特許第6573370号(P6573370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6573370白金ナノ粒子含有組成物の製造方法及び白金ナノ粒子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573370
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】白金ナノ粒子含有組成物の製造方法及び白金ナノ粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/24 20060101AFI20190902BHJP
   C09K 11/87 20060101ALI20190902BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20190902BHJP
   B82Y 5/00 20110101ALI20190902BHJP
   B82Y 20/00 20110101ALI20190902BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20190902BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20190902BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   B22F9/24 E
   C09K11/87ZNM
   C09K11/08 A
   B82Y5/00
   B82Y20/00
   B82Y40/00
   G01N21/64 F
   B22F1/00 K
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-114261(P2015-114261)
(22)【出願日】2015年6月4日
(65)【公開番号】特開2017-2336(P2017-2336A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】100105175
【弁理士】
【氏名又は名称】山広 宗則
(74)【代理人】
【識別番号】100105197
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 牧子
(72)【発明者】
【氏名】田中 慎一
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−021251(JP,A)
【文献】 特表2008−534784(JP,A)
【文献】 特表2001−508484(JP,A)
【文献】 TANAKA,S et al.,Synthesis of green-emitting Pt8 nanoclusters for biomedical imaging by pre-equilibrated Pt/PAMAM(G4-OH) and mild reduction,OPTICAL MATERIALS EXPRESS,2013年 2月,vol.3,No.2,pp.157-165
【文献】 TANAKA,S. et al.,Fluorescent Platinum nanoclusters: Synthesis, Purification, Characterization, and Application to Bioimaging,Angewandte Chemie International Edition,Wiley-VCH Verlag GmbH & Co.,2010年12月,Vol.50,Issue2,pp.431-435,DOI:10.1002/anie.201004907
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/00−9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
氷冷下において白金イオンと第五乃至第七世代のポリアミドアミンデンドリマーとを反応させ前記白金イオンと前記ポリアミドアミンデンドリマーとの間で化学結合を形成させることで、前記ポリアミドアミンデンドリマー内に前記白金イオンを取り込ませる結合工程と、
前記白金イオンを取り込んだポリアミドアミンデンドリマーをフルクトースで還元することで、前記ポリアミドアミンデンドリマー内において白金ナノ粒子を合成する還元工程と、を備えることを特徴とする白金ナノ粒子含有組成物の製造方法。
【請求項2】
前記結合工程における反応時間を1〜8日としたことを特徴とする請求項1に記載の白金ナノ粒子含有組成物の製造方法。
【請求項3】
前記還元工程を70〜90℃の温度下で行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の白金ナノ粒子含有組成物の製造方法。
【請求項4】
前記還元工程において前記フルクトースを前記白金イオンに対してモル比を基準として20〜100倍の割合で加えることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載の白金ナノ粒子含有組成物の製造方法。
【請求項5】
前記結合工程において前記白金イオンを前記ポリアミドアミンデンドリマーに対してモル比を基準として90〜360倍の割合で加えることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載の白金ナノ粒子含有組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちいずれか一つに記載の前記還元工程で得られた前記白金ナノ粒子を含有する前記ポリアミドアミンデンドリマーから前記白金ナノ粒子を単離及び精製することを特徴とする白金ナノ粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光プローブとして使用できる白金ナノ粒子含有組成物、白金ナノ粒子、及びそれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノマテリアル、光エレクトロニクス、医療等の様々な分野において、ナノ粒子(金属ナノ粒子等)を用いた蛍光プローブの開発が進められている(例えば、特許文献1,2参照)。
特に、医療分野においては特定の標的分子、例えば癌細胞と反応又は結合することによって、高感度に癌細胞を検出することが可能であるので、研究や治療に蛍光プローブは欠かせない。
【0003】
特許文献1に記載の発明は、Si塩化物等をジメチルホルムアミド含有溶媒中で加熱還流して製造するものである。
この製造方法によると、危険性の高い試薬を用いる必要がないだけではなく後処理の必要もなく、さらには粒子径の揃ったナノ粒子蛍光体を大量生産可能である。
【0004】
また、特許文献2に記載の発明は、金属化合物を、タンパク質を含むとともにpH調整された水溶液中で還元して、蛍光体組成物を製造するものである。
この製造方法によると、金属ナノ粒子を含む蛍光体組成物を、製造過程で危険性の高い試薬を用いることなく、大量生産可能である。
また、制御された異なる粒子径を持つ種々の金属ナノ粒子を含む蛍光体組成物を幅広く製造可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5452098号公報
【特許文献2】特開2012−246449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、医療分野で用いられる蛍光プローブに関しては、当然のことながら生体への毒性が無いことが必須であるが、特許文献1に記載の発明は、生体が生存できない有機溶媒中での合成手法であるので、医療分野の蛍光プローブとしては適していない。
また、生体内には可視光を吸収する多様な分子が存在しているため、400〜570nm程度の波長の光は皮膚表面や生体内の分子によって吸収されてしまい、生体の深部からこの波長の蛍光シグナルを観察できないので、癌の診断や幹細胞治療などの高精細な医療診断技術を確立するためには、生体組織に吸収・散乱されることなく生体の深部からでも観察可能な近赤外領域(600〜850nm)に発光波長を有する蛍光プローブでなければならないが、特許文献1に記載の発明は近赤外領域に蛍光特性を持つ蛍光体ではない。
【0007】
また、特許文献2に記載されるような蛍光タンパク質は、数分から1時間程度観察に使用すると退色、つまり蛍光物質としての特性を失ってしまう。仮に、これらの蛍光物質を最も退色しない条件(4℃の暗所)で保管しても1,2ヶ月程度で光学特性(明るさ(輝度))が半分以下になる。
すなわち、この蛍光プローブを長期間の経過観察が必要な癌の転移の検査や診断に利用することは困難である。
【0008】
そこで、本発明の目的とするところは、近赤外領域に蛍光特性を有しつつ生体に対する毒性が低く、しかも長期間退色しない白金ナノ粒子含有組成物の製造方法及び白金ナノ粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の白金ナノ粒子含有組成物(40)の製造方法は、氷冷下において白金イオン(20)と第五乃至第七世代のポリアミドアミンデンドリマー(10)とを反応させ前記白金イオン(20)と前記ポリアミドアミンデンドリマー(10)との間で化学結合を形成させることで、前記ポリアミドアミンデンドリマー(10)内に前記白金イオン(20)を取り込ませる結合工程(100)と、前記白金イオン(20)を取り込んだポリアミドアミンデンドリマー(10)をフルクトースで還元することで、前記ポリアミドアミンデンドリマー(10)内において白金ナノ粒子(30)を合成する還元工程(200)と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の白金ナノ粒子含有組成物(40)の製造方法は、前記結合工程(100)における反応時間を1〜8日としたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載の白金ナノ粒子含有組成物(40)の製造方法は、前記還元工程(200)を70〜90℃の温度下で行うことを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に記載の白金ナノ粒子含有組成物(40)の製造方法は、前記還元工程(200)において前記フルクトースを前記白金イオン(20)に対してモル比を基準として20〜100倍の割合で加えることを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載の白金ナノ粒子含有組成物(40)の製造方法は、前記結合工程(100)において前記白金イオン(20)を前記ポリアミドアミンデンドリマー(10)に対してモル比を基準として90〜360倍の割合で加えることを特徴とする。
【0014】
また、請求項6に記載の前記還元工程(200)で得られた前記白金ナノ粒子(30)を含有する前記ポリアミドアミンデンドリマー(10)から前記白金ナノ粒子(30)を単離及び精製することを特徴とする白金ナノ粒子(30)の製造方法は、請求項1乃至5に記載の前記還元工程(200)で得られた前記白金ナノ粒子(30)を含有する前記ポリアミドアミンデンドリマー(10)から前記白金ナノ粒子(30)を単離及び精製することを特徴とする。
【0017】
ここで、上記括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に掲載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、以下の効果がある。
(1)近赤外領域において蛍光特性を有している
白金ナノ粒子含有組成物や白金ナノ粒子(以下、白金ナノ粒子等)は近赤外領域において蛍光特性を有するので、放出された光が生体組織に吸収・散乱され難い。したがって、生体の深部(数mm〜数10cm)からでも白金ナノ粒子の蛍光を1μm以下の分解能かつ高感度で観察可能である。よって、MRI等の従来の技術に比べて癌の正確な位置を1細胞レベルで特定できるので、初期癌や癌転移の診断が可能となる。
【0019】
また、本発明に係る白金ナノ粒子を太陽電池(ソーラーパネル)にも応用可能である。太陽光には可視光が約50%、近赤外光が約30%含まれているが、本発明に係る白金ナノ粒子等を太陽電池に使用すると、既存の太陽電池がほとんど利用できていない近赤外光も発電に利用できるようになるので、発電効率を飛躍的に向上させることができる。
(2)安全性が高い
また、弱い還元剤であるフルクトースを用いて温和な70〜90℃の温度下で還元しているので、形成された白金ナノ粒子等は細胞毒性が低い。特に、本発明に係る白金ナノ粒子はそのサイズが1.1nm〜1.5nmと小さいので、生体内に長期間内在させても細胞内へ蓄積され難く、金属の蓄積による細胞毒性が極めて低い。
【0020】
また、合成に使用した白金は安定で酸化され難いので、生体内での酸化反応によるイオン化及び生成した金属イオンによる生体毒性の発生のリスクが他の金属材料(鉄、コバルト、パラジウム、ニッケル等)による金属ナノ粒子に比べて低い。
このように毒性が低いということは、生体のみならず環境への影響も小さいということでもある。よって、太陽電池等に本発明に係る白金ナノ粒子等を使用した場合に、故障・破損等による光学物質が漏洩しても環境や人体への影響が小さい。
さらには、化学的に安定しているので、白金ナノ粒子等を光学物質として半永久的に使用可能である。
【0021】
(3)高光安定性を有する
長時間観察に使用しても退色せずその輝度(明るさ)が維持され、また白金ナノ粒子等を室温で半年以上保管してもその光学特性は維持できているので、経過観察が必要な検査や診断に使用可能である。例えば、癌の転移の検査等に有益である。他には、幹細胞を標識し、生体組織へ移植後に長期間経過観察することで、生体内での幹細胞の挙動(移動)や分化・増殖・再生などの過程を評価することができることから、幹細胞による生体組織の再生や治療の過程を可視化・診断できる。
【0022】
なお、本発明の白金ナノ粒子含有組成物の製造方法及び白金ナノ粒子の製造方法のように、白金イオンと第五乃至第七世代のポリアミドアミンデンドリマーとを反応させて蛍光プローブを製造する点は、上述した特許文献1及び2には全く記載されていない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る白金ナノ粒子含有組成物の製造方法を示す概略図である。
図2】本発明の実施形態に係る第五世代のポリアミドアミンデンドリマーを用いて合成した白金ナノ粒子の3D発光スペクトルを示す図である。
図3】第四世代のポリアミドアミンデンドリマーを用いて合成した白金ナノ粒子の3D発光スペクトルを示す図である。
図4図1の結合工程における反応時間を変更した場合の白金ナノ粒子の発光スペクトルを示す図である。
図5図1の結合工程におけるポリアミドアミンデンドリマーと白金イオンの混合割合を変更した場合の白金ナノ粒子の発光スペクトルを示す図である。
図6図1の還元工程におけるフルクトースと白金イオンの混合割合を変更した場合の白金ナノ粒子の発光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施形態)
図1及び図2を参照して、本発明の実施形態に係る白金ナノ粒子30の製造方法を説明する。
この白金ナノ粒子30の製造方法は、結合工程100と、還元工程200と、単離工程を備える。
【0025】
結合工程100では、ガラス製のスクリュー管(10mL)に超純水5mL加えてから、氷冷下(4℃)で鋳型分子である第五世代のポリアミドアミンデンドリマー10(PAMAM G5-OH)0.25μmolへ、ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物(H2PtCl6・6H2O)(0.5M)を90μL加え、そのまま5日間反応させた。
これにより、図1(b)に示したように白金イオン20とポリアミドアミンデンドリマー10との間で化学結合が形成され、ポリアミドアミンデンドリマー10のデンドロン(側鎖)の分子サイズの空孔11に白金イオン20が取り込まれる。
このように低温下で反応させることで白金イオン20がポリアミドアミンデンドリマー10内により多く取り込まれるので、還元工程200における合成効率が高くなる。
【0026】
次に還元工程200では、1Mの濃度で調整したフルクトース(D−Fructose)を白金イオン20に対してモル比で50倍(50:1)となるように加え、80〜90℃の温度下で2週間還元反応させた。
これにより、図1(c)に示したように、ポリアミドアミンデンドリマー10内において白金ナノ粒子30が合成される。
【0027】
最後に単離工程では、白金ナノ粒子30の合成後、超遠心分離機及び近赤外蛍光検出器を備えた高速液体クロマトグラフ(HPLC)を使用して不純物を取り除き、ポリアミドアミンデンドリマー10から白金ナノ粒子30を単離及び精製を行う。
【0028】
このように生成した白金ナノ粒子30に対して励起光として535nmの波長の光を照射したとき、図2に示すように発光波長が600nmの赤色蛍光(近赤外光)を観測できた。
また、本実施形態に係る白金ナノ粒子30の粒子径は1.1〜1.5nm、量子収率が0.5%であることもわかった。
【0029】
なお、第一乃至第三世代のポリアミドアミンデンドリマー10を使用して白金ナノ粒子30を生成した場合、この白金ナノ粒子30は蛍光性を示さなかった。
一方、第四世代のポリアミドアミンデンドリマー10を使用して白金ナノ粒子30を生成した場合、図3に示すように緑色蛍光(発光波長:520nm)の白金ナノ粒子30が生成されていることがわかる。
【0030】
一般的に、金属ナノ粒子の粒子半径が小さくなるほど、発光波長は青色(短波長)側へシフトすること、また世代の大きなデンドリマーを使用することで金属ナノ粒子の粒子径を大きくすることができること、及び以上の結果より、第五世代以上のポリアミドアミンデンドリマー10を使用して生成された白金ナノ粒子30が赤色蛍光性を有することがわかる。
ここで、従来の赤く光る金属ナノ粒子の粒子径は2.3nm程度であることが知られているが、本実施形態に係る白金ナノ粒子30はこれの約半分の大きさであることもわかった。
【0031】
なお、癌細胞に対して白金ナノ粒子30が蛍光プローブとして有用であることが確認でき、かつこの蛍光プローブとして機能させるために必要な白金ナノ粒子30の濃度において、白金ナノ粒子30は生体に使用可能な程度に十分毒性が低いことも確認できた。
【0032】
以上のように製造された白金ナノ粒子30によれば、近赤外領域において蛍光特性を有するので、放出された光が生体組織に吸収・散乱され難い。したがって、生体の深部(数mm〜数10cm)からでも白金ナノ粒子30の蛍光を1μm以下の分解能かつ高感度で観察可能である。よって、MRI等の従来の技術に比べて癌の正確な位置を1細胞レベルで特定できるので、初期癌や癌転移の診断が可能となる。
【0033】
また、弱い還元剤であるフルクトースを用いて温和な80〜90℃の温度下で還元しているので、形成された白金ナノ粒子30等は細胞毒性が低い。特に、本発明に係る白金ナノ粒子30はそのサイズが1.1nm〜1.5nmと小さいので、生体内に長期間内在させても細胞内へ蓄積され難く、金属の蓄積による細胞毒性が極めて低い。
また、合成に使用した白金は安定で酸化され難いので、生体内での酸化反応によるイオン化及び生成した金属イオンによる生体毒性の発生のリスクが他の金属材料(鉄、コバルト、パラジウム、ニッケル等)による金属ナノ粒子に比べて低い。
【0034】
さらに、長時間観察に使用しても退色せずその輝度(明るさ)が維持され、また白金ナノ粒子30等を室温で半年以上保管してもその光学特性は維持できているので、経過観察が必要な検査や診断に使用可能である。例えば、癌の転移の検査等に有益である。他には、幹細胞を標識し、生体組織へ移植後に長期間経過観察することで、生体内での幹細胞の挙動(移動)や分化・増殖・再生などの過程を評価することができることから、幹細胞による生体組織の再生や治療の過程を可視化・診断できる。
【0035】
(比較例)
次に、白金ナノ粒子30の製造時の各条件を振り、その条件により生成された白金ナノ粒子30の蛍光性を評価した。
まず、結合工程100における反応時間を1日刻みで1〜8日の評価を行った。その結果が図4である。
これにより、還元工程200における合成効率は、結合工程100における反応時間が5〜6日でピークを迎えることがわかる。
【0036】
次に、結合工程100におけるポリアミドアミンデンドリマー10と白金イオン20の割合の影響について評価した。
ここでは、白金イオン20をポリアミドアミンデンドリマー10に対して90〜360倍の割合(モル比)で加え、その結果を図5に示した。
ここでは、180倍が最適であることがわかった。
【0037】
次に、還元工程200においてフルクトースを白金イオン20に対して20〜100倍の割合で加え、その結果を図6に示した。
ここでは、50倍が最適であることがわかった。
【0038】
なお、実施形態において、ポリアミドアミンデンドリマー10から白金ナノ粒子30を単離して赤色蛍光性を確認したが、ポリアミドアミンデンドリマー10に包含された状態の白金ナノ粒子30であっても白金ナノ粒子30は赤色蛍光性を示す。
すなわち、ポリアミドアミンデンドリマー10は嵩高い分子であるので生体分子の動的挙動を妨げることが懸念され、生体観察用の蛍光プローブとしては単離した白金ナノ粒子30が適しているが、例えば太陽電池用のように工業的に使用する場合等では本実施形態に係る白金ナノ粒子含有組成物40のまま使用することができる。
工業用の使途は太陽電池増感剤に限られず、蛍光塗料、サインディスプレイ、金属イオンセンサー等、様々なものが考えられる。
【0039】
また、白金イオン20源としてヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物(H2PtCl6・6H2O)を用いたが、ヘキサクロロ白金(IV)酸カリウムであってもよい。
【0040】
また、還元工程200を80〜90℃の温度下で行ったが、これに限られるものではなく、70〜90℃であればよい。
【符号の説明】
【0041】
10 ポリアミドアミンデンドリマー
11 空孔
20 白金イオン
30 白金ナノ粒子
40 白金ナノ粒子含有組成物
100 結合工程
200 還元工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6