(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
無線通信用の動作周波数で無線電波を放射するアンテナと、外部の回路にケーブルを介して接続するための接続インターフェースを形成するコネクタとを基板上に有する無線通信装置であって、
前記コネクタに関し前記基板上の左右対称の位置に、前記接続インターフェースからのノイズ電流の前記アンテナへの流出を抑止するためのノイズ抑止回路として、第1のループ回路および第2のループ回路それぞれをループ状に形成し、
かつ、前記第1のループ回路および前記第2のループ回路それぞれを、前記無線通信用の動作周波数において共振するように構成する
ことを特徴とする無線通信装置。
前記第1のループ回路および前記第2のループ回路それぞれは、前記コネクタに関し前記基板上の左右対称の位置に、複数の電気的な素子と前記基板上のパターンとしてループ状に形成したスリットとを配置して接続した構成とすることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
前記第1のループ回路および前記第2のループ回路それぞれを形成するための前記電気的な素子として、キャパシタを用いることを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
前記第1のループ回路および前記第2のループ回路それぞれは、前記コネクタに関し前記基板上の左右対称の位置に、導電性を有する一対の金属を近接配置した構成からなる複数の金属接近部と前記基板上のパターンとしてループ状に形成したスリットとを配置して接続した構成とすることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
無線通信用の動作周波数で無線電波を放射するアンテナと外部の回路とケーブルを介して接続するための接続インターフェースを形成するコネクタとを基板上に有する無線通信装置におけるノイズ抑止方法であって、
前記コネクタに関し前記基板上の左右対称の位置に、前記接続インターフェースからのノイズ電流の前記アンテナへの流出を抑止するために、第1のループ回路および第2のループ回路それぞれをループ状に形成し、
かつ、前記第1のループ回路および前記第2のループ回路それぞれを、前記無線通信用の動作周波数において共振するように構成する
ことを特徴とするノイズ抑止方法。
前記第1のループ回路および前記第2のループ回路それぞれは、前記コネクタに関し前記基板上の左右対称の位置に、複数の電気的な素子と前記基板上のパターンとしてループ状に形成したスリットとを配置して接続した構成とすることを特徴とする請求項7に記載のノイズ抑止方法。
前記第1のループ回路および前記第2のループ回路それぞれは、前記コネクタに関し前記基板上の左右対称の位置に、導電性を有する一対の金属を近接配置した構成からなる複数の金属接近部と前記基板上のパターンとしてループ状に形成したスリットとを配置して接続した構成とすることを特徴とする請求項7に記載のノイズ抑止方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、ノイズの放射を抑えるためには、例えば前記特許文献1に記載のようにノイズの伝送経路をシールドにより塞ぐことが最も有効である。しかし、携帯電話やスマートフォンやモバイルノートPC等の通常の無線通信装置においては、外部の回路(装置)との接続用のケーブルに接続するために、基板上に搭載されるコネクタ端子が露出する状態になってしまうので、該コネクタ端子が無線通信用のアンテナに対するノイズの放射源になっている。また、前記コネクタ端子は、製造工程を考慮すると、完全にシールドすることが難しいという問題がある。さらに、外部の回路(装置)に接続するケーブルは、一般に、ユーザが選択した市販品を用いることが可能であるので、ケーブルのシールド性能が低い場合には、ノイズの影響が大きくなることも予想される。
【0007】
シールド構造以外の他のノイズ抑止方法としては、例えば、フィルタを利用する方法も想定されるが、前述したように、ノイズ源となるクロック周波数と無線通信用の動作周波数とが接近している場合は、フィルタによるノイズ低減は難しいという問題がある。
【0008】
(本発明の目的)
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、ノイズ源となる接続インターフェースのクロック周波数と無線通信用の動作周波数とが接近している場合であっても、アンテナへのノイズ電流の流入を抑止し、ノイズ成分を含まない無線通信用の周波数成分の信号の放射を可能にする無線通信装置およびノイズ抑止方法を提供することを、その目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するため、本発明による無線通信装置およびノイズ抑止方法は、主に、次のような特徴的な構成を採用している。
【0010】
(1)本発明による無線通信装置は、
無線通信用の動作周波数で無線電波を放射するアンテナと、外部の回路にケーブルを介して接続するための接続インターフェースを形成するコネクタとを基板上に有する無線通信装置であって、
前記コネクタに関し、前記基板上の左右対称の位置に、前記接続インターフェースからのノイズ電流の前記アンテナへの流出を抑止するためのノイズ抑止回路として、第1のループ回路および第2のループ回路それぞれをループ状に形成し、
かつ、前記第1のループ回路および前記第2のループ回路それぞれを、前記無線通信用の動作周波数において共振するように構成する
ことを特徴とする。
【0011】
(2)本発明によるノイズ抑止方法は、
無線通信用の動作周波数で無線電波を放射するアンテナと、外部の回路にケーブルを介して接続するための接続インターフェースを形成するコネクタとを基板上に有する無線通信装置におけるノイズ抑止方法であって、
前記コネクタに関し前記基板上の左右対称の位置に、前記接続インターフェースからのノイズ電流の前記アンテナへの流出を抑止するために、第1のループ回路および第2のループ回路それぞれをループ状に形成し、
かつ、前記第1のループ回路および前記第2のループ回路それぞれを、前記無線通信用の動作周波数において共振するように構成する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の無線通信装置およびノイズ抑止方法によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0013】
すなわち、本発明においては、接続インターフェースとして外部の回路(装置)とケーブルを介して接続するコネクタに関し、左右対称の位置にノイズ抑止用の第1、第2のループ回路を配置しているので、たとえ、ノイズ源となる前記接続インターフェースのクロック周波数と無線通信用の動作周波数とが接近している場合であっても、該接続インターフェースの信号の波形レベルを小さくすることなく、ノイズ源からアンテナに流出されるノイズ電流を低減させ、ノイズ成分を抑制した無線通信用の周波数成分の信号をアンテナから放射することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明による無線通信装置およびノイズ抑止方法の好適な実施形態について添付図を参照して説明する。なお、以下の各図面に付した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、本発明を図示の態様に限定することを意図するものではないことも言うまでもない。
【0016】
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、複数の素子または金属接近部と基板のパターンのスリット部とからなるループ形状のループ回路を、無線通信部(アンテナ、アンテナ給電部)へのノイズ低減用のノイズ抑止回路として、ノイズ源またはノイズの伝送線路に関し、より具体的には、外部の回路(装置)との接続を行う接続インターフェースであるコネクタに関し、左右対称の位置に二つ配置することを主要な特徴としている。
【0017】
而して、本発明に係る無線通信装置においては、たとえ、ノイズ源である接続インターフェースのクロック周波数と無線通信用の動作周波数とが接近していて、フィルタ等による対策を採用することができないような場合であっても、ノイズ源となる前記接続インターフェースの信号線の波形レベルを小さくすることなく、ノイズ電流がアンテナに流出することを抑止することができ、無線通信用の信号の周波数成分をアンテナから放射することを可能にしている。つまり、本発明に係る無線通信装置においては、USB(Universal Serial Bus)に代表される接続インターフェースから放射される妨害波を低減し、無線通信品質を向上させることを可能にしている。
【0018】
(第1の実施形態の構成例)
次に、本発明の第1の実施形態に係る無線通信装置の構成例について、
図1を用いて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る無線通信装置のコネクタ近辺の構成例を示すブロック図であり、ノイズが伝搬する金属部分を簡易的に模擬して示している。なお、ノイズが伝搬する金属部分の形状に関しては、
図1の形状に限られず本発明は適用できるが、ここでは実施の形態として
図1の形を例として示している。ここで、該コネクタは、基板上に配置され、本無線通信装置内の回路を外部の回路(装置)とケーブルを介して接続するための接続インターフェース部を構成している。
【0019】
図1に示すように、無線通信装置101の基板上に設置された接続インターフェースとなるコネクタ109の近辺には、ノイズ源となる不要電流発生源102、素子103、素子104、素子105、素子106が基板上に配置されている。さらに、素子104の外側(すなわち素子104に関し、コネクタ109側とは反対側)の基板の端部には、無線通信用の周波数成分の無線電波を放射するアンテナ107およびアンテナ給電点108が配置されるとともに、コネクタ109には、外部の回路(装置)と接続するためのケーブル110が接続されている。
【0020】
ここで、接続インターフェースのコネクタ109と、無線通信装置101の回路部とが電気的に結合するのは、素子103、素子104、素子105、素子106と、接続インターフェースの信号線すなわちケーブル110の部分である。また、無線通信装置101全体のGND(Ground:アース)と接続インターフェースのGNDとは切り離している。その理由は、無線通信装置101に電源を供給するために接続するACアダプタの不具合により、電源とGNDとがショートして、無線通信装置101の火災等が発生することを防止するという安全対策上の配慮によるものである。
【0021】
なお、
図1に示す不要電流発生源102は、接続インターフェースの信号線すなわちケーブル110とコネクタ109とに重畳されるノイズの発生源を模擬したものである。
【0022】
また、素子103、素子104、素子105、素子106は、キャパシタ等から構成される電気素子であり、コネクタ109に関し、素子103と素子104、および、素子105と素子106とはそれぞれ基板上の対称な位置に配置してある。すなわち、不要電流発生源102に関し左右対称な位置関係になるように、素子103と素子104とを配置し、さらに、素子105と素子106とを配置している。そして、素子103と素子105とは、基板上にパターンとしてループ状に形成したスリットによりループ状に接続してある。また、同様に、素子104と素子106とは、基板上にパターンとしてループ状に形成したスリットによりループ状に接続してある。このような、各素子の配置および接続により、素子103と素子105とからなるループ状の第1のループ回路と、素子104と素子106とからなるループ状の第2のループ回路とが、ノイズ源の伝送線路のケーブル110やノイズ源のコネクタ109に関し、すなわち、ノイズの放射源の不要電流発生源102に関し、左右対称に配置された状態になる。
【0023】
図2は、
図1に示した無線通信装置101の不要電流発生源102に関し左右対称に配置されたループ状のループ回路を示す模式図である。このループ状のループ回路は、素子103と素子105と基板上のスリットとにより形成された第1のループ回路201と、素子104と素子106と基板上のスリットとにより形成された第2のループ回路202とでなる。
図2では、これら第1のループ回路201および第2のループ回路202が、不要電流発生源102に関し、すなわち、ノイズ源のコネクタ109に関し、左右対称に基板状に配置されている様子を示している。ここで、素子103と素子105と基板上のスリットとにより形成された第1のループ回路201については、無線通信用の動作周波数において共振するように、素子103、素子105の回路定数の値やスリットを含む回路要素が第1のループ回路201のループ長を調整している。素子104と素子106と基板上のスリットとにより形成された第2のループ回路202についても同様である。
【0024】
この結果、ノイズの放射源の不要電流発生源102に関し、すなわち、ノイズの伝送線路のケーブル110やノイズ源のコネクタ109に関し左右対称の位置に配置した第1のループ回路201、第2のループ回路202には、渦状の電流が発生して、ノイズ電流が渦状に流れて循環するので、ノイズ電流が周囲へ流れ出ることが抑制される。つまり、第1のループ回路201、第2のループ回路202それぞれには、ノイズの放射源の不要電流発生源102からのノイズ電流が循環して流れることになって、該ノイズ電流がループの外側に流出し難くなるという働きがある。
【0025】
図3は、
図2に示した第1のループ回路201、第2のループ回路202それぞれの等価回路を示す回路図であり、ノイズの放射源である不要電流発生源102に関し左右対称の位置関係になっていて、それぞれのループ長も等しい長さになっている。
図3の等価回路において、第1のループ回路201の等価キャパシタC
1の容量と第2のループ回路202の等価キャパシタC
2の容量とは、同じ値であり、第1のループ回路201、第2のループ回路202のいずれも、無線通信用の動作周波数において共振するような値に設定されている。
【0026】
以上のような
図1の第1の実施形態の構成により、シールドやフィルタを適用するノイズ抑止方法を用いることなく、アンテナ107から放射される無線通信用の信号に対するノイズの低減を図ることができる。なお、第1のループ回路201、第2のループ回路202それぞれを構成する素子の個数は、素子103、素子105の2個、ならびに素子103、素子105の2個のように、2個ずつの場合に限るものではなく、ループ状のループ回路を形成することが可能な2個以上の複数の個数であれば、任意の個数の素子をそれぞれに用いても差し支えないことは言うまでもない。。
【0027】
図4は、本発明に関連する現状の技術を適用した場合の無線通信装置の不要電流が流れる様子を説明するための模式図であり、
図1に示したブロック構成と類似のコネクタ近辺の構成を示している。
図4に示す現状の技術における無線通信装置401においては、
図1の場合とは異なり、ノイズの放射源の不要電流発生源102に関し、すなわち、ノイズの伝送線路のケーブル110やノイズ源のコネクタ109に関し左右対称の位置には、素子によるループ回路が存在していない。その結果、ノイズの放射源の不要電流発生源102、すなわち、ノイズの伝送線路のケーブル110やノイズ源のコネクタ109において発生するノイズ電流が、
図4に示すように、第1の電流402や第2の電流403として、基板の外縁側まで伝わっていくことになり、アンテナ107に到達して、無線通信用の動作周波数の信号に影響を及ぼしてしまう。さらには、該ノイズ電流は接続したケーブル110の外皮にも流れるので、ケーブル110からの放射ノイズも、無線通信用の動作周波数の信号に影響を及ぼす可能性もある。
【0028】
(第1の実施形態の効果の説明)
以上に説明したように、本第1の実施形態の無線通信装置は、次のような効果を奏することができる。
【0029】
図5は、第1の実施形態として
図1に示した無線通信装置101の素子103、素子104、素子105、素子106の各素子を用いて形成した第1、第2のループ回路のノイズ放射抑制効果をシミュレーションするために、素子103、素子104、素子105、素子106の各素子の回路定数の値を示すテーブルであり、素子103、素子104、素子105、素子106それぞれの回路定数の値をパターン1、パターン2の二つに変更した場合について示している。つまり、
図5において、素子103、素子104がなく、素子105、素子106それぞれに100pFのキャパシタを用いるパターン1は、第1、第2のループ回路を形成していない場合の一例である。一方、素子103、素子104、素子105、素子106それぞれに100pFのキャパシタを用いるパターン2は、第1、第2のループ回路を形成している場合の一例である。
【0030】
なお、本シミュレーションにおけるノイズ放射抑制効果の測定方法においては、不要電流発生源102とアンテナ給電点108との結合量を用いており、該結合量の値が小さいほどノイズ抑止効果が大きくなっているという評価を行う。
【0031】
図5のパターン1,2それぞれを用いた場合のシミュレーション結果について、
図6、
図8に示す。ここで、
図6は、
図5のパターン1の場合のノイズ放射抑制効果のシミュレーション結果を示すグラフであり、
図2に示した場合とは異なり、第1のループ回路201、第2のループ回路202が形成されていない場合を示している。また、
図8は、
図5のパターン2の場合のノイズ放射抑制効果のシミュレーション結果を示すグラフであり、
図2の第1のループ回路201、第2のループ回路202が形成されている場合を示している。なお、
図6、
図8それぞれに示すグラフの横軸は周波数、縦軸は不要電流発生源102とアンテナ給電点108との間の結合量を表している。
【0032】
まず、第1、第2のループ回路を形成していないパターン1の場合のシミュレーション結果を示す
図6について説明する。
図6において、符号2に示す周波数2,442MHzにおける不要電流発生源102とアンテナ給電点108との間の結合量は、−35.696dBと比較的大きい値になっている。このため、このときの電流分布は、
図7に示すようになっている。
図7は、
図5のパターン1の場合の周波数2,442MHzにおける電流分布を示す模式図である。
図5のパターン1の場合は、素子(キャパシタ)を用いた第1、第2のループ回路が形成されていないので、
図7に示すように、ケーブル110やコネクタ109の不要電流発生源102から流れる電流は、ノイズ電流として、基板の端部まで流れ出て、アンテナ107にまで到達している。
【0033】
これに対して、第1、第2のループ回路201,202を形成するパターン2の場合のシミュレーション結果については、
図8に示すように、符号2に示す周波数2,442MHzにおける不要電流発生源102とアンテナ給電点108との間の結合量が−52.140dBとなり、
図6の場合よりも16dB以上の大幅な結合量の低減を実現している。
図9は、
図5のパターン2の場合の周波数2,442MHzにおける電流分布を示す模式図である。
図5のパターン2の場合は、
図9に示すように、素子(キャパシタ)を用いた第1、第2のループ回路201,202にループ電流が流れることになり、ノイズ電流として、ループ外側の基板外縁部側へ流れ出る電流を効果的に抑制することができる。
【0034】
以上のシミュレーション結果が示すように、本第1の実施形態の無線通信装置101においては、次のような効果を奏していることが分かる。つまり、本第1の実施形態の無線通信装置101は、複数の素子(キャパシタ)と基板のパターンとしてループ状に形成したスリットとからなるループ形状の第1、第2のループ回路201,202を、ノイズ低減回路として、ノイズ源またはノイズの伝送線路に関し、左右対称に配置するという構成を採用している。而して、たとえ、ノイズ源となる接続インターフェースのクロック周波数と無線通信用の動作周波数とが接近している場合であっても、該接続インターフェースの信号線の波形レベルを小さくして、ノイズレベルを下げる必要はなく、無線信号として放射すべき周波数成分の信号をアンテナ107から効果的に放射することが可能になっている。
【0035】
なお、第1、第2のループ回路201,202を形成する各素子(素子103.素子104、素子105、素子106)の回路定数の値は、ループ長や、ノイズ源の接続インターフェースのクロック周波数、無線通信用の動作周波数に応じて、任意の値に変更することが可能である。
図5のパターン2の場合においては、素子103、素子104、素子105、素子106のいずれのキャパシタの容量も100pFに設定しているが、異なる回路定数の値に設定した場合について、
図10に示す。
【0036】
つまり、
図10は、
図1に示した無線通信装置101の素子103、素子104の各素子の回路定数の値を
図5のパターン2からパターン3に変更した場合のノイズ放射抑制効果のシミュレーション結果を示すグラフであり、ここでは、素子103と素子104との二つのキャパシタの容量を100pFから3pFに変更した場合について示している。
図10(A)が、パターン3における素子103、素子104、素子105、素子106の各素子の回路定数の値を示すテーブルであり、
図10(B)が、
図10(A)のパターン3の場合の周波数2,442MHzにおける電流分布を示す模式図である。
【0037】
第1、第2のループ回路を形成するパターン3の場合のシミュレーション結果を示す
図10においては、符号2に示す周波数2,442MHzにおける不要電流発生源102とアンテナ給電点108との間の結合量が−63.734dBであり、
図8に示したパターン2の場合の−52.140dBよりも11dB以上の結合量のさらなる低減を実現している。すなわち、第1、第2のループ回路を形成しないパターン1の場合に比して、約28dBの結合量の低減であり、ノイズ放射を大幅に抑制することが可能になっている。
【0038】
さらに、周波数が2,442MHzの場合だけでなく、周波数が2,442MHzよりも若干低い周波数2,400MHzにおいても、また、周波数が2,442MHzよりも若干高い周波数2,484MHzにおいても、
図6、
図8、
図10それぞれのグラフの符号1、符号3に示すように、ほぼ同様の効果が得られる。
【0039】
なお、以上のようなノイズ放射抑制効果は、素子103と素子104との二つの素子の回路定数の値(例えばキャパシタの容量値)の調整だけでなく、素子105と素子106との二つの素子の回路定数の値(例えばキャパシタの容量値)の調整や、第1、第2のループ回路201,202のループ長の調整によっても、適正な効果が得られるように調整することが可能である。
【0040】
(第2の実施形態の構成例)
次に、本発明の第2の実施形態に係る無線通信装置の構成例について説明する。第1の実施形態においては、ノイズの伝送線路のケーブル110やノイズ源のコネクタ109に関し、すなわち、ノイズの放射源の不要電流発生源102に関し、左右対称に配置する第1のループ回路201、第2のループ回路202のそれぞれを、例えばキャパシタからなる、素子103と素子104との組み合わせ、素子105と素子106との組み合わせを用いて形成していた。これに対して、本第2の実施形態においては、素子103と素子104との組み合わせ、素子105と素子106との組み合わせを用いる代わりに、導電性を有する一対の金属を互いに近接配置した構成からなる金属接近部を用いて、第1のループ回路、第2のループ回路のそれぞれを形成する場合について説明する。
【0041】
図11は、本発明の第2の実施形態に係る無線通信装置の構成例を示すブロック図であり、不要電流発生源102に関し左右対称に配置されたループ状の第1、第2のループ回路も同時に示している。
【0042】
図11に示すように、無線通信装置301の基板上に設置された接続インターフェースとなるコネクタ109の近辺には、ノイズ源となる不要電流発生源102、金属接近部302、金属接近部303、金属接近部304、金属接近部305が該基板上に配置される。さらに、金属接近部303の外側(すなわちコネクタ109側とは反対側)の基板の端部には、無線通信用の周波数成分の無線電波を放射するアンテナ107およびアンテナ給電点108が配置されるとともに、コネクタ109には、外部の回路(装置)と接続するためのケーブル110が接続されている。つまり、
図11の無線通信装置301は、第1の実施形態の
図1の無線通信装置101における素子103、素子104、素子105、素子106の代わりに、金属接近部302、金属接近部303、金属接近部304、金属接近部305を用いて構成されている。
【0043】
ここで、接続インターフェースのコネクタ109と、無線通信装置301の回路部とが電気的に結合するのは、金属接近部302、金属接近部303、金属接近部304、金属接近部305と、接続インターフェースの信号線すなわちケーブル110の部分である。
【0044】
また、金属接近部302、金属接近部303、金属接近部304、金属接近部305は、前述のように、導電性を有する一対の金属を対向させて近接配置したものであって、コネクタ109に関し、金属接近部302と金属接近部303、金属接近部304と金属接近部305とをそれぞれ基板上の対称な位置に配置している。すなわち、不要電流発生源102に関し左右対称な位置関係になるように、金属接近部302と金属接近部303とを配置し、さらに、金属接近部304と金属接近部305とを配置している。そして、金属接近部302と金属接近部304とを基板上にパターンとしてループ状に形成したスリットによりループ状に接続して、第1のループ回路306を形成し、また、金属接近部303と金属接近部305とを基板上にパターンとしてループ状に形成したスリットによりループ状に接続して、第2のループ回路307を形成している。
【0045】
その結果、金属接近部302と金属接近部304とからなる第1のループ回路306と、金属接近部303と金属接近部305とからなるループ状の第2のループ回路307とが、ノイズの伝送線路のケーブル110やノイズ源のコネクタ109に関し、すなわち、ノイズの放射源の不要電流発生源102に関し、左右対称に配置された状態になる。ここで、金属接近部302と金属接近部304と基板上のスリットとにより形成された第1のループ回路306においては、無線通信用の動作周波数において共振するように、金属接近部302、金属接近部304それぞれの一対の金属間の間隔やループ回路306のループ長を調整している。金属接近部303と金属接近部305と基板上のスリットとにより形成された第2のループ回路307についても同様である。
【0046】
つまり、第1のループ回路306、第2のループ回路307は、対称な電流のループ回路として形成され、かつ、それぞれが特定の周波数すなわち無線通信用の動作周波数において共振するように設定されているので、ノイズ放射源の不要電流発生源102、すなわち、ノイズの伝送線路のケーブル110やノイズ源のコネクタ109からのノイズ電流の周波数が該特定の周波数と近接している場合には、第1のループ回路306、第2のループ回路307内に渦状に流れて、第1のループ回路306、第2のループ回路307の外側すなわち基板の外縁部側に流れ出すことを抑制することになる。したがって、
図11のような金属接近部を備えた構成の無線通信装置301のように、第1の実施形態のような素子を用いていない構成であっても、無線通信用のアンテナ107に対するノイズを抑制することができる。
【0047】
以上、本発明の好適な実施形態の構成を説明した。しかし、かかる実施形態は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。