(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面を参照しながら、自動車の自動変速機の油圧回路に使用される管路ブロックの接続に用いられるコネクタ部材を例として、発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。
【0015】
図1には本発明第1実施形態の合成樹脂製パイプ(コネクタ部材)1を示す。
図1の上側半分を断面図、下側半分を外観図で示している。
図3、
図4、
図5も同様である。合成樹脂製パイプ1は、合成樹脂製の部材であり、円形断面を有する中空の直管状に形成されている。コネクタ部材1には、シール溝111,111が形成されていて、シール用のOリング2、2が装着されて使用に供される。
【0016】
シール溝111,111は、合成樹脂製パイプ1の両端部の外周面に設けられている。シール溝111とOリングに替えて、後述する実施形態のように、合成樹脂製パイプ1の端部の外周面に雄ネジを設けてもよい。あるいは、一方の端部にシール溝があり、他方の端部に雄ネジが設けられていてもよい。
【0017】
合成樹脂製パイプ(コネクタ部材)1は、合成樹脂の射出成型により形成された中空管状のパイプ本体11と、パイプ本体11の内周側に接合一体化された補強筒体12とを含んで構成されている。そして、補強筒体12は、パイプ本体11の両端のシール溝の間の部分であるパイプ中間部11Mに設けられている。すなわち、合成樹脂製パイプ1において、シール溝111,111(もしくは雄ネジ)の間に延在する合成樹脂製パイプ中間部11Mには、少なくとも1つの補強筒体12がパイプの内周側に接合一体化されている。
【0018】
パイプ本体11と補強筒体12の接合一体化は、両者がパイプの半径方向にはがれないように、インサート射出成形や接着等の手段により行われる。また、パイプ本体11と補強筒体12の接合一体化は、合成樹脂製パイプ内を通流する流体がパイプ本体11と補強筒体12の間に入り込まないように、補強筒体12の外周面が、パイプ中間部を構成する合成樹脂と密着するようになされることが好ましい。また、補強体12はパイプの内周面側に埋入されるものであってもよい。
【0019】
後述するように、パイプ本体11がインサート射出成形を利用して形成される場合であれば、補強筒体12の外周面に化学エッチングやレーザー加工により細孔や微細な空隙を設け、射出成型の際に液状の樹脂が細孔や空隙に入り込むようにして、パイプ本体11と補強筒体12とが、アンカー効果により強固に、密着して接合されることが特に好ましい。また、両者の接合強度が高められるよう、補強筒体12の外周面や端面に溝や凹凸、突起、ロレットなどを設けて、パイプ本体11がインサート射出成形されることが好ましい。また、これら溝や凹凸、突起などが、パイプ半径方向の相対移動に関してアンダーカット形状とされることが特に好ましい。また、インサート射出成型に際し、補強筒体にプライマーを塗布したり、表面処理を行ったりして、合成樹脂と補強筒体の接合強度を高めることも好ましい。
【0020】
また、パイプ本体11と補強筒体12の接合が接着により行われる場合には、接着剤やプライマーやカップリング剤などを利用して、両者が接着されることが好ましい。
【0021】
パイプ中間部11Mにおいては、補強筒体12が一体化された部分と補強筒体12が一体化されていない部分とが交互に設けられている。すなわち、パイプ中間部11Mにおいては、補強された部分と補強されていない部分とが軸方向に交互に並んでいる。
本実施形態においては、1つの補強体12がパイプ中間部11Mのパイプ長さ方向中央部に設けられており、補強体12が設けられた部位の両側に、補強されていない部位11N、11Nが設けられている。
【0022】
補強筒体12が一体化されていない部分11Nのパイプ軸方向長さL2は、合成樹脂製パイプの直径をDとして、0.3D≦L2≦1.5Dの長さとされている。すなわち、補強されていない部分11Nの長さL2は、概ねパイプの直径程度の長さにされる。好ましくは、長さL2は、0.5D≦L2≦1.2Dとされる。なお、補強されていない部分11Nが複数ある場合には、それぞれの補強されていない部分の長さL2が異なっていてもよい。パイプの耐圧性を効率よく高める観点からは、補強されていない部分の長さL2が互いにほぼ同じとされることが好ましい。なお、合成樹脂製パイプの直径Dは、それぞれの部位における外径を用いて、それぞれの位置における長さL2の好ましい範囲を決定して長さL2を定めればよい。
本実施形態では、補強筒体12が一体化されていない部分11Nのパイプ軸方向長さL2は、0.8D程度とされている。
【0023】
パイプ本体11を構成する合成樹脂は、特に限定されない。好ましくは、ポリプロピレン樹脂などのオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂などの熱可塑性樹脂や、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマーなどが使用できる。合成樹脂に補強繊維などを配合してもよい。本実施形態のコネクタ部材1におけるパイプ本体11はポリアミド樹脂により形成されている。パイプ本体11の形成は、典型的には後述するように射出成形により行われるが、切削加工等、他の成形方法を利用するものであってもよい。
【0024】
補強筒体12は、パイプ本体11の内周側に接合一体化されて、パイプ本体11が内圧により拡径し、破断するのを阻止する働きをする。補強筒体12は直筒状に形成されていることが好ましい。補強筒体12は典型的には金属製であり、アルミニウムや鉄・ステンレス・鋼等の材料で構成することができる。また、ガラス繊維や炭素繊維などの補強繊維を引きそろえたプリグレブを、補強繊維が周方向に配向されるようにリング状に巻きつけて、補強筒体12を構成してもよい。補強筒体の厚み等の具体的仕様は、補強筒体の構成材料と、求められる補強効果とを考慮して決定すればよい。補強筒体の構成材料は、パイプ本体11を構成する合成樹脂と接着性の良い材料であることが好ましい。
【0025】
円筒状の補強筒体12の長さL1は、合成樹脂製パイプの直径をDとして、0.5D≦L1≦2Dの長さとされることが好ましい。特に好ましくは、長さL1は0.7D≦L1≦1.5Dとされる。本実施形態では、補強筒体12の長さ、すなわち、補強筒体12が一体化された部分のパイプ軸方向長さL1は、0.8D程度とされている。
【0026】
また、補強筒体12の内周面に、凸条または突起などが設けられることが好ましい。凸条または突起などが設けられていると、インサート射出成形により合成樹脂製パイプ1を成形する際に、これらを利用して補強筒体12を金型内部に確実に保持し、補強筒体12の位置を正確に位置決めできる。
【0027】
合成樹脂製パイプ(コネクタ部材)1によって油圧回路を構成する管路ブロックの管路が接続される様子を、
図2を参照して説明する。
図2には管路ブロック3,4の一部を断面で、合成樹脂製パイプ1を外観で示している。ここで、管路ブロックとは、内部に管路が形成された部材であり、所定の管路ブロックを所定の位置関係で対向配置すると、内部の管路が連絡して一連の管路が完成するように構成された部材のことである。管路ブロックは、典型的には鉄系合金やアルミ合金、合成樹脂などにより構成される。管路ブロックには好ましくは複数の管路が形成されている。これら管路は、典型的には機械加工などによって形成されている。
【0028】
合成樹脂製パイプ1は、対向配置される管路ブロック3,4の間に介装されて、管路31,41を接続する。本実施形態においては、圧力制御弁側の管路ブロック3と、配管側の管路ブロック4があり、それぞれの管路ブロックには、ブロックの内側に管路31,41が穴あけ加工によって設けられている。
図2のように、コネクタ部材1、1が管路31,41に入り込むように配置され、管路ブロック3,4が対向配置されて組み立てられると、互いに対向する位置の管路31,41が合成樹脂製パイプ1を通じて接続される。合成樹脂製パイプ1は、Oリング2、2が取り付けられた状態で、その両端部がそれぞれ管路31および管路41に挿入されて、これら管路を接続する。
【0029】
なお、本実施形態においては、管路ブロック3,4に設けられた管路31,41は、管路ブロックの端面付近が段付き形状とされている。これは、挿入された合成樹脂製パイプ1が、一方の管路に過度に入り込んでしまうのを防止するためである。過度の入り込みが防止できるのであれば、管路は段付き形状でなく直管状であってもよい。
【0030】
合成樹脂製パイプ1の製造方法について説明する。いわゆるインサート射出成型法と呼ばれる、合成樹脂の射出成形を利用した方法で、合成樹脂製パイプ1を製造することができる。
射出成型工程に先立って、補強筒体12を準備しておく。補強筒体12は金属のパイプ形成加工、プレス加工や切削加工などの公知の製造方法により、所定の形状のものが製造できる。補強繊維が周方向に配向された補強筒体12を製造するのであれば、補強繊維(例えばガラス繊維)が一方向に引きそろえられてシート状にされた補強繊維プリグレブを所定の幅と長さに裁断したものを準備し、そのプリグレブの裁断片(テープ)を、所定の径の軸の外周部に、補強繊維が周方向に配向するように巻きつける。そして、プリグレブに含まれる樹脂成分を硬化させて、巻きつけたプリグレブを筒状の補強筒体12にして軸から取り外せばよい。
【0031】
インサート射出成型用の金型を準備する。この金型は、典型的には、合成樹脂製パイプ1の外周面形状と略一致する形状のキャビティを形成可能な1対のキャビティ型と、合成樹脂製パイプ1の内周面形状と略一致する形状のコア型とを含むよう、構成される。
【0032】
インサート射出成型用の金型を型開きして、所定の位置に補強筒体を配置する。この時、補強筒体12を、コア型の外周面に密着するように取り付けて金型内に配置すれば、成形されるパイプ本体の内周面に補強筒体が一体化できる。補強筒体の配置に先立ち、補強筒体の表面にプライマー処理や、化学エッチング処理、レーザー加工などを施しておいて、補強筒体とパイプ本体11の接合強度を高めることが好ましい。
【0033】
また、コア型を段付き形状やテーパ形状に形成しておいて、所定の軸方向位置に補強筒体12が確実に配置されるようにするのも好ましい。本実施形態においては、コア型が段付き形状に設けられていて、この段付きを利用して、補強筒体を軸方向位置に位置決めして、インサート射出成型に供している。
図1の合成樹脂製パイプ1の内周面において、補強筒体12よりも左側に位置する部分の内周面と、補強筒体12の内周面の間に段差が見られるのは、このコア型の段付きに由来する段差である。
また、補強筒体12が、内周面に、凸条または突起などを有している場合には、それらを利用してコア型と補強筒体12の位置決めを行えば、補強筒体12の軸方向位置を的確に維持した状態で、インサート射出成型用の金型の内部に補強筒体12が保持できて好ましい。
【0034】
補強筒体12を的確な姿勢・位置に配置した状態で、金型を型閉じする。
型閉じされた金型に、ゲートを通じて液状の樹脂材料を射出し、キャビティを充填する。そして、樹脂を硬化する。樹脂の硬化は、冷却や加熱など、使用する樹脂の性質に応じて行われる。樹脂が硬化すると、パイプ本体11の内周の所定の位置に補強筒体12が接合一体化された合成樹脂製パイプ1となるので、型開きして合成樹脂製パイプ1を取り出せばよい。この様なインサート射出成型法を利用した製造方法で合成樹脂製パイプ1を製造すれば、耐圧性に優れる合成樹脂製パイプ1を効率的に製造することができる。
【0035】
上記合成樹脂製パイプ1の作用及び効果について説明する。
合成樹脂製パイプ1によれば、内圧に対するパイプの耐圧性が向上する。合成樹脂製パイプ1には、補強筒体が一体化されていない部分11Nがあるが、その部分においても、耐圧性が向上する。発明者の検討によれば、補強筒体が一体化されていない部分11Nのパイプ軸方向長さL2が、合成樹脂製パイプの直径をDとして、0.3D≦L2≦1.5Dの長さとされていれば、補強筒体12が一体化されていない部分11Nにおいても、耐圧性の向上が認められることがわかった。
【0036】
パイプの耐圧性に関する一般的な技術的理解は、内圧の負荷によって、管壁に周方向の引っ張り応力、いわゆるフープストレスが発生し、このフープストレスが大きくなると、管壁が耐えられなくなって、管壁に軸方向に沿った亀裂が生じ破裂に至る、というものである。この技術理解に基づけば、内圧により発生するフープストレスに対し、パイプの最も弱い部位で管壁の破裂が起こることになるため、たとえ補強を行った箇所の耐圧性は向上できても、補強しない場所では、耐圧性の向上が見込めないことになる。
したがって、このような技術理解に基づいて設計する限り、補強は、パイプの全長にわたって行う必要がある。そのような補強は不可能ではないが、補強が大がかりとなるため、そもそもパイプを合成樹脂化しようとしていた、軽量化、低コスト化、周辺部材の一体化等の要請を没却してしまうものである。
【0037】
上記合成樹脂製パイプ1は補強筒体12が配されていない部分でも耐圧強度向上が認められ、その点で、一般的な技術的理解を超える効果が得られている。
補強筒体12が一体化されていない部分11Nにおいて、合成樹脂製パイプの耐圧性が向上するメカニズムは以下のものであると推察する。
【0038】
合成樹脂製パイプ1が内圧により破裂する過程を詳細に考察していくと、フープストレスが樹脂の強度に達しても、直ちに亀裂の発生や破裂に至るわけではないと考えられる。フープストレスが大きくなって、管壁の一部でフープストレスが材料強度を超えると、その部分で管壁が伸び変形を起こしながら、フープストレスが材料強度を超える領域が徐々に大きくなっていき、その領域が管の内周面から外周面にわたって広がるようになると、内外を貫通する亀裂が発生し、管が破裂に至るものと推定される。この過程で、合成樹脂製のパイプは拡径していき、最終的に亀裂の発生に至るものと考えられる。
【0039】
一方、補強筒体12がパイプ本体の内周側に接合一体化されている部分では、補強筒体12の働きにより、接合一体化されたパイプ本体11の拡径が抑制・防止されることになる。すなわち、補強筒体12が接合一体化された部分ではパイプ本体は実質的に拡径しない。このため、補強筒体12が一体化されていない部分11Nにおいても、補強筒体12に隣接する部分では補強筒体による拡径抑制効果が及ぶ。すると、補強筒体12が一体化されていない部分11Nにおいて、管壁の一部でフープストレスが材料強度を超えても、管の拡径が抑制されていれば、フープストレスが材料強度を超える領域がそれ以上拡大しなくなって、亀裂の発生や破裂に至らなくなり、耐圧性が向上するものと推定される。
【0040】
発明者は合成樹脂製パイプ1の耐圧試験を繰り返し行う中で、合成樹脂製パイプ1の両端部のシール部分やネジ部分といった、パイプが外周から拘束されて拡径が抑制される部位がある場合には、内圧をかけた際の合成樹脂製パイプ1の亀裂の発生が、そうした拘束された部位に隣り合う箇所には発生しにくいことを発見した。こうした知見も、上記推定を裏付けるものである。
【0041】
補強筒体12が一体化されていない部分11Nにおいて、補強筒体12の存在によって管の拡径が抑制される効果は、補強筒体から離れるほど弱まるものであると考えられるが、発明者の検討によれば、補強筒体が一体化されていない部分11Nのパイプ軸方向長さL2が、合成樹脂製パイプの直径をDとして、L2≦1.5Dの長さとされていれば、耐圧性の向上効果が十分に得られることがわかった。
【0042】
また、補強筒体が一体化されていない部分11Nのパイプ軸方向長さL2が、0.3D≦L2となっていると、補強筒体12を小型化して、互いに離して配置することができるようになり、効率的に合成樹脂製パイプ1の耐圧性を向上させることができる。
【0043】
また、パイプの内周側に接合一体化された補強筒体の外周面が、パイプ中間部を構成する合成樹脂と密着していれば、補強筒体の外周面と合成樹脂の間に、合成樹脂製パイプの内部を通流する流体が入り込まず、両者が引きはがされるような内圧がかからなくなって、両者の接合一体化がより強力に維持されて、耐圧性がより効果的に向上する。
【0044】
また、上記実施形態の合成樹脂製パイプ1のように、補強筒体が直筒状であり、補強筒体の長さL1が、0.5D≦L1≦2Dの長さとされていると、補強筒体の形状が単純化され、かつ、効率的に補強できるようになる。例えば、補強筒体をL1=0.8Dの直筒状に形成するようにすれば、この補強筒体は、補強の効率に優れると共に、長さの異なる種々の合成樹脂製パイプの補強に共用化することができ、経済的かつ効率的に、補強された合成樹脂製パイプが製造できる。また、0.5D≦L1とされていると、そのような補強筒体をインサート射出成形の金型内部に所定の位置及び姿勢で配置する作業がしやすくなる。また、L1≦2Dとされていると、補強筒体が小型化できて経済的であると共に、より多くの種類の合成樹脂製パイプに適用しやすくなる。
【0045】
また、補強筒体の数が1つであり、補強筒体がパイプの長さ方向中央部に設けられるようにすると、補強体の数量を最小限にしながら、合成樹脂製パイプの耐圧性向上が図れて、特に好ましい。
【0046】
発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその詳細な説明を省略する。また、以下に示す実施形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を置き換えて実施できる。
【0047】
図3は、第2実施形態の合成樹脂製パイプ5を示す一部断面図である。本実施形態においては、2つの補強筒体52、52が、パイプ本体51の内周に接合一体化されている。また、合成樹脂製パイプ5の両端部には雄ネジ511,511が設けられていて、この雄ネジが、隣接する部材との接続に使用される。本実施形態においても、両端部の雄ネジと雄ネジの間の部分で、補強筒体がない部分51N,51Nと、補強筒体52,52が設けられた部分とが、所定の長さL2,L1で交互に設けられており、この点は第1実施形態と同様である。
【0048】
第2実施形態の合成樹脂製パイプ5であっても、第1実施形態と同様に、パイプの耐圧性を向上できる。補強筒体が設けられる数は、パイプの全長等に対応させて1つ、2つ、もしくは3つ以上であってもよい。補強筒体が一体化されていない部分のパイプ軸方向長さL2が、合成樹脂製パイプの直径をDとして、0.3D≦L2≦1.5Dの長さとされていれば、耐圧性の向上効果が得られる。
【0049】
また、合成樹脂製パイプの両端部は、第1実施形態のようにシール溝とシール部材が設けられるものであってもよいし、第2実施形態のように雄ネジが設けられるものであってもよい。いずれであっても、合成樹脂製パイプが使用に供される場合には、合成樹脂製パイプの両端部がパイプの外側から拘束されることになり、両端部に隣接する補強されていない部分(11N、51N)の拡径の抑制に貢献できるからである。
【0050】
図4は、第3実施形態の合成樹脂製パイプ6を示す一部断面図である。合成樹脂製パイプは、本実施形態のように、曲げ部を有するものであってもよい。本実施形態においても、合成樹脂製パイプ6の両端部には雄ネジ611,611が設けられ、1つの補強筒体63がパイプ本体61の内周部に接合一体化され、他の補強筒体62がパイプ本体61の外周部に一体化されて、両端部の雄ネジと雄ネジの間の部分で、補強筒体がない部分61N,61Nと、補強筒体62、63が設けられた部分とが、所定の長さL2,L1で交互に設けられており、この点は第2実施形態と同様である。
【0051】
第3実施形態の合成樹脂製パイプ6によっても、同様に、耐圧性の向上効果が得られる。すなわち、すべての補強筒体がパイプ本体11の内周側に接合一体化されている必要はなく、軸方向に離間配置される補強筒体のうち、一部がパイプ本体の内周側に接合一体化されるのであれば、残りの補強筒体はパイプ本体11の外周側に一体化されるものであってもよく、補強筒体によりパイプ本体の拡径が抑制されて耐圧性の向上に寄与できる。
【0052】
図5は、第4実施形態の合成樹脂製パイプ7を示す一部断面図である。この実施形態においては、複数の補強筒体72,73がパイプ本体71に一体化されており、補強筒体のうち少なくとも1つの補強筒体73は、パイプの内周側に接合一体化されている。また、少なくとも合成樹脂製パイプ7の両端部に、それぞれ前記補強筒体72,72が設けられている。より具体的には、第4実施形態の合成樹脂製パイプ7では、3つの補強筒体72,72、73が設けられており、パイプ本体71の中央部の内周側に1つの補強筒体73が接合一体化されていて、合成樹脂製パイプ7の両端部の外周側に、それぞれ補強筒体72,72が一体化されている。
【0053】
本実施形態においても、合成樹脂製パイプ7においては、補強筒体72、73が一体化された部分と補強筒体が一体化されていない部分71N,71Nとが交互に設けられていて、補強筒体72、73が一体化されていない部分71Nのパイプ軸方向長さL2は、合成樹脂製パイプの直径をDとして、0.3D≦L2≦1.5Dの長さとされている点、及び、かかる構成により、耐圧性の向上効果が得られる点は、他の実施形態と同様である。すなわち、合成樹脂製パイプの両端部の外周に、シール溝や雄ネジを設けてもよいが、本実施形態のように補強筒体を設けてもよい。また、補強筒体を合成樹脂製パイプの両端部に設ける場合には、パイプの内周側に補強筒体を接合一体化するようにしてもよい。
【0054】
なお、合成樹脂製パイプの端部の外周側に補強筒体72を設ける場合には、補強筒体の外周面をシール面に利用してもよいし、補強筒体の外周面に雄ネジを設けて接続に供してもよい。あるいは、合成樹脂製パイプの端部の内周側に補強筒体を設ける場合には、補強筒体の内周面をシール面に利用してもよいし、補強筒体の内周面に雌ネジを設けて接続に供してもよい。また、合成樹脂製パイプの端部に設けられる補強筒体をフランジ付のものにしてもよい。
【0055】
また、補強筒体の形状が直管状であると、補強筒体の形成や、インサート射出成形等の点で有利であるが、補強筒体そのものや合成樹脂製パイプの製造に差し支えなければ、補強筒体の形状は折れ曲がり管や曲げ管状であってもよい。
【0056】
合成樹脂製パイプが使用される用途は、内圧が負荷される圧力配管であれば特に限定されない。上記実施形態の説明では、自動車の変速機用の圧力回路に使用される、管路ブロックのコネクタ部材を例として、合成樹脂製パイプの使用例を説明したが、他の用途、例えば、オイル圧送用パイプや、水圧測定用の接続管、曲げ形状の油圧配管などにも使用できる。