(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る電子機器、及び、その制御方法、制御プログラムについて、実施形態を示して詳しく説明する。なお、以下の実施形態においては、本発明に係る電子機器を装着したユーザ(利用者)がウォーキング(歩行)を行う場合について説明するが、電子機器を携帯又は装着した四肢を周期的に動作させるものであれば、ランニングやサイクリング、登山等の他の運動であってもよい。
【0012】
<第1の実施形態>
(電子機器)
図1は、本発明に係る電子機器の例を示す概略構成図である。また、
図2は、本実施形態に適用される電子機器の人体への装着例を示す概略図であり、
図3は、本実施形態に適用される各電子機器を示す機能ブロック図である。
図4は、本実施形態に適用されるモーションセンサにおけるセンサデータを規定する軸方向の一例を示す概略図である。
【0013】
本発明に係る電子機器は、少なくとも他の電子機器との間で、各種の情報やデータを送受信する無線通信機能を備えているとともに、ユーザが携帯可能な形状、又は、ユーザの人体の所定の部位に装着可能な形状を有している。具体的には、本発明は、電子機器として、例えば
図1(a)に示すように、腕時計型やリストバンド型等の、人体の所定の部位(手首等の四肢)に装着可能な形状を有するウェアラブル機器100Aを適用することができる。また、本発明は、電子機器として、例えば
図1(b)に示すように、近年普及が著しいスマートフォン100Bやタブレット端末、
図1(c)に示すように、登山等での行動軌跡を記録したり、ルート案内をしたりするアウトドア機器(いわゆる、GPSロガーやナビゲーション端末)100C等を、適用することができる。以下、
図1に示したような各種の機器を、便宜的に「電子機器100」と総称する。
【0014】
そして、本実施形態においては、これらの電子機器100が
図2に示すように、ユーザUSにより携帯、又は、ユーザの人体の所定の部位に装着されている。具体的には、例えばウェアラブル機器100AがユーザUSの手首や腕等の四肢に装着され、スマートフォン100Bやアウトドア機器100Cが、ユーザUSが人体に密着させて所持するバッグBAGやリュック等に収納される。ここで、本実施形態においては、少なくとも、ユーザUSにより複数の電子機器100が携帯又は装着され、かつ、当該複数の電子機器100のうち少なくとも一つが、ユーザUSの運動時の動きや姿勢等に応じて周期的な動きを繰り返す人体の部位(例えば四肢等)に携帯又は装着されている。さらに、ユーザUSにより携帯又は装着された複数の電子機器100間には、人体や金属等の無線通信に使用される電波の遮蔽物が部分的に介在している。このような電子機器100の配置は、意図的に設定されるものであってもよいし、ユーザUSの運動時の人体の動きや姿勢等により、必然的に設定されるものであってもよい。以下、説明の都合上、
図2に示すように、無線通信により接続される一対の電子機器100のうち、ユーザUSの手首や腕等に装着されるウェアラブル機器100A等を、「第1の電子機器101」と記し、ユーザUSがバッグBAG等に収納して携帯するスマートフォン100B等を、「第2の電子機器102」と記す。
【0015】
なお、
図2に示した各電子機器100(第1の電子機器101、第2の電子機器102)の配置は、一例を示したものに過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、バッグBAG等に収納されたスマートフォン100B等に替えて、ユーザUSの背中側の腰部等の衣類やベルト等にスマートフォン100Bやアウトドア機器100Cを直接クリップ止めしたり、ポケットに収納したりするものであってもよい。また、手首等に装着したウェアラブル機器100Aに替えて、例えばアウトドア機器100Cを手首等に装着したり、ユーザUSがスマートフォン100B等を直接手に持って携帯したりするものであってもよい。
【0016】
電子機器100(第1の電子機器101、第2の電子機器102)に適用されるウェアラブル機器100Aやスマートフォン100B等は、具体的には、例えば
図3に示すように、センサ部110と、入力操作部120と、特定機能部130と、通信回路部140と、演算回路部150と、メモリ部160と、電源供給部170と、を備えている。ここで、演算回路部150は、本発明に係る周期算出部、タイミング設定部、通信状態判定部、運動状態算出部に対応する。なお、本実施形態においては、
図2に示したように、ユーザUSの手首に装着されるウェアラブル機器100A等の第1の電子機器101は、センサ部110を必須の構成として有しているが、バッグBAGに収納されるスマートフォン100B等の第2の電子機器102は、センサ部110を有していない構成であってもよい。
【0017】
センサ部110は、少なくとも、加速度センサや角速度センサ(ジャイロセンサ)、地磁気センサ、気圧センサ等の、ユーザUSの運動時の動きや姿勢等に応じた検出信号を出力するモーションセンサであって、これらのセンサのうちの少なくとも一つを有している。センサ部110において、ユーザの動きや姿勢等に基づいて常時又は周期的に出力される検出信号は、センサデータとして演算回路部150に送信されるとともに、時間データに関連付けられてメモリ部160に保存される。
【0018】
具体的には、センサ部110がモーションセンサとして例えば加速度センサを有している場合、加速度センサは3軸加速度センサを有し、互いに直交する3軸の各々に沿った加速度(加速度信号)を検出して、加速度データとして出力する。本実施形態においては、例えば
図4に示すように、ユーザUSの腕の延在方向のうち指先方向(図面下方向;法線方向)を+X軸方向、腕の延在方向(X軸)に直交し、ウォーキング中のユーザUSの進行方向(前方)側となる方向(図面左方向;接線方向)を+Y軸方向、X−Y平面(図面平面)に直交し、人体の外方側となる方向(図面手前方向)を+Z軸方向となるように、加速度センサを搭載した第1の電子機器101が手首UShに装着される。この場合、
図2に示すように、ユーザUSがウォーキング中に進行方向(前方)及び後方に周期的に腕を振る動作は、
図4に示すように、概ね、上記のX−Y平面内で行われ、腕振り動作の円弧状の軌跡に対して、ユーザUSの腕の延在方向であるX軸は法線方向となり、X軸に直交するY軸は接線方向となる。
【0019】
なお、センサ部110により取得されるセンサデータは、後述する演算回路部150により、例えばウォーキング中の活動量や移動距離、移動速度、運動姿勢(フォーム)等の、ユーザUSの所定の運動状態を算出する際に使用されるものであってもよい。
【0020】
入力操作部120は、電子機器100の電源のオン、オフ操作や、各種の機能を設定したり実行させたりする操作の際に使用される。具体的には、入力操作部120は、例えば
図1に示すように、電子機器100に適用されるウェアラブル機器100Aやスマートフォン100Bの筐体に設けられたボタンスイッチ122やキースイッチ(図示を省略)、後述する特定機能部130として設けられた表示部132の前面(ユーザUSの視野側)に配置されたタッチパネル124等の入力装置を有している。
【0021】
特定機能部130は、後述する演算回路部150からの指示に従って、特定の機能を実行する。具体的には、特定機能部130は、例えば
図1に示すように、ユーザに所定の情報を提供する表示部132や音響部134、画像や映像を撮影する撮像部(図示を省略)、ユーザの現在位置を計測するGPS回路部(図示を省略)等の機能を適用することができる。
【0022】
通信回路部140は、少なくとも、第1の電子機器101と第2の電子機器102とを所定の無線通信方式により接続し、各種の情報やデータを送受信する機能を有している。特に、本実施形態においては、通信回路部140は、上述したセンサ部110により取得されたセンサデータに基づいて算出されるユーザUSの腕振り動作(すなわち、第1の電子機器101と第2の電子機器102との位置関係の変化)の周期に基づいて、電子機器間の無線通信動作の接続タイミングが設定される。また、通信回路部140は、センサ部110により取得されたセンサデータや、当該センサデータに基づいて、後述する演算回路部150により算出されたユーザUSの運動状態に関する各種の情報やデータを、上記の接続タイミングで実行される無線通信動作により、第1の電子機器101と第2の電子機器102との間で相互に送受信する。ここで、通信回路部140において、電子機器間で各種の信号やデータを送受信する無線通信方式としては、例えばブルートゥース(Bluetooth(登録商標))通信や低消費電力型のブルートゥース(Bluetooth(登録商標) Low Energy)通信、無線LAN(Wireless Local Area Network)通信、NFC(Near Field Communication;近距離無線通信)等を適用することができる。
【0023】
演算回路部150は、計時機能を備えるCPU(中央演算処理装置)やMPU(マイクロプロセッサ)等の演算処理装置(コンピュータ)であって、所定のプログラムを実行することにより、センサ部110におけるセンシング動作や、特定機能部130における特定の機能の実行動作、通信回路部140における無線通信動作等を制御する。特に、本実施形態においては、演算回路部150は、センサ部110により取得されるセンサデータに基づいて、ユーザUSの腕振り動作の周期を算出することにより、第1の電子機器101と第2の電子機器102との位置関係の変化パターンを判定し、当該腕振り動作の周期に基づいて通信回路部140における第1の電子機器101と第2の電子機器102との間の無線通信動作の接続タイミングを制御する。また、演算回路部150は、センサ部110により取得されたセンサデータに基づいて、ユーザUSの運動状態に関する各種の情報やデータを算出し、上記の接続タイミングで通信回路部140を介して、第1の電子機器101と第2の電子機器102との間で相互に送受信する制御を行う。
【0024】
メモリ部160は、演算回路部150やセンサ部110、特定機能部130、通信回路部140等において取得されたり生成(算出)されたりしたデータ等を所定の記憶領域に保存する。なお、メモリ部160は、その一部又は全部が、例えばメモリカード等のリムーバブル記憶媒体としての形態を有し、電子機器100に対して着脱可能に構成されているものであってもよい。
【0025】
電源供給部170は、電子機器100内部の各構成に駆動用の電力を供給する。電源供給部170は、例えば市販のボタン型電池等の一次電池や、リチウムイオン電池等の二次電池、あるいは、振動や光、熱、電磁波等のエネルギーにより発電する環境発電技術による電源等を、単独で、あるいは、併用して適用することができる。
【0026】
(電子機器の制御方法)
次に、本実施形態に係る電子機器の制御方法(無線通信制御方法)について、図面を参照して説明する。なお、以下に示す運動支援方法は、ユーザUSの運動時の動きや姿勢等に応じて周期的な動きを繰り返す第1の電子機器101の演算回路部150において所定の制御プログラムを実行することにより実現される。
【0027】
図5は、第1の実施形態に係る無線通信制御方法の一例を示すフローチャートであり、
図6は、本実施形態に適用される接続タイミング設定処理の一例を示すフローチャートである。
図7は、ウォーキング時における腕振り動作と、加速度データの信号波形との関係を示す概略図である。
図8は、電子機器の位置と無線通信時の電波強度との関係の一例を示す実測データであり、
図9は、電子機器間の位置関係が無線通信に及ぼす影響を説明するための概略図ある。
図10は、電子機器間の無線通信動作における一般的な接続タイミングの例を示すタイミングチャートである。
図11、
図12は、本実施形態に係る無線通信制御方法における腕振り動作と電子機器間の無線通信動作における接続タイミングとの関係の一例を示すタイミングチャートである。
【0028】
本実施形態に係る無線通信制御方法においては、まず、ユーザUSが第1の電子機器101及び第2の電子機器102の入力操作部120を操作して電源をオンした後、第1の電子機器101を手首UShに装着し、第2の電子機器102をバッグBAGに収納する。そして、例えば
図5のフローチャートに示すように、ユーザUSがウォーキングを開始する際に、第1の電子機器101及び第2の電子機器102の入力操作部120を操作することにより、演算回路部150は、第1の電子機器101と第2の電子機器102との間の無線通信動作を実行するとともに(ステップS102)、第1の電子機器101のセンサ部110におけるセンシング動作を実行する(ステップS104)。ここで、上記の無線通信動作とセンシング動作は、同時に開始されて実行されるものであってもよいし、異なるタイミングで開始されるものであってもよい。
【0029】
具体的には、第1の電子機器101と第2の電子機器102とをブルートゥース(Bluetooth(登録商標))通信により接続する場合、例えば第2の電子機器102をマスタ側、第1の電子機器101をスレーブ側として、マスタ側の第2の電子機器102から一定の周期(例えば300m秒〜1秒間隔)でリンク確認信号が出力される。そして、スレーブ側の第1の電子機器101が、通信回路部140を介して受信されるリンク確認信号に対して、リンク確認動作を実行することにより第1の電子機器101と第2の電子機器102との間で無線通信が確立して相互に接続される。ここで、第1の電子機器101と第2の電子機器102とは、例えば、後述する接続タイミング設定処理により設定された、前回(又は直近)の接続タイミングを初期状態として無線通信が行われる。あるいは、例えば
図10に示すように、スレーブ側の電子機器(第1の電子機器101に相当する)によるリンク確認動作が、マスタ側の電子機器(第2の電子機器102に相当する)から出力されるリンク確認信号の出力タイミングに同期し、かつ、当該出力タイミングの間隔の数倍の周期(例えば1秒の3倍;3秒間隔)に設定された状態を初期状態として無線通信が行われる。
【0030】
また、第1の電子機器101のセンサ部110におけるセンシング動作は、例えば加速度センサにより所定のサンプリング周波数でセンサデータ(加速度データ)が取得され、時間データに関連付けられてメモリ部160の所定の記憶領域に保存される。
【0031】
次いで、第1の電子機器101の演算回路部150は、センサ部110により取得され、メモリ部160に保存されたセンサデータに基づいて、ユーザUSのウォーキング時の腕振り動作の周期を算出する(ステップS106)。
【0032】
具体的には、ウォーキング時のユーザUSの腕振り動作は、例えば手首UShに装着された第1の電子機器101のセンサ部110(例えば加速度センサ)により取得されるセンサデータ(加速度データ)の特定の成分を観測することにより、その挙動を把握することができる。モーションセンサとして加速度センサを適用し、
図4に示したように3軸方向を設定してウォーキングを行った場合、加速度センサから出力されるX軸方向の加速度成分(X軸成分)は、例えば
図7(f)に示すように、略一定の周期で出力値が大きく変化する挙動を示す。ここで、
図7(a)、(c)、(e)に示すように、第1の電子機器101を装着した腕を前方(図面左方)に振り出した状態、又は、後方(図面右方)に振り戻した状態では、重力加速度の成分が分散されるため、X軸成分の出力値は小さくなり極小値を示す。一方、
図7(b)、(d)に示すように、腕振りの途中で腕を人体の真横で地面方向(図面下方)に下げた状態では、重力加速度がそのまま加算されるため、X軸成分の出力値は大きくなり極大値を示す。
【0033】
また、加速度センサから出力されるY軸方向の加速度成分(Y軸成分)は、例えば
図7(f)に示すように、略一定の周期で出力値が小さく変化する挙動を示す。ここで、
図7(a)、(e)に示すように、腕を前方(図面左方)に振り出した状態では、腕の延在方向(X軸)に直交し、かつ、進行方向(前方)となる+Y軸方向(図中、実線矢印で表示)に対して、反対方向(図中、点線矢印で表示)に振り戻しの力が加わるため、Y軸成分の出力値はわずかに小さくなり極小値を示す。一方、
図7(c)に示すように、腕を後方(図面右方)に振り戻した状態では、+Y軸方向(図中、実線矢印で表示)と同方向(図中、点線矢印で表示)に振り出しの力が加わるため、Y軸成分の出力値はわずかに大きくなり極大値を示す。
【0034】
これにより、演算回路部150は、
図7(f)に示したようなセンサデータの挙動に基づいて、例えばX軸成分の出力値が極小値を示し、かつ、Y軸成分の出力値が極小値を示した状態を、第1の電子機器101を装着した腕を前方に振り出した状態であると判定し、一方、X軸成分の出力値が極小値を示し、かつ、Y軸成分の出力値が極大値を示した状態を、腕を後方に振り戻した状態であると判定する。そして、演算回路部150は、これらの状態を判定したタイミングに基づいて、
図7(a)〜(e)に示すような腕振り動作の一周期分の時間を算出する。算出された腕振り動作の周期は、メモリ部160の所定の記憶領域に保存される。
【0035】
次いで、演算回路部150は、算出した腕振り動作の周期に基づいて、無線通信動作における適正な接続タイミングを設定する(ステップS108)。具体的には、例えば
図6のフローチャートに示すように、演算回路部150は、まず、上記のステップS106により算出されたユーザUSの腕振り動作の周期と、
図7(a)〜(e)に示した、当該周期の各タイミングにおける腕振り動作の状態(第1の電子機器101を装着した腕を前方に振り出した状態か、後方に振り戻した状態か、地面方向に向けた状態か等)とに基づいて、第1の電子機器101と第2の電子機器102との位置関係を判定する(ステップS122)。そして、演算回路部150は、第1の電子機器101と第2の電子機器102との位置関係が、無線通信動作による接続が安定している良好な通信状態となっている位置関係であるか否かを判定する(ステップS124)。
【0036】
ここで、第1の電子機器101と第2の電子機器102との間の通信状態は、双方の間の電波強度を実測することにより把握することができる。例えば
図8に示すように、手首に第1の電子機器101を装着し、背中側の腰部に第2の電子機器102を携帯してウォーキングを行った場合の、第1の電子機器101と第2の電子機器102との間の電波強度は、第1の電子機器101と第2の電子機器102との位置関係に応じて大きく変化する。発明者の検証によれば、
図8(a)に示すように、第1の電子機器101を装着した腕を前方に振り出した状態では、電波強度が例えば−93dBmと非常に弱く、第1の電子機器101と第2の電子機器102との間の通信状態が不安定かつ不良で、接続ができない可能性が高いという結果が得られた。このような実測結果は、
図9(a)に示すように、腕を前方に振り出した状態では、第1の電子機器101と第2の電子機器102との間の距離が長く(遠く)なるうえ、第1の電子機器101と第2の電子機器102との間に電波の遮蔽物である人体が介在しているため、電波強度が弱まることによるものである。これに対して、
図8(c)に示すように、腕を後方に振り戻した状態では例えば−63dBm、また、
図8(b)に示すように、腕を人体の真横で地面方向に下げた状態では例えば−79dBmと電波強度が改善し、通信状態が安定かつ良好で、高い確率で接続できるという結果が得られた。このような実測結果は、
図9(b)に示すように、腕を後方に振り戻した状態では、第1の電子機器101と第2の電子機器102との間の距離が短く(近く)なるうえ、第1の電子機器101と第2の電子機器102との間に電波の遮蔽物が介在しないため、電波強度が強まることによるものである。
【0037】
このことから、上記の実測結果を適用した場合には、演算回路部150は、電波強度が例えば−80〜−90dBmの範囲を境界として、第1の電子機器101と第2の電子機器102との間の通信状態の良否を判定することができる。この場合、ウォーキングにおける腕振り動作の一周期のうち、概ね3/4の期間(
図7(b)〜(d)の動作期間)の通信状態が良好であると判定される。
【0038】
なお、演算回路部150による電子機器間の通信状態の良否判定は、実際に第1の電子機器101と第2の電子機器102との間で無線通信を行った際の実測結果に基づくものであってもよいし、あるいは、予め第1の電子機器101と第2の電子機器102の装着位置が想定されている場合には、予め実施したシミュレーション実験の結果を用意し、その実験結果に基づくものであってもよい。
【0039】
次いで、演算回路部150は、通信状態が良好であると判定された期間(
図7(b)〜(d)の動作期間に相当する)に、第1の電子機器101におけるリンク確認動作の実行タイミング(接続タイミング)を設定するとともに、当該接続タイミングの間隔(周期)を腕振り動作の周期に一致しない値に設定する(ステップS126)。すなわち、
図10に示すように、第1の電子機器101におけるリンク確認動作の実行タイミングの間隔が腕振り動作の周期に一致する場合、リンク確認動作(電子機器間の接続動作)の実行タイミングと前方への腕振り動作(
図7(a)、(e)の動作状態)のタイミングとが重なる(一致する)と、第1の電子機器101と第2の電子機器102との間の通信状態が不良になる状態が毎回繰り返され、通信できない状態が継続することになる。一般に、このような通信不可状態が一定時間(タイムアウト時間)以上継続した場合には、電子機器間の接続状態が解除されて無線通信動作が強制終了される。
【0040】
これに対して、本実施形態においては、ウォーキングの動作周期である腕振り動作の周期と、電子機器間の接続動作の周期であるリンク確認動作の実行タイミングの間隔(周期)とが一致せず異なるように設定される。例えば
図11に示すように、上記のステップS106において算出された、腕振り動作の周期Thが1秒であった場合、リンク確認動作の実行タイミングの間隔(周期)Tcが、腕振り動作の周期Thよりも短い、例えば0.6〜0.7秒(Thの0.6〜0.7倍)に設定される。これにより、
図11に示すように、リンク確認動作の実行タイミングごとに、第1の電子機器101と第2の電子機器102の位置関係が毎回変化することになるので、電波強度が比較的強い状態(
図7(b)〜(d)の動作状態;特定の状態)でリンク確認動作が実行されて接続される確率が高くなり、第1の電子機器101と第2の電子機器102との間で無線通信が確立された状態(接続状態)が継続することになる。なお、リンク確認動作の実行タイミングの間隔Tcは、上記のように腕振り動作の周期Thよりも短く設定するものに限定されず、腕振り動作の周期Thよりも長くなるよう(例えばThの1.2〜1.3倍)に設定してもよい。換言すると、リンク確認動作の実行タイミングの間隔Tcは、腕振り動作の周期Thの整数倍ではない、任意の倍率に設定されるものであればよい。
【0041】
ここで、本実施形態に示したようにリンク確認動作の実行タイミングの間隔(周期)を設定した場合、リンク確認動作を繰り返すことにより、例えば
図12に示すように、リンク確認動作(電子機器間の接続動作)の実行タイミングと、電波強度が弱い、前方への腕振り動作の状態の期間(
図12中、「接続不可位置」と表記した期間)とが重なったり近似したりする場合がある。この場合、第1の電子機器101と第2の電子機器102との間の通信状態が悪化して接続ができなくなる可能性がある(
図12中、「接続不可発生」と表記)。本実施形態においては、上述したように、腕振り動作の周期とリンク確認動作の実行タイミングの間隔(周期)とが一致しないように設定されている。これにより、
図12に示すように、リンク確認動作の実行タイミングごとに、第1の電子機器101と第2の電子機器102の位置関係が毎回変化する。したがって、リンク確認動作の実行タイミングと前方への腕振り動作の状態が重なる状態が生じた場合であっても、次回以降のリンク確認動作は、電波強度が比較的強い、腕振り動作の状態の期間(
図12中、「接続可能位置」と表記した期間)に実行されることになるので(
図12中、「再接続可能(1)」、「再接続可能(2)」と表記)、第1の電子機器101と第2の電子機器102とが再び良好な通信状態で接続されることになる。
【0042】
次いで、演算回路部150は、上記のステップS108において新たに設定された無線通信動作の接続タイミング(リンク確認動作の実行タイミング及びその周期)が、現在設定されている接続タイミングに対して変化があるか(異なるか)否かを判定する(ステップS110)。接続タイミングに変化がある場合(ステップS110のYes)には、演算回路部150は、現在の接続タイミングを、ステップS108において新たに設定された接続タイミングに変更する(ステップS112)。新たに設定された接続タイミングは、メモリ部160の所定の記憶領域に保存される。一方、接続タイミングに変化がない場合(ステップS110のNo)には、演算回路部150は、現在の接続タイミングを維持して、上記のステップS108に戻って、センサデータに基づいて算出された腕振り動作の周期に基づいて、無線通信動作における適正な接続タイミングを設定する処理を繰り返し実行する。
【0043】
次いで、演算回路部150は、変更後の接続タイミングに基づいて、第1の電子機器101と第2の電子機器102との間の無線通信動作を実行する(ステップS114)。これにより、演算回路部150は、センサ部110により取得されたセンサデータや、当該センサデータに基づいて算出されたユーザUSの運動状態に関する各種の情報やデータを、通信回路部140を介して、第1の電子機器101と第2の電子機器102との間で相互に送受信する。その後、演算回路部150は、ステップS116において、無線通信動作の終了判断をするまで、ステップS102に戻って、上述した一連の処理動作を定期的に繰り返し実行する。
【0044】
なお、上述した無線通信制御方法においては、ユーザの腕振り動作の周期を算出するためのセンサデータとして、加速度データを用いた場合について説明したが、これに限定されるものではない。本発明は、第1の電子機器101を装着した人体の部位の動きや姿勢等に応じて検出信号が周期的に変化するものであれば、角速度データや地磁気データ、気圧データ等の他のセンサデータを、単独で用いるものであってもよいし、複数のセンサデータを組み合わせて用いるものであってもよい。また、電子機器間に適用される無線通信方式についても、ブルートゥース(Bluetooth(登録商標))通信に限定されるものではなく、一方の電子機器から規則的に出力されるリンク確認信号に基づいて、他方の電子機器がリンク確認動作を実行するものであれば、ブルートゥース(Bluetooth(登録商標))LE通信や無線LAN通信、NFC等の無線通信方式を適用するものであってもよい。
【0045】
このように、本実施形態においては、センサ部110により取得されたセンサデータに基づいて、ユーザUSの腕振り動作の周期(手首UShに装着された第1の電子機器101とバッグBAGに収納された第2の電子機器102との位置関係の変化パターン)を算出する。そして、算出された腕振り動作の周期に基づいて、電子機器間の無線通信動作における接続タイミングを設定する。ここで、本実施形態においては、第1の電子機器101におけるリンク確認動作の実行タイミングの間隔(周期)を、腕振り動作の周期に一致しない(異なる)ようにずらして設定することにより、電子機器間の電波強度が弱く接続しにくい状態を回避して、電波強度が比較的強く良好な接続が可能な状態の期間にリンク確認動作が実行される。
【0046】
これにより、ユーザが電子機器を携帯又は人体に装着して使用する場合であっても、電子機器間の電波強度が弱く、接続しにくい状態でリンク確認動作が繰り返し実行される状態を防止することができ、電子機器間の接続状態を高い確率で保持して通信品質を向上させることができる。また、電子機器に設けられたモーションセンサにより取得されるセンサデータに基づいて、ユーザの周期的な動きを把握する手法を用いているので、本実施形態に係る電子機器を使用するユーザや、電子機器の装着又は携帯する位置や方法に限定されることなく、電子機器間の通信品質を向上させることができる。
【0047】
<第2の実施形態>
次に、本発明に係る電子機器の第2の実施形態について図面を参照して説明する。
図13は、第2の実施形態に係る無線通信制御方法に適用される接続タイミング設定処理の一例を示すフローチャートである。
図14は、本実施形態に係る無線通信制御方法における腕振り動作と電子機器間の無線通信動作における接続タイミングとの関係の一例を示すタイミングチャートである。ここで、上述した第1の実施形態と同等の処理動作については、その説明を簡略化する。
【0048】
上述した第1の実施形態においては、ユーザUSの腕振り動作の周期に基づいて、電子機器間の無線通信動作の接続タイミングを設定する際に、第1の電子機器101におけるリンク確認動作の実行タイミングの間隔(周期)を、腕振り動作の周期に一致しないように設定する場合について説明した。第2の実施形態においては、上記の接続タイミングを設定する際に、第1の電子機器101におけるリンク確認動作の実行タイミングの間隔(周期)を腕振り動作の周期に一致させ、かつ、その実行タイミングを電子機器間の電波強度が弱く接続しにくい状態の期間を回避して設定することを特徴としている。
【0049】
第2の実施形態においては、上述した第1の本実施形態に示した無線通信制御方法(
図5のフローチャート参照)に適用される、電子機器間の無線通信動作の接続タイミングを設定する処理(ステップS108)において、以下の処理動作が実行される。すなわち、例えば
図13のフローチャートに示すように、演算回路部150は、まず、上述した第1の実施形態と同様に、ユーザUSの腕振り動作の周期と、各タイミングにおける動作状態とに基づいて電子機器間の位置関係を判定(ステップS222)した後、その位置関係に基づいて電子機器間の通信状態を判定する(ステップS224)。
【0050】
次いで、演算回路部150は、
図14に示すように、通信状態が良好であると判定された期間(
図14中、「接続可能位置」と表記した期間)に、第1の電子機器101におけるリンク確認動作の実行タイミングを設定するとともに、当該実行タイミングの間隔(周期)が腕振り動作の周期に一致するように設定する(ステップS226)。例えば
図14に示すように、腕振り動作の周期Thが1秒であった場合、リンク確認動作の実行タイミングの間隔(周期)Tcが、腕振り動作の周期Thと同一の1秒に設定される。これにより、腕振り動作の一周期のうち、電波強度が比較的強く良好な接続が可能な動作状態の特定の期間に、リンク確認動作(電子機器間の接続動作)が毎回実行されることになり、第1の電子機器101と第2の電子機器102との間で無線通信が確立された状態(接続状態)が継続することになる。
【0051】
これにより、上述した第1の実施形態と同様に、ユーザが電子機器を携帯又は人体に装着して使用する場合であっても、電子機器間の電波強度が弱く、接続しにくい状態でリンク確認動作が繰り返し実行される状態を防止することができ、電子機器間の接続状態を確実に保持して通信品質をより向上させることができる。
【0052】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0053】
(付記)
[1]
電子機器であって、
無線通信を実行する無線通信回路部と、
前記電子機器の動きに対応するセンサデータを出力するセンサ部と、
前記無線通信回路部を制御する演算回路部と、
を備え、
前記演算回路部は、
前記電子機器が利用者に装着又は携帯されて周期的な動きをしている状態で、前記無線通信回路部が、前記利用者に装着又は携帯されている他の電子機器と前記無線通信を実行するときに、前記センサデータに基づいて前記周期的な動きの第1の周期を算出して、前記無線通信により前記電子機器を前記他の電子機器と接続する接続タイミングを前記第1の周期に基づいて設定することを特徴とする電子機器。
【0054】
[2]
前記タイミング設定部は、前記接続タイミングを第2の周期を有する周期的なタイミングに設定し、前記第2の周期を前記第1の周期と異なる値に設定することを特徴とする[1]に記載の電子機器。
【0055】
[3]
前記タイミング設定部は、前記接続タイミングを第2の周期を有する周期的なタイミングに設定し、前記第2の周期を前記第1の周期と同じ値に設定することを特徴とする[1]に記載の電子機器。
【0056】
[4]
前記演算回路部は、
前記センサデータに基づく前記電子機器と前記他の電子機器との位置関係が、前記無線通信による接続が安定している位置関係であるか否かを判定し、
前記第1の周期、及び、前記位置関係の判定に基づいて、前記第2の周期を設定することを特徴とする[2]又は[3]に記載の電子機器。
【0057】
[5]
前記センサ部は、前記電子機器が装着又は携帯された前記利用者の身体の動きを、直交する3軸方向の成分として検出し、
前記演算回路部は、前記3軸方向の前記センサデータに基づいて、前記第1の周期を算出することを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかに記載の電子機器。
【0058】
[6]
電子機器の制御方法であって、
前記電子機器は、無線通信を実行する無線通信回路部と、前記電子機器の動きに対応するセンサデータを出力するセンサ部と、前記無線通信回路部を制御する演算回路部と、を備え、
前記電子機器が利用者に装着又は携帯されて周期的な動きをしている状態で、前記無線通信回路部が、前記利用者に装着又は携帯されている他の電子機器と前記無線通信を実行するときに、前記センサデータに基づいて前記周期的な動きの周期を算出し、
前記無線通信により前記電子機器を前記他の電子機器と接続する接続タイミングを、前記第1の周期に基づいて設定する、
ことを特徴とする電子機器の制御方法。
【0059】
[7]
電子機器の制御プログラムであって、
前記電子機器は、無線通信を実行する無線通信回路部と、前記電子機器の動きに対応するセンサデータを出力するセンサ部と、前記無線通信回路部を制御するコンピュータと、を備え、
前記コンピュータに、
前記電子機器が利用者に装着又は携帯されて周期的な動きをしている状態で、前記無線通信回路部が、前記利用者に装着又は携帯されている他の電子機器と前記無線通信を実行するときに、前記センサデータに基づいて前記周期的な動きの周期を算出させ、
前記無線通信により前記電子機器を前記他の電子機器と接続する接続タイミングを、前記第1の周期に基づいて設定させる、
ことを特徴とする電子機器の制御プログラム。