(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573336
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】電子機器の通気用開口部の防水構造、筐体および電子機器
(51)【国際特許分類】
H05K 5/02 20060101AFI20190902BHJP
B01D 46/00 20060101ALI20190902BHJP
H05K 5/03 20060101ALI20190902BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
H05K5/02 L
B01D46/00 F
H05K5/03 A
H05K7/20 G
【請求項の数】11
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-2378(P2018-2378)
(22)【出願日】2018年1月11日
(65)【公開番号】特開2019-121752(P2019-121752A)
(43)【公開日】2019年7月22日
【審査請求日】2018年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勇太
【審査官】
佐久 聖子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−173412(JP,A)
【文献】
特開2014−209639(JP,A)
【文献】
特開2006−005162(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第2077145(EP,A1)
【文献】
実開昭51−053038(JP,U)
【文献】
特開2016−158557(JP,A)
【文献】
実開平06−040350(JP,U)
【文献】
特開平08−032248(JP,A)
【文献】
特開2010−258263(JP,A)
【文献】
特開2017−117892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 46/00−46/54、
B60R 16/00−17/02、
H05K 5/00− 5/06、 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の筐体の天面に設けられた通気用開口部に設けられる防水構造であって、
前記通気用開口部に前記筐体の奥行方向または幅方向に傾斜するように取り付けられた第1のフィルタと、
前記第1のフィルタの傾斜下端辺の下方に該傾斜下端辺に沿って延在する樋部と、を有し、
前記第1のフィルタは、疎水性または撥水性ならびに通気性を有するハイドロメッシュ層から成り、
前記樋部は、前記第1のフィルタの表面から流下する水分を受容すると共に延在方向に排出する、電子機器の通気用開口部の防水構造。
【請求項2】
前記樋部は、前記第1のフィルタの傾斜下端辺の下方に該傾斜下端辺に対して平行に延在する、請求項1に記載の電子機器の通気用開口部の防水構造。
【請求項3】
前記樋部は、前記延在方向の中心を頂点として両端部に向かうにつれてそれぞれ下降するように傾斜している、請求項1に記載の電子機器の通気用開口部の防水構造。
【請求項4】
前記通気用開口部に取り付けられ、前記第1のフィルタを前記筐体の奥行方向または幅方向に傾斜するように支持する枠部材をさらに有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電子機器の通気用開口部の防水構造。
【請求項5】
前記枠部材は、前記樋部を一体に有する、請求項4に記載の電子機器の通気用開口部の防水構造。
【請求項6】
前記第1のフィルタ上に積層するように取り付けられた第2のフィルタをさらに有し、
前記第2のフィルタは、吸水性および通気性を有するフォーム層から成る、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電子機器の通気用開口部の防水構造。
【請求項7】
前記第1のフィルタおよび前記第2のフィルタを覆うように前記筐体に取り付けられたトップカバーをさらに有し、
前記トップカバーは、少なくとも上面に複数の孔部を備えたメッシュ状または格子状を呈する、請求項6に記載の電子機器の通気用開口部の防水構造。
【請求項8】
前記第1のフィルタは、前記筐体の奥行方向の後方に向かうにつれて下降するように傾斜している、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電子機器の通気用開口部の防水構造。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の電子機器の通気用開口部の防水構造を有する、電子機器の筐体。
【請求項10】
請求項9に記載の筐体を有する、電子機器。
【請求項11】
電子機器の稼働に伴って発熱する、少なくとも1つの電子部品をさらに有し、
前記電子部品は、その上部が前記通気用開口部を臨むように前記筐体に収容されている、請求項10に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の通気用開口部の防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器として、例えば、入退場ゲートに隣接して配置されるゲート装置がある。ゲート装置は、入力される暗証番号または個人認証情報に基づいて入退場の許可否を判定し、判定結果に基づいてゲートを制御する装置である。尚、ゲート装置は、プログラムにしたがって情報を演算処理するCPU(Central Processing Unit)と、情報を記憶する情報記憶部と、情報を表す信号の入出力インターフェースと、各デバイスを収容する筐体とを有する情報処理装置の一種でもある。
【0003】
ゲート装置等の情報処理装置は、動作に伴ってCPU等が発熱するため、冷却手段が設けられることが多い。冷却手段のうち、空気を冷媒として用いる空冷手段としては、ファンによって空気を強制的に流通させるものや、ファンを用いずに空気を自然に対流させるものがある。後者の空冷手段は、CPU等の発熱部から熱伝導を受けて高温となった空気を排出したり、逆に、外気を吸入するために、通気用開口部が筐体に設けられる。この通気用開口部は、効率よく通気を行うために、筐体の天面に設けられることが好ましい。
【0004】
筐体の通気用開口部は、筐体の内外を連通するものであるため、不要な水分、塵、異物の筐体内への侵入することを防ぐ手段を設けることが望ましい。特に、屋外で使用されることがあるゲート装置等の場合には、水分等の侵入を防ぐ手段は必須である。
【0005】
特許文献1、2には、通気用開口部の防水構造を有する電子機器が開示されている。特許文献1に開示された通気用開口部の防水構造は、筐体の天面に設けられた通気用開口部を覆うように設けられた疎水性多孔体層を有している。特許文献2に開示された通気用開口部の防水構造は、筐体の天面に設けられた通気用開口部を覆うように設けられた屋根部材と、屋根部材の両側の排気口に設けられたフィルタとを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−231168号公報
【特許文献2】特開2000−037006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された疎水性多孔体層は、防水透湿膜とも呼ばれ、防水性と透湿性とに優れてはいるものの、通気性の点では必ずしも十分ではない可能性がある。また、特許文献2に開示された防水構造は、通気用開口部に、それ自体は全く通気性を有さない屋根部材が設けられているため、筐体の高さ方向の通気性に関して言えば、必ずしも十分ではない可能性がある。
【0008】
即ち、特許文献1、2に開示されたものをも含め、本発明の関連技術による電子機器の通気用開口部の防水構造は、通気性の点で改善の余地がある。このため、通気性と防水性との両方に優れた電子機器の通気用開口部の防水構造が望まれる。
【0009】
それ故、本発明の目的は、通気性と防水性との両方に優れた電子機器の通気用開口部の防水構造を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、上記のような電子機器の通気用開口部の防水構造を有する筐体を提供することである。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、上記のような筐体を有する電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、電子機器の筐体の天面に設けられた通気用開口部に設けられる防水構造であって、前記通気用開口部に前記筐体の奥行方向または幅方向に傾斜するように取り付けられた第1のフィルタを有し、前記第1のフィルタは、疎水性または撥水性ならびに通気性を有するハイドロメッシュ層から成る、電子機器の通気用開口部の防水構造が得られる。
【0013】
本発明によればまた、前記電子機器の通気用開口部の防水構造を有する電子機器の筐体が得られる。
【0014】
本発明によればさらに、前記筐体を有する電子機器が得られる。
【発明の効果】
【0015】
本発明による電子機器の通気用開口部の防水構造は、通気性と防水性との両方に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態による電子機器の通気用開口部の防水構造が適用されるゲート装置の斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態による電子機器の通気用開口部の防水構造の要部の斜視図である。
【
図3】(a)および(b)は、本発明の実施形態による電子機器の通気用開口部の防水構造の動作を説明するための概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明による電子機器の通気用開口部の防水構造を説明する。
【0018】
図中、符号Wは通気用開口部の防水構造が適用される電子機器の筐体の幅方向(左方向Wl、右方向Wrを含む)を示し、符号Hは筐体の高さ方向(下方向Hl、上方向Huを含む)を示し、符号Dは筐体の奥行方向(前方向Df、後ろ方向Drを含む)を示している。
【0019】
図1〜
図3を参照すると、本発明の実施形態による防水構造60は、電子機器としてのゲート装置の筐体10の通気用開口部11に適用される。本ゲート装置は、入退場ゲートに隣接して配置される。
【0020】
本ゲート装置は、回路基板71と、回路基板71上に搭載され、プログラムソフトウエアにしたがって情報を演算処理するCPU72と、プログラムソフトウエアをも含む情報を記憶する情報記憶部(図示せず)と、個人任用情報をも含む情報を表す信号の入出力インターフェースと、各デバイスを収容する筐体10とを有している。入出力インターフェースは、タッチパネル付きディスプレイ20と、無接点通信のためのタッチパッド30と、スピーカ・マイクロフォン50と、電源スイッチ40とを備えている。本ゲート装置は、タッチパネル付きディスプレイ20から入力される暗証番号またはタッチパッド30を通して入力される個人認証情報に基づいて入退場の許可否をCPU72によって判定し、判定結果に基づいてゲートを制御する装置である。
【0021】
本ゲート装置は、動作に伴ってCPU72等が発熱するため、冷却手段が設けられている。この冷却手段は、ファンを用いずに空気を自然に対流させるものであり、CPU72等の発熱部から熱伝導を受けて高温となった空気を排出したり、逆に、外気を吸入するために、筐体10には、通気用開口部11が設けられている。通気用開口部11は、効率よく通気を行うために、筐体10の高さ方向Hの天面に設けられている。CPU72は、筐体10の高さ方向Hの上部が通気用開口部11を臨むように、筐体10に収容されている。
【0022】
本発明の実施形態による防水構造60は、第1のフィルタ61と、第2のフィルタ62と、枠部材63と、樋部64と、トップカバー65とを有している。
【0023】
第1のフィルタ61は、筐体10の通気用開口部11に筐体10の奥行方向Dに傾斜するように取り付けられている。第1のフィルタ61は、疎水性または撥水性ならびに通気性を有するハイドロメッシュ層から成っている。
【0024】
第2のフィルタ62は、第1のフィルタ61上に積層するように取り付けられている。第2のフィルタ62は、吸水性および通気性を有するフォーム層から成っている。
【0025】
比較例として、例えば、ゴアテックス(登録商標)のような疎水性多孔体層(防水透湿膜)は、水の浸入を防ぎ、内部の空気を通す素材であるが、防水性に優れているものの、通気性は必ずしも十分でない場合がある。
【0026】
これに対して、本発明において第1のフィルタ61に用いるハイドロメッシュ層は、防水性および通気性の両点で優れている。ただし、高い水圧がかかると水が通過してしまう可能性がある。その一方で、ハイドロメッシュ層は、水分を表面張力で留めておく性能がある。そのため、本発明においては、第1のフィルタ61の表面に表面張力で留められた水分を、第1のフィルタ61を傾斜をつけて配置することにより、水分を滑り落とし、排水する。
【0027】
尚、第1のフィルタ61を構成するハイドロメッシュ層は、例えばポリエステル繊維を網状にしたものであり、高密度メッシュクロスとも呼ばれる。
【0028】
さらに、高い水圧がかかると水が通過してしまう可能性があるハイドロメッシュ層の上層にフォーム層から成る第2のフィルタ62を積層することにより、水分が第1のフィルタ61に到達するまでに、水圧を十分に減圧するように構成している。尚、副次効果として、フォーム層で塵埃についても侵入を防ぐことができる。
【0029】
尚、第2のフィルタ62を構成するフォーム層は、例えばウレタン発泡体であって、気泡が繋がった連続気泡構造を呈し、気体や液体を蛇行しつつも通過させることができる。
【0030】
したがって、本発明の実施形態による防水構造60は、自然対流で筐体内の熱を排熱する優れた通気性と、到来する水分を減圧し、撥水し、流下して排出する優れた防水性とを両立している。
【0031】
枠部材63は、筐体10の通気用開口部11に取り付けられ、第1のフィルタ61が筐体10の奥行方向Dに傾斜するように支持している。
【0032】
樋部64は、第1のフィルタ61の傾斜下端辺の下方に傾斜下端辺に対して平行に延在している。樋部64は、第1のフィルタ61の表面から流下する水分を受容すると共に延在方向(幅方向W)に排出する。枠部材63は、樋部64を一体に有している。
【0033】
尚、樋部64は、第1のフィルタ61の傾斜下端辺の下方に傾斜下端辺に沿って、即ち、筐体10の幅方向Wに延在するように、設けられている。樋部64は、第1のフィルタ61の表面から流下する水分を受容すると共に延在方向(幅方向W)に排出する。本実施形態では特に、樋部64の底面は、延在方向(幅方向W)の中心を頂点64pとして両端部に向かうにつれてそれぞれ下降するように傾斜している。このように構成することにより、水分は筐体の後方の左右側部から排出されるため、筐体の背面に水分が滞留することない。このため、電子機器の筐体を壁面に取り付けることが可能である。
【0034】
トップカバー65は、第1のフィルタ61および第2のフィルタ62を覆うように筐体10に取り付けられている。トップカバー65は、少なくとも上面に複数の孔部を備えたメッシュ状または格子状を呈している。トップカバー65を設けることにより、第1のフィルタ61および第2のフィルタ62をに異物が刺さったり、いたずらを受けることが防止される。
【0035】
次に、本実施形態による電子機器の通気用開口部の防水構造の動作を説明する。
【0036】
図3(a)に示すように、筐体10の天面に水分WDが降りかかると、水分WDが第2のフィルタ62を通過する際に、フォーム層の内部で拡散し、より細かな水滴となり、水分WDは、減圧もしくは落下速度が低下する。
【0037】
次いで、第2のフィルタ62を浸透し、減圧もしくは落下速度が低下した水分WDは、
図3(b)に示すように、ハイドロメッシュ層から成る第1のフィルタ61の表面に到達する。第1のフィルタ61の表面において、水分WDは表面張力によって撥水される。水滴状となった水分WDは、第1のフィルタ61の傾斜に沿って筐体10の後ろ方向Drかつ下方向Hlに流れる。そして、第1のフィルタ61の傾斜下端辺から流下する水分WDは、樋部64に受容されると共に、樋部64の延在方向(筐体10の幅方向W)に沿って排水される。尚、樋部64は、筐体10の左方向Wlまたは右方向Wrに向かうにつれて下降するように傾斜していてもよい。
【0038】
以上のようにして、筐体10内に水分WDが侵入することが防止される。併せて、到来する塵や異物も、フォーム層から成る第2のフィルタによって筐体10内への侵入が遮断される。
【0039】
一方、筐体10内において発熱するCPU72等から熱伝導を受けた空気は、第1のフィルタ61および第2のフィルタ62を経て、筐体10の外部に排出され、排熱がなされる。
【0040】
本発明による電子機器の通気用開口部の防水構造の適用対象は、以上説明したゲート装置に限定されるものではない。例えば、セルフ給油所システムにおける給油装置等、筐体の通気用開口部に通気性を持たせる一方、防水対策や防塵対策を持たせる必要がある種々の電子機器に、本発明による防水構造は適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
10 筐体
11 通気用開口部
20 タッチパネル付きディスプレイ
30 タッチパッド
40 電源スイッチ
50 スピーカ・マイクロフォン
60 防水構造
61 第1のフィルタ
62 第2のフィルタ
63 枠部材
64 樋部
64p 頂点
65 トップカバー
71 回路基板
72 CPU(Central Processing Unit)