特許第6573260号(P6573260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573260
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】凝縮液ドレイン
(51)【国際特許分類】
   F16T 1/00 20060101AFI20190902BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20190902BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20190902BHJP
   B01D 69/02 20060101ALI20190902BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20190902BHJP
   B01D 69/04 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   F16T1/00 E
   B01D69/00
   B01D69/10
   B01D69/02
   B01D71/02
   B01D69/04
【請求項の数】24
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-513122(P2017-513122)
(86)(22)【出願日】2015年8月20日
(65)【公表番号】特表2017-531139(P2017-531139A)
(43)【公表日】2017年10月19日
(86)【国際出願番号】GB2015052418
(87)【国際公開番号】WO2016042288
(87)【国際公開日】20160324
【審査請求日】2017年5月8日
(31)【優先権主張番号】1416392.7
(32)【優先日】2014年9月17日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】510232430
【氏名又は名称】スピラックス‐サルコ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】チュ,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ラッシュブルック,ケビン
(72)【発明者】
【氏名】ゴーリー,シモン
【審査官】 松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−219383(JP,A)
【文献】 特開昭60−099328(JP,A)
【文献】 特開2000−356306(JP,A)
【文献】 特表2011−513687(JP,A)
【文献】 米国特許第06279593(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16T 1/00
B01D 53/22
B01D 61/00 − 71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮ガスシステムと凝縮液ドレインとを有する圧縮ガス設備であって、
前記凝縮液ドレインは、ドレンチャンバーを定義している本体部を有し、
前記本体部は、
前記圧縮ガスシステムに連結されて凝縮液を前記ドレンチャンバーに受け入れる液−ガス入口と、
凝縮液を集めるため、前記圧縮ガスシステムの凝縮液リターンシステムに連結される液出口と、
前記液−ガス入口と前記液出口との間の前記本体部に配置される多孔質膜と、を有し、
前記多孔質膜は、
前記液−ガス入口に流体連通している入口側と、
前記液出口に流体連通している出口側と、
前記入口側から前記出口側に向かって延長する複数の通路と、を有し、
前記複数の通路の各々は、0.2μm以下の孔サイズを有し、
使用時、前記多孔質膜は、液の通過を許容するが、ガスの通過を規制し、
前記凝縮液ドレインは、前記圧縮ガス設備において、使用時、前記多孔質膜の前記出口側が濡れた状態で維持されるように、構成されていることを特徴とする圧縮ガス設備。
【請求項2】
各通路の前記孔サイズは、0.15μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の圧縮ガス設備。
【請求項3】
前記孔サイズは、各通路に沿って一定ではなく、また、各通路の最小孔サイズは、0.2μm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧縮ガス設備。
【請求項4】
前記多孔質膜は、支持構造を有し、また、前記支持構造の領域における前記通路の前記孔サイズは、0.2μmより大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧縮ガス設備。
【請求項5】
前記多孔質膜の気孔率は、10〜50%の間であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧縮ガス設備。
【請求項6】
前記多孔質膜における液−ガス流れに露出される部位の面積は、0.02〜0.5mであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の圧縮ガス設備。
【請求項7】
前記多孔質膜は、親水性であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の圧縮ガス設備。
【請求項8】
前記多孔質膜は、セラミック多孔質膜であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の圧縮ガス設備。
【請求項9】
前記セラミック多孔質膜は、Alおよび/又はZrOおよび/又はTiOおよび/又はYであることを特徴とする請求項8に記載の圧縮ガス設備。
【請求項10】
前記多孔質膜は、管状多孔質膜であり、前記管状多孔質膜は、前記管状多孔質膜の内部に流体連通している液−ガス入口又は液出口を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の圧縮ガス設備。
【請求項11】
前記本体部の内部に、複数の管状多孔質膜が配置されており、前記液−ガス入口又は前記液出口は、各管状多孔質膜の内部に流体連通していることを特徴とする請求項10に記載の圧縮ガス設備。
【請求項12】
特定の又は各々の管状多孔質膜の長さは、50mmと300mmとの間であることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の圧縮ガス設備。
【請求項13】
特定の又は各々の管状多孔質膜の外径は、10mmと60mmとの間であることを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の圧縮ガス設備。
【請求項14】
前記本体部は、管状本体部であることを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載の圧縮ガス設備。
【請求項15】
前記管状多孔質膜および前記管状本体部は、互いに略同軸であることを特徴とする請求項14に記載の圧縮ガス設備。
【請求項16】
前記液−ガス入口又は前記液出口は、前記管状本体部の端部に提供されており、それと同軸であることを特徴とする請求項14又は請求項15に記載の圧縮ガス設備。
【請求項17】
前記ドレンチャンバーは、特定の又は各々の管状多孔質膜の外部と前記管状本体部の内部との間に定義され、前記液−ガス入口又は前記液出口は、前記管状本体部の側壁部に設けられ、かつ、前記ドレンチャンバーに連通していることを特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載の圧縮ガス設備。
【請求項18】
前記凝縮液ドレインは、使用時、前記液出口が、前記多孔質膜の上に、又は、前記多孔質膜と同じ高さに、又は、前記多孔質膜に、配置されるように構成されていることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の圧縮ガス設備。
【請求項19】
前記凝縮液ドレインは、可動パーツを有していないことを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項に記載の圧縮ガス設備。
【請求項20】
凝縮液ドレインアレイを形成する複数の凝縮液ドレインが存在し、前記凝縮液ドレインアレイの各凝縮液ドレインは、共通の液−ガス入口に流体連通している各液−ガス入口に並列に連結されていることを特徴とする請求項1〜19のいずれか1項に記載の圧縮ガス設備。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の圧縮ガス設備を有する蒸気設備。
【請求項22】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の圧縮ガス設備を有する圧縮空気設備。
【請求項23】
ドレンチャンバーを定義している本体部を有し、前記本体部は、液−ガス入口と、液出口と、前記液−ガス入口と前記液出口との間の前記本体部に配置される多孔質膜と、を有し、前記多孔質膜は、前記液−ガス入口に流体連通している入口側と、前記液出口に流体連通している出口側と、前記入口側から前記出口側に向かって延長する複数の通路と、を有し、前記複数の通路の各々は、0.2μm以下の孔サイズを有する凝縮液ドレインを使用する方法であって、
前記多孔質膜の前記出口側を濡れた状態で維持し、
凝縮液およびガスを前記液−ガス入口を経由して前記ドレンチャンバーに受け入れて、凝縮液を前記多孔質膜を通過させ、そして、ガスの通過は、規制し、
前記出口側を経由して凝縮液を排出することを特徴とする方法。
【請求項24】
前記凝縮液ドレインは、請求項1〜20のいずれか1項に記載の圧縮ガス設備、または請求項21に記載の蒸気設備、または請求項22に記載の圧縮空気設備に設置されていることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質膜を有する凝縮液ドレインに関する。
【背景技術】
【0002】
凝縮液ドレインの基本機能は、凝縮液ドレインが接続されている蒸気システム等の流れシステムから、凝縮液を排出することである。凝縮液ドレインのいくつかのタイプは、サーモスタット式蒸気トラップ、熱力学式蒸気トラップおよび機械式(例えば、ボールフロート)凝縮液ドレインを含んでいる工業用蒸気システム又は圧縮空気システムにおいて、一般的に使用される。
【0003】
これらの既知タイプの凝縮液ドレインの各々は、蒸気システム又は圧縮空気システム等の高圧システムでの使用に適している。特に、これらの既知の凝縮液ドレインの各々の可動パーツおよび非可動パーツは、凝縮液ドレインを開閉することに関連する大きな力に、耐えるように設計することが可能である。しかし、これらの既知タイプの凝縮液ドレインの各々は、損耗(wear)を免れることができず、メンテナンス又は交換を必要とする場合がある多くの可動パーツに、依存している。
【0004】
したがって、メンテナンスするのがより容易である別の凝縮液ドレインを提供することが、好ましい。
【発明の概要】
【0005】
本発明の第1様相によると、液−ガス入口および液出口を有するドレンチャンバーを定義している本体部と、前記液−ガス入口と前記液出口との間の前記本体部に配置される複数の通路(又は孔)を有する多孔質膜と、を有し、前記複数の通路の各々は、約0.2μm以下の孔サイズを有し、使用時、前記多孔質膜は、液の通過を許容するが、ガスの通過を規制する凝縮液ドレインが提供される。
【0006】
前記孔サイズは、約0.15μm以下、又は、約0.1μm以下、又は、約0.08μm以下、又は、約0.06μm以下、又は、約0.04μm以下とすることが可能である。
【0007】
前記孔サイズは、各通路に沿って一定ではないようにすることが可能であり、また、各通路の最小孔サイズは、約0.2μm以下、又は、約0.15μm以下、又は、約0.1μm以下、又は、約0.08μm以下、又は、約0.06μm以下、又は、約0.04のμm以下とすることが可能である。各通路の最小孔サイズは、前記通路の毛管圧を決定する。前記多孔質膜は、前記最小孔サイズが、約0.2μm、又は約0.15μm、又は約0.1μm、又は、約0.08μm、又は、約0.06μm、又は、約0.04μmより大きい通路を、有しないことが可能である。
【0008】
前記多孔質膜は、支持構造を有することが可能であり、また、前記支持構造の領域における前記通路の前記孔サイズは、約0.2μm、又は、約0.15μm、又は、約0.1μm、又は、約0.08μm、又は、約0.06μm、又は、約0.04μmより大きいことが可能である。前記支持構造は、前記多孔質膜の1つ以上の膜層を支持することが可能である。各通路は、前記支持構造および1つ以上の膜層を貫通して延長(extend through)することが可能である。前記孔サイズは、各通路に沿って一定でないようにすることが可能であり、また、最小孔サイズの位置は、膜層内とすることが可能である。各通路の孔サイズは、前記多孔質膜の中で徐々に減少させることで、孔サイズが前記支持構造において最大となり、次に続く膜層の中で減少するようにすることが可能である。孔サイズは、開口部を含んでいる通路の長手方向に沿った任意のポイントにおける、通路の直径等の通路の断面寸法に、関係付けることが可能である。
【0009】
前記多孔質膜の気孔率は、約10〜50%の間、又は、約20〜40%の間、又は、約30〜35%の間とすることが可能である。液−ガス流れに露出される前記多孔質膜の面積は、約0.05m〜0.5m、又は、約0.1m〜0.3m、例えば、約0.2mとすることが可能である。
【0010】
前記多孔質膜は、親水性であることが可能である。前記多孔質膜は、セラミック多孔質膜であることが可能である。前記セラミック多孔質膜は、Alおよび/又はZrOおよび/又はTiOを有することが可能である。
【0011】
前記多孔質膜は、管状多孔質膜であり、前記管状多孔質膜は、前記管状多孔質膜の内部に流体連通している液−ガス入口又は液出口を有することが可能である。前記管状多孔質膜は、複数の内部流路(channel)を有することが可能である。複数の内部流路を提供することは、前記膜の内部における多数の孔を可能にすることが可能である。前記本体部の内部に、複数の管状多孔質膜が配置されており、前記液−ガス入口又は前記液出口は、各管状多孔質膜の内部に流体連通していることが可能である。したがって、前記本体部の内部において利用可能な多孔質膜の面積は、追加の管状多孔質膜を提供することによって、増加させることが可能である。特に、前記本体部の内部に複数の管状多孔質膜を提供することによって、蒸気システムや圧縮空気システム等のシステムから凝縮液を排出することができる排液速度(drainage rate)を、増加させることが可能である。
【0012】
特定の又は各々の管状多孔質膜の長さは、50mmと300mmとの間であることが可能である。特定の又は各々の管状多孔質膜の外径は、10mmと60mmとの間であることが可能である。
【0013】
前記本体部は、管状本体部であることが可能である。前記管状多孔質膜および前記管状本体部は、互いに略同軸とすることが可能である。前記液−ガス入口又は前記液出口は、前記管状本体部の端部に提供され、そして、それと同軸であることが可能である。
【0014】
前記ドレンチャンバーは、特定の又は各々の管状多孔質膜の外部と前記管状本体部の内部との間に定義され、また、前記液−ガス入口又は前記液出口は、前記管状本体部の側壁部に設けられ、かつ、前記ドレンチャンバーに連通していることが可能である。
【0015】
前記凝縮液ドレインは、使用時、前記多孔質膜が濡れた状態で維持されるように構成することが可能である。前記凝縮液ドレインは、使用時、前記液出口が、前記多孔質膜の上に、又は、前記多孔質膜と同じ高さに、又は、前記多孔質膜に、配置されるように、構成することが可能である。前記凝縮液ドレインの前記多孔質膜は、凝縮液流れを受け入れて制御するための凝縮液リターンシステム等の凝縮液システムに、前記液出口が連結されていることによって、使用時、濡れた状態を継続することが可能である。
【0016】
前記凝縮液ドレインは、可動パーツを有していないことが可能である。
【0017】
本発明の第2様相によれば、複数の凝縮液ドレインを有し、前記複数の凝縮液ドレインの各々は、本発明の第1様相に係り、共通の液−ガス入口に流体連通している液−ガス入口に並列に連結されている凝縮液ドレインアレイが提供される。
【0018】
また、本発明の第1様相に係る凝縮液ドレインを1つ以上、および/又は、本発明の第2様相に係る凝縮液ドレインアレイを1つ以上、を有する蒸気設備が提供される。
【0019】
また、本発明の第1様相に係る凝縮液ドレインを1つ以上、および/又は、本発明の第2様相に係る凝縮液ドレインアレイを1つ以上、を有する圧縮空気システムや冷媒システム等の圧縮ガス設備が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施の形態に係る凝縮液ドレインを概略的に示している図である。
図2】孔サイズに依存して毛管圧がどのように変化するのかの傾向を示している図表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
これから、本発明は、例えば、添付図を参照し説明される。
【0022】
図1は、本発明の一実施の形態に係る凝縮液ドレインを概略的に示している。
【0023】
図2は、多くの異なる想定される接触角毎において、孔サイズに依存して毛管圧がどのように変化するのかの傾向を示しているプロット図である。
【0024】
図1は、ステンレススチール製円筒状本体部12および管状多孔質膜14を有する本発明の一実施の形態に係る凝縮液ドレイン10を、示している。
【0025】
本体部12は、閉鎖された第1端部と対向する開放されている第2端部との間の軸Aに沿って延長している。入口ポート16は、蒸気システムの蒸気管(不図示)に取付けるため、閉鎖された第1端部に向かって本体部12の円筒状壁部に提供されており、蒸気および凝縮液を、本体部12に導入することが可能である。
【0026】
膜取付け台18は、本体部12の内部に提供され、閉鎖された第1端部に連結されており、また、管状多孔質膜14の端部を収容するための環状凹部を有する。膜取付け台18および環状凹部は、本体部12の軸Aと同軸である。
【0027】
本実施の形態において、膜14は、内腔20を有するチューブ状である。管状膜14の一方の端部は、膜取付け台18に収容されており、管状膜14は、軸Aに沿って本体部12の内部を同軸上に延長し、本体部12の開口端に向かって突出している。
【0028】
本体部12の開放された第2端部は、キャップ22によって閉鎖される。キャップ22は、膜14の突出している端部を収容し、シールを形成するため、それを貫通して延長している中央出口ポート24と、対応するボア部つまり凹部26を有する。凹部26の壁部には、O−リング28が配置される環状溝が存在しており、キャップ22と管状膜14の端部との間に、シールを形成している。キャップ22は、任意の適当な手段、例えば、ねじ連結によって、本体部12に連結することが可能である。
【0029】
多孔質膜14は、壁部に開口部が形成されている(open wall)セラミック膜構造を有し、当該構造は、貫通して延長する(すなわち、内腔20から管状多孔質膜14の外側円筒状壁部まで延長する)複数の通路(つまり孔)を有する。本実施の形態において、管状多孔質膜14は、酸化アルミニウム(Al)から構成される。管状膜の円筒状壁部は、コア(core)支持構造に支持される複合の膜層を有し、当該層は、径方向外方に沿って孔サイズ(すなわち通路の孔サイズ)が徐々に減少する。したがって、支持コア構造の孔サイズは、外側膜層において定義される制御(controlling)(すなわち最小)孔サイズより大きい。本実施の形態において、膜層は、コア構造(酸化アルミニウム)と同じ材料を有する。別の実施の形態において、膜層は、コア構造と異なる材料から構成することが可能である。例えば、酸化ジルコニウム(ZrO)又は酸化チタン(TiO)は、特に0.2ミクロン(つまりマイクロメートル)未満、例えば、0.005ミクロン〜0.1又は0.2ミクロンの孔サイズの膜層が、適しているだろう。酸化アルミニウム(Al)は、約0.2ミクロン以上、例えば、0.2ミクロン〜2ミクロンの孔サイズが、特に適しているだろう。
【0030】
本実施の形態において、管状多孔質膜に、単一の内腔20が存在するが、しかし、別の実施の形態において、膜14は、パターンを形成して配置される複数の孔20(又は膜流路)を有することが可能である。
【0031】
膜取付け台18およびキャップ22は、本体部12の内部で膜14をシールするため、本体部12の内側円筒状表面と管状多孔質膜14の外側円筒状表面との間に定義される環状ドレンチャンバー30が存在する。したがって、多孔質膜14の壁部は、環状ドレンチャンバー30と内腔20との間における唯一の流体連通手段としての機能を発揮する。
【0032】
本実施の形態において、膜構造の外層は、約0.05ミクロンの孔サイズを有しており、膜14の外側表面と内側表面との間の各流路における(すなわち膜14の壁部を貫通する)最小孔サイズは、0.05ミクロンである。
【0033】
本実施の形態において、本体部12は、長さが約200mmおよび直径が約80mmである。膜14は、長さが約200mmおよび直径が約50mmである。内腔20の直径は、約25mmである。
【0034】
凝縮液ドレイン10が高圧蒸気システムからの凝縮液を排出するために用いられる実例が、これから、一例として説明される。
【0035】
使用時、蒸気トラップ10の入口16は、蒸気システム(不図示)の蒸気管に連結されており、蒸気および/又は凝縮液は、環状ドレンチャンバー30に提供することが可能であり、また、出口ポート24は、蒸気システムにおける種々のポイントから凝縮液を集めるように構成されている凝縮液リターンシステムに連結するため、凝縮液出口管に連結される。
【0036】
蒸気システムの開始フェーズの間において、空気および非凝縮性ガスは、乾式凝縮物ドレイン(dry condensate drain)を経由して排出され、蒸気と凝縮液との混合物は、蒸気システムに導入される。蒸気システムが始動すると、システムに導入される蒸気は、凝縮する傾向があり、液水(又は凝縮液)は、凝縮液ドレインに集まる。開始フェーズの間において、導入される蒸気および凝縮液の圧力は、徐々に増加する。この例において、圧力は、増加して17バールゲージ圧(bar gauge pressure)に到達すること場合がある。
【0037】
環状ドレンチャンバー30に存在する液水(又は凝縮液)は、膜14に作用している17バールの圧力差のため、管状多孔質膜における通路(又は孔)を経由し、内腔20の中に運ばれる。液水は、出口管を経由して運ばれ、凝縮液リターンシステムに流体連通する。したがって、多孔質膜14の出口側(すなわち、本実施の形態において内腔20の壁部)は、凝縮液によって濡れている。
【0038】
膜14の外側円筒状表面に液水が存在しなくなると、環状ドレンチャンバー30に存在する蒸気は、膜14の連続気泡(open cell)構造において定義される通路を経由して延長している多数の個々の液水カラム又は流路に逆らって行動(acts against)する。液水(又は凝縮液)カラムは、内腔20における液水(又は凝縮液)に露出している管状膜14の濡れた内側円筒状表面から、通路に引き込まれる。特に、各カラムは、そのメニスカスに作用している表面張力および液水と通路の材料との間に作用している付着力(adhesion force)のために、通路に引き込まれる。これらの静圧(static pressure)および毛管力は、各カラムのメニスカスに反対方向に作用し、液水の各カラムが、通路の内部で維持され、又は、蒸気によって膜を経由して戻されるか否かを決定する。
【0039】
それが引き込まれる通路を経由して流体カラムを戻すために必要とされる圧力は、毛管圧Pであり、式1に示されるように、流体の表面張力、流体と通路との間の接触角、および、通路の孔サイズによって決定される。
【0040】
式1:P=2γcosθ/r
式1において、Pは毛管圧であり、γは蒸気における液水の自由表面(free surface)の表面張力であり、θは水と膜の通路との接触角であり、rは有効孔サイズ(すなわち、各通路の最小孔サイズ)の半径である。
【0041】
理解されるように、本実施の形態において、膜14の材料(酸化アルミニウム)は、親水性であり、したがって、膜流路と液水との接触角は、小さく、例えば、60°より小さい。接触角は、孔の材料および膜14に存在する汚染物質の程度に依存している。
【0042】
式1は、各カラムのメニスカスに作用している大きな圧力差にもかかわらず、毛管圧が圧力差より大きい場合、液水と通路との間における表面張力および付着力が、通路の内部でカラムを維持できることを、示している。
【0043】
圧力差ΔPと孔サイズ(式1において半径rによって表わされる)との間に逆の関係を与えると、十分に小さな孔サイズは、毛管圧が、少なくとも通路に作用している圧力差と同程度の大きさであることを、意味している。したがって、水カラムは、通路に残留し、そして、通路に、蒸気が膜14を貫通して出口ポート24に移動することを規制する液水の自由表面が、存在することとなる。
【0044】
凝縮液は、入口ポート16を経由して凝縮液ドレイン10に到着すると、環状チャンバー30に流れ込む。膜14の外側円筒状表面と接触する凝縮液は、同じ毛管力によって通路に引き入れられ、そして、液水カラムに向かって流れて、そこで保持される。水カラムに接すると、凝縮液は、水カラムに流れ込む。通路の内部で成長するよりはむしろ、各水カラムの高さが、メニスカスに作用している静的な力(変化しない)によって、平衡に達し、したがって、膜14を貫通し、内腔20に流入し、出口管から流出する凝縮液の正味の流れ(net flow)が、存在する。
【0045】
したがって、毛管圧が圧力差より大きい場合、膜は、蒸気の通過を規制するが、凝縮液の通過を許容し、そして、凝縮液ドレインおよび蒸気トラップとして作用する。
【0046】
しかし、圧力差ΔPが毛管圧Pより上昇する場合(すなわち、圧力が、毛管作用のため、各水カラムのメニスカスに作用している力より大きくなる場合)、液水カラムは、蒸気によって孔を通過することを強いられ、そして、蒸気は、その後、連続的に孔を通過し、膜14の内腔20に流入し、そして、出口24を通過する。このような状況下、凝縮液ドレイン10は、蒸気を含むことを中止し、したがって、蒸気トラップとして作用するのを停止する。
【0047】
したがって、孔サイズr、接触角θおよび圧力の間の関係は、凝縮液ドレイン10の正しい機能にとって重要である。図2は、60°、40°、20°および0°の選択された予想接触角毎の孔サイズの範囲に対する毛管圧Pの予想値を、示している。
【0048】
この特定の実例においては、孔サイズが0.05ミクロンでの毛管圧は、接触角(すなわち、60°〜0°の間の接触角範囲)に依存して15〜25バールの間にあり、接触角が40°以下である場合、少なくとも20バールである。
【0049】
別の実施の形態において、凝縮液ドレイン10は、異なって配置することが可能である。例えば、本体部12の内部に、複数の管状多孔質膜14を存在させ、それらの内腔20を、共通のマニホールドに連結することも可能である。
【0050】
さらに、凝縮液ドレインが、管状膜を取り囲んでいるチャンバーに蒸気および凝縮液を受け入れ、そして、管状膜の特定の又は各々の内腔から凝縮液を排出するように構成されていることが、記載されていたが、別の実施の形態においては、流れの方向を逆とすることが可能であることは理解されるだろう。特に、凝縮液ドレインは、蒸気および凝縮液が、特定の又は各々の管状多孔質膜における特定の又は各々の内腔に供給され、そして、凝縮液が、特定の又は各々の膜を取り囲んでいるチャンバーから排出されるように、構成することが可能である。
【0051】
本発明の実施の形態は、管状多孔質膜である場合に関して説明されてきたが、別の実施の形態において、膜は、任意の適当なサイズ又は形状であることが可能である。例えば、膜は、略平面的であることが可能であり、第1チャンバーを第2チャンバーから分離することが可能である。例えば、膜は、蒸気および凝縮液を受け入れるための上部の第1チャンバーを、凝縮液を排出するための下方の第2チャンバーから分離することが可能である。凝縮液を排出するためのチャンバーに露出される膜の側が、濡れたままであり、液水カラムが、毛管力の影響で膜に付勢されるように、凝縮液ドレインを構成することが可能である。
【0052】
本発明の実施の形態は、多孔質膜のコア構造が、孔サイズが徐々に減少する径方向外側膜層によって取り囲まれる径方向内側構造であることに関して説明されていたが、多孔質膜が任意の適当な構造を有することが可能であることは、理解されるだろう。例えば、孔サイズは、多孔質膜の全体にわたって略連続的であることが可能である。さらに、孔サイズは、管状多孔質膜の径方向内方に沿って減少することが可能である。さらに、多孔質膜は、管状でなくても構わなく、そして、孔サイズは、入口側(すなわち液−ガス入口と連通する側)から出口側(液出口と連通している膜の側)に向かって一様に減少すること、又は、その逆が可能である。
【0053】
本発明の実施の形態は、凝縮液ドレインが蒸気システムに連結され、そして、凝縮液を排出して蒸気を保持するための蒸気トラップとしての機能を発揮することに関して説明されてきたが、凝縮液ドレインは、圧縮空気システムや冷媒システム等の他の圧縮ガスシステム等のガスおよび液体の流れの混合体を有する他のシステムに対しても、等しく適用できることは理解されるだろう。
図1
図2