特許第6573079号(P6573079)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573079
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】リアクトル
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20190902BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20190902BHJP
   H01F 27/06 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   H01F37/00 A
   H01F37/00 M
   H01F37/00 G
   H01F37/00 T
   H01F27/24 K
   H01F27/24 H
   H01F27/06
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-146690(P2016-146690)
(22)【出願日】2016年7月26日
(65)【公開番号】特開2018-18902(P2018-18902A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2018年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】吉川 浩平
(72)【発明者】
【氏名】草別 和嗣
(72)【発明者】
【氏名】南原 慎太郎
【審査官】 田中 崇大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−179264(JP,A)
【文献】 特開2012−099739(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/045868(WO,A1)
【文献】 特開2014−160737(JP,A)
【文献】 特開2013−051402(JP,A)
【文献】 特表2006−505142(JP,A)
【文献】 特開2016−134507(JP,A)
【文献】 特開2005−340812(JP,A)
【文献】 特開2011−142193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F27/00−27/06
27/24−27/28
27/29−27/30
30/00−38/12
38/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと、コイルの励磁により閉磁路を形成する環状の磁性コアとを備えるリアクトルであって、
並列に配置することで前記リアクトルを構成する複数の分割リアクトルと、
前記複数の分割リアクトルを所定の間隔に並列された状態に保持する保持部材と、
を備え、
前記各分割リアクトルは、
巻回された巻線で前記コイルの一部を構成するコイルユニットと、
前記コイルユニットの一端から他端に抜けて前記磁性コアの一部を構成するコアユニットとを備え、
前記コアユニットは、
前記コイルユニット内に挿通される内側コア部と、
前記コイルユニットの両端から突出して前記内側コア部と交差する方向に延びる外側コア部とを有し、
前記保持部材は、前記各分割リアクトルに設けられて、前記各コアユニットを取付対象に並列に固定する取付部を備えるリアクトル。
【請求項2】
コイルと、コイルの励磁により閉磁路を形成する環状の磁性コアとを備えるリアクトルであって、
並列に配置することで前記リアクトルを構成する複数の分割リアクトルと、
前記複数の分割リアクトルを所定の間隔に並列された状態に保持する保持部材と、
を備え、
前記各分割リアクトルは、
巻回された巻線で前記コイルの一部を構成するコイルユニットと、
前記コイルユニットの一端から他端に抜けて前記磁性コアの一部を構成するコアユニットとを備え、
前記コアユニットは、
前記コイルユニット内に挿通される内側コア部と、
前記コイルユニットの両端から突出して前記内側コア部と交差する方向に延びる外側コア部とを有し、
隣り合う前記分割リアクトルの前記外側コア部の互いの対向面に、係止することで互いの相対的な位置ずれを抑制する係止部を有するリアクトル。
【請求項3】
前記各分割リアクトルは、前記コイルユニットと前記コアユニットとを有する組合体を収納するケースを有し、
前記ケースは、前記取付部を有する請求項に記載のリアクトル。
【請求項4】
隣り合う前記分割リアクトルの前記外側コア部の互いの対向面に、係止することで互いの相対的な位置ずれを抑制する係止部を有する請求項1又は請求項3記載のリアクトル。
【請求項5】
隣り合う前記分割リアクトルの前記外側コア部同士の間に介在されるギャップを備える請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項6】
隣り合う前記分割リアクトルの前記外側コア部同士が接していて、その間にギャップが介在されていない請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
電圧の昇圧動作や降圧動作を行う回路の部品の一つに、リアクトルがある。例えば、特許文献1のリアクトルは、一対のコイル素子(コイルユニット)を有するコイルと、一対のU字の分割コア片を有する磁性コアとを備える(明細書0045,図3)。一対の分割コア片同士の接合箇所は、コイル内に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−146656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
所望のインダクタンスに調整し易いリアクトルが望まれている。コイルと両分割コア片とを組み合わせる際、分割コア片同士の位置合わせはコイル内で行われるため、分割コア片同士を正確に位置合わせすることが難しい。そのため、分割コア片同士が適切な位置からずれる虞があり、所望のインダクタンスが得られない場合がある。特に、分割コア片同士の間にエアギャップを介在させる場合には、両分割コア片同士を適切な間隔に位置合わせすることが非常に困難である。
【0005】
そこで、インダクタンスを容易に調整できるリアクトルを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るリアクトルは、
コイルと、コイルの励磁により閉磁路を形成する環状の磁性コアとを備えるリアクトルであって、
並列に配置することで前記リアクトルを構成する複数の分割リアクトルと、
前記複数の分割リアクトルを所定の間隔に並列された状態に保持する保持部材とを備え、
前記各分割リアクトルは、
巻回された巻線で前記コイルの一部を構成するコイルユニットと、
前記コイルユニットの一端から他端に抜けて前記磁性コアの一部を構成するコアユニットとを備え、
前記コアユニットは、
前記コイルユニット内に挿通される内側コア部と、
前記コイルユニットの両端から突出して前記内側コア部と交差する方向に延びる外側コア部とを有するリアクトル。
【発明の効果】
【0007】
上記リアクトルは、インダクタンスを容易に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係るリアクトルの概略を示す全体斜視図である。
図2】実施形態1に係るリアクトルに備わる磁性コアを示す上面図である。
図3】実施形態2に係るリアクトルの概略を示す上面図である。
図4】実施形態3に係るリアクトルの概略を示す上面図である。
図5】実施形態4に係るリアクトルの概略を示す上面図である。
図6】実施形態6に係るリアクトルの概略を示す全体斜視図である。
図7】実施形態6に係るリアクトルの被覆コアユニットを示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
《本発明の実施形態の説明》
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0010】
(1)本発明の一形態に係るリアクトルは、
コイルと、コイルの励磁により閉磁路を形成する環状の磁性コアとを備えるリアクトルであって、
並列に配置することで前記リアクトルを構成する複数の分割リアクトルと、
前記複数の分割リアクトルを所定の間隔に並列された状態に保持する保持部材とを備え、
前記各分割リアクトルは、
巻回された巻線で前記コイルの一部を構成するコイルユニットと、
前記コイルユニットの一端から他端に抜けて前記磁性コアの一部を構成するコアユニットとを備え、
前記コアユニットは、
前記コイルユニット内に挿通される内側コア部と、
前記コイルユニットの両端から突出して前記内側コア部と交差する方向に延びる外側コア部とを有するリアクトル。
【0011】
上記の構成によれば、複数の分割リアクトル同士の間隔を調整するだけで、保持部材によりその間隔を保持できるため、インダクタンスを容易に調整できる。
【0012】
(2)上記リアクトルの一形態として、前記保持部材は、前記各分割リアクトルに設けられて、前記各コアユニットを取付対象に並列に固定する取付部を備えることが挙げられる。
【0013】
上記の構成によれば、分割リアクトルを取付対象に固定するだけで、複数の分割リアクトルの取付間隔を決められる。予め取付対象の所定位置に分割リアクトルの適正な取り付けができるように、各取付部に対応した取付座(例えばボルト孔)を設けておけばよい。そのため、取付位置を調整するだけで、所望のインダクタンスに容易に調整できる。また、取付位置を調整するだけで、インダクタンスを調整できるため、種々の磁気特性のリアクトルが容易に得られる。さらに、分割リアクトルの取付間隔でギャップを構成する場合、取付部の位置を調整するだけで、分割リアクトルは何らの構成の変更もすることなくギャップの調整が可能である。
【0014】
(3)前記保持部材が前記取付部を備える上記リアクトルの一形態として、前記各分割リアクトルは、前記コイルユニットと前記コアユニットとを有する組合体を収納するケースを有し、前記ケースは、前記取付部を有することが挙げられる。
【0015】
上記の構成によれば、外部環境(粉塵や腐食など)からの保護や機械的保護を図ることができる。
【0016】
(4)上記リアクトルの一形態として、隣り合う前記分割リアクトルの前記外側コア部の互いの対向面に、係止することで互いの相対的な位置ずれを抑制する係止部を有することが挙げられる。
【0017】
上記の構成によれば、分割リアクトル同士の相対的な位置ずれを抑制し易いため、所望のインダクタンスを維持し易い。相対的な位置ずれに関しては、詳しくは後述する。
【0018】
(5)上記リアクトルの一形態として、隣り合う前記分割リアクトルの前記外側コア部同士の間に介在されるギャップを備えることが挙げられる。
【0019】
上記の構成によれば、分割リアクトル同士の取付間隔を調整することでギャップの大きさを調整でき、インダクタンスを調整し易い。
【0020】
(6)上記リアクトルの一形態として、隣り合う前記分割リアクトルの前記外側コア部同士が接していて、その間にギャップが介在されていないことが挙げられる。
【0021】
上記の構成によれば、ギャップを介していないことで、リアクトルを小型化できる。
【0022】
《本発明の実施形態の詳細》
本発明の実施形態の詳細を、以下に図面を参照しつつ説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。
【0023】
《実施形態1》
〔リアクトル〕
図1図2を参照して、実施形態1に係るリアクトル1Aを説明する。リアクトル1Aは、コイル2とコイル2の励磁により閉磁路を形成する環状の磁性コア3とを備える。このリアクトル1Aの特徴の一つは、並列に配置することでリアクトル1Aを構成する複数の分割リアクトル10Aと、複数の分割リアクトル10Aを所定の間隔に並列された状態に保持する保持部材とを備える点にある。各分割リアクトル10Aは、コイル2の一部を構成するコイルユニット20と、磁性コア3の一部を構成するコアユニット30αとを有する。ここでは、リアクトル1Aは、2つの同一の分割リアクトル10Aを備える形態を例に説明する。まず、リアクトル1Aの全体構成を説明し、その後、リアクトル1Aの各構成の詳細を説明する。以下の説明では、説明の便宜上、取付対象側(固定側)を下側、その反対側(対向側)を上側とする。取付対象としては、冷却ベースなどが挙げられる。
【0024】
〔全体構成〕
リアクトル1Aは、一対の分割リアクトル10Aと保持部材(ここでは取付部33)とを備える。各分割リアクトル10Aは、隣り合う2つのコイルユニット20の一方と、隣り合う2つのコアユニット30αの一方とを備える。即ち、コイル2は、2つのコイルユニット20を有し、磁性コア3は、2つのコアユニット30αを有する。2つのコイルユニット20は、連結部材2rを介して電気的に連結されている。2つのコアユニット30α同士の間には、ギャップ3gが形成されていても良いし、ギャップ3gが形成されていなくてもよい。ここでは、ギャップ(エアギャップ)3gが介在されているが、ギャップ3gが介在されていない場合は、コアユニット30αにおける外側コア部32α(後述)の対向面同士が直接接触する。ギャップ3gについては後述する。
【0025】
〔主たる特徴部分及び関連する部分の構成〕
[分割リアクトル]
各分割リアクトル10Aは、上述のように、一つのコイルユニット20と、一つのコアユニット30αとを有する。
【0026】
(コイルユニット)
コイルユニット20は、巻回された巻線2wでコイル2の一部を構成する。コイルユニット20は、巻線2wを螺旋状に巻回してなる中空の筒状体である。巻線2wは、平角線の導体(銅など)と、この導体の外周を覆う絶縁被覆(ポリアミドイミドなど)とを備える被覆平角線(所謂エナメル線)である。コイルユニット20は、この被覆平角線をエッジワイズ巻きしたエッジワイズコイルである。コイルユニット20の端面形状は、矩形枠の角部を丸めた形状としている。
【0027】
コイルユニット20における巻線2wの両端部2eは、コイルユニット20の軸方向の両端で上方へ引き伸ばされている。コイルユニット20におけるその軸方向の一端側(図1紙面左側)の端部2eは、その先端の絶縁被覆が剥されて露出した導体に端子部材(図示略)が接続される。コイル2は、この端子部材を介してコイル2に電力供給を行なう電源などの外部装置(図示略)が接続される。一方、コイルユニット20におけるその軸方向の他端側(図1紙面右側)の端部2eは、その先端の絶縁被覆が剥されて露出した導体に連結部材2rが接続される。この接続は、溶接や圧接で行える。連結部材2rは、例えば、巻線2wと同一部材で構成される。
【0028】
巻線2wは、熱融着樹脂から構成される熱融着層を有するものを利用できる。この場合、巻線2wを適宜巻回した後、適宜な時期に加熱して熱融着層を溶融して、隣り合うターン同士を熱融着樹脂によって接合する。このコイルユニットは、ターン間に熱融着樹脂部が介在するため、ターン同士が実質的にずれず、コイルユニットが変形し難い。熱融着層を構成する熱融着樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステルなどの熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0029】
(コアユニット)
コアユニット30αは、コイルユニット20の一端から他端に抜けて磁性コア3の一部を構成する。コアユニット30αは、一つの内側コア部31αと、一対の外側コア部32αとを備える。ここでは、この内側コア部31αと一対の外側コア部32αは、各コアの構成材料である軟磁性複合材料によって一体に成形されている。このコアユニット30αは、コイルユニット20と各コアの構成材料で一体に形成されている。
【0030】
〈内側コア部〉
内側コア部31αは、コイルユニット20内に挿通される。内側コア部31αの形状は、コイルユニット20の内周形状に合わせた形状とすることが好ましい。ここでは、内側コア部31αの形状は、コイルユニット20の軸方向の略全長に長さを有する直方体状であり、その角部を丸めたコイルユニット20の内周面に沿うように丸めている。
【0031】
〈外側コア部〉
外側コア部32αは、コイルユニット20の両端から突出して、内側コア部31αと交差する方向に延びる。外側コア部32αの延びは、コイルユニット20の側面と面一でもよいし、その側面よりも突出していても良い。後述する実施形態2のようにケース4を備える場合には、コイルユニット20の側面と面一とすることが挙げられる。外側コア部32αの形状は、直方体状としている。外側コア部32αの高さ及び幅は、内側コア部31αよりも大きく、コイルユニット20の高さ及び幅と同等でもよいしそれよりも大きくてもよい。外側コア部32αの高さは、上下方向に沿った長さをいい、外側コア部32αの幅とは、分割リアクトル10Aの並列方向に沿った長さをいう。外側コア部32αの下面は、コイルユニット20の下面と面一であることが好ましい。
【0032】
〈構成材料〉
各コア部31α,32αを構成する軟磁性複合材料は、軟磁性粉末と樹脂とを含む。軟磁性粉末を構成する粒子は、純鉄などの鉄族金属や鉄基合金(Fe−Si合金、Fe−Ni合金など)などの軟磁性金属からなる金属粒子や、金属粒子の外周にリン酸塩などで構成される絶縁被覆を備える被覆粒子、フェライトなどの非金属材料からなる粒子などが挙げられる。
【0033】
軟磁性複合材料中の軟磁性粉末の含有量は、30体積%以上80体積%以下が挙げられる。上記含有量が多いほど、飽和磁束密度の向上、放熱性の向上が期待でき、下限を50体積%以上、更に55体積%以上、60体積%以上とすることができる。上記含有量がある程度小さいと、軟磁性複合材料の原料(原料混合物)を成形型に充填する際に流動性に優れて成形型に充填し易く、製造性の向上が期待でき、上限を75体積%以下、更に70体積%以下とすることができる。
【0034】
軟磁性粉末の平均粒径は、例えば、1μm以上1000μm以下、更に10μm以上500μm以下が挙げられる。この平均粒径は、SEM(走査型電子顕微鏡)での断面画像を取得し、市販の画像解析ソフトを用いて解析することで行える。その際、円相当径を軟磁性粒子の粒径とする。円相当径とは、粒子の輪郭を特定し、その輪郭で囲まれる面積Sと同一の面積を有する円の径とする。即ち、円相当径=2×{上記輪郭内の面積S/π}1/2で表される。
【0035】
軟磁性複合材料中の樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂(例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン9Tなど)、液晶ポリマー(LCP)、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂などの熱可塑性樹脂、常温硬化性樹脂、低温硬化性樹脂などが挙げられる。その他、不飽和ポリエステルに炭酸カルシウムやガラス繊維が混合されたBMC(Bulk molding compound)、ミラブル型シリコーンゴム、ミラブル型ウレタンゴムなどを利用できる。
【0036】
軟磁性複合材料は、軟磁性粉末及び樹脂に加えて、アルミナやシリカなどのセラミックスといった非磁性材料からなるフィラー粉末を含有することができる。この場合、例えば放熱性を高められる。軟磁性複合材料中のフィラー粉末の含有量は、0.2質量%以上20質量%以下、更に0.3質量%以上15質量%以下、0.5質量%以上10質量%以下が挙げられる。
【0037】
[保持部材]
保持部材は、複数の分割リアクトル10Aを所定の間隔に並列された状態に保持する。保持部材としては、例えば、各分割リアクトル10Aに設けられる取付部33(図1図3:実施形態1,2),43(図4図5:実施形態3,4),53(図6図7:実施形態6)、少なくとも隣り合う分割リアクトル10Aの外側コア部32α同士を纏めて被覆する樹脂包括部(図示略:実施形態7)、少なくとも一つの分割リアクトル10A(外側コア部32α)の上面を下面側に向かって押さえ付ける支持部(図示略:実施形態8)などが挙げられる。ここでは、保持部材を取付部33で構成している。
【0038】
(取付部)
取付部33は、コアユニット30αを取付対象に固定する。ここでは、取付部33は、外側コア部32αから局所的に突出するフランジ状に設けられている。取付部33の形成箇所は、分割リアクトル10Aの取付対象の取付箇所の位置に合わせて適宜選択できる。取付部33が取付対象に接していれば、分割リアクトル10Aを取付対象に取り付けるためのボルトなどの締付部材(図示略)によるクリープ変形を抑制し易い。取付部33も冷却ベースなどの取付対象から直接冷却されるからである。その場合、取付部33には締結部材による締付力を受けるカラーを設けなくてもよい。ここでは、取付部33の形成箇所は、両外側コア部32αの外端面の下部中央としている。この取付部33は、外側コア部32αの構成材料で外側コア部32αに一体に形成されている。この取付部33には、締付部材が挿通される挿通孔34が形成されている。
【0039】
(分割リアクトルの製造)
分割リアクトル10Aは、所定の形状の成形型に配置されたコイルユニット20の内外に軟磁性複合材料の原料を充填し、一体成形体のコアユニット30αを成形することで製造できる。このとき、上述したように、コイルユニット20が熱融着層を有する場合には、ターン間の隙間が埋められているため、コイルユニット20の内部に上記原料を充填した場合に、ターン間から充填材が漏れることを防止できる。ここでは、コイルユニット20の外周面をコアユニット30αから露出させるようにしているが、コイルユニット20の外周面をコアユニット30αの構成材料で覆ってもよい。
【0040】
[ギャップ]
分割リアクトル10Aの外側コア部32α同士の間のギャップ3gは、図1に示すようにエアギャップにする他、軟磁性複合材料よりも比透磁率が低い材料から構成されるギャップ材(図示せず)を備えることができる。ギャップ材の構成材料は、例えば、アルミナなどのセラミックスや、樹脂(例えば、PPS樹脂)などの非磁性材料、軟磁性粉末と樹脂とを含む複合材、各種のゴムといった弾性材などが挙げられる。ギャップ材は、外側コア部32α間の隙間に挿入配置する他、外側コア部32α(コアユニット30α)の成形時に一体成形することもできる。
【0041】
〔作用効果〕
実施形態1に係るリアクトル1Aによれば、所望のインダクタンスに容易に調整できる。分割リアクトル10Aの取付位置を調整すればよいだけだからである。予め取付対象の所定位置に分割リアクトル10Aの適正な取り付けができるように、各取付部33に対応した取付座(ボルト孔)を設けておけば、分割リアクトル10Aの取付部33を取付対象に固定するだけで、複数の分割リアクトル10Aの取付間隔を決められる。従って、エアギャップを設ける場合であっても、所望のインダクタンスに容易に調整できる。また、取付位置を調整するだけでインダクタンスを調整できるため、種々の磁気特性のリアクトル1Aが容易に得られる。
【0042】
《実施形態2》
図3を参照して、実施形態2に係るリアクトル1Bを説明する。このリアクトル1Bは、分割リアクトル10Bの外側コア部32αが互いに係止し合う係止部35を備える点が、実施形態1に係るリアクトル1Aと相違する。以下、相違点を中心に説明し、同様の構成及び同様の効果については説明を省略する。この点は、後述する実施形態3〜実施形態6でも同様である。図3では、説明の便宜上、コイルユニット20の両端部2e及び連結部材2r(図1参照)を省略して示している(後述の図4図5でも同様)。
【0043】
(係止部)
係止部35は、隣り合う分割リアクトル10Bの互いの相対的な位置ずれを抑制する。相対的な位置ずれとは、例えば、コイルユニット20の軸方向のずれ、上下方向のずれ、並列方向のずれ、回転方向のずれなどが挙げられる。ここでいう回転方向とは、分割リアクトル10Bの重心を通り、取付対象(或いは分割リアクトル10Bの取付対象側の面)に直交する軸を回転軸とする動きをいう。この係止部35を備えることで、分割リアクトル10Bの取付時に、相互の位置合わせを行ない易く、その後の相互の位置ずれも抑制し易い。それにより、所望のインダクタンスを維持できる。係止部35は、隣り合う外側コア部32αの互いの対向面に外側コア部32αの構成材料で外側コア部32αと一体に形成されている。
【0044】
係止部35は、互いに嵌合する凹凸を有していればよく、例えば、複数の櫛歯35aを備えることが挙げられる。櫛歯35aの数や櫛歯35aの並列方向は、適宜選択できる。櫛歯35aの並列方向は、本例のようにコイルユニット20の軸方向に沿った方向としてもよいし、コイルユニット20の上下方向に沿った方向としてもよい。係止部35は、コイルユニット20の軸方向に沿った櫛歯とコイルユニット20の上下方向に沿った櫛歯とを備えていてもよい。例えば、外側コア部32αの上記対向面における上半分の櫛歯35aの並列方向は、コイルユニット20の軸方向に沿った方向とし、下半分の櫛歯35aの並列方向は、コイルユニット20の上下方向に沿った方向としてもよい。櫛歯35aの形状は、例えば、矩形状やL字状などが挙げられる。櫛歯35aの形成領域は、外側コア部32αの上記対向面の上下方向の全長に亘る領域が挙げられる。
【0045】
ここでは、櫛歯35aの数は2つとし、櫛歯35aの並列方向は、コイルユニット20の軸方向に沿った方向としている。櫛歯35aの形状は、その根元から先端側に向かって厚さの一様な矩形状としている。櫛歯35aの形成領域は、外側コア部32αの上下方向の全長としている。
【0046】
〔作用効果〕
実施形態2に係るリアクトル1Bによれば、係止部35を備えることで、隣り合う分割リアクトル10Bの相対的な位置ずれを抑制できるため、所望のインダクタンスを維持し易い。
【0047】
《実施形態3》
図4を参照して、実施形態3に係るリアクトル1Cを説明する。このリアクトル1Cは、各分割リアクトル10Cが一つのコイルユニット20と一つのコアユニット30αとを有する組合体11を内部に収納するケース4を備える点と、取付部43(保持部材)が外側コア部32αには形成されておらずケース4に形成されている点とが、実施形態1に係るリアクトル1Aと相違する。
【0048】
[分割リアクトル]
(ケース)
ケース4は、一つのコイルユニット20と一つのコアユニット30αとを有する組合体11を内部に収納する。組合体11をケース4に収納することで、組合体11の外部環境(粉塵や腐食など)からの保護や機械的保護を図ると共に、組合体11の熱を放熱することができる。ケース4は、組合体11が載置される底板部(図示略)と、組合体11の周囲の少なくとも一部を囲む側壁部42とを備える。
【0049】
底板部は、矩形平板状であり、その下面を冷却ベースなどの取付対象(図示略)に取り付ける。側壁部42は、底板部の周縁全周に立設される略矩形枠状である。底板部と側壁部42とは、一体に成形されている。この側壁部42のうち、隣り合う組合体11同士の間に介在されて互いに対向する側壁部42は、隣り合う組合体11(外側コア部32α)同士のギャップとして機能する。ここでは、隣り合う組合体11同士の間に介在されて互いに対向する側壁部42同士は、直接接触している。
【0050】
ケース4と組合体11とは、例えば、コアユニット30αの構成材料に含まれる樹脂で固定できる。このケース4内への組合体11の固定は、実施形態1の分割リアクトルの製造方法において成形型にケース4を用いることで行える。
【0051】
ケース4の材質は、非磁性金属や非金属材料が挙げられる。非磁性金属としては、アルミニウムやその合金、マグネシウムやその合金、銅やその合金、銀やその合金、鉄やオーステナイト系ステンレス鋼などが挙げられる。これらの非磁性金属は熱伝導率が比較的高いので、その全体を放熱経路に利用でき、組合体11に発生した熱を取付対象(例えば、冷却ベース)に効率良く放熱でき、リアクトル1Cの放熱性を高められる。非金属材料としては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ウレタン樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂などの樹脂が挙げられる。これらの非金属材料は一般に電気絶縁性に優れるものが多いことから、コイルユニット20とケース4との間の絶縁性を高められる。これらの非金属材料は上述した金属材料よりも軽く、分割リアクトル10Cを軽量にできる。上記樹脂に後述するセラミックスからなるフィラーを混合した形態とすると、放熱性を高められる。樹脂によりケース4を形成する場合、射出成形を好適に利用することができる。
【0052】
[保持部材]
(取付部)
取付部43は、ケース4の側壁部42と一体に形成されている。この形成は、例えば、ダイキャストによりケース4の他の部分と一体に鋳造することが挙げられる。ケース4を取付対象に取り付けることで、コアユニット30αが取付対象に固定される。取付部43は、ケース4の側壁部42の外周面から局所的に突出するフランジ状に設けられている。取付部43の形成箇所は、コイルユニット20の軸線上に位置する側壁部42の外周面の下部中央としている。取付部43には、締結部材(図示略)が挿通される挿通孔44が形成されている。
【0053】
〔作用効果〕
実施形態3に係るリアクトル1Cによれば、ケース4に取付部43を備えるため、ケース4を備えるリアクトル1Cであっても、ケース4の取付位置を調整するだけで所望のインダクタンスに容易に調整できる。
【0054】
《実施形態4》
図5を参照して、実施形態4に係るリアクトル1Dを説明する。このリアクトル1Dは、ケース4を備える点は実施形態3に係るリアクトル1Cと同じであるが、ケース4の側壁部42の隣り合う分割リアクトル10Dとの対向側が開口する開口部45が形成されている点が、実施形態3に係るリアクトル1Cと相違する。
【0055】
側壁部42は、]字状であり、両外側コア部32αの外端面と、組合体11の上記対向側との反対側の側面とを覆う。隣り合う分割リアクトル10Dの外側コア部32α同士の間は、図5に示すようにエアギャップ3gとする他、ケース4とは異なる材質のギャップ材を介在させたり、ギャップ3gを介さず互いに直接接触させたりすることができる。この分割リアクトル1Dの製造は、ケース4の開口部45に金型の内壁が配置されて、コアユニット30αの構成材料がケース4から漏れないようにすることが挙げられる。
【0056】
〔作用効果〕
実施形態4に係るリアクトル1Dによれば、両分割リアクトル10Dの間隔を調整するだけで、ギャップの間隔を容易に調整できる。また、実施形態3に係るリアクトル1Cに比較して、開口部45が形成されている分だけ、ケース4の軽量化、及びケース4の構成材料を低減できる。
【0057】
《実施形態5》
実施形態5に係るリアクトルとして、図示は省略しているが、分割リアクトルがケース4(図4参照)を備える場合、隣り合う分割リアクトルのケース4の互いの対向面に形成されて互いに係止し合う係止部を備える形態とすることができる。係止部は、例えば、上述の実施形態2と同様の構成とすることができる。係止部の形成箇所は、適宜選択できる。例えば、実施形態4のケースのようにケース4の上記対向側に開口部45が形成されている場合(図5参照)、係止部は、開口部を形成するケースの側壁部の対向端面に形成することが挙げられる。
【0058】
《実施形態6》
図6図7を参照して、実施形態6に係るリアクトル1Eを説明する。このリアクトル1Eは、分割リアクトル10Eが分割される複数のコア片とこれらコア片を被覆する樹脂被覆部5とを有する被覆コアユニット30βを備える点と、取付部53(保持部材)が外側コア片32βには形成されておらず樹脂被覆部5に形成されている点とが、実施形態1のリアクトル1Aと相違する。
【0059】
[被覆コアユニット]
被覆コアユニット30βは、一つの内側コア片31β(内側コア部)と、一対の外側コア片32β(外側コア部)と、これらコア片31β、32βを被覆する樹脂被覆部5とを備える。
【0060】
内側コア片31βは、複数の柱状の分割コア片31mと、各分割コア片31mの間に介在されるギャップ31gと、分割コア片31mと一対の外側コア片32βとの間に介在されるギャップ31gとで構成されている。外側コア片32βは、内側コア片31βとは独立して構成される。分割コア片31m及び外側コア片32βの形状は、角部を丸めた直方体状である。分割コア片31m及び外側コア片32βは、上述の軟磁性粉末や更に絶縁被覆を備える被覆粉末を圧縮成形した圧粉成形体で構成されている。
【0061】
各コア片間のギャップ31gは、実施形態1で説明したギャップ材で形成してもよいし、後述する樹脂被覆部5によって形成されていてもよい。ここでは、各コア片間のギャップ31gは、アルミナなどのギャップ材で構成している。
【0062】
(樹脂被覆部)
樹脂被覆部5は、内側コア片31β及び外側コア片32βの被覆、内側コア片31βの形成(複数の分割コア片31m同士の接合)、内側コア片31βと外側コア片32βとの接合、分割コア片31m同士の間や分割コア片31mと外側コア片32βとの間のギャップ31gの形成、被覆コアユニット30βとコイルユニット20との一体化、といった種々の機能を有する。
【0063】
樹脂被覆部5は、内側コア片31βを被覆する内側被覆部51と、各外側コア片32βを覆う外側被覆部52とを有する。内側被覆部51と外側被覆部52とは、一体に形成されている。内側被覆部51は、内側コア片31βの軸方向両端を除いて、内側コア片31βのその他の全領域を覆っていて、コイルユニット20の内周面と内側コア片31βの外周面の両方に接触している。外側被覆部52は、各外側コア片32βの内側コア片31βとの対向箇所を除いて、各外側コア片32βのその他の全領域を覆っていて、コイルユニット20の両端面に接触している。これらの接触により、コイルユニット20と両コア片31β、32βとは一体に形成されている。隣り合う外側コア片32β同士の間の外側被覆部52は、ギャップとして機能する。ここでは、隣り合う外側コア片32β同士の間の外側被覆部52同士は、直接接触している。即ち、隣り合う外側コア片32β同士の間には外側被覆部52が二重に存在するため、この二重の外側被覆部52の間には界面が形成されている。なお、この樹脂被覆部5は、コイルユニット20の外周面を被覆しておらずこの外周面が露出しているが、この外周面を被覆していてもよい。即ち、樹脂被覆部5は、コイルユニット20の全域に亘って被覆していてもよい。
【0064】
樹脂被覆部5の材質は、例えば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、PPS樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ナイロン6・ナイロン66・ナイロン10T・ナイロン9T・ナイロン6Tなどのポリアミド(PA)樹脂、PBT樹脂、ABS樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0065】
樹脂被覆部5の形成は、射出成形や注型成形などの適宜な樹脂成形法を利用してすることで容易に行える。具体的には、コイルユニット20と各コア片31β、32βとを組み合わせて所定の成形型に収納し、樹脂被覆部5の構成材料を充填・硬化することで行える。
【0066】
[保持部材]
(取付部)
取付部53は、樹脂被覆部5の構成材料で樹脂被覆部5と一体に形成されている。この取付部53を取付対象に取り付けることで、被覆コアユニット30βが取付対象に固定される。取付部53は、外側被覆部52の外端面からコイルユニット20の方向に張り出すようにフランジ状に設けられている。取付部53の形成箇所は、外側被覆部52の下部中央としている。上述したように取付部53が取付対象に面していれば、締付部材によるクリープ変形を抑制し易いため、この取付部53には、カラーを設けなくてもよいが、本例のようにカラー55が埋設されていることでより一層クリープ変形を抑制し易い。カラー55には、締付部材の挿通孔54が形成されている。
【0067】
(その他)
被覆コアユニット30βは、樹脂被覆部5の一部でギャップ31gを形成する場合、絶縁材料で構成されて、コイルユニット20と各コア片31m,32βとの間に介在される介在部材(図示略)を有していることが好ましい。介在部材の材質は、樹脂被覆部5と同様の材質を利用できる。介在部材としては、コイルユニット20と外側コア片32βとの間に介在される端面介在部材と、コイルユニット20と分割コア片31mとの間に介在される内側介在部材とを備えることが挙げられる。
【0068】
端面介在部材は、例えば、コイルユニット20の端面に沿った矩形枠状体で構成することが挙げられる。この端面介在部材は、外側コア片32βを嵌め込む凹部と、外側コア片32βと分割コア片31mとの間を所定の間隔に保持する凸状の間隔保持部とを有する。この凹部により、外側コア片32βにおける内側コア片31βとの対向箇所を除いて、各外側コア片32βのその他の全領域を覆い易い。この間隔保持部により、外側コア片32βと分割コア片31mとの間の間隔を維持し、その間に樹脂被覆部5の一部が充填されることで、外側コア片32βと分割コア片31mとの間に樹脂被覆部5で構成されるギャップ31gを形成できる。
【0069】
内側介在部材は、例えば、複数の分割片で構成することが挙げられる。この分割片は、並列する分割コア片31m同士の間を跨ぐように配置される。分割片の形状は、]字状やU字状が挙げられる。この分割片の内側面には、分割コア片31m同士の間隔を所定の間隔に保持する凸状の間隔保持部を有する。この間隔保持部により、分割コア片31m同士の間の間隔を維持し、その間に樹脂被覆部5の一部が充填されることで、分割コア片31m同士の間に樹脂被覆部5で構成されるギャップ31gを形成できる。
【0070】
〔作用効果〕
実施形態6に係るリアクトル1Eによれば、樹脂被覆部5に取付部53を備えるため、樹脂被覆部5を備えるリアクトル1Eであっても、取付部53の取付位置を調整するだけで所望のインダクタンスに容易に調整できる。
【0071】
《実施形態7》
実施形態7に係るリアクトルは、図示は省略しているが、保持部材の構成が実施形態1に係るリアクトル1Aと相違する。具体的には、保持部材は、隣り合う分割リアクトル10A(図1)の少なくとも外側コア部32α同士を纏めて被覆する樹脂包括部で構成する。このとき、隣り合う外側コア部32α同士をその対向面同士が直接接触した状態で樹脂包括部により被覆する場合、外側コア部32α同士の間には樹脂包括部の一部が介在されない。一方、隣り合う外側コア部32α同士をその対向面同士が直接接触せずその間にギャップ3g(図1図2)を介在させた状態で樹脂包括部により被覆する場合、その間には、隣り合う外側コア部32α同士を覆う単一の樹脂包括部の一部が介在される。そのため、隣り合う外側コア部32α同士の間には、上述の実施形態6に係るリアクトル1E(図6図7)のような樹脂被覆部同士の界面が形成されない。即ち、樹脂包括部における外側コア部32α同士の間と、各外側コア部32αの外周面を覆う部分とは、一連に形成されている。
【0072】
樹脂包括部の材質は、上述の実施形態6の樹脂被覆部5(図6参照)と同様の樹脂を利用できる。この樹脂包括部の形成は、成形型内で隣り合う外側コア部32α同士の間の間隔を特定の間隔に配置し、樹脂包括部の構成材料を充填・硬化することで行える。それにより、被覆包括部で外側コア部同士の間隔が特定の間隔に保持されたリアクトルとすることができる。
【0073】
樹脂包括部は、隣り合う外側コア部32α同士に加えて、その外側コア部32αのそれぞれに繋がる内側コア部31αを一連に覆っていてもよいし、更にその内側コア部31αのそれぞれの外周に配置されるコイルユニット20を一連に覆っていてもよい。即ち、樹脂包括部は、隣り合うコアユニット30α同士を一纏め(一連)に覆っていてもよいし、隣り合うコイルユニット20と隣り合うコアユニット30αとを一纏め(一連)に覆っていてもよい。樹脂包括部は、実施形態6のような樹脂被覆部5の一部で構成される取付部53を有していてもよい。
【0074】
《実施形態8》
実施形態8に係るリアクトルは、図示は省略しているが、保持部材の構成が実施形態1に係るリアクトルと相違する。具体的には、保持部材は、少なくとも各分割リアクトル10A(外側コア部32α)の上面を下面側に向かって押さえ付ける支持部で構成する。支持部による押さえ付けは、隣り合う分割リアクトル10Aを纏めて共通の支持部で行ってもよいし、各分割リアクトル10Aに対して互いに独立する個々の支持部で行ってもよい。共通の支持部を用いる場合、例えば、支持部の数は2つで、各支持部は、隣り合う外側コア部32αの両方の上面に接触するように外側コア部32α同士を跨いで設けられて、両端を取付対象に固定することが挙げられる。個々の支持部を用いる場合、例えば、支持部の数は4つで、各支持部は、各分割リアクトル10Aにおける両外側コア部32αのそれぞれを押さえ付けることが挙げられる。この場合、各支持部の一端が外側コア部32αの上面に接触するように配置され、他端が取付対象に固定されることが挙げられる。支持部には、外側コア部の上面と取付対象との高さの差に応じて適宜屈曲させた平板が利用できる。その他、共通の支持部を用いる場合、支持部には、外側コア部32αの上面に接触する箇所を下側に反わせた平板ばねを利用できる。支持部の材質は、上述の実施形態3のケース4(図4参照)と同様の金属が挙げられる。
【0075】
本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0076】
1A,1B,1C,1D,1E リアクトル
10A,10B,10C,10D,10E 分割リアクトル
11 組合体
2 コイル
20 コイルユニット
2r 連結部材
2w 巻線 2e 端部
3 磁性コア
30α コアユニット 30β 被覆コアユニット
3g ギャップ(エアギャップ)
31α 内側コア部
31β 内側コア片
31m 分割コア片 31g ギャップ
32α 外側コア部
32β 外側コア片
33 取付部 34 挿通孔
35 係止部 35a 櫛歯
4 ケース
42 側壁部 43 取付部 44 挿通孔 45 開口部
5 樹脂被覆部
51 内側被覆部 52 外側被覆部 53 取付部 54 挿通孔
55 カラー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7