特許第6573331号(P6573331)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6573331同起源の抗体可変領域遺伝子セグメントをクローニングおよび発現させるための迅速な方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573331
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】同起源の抗体可変領域遺伝子セグメントをクローニングおよび発現させるための迅速な方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 21/02 20060101AFI20190902BHJP
   C40B 50/06 20060101ALI20190902BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   C12P21/02 AZNA
   C40B50/06
   C12N15/09 Z
【請求項の数】8
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-116638(P2017-116638)
(22)【出願日】2017年6月14日
(62)【分割の表示】特願2014-547976(P2014-547976)の分割
【原出願日】2012年12月19日
(65)【公開番号】特開2017-221190(P2017-221190A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2017年6月14日
(31)【優先権主張番号】11194861.8
(32)【優先日】2011年12月21日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ホエゲ シモネ
(72)【発明者】
【氏名】コペツキ エルハルト
(72)【発明者】
【氏名】オスラー ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ゼーベル シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ティーフェンターレル ゲオルク
【審査官】 千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/147903(WO,A1)
【文献】 KUROSAWA NOBUYUKI,BMC BIOTECHNOLOGY,2011年 4月,Vol.11, No. 39,<URL: http://www.biomedcentral.com/1472-6750/11/39>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P
C12N
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体を産生する方法であって、前記方法は、
(i)PCRにおける鋳型として抗体分泌B細胞のRNAから得られた一本鎖cDNAから同起源の可変ドメインコード核酸を増幅する段階、
(ii)ライゲーション非依存的クローニングによって可変ドメインコード核酸を真核細胞発現プラスミドに挿入する段階、
(iii)発現プラスミドをコンピテント細菌に形質転換する段階、
(iv)コンピテント細菌から抽出される発現プラスミドで真核細胞をトランスフェクトする段階、および
(v)抗体をコードする核酸を含む真核細胞の培養培地から抗体を回収する段階
を含み、
前記段階(iii)と(iv)の間に、
コンピテント細菌を固体培地で培養する段階、
コンピテント細菌を採取する段階、および
コンピテント細菌からプラスミドDNAを単離し分析する段階
を含まず、
抗体軽鎖および重鎖可変ドメインをそれぞれコードする核酸のポリクローナルな集団が挿入のために用いられ、
B細胞は1つの沈着させたB細胞であり、
1つの細胞から開始してフィーダー細胞と共に7日間共培養すると20 ng/mlより多くの抗体をB細胞およびその子孫が産生する、方法。
【請求項2】
B細胞がウサギB細胞であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
SEQ ID NO: 5および6またはSEQ ID NO: 7または8の核酸配列をPCRプライマーが有することを特徴とする、請求項1および2のいずれか1項記載の方法。
【請求項4】
PCRプライマーがPCR後に除去されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
配列およびライゲーション非依存的クローニングによって核酸断片が発現プラスミドに挿入されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
核酸300 ngが挿入反応に用いられることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
可変ドメインを含まない増幅された発現プラスミドにおける可変ドメインコード核酸の配列およびライゲーション非依存的クローニングによって発現プラスミドが得られることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
プラスミドが増幅前に直線状にされることを特徴とする、請求項7記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において、方法の個々の段階が全て溶液中で行われ、それにより所望の特異性を有する抗体を同定することができる、1つの抗体産生B細胞から始まる抗体の単離(クローニング、発現、および選択)法を報告する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
モノクローナル抗体を分泌する細胞を得るために、Koehler and Milsteinによって開発されたハイブリドーマ技術が広く用いられている。しかし、ハイブリドーマ技術では、融合して増殖させることができるのは、免疫した実験動物から得られたB細胞の1分画のみである。B細胞源は、一般的に脾臓などの免疫した実験動物の臓器である。
【0003】
Zublerらは、1984年に、モノクローナル抗体を分泌する細胞を得るための異なるアプローチの開発に着手した(たとえば、Eur. J. Immunol. 14 (1984) 357-363(非特許文献1), J. Exp. Med. 160 (1984) 1170-1183(非特許文献2)を参照されたい)。その中で、B細胞を、免疫した実験動物の血液から得て、これを、フィーダーミックスを含むサイトカインの存在下でマウスEL-4 B5フィーダー細胞と共培養する。この方法論により、共培養の10〜12日後に50 ng/mlまでの抗体を得ることができる。
【0004】
Weitkamp, J.-H., et al, (J. Immunol. Meth. 275 (2003) 223-237(非特許文献3))は、蛍光ウイルス様粒子によって選択した1つの抗原特異的B細胞から、ロタウイルスに対する組み換え型ヒトモノクローナル抗体を生成したことを報告している。複数の同起源の(cognate)抗原に対して複数の単離抗体を産生する方法は、US 2006/0051348(特許文献1)において報告されている。WO 2008/144763(特許文献2)およびWO 2008/045140(特許文献3)では、IL-6に対する抗体およびその使用、ならびに抗原特異的B細胞のクローン集団を得る培養法がそれぞれ報告されている。抗原特異的B細胞のクローン集団を得る培養法は、US 2007/0269868(特許文献4)に記述されている。Masri et al. (Mol. Immunol. 44 (2007) 2101-2106(非特許文献4))は、1つのヒトリンパ球から得た炭疽菌毒素に対する機能的Fab断片の大腸菌におけるクローニングおよび発現を報告している。免疫グロブリンライブラリを調製する方法は、WO 2007/031550(特許文献5)に記述されている。
【0005】
WO 2010/056898(特許文献6)において、メモリーB細胞からのヒトモノクローナル抗体の迅速な発現およびクローニングが報告されている。ヒト末梢血からの抗原特異的抗体産生細胞をスクリーニングするための迅速かつ効率的な単細胞操作法は、Jin et al. (Jin, A., et al, Nature Medicine 15 (2009) 1088-1093(非特許文献5))によって報告されている。Lightwood et al. (Lightwood, D.J., et al, J. Immunol. Meth. 316 (2006) 133-143(非特許文献6))は、抗原に関するB細胞パニングの後に、抗原陽性ウェルからまとめて採取した細胞のインサイチュー培養および直接RT-PCRによる抗体産生を報告している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US 2006/0051348
【特許文献2】WO 2008/144763
【特許文献3】WO 2008/045140
【特許文献4】US 2007/0269868
【特許文献5】WO 2007/031550
【特許文献6】WO 2010/056898
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Eur. J. Immunol. 14 (1984) 357-363
【非特許文献2】J. Exp. Med. 160 (1984) 1170-1183
【非特許文献3】J. Immunol. Meth. 275 (2003) 223-237
【非特許文献4】Mol. Immunol. 44 (2007) 2101-2106
【非特許文献5】Nature Medicine 15 (2009) 1088-1093
【非特許文献6】J. Immunol. Meth. 316 (2006) 133-143
【発明の概要】
【0008】
本明細書において報告される方法において、抗体可変ドメイン(軽鎖および重鎖)をコードする核酸断片またはセグメントの単離、および単離核酸断片またはセグメントの真核細胞発現カセットへの挿入(軽鎖および重鎖の各々に関してそれぞれ1つのカセット)は、クローン中間プラスミド/カセットを中間で単離および分析することなく行われる。このように、本明細書において報告される方法では、たとえば単離された形質転換大腸菌(E. coli)細胞の分析による中間プラスミド/カセットの中間でのクローニング、単離、および分析は必要ではなく、このためより迅速な方法が得られる。
【0009】
本明細書において報告される1つの局面は、
- RT-PCRにおける鋳型として抗体分泌B細胞から得られたRNAを用いて一本鎖cDNAを合成する段階、
- PCRにおいて、可変ドメインコード核酸を増幅して、それによって抗体の同起源の可変ドメインをコードする核酸断片を単離する段階、
を含む抗体の同起源の可変ドメインをコードする核酸の単離方法であって、
PCRプライマーがPCR後に除去される方法である。
【0010】
1つの態様において、本方法は、中間の核酸を単離および分析することなく行われる。
【0011】
本明細書において報告される1つの局面は、
- 抗体をコードする核酸を含む真核細胞を培養する段階、および
- 細胞または培養培地から抗体を回収する段階、
を含む抗体を産生する方法であって、
抗体をコードする核酸が、
- RT-PCRにおける鋳型として抗体分泌B細胞から得られたRNAを用いて一本鎖cDNAを合成する段階、
- PCRにおいて可変ドメインコード核酸を増幅する段階、および
- 可変ドメインコード核酸を1つまたは複数の真核細胞発現プラスミドに挿入する段階によって得られる、方法である。
【0012】
1つの態様において、PCRプライマーはPCR後に除去される。
【0013】
1つの態様において、本方法は、中間の核酸を単離および分析することなく行われる。
【0014】
本明細書において報告される1つの局面は、
- 1つまたは複数の発現プラスミドがプラスミド形質転換大腸菌細胞のプールから調製されている、抗体重鎖および軽鎖をコードする1つまたは複数の発現プラスミドをトランスフェクトした真核細胞を培養する段階、
- 細胞または培養培地から抗体を回収する段階
を含む抗体を産生する方法である。
【0015】
本明細書において報告される1つの局面は、
- 抗体をコードする核酸を含む真核細胞の培養培地から抗体を回収する段階、
を含む抗体を産生する方法であって、
抗体をコードする核酸が、
- PCRにおける鋳型として抗体分泌B細胞のRNAから得られた一本鎖cDNAから同起源の可変ドメインコード核酸を増幅する段階、および
- ライゲーション非依存的クローニングによって可変ドメインコード核酸を真核細胞発現プラスミドに挿入する段階、によって得られ、
抗体軽鎖および重鎖可変ドメインをそれぞれコードする核酸のプールが挿入のために用いられる、方法である。
【0016】
1つの態様において、本方法は第一の段階として、
- 鋳型として抗体分泌B細胞から得られたRNAを用いて一本鎖cDNAを合成する段階、を含む。
【0017】
1つの態様において、PCRプライマーはPCR後に除去される。
【0018】
1つの態様において、本方法は、中間の核酸を単離および分析することなく行われる。
【0019】
本明細書において報告される1つの局面は、
- 真核細胞が、プラスミド形質転換大腸菌細胞のプールから調製されている発現プラスミドのプールをトランスフェクトされている、抗体をコードする発現プラスミドをトランスフェクトした真核細胞を培養する段階、
- 細胞または培養培地から抗体を回収する段階、
を含む、抗体を産生する方法である。
【0020】
1つの態様において、抗体をコードする核酸は、
- PCRにおける鋳型として抗体分泌B細胞のRNAから得られた一本鎖cDNAから同起源の可変ドメインコード核酸を増幅する段階、および
- ライゲーション非依存的クローニングによって可変ドメインコード核酸を真核細胞発現プラスミドに挿入する段階、によって得られる。
【0021】
1つの態様において、本方法は第一の段階として、
- 鋳型として抗体分泌B細胞から得られたRNAを用いて一本鎖cDNAを合成する段階、を含む。
【0022】
1つの態様において、PCRプライマーは、PCR後に除去される。
【0023】
1つの態様において、本方法は中間の核酸を単離および分析することなく行われる。
【0024】
全ての局面の1つの態様において、B細胞はウサギB細胞である。
【0025】
全ての局面の1つの態様において、B細胞は1つの沈着させたB細胞である。
【0026】
全ての局面の1つの態様において、B細胞は約7日間培養される。
【0027】
全ての局面の1つの態様において、B細胞およびその子孫は、単細胞から始まってフィーダー細胞と共に7日間共培養すると、20 ng/mlより多くの抗体を産生する。
【0028】
全ての局面の1つの態様において、PCRプライマーは、SEQ ID NO: 5および6またはSEQ ID NO: 7または8の核酸配列を有する。
【0029】
全ての局面の1つの態様において、核酸断片は、配列およびライゲーション非依存的クローニングによって発現プラスミドに挿入される。
【0030】
全ての局面の1つの態様において、核酸約300 ngが挿入反応に用いられる。
【0031】
全ての局面の1つの態様において、核酸のプールが挿入のために用いられる。
【0032】
全ての局面の1つの態様において、発現プラスミドは、可変ドメインコード核酸の、可変ドメインを含まない増幅された発現プラスミドにおける配列およびライゲーション非依存的クローニングによって得られる。
【0033】
全ての局面の1つの態様において、プラスミドは増幅前に直線状にされる。
[本発明1001]
抗体をコードする核酸を含む真核細胞の培養培地から抗体を回収する段階
を含む、抗体を産生する方法であって、
PCRにおける鋳型として抗体分泌B細胞のRNAから得られた一本鎖cDNAから同起源の可変ドメインコード核酸を増幅する段階、および
ライゲーション非依存的クローニングによって可変ドメインコード核酸を真核細胞発現プラスミドに挿入する段階
によって、抗体をコードする核酸が得られ、
抗体軽鎖および重鎖可変ドメインをそれぞれコードする核酸のプールが挿入のために用いられる、方法。
[本発明1002]
プラスミド形質転換大腸菌細胞のプールから調製されている発現プラスミドのプールをトランスフェクトされている、抗体をコードする発現プラスミドをトランスフェクトした真核細胞を培養する段階、
該細胞または培養培地から抗体を回収する段階
を含む、抗体を産生する方法。
[本発明1003]
B細胞がウサギB細胞であることを特徴とする、本発明1001の方法。
[本発明1004]
B細胞が1つの沈着させたB細胞であることを特徴とする、本発明1001または1003のいずれかの方法。
[本発明1005]
B細胞が約7日間培養されることを特徴とする、本発明1001または1003または1004のいずれかの方法。
[本発明1006]
1つの細胞から開始してフィーダー細胞と共に7日間共培養すると20 ng/mlより多くの抗体をB細胞およびその子孫が産生することを特徴とする、本発明1001および1003から1005のいずれかの方法。
[本発明1007]
SEQ ID NO: 5および6またはSEQ ID NO: 7または8の核酸配列をPCRプライマーが有することを特徴とする、本発明1001および1003から1006のいずれかの方法。
[本発明1008]
PCRプライマーがPCR後に除去されることを特徴とする、本発明1001および1003から1007のいずれかの方法。
[本発明1009]
配列およびライゲーション非依存的クローニングによって核酸断片が発現プラスミドに挿入されることを特徴とする、本発明1001から1008のいずれかの方法。
[本発明1010]
核酸約300 ngが挿入反応に用いられることを特徴とする、本発明1001および1003から1009のいずれかの方法。
[本発明1011]
可変ドメインを含まない増幅された発現プラスミドにおける可変ドメインコード核酸の配列およびライゲーション非依存的クローニングによって発現プラスミドが得られることを特徴とする、本発明1001から1011のいずれかの方法。
[本発明1012]
プラスミドが増幅前に直線状にされることを特徴とする、本発明1011の方法。
【発明を実施するための形態】
【0034】
発明の詳細な説明
定義
「親和性」は、分子(たとえば、抗体)の1つの結合部位と、その結合パートナー(たとえば、抗原)とのあいだの非共有結合相互作用の総和の強度を意味する。それ以外であることを明記している場合を除き、本明細書において用いられる「結合親和性」は、結合対(たとえば、抗体と抗原)のメンバー間の1:1の相互作用を反映する内因性の結合親和性を意味する。そのパートナーYに対する分子Xの親和性は、一般的に解離定数(Kd)によって表すことができる。親和性は、本明細書において記述される方法を含む、当技術分野において公知の一般的な方法によって測定することができる。結合親和性を測定するための特異的な実例となる例示的態様を、以下に記述する。
【0035】
本出願において用いられる「アミノ酸」という用語は、直接または前駆体の形で核酸によってコードされうる、カルボキシα-アミノ酸の群を意味する。個々のアミノ酸は、3つのヌクレオチド、いわゆるコドンまたは塩基トリプレットからなる核酸によってコードされる。各々のアミノ酸は少なくとも1つのコドンによってコードされる。これは「遺伝コードの縮重」として知られる。本出願において用いられる「アミノ酸」という用語は、アラニン(三文字表記:ala、一文字表記:A)、アルギニン(arg、R)、アスパラギン(asn、N)、アスパラギン酸(asp、D)、システイン(cys、C)、グルタミン(gln、Q)、グルタミン酸(glu、E)、グリシン(gly、G)、ヒスチジン(his、H)、イソロイシン(ile、I)、ロイシン(leu、L)、リジン(lys、K)、メチオニン(met、M)、フェニルアラニン(phe、F)、プロリン(pro、P)、セリン(ser、S)、トレオニン(thr、T)、トリプトファン(trp、W)、チロシン(tyr、Y)、およびバリン(val、V)を含む天然に存在するカルボキシα-アミノ酸を意味する。
【0036】
本明細書における「抗体」という用語は、その最も広い意味で用いられ、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(たとえば、二重特異性抗体)、および所望の抗原結合活性を示す限り抗体断片を含むがこれらに限定されるわけではない様々な抗体構造を包含する。
【0037】
「抗体断片」は、インタクト抗体が結合する抗原に結合するインタクト抗体の一部を含むインタクト抗体以外の分子を意味する。抗体断片の例には、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2;ディアボディ;直線状抗体;一本鎖抗体分子(たとえばscFv);単ドメイン抗体;および抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。
【0038】
抗体の「クラス」は、その重鎖が保有する定常ドメインまたは定常領域のタイプを意味する。たとえば、ヒトでは5つの主要なクラスの抗体、すなわちIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMが存在し、これらのいくつかはサブクラス(アイソタイプ)、たとえばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2へとさらに分類されうる。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。
【0039】
「同起源の抗体可変ドメイン対」という用語は、1つの抗体分泌B細胞から得られた、すなわち免疫原性分子との接触により哺乳動物の免疫応答の際に対として生成されている、またはディスプレイアプローチの際に無作為にアセンブルされている一対の抗体可変ドメインを意味する。
【0040】
物質、たとえば薬学的製剤の「有効量」は、所望の治療的または予防的結果を達成するために必要な用量および期間で有効である量を意味する。
【0041】
本明細書において用いられる「発現」という用語は、細胞内で起こる転写および/または翻訳および分泌プロセスを意味する。細胞における関心対象の核酸配列の転写レベルは、細胞に存在する対応するmRNA量に基づいて決定することができる。たとえば、関心対象配列から転写されたmRNAは、qPCRまたはRT-PCRまたはノザンハイブリダイゼーションによって定量することができる(Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)を参照されたい)。核酸によってコードされるポリペプチドは、様々な方法、たとえばELISAによって、ポリペプチドの生物活性をアッセイすることによって、またはポリペプチドを認識して結合する免疫グロブリンを用いるウェスタンブロッティングもしくはラジオイムノアッセイなどの、そのような活性とは無関係であるアッセイを利用することによって、定量することができる(Sambrook, et al., (1989)、前記を参照されたい)。
【0042】
「発現カセット」は、少なくとも細胞に含まれる核酸を発現させるための、プロモーターおよびポリアデニル化部位などの必要な調節エレメントを含む構築物を意味する。
【0043】
「発現機構」という用語は、核酸または遺伝子の転写段階から始まって核酸によってコードされるポリペプチドの翻訳後修飾までの遺伝子発現段階に関係する細胞の酵素、補因子等の集合体を意味する(すなわち、「遺伝子発現機構」とも呼ばれる)。発現機構は、たとえばDNAのプレmRNAへの転写、成熟mRNAへのプレmRNAのスプライシング、mRNAのポリペプチドへの翻訳、およびポリペプチドの翻訳後修飾段階を含む。
【0044】
「発現プラスミド」は、宿主細胞に含まれる構造遺伝子を発現させるために必要な全てのエレメントを提供する核酸である。典型的に、発現プラスミドは、複製開始点、および選択マーカー、真核細胞選択マーカー、ならびに各々がプロモーター、構造遺伝子、およびポリアデニル化シグナルを含む転写ターミネーターを含む関心対象の構造遺伝子を発現させるための1つまたは複数の発現カセットを含む原核細胞プラスミド増殖単位、たとえば大腸菌を含む。遺伝子発現は通常、プロモーターの制御下に置かれ、そのような構造遺伝子は、プロモーターに「機能的に連結している」と言われる。同様に、調節エレメントおよびコアプロモーターは、調節エレメントがコアプロモーターの活性を調整する場合に機能的に連結している。
【0045】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、および「宿主細胞培養」という用語は、互換的に用いられ、そのような細胞の子孫を含む、外因性の核酸が導入されている細胞を意味する。宿主細胞は、初代形質転換細胞および継代回数によらずそれに由来する子孫を含む、「形質転換体」または「トランスフェクタント」、および「形質転換細胞」、および「トランスフェクト細胞」を含む。子孫は、核酸含有量が親細胞と完全に同一でなくてもよく、変異を含んでもよい。当初の形質転換細胞に関してスクリーニングまたは選択されたものと同じ機能または生物活性を有する変異体子孫は、本明細書に含まれる。
【0046】
「細胞」という用語は、プラスミドを増殖させるために用いられる原核細胞、および核酸を発現させるために用いられる真核細胞の両方を含む。1つの態様において、真核細胞は哺乳動物細胞である。1つの態様において、哺乳動物細胞は、CHO細胞(たとえば、CHO K1、CHO DG44)、BHK細胞、NS0細胞、Sp2/0細胞、HEK 293細胞、HEK 293 EBNA細胞、PER.C6(登録商標)細胞、およびCOS細胞を含む哺乳動物細胞の群から選択される。
【0047】
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生された抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を保有する抗体、またはヒト抗体レパートリーもしくは他のヒト抗体コード配列を利用する非ヒト起源に由来する抗体である。ヒト抗体のこの定義は、具体的に、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を除外する。
【0048】
「個体」または「対象」は脊椎動物である。1つの態様において、脊椎動物は哺乳動物である。哺乳動物には、家畜動物(たとえば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類(たとえば、ヒト、およびサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、および齧歯類(例えば、マウスおよびラット)が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。ある態様において、個体または対象はヒトである。他の態様において、個体または対象はウサギである。
【0049】
「機能的に連結される」とは、2つまたはそれより多くの成分が近位に存在することを意味し、そのように記述される成分は、その意図される様式でそれらを機能させる関係にある。例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサーは、それが連結した配列の転写を制御または調整するようにシスに作用する場合には、コード配列に機能的に連結される。一般的に、「機能的に連結した」DNA配列は、互いに隣接しており、分泌リーダーおよびポリペプチドなどの2つのタンパク質コード領域を連結する必要がある場合、隣接して(読み取り)枠に存在するが、必ずしもその限りではない。しかし、機能的に連結したプロモーターは一般的に、コード配列の上流に位置するが、プロモーターは必ずしもコード配列とは隣接しない。エンハンサーは、隣接する必要はない。エンハンサーは、エンハンサーがコード配列の転写を増加させる場合に、コード配列に機能的に連結している。機能的に連結したエンハンサーは、コード配列の上流に、コード配列内またはその下流に、およびプロモーターからかなりの距離離れて存在することができる。ポリアデニル化部位は、コード配列を通ってポリアデニル化配列へと転写が進行するように、コード配列の下流の末端に位置する場合、コード配列に機能的に連結している。翻訳終止コドンは、翻訳がコード配列を通って終止コドンまで進行して、そこで終了するように、コード配列の下流の末端(3'末端)に位置する場合、エキソン核酸配列に機能的に連結している。連結は、当技術分野において公知の組み換え法によって、例えばPCR方法論を用いておよび/または簡便な制限部位でのライゲーションによって行われる。簡便な制限部位が存在しない場合、慣例的実践に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが用いられる。
【0050】
「ペプチドリンカー」という用語は、天然および/または合成起源のアミノ酸配列を意味する。それらは、天然に存在するアミノ酸20個が単量体構築ブロックである直線状のアミノ酸鎖からなる。ペプチドリンカーは、アミノ酸1から50個の長さを有し、1つの態様において、アミノ酸1から28個、さらなる態様において、アミノ酸2から25個の長さを有する。ペプチドリンカーは、反復アミノ酸配列または天然に存在するポリペプチドの配列を含みうる。リンカーは、ポリペプチドを正確に折り畳ませて適切に提示させることによって、互いに結合したポリペプチドがその生物活性を確実に行うように機能を有する。1つの態様において、ペプチドリンカーは、グリシン、グルタミン、および/またはセリン残基に富む。これらの残基は、GS(SEQ ID NO: 1)、GGS(SEQ ID NO: 2)、GGGS(SEQ ID NO: 3)、およびGGGGS(SEQ ID NO: 4)などのアミノ酸5個までの小さい反復単位で整列する。小さい反復単位は、1から5回繰り返されうる。追加の6個までの任意の天然に存在するアミノ酸が、多量体単位のアミノおよび/またはカルボキシ末端に付加されうる。他の合成ペプチドリンカーは、10から20回反復する1つのアミノ酸で構成され、アミノおよび/またはカルボキシ末端で6個までの追加の任意の天然に存在するアミノ酸を含みうる。ペプチドリンカーは全て、核酸分子によってコードされることができ、それゆえ組み換えによって発現させることができる。リンカーはそれ自身、ペプチドであることから、リンカーによって接続されるポリペプチドは、2つのアミノ酸のあいだで形成されるペプチド結合を介してリンカーに接続する。
【0051】
参照ポリペプチド配列に関連する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、最大のパーセント配列同一性を得るために、配列を整列させて必要に応じてギャップを導入した後に、いかなる保存的置換も配列同一性の一部として考慮せずに、参照ポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の百分率として定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的でのアラインメントは、例としてBLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピューターソフトウェアを用いて、当業者の範囲内である様々な方法で行うことができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを得るために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列を整列させるための適切なパラメータを決定することができる。しかし、本明細書における目的に関して、%アミノ酸配列同一性の値は、配列比較コンピュータープログラムALIGN-2を用いて生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータープログラムは、Genentech, Inc.によって作成され、ソースコードは、U.S. Copyright Office, Washington D.C., 20559においてユーザーの典拠資料と共にファイルされており、U.S. Copyright Registration No. TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech, Inc., South San Francisco, Californiaから公的に入手可能であり、またはソースコードから編集してもよい。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステム上で用いられるように編集すべきである。配列比較パラメータは全て、ALIGN-2プログラムによって設定され、変更しない。
【0052】
ALIGN-2をアミノ酸配列比較のために用いる状況において、所定のアミノ酸配列Bと比較した、Bとの、またはBに対する所定のアミノ酸配列Aの%アミノ酸配列同一性(これは代わりに、所定のアミノ酸配列Bと比較して、Bと、またはBに対してある程度の%アミノ酸配列同一性を有するまたは含む所定のアミノ酸配列Aと言うことができる)は、以下のように計算される:
100×分数X/Y、
式中Xは、AとBのそのプログラムのアラインメントにおいて、配列アラインメントプログラムALIGN-2によって同一のマッチとして採点されたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bにおけるアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、Bに対するAの%アミノ酸配列同一性は、Aに対するBの%アミノ酸配列同一性と等しくないと認識されるであろう。それ以外であると明記している場合を除き、本明細書において用いられる全ての%アミノ酸配列同一性の値は、ALIGN-2コンピュータープログラムを用いて直前の段落に記述されているように得られる。
【0053】
「ポリペプチド」は、天然で産生されたか合成によって産生されたかによらず、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸からなるポリマーである。アミノ酸残基約25個未満のポリペプチドは、「ペプチド」と呼ばれうるが、2つもしくはそれより多くのポリペプチドからなる分子、または100個より多くのアミノ酸残基の1つのポリペプチドを含む分子は、「タンパク質」と呼ばれうる。ポリペプチドはまた、炭水化物基、金属イオン、またはカルボン酸エステルなどの非アミノ酸成分を含みうる。非アミノ酸成分は、ポリペプチドが発現される細胞によって加えられてもよく、細胞のタイプによって変化しうる。ポリペプチドは、本明細書においてそのアミノ酸骨格構造またはそれをコードする核酸に関して定義される。炭水化物基などの付加物は一般的に明記されないが、それにもかかわらず存在しうる。
【0054】
「構造遺伝子」は、シグナル配列を有しない遺伝子の領域、すなわちコード領域を意味する。
【0055】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体と抗原との結合に関係する抗体重鎖または軽鎖のドメインを意味する。天然の抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれ、VHおよびVL)は、一般的に類似の構造を有し、各々のドメインは、保存された4つのフレームワーク領域(FR)および3つの超可変領域(HVR)を含む。(例えば、Kindt, T.J., et al, Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., N.Y. (2007), page 91を参照されたい)。抗原結合特異性を付与するためには、1つのVHまたはVLドメインで十分でありうる。さらに、相補的VLまたはVHドメインのライブラリをそれぞれスクリーニングするために抗原に結合する抗体からのVHまたはVLドメインを用いて、特定の抗原に結合する抗体を単離してもよい(例えば、Portolano, S., et al, J. Immunol. 150 (1993) 880-887; Clackson, T., et al, Nature 352 (1991) 624-628を参照されたい)。
【0056】
「変種」という用語は、1つまたは複数のアミノ酸置換、付加、または欠失を含む親アミノ酸配列の変種を意味する。
【0057】
「ベクター」という用語は、それが連結されるもう1つの核酸を増殖させることができる核酸分子を意味する。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクターならびにそれが導入されている宿主細胞のゲノムに組み入れられるベクターを含む。あるベクターは、それらが機能的に連結される核酸の発現を指示することができる。そのようなベクターは、本明細書において、「発現ベクター」と呼ばれる。
【0058】
本明細書において報告される方法の全般的段階
免疫
抗体に基づく治療を評価するための動物モデルとして、しばしばマウス、ウサギ、ハムスター、およびラットなどの非ヒト動物が用いられる。同様に、特異的疾患から生存した、慢性疾患を有する、または特異的疾患に対して最近ワクチン接種を受けたヒトのB細胞を用いることも可能である。
【0059】
本明細書において報告される方法において、たとえばマウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ヒツジ、ラマ、またはヒトから得られたB細胞を用いることができる。1つの態様において、マウスはNMRIマウスまたはbalb/cマウスである。もう1つの態様において、ハムスターは、アルメニアンハムスター(Cricetulus migratorius)、チャイニーズハムスター(Cricetulus griseus)およびシリアンハムスター(Mesocricetulus auratus)から選択される。特異的態様において、ハムスターは、アルメニアハムスターである。1つの態様において、ウサギは、ニュージーランドホワイト(NZW)ウサギ、ツインメルマンウサギ(ZIKA)、アリシア変異株ウサギ、バジレア変異株ウサギ、ヒト免疫グロブリン座を有するトランスジェニックウサギ、ウサギIgMノックアウトウサギ、およびその交雑体から選択される。
【0060】
1つの態様において、免疫のために選択される実験動物、例えば、マウス、ハムスター、ラット、およびウサギは、12週齢を超えない。
【0061】
B細胞の起源および単離
実験動物またはヒトの血液は、高度に多様な抗体産生B細胞を提供する。そこから得られるB細胞は、CDR内のアミノ酸配列とほとんど同一ではないまたは重なり合わないアミノ酸配列を有し、このように高い多様性を示す抗体を分泌する。
【0062】
1つの態様において、実験動物またはヒトのB細胞、例えば血液からのB細胞は、免疫後4日目から免疫後または直近の追加免疫後少なくとも9日目までに得られる。この時間枠により、本明細書において報告される方法には高い柔軟性が見込まれる。この時間枠において、最も高い相互親和性を有する(affine)抗体を提供するB細胞が、脾臓から血液へと遊走する可能性がある(例えば、Paus, D., et al, JEM 203 (2006) 1081-1091; Smith, K.G.S., et al, The EMBO J. 16 (1997) 2996-3006; Wrammert, J., et al, Nature 453 (2008) 667-672を参照されたい)。実験動物またはヒトの血液のB細胞は、当業者に公知の任意の方法によって得られうる。例えば、密度勾配遠心(DGC)または赤血球細胞溶解(溶血)を用いることができる。密度勾配遠心は、溶血と比較して、より高い全収率、すなわちB細胞クローン数を提供する。さらに、密度勾配遠心によって得られた細胞から、共培養段階において、多数の細胞が分裂および生育する。同様に、分泌抗体の濃度は、異なる方法によって得られた細胞と比較してより高い。それゆえ、1つの態様において、B細胞集団は、密度勾配遠心によって提供される。
【0063】
mRNAの単離、クローニング、およびシークエンシング
B細胞から、総mRNAを単離してcDNAに転写することができる。特異的プライマーによって、同起源のVHおよびVL領域コード核酸を増幅することができる。本明細書において報告される方法によって、同一の配列はほとんど得られないであろう。このように、本方法は、同じ抗原に結合する高度に多様な抗体を提供する。
【0064】
1つの態様において、本明細書において報告される方法は、同起源の抗体可変ドメインを含む抗体を産生するためである。1つの態様において、同起源の抗体可変ドメインは1つのB細胞に由来する。
【0065】
NMRIマウス、アルメニアンハムスター、Balb/cマウス、シリアンハムスター、ウサギ、ラット、ヒツジ、ラマ、およびヒトのB細胞から得られたVHコード核酸を増幅するためのプライマーを提供することができる。
【0066】
本明細書において報告される1つの局面は、以下の段階を含む、抗体を産生する方法である:
a) 染色B細胞集団(1つの態様において、B細胞は、1つから3つ、または2つから3つの蛍光色素によって染色される)から1つの(成熟)B細胞(実験動物またはヒトの血液またはリンパ系臓器から得られる)を、個々の容器(1つの態様において、容器はマルチウェルプレートのウェルである)に沈着させる段階、
b) 沈着させた個々のB細胞を、フィーダー細胞およびフィーダーミックスの存在下で培養する段階(1つの態様において、フィーダー細胞はEL-4 B5細胞であり、1つの態様において、フィーダーミックスは天然のTSN(B細胞が由来する同じ種の実験動物の胸腺の培養上清)であり、1つの態様において、フィーダーミックスは合成フィーダーミックスである)、
c) 逆転写PCR(RT-PCR)によって特異的結合抗体の可変軽鎖および重鎖ドメインのアミノ酸配列を決定して、それによってモノクローナル抗体可変軽鎖および重鎖ドメインコード核酸を得る段階、
d) 個々のHCおよびLC発現カセットにおいて可変軽鎖および重鎖をコードする核酸を含む細胞を培養して、細胞または細胞培養上清から抗体を回収して、それによって抗体を産生する段階。
【0067】
1つの態様において、方法は以下の段階を含む:
a) (成熟)B細胞集団(実験動物またはヒトの血液またはリンパ系臓器から得られる)を提供する段階、
b) 少なくとも1つの蛍光色素(1つの態様において、1つから3つ、または2つから3つの蛍光色素)によってB細胞集団の細胞を染色する段階、
c) 染色したB細胞集団の1つの細胞を、個々の容器(1つの態様において、容器はマルチウェルプレートのウェルである)に沈着させる段階、
d) 沈着させた個々のB細胞を、フィーダー細胞およびフィーダーミックスの存在下で培養する段階(1つの態様において、フィーダー細胞はEL-4 B5細胞であり、1つの態様において、フィーダーミックスは天然のTSN(B細胞が由来する同じ種の実験動物の胸腺の培養上清)であり、1つの態様において、フィーダーミックスは合成フィーダーミックスである)、
e) 個々のB細胞の培養において分泌された抗体の結合特異性を決定する段階、
f) 所望の結合特異性を有する抗体を分泌するB細胞の総RNAを単離する段階、
g) 軽鎖および重鎖可変ドメインに対して特異的なプライマーによって、ポリA+抽出mRNAについてRT-PCRを行う段階、
h) 特異的結合抗体の可変軽鎖および重鎖ドメインのアミノ酸配列を決定する段階、
i) 抗体を発現させるためのそれぞれの発現カセットにモノクローナル抗体軽鎖および重鎖可変ドメインコード核酸を導入する段階、
j) 核酸を細胞に導入する段階、
k) 細胞を培養して、細胞または細胞培養上清から抗体を回収して、それによって抗体を産生する段階。
【0068】
特異的態様
本明細書において報告される方法において、抗体可変ドメイン(軽鎖および重鎖)をコードする核酸セグメントの単離および真核細胞発現プラスミド(軽鎖および重鎖の各々に関してそれぞれ1つの発現カセット)への単離核酸セグメントの挿入は、クローン中間プラスミドを中間で単離して分析することなく行われる。このように、本明細書において報告される方法において、たとえば単離された形質転換大腸菌細胞の分析による中間カセット/プラスミドの中間でのクローニング、単離、および分析は必要ではない。1つの態様において、本明細書において報告される方法は、クローン中間プラスミドを中間で単離および分析することなく行われる。
【0069】
本明細書において報告される方法において、特異的ポリメラーゼ連鎖反応後に得られる抗体の重鎖および軽鎖可変ドメインをコードするそれぞれの核酸断片を、形質転換細菌の1つのコロニーから得られたプラスミドDNAを採取して分析するために中間で平板培養する必要なく、各々の鎖にそれぞれ関して1つずつ真核細胞発現構築物に挿入して、数を増やすことができることが見いだされている。
【0070】
典型的に、制限エンドヌクレアーゼ切断部位をそれぞれ、センスおよびアンチセンスプライマーの両方に工学操作して、適切に設計された発現ベクターにPCR断片を挿入できるようにする。しかし、ライゲーションプロセスの乱雑度が比較的高いことにより、挿入された核酸断片を含まない(「空のベクター」)、間違った方向に挿入された核酸断片を含む、またはクローニングされる核酸の不完全な断片のみを含む個々のプラスミドクローンが比較的多数生成される。この問題は通常、個々の細菌クローンを単離することができるように、ライゲーション反応物を固体培地中で平板培養することによって解決される。次に、これらの細菌コロニー(クローン)のいくつかを採取して液体培養中で生育させて、これらのクローンに含まれる各々のプラスミドを、挿入された核酸断片の方向性および完全性に関して分析する。次に、正しくアセンブルされたプラスミドの1つを選択して、例えばコードされるポリペプチドの組み換え発現のためにさらに増幅する。この方法は、少数の限定的な数のDNA断片をクローニングするために何度も試験される方法であるが、多数の核酸断片のクローニングが必要である場合には、先に明記したように1つのコロニーに由来するプラスミドDNAを採取して、増幅および分析する必要があることから、煩わしく、面倒で、時間がかかる。
【0071】
このように、DNA断片の初回生成および発現ベクターにおけるクローニングから、それぞれのプラスミドベクターによってコードされるポリペプチドの組み換え発現に至るまでのワークフロー全体を、1つのコロニーを中間で単離および分析する必要なく、1つの一貫したワークフローで行うことができることが見いだされた。先に概要を示したワークフローを改善する手段として、ライゲーション非依存的クローニングを使用することが有利であることが見いだされた。このように、1つの態様において、真核細胞発現プラスミドへの挿入は、ライゲーション非依存的クローニングによって行われる。
【0072】
ライゲーション非依存的クローニングはそれだけでは、得られる個々のコロニーの数が有意により高いという意味において、制限およびライゲーションによる通常のクローニングより必ずしも効率がよいわけではない。しかし、この方法は、複雑な分子をアセンブルするために、酵素的ライゲーションよりむしろ相補的一本鎖DNAオーバーハングの配列特異的アニーリングに基づいていることから、この方法は、クローニングされる個々の核酸断片の有意により長い相補的一本鎖末端を含む。このように、典型的に、ライゲーション非依存的クローニングでは、ヌクレオチド15〜30個を包含する一本鎖ヌクレオチドオーバーハングが用いられるのに対し、制限エンドヌクレアーゼによって生成されるのは2〜4個のヌクレオチドである。さらに、ライゲーション非依存的クローニングではリガーゼ酵素が存在しないことから、空のベクターの再ライゲーションは起こりえない。その結果、サイズ、方向、および完全性に関してベクターに正確に挿入される核酸断片の割合が増加して、同時に、挿入された核酸断片を全く含まない「空の」再ライゲートベクターの割合および欠損DNA断片を含むプラスミドの頻度は、ライゲーション非依存的クローニングでは減少する。実際に、ライゲーション非依存的クローニングによって得られるクローニング産物の分析により、全てのプラスミド分子の90%より多くが、完全長の挿入核酸を正しい方向に含むことが示された。
【0073】
このように生成された全てのプラスミド分子の大多数が、正確に挿入された核酸断片を含むことから、固体培地における形質転換細菌の平板培養、1つのコロニーの単離、ならびに個々のプラスミドDNAクローンの分析および単離という中間段階を行う必要なく、形質転換細菌のプール全体を液体培養において生育および増殖させることができることが見いだされている。本明細書において報告される方法によって、必要な時間および労力を減少させることができる。この改善された方法によって、プロセスの自動化を行うことができる。
【0074】
従来のアプローチと本明細書において報告される方法との違いの概要を以下の表に示す。必要な段階の40%を超える数を減少させることができることが認められる。
【0075】

- 行う必要がないことを示す。
【0076】
本明細書において報告される方法は、実験動物の免疫後いずれの時点で得られたB細胞についても行うことができる。
【0077】
本明細書において報告される方法は、免疫後早期に行うことができ、そのため実験動物の初回免疫後3週間もの早期に第一の抗体コード核酸を単離することができる。
【0078】
本明細書において報告される方法は、ウサギB細胞に由来するハイブリドーマでは抗体産生が不十分なクローンを生じることから、ウサギB細胞から可変ドメインコード核酸断片を単離するために特に適している。さらに、ウサギ由来ハイブリドーマからの可変ドメインコード核酸断片の単離は、一般的に用いられる骨髄腫融合パートナーの内因性の軽鎖転写物によって妨害される。
【0079】
本明細書において報告される方法は、従来のアプローチと比較してより迅速である。
【0080】
1つの態様において、B細胞はヒトB細胞、またはマウスB細胞またはラットB細胞、またはウサギB細胞、またはハムスターB細胞、またはトランスジェニック動物に由来するB細胞である。1つの態様において、B細胞は、ウサギB細胞、またはヒトB細胞、またはトランスジェニック動物に由来するB細胞である。
【0081】
トランスジェニック動物は、内因性のIg座が不活化されているかまたは除去されて、活性なまたは機能的ヒトIg座を含む動物である。
【0082】
1つの態様において、B細胞は免疫された実験動物のB細胞である。
【0083】
1つの態様において、B細胞は、免疫したヒト個体、または疾患から生存したヒト個体、または慢性疾患を有するヒトのB細胞である。
【0084】
1つの態様において、B細胞は、1つの沈着させた抗体分泌B細胞である。
【0085】
1つの態様において、B細胞は、6から8世代培養される。
【0086】
1つの態様において、B細胞は、細胞約10個から約100個が得られるまで培養される。
【0087】
1つの態様において、B細胞は、培養7日後に約10 ng/mlの抗体を産生する。1つの態様において、B細胞は、培養7日後に約20 ng/mlの抗体を産生する。
【0088】
10 ng/ml未満の抗体を産生するB細胞を用いる場合、本明細書において報告される方法を同様に行うことができるが、増幅効率はより低くなることが見いだされている。
【0089】
1つの態様において、可変ドメインをコードする核酸断片は、単離される、および/またはRT-PCRによって増幅される。
【0090】
1つの態様において、可変軽鎖ドメインをコードする核酸断片と、可変重鎖ドメインをコードする核酸断片は同起源の核酸である。1つの態様において、重鎖および軽鎖可変ドメインをコードする核酸断片は、同じ細胞および/またはその子孫から単離される。
【0091】
1つの態様において、B細胞はウサギB細胞であり、可変重鎖ドメインをコードする核酸は、
のプライマーによって単離される。
【0092】
1つの態様において、B細胞はウサギB細胞であり、可変軽鎖ドメインをコードする核酸は、
のプライマーによって単離される。
【0093】
同様に、例えばラット、マウス、またはヒト免疫グロブリンV-ドメイン遺伝子セグメントを増幅するためのプライマーを設計することができる。1つの態様において、プライマーは、第一のフレームワーク領域の中の配列に向けられる。例えば、ヒトB細胞に関してvan Dongen, J.J.M., et al. Leukemia 17 (2003) 2257; Widhopf, G.F., et al. Blood 111 (2008) 3137; Fais, F., et al. J. Clin. Invest. 102 (1998) 1515を参照されたく;マウスB細胞に関して、例えばWang, Z., et al. J. Immunol. Methods. 233 (2000) 167; Jones, T. and Bendig, M., Bio/Technology 90 (1991) 88を参照されたい。
【0094】
1つの態様において、増幅した核酸は、PCRプライマーの除去後精製せずに用いられる。
【0095】
1つの態様において、可変ドメインをコードする核酸断片は、配列およびライゲーション非依存的クローニング(SLIC)によって真核細胞発現プラスミドに挿入される。
【0096】
1つの態様において、挿入は、制限酵素切断部位を必要としない。
【0097】
1つの態様において、挿入は核酸断片のホスファターゼ処理を必要としない。
【0098】
1つの態様において、組み込みは、酵素的ライゲーションを必要としない。
【0099】
1つの態様において、T4 DNAポリメラーゼは、一本鎖伸長部を生成するためにヌクレオチドの非存在下で使用される。
【0100】
1つの態様において、核酸(=PCR産物)約200 ngが挿入段階において用いられる。1つの態様において、核酸約100 ngが用いられる。1つの態様において、核酸約50 ngが用いられる。
【0101】
1つの態様において、プラスミド対核酸の比率は約1:2(w/w)である。1つの態様において、プラスミド約100 ngと核酸約200 ngが挿入段階において用いられる。
【0102】
1つの態様において、方法は、ハイスループット法である。
【0103】
1つの態様において、方法は、B細胞クローン少なくとも10個に関して同時に行われる。
【0104】
1つの態様において、増幅産物から始まって組み換え発現抗体までの方法の効率は、50%より高い。
【0105】
本明細書において報告される方法において、抗体軽鎖および重鎖に関してそれぞれアセンブルされたおよび/または増幅された抗体発現プラスミドを含む大腸菌細胞のプールから得られた核酸のプールを用いることが特に適していることが見いだされている。その上、1つのクローンの核酸増幅の際に起こりうる誤りを一様にするかまたはマスクする、またはバックグラウンドレベルまで減少させることができる。
【0106】
1つの態様において、核酸は、抗体軽鎖および重鎖に関してそれぞれアセンブルされたおよび/または増幅された抗体発現プラスミドを含む大腸菌細胞のプールから得られた核酸プールである。
【0107】
PCRプライマーを除去しなければならないか、または同様にPCR産物をシークエンシング段階の前に精製しなければならないことが見いだされている。この分離/精製は、シークエンシング効率を増加させる。
【0108】
可変ドメインをコードする核酸を除くプラスミド骨格を増幅することが有利であることが見いだされている。
【0109】
1つの態様において、ベクター(またはプラスミド)骨格が増幅されるプラスミドは増幅の前に直線状にされる。1つの態様において、プラスミドは、増幅の前に2つまたはそれより多くの異なる制限酵素を用いることによって直線状にされる。
【0110】
1つの態様において、増幅産物は、メチル化依存的制限酵素、例えばDpnIによって消化される。
【0111】
これによって、その後の方法の段階においてより高い柔軟性および効率が見込まれる。
【0112】
1つの態様において、方法は以下の段階を含む:
- 免疫した実験動物の抗体産生B細胞からの総RNA抽出
- 抽出したポリA+ mRNAの一本鎖cDNA合成/逆転写
- 種特異的プライマーによるPCR
- PCRプライマーの除去/PCR産物の精製
- 任意でPCR産物のシークエンシング
- PCR産物のT4ポリメラーゼインキュベーション
- プラスミドDNAの直線化および増幅
- 増幅したプラスミドDNAのT4ポリメラーゼインキュベーション
- 増幅したプラスミドにおける可変ドメインコード核酸の配列およびライゲーション非依存的クローニング
- プラスミド形質転換大腸菌細胞プールからのプラスミドの調製
- 先の段階で調製したプラスミドによる真核細胞のトランスフェクション
- 抗体の発現。
【0113】
1つの態様において、軽鎖コードプラスミド骨格DNAは、
のプライマーによって増幅される。
【0114】
1つの態様において、重鎖コードプラスミド骨格DNAは、
のプライマーによって増幅される。
【0115】
以下の実施例および配列表は、本発明の理解を助けるために提供され、その真の範囲は添付の特許請求の範囲に記載される。記載の技法に変更を行うことができ、それでも本発明の精神に含まれると理解される。
【0116】
配列
SEQ ID NO: 1 リンカーペプチド1
SEQ ID NO: 2 リンカーペプチド2
SEQ ID NO: 3 リンカーペプチド3
SEQ ID NO: 4 リンカーペプチド4
SEQ ID NO: 5 重鎖可変ドメイン単離プライマー1(rb-VH3-23-Slic-s001プライマー)
SEQ ID NO: 6 重鎖可変ドメイン単離プライマー2(rb-CH1rev-2プライマー)
SEQ ID NO: 7 軽鎖可変ドメイン単離プライマー1(rb-V-カッパ-Slic-s001プライマー)
SEQ ID NO: 8 軽鎖可変ドメイン単離プライマー2(rbCk1-rev2プライマー)
SEQ ID NO: 9 軽鎖プラスミド増幅プライマー1(8011-Slic-s001プライマー)
SEQ ID NO: 10 軽鎖プラスミド増幅プライマー2(8000-Slic-as002プライマー)
SEQ ID NO: 11 重鎖プラスミド増幅プライマー1(8001-Slic-s001プライマー)
SEQ ID NO: 12 重鎖プラスミド増幅プライマー2(8001-Slic-as002プライマー)
SEQ ID NO: 13 rb-V-カッパ-HindIIIsプライマー
SEQ ID NO: 14 rb-C-カッパ-NheIasプライマー
SEQ ID NO: 15 rb-CH1rev-1プライマー
SEQ ID NO: 16 rbVH3-23for3プライマー
SEQ ID NO: 17 bcPCR-huCガンマ-revプライマー
SEQ ID NO: 18 bcPCR-FHLC-リーダー-fwプライマー
SEQ ID NO: 19 bcPCR-huCカッパ-revプライマー
SEQ ID NO: 20 bcPCR-hu-HC-10600-SLIC-asプライマー
SEQ ID NO: 21 bcPCR-hu-HC-10600-SLIC-sプライマー
SEQ ID NO: 22 bcPCR-hu-LC-10603-SLIC-sプライマー
SEQ ID NO: 23 bcPCR-hu-LC-10603-SLIC-asプライマー
SEQ ID NO: 24 SLIC-hu-VHユニバーサル-forプライマー
SEQ ID NO: 25 SLIC-hu-VH6-forプライマー
SEQ ID NO: 26 hu-CH1ガンマ-revプライマー
SEQ ID NO: 27 SLIC-huVk2-forプライマー
SEQ ID NO: 28 SLIC-huVk3-forプライマー
SEQ ID NO: 29 SLIC-huVk5-forプライマー
SEQ ID NO: 30 SLIC-huVk7-forプライマー
SEQ ID NO: 31 SLIC-huVk8-forプライマー
SEQ ID NO: 32 SLIC-huVk1ロング-forプライマー
SEQ ID NO: 33 SLIC-huVk2ロングw-forプライマー
SEQ ID NO: 34 huCk-revプライマー
SEQ ID NO: 35 SLIC-huVl1-forプライマー
SEQ ID NO: 36 SLIC-huVl2-forプライマー
SEQ ID NO: 37 SLIC-huVl3-forプライマー
SEQ ID NO: 38 SLIC-huVl4-forプライマー
SEQ ID NO: 39 SLIC-huVl5-forプライマー
SEQ ID NO: 40 SLIC-huVl6-forプライマー
SEQ ID NO: 41 SLIC-huVl7-forプライマー
SEQ ID NO: 42 SLIC-huVl8-forプライマー
SEQ ID NO: 43 SLIC-huVl9-forプライマー
SEQ ID NO: 44 SLIC-huVラムダ10-forプライマー
SEQ ID NO: 45 huCl-1-revプライマー
SEQ ID NO: 46 huIg-PCR-ベクタープライマー-as
SEQ ID NO: 47 huIg-PCR-ベクタープライマー-VH-s
SEQ ID NO: 48 huIg-PCR-ベクタープライマー-asカッパ
SEQ ID NO: 49 huIg-PCR-ベクタープライマー-VK-s
SEQ ID NO: 50 huIg-PCR-ベクタープライマー-asラムダ
SEQ ID NO: 51 huIg-PCR-ベクタープライマー-VL-s
【実施例】
【0117】
実施例1
同起源の抗体可変領域遺伝子セグメントのクローニングおよび発現
a)RNA抽出
10μl/mlの2-メルカプトエタノールを含むRLT緩衝液100μlを添加して、繰り返しピペッティングによって混合することによって細胞を溶解した。溶解物をRNA単離のためにそのまま用いるか、またはRNA調製まで-20℃で凍結保存した。Total RNA Isolation Kit NucleoSpin(Machery & Nagel)を用いて、製造元の説明書に従ってRNAを調製した。
【0118】
b)第一鎖cDNA合成
Super Script III第一鎖合成SuperMix(Invitrogen)を用いて製造元の説明書に従って、mRNAの逆転写によってcDNAを生成した。第一の段階において単離mRNA 6μlを、アニーリング緩衝液1μlおよびオリゴdT 1μl(50μM)と共に混合して65℃で5分間インキュベートした後直ちに約1分間氷中に入れた。次に、そのまま氷中で2×First-Strand Reaction Mix and SuperScript(商標)III/RNaseOUT(商標)酵素ミックス10μlを添加した。混合後、反応物を50℃で50分間インキュベートした。85℃で5分間インキュベートすることにより反応を終了させた。終了後、反応ミックスを氷中に入れた。
【0119】
c)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
ポリメラーゼ連鎖反応は、AccuPrime Pfx SuperMix(Invitrogen)を用いて製造元の説明書に従って行った。軽鎖および重鎖可変領域を個別の反応において増幅した。標的抗体発現ベクターに対して25 bpのオーバーラップを有するPCR-プライマー(0.2μM/反応)を用いた。PCR後、PCR反応混合物8μlを48ウェルeGels(Invitrogen)での分析のために用いた。
【0120】
d)PCR産物の精製
残留PCRプライマーを、NucleoSpin(登録商標)96 Extract IIキット(Machery & Nagel)を用いて製造元の説明書に従って除去した。
【0121】
e)配列の決定
抗体重鎖および軽鎖の可変ドメインをコードするDNA配列を、PCR産物のシークエンシングによって得た。
【0122】
f)プラスミドDNAの調製
抗体重鎖および軽鎖可変ドメインをコードするPCR産物をクローニングするためのレシピエントとして用いられるプラスミドDNAを、まず制限酵素消化によって直線状にした。次に、直線状のプラスミドDNAを、分取アガロース電気泳動によって精製して、ゲル(QIAquick Gel Extraction Kit / Qiagen)から抽出した。この精製プラスミドDNAを、クローニングされるPCR産物と重なり合う(20〜25 bp)プライマーを用いて、鋳型としてPCRプロトコールに加えた。PCRは、AccuPrime Pfx SuperMix(Invitrogen)を用いて行った。
【0123】
g)クローニング
PCR産物を、Haun, R.S., et al. (BioTechniques 13 (1992) 515-518) and Li, M.Z., et al. (Nature Methods 4 (2007) 251-256)によって記述される「配列およびライゲーション非依存的クローニング」法(SLIC)を用いて発現ベクターにおいてクローニングした。精製ベクターおよびインサートをいずれも、dNTPの非存在下でDNA 1μgあたりT4 DNAポリメラーゼ(Roche Applied Sciences, Mannheim, Germany)0.5 Uによって25℃で45分間処理して、マッチするオーバーハングを生成した。反応容積の1/10の10 mM dCTP溶液(Invitrogen)を添加することによって反応を停止させた。T4処理ベクターおよびインサートDNA断片をプラスミド:インサート比1:2(w/w)(例えば、100 ng:200 ng)で混合して、RecAProtein(New England Biolabs)および10×RecA緩衝液を添加することによって37℃で30分間組み換えを行った。次に、生成した重鎖および軽鎖発現プラスミドの各5μlを用いて、標準的な化学形質転換プロトコールを用いて、MultiShot Strip Well TOP 10化学コンピテント大腸菌細胞(Invitrogen)を形質転換した。再生後(形質転換大腸菌細胞を37℃で45分間振とうする)、形質転換混合物全体を、アンピシリンを添加したLB培地2 mlをウェルあたり含むDWP 96(深型ウェルプレート)に移した。細胞を37℃で20時間シェーカーにおいてインキュベートした。次の段階において、免疫グロブリン重鎖および軽鎖をコードするプラスミドDNAを、NucleoSpin 96 Plasmid Mini Kit(Macherey & Nagel)を用いて精製して、選択された制限酵素によって消化して、48ウェルeGels(Invitrogen)において分析した。平行して、グリセロール保存液を保存のために調製した。
【0124】
h)真核細胞における組み換え型抗体のトランスフェクションおよび発現
HEK293細胞を、8%CO2を含む大気中でF17培地(Gibco)中で37℃で120 rpmで振とうさせながら生育させた。細胞をトランスフェクションの前日に分割して、密度0.7〜0.8×106個/mlで播種した。トランスフェクション当日、容積2 ml中のHEK293細胞1〜1.5×106個に、HCプラスミド0.5μgにLCプラスミド0.5μgを加えたものをトランスフェクトして、48ウェル深型ウェルプレートにおいて293を含まない培地(Novagen)1μlおよびOptiMEM(登録商標)培地(Gibco)80μlに浮遊させた。培養物を37℃および8%CO2において180 rpmで7日間インキュベートした。7日後、培養上清を採取して濾過し、抗体含有量および特異性に関して分析した。
【0125】
実施例2
B細胞生産性対増幅効率
本明細書において報告される方法において用いられるB細胞は、フィーダー細胞、例えばEL4-B5細胞およびZublerミックスの存在下で1つの沈着させたB細胞の培養によって得られた発現収率(抗体力価)に基づいて選択しなければならないことが見いだされている。得られた発現収率は、以下の表から見ることができる特異的閾値より上でなければならない。
【0126】
表:単細胞培養上清におけるウサギIgG濃度に応じた配列生成の成功
【0127】
実施例3
プライマー
ウサギ抗体を発現するB細胞のB細胞PCRのためのプライマー
プライマーセット1:
LCプライマー
HC-プライマー
プライマーセット2:
LCプライマー
HCプライマー
重鎖発現プラスミド骨格を増幅するためのプライマー:
カッパ軽鎖発現プラスミド骨格を増幅するためのプライマー:
【0128】
ヒト抗体を発現するウサギB細胞(トランスジェニックウサギに由来する)のB細胞PCRのためのプライマー
重鎖可変ドメインを増幅するためのプライマー
HC-Up
軽鎖可変ドメインを増幅するためのプライマー
【0129】
重鎖プラスミド骨格を増幅するためのプライマー
【0130】
カッパ軽鎖プラスミド骨格を増幅するためのプライマー
【0131】
ヒトドナーのB細胞のB細胞PCRのためのプライマー
重鎖可変ドメインを増幅するためのプライマー
カッパ軽鎖可変ドメインを増幅するためのプライマー
ラムダ軽鎖可変ドメインを増幅するためのプライマー
【0132】
ヒト免疫グロブリン発現プラスミドを増幅するためのプライマー
重鎖発現プラスミド骨格の増幅
カッパ軽鎖発現プラスミド骨格の増幅
ラムダ軽鎖発現プラスミド骨格の増幅
【0133】
実施例4
1つのクローンと比較したプール
抗体可変領域遺伝子セグメントを増幅して、実施例1に記述されるようにそれぞれの発現ベクターにおいてクローニングした。プールクローニング対通常の1つのコロニーからのクローン採取に由来する配列の忠実度を決定するために、形質転換ミックスを2つに分割した:半分を、通常どおり1つのコロニーを生成するように平板培養して、残りの半分をプール培養として直接生育させた。次に、プール形質転換大腸菌細胞ならびに通常のプレートから採取した1つのコロニーの両方からプラスミドを調製して、クローニングした可変領域遺伝子セグメントの配列を決定した。以下の表に示されるように、コロニー由来プラスミドの80%から100%が、正確な可変領域遺伝子セグメントを含んだが、これはプール形質転換から得られた配列と同一であった。
プール培養細胞のシークエンシングから得られたVHおよびVLコード核酸配列は、個々のクローンのシークエンシングから得られた最も量の多い配列と同一であった。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]