特許第6573066号(P6573066)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573066
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/08 20060101AFI20190902BHJP
   E03D 11/13 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   E03D11/08
   E03D11/13
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-20446(P2015-20446)
(22)【出願日】2015年2月4日
(65)【公開番号】特開2016-142100(P2016-142100A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2018年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】浦田 伸一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 圭介
【審査官】 舟木 淳
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/085575(WO,A1)
【文献】 特開2014−037724(JP,A)
【文献】 特開2008−240323(JP,A)
【文献】 米国特許第04930167(US,A)
【文献】 中国実用新案第202117148(CN,U)
【文献】 特開2013−044177(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/085538(WO,A1)
【文献】 特開2014−194138(JP,A)
【文献】 特開2014−190076(JP,A)
【文献】 特許第5553188(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00−7/00、11/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水源から供給される洗浄水により便器を洗浄して汚物を排出する水洗大便器であって、
ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の上部に形成されたリム部と、このリム部と汚物受け面との間に形成された棚部と、汚物受け面の下方に形成された凹部と、を備えるボウル部と、
このボウル部の下方にその入口が接続され汚物を排出する排水路と、
上記ボウル部の前方から見て一方の側の棚部上に洗浄水を前方に向けて吐水して旋回流を形成する第1吐水口部と、
上記ボウル部の前方から見て他方の側の後方の棚部上に洗浄水を後方に向けて吐水して上記第1吐水口部から吐水される洗浄水の旋回方向と同一方向の旋回流を形成する第2吐水口部と、
洗浄水源に接続され洗浄水を上記第1吐水口部に供給する第1導水路と、
洗浄水源に接続され洗浄水を上記第2吐水口部に供給する第2導水路と、
これらの第1導水路及び第2導水路が、第2吐水口部から吐水される洗浄水の流量が、第1吐水口部から吐水される洗浄水の流量より多くなるように形成され、
上記第1吐水口部から吐水される洗浄水の大半は上記ボウル部の前方から上記凹部に流入し、上記第2吐水口部から吐水される洗浄水は、主流となり、この主流がボウル部の凹部の後方から凹部に直接流入し、上記第1吐水部から吐水されボウル部の前方から凹部に流入する洗浄水と混合され、これにより、凹部内に溜水を上下方向に撹拌する旋回流が形成されるように構成されていることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記第2吐水口部は、その開口面積が、上記第1吐水口部の開口面積より大きく設定されていることを特徴とする請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記第1吐水口部の開口面積と第2吐水口部の開口面積の比が、1:2〜10であることを特徴とする請求項2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記第2吐水口部は、その開口高さが、上記第1吐水口部の開口高さより高く設定されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項5】
上記第2導水路は、その第2吐水口部近傍の流線と直交する断面における横幅が、第2吐水口部に向かうにつれて拡がっていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項6】
上記第2導水路が、上記ボウル部側の内壁、及び、外側の外壁を備え、この外壁の曲率半径が下流に向かうにつれて拡大し、又は、外壁の下流領域がほぼ直線状に延びていることを特徴とする請求項4に記載の水洗大便器。
【請求項7】
上記第2導水路は、その内壁の下流領域が、上記外壁に対して平行又は遠ざかるように形成されていることを特徴とする請求項6に記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に洗浄水源から供給される洗浄水により便器を洗浄して汚物を排出する水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1に示されたように、ボウル形状の汚物受け面と、上縁に位置するリム部と、汚物受け面の下方に形成された凹部と、を備え、この凹部が溜水水位より下方に位置する底面と、この底面と汚物受け面の下縁部とを接続する壁面と、を備えたボウル部と、ボウル部の左右方向の一方側に位置すると共にボウル部の前方へ向けて洗浄水を吐水し、リム部の内周面に沿って旋回する旋回流を形成する第1リム吐水部と、ボウル部の左右方向の他方側に位置すると共に、リム部の内周面に洗浄水を吐水して第1リム吐水部による旋回流と同一方向の旋回流を形成する第2リム吐水部と、凹部にその入口が接続され汚物を排出する排水管路と、を有する水洗大便器が知られている。このような構造の水洗大便器においては、第1リム吐水部から吐水された洗浄水の主流がボウル部の前方側より凹部に流入し、第2リム吐水部から吐水された洗浄水が、ボウル部の凹部において、主流に横方向から流入し、これらにより、凹部内の溜水が上下方向に攪拌され、ボウル部内の浮遊系汚物を溜水内に沈めて排水管路内へ効率よく排出する事ができ、汚物排出性能を向上させることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5553188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような特許文献1に記載された水洗大便器では、第1リム吐水部から吐水され凹部に流入する洗浄水に、第2リム吐水部から吐水され凹部に流入する洗浄水がボウル部の側方側より合流するので、凹部内の溜水を上下方向に攪拌する上下方向の旋回流を起こす能力が小さくなるという問題があった。
さらに、第1吐水部から吐水されボウル部の前方側から凹部に流入した主流の洗浄水に、第2リム吐水部から吐水され横方向から凹部に流入した洗浄水を合流させるようにしているので、縦方向の旋回流を形成し難いという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、ボウル部の凹部内の溜水の上下方向の攪拌を促進して汚物排出性能を向上させることができる水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、洗浄水源から供給される洗浄水により便器を洗浄して汚物を排出する水洗大便器であって、ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の上部に形成されたリム部と、このリム部と汚物受け面との間に形成された棚部と、汚物受け面の下方に形成された凹部と、を備えるボウル部と、このボウル部の下方にその入口が接続され汚物を排出する排水路と、ボウル部の前方から見て一方の側の棚部上に洗浄水を前方に向けて吐水して旋回流を形成する第1吐水口部と、ボウル部の前方から見て他方の側の後方の棚部上に洗浄水を後方に向けて吐水して第1吐水口部から吐水される洗浄水の旋回方向と同一方向の旋回流を形成する第2吐水口部と、洗浄水源に接続され洗浄水を上記第1吐水口部に供給する第1導水路と、洗浄水源に接続され洗浄水を第2吐水口部に供給する第2導水路と、これらの第1導水路及び第2導水路が、第2吐水口部から吐水される洗浄水の流量が、第1吐水口部から吐水される洗浄水の流量より多くなるように形成され、第1吐水口部から吐水される洗浄水の大半はボウル部の前方から凹部に流入し、第2吐水口部から吐水される洗浄水は、主流となり、この主流がボウル部の凹部の後方から凹部に直接流入し、第1吐水部から吐水されボウル部の前方から凹部に流入する洗浄水と混合され、これにより、凹部内に溜水を上下方向に撹拌する旋回流が形成されるように構成されていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、第2吐水口部がボウル部の後方に向けて洗浄水を吐水し且つ第2吐水口部から吐水される洗浄水の流量が第1吐水口部から吐水される洗浄水の流量より多くなるように形成され、第1吐水口部から吐水される洗浄水の大半はボウル部の前方から凹部に流入し、第2吐水口部から吐水される洗浄水は、主流となり、この主流がボウル部の凹部の後方から凹部に直接流入し、第1吐水部から吐水されボウル部の前方から凹部に流入する洗浄水と混合され、これにより、凹部内に溜水を上下方向に撹拌する旋回流が形成されるように構成されているので、汚物排出性能を向上させることができる。
【0007】
本発明において、好ましくは、第2吐水口部は、その開口面積が、第1吐水口部の開口面積より大きく設定されている。
このように構成された本発明においては、第2吐水口部の開口面積が第1吐水口部の開口面積より大きく設定されているので、確実に、第2吐水口部から吐水される洗浄水の流量を第1吐水口部から吐水される洗浄水の流量より多くすることができ、それにより、凹部内に旋回流が形成され、この旋回流により溜水を上下方向に攪拌することでき、汚物排出性能を向上させることができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、第1吐水口部の開口面積と第2吐水口部の開口面積の比が、1:2〜10である。
このように構成された本発明においては、第1吐水口部の開口面積と第2吐水口部の開口面積の比が、1:2〜10であるので、第2導水路が洗浄水による摩擦抵抗が大きな流路形状であっても、確実に、第2吐水口部から吐水される洗浄水の流量を第1吐水口部から吐水される洗浄水の流量より多くすることができ、それにより、凹部内に旋回流が形成され、この旋回流により溜水を上下方向に攪拌することでき、汚物排出性能を向上させることができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、第2吐水口部は、その開口高さが、第1吐水口部の開口高さより高く設定されている。
このように構成された本発明においては、第2吐水口部の開口高さが第1吐水口部の開口高さより高く設定されているので、第2吐水口部から吐水される洗浄水の棚部との落差が大きくなり、その分、洗浄水が凹部に直接流入し易くなり、より効果的に、溜水を上下方向に攪拌して、汚物排出性能を向上させることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、第2導水路は、その第2吐水口部近傍の流線と直交する断面における横幅が、第2吐水口部に向かうにつれて拡がっている。
このように構成された本発明においては、第2導水路の第2吐水口部近傍の流線と直交する断面における横幅が第2吐水口部に向かうにつれて拡がっているので、第2吐水口部から吐水される洗浄水が水平方向に広がり易くなり、より確実に後方から凹部内に洗浄水を流下させることができ、それにより、凹部内に旋回流が形成され、この旋回流により溜水を上下方向に攪拌することでき、汚物排出性能を向上させることができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、第2導水路が、ボウル部側の内壁、及び、外側の外壁を備え、この外壁の曲率半径が下流に向かうにつれて拡大し、又は、外壁の下流領域がほぼ直線状に延びている。
このように構成された発明においては、第2導水路の流路幅が下流に行くにつれて広がっているので、第2吐水口部から吐水される洗浄水が水平方向に広がり易くなり、より確実に後方から凹部内に洗浄水を流下させることができ、それにより、凹部内に旋回流が形成され、この旋回流により溜水を上下方向に攪拌することでき、汚物排出性能を向上させることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、第2導水路の内壁の下流領域が、外壁に対して平行又は遠ざかるように形成されている。
このように構成された本発明においては、第2導水路の流路幅が下流に行くにつれて広がっているので、第2吐水口部から吐水される洗浄水が水平方向に広がり易くなり、より確実に後方から凹部内に洗浄水を流下させることができ、それにより、凹部内に旋回流が形成され、この旋回流により溜水を上下方向に攪拌することでき、汚物排出性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水洗大便器によれば、ボウル部の凹部内の溜水の上下方向の攪拌を促進して汚物排出性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態による水洗大便器を示す全体概略図である。
図2】本発明の実施形態による水洗大便器の便器本体を示す平面図である。
図3図2のIII−III線に沿って見た水洗大便器の断面図である。
図4図3のIV−IV線に沿って見た水洗大便器の断面図である。
図5】(a)は本発明の実施形態による水洗大便器の第1導水路内の流線に沿った方向の断面図であり、(b)は本発明の実施形態による水洗大便器の第1導水路内の流線と直交する方向の断面図である。
図6】(a)は本発明の実施形態による水洗大便器の第2導水路内の流線に沿った方向の断面図であり、(b)は本発明の実施形態による水洗大便器の第2導水路内の流線と直交する方向の断面図である。
図7】本発明の実施形態による水洗大便器の洗浄水の流れを示す平面断面図である。
図8】本発明の実施形態による水洗大便器の洗浄水の流れを示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による水洗大便器について説明する。図1は、本発明の実施形態による水洗大便器を示す全体概要図である。
本発明の実施形態による水洗大便器は、ボウル部内の水の落差による流水作用により汚物を押し流す洗い落とし式水洗大便器(ウォッシュダウン式水洗大便器)である。なお、本実施形態は洗い落とし式水洗大便器以外のサイホン式水洗大便器等にも適用可能である。
【0016】
図1に示すように、本発明の実施形態による水洗大便器1は、壁面2の表面に取り付けられた便器本体4と、壁面2の上方の裏面に取り付けられた洗浄水源である洗浄水を貯水する貯水タンク6とを備えている。また、壁面2の表面には、操作スイッチ8が取り付けられている。貯水タンク6と便器本体4は、接続管10により接続され、操作スイッチ8がON操作されると、貯水タンク6内の洗浄水が接続管10を通って便器本体4に供給されるようになっている。
【0017】
さらに壁面2の裏面には、汚物を排出するための排水管12が取り付けられ、この排水管12は、便器本体2と接続されており、便器本体2内の汚物が排出されるようになっている。
【0018】
次に、図2及び図3により、本発明の実施形態による水洗大便器の便器本体の構造について説明する。図2は、本発明の実施形態による水洗大便器の便器本体を示す平面図であり、図3は、図2のIII−III線に沿って見た水洗大便器の断面図である。
【0019】
図2及び図3に示すように、本発明の実施形態による水洗大便器1の便器本体4は、その前方にはボウル部14が形成され、その後方上部には貯水タンク6からの洗浄水をボウル部14に供給する共通導水路16が形成され、さらに、後方下部には汚物を排出するための排水トラップ管路18が形成されている。
【0020】
ボウル部14は、ボウル形状の汚物受け面20と、この汚物受け面20の上部に形成されたリム部22と、このリム部22と汚物受け面20との間に形成された棚部24と、汚物受け面20の下方に形成され溜水部を形成する凹部26を備えている。棚部24は、ほぼ水平に形成され洗浄水を旋回させるためのものであり、汚物受け面20の外周をほぼ一周している。リム部22には、棚部24の外側端から鉛直方向に延びる内周面22aが形成されている。
【0021】
さらに、ボウル部14のリム部22の内周面22aの前方から見て左側の中央部の少し後方側に、第1吐水口28が形成され、前方から見て右側のボウル部14の後方側には、第2吐水口30が形成されている。第1吐水口28は洗浄水を棚部24上にボウル部14の前方に向かって洗浄水を吐水する。第2吐水口30はボウル部14の後方に向けて洗浄水を吐水し、第1吐水口28及び第2吐水口30により、反時計回りの同一方向の旋回流を形成するようになっている。
ここで、本実施形態による水洗大便器1は、ボウル部14の凹部26や後述する排水トラップ管路18の入口18aに直接洗浄水を噴射して供給するジェット吐水口を備えていない。
【0022】
共通導水路16は、便器前方に向かって、第1導水路32及び第2導水路34に分岐している。この第1導水路32により洗浄水が第1吐水口28に供給され、第2導水路34により洗浄水が第2吐水口30に供給されるようになっている。
なお、本実施形態による水洗大便器1においては、第1吐水口28を含む第1導水路32及び第2吐水口28を含む第2導水路34は、陶器製の便器本体4と一体に形成されているが、本発明はこのような水洗大便器に限らず、第1導水路及び第2導水路を、便器本体とは別体のディストリビュータ等により形成してもよい。
【0023】
上述したボウル部14の凹部26は、上面視でほぼ三角形状であり、前方側は先細り形状であり、後方側は円弧形状となっている。また、凹部26は、全周に沿って設けられた立壁面26a及び前方部分に設けられた底面26を備えている。
【0024】
上述した排水トラップ管路18は、凹部30の底部に開口した入口18aから斜め上方に延び最高点18bを通った後に後方に延び、排水管12に接続されている。
ここで、水洗大便器1の溜水部の溜水水位Lは、排水トラップ管路18の最高点18bの高さにより決定される。
【0025】
次に、図4乃至図6を用いて、上述した第1導水路32及び第2導水路34ついて詳細に説明する。図は、図3のIV−IV線に沿って見た水洗大便器の断面図であり、図(a)は本発明の実施形態による水洗大便器の第1導水路内の流線に沿った方向の断面図であり、図5(b)は本発明の実施形態による水洗大便器の第1導水路内の流線と直交する方向の断面図であり、図(a)は本発明の実施形態による水洗大便器の第2導水路内の流線に沿った方向の断面図であり、図6(b)は本発明の実施形態による水洗大便器の第2導水路内の流線と直交する方向の断面図である。
【0026】
図4及び図5に示されているように、第1導水路32は、底面32a、天井面32b、内側壁32c、外側壁32dにより形成され、流線に直交する断面(図5(b)参照)が、矩形形状となっている。第1導水路32は、底面32aは一定のレベルで平らに形成され、天井面32bは、下流に向かって下がるような形状となり、第1吐水口28の近傍領域では、天井面32bは、底面32aとほぼ平行な形状となっている(図5(a)参照)。また、第1導水路32の幅(内壁32cと外壁32dとの距離)は、ほぼ一定であるが、第1吐水口28の近傍領域では、徐々に小さくなっている(図4参照)。ここで、一例であるが、第1導水路32の入口の高さH11は50mmであり、第1導水路32の出口である第1吐水口28の高さH12は30mmである。
【0027】
図4及び図6に示されているように、第2導水路34も、底面34a、天井面34b、内側壁34c、外側壁34dにより形成され、流線に直交する断面(図6(b)参照)が、矩形形状となっている。第2導水路34は、第2吐水口30の近傍の手前で180度折り返したU字形状となっている(図4参照)。第2導水路34は、底面34aと天井面34bはほぼ平行であり同じ高さH2を保持している(図6参照)。
【0028】
図4に示すように、第2導水路34の外壁34dは、ほぼ円弧形状であるが、U字形状に折り返す手前の部分(上流部分)では、その曲率半径が下流に向かうにつれて拡大し、又は、その直線状に延びている。第2導水路34の内壁34cは、U字形状に折り返す手前の部分では、外壁34dに対してほぼ平行又は遠ざかるように形成されている。
【0029】
第2導水路34のU字形状の折り返した下流部分、即ち、第2吐水口の近傍領域では、断面積が、徐々に拡大するように形成されている。具体的には、図6に示すように、第2導水路34は、その高さH2は一定であり、図4及び図6(b)に示すように、第2導水路34の幅が徐々に拡大している。具体的には、図6(b)に示すように、第2導水路34の第2吐水口の近傍領域では、断面積が、B−B断面(L21×H2)、C−C断面(L22×H2)、第1吐水口断面(L23×H2)となり、徐々に拡大している。
【0030】
本実施形態の水洗大便器1において、第1導水路32及び第2導水路34は、第2吐水口30から吐水される洗浄水の流量(L/min)が第1吐水口28から吐水される洗浄水の流量(L/min)より多くなるように設定されている。
そのため、第2吐水口30の開口面積は、第1吐水口28の開口面積より大きく設定されている。好ましくは、第2吐水口30と第1吐水口28の開口面積の比は、「第2吐水口の開口面積:第1吐水口の開口面積=1:2〜10」である。
なお、本実施形態による水洗大便器1において、第2導水路34が、上述したようにU字形状であるため、摩擦損失が発生し、それにより、第2吐水口30から吐水される洗浄水の流量(L/min)がその分低下するが、第2吐水口30の開口面積を第1吐水口28の開口面積より十分に大きくしているので、第2吐水口30から吐水される洗浄水の流量を第1吐水口28から吐水される洗浄水の流量より多くすることができる。
【0031】
次に、主に図7及び図8を用いて本発明の実施形態による水洗大便器の動作について説明する。図12は本発明の実施形態による水洗大便器の洗浄水の流れを示す平面断面図であり、図13は本発明の実施形態による水洗大便器の洗浄水の流れを示す側面断面図である。
【0032】
使用者が操作スイッチ8(図1参照)をON操作すると、貯水タンク6内の洗浄水が接続管18を経て共通導水路16に流入し、この共通導水路16から分岐した第1導水路32及び第2導水路34に到達し、第1吐水口28及び第2吐水口30のそれぞれから洗浄水が吐水される。
【0033】
第1吐水口28から吐水された洗浄水W1は、ボウル部14に形成された棚部16上を流れる。具体的には、先ず、ボウル部10の前方に向けて流れ、ボウル部10の前方端を通過した後に後方に向かって流れる。このとき、洗浄水W1の一部は、棚部24上を旋回しながら、汚物受け面20に流下し、汚物受け面20を洗浄する。
【0034】
第1吐水口28から吐水され棚部24上を流れる洗浄水W1の大半(洗浄水m)は、ボウル部14の前方より排水トラップ管路18の入口18aに向かって流れる。この洗浄水mは、その一部が洗浄水m1として凹部26の後側面に衝突し、その後、斜め下方に流れる(図8参照)。洗浄水m1の残りの洗浄水m2は、排水トラップ管路18に直接流入する(図8参照)。
【0035】
一方、第2吐水口30から吐水された洗浄水W2は、その流量(L/min)が、第1吐水口28から吐水される洗浄水w1の流量(L/min)より多いので、ボウル部14内では、洗浄水W2の流れが主流となる。
【0036】
この主流となる第2吐水口30から吐水された洗浄水W2は、棚部24上を流れる洗浄水W21と、凹部26の後方からに直接凹部26内に流下する洗浄水W22とを含む。具体的には、棚部24上を流れる洗浄水W21は、棚部24上を旋回しながら汚物受け面20に流下し、汚物受け面20の後方側を主に洗浄する。
【0037】
直接凹部26に流下した洗浄水W22は、その一部(洗浄水M1)が凹部26の左側の立壁面26aに沿って流れ、底面26bに潜り込む。この凹部26の底面26bに潜り込んだ洗浄水M1は、凹部26の底面26bから右側の立壁面26aに沿って上昇し、溜水を効果的に攪拌させる上下方向に旋回する縦旋回流を形成する(図8参照)。
この洗浄水M1は、第1吐水口28から吐水され凹部26に前方から流入する洗浄水m(m1、m2)と混合され、それにより、汚物が凹部26内で効果的に攪拌され、排水トラップ管路18内に汚物がスムーズに排出される。
【0038】
また、洗浄水M2は、排水トラップ管路18の入口18aに直接流入する(図8参照)。
【0039】
上述した本実施形態による水洗大便器1によれば、第2吐水口30がボウル部14の後方に向けて洗浄水を吐水し且つ第2吐水口30から吐水される洗浄水の流量(L/min)が第1吐水口28から吐水される洗浄水の流量(L/min)より多くなるように形成されているので、第2吐水口30から吐水される洗浄水が主流W2となり、この主流W2がボウル部14の凹部26の後方から凹部26に直接流入し、第1吐水口28から吐水されボウル部14の前方から凹部26に流入する洗浄水mと混合され、それにより、凹部26内に旋回流が形成され、この旋回流により溜水を上下方向に攪拌することでき、汚物排出性能を向上させることができる。
【0040】
なお、本実施形態による水洗大便器1は、ボウル部14の凹部26や排水トラップ管路18の入口18aに直接洗浄水を噴射して供給するジェット吐水口を備えていないので、節水化により洗浄水量が少なくなっても、第1吐水口28及び第2吐水口30から十分な流量の洗浄水を吐水することができ、それにより、ボウル部14を良好に洗浄することができる。
【0041】
本実施形態による水洗大便器1によれば、第2吐水口30の開口面積S2が第1吐水口28の開口面積S1より大きく設定されているので、確実に、第2吐水口30から吐水される洗浄水の流量(L/min)を第1吐水口28から吐水される洗浄水の流量(L/min)より多くすることができ、それにより、凹部26内に旋回流が形成され、この旋回流により溜水を上下方向に攪拌することでき、汚物排出性能を向上させることができる。
【0042】
本実施形態による水洗大便器1によれば、第1吐水口28の開口面積S1と第2吐水口30の開口面積S2の比が、1:2〜10であるので、第2導水路34が洗浄水による摩擦抵抗が大きなU字形状等であっても、確実に、第2吐水口30から吐水される洗浄水の流量(L/min)を第1吐水口28から吐水される洗浄水の流量(L/min)より多くすることができ、それにより、凹部26内に旋回流が形成され、この旋回流により溜水を上下方向に攪拌することでき、汚物排出性能を向上させることができる。
【0043】
本実施形態による水洗大便器1によれば、第2吐水口30の開口高さH2が第1吐水口28の開口高さH12より高く設定されているので、第2吐水口30から吐水される洗浄水の棚部24との落差が大きくなり、その分、洗浄水が凹部26に直接流入し易くなり、より効果的に、溜水を上下方向に攪拌して、汚物排出性能を向上させることができる。
【0044】
本実施形態による水洗大便器1によれば、第2導水路34の第2吐水口30近傍の流線と直交する断面における横幅が第2吐水口30に向かうにつれて拡がっているので、第2吐水口30から吐水される洗浄水が水平方向に広がり易くなり、より確実に後方から凹部26内に洗浄水を流下させることができ、それにより、凹部26内に旋回流が形成され、この旋回流により溜水を上下方向に攪拌することでき、汚物排出性能を向上させることができる。
【0045】
本実施形態による水洗大便器1によれば、第2導水路34がボウル部14側の内壁34c及び外側の外壁34dを備え、この外壁34dの曲率半径が下流に向かうにつれて拡大し、又は、外壁34dの下流領域がほぼ直線状に延び、第2導水路34の流路幅が下流に行くにつれて広がっているので、第2吐水口30から吐水される洗浄水が水平方向に広がり易くなり、より確実に後方から凹部26内に洗浄水を流下させることができ、それにより、凹部26内に旋回流が形成され、この旋回流により溜水を上下方向に攪拌することでき、汚物排出性能を向上させることができる。
【0046】
本実施形態による水洗大便器1によれば、第2導水路34の流路幅が下流に行くにつれて広がっているので、第2吐水口30から吐水される洗浄水が水平方向に広がり易くなり、より確実に後方から凹部26内に洗浄水を流下させることができ、それにより、凹部26内に旋回流が形成され、この旋回流により溜水を上下方向に攪拌することでき、汚物排出性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 水洗大便器
4 便器本体
6 貯水タンク
14 ボウル部
12 汚物受け面
18 排水トラップ管路
20 汚物受け面
22 リム部
24 棚部
26 凹部
28 第1吐水口
30 第2吐水口
32 第1導水路
34 第2導水路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8