(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
ここでは、本発明の一実施形態である給水給湯ホースについて、
図1〜
図5を参照しつつ以下に説明する。
【0018】
(給水給湯ホース)
給水給湯ホース1は、
図1に示すように、内層2a及び外層2bからなる内面層チューブ2と、内面層チューブ2の外層周囲に形成された補強層3と、補強層3に被覆された外面樹脂層4とを備えている。内面層チューブ2の内層2aは架橋ポリエチレン樹脂からなり、外層2bは柔軟性を有する熱可塑性エラストマーからなる。また、外層2bには酸化防止剤が含有されている。内層2a及び外層2bの詳細については後述する。
【0019】
(補強層)
補強層3は、内側補強層3aと、外側補強層3bとを有している。内側補強層3aは、複数の補強糸を引き揃えたものを、内面層チューブ2の外周面に交差させ、編み込みしつつ巻き付けて形成されている。補強糸には、強度上、複数のナイロン糸を加撚したものを用いることが好ましい。また、外側補強層3bは、ステンレス鋼線を引き揃えたものを、内側補強層3aの外周面に交差させ編み込みしつつ巻き付けて形成されている。そのため、外側補強層3bは、高強度であり、耐錆性を有する。
【0020】
(外面樹脂層)
外面樹脂層4は、給水給湯ホース1の外表面を保護する樹脂層である。外面樹脂層4の材質は、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレンやウレタン系熱可塑性エラストマーを補強層3の外周面に被覆して形成することができる。
【0021】
次に、内面層チューブ2を構成する内層2aと外層2bとについて詳細に説明する。
【0022】
(内面層チューブ)
<内層>
内層2aを構成する架橋ポリエチレン樹脂は、反応性を有するポリエチレン(PE)に架橋剤を添加して溶融押出することによって得られる。架橋ポリエチレン樹脂は、熱可塑性プラスチックとしての鎖状構造ポリエチレンの分子同士の所々を結合させ、立体の網目構造にした超高分子量ポリエチレンである。従って、架橋反応が終了した時点で、ポリエチレンはあたかも熱硬化性樹脂のような立体網目構造となり、耐熱老化性、耐薬品性、耐環境応力亀裂性能及びクリープ性能に優れる。
【0023】
このような架橋ポリエチレン樹脂は、その優れた化学的安定性により、水質保持と食品衛生面でも良好な特性を示すため、給水給湯ホース1は飲料水用配管材としても用いることができる。また、内層2aは、水道水に含まれる次亜塩素酸ナトリウムの残留塩素に対する耐塩素性はもとより、氷点下での伸びが大きく、耐凍結性も良好である。
【0024】
内層2aの厚さは、0.1〜1.0mmであることが好ましく、0.2〜0.8mmであることが更に好ましい。給水給湯ホース1を常温から95℃に至る広範囲の温度領域で長期間使用することができるためである。なお、厚さが0.1未満であると、押出加工がスムーズに行いにくくなり、また、チューブ状に成型できたとしても水道水に含まれる次亜塩素酸ソーダに対する耐塩素性が劣りやすい。また、厚さが1.0mmを越えると、成型加工性が悪くなりやすい上に、内面層チューブ2が硬くなることで給水給湯ホースとしての柔軟性が失われやすい。
【0025】
<外層>
内面層チューブ2の外層2bを構成する熱可塑性エラストマーには、下記表1に例示するようなエラストマー、即ち、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー(TPVC)及びポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPAE)等を用いることが出来る。
【0027】
このような熱可塑性エラストマーは、架橋エラストマーの特徴とプラスチックの加工性を併せ持っている。即ち、熱可塑性エラストマーは、熱を加えると溶け、冷やすと固まるゴム弾性体である。そして、熱可塑性エラストマーからなる成型物は、高温での形状の保持、延伸や圧縮時の弾性変形等の有用な性質を示す。
【0028】
なお、エラストマーの理論によれば、熱可塑性エラストマーの高分子鎖は、2種類の単位あるいはセグメントを含んでいるが、このセグメントは、ソフトセグメント(軟質部分)とハードセグメント(硬質部分)とのいずれであってもよい。ここで、ソフトセグメントは、ガラス転移温度以上ではアモルファス状態で流動性を示す。また、ハードセグメントは、使用温度範囲では、固体であり、高分子鎖の配列を固定するが(物理架橋)、高温では、物理的結合が解離し、通常の熱可塑性プラスチックと同様に応力下で流動する。
【0029】
次に、外層2bに含まれる酸化防止剤について説明する。
【0030】
外層2bには、フェノール系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤が含有されている。また、フェノール系酸化防止剤は、分子量が異なる2種類の酸化防止剤からなる。外層2b中のリン系酸化防止剤の含有量は2.0wt%以上である。
【0031】
フェノール系酸化防止剤とともにリン系酸化防止剤が2.0wt%以上含まれていることにより、外層2b内の酸化防止剤が内層2aへ移動することを従来よりも遅くすることができる。これは、フェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤とが分子間で相互的な作用をして、これらの酸化防止剤が層内を移動する速度を抑制するような効果が生まれているものと考えられる。これにより、従来よりも長期に亘って酸化防止剤が外層2b及び内層2aに残存する。以下に、内層2a及び外層2bの樹脂材料の酸化劣化メカニズム(CycleI,CycleII)について、
図2(a)を参照しつつ説明する。
【0032】
樹脂材料の酸化劣化は、一般的に
図2(a)に示すCycleI(一次酸化)とCycleII(ニ次酸化)との2つの反応が起こることで生じると考えられている。CycleIでは下記(1)式及び(2)式の反応が起こり、CycleIIでは(3)式及び(4)式の反応が起こる。
<CycleI>
<CycleII>
このように、
ラジカル「ROO・/RO・/・OH」が発生
→発生したラジカルがポリマー(上記(2)式及び(4)式の「R−H」)の「・H」と反応し、新たなラジカル「ROO・/RO・/・OH」が発生
→新たなラジカルがポリマーの「・H」と反応し、ラジカル「ROO・/RO・/・OH」が発生
→・・・
というサイクルが繰り返される。ラジカル「ROO・/RO・/・OH」が発生すると、上記(2)式及び(4)式が進行することでポリマー(R−H)が消費され、内面層チューブ2が酸化劣化する。
【0033】
ここにフェノール系酸化防止剤が存在すると、フェノール系酸化防止剤がラジカル「ROO・/RO・/・OH」と反応することで「第1酸化防止反応」が起こり(
図2(b)参照)、(2)式の反応が抑えられる。しかし、「第1酸化防止反応」で生成した「ROOH」は不安定であるため(
図2(b)の「R'OOH」参照)、すぐに「RO・」と「・OH」に分解される((3)式参照)。その後、(4)式が進行することで、ポリマー(R−H)が消費され、内面層チューブ2の酸化劣化が進行する。したがって、フェノール系酸化防止剤のみでは、ポリマー(R−H)が消費されるとともに劣化要因であるラジカルが増え続けるため、内面層チューブ2の酸化劣化を抑えることができない。
【0034】
しかし、リン系酸化防止剤が存在すると、「第1酸化防止反応」で生成した「ROOH」にリン系酸化防止剤が作用することで、「第2酸化防止反応」が起こり(
図2(c)参照)、上記(3)式の進行が抑えられる。これにより、劣化要因であるラジカル「RO・/・OH」の発生を抑制することができる結果、(4)式の進行を抑えることができる。よって、内面層チューブ2の酸化劣化を抑止できる。
【0035】
なお、リン系酸化防止剤だけが添加された場合は、フェノール系酸化防止剤が存在しないため、(1),(2)式の進行を抑えられず、ポリマー(R−H)が消費され続ける。そのため、内面層チューブ2の酸化劣化を抑えることができない。
【0036】
このように、フェノール系酸化防止剤又はリン系酸化防止剤が単独で存在する場合、劣化要因であるラジカルからポリマーを効率良く保護することができないが、2つの酸化防止剤を併用した場合、ポリマーを保護することができ、酸化劣化を抑制できる。そして、本発明者らは、リン系酸化防止剤の含有量が2.0wt%以上である場合にこのような効果が得られることを見出した。
【0037】
上記フェノール系酸化防止剤は、特に限定されないが、例えば、2.6−ジ−ターシャリー−ブチル−4−メチルフェノールを用いることができる。また、分子量が異なる2種類の酸化防止剤として、例えば、分子量が大きい酸化防止剤(第1酸化防止剤)に市販品のIRGANOX1330(BASFジャパン製、分子量:775)を用い(
図3(a)参照)、分子量が小さい酸化防止剤(第2酸化防止剤)にIRGANOX1076(BASFジャパン製、分子量:531)を用いることができる(
図3(b)参照)。
【0038】
分子量が異なる2種類の酸化防止剤において、分子量の大きい第1酸化防止剤の含有量は、分子量の小さい第2酸化防止剤の含有量よりも多いことが好ましい。第1酸化防止剤は、第2酸化防止剤よりも分子量が大きいため、外層2bの高分子鎖間や内層2aの網目構造を第2酸化防止剤よりも通過しにくい。そのため、上記含有量とすることにより、外層2bに含有された第2酸化防止剤が内層2aへ全て移動しても、外層2bには第1酸化防止剤が残る。残った第1酸化防止剤は徐々に内層2aへ移動するため、酸化防止剤が長期に亘って外層2b及び内層2aに存在するようになる。これにより、第1酸化防止反応が確実に起こるため(
図2(b)参照)、<CycleI>の進行(
図2(a)参照)を効果的に抑制できる。
【0039】
また、第1酸化防止剤の含有量を2.0wt%以上とし、第2酸化防止剤の含有量を1.0wt%以上とすることが好ましい。これにより、外層2b中の第1酸化防止剤が内層2aへ移動することをより遅くすることができるため、<CycleI>の進行(
図2(a)参照)をさらに効果的に抑制できる。
【0040】
さらに、リン系酸化防止剤は、特に限定されないが、例えばトリス(ノニルフェニル)ホスファイト等を用いることができる。さらに、リン系酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤のうち分子量の小さい第2酸化防止剤よりも分子量が大きいことが好ましい。分子サイズが大きいことによる立体障害の効果が生まれて、リン系酸化防止剤が外層2b中から内層2aへ移動するのをさらに遅らせることができるためである。このようなリン系酸化防止剤として、例えば、市販品のアデカスタブHP−10(ADEKA製)を用いることができる(
図3(c)参照)。
【0041】
続いて、本発明の内面層チューブ2による効果を従来の内面層チューブと比較しつつ説明する。
【0042】
給水給湯ホースの寿命を加速度的に試験するため、内面層チューブの内側に下記の薬液水(次亜塩素酸水溶液)を0.3kPaの水圧で循環通水した(塩素循環試験)。そして、試験時間に対する内層の肉厚変化をマイクロスコープで測定した。この結果を
図4及び表2に示す(結果1)。また、内面層チューブ(内層及び外層)中の酸化防止剤の濃度の経時変化を表3,4に示す。表3には本発明の内面層チューブの結果を示しており、表4には従来の内面層チューブの結果を示している。また、
図5には、酸化防止剤の移動を時間の経過とともに模式的に図示している(結果2)。
<薬液水条件>
・薬液水温 :80℃
・残留塩素濃度:50ppm
・銅イオン濃度:0.6ppm
・pH :6.6
【0043】
なお、上記試験では、本発明の内面層チューブ2として、外層にIRGANOX1330(2.5wt%),IRGANOX1076(1.5wt%)及びアデカスタブHP-10(2.0wt%)が含有されているものを用いた。また、従来の内面層チューブとして、外層にIRGANOX1330(2.5wt%),IRGANOX1076(1.5wt%)が含有されているものを用いた(特許文献2,3に相当)。
【0045】
図4及び表2から、本発明の内面層チューブ2は、17000時間経過してもバースト(破裂)せず、その後も内面層チューブ2を継続して使用できた。また、15000時間経過した時点でも内層厚みが約100μmであった。一方、従来の内面層チューブは、15000時間経過した時点でバーストした。この時の内層厚みは略0μmであった。このように、本発明の内面層チューブ2は、従来の内面層チューブより厚みの減少を抑制でき、また、優れた耐久性を有していることがわかった。
【0048】
表3に示すように、本発明では、10000時間後にも酸化防止剤が内層及び外層に存在した。具体的には、IRGANOX1076(分子量が小さいフェノール系酸化防止剤)及びアデカスタブHP-10(リン系酸化防止剤)が全て消費されているが、IRGANOX1330(分子量が大きいフェノール系酸化防止剤)が内層や外層に残っていた。
【0049】
これに対し、従来の内面層チューブでは、表4に示すように、4000時間後には酸化防止剤が略消費され、10000時間後には全て消費されており、内層及び外層のどちらにも酸化防止剤が残っていなかった。また、試験開始後から4000時間まで、外層に存在する酸化防止剤は、本発明よりも少なかった。
【0050】
次に、
図5を用いて、酸化防止剤の移動を説明する。
図5(a)に示すように、本発明では、
(i)最初は、外層にだけ酸化防止剤が含まれている。
(ii)その後、外層中の酸化防止剤が内層に移動し、内層に移動した酸化防止剤が薬液水中のラジカル、活性酸素、銅イオン等に対して作用する。これにより、内面層チューブ(内層及び外層)の劣化が抑えられることで、内層は殆ど劣化していない。また、最初はIRGANOX1076及びアデカスタブHP-10が主に内層に移動し、IRGANOX1330の移動量が少ない(表3参照)。
(iii)その後も、外層中の酸化防止剤が内層に移動し、これが薬液水中のラジカル等に作用するため、内面層チューブ(内層及び外層)の劣化が抑えられることで、内層は殆ど劣化していない。
(iv)そして、外層中の酸化防止剤(主に、IRGANOX1076及びアデカスタブHP-10)が減少するのに伴って、内層へ移動する酸化防止剤が減少する。これにより、内層が酸化し劣化し始めることで、内層表面に白化層6が形成されて、内層の厚みが減少し始める。しかし、内層へは酸化防止剤が供給され続けているため、内層の劣化が抑えられている。
(v)その後、外層内からIRGANOX1076及びアデカスタブHP-10が先になくなるが、IRGANOX1330が残っており、これが内層へ徐々に移動する。この酸化防止剤により内層の劣化が抑えられるため、白化層6の形成及び内層の厚みの減少を抑制できる。
なお、白化層6は、一般的に脆質層とも呼ばれる。
【0051】
一方、従来の内面層チューブでは、
図5(b)に示すように、
(i)最初は、外層にだけ酸化防止剤が含まれている。
(ii)その後、外層中の酸化防止剤が内層に移動し、内層中の酸化防止剤が薬液水中のラジカル、活性酸素、銅イオン等に対して作用するが、内層に移動した酸化防止剤は消費されて、内層の表面側から酸化劣化が始まる。これにより、内層表面に白化層6が形成される。また、白化層6にクラック7が発生して脆くなり、内部流体に削り取られることで内層の厚みが減少し始める。
(iii)その後も外層中の酸化防止剤が内層に移動するが、移動した酸化防止剤は消費されて、内層の表面側がさらに酸化劣化する。これにより、白化層6の形成と削り取りが繰り返されることで、内層の厚みがさらに減少する。
(iv)そして、外層中の酸化防止剤が減少するのに伴って、内層へ移動する酸化防止剤が減少することで、内層の劣化が促進する。
(v)その後、外層内及び内層内に酸化防止剤がなくなると、内層の劣化がさらに促進して肉厚が減少し、内面層チューブの耐圧力が水圧に耐えられなくなった時点で内面層チューブがバーストする。
【0052】
このように、本発明の内面層チューブ2では、酸化防止剤であるIRGANOX1076及びアデカスタブHP-10が先に消費されても、フェノール系酸化防止剤(IRGANOX1330)が内層へ供給され続けるため、従来よりも内面層チューブの劣化を抑制できる。
【0053】
ここで、内層2aに酸化防止剤が含有されている場合は、酸化防止剤が内層2aの劣化に対して作用する前に、直接接触している冷水や温水へ抽出される。そこで、内層2aに酸化防止剤を含有させないことにより、内層2a中の酸化防止剤が内層2aの劣化に対して作用する前に、直接接触している冷水や温水へ抽出されることを抑止することができる。また、異物にもなり得る他の成分(酸化防止剤)を含有させないことにより、内層2aの物性の低下及び平滑性の低下を抑止することができる。
【0054】
以上に述べたように、本実施形態の給水給湯ホース1によると、外層2bにフェノール系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤を含有させるとともにリン系酸化防止剤を2.0wt%以上とすることにより、外層2bの酸化防止剤が内層2aへ移動するのを従来よりも遅らせることができる。これにより、内層2a及び外層2bに酸化防止剤を長期に亘って存在させることができるので、従来抑制できなかった酸化劣化サイクル(CycleII(二次酸化))の進行を抑止できる。その結果、内層2a及び外層2bの劣化を抑止できるため、従来よりも長寿命なホースを得ることができる。
【0055】
また、外層2b中のフェノール系酸化防止剤は、分子量が異なる2種類の酸化防止剤からなるため、外層2b中の酸化防止剤が内層へ移動することをより遅らせることができる。すなわち、分子量の小さい酸化防止剤が先に内層2aへ移動することによって消費されても、外層2bには分子量の大きい酸化防止剤が残っている。これが内層2aへ移動することにより、酸化を抑制するため、内層2a及び外層2bに酸化防止剤を長期に亘って存在させることができる。これにより、内層2a及び外層2bの劣化を効果的に抑止できる。
【0056】
さらに、外層2b中のリン系酸化防止剤の分子量が、第2酸化防止剤の分子量よりも大きいことにより、分子サイズが大きいことによる立体障害の効果が生まれて、リン系酸化防止剤が外層中から内層へ移動するのをより遅らせることができる。
【0057】
また、外層2bにおいて、第1酸化防止剤の含有量を2.0wt%以上とし、第2酸化防止剤の含有量を1.0wt%以上とすることにより、外層2b中の第1酸化防止剤が内層2aへ移動することをさらに遅くすることができるため、<CycleI>の進行(
図2(a)参照)をさらに効果的に抑制できる。
【0058】
[実施例]
次に、本発明の実施例を説明する。
【0059】
(実施例1〜4、比較例1,2)
リン系酸化防止剤の含有量を変えたときの外層2bの劣化の有無を調べた。
【0060】
外層2bを構成する熱可塑性エラストマーに、フェノール系酸化防止剤(IRGANOX1330,IRGANOX1076)及びリン系酸化防止剤(アデカスタブHP−10)を含有させた(表5参照)。そして、所定形状の試験片を形成し、下記の薬液水(次亜塩素酸水溶液)に試験片を浸漬した後、所定時間経過後に試験片の物性を調べた。表5には、試験結果(試験片の硬度変化、表面変化及び色変化)を示している。
<薬液水条件>
・薬液水温 :80℃
・残留塩素濃度:50ppm
・銅イオン濃度:0.6ppm
・pH :6.6
【0062】
表5から、実施例1〜4(リン系酸化防止剤が2.0wt%以上)では、硬度が殆ど変化せず、また、表面変化及び色変化も殆ど生じなかった。一方、比較例1,2(リン系酸化防止剤が1.5wt%以下)では、樹脂表面が軟化劣化し、336時間経過した時に表面から色粉が発生した。このように、リン系酸化防止剤の含有量を変えることにより、実施例1〜4では比較例1,2よりも熱可塑性エラストマーの劣化を効果的に抑えることができた。
【0063】
(
参考例、実施例
6〜11、比較例3,4)
分子量が異なるリン系酸化防止剤を用いたときの外層2bの劣化の有無を調べた。
【0064】
外層2bを構成する熱可塑性エラストマーに、フェノール系酸化防止剤(IRGANOX1330,IRGANOX1076)及びリン系酸化防止剤を混合した(表6参照)。そして、所定形状の試験片を形成し、下記の薬液水(次亜塩素酸水溶液)に試験片を浸漬した後、所定時間経過後に試験片の物性を調べた。表6には、試験結果(試験片の硬度変化、表面変化及び色変化)を示している。また、
図6,7には、本例で用いたリン系酸化防止剤の構造式を示している。
<
薬液水条件>
・薬液水温 :80℃
・残留塩素濃度:50ppm
・銅イオン濃度:0.6ppm
・pH :6.6
【0066】
表6から、
参考例および実施例
6〜11(リン系酸化防止剤の分子量が500以上の大きいもの)では、硬度が殆ど変化せず、また、表面変化及び色変化も殆ど生じなかった。一方、比較例3,4(リン系酸化防止剤の分子量が300〜400付近の比較的小さいもの)では、樹脂表面が軟化劣化し、240時間経過した時に表面から色粉が発生した。このように、分子量の大きなリン系酸化防止剤を用いることにより、
参考例および実施例
6〜11では比較例3,4よりも熱可塑性エラストマーの劣化を効果的に抑えることができた。
【0067】
(実施例12〜16、比較例5,6)
分子量が異なる2種類のフェノール系酸化防止剤の含有量を変えたときの外層2bの劣化の有無を調べた。
【0068】
外層2bを構成する熱可塑性エラストマーに、フェノール系酸化防止剤(IRGANOX1330,IRGANOX1076)及びリン系酸化防止剤(アデカスタブHP−10)を含有させた(表7参照)。そして、所定形状の試験片を形成し、下記の薬液水(次亜塩素酸水溶液)に試験片を浸漬した後、所定時間経過後に試験片の物性を調べた。表7には、試験結果(試験片の硬度変化、表面変化及び色変化)を示している。
<
薬液水条件>
・薬液水温 :80℃
・残留塩素濃度:50ppm
・銅イオン濃度:0.6ppm
・pH :6.6
【0070】
表7から、実施例12〜16(分子量が大きいフェノール系酸化防止剤を2.0wt%以上、分子量が小さいフェノール系酸化防止剤を1.0wt%以上とした場合)では、硬度が殆ど変化せず、また、表面変化及び色変化も殆ど生じなかった。一方、比較例5,6(分子量が大きいフェノール系酸化防止剤を2.0wt%未満、分子量が小さいフェノール系酸化防止剤を1.0wt%未満とした場合)では、樹脂表面が軟化劣化し、240時間経過した時に表面から色粉が発生した。上記結果から、本発明の含有量とすることにより、実施例12〜16では比較例5,6よりも熱可塑性エラストマーの劣化を効果的に抑えることができた。
【0071】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。そして、本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0072】
また、上述の実施形態では、内面層チューブ2の外層2b中のフェノール系酸化防止剤は分子量が異なる2種類の酸化防止剤を含んでいるが、フェノール系酸化防止剤が1種類の酸化防止剤からなるものでもよく、3種類以上の酸化防止剤からなるものでもよい。さらに、上述した実施形態及び実施例では、第1酸化防止剤(分子量が大きい酸化防止剤)の含有量が第2酸化防止剤(分子量が小さい酸化防止剤)の含有量よりも多い場合について例示したが、第1酸化防止剤の含有量は第2酸化防止剤の含有量より少なくてもよく、これらが同量でもよい。
【0073】
さらに、フェノール系酸化防止剤(第1酸化防止剤、第2酸化防止剤)及びリン系酸化防止剤は、上述した実施形態及び実施例で例示したものに限られない。
【0074】
加えて、上述した実施形態(
図5)では、内面層チューブ2の内層2aに酸化防止剤が含まれていない例を図示したが、内層に酸化防止剤が含まれてもよい。
【0075】
また、内面層チューブ(内層、外層)には、他の目的の配合剤、例えば、紫外線吸収剤等が含まれていてもよい。