との直接的な接触を回避した。
【0073】
付与した応力の絶対値を推定するためには、U字状の熱間曲げ加工後の残留応力影響を加味しなければならない。したがって、正確な負荷応力を議論する事は容易では無い。実際の評価の場合には、対象としている自動車部品での塑性歪量や負荷応力による変形量を基準にして試験片を作成すれば良い。
しかし、本実施例の目的は、実使用環境とサイクル試験での負荷応力に対する割れ頻度の関係を調査することである。よって、絶対値の測定が困難な応力ではなく、U字状の曲げの頂点における歪量に基づき、歪負荷条件に対する割れ個数を観測した。応力はボルト締め付け力で付加した。また、U字状の曲げの頂点にゲージレングス3mmの歪ゲージを貼り、歪ゲージから歪量を読み取った。
【0074】
なお、試験における金属材料の形状はU字状に限られない。対象となる金属材料に応力が付加されていればよく、金属材料の材質に応じて、形状や応力の付加方法は適宜変更可能である。
【0075】
このようにして作製した水素脆化評価用の試験片に対して、表1から8に示す条件で乾燥工程(A)、湿潤工程(B)、高湿潤工程(C)、冷凍工程(D)、塩付着工程(E)を行う腐食サイクル試験を行ない、水素脆化特性を評価した。
なお、下記の表において、本発明の要件を満たさないものに下線を付した。すなわち、下線がある数値などを含む実験例は、本発明の実施例に対する比較例である。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
【0082】
【表7】
【0083】
【表8】
【0084】
(腐食サイクル試験)
「乾燥工程(A)」及び「湿潤工程(B)」、又は「乾燥工程(A)」、「湿潤工程(B)」及び「高湿潤工程(C)」を基本サイクルとし、この基本サイクルを1回以上行う工程を基本工程とした。また、表3,4,5及び6に示すように、塩付着工程(E)及び冷凍工程(D)を実施した。各工程における、温度、相対湿度、保持時間などの条件は表1から8に示すとおりである。
表3,4,7及び8に記載した順序と回数の基本サイクルを含む基本工程を実施した。基本工程の実施回数は表3及び4の通りである。表7及び8の「各工程の所要時間」とは、乾燥工程(A)、湿潤工程(B)、高湿潤工程(C)、塩付着工程(E)、又は冷凍工程(D)の保持時間の合計である。
【0085】
塩付着工程(E)では、試験片の表面に、表5及び6に示す種類および比率の塩化物を付着させた。塩付着方法は、噴霧か浸漬のいずれかを用いた。噴霧で塩付着を行う場合、塩化物を純水に溶解し、表5及び6に示す塩化物の濃度に調整した水溶液を作製し、この水溶液を試験片より高い位置から噴霧する方法とした。噴霧の場合の相対湿度は95%超である。浸漬で塩付着を行う場合、塩化物を純水に溶解し、表1に示す塩化物の濃度に調整した水溶液を作製し、この水溶液中に試験片を浸漬する方法とした。サイクル試験機に試験片を設置する際における試験片の表面の傾斜角度は、水平面に対して0°に固定した。
腐食サイクル試験の結果を表9および10に示す。
【0086】
【表9】
【0087】
【表10】
【0088】
(暴露試験)
自動車の融雪塩環境での暴露試験(北海道室蘭市)を1年間行った。暴露試験は、融雪塩環境を模擬するために寒冷地で試験片を設置し、降雪後に融雪塩が実際に散布された日に、表11に示す融雪塩(塩化物)を試験片に散布した。散布の方法は、実際に自動車の走行環境において自動車の下面に融雪塩が付着することを想定し、表11に示す塩化物を純水に混合して表11に示す塩化物の濃度に調整した水溶液を、試験片にスプレー塗布した。暴露試験は、腐食により鋼板の板厚減肉割合が25%となった時点で中止した。
暴露試験の結果を表11に示す。
【0089】
【表11】
【0090】
腐食サイクル試験および暴露試験では、試験片のn数を各条件に対し10個とした。また、腐食サイクル試験および暴露試験における試験片の割れの有無は、休日を除き1日1回目視によって確認した。腐食サイクル試験及び暴露試験における割れ頻度の関係を整理した。
【0091】
表9および10に示すように、腐食サイクル試験の合否判定は、同じ塩の種類と濃度を使用した暴露試験結果との比較により行った。具体的には、応力負荷(U字状の曲げ頂点での歪量)の条件を3段階で変えた試験片を、各応力レベルに対して10個準備し、腐食サイクル試験および暴露試験での割れ発生個数をカウントして割れ発生率とした。腐食サイクル試験の終了時点での、暴露試験の割れ発生率に対する腐食サイクル試験の割れ発生率の誤差が30%以上となった腐食サイクル条件を不合格とした。
【0092】
表9および10に示すように、本発明例(実施例)である実験例1,2,5〜8,11〜16,19〜22,25〜32,35,36,39〜48,50〜61,63〜69はいずれも、腐食サイクル試験による割れ発生割合と、暴露試験での割れ発生割合との差が小さく、実環境での暴露試験を忠実に模擬できていた。
また、表9および10に示すように、15日経過時点の割れ発生率(%)についても、本発明例に係る上記の実験例では、他の実験例と比べて高い割れ発生率を示し、試験期間が短い場合にも、実環境の水素脆化現象を正確に再現できることがわかる。
【0093】
一方、他の実験例では、好適な腐食サイクル条件ではないため、いずれも暴露試験の結果とかい離しており、適正な水素脆化特性の評価が困難であることが分かる。
金属材料の水素脆化特性を評価する方法であって、前記金属材料の表面に、塩化物を含む金属塩を付着させる塩付着工程と、前記塩付着工程後に行う工程であって、前記金属材料を相対湿度H
)の雰囲気中に暴露させる乾燥工程とを1回ずつ行う操作を基本サイクルとし、前記基本サイクルを1回以上含む基本工程と、を有し、前記基本工程における少なくとも1回の湿潤工程を、H