【文献】
渡邊 淳司,オノマトペの音象徴性を利用した触り心地の定量化,2011年度人工知能学会全国大会(第25回)論文集 [CD−ROM],2011年 6月 1日,1−2ページ
【文献】
早川 智彦,オノマトペを利用した触り心地の分類手法,日本バーチャルリアリティ学会論文誌,日本,特定非営利活動法人日本バーチャルリアリティ学会,2010年 9月30日,第15巻 第3号,487−490ページ
【文献】
早川 智彦,触相図の音韻論的分析,第14回日本バーチャルリアリティ学会大会 論文集 [DVD−ROM] ,2009年 9月 9日,1−4ページ
【文献】
藤沢 望,擬音語からイメージされる音に関する研究,電子情報通信学会技術研究報告,日本,社団法人電子情報通信学会,2004年 3月23日,Vol.103 No.750,19−24ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態につき説明する。
【0012】
<<イメージ評価>>
以下にイメージ評価のための仕組について説明する。なお、音象徴語をオノマトペを例に説明するが、その他の音象徴語についても適用できることは言うまでもない。
【0013】
日本語には、擬音語・擬態語(以下、「オノマトペ」という)が豊富に存在する。オノマトペは日常の言語活動で広く利用されており、日本語において重要な言語表現手段のひとつであるといえる。
【0014】
また、オノマトペは、簡潔で具体的な描写力を持つ、インパクトのある表現が可能である、語呂がよく記憶に残りやすい等の特長から、広告のコピーや商品名を消費者に印象づけるためにも多く利用されている。またオノマトペは、文学分野においてもさまざまな時代、さまざまなカテゴリの作品で、読者に具体的なイメージを喚起させるために広く使われている。
【0015】
これらの広告分野や文学分野等でオノマトペが利用される際には、一般的には用いられていない創作的なオノマトペが生み出され使用されることがある。このような新たなオノマトペが創作されたときには、この創作者はこのオノマトペが消費者や読者にどのようなイメージで捉えられるかを知りたいという要求がある。ゆえにオノマトペの客観的なイメージを創作者に提示することは、創作者の創作的活動を支援することができると考えられる。
【0016】
オノマトペのイメージを客観的に分析するため、文献1(筧壽雄・田守育啓(編)(1993).『オノマトピア 擬音・擬態語の楽園』,東京:勁草書房.)および文献2(田守育啓・Lawrence Schourup (1999). 『オノマトペ 形態と意味』.くろしお出版)に記載された、オノマトペの表現を特徴付ける独特の音韻形態を体系化した、オノマトペの形態と意味を参照することができる。オノマトペの形態は多様に見えるがほとんどは数音からなる基本形の組み合わせで構成されており、この文献1および文献2では、オノマトペを特徴づける独特の音韻形態を体系化し、それぞれの音韻形態により表わされる独自の意味が提示されている。
【0017】
例えば、「語尾に『り』がつく形態」の意味は「ゆったりした動き」や「動作の完了」であり、「反復の形態」の意味は「音や動作の継続・繰り返し」であることなどが示されている。
【0018】
また、オノマトペでは音韻とその音韻により表される意味との間に何らかの関係性が見られる場合あり、このような現象は音象徴と呼ばれる。文献3(Hamano Shoko(1986).The Sound-symbolic System of Japanese, Doctoral dissertation. Gainesville: University of Florida.)においては、日本語オノマトペについて、オノマトペの中における特定の音韻または音韻の組み合わせの箇所によって表される音象徴的意味を体系化し、あるオノマトペの基本的な音象徴的意味はそのオノマトペの形態と音韻の構成から予測できることを示している。
【0019】
さらに文献4(藤沢望・尾畑文野・高田正幸・岩宮眞一郎(2006).2モーラの擬音語からイメージされる音の印象.『日本音響学会誌』,62(11),pp.774-783.)においては、評価実験により、各音韻特性要素の有無がオノマトペの印象に与える影響を数値化し、この数値の線形和で当該オノマトペのイメージが決定されると仮定することで、オノマトペの音韻と印象評価値との関係をモデル化している。これらの文献1〜4を参照することにより、オノマトペの客観的なイメージを知ることができる。
【0020】
しかしながら、創作したオノマトペを、上記の非特許文献に記載された情報に基づいてどの形態に属するかを分析し、その意味やイメージを特定する作業は煩雑であり、これらの処理を容易に実行可能な技術が望まれていた。
【0021】
従来の擬音語を分析する装置として文献5(特許第2897701号公報)に示す効果音検索装置があるが、この発明の技術では入力した擬音語文字列から一文字または文字列からなる音韻情報を取り出すことで擬音語の形態を分析することは行われるが、この形態の分析は効果音を検索するためのものであり、さらにこれらの意味やイメージに関する情報を取得することは行われていなかった。
【0022】
そこで、オノマトペの客観的なイメージの情報を提示するオノマトペのイメージ評価システム、イメージ評価装置、およびイメージ評価用プログラムを提供する。
【0023】
<オノマトペのイメージ評価システムの構成>
本実施形態のオノマトペのイメージ評価システムP1は、
図1に示すように、記憶装置P2と、ユーザインタフェースP3と、オノマトペのイメージ評価装置P4とを備える。
【0024】
記憶装置P2は、音韻形態データベース記憶部P21と、イメージデータベース記憶部P22とを有する。
【0025】
音韻形態データベース記憶部P21は、オノマトペの音韻形態を、音韻の要素や語尾等により解析するための音韻形態解析情報と、この音韻形態解析情報により解析された音韻形態を音素表記するための音素表記情報とを格納した、音韻形態データベースP21aを記憶する。
【0026】
図2は音韻形態データベースP21aの一例であり、音韻形態解析情報として「母音;V」、「子音;C」、「促音『っ』;Q」、「撥音;N」、「長音;R」、「(語末の)『り』;ri」、「濁音・半濁音」、「反復」等が記憶され、この「母音」の音素表記情報として「/a/,/i/,/u/,/e/,/o/」、「子音」の音素表記情報として「/k/,/g/,/s/,/z/,/t/,/d/,/n/,/h/,/b/,/p/,/m/,/r/,/w/」、「拗音つき子音」の音素表記情報として「/ky/,/gy/,/sy/,/zy/,/ty/,/dy/,/ny/,/hy/,/by/,/py/,/my/,/ry/」、「促音『っ』」の音素表記情報として「/Q/」、「撥音」の音素表記情報として「/N/」、「長音」の音素表記情報として「/R/」、「(語末の)『り』」の音素表記情報として「/ri/」が格納されている。イメージデータベース記憶部P22は、定性イメージリストP22aと、定量イメージテーブルP22bとを記憶する。
【0027】
定性イメージリストP22aは、既知の確立された情報により、音韻形態ごとのイメージを示す語句をリスト化したものである。
【0028】
図3A、
図3Bおよび
図4は定性イメージリストP22aの一例であり、
図3Aおよび
図3Bは音韻形態「母音」、「子音」に関する各音韻形態のイメージを示す語句のリストである。また、
図4は、音韻形態「(語末の)『り』」、「促音『っ』」、「長音」、「反復」のイメージを示す語句のリストである。
【0029】
定量イメージテーブルP22bは、評価実験により得られた、音韻形態ごとに、各音韻形態の有無がオノマトペのイメージに与える影響の尺度を、対照的な意味を持つ形容詞対ごとに数値化したイメージ評価値を格納するテーブルである。この形容詞対ごとのイメージ評価値は、認知実験を行うことにより追加や修正が可能なものである。
【0030】
図5Aおよび
図5Bは定量イメージテーブルP22bの一例であり、
図5Aは音韻形態「母音」、「撥音」、「促音『っ』」、および「長音」に関する、15組の対照的な意味を持つ形容詞対ごとのオノマトペのイメージに与える影響の尺度を数値で示したイメージ評価値を格納する。また、
図5Bは音韻形態「子音」、「濁音・半濁音」、「拗音」に関する、同様の15組の形容詞対ごとのオノマトペのイメージに与える影響の尺度を数値で示したイメージ評価値を格納する。なお、このイメージ評価値は2モーラのオノマトペについて評価した既知の相対的な数値である。「モーラ」とは音節単位を表し、基本的に一母音と一子音との組み合わせにより「1モーラ」が構成される。
【0031】
ユーザインタフェースP3は、ユーザにより操作され評価処理対象のオノマトペを入力する入力インタフェースP31と、後述するイメージ評価装置P4の出力情報生成部P45で生成される出力情報を、ユーザに提示するために出力する出力インタフェースを有する出力インタフェースP32とを有する。
【0032】
オノマトペのイメージ評価装置P4は、音韻形態解析部P41と、定性イメージ評価部P42と、文書情報生成部P43と、定量イメージ評価部P44と、出力情報生成部P45とを有する。
【0033】
音韻形態解析部P41は、ユーザインタフェースP3の入力インタフェースP31から入力されたオノマトペの音韻形態を、記憶装置P2に記憶された音韻形態データベースP21aに記憶された音韻形態解析情報に基づいて解析し、さらに当該オノマトペを構成する音素を特定して音韻形態データベースP21aに記憶された音素表記情報に従って表記する音素表記情報を生成する。
【0034】
定性イメージ評価部P42は、音韻形態解析部P41において生成された音素表記情報で示される各音韻形態のイメージを示す語句を、定性イメージリストP22aを参照して特定し、特定した複数の語句を当該オノマトペの定性的なイメージ評価情報として取得する。
【0035】
文書情報生成部P43は、定性イメージ評価部P42において取得した定性的なイメージ評価情報から、当該オノマトペのイメージを示す文書情報を生成する。
【0036】
定量イメージ評価部P44は、音韻形態解析部P41において生成された音素表記情報で示される各音韻形態の、予め設定された形容詞対ごとのイメージ評価値を定量イメージテーブルP22bを参照して特定する。また、特定した各音韻形態の形容詞対ごとのイメージ評価値から、これらの形容詞対ごとの当該オノマトペのイメージ評価値を、当該オノマトペの定量的なイメージ評価情報として算出する。
【0037】
出力情報生成部P45は、文書情報生成部P43で生成されたオノマトペのイメージを示す文書情報と、定量イメージ評価部P44で算出されたオノマトペの定量的なイメージ評価情報とを出力するための出力情報を生成する。
【0038】
<一実施形態によるオノマトペのイメージ評価システムの動作>
次に、本実施形態によるオノマトペのイメージ評価システムP1を利用して、ユーザによって入力されるオノマトペのイメージ評価情報を表示させるときの、オノマトペのイメージ評価装置の動作について
図6のフローチャートを参照して説明する。
【0039】
まず、ユーザの操作により、ユーザインタフェースP3の入力インタフェースP31から評価処理対象のオノマトペが入力されると(ステップS1)、音韻形態解析部P41において、記憶装置P2に記憶された音韻形態データベースP21aに記憶された音韻形態解析情報に基づいて当該オノマトペの音韻形態が解析されるとともに、当該オノマトペを構成する音素が特定され音韻形態データベースP21aに記憶された音素表記情報に従って表記する音素表記情報が生成される(ステップS2)。
【0040】
例えば、ここで評価処理対象のオノマトペとして「さらっさらり」が入力されると、この「さらっさらり」の音韻形態が音韻形態解析情報に基づいて「CVCVQCVCVri」であることが解析され、さらに音素記号情報として「/s/ /a/ /r/ /a/ /Q/ /s/ /a/ /r/ /a/ /ri/」が生成される。
【0041】
次に、音韻形態解析部P41において生成された音素表記情報で示される各音韻形態ごとのイメージを示す語句が、定性イメージリストP22aが参照されて特定され、特定された複数の語句が当該オノマトペの定性的なイメージ評価情報として取得される(ステップS3)。なお、本実施形態では各音韻形態ごとのイメージを示す語句として、定性イメージリストP22a中から任意に選択された代表語のみが複数取得されているが、語句の取得方法はこれに限定されるものではなく、ランダムに選択された語句が取得されるようにしたり、また全ての語句が取得されるようにしてもよい。
【0042】
本実施形態においては例えば上記の音素記号情報「/s/ /a/ /r/ /a/ /Q/ /s/ /a/ /r/ /a/ /ri/」の各音韻形態ごとのイメージを示す語句としては、
図3A、
図3Bおよび
図4が参照されることにより、「静かに流れる」、「平らな」、「急に終わる」、「ぴんと張った」、「回るような」、「ゆったりした動き」などの代表語が特定され、これらの語句がオノマトペ「さらっさらり」の定性的なイメージ評価情報として取得される。
【0043】
次に、文書情報生成部P43により、定性イメージ評価部P42において取得された定性的なイメージ評価情報から、当該オノマトペのイメージを示す文書情報が生成される(ステップS4)。
【0044】
例えば、上記のオノマトペ「さらっさらり」のイメージを示す文書情報としては、「静かに流れ、平らで、急に終わる印象です。静かに流れ、ぴんと張った、回るような、ゆったりした印象です。」が生成される。
【0045】
また、ステップS2で生成された音素記号情報で示される各音韻形態の、予め設定された形容詞対ごとのイメージ評価値が、定量イメージテーブルP22bが参照されて特定される(ステップS5)。
【0046】
例えば、上記の音素記号情報「/s/ /a/ /r/ /a/ /Q/ /s/ /a/ /r/ /a/ /ri/」で示される各音韻形態の形容詞対「きれいな−きたない」のイメージ評価値は、
図5Aおよび
図5Bが参照されることにより、/s/は0.34、/a/は0、/r/は1.56、/Q/は−0.20、/ri/は1.56であることが特定される。
【0047】
次に、特定された各音韻形態の形容詞対ごとのイメージ評価値から、これらの形容詞対ごとの当該オノマトペのイメージ評価値が、当該オノマトペの定量的なイメージ評価情報として算出される(ステップS6)。このオノマトペのイメージ評価値は、下記の式(1)により2モーラに補正されて算出される。
【0048】
【数1】
ここで、Yは算出されるオノマトペのイメージ評価値であり、X1〜X5は各音韻形態の形容詞対のイメージ評価値であり、Moraは当該オノマトペのモーラ数である。
【0049】
次に、出力情報生成部P45において、ステップS2で解析された音韻形態および生成された音素表記情報と、ステップS4で生成された当該オノマトペのイメージを示す文書情報と、ステップS6で算出された当該オノマトペの定量的なイメージ評価情報としてのオノマトペのイメージ評価値とから、これらの情報を当該オノマトペのイメージ評価情報として出力するための出力情報が生成される。生成された出力情報はユーザインタフェースP3に送出され、出力インタフェースP32から出力される(ステップS7)。
【0050】
出力インタフェースP32としての表示画面に出力された、オノマトペ「さらっさらり」のイメージ評価情報の例を
図7に示す。
【0051】
図7においては、表示画面P7上に、オノマトペ「さらっさらり」の音韻形態および音素表記情報P71と、イメージを示す文書情報P72と、イメージ評価値をグラフ化した定量的なイメージ評価情報P73とが同時に表示されている。
【0052】
図7は前述した15尺度の形容詞対(
図5A、
図5B)に基づくものであるが、形容詞対を更に多くすることで、より詳細なイメージ評価を行うことができる。
図8A〜
図8Dは、43尺度の形容詞対によるオノマトペのイメージ評価の例を示している。
【0053】
以上の本実施形態によれば、ユーザが評価処理対象のオノマトペを入力することにより、当該オノマトペのイメージを示す文書情報と形容詞対ごとに示されたイメージ評価値のグラフとが同一画面上に表示された評価情報を出力させることができ、ユーザは所望のオノマトペの客観的なイメージの情報を容易に得ることができる。
【0054】
なお、本実施形態においては、入力されたオノマトペの音韻形態を音韻形態解析部において解析する際に、予め記憶装置に記憶された音韻形態データベースの音韻形態解析情報に基づいて解析する場合について説明したが、音韻形態データベースを設けず、音韻形態解析部が解析用の計算式を保持しこれを利用することにより解析するようにしたり、ユーザがオノマトペを入力する際に解析に必要な情報も入力するようにしてもよい。
【0055】
また、本実施形態のオノマトペのイメージ評価装置の音韻形態解析部、定性イメージ評価部、文書情報生成部、定量イメージ評価部、および出力情報生成部の各機能をプログラム化してコンピュータに組み込むことにより、当該コンピュータをオノマトペのイメージ評価装置として構築することも可能である。
【0056】
<<感覚関連性分布図生成>>
以下に音象徴語の感覚関連性分布図生成のための仕組について説明する。なお、音象徴語をオノマトペとし、質感の表現する場合を例に説明するが、その他の音象徴語や感覚についても適用できることは言うまでもない。
【0057】
<構成>
図9は本発明の一実施形態にかかる感覚関連性分布図生成装置1の構成例を示す図である。
図9において、感覚関連性分布図生成装置1は、機能部として、インタフェース部11とオノマトペ解析部12と作図部13とを備えている。これらの機能部は、感覚関連性分布図生成装置1を構成するコンピュータのCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のハードウェア資源上で実行されるコンピュータプログラムによって実現されるものである。各部は、単一のコンピュータ上に配置される必要はなく、必要に応じて複数のコンピュータ上に分散される形態であってもよい。コンピュータプログラムは、CD−ROM等の記録媒体からインストールされたものであってもよいし、インターネット等を介して通信可能に接続されたサーバ(図示せず)の記憶装置からダウンロードされ、インストールされたものであってもよい。
【0058】
また、感覚関連性分布図生成装置1は、処理に際して参照・更新するデータベースとして、形態データベース14と定量評価データベース15と関連性データベース16とを備えている。これらのデータベースは、感覚関連性分布図生成装置1内のHDD(Hard Disk Drive)等の記憶媒体上の記憶領域に所定のデータを体系的に保持するものである。これらのデータベースは、単一のコンピュータ上に配置される必要はなく、必要に応じて複数のコンピュータ上に分散される形態であってもよい。
【0059】
インタフェース部11は、グラフィカルユーザインタフェース部111を備え、ユーザUとの間で対話的に情報の入力(オノマトペの入力等)および出力(分布図の画面表示等)を行う機能を有している。なお、画面表示とは別に、プリンタ等への分布図の出力(用紙への分布図の出力)を行うこともできる。
【0060】
オノマトペ解析部12は、解析・評価管理部121と形態解析部122と定量評価部123とを備え、ユーザUから入力されたオノマトペを複数の形容詞評価尺度について定量評価を行う機能を有している。解析・評価管理部121は、オノマトペ解析部12における総合的な管理を行う機能を有している。形態解析部122は、ユーザUから入力されたオノマトペの文字列から、形態データベース14を参照して形態解析を行い、オノマトペの内部表現であるオノマトペ表現データを生成する機能を有している。定量評価部123は、オノマトペ表現データに基づき、定量評価データベース15を参照して複数の形容詞対評価尺度に対する評価値を算出する機能を有している。形態データベース14および定量評価データベース15のデータ構造およびそれらを用いた処理の詳細については後述する。
【0061】
作図部13は、作図管理部131と主成分分析・位置配置部132と関連度領域配置部133と追加位置配置部134とを備え、複数のオノマトペについての複数の形容詞評価尺度に対する評価値を主成分分析して得た上位の主成分を軸とした分布図上に、形容詞対の位置記号、オノマトペの位置記号、および、関連度領域(例えば、視覚が優位な領域、触覚が優位な領域等)を配置する機能を有している。位置記号は、形容詞対またはオノマトペの分布図上での相対的な位置を示す点や見出し文字列等であり、形容詞対については、対峙する2つの形容詞の位置を示す点等をつなぐ線も含まれる。
【0062】
作図管理部131は、作図部13における総合的な管理を行う機能を有している。主成分分析・位置配置部132は、複数のオノマトペについての複数の形容詞評価尺度に対する評価値を主成分分析し、上位の主成分を軸とした分布図上に形容詞対の位置記号とオノマトペの位置記号を配置する機能を有している。関連度領域配置部133は、分布図の各位置について主成分得点を取得し、取得した主成分得点に基づいて形容詞対の評価値を算出し、算出した評価値と形容詞対毎の感覚関連度とに基づいて各位置の感覚毎の関連度を算出し、所定値を境界とする領域を分布図上に配置する機能を有している。関連性データベース16のデータ構造およびそれらを用いた処理の詳細については後述する。
【0063】
図10は感覚関連性分布図生成装置1のハードウェア構成例を示す図であり、一般的なコンピュータの構成である。
図10において、感覚関連性分布図生成装置1は、システムバス1001に接続されたCPU(Central Processing Unit)1002、ROM(Read Only Memory)1003、RAM(Random Access Memory)1004、NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)1005を備えている。また、感覚関連性分布図生成装置1は、I/F(Interface)1006と、I/F1006に接続された、I/O(Input/Output Device)1007、HDD(Hard Disk Drive)1008、NIC(Network Interface Card)1009と、I/O1007に接続されたモニタ1010、キーボード1011、マウス1012等を備えている。I/O1007にはCD/DVD(Compact Disk/Digital Versatile Disk)ドライブ等を接続することもできる。
【0064】
<動作>
図11は上記の実施形態の処理例を示すフローチャートであり、ユーザUから入力された複数のオノマトペから感覚関連性分布図を生成して提示する処理の例を示すものである。
【0065】
図11において、インタフェース部11のグラフィカルユーザインタフェース部111は、ユーザUから対象の複数のオノマトペを入力すると、入力したオノマトペをオノマトペ解析部12に引き渡す(ステップS11)。
【0066】
オノマトペ解析部12の形態解析部122は、形態データベース14を参照して各オノマトペを形態解析し、オノマトペ表現データを生成する(ステップS12)。
【0067】
図12は形態データベース14のデータ構造例を示す図であり、「ひらがな・カタカナ」と「音素」と「形態」とが対応付けて保持されている。なお、母音、子音、小母音の音素の例を示しているが、その他に、拗音付き子音(/ky/等)、促音(/Q/)、撥音(/N/)、長音(/R/)、「り」(/ri/)等が存在する。
【0068】
オノマトペ解析部12の形態解析部122は、入力された各オノマトペの文字列を先頭から形態データベース14の形態データと照合し、音素および形態を得る。
【0069】
また、形態解析部122は、
図13に示すようなルールに従い、オノマトペの1モーラ目と2モーラ目について「子音」「濁音」「拗音」「母音」「小母音」「特殊音(2モーラ目は「特殊語尾」)」について図示のカテゴリのいずれか(例えば、「濁音」については「なし」「濁音」「半濁音」のいずれか)および反復の有無を解析し、
図14に示すような形式のオノマトペ表現データを生成する。なお、「モーラ」とは、日本語リズムにおける拍数を指すものである。例えば、「ズキッ」というオノマトペの場合、「ズ」が第1モーラ、「キッ」が第2モーラに該当する。
【0070】
次いで、
図11に戻り、オノマトペ解析部12の定量評価部123は、形態解析部122により生成された各オノマトペ表現データに基づき、定量評価データベース15を参照して定量評価(複数の形容詞対評価尺度に対する評価値の算出)を行う(ステップS13)。
【0071】
図15は定量評価データベース15のデータ構造例を示す図であり、評価尺度となる形容詞対(「暖かい−冷たい」等)に対し、オノマトペ表現データの項目(アイテム)に対応した数値が設定されている。なお、図示のデータは一部を示したものであり、評価尺度や項目は図示のものに限られず、2モーラ目についての数値も存在する。評価尺度としては、
図8A〜
図8Dに示した43尺度の形容詞対を用いることができる。定量評価データは、想定される音素をカバーする複数のオノマトペについて、人間による心理実験を行い、各評価尺度に対する感じ方の回答から数量化理論I類等の手法により各項目のカテゴリによる影響を数値化したものである。
【0072】
そして、定量評価部123は、
図16Aに示すような、音韻の項目に対応した変数X
1〜X
13の値を
図15に示した定量評価データから評価尺度毎に取得し、
図16Bに示すような数式により評価尺度毎の評価値Yを算出する。nはモーラ数であり、Constは定数項である。例えば、評価尺度「暖かい−冷たい」につき、1モーラ目の子音が「カ行」である場合、変数X
1は「0.16」となる。なお、数式において、モーラ数nで割り、「×2」としているのは、2モーラ以上で構成されるオノマトペが入力された場合でも、2モーラと同等に正規化され、出力される評価値の範囲を補正するためである。
【0073】
次いで、
図11に戻り、作図部13の主成分分析・位置配置部132は、複数のオノマトペについての複数の形容詞対評価尺度に対する評価値を主成分分析する(ステップS14)。主成分分析は、直交回転を用いて変数間に相関がある元の観測値を、相関の無い主成分とよばれる値に変換するための数学的な処理であり、多変量データを統合し、新たな総合指標を作り出すために用いられる。
【0074】
図17A〜
図17Cは主成分分析の結果の例を示す図であり、
図17Aでは、主成分PC1〜PC8につき、固有値と寄与率と累積寄与率が示されている。なお、主成分分析においては、各主成分についての固有ベクトルも併せて取得される。固有値は、各主成分が元の尺度何個分に相当する情報量を持っているかを意味する。寄与率は、固有値を元の尺度の数で割った値であり、各主成分が持つ情報量の全体における割合を示している。累積寄与率は、寄与率の高い順に寄与率を累積したものである。この例では、第2主成分までの累積寄与率は77%であるため、第1主成分と第2主成分を用いることで、2次元の分布図を作成することが可能であり、作成される分布図は全体の77%の情報を持っていると考えることができる。なお、分布図の表示上の工夫は必要となるが、第3主成分以下も用いることにより、3次元以上の分布図とすることもできる。
【0075】
図17Bは、評価尺度の各形容詞対について、第1・第2主成分に対する主成分負荷量の例を示している。主成分負荷量は、各形容詞対と主成分の相関係数である。この値から、各形容詞対と各主成分がどの程度関連しているかを知ることができる。
【0076】
図17Cは、オノマトペについて、第1・第2主成分に対する主成分得点の例を示している。主成分得点は、各形容詞対と主成分との相関を表しており、オノマトペと主成分の関係性を示している。
【0077】
次いで、
図11に戻り、作図部13の主成分分析・位置配置部132は、主成分分析の結果に基づき、上位の所定数の主成分を軸とした分布図上に、形容詞対の主成分負荷量に基づいて形容詞対の位置記号を配置し、オノマトペの主成分得点に基づいてオノマトペの位置記号を配置する(ステップS15)。
【0078】
図18は配置後の形容詞対の位置の表示例を示す図であり、第1主成分と第2主成分を用い、横軸を第1主成分に対する主成分負荷量とし、縦軸を第2主成分に対する主成分負荷量とし、各形容詞対を構成する形容詞を両端に、位置をプロットしたものである。
【0079】
図19は配置後のオノマトペの位置の表示例を示す図であり、第1主成分と第2主成分を用い、横軸を第1主成分に対する主成分得点とし、縦軸を第2主成分に対する主成分得点とし、各オノマトペの位置をプロットしたものである。なお、ここでは繰り返しであるABAB型(「ふわふわ」等)のオノマトペに限ったため、見やすさを考慮し、繰り返さずに表記している(例えば、オノマトペ「ふわふわ」は「ふわ」と表記)。
【0080】
図20は形容詞対の位置とオノマトペの位置とを重ねて表示した例を示す図であり、
図18と
図19の各軸の最大値が同等となるようにスケールを合わせている。
【0081】
次いで、
図11に戻り、作図部13の関連度領域配置部133は、分布図上の所定間隔の各位置について主成分得点を取得(2次元の分布図の場合は横軸方向および縦軸方向の座標位置から主成分得点を直接に取得)し、取得した主成分得点に基づいて各形容詞対に対する評価値を算出し、算出した評価値と形容詞対毎の感覚関連度とに基づいて当該位置の感覚毎の関連度を算出し、所定値を境界とする領域を分布図上に配置する(ステップS16)。
【0082】
図21は感覚関連度の算出式の例を示す図である。先ず、分布図上の所定間隔の各位置の座標位置に対応する主成分得点に各主成分の固有ベクトルを乗算したものの総和をとり、これに評価尺度の形容詞対毎の標準偏差を乗算し、評価尺度の形容詞対毎の平均を加えることにより、評価値を得る。
図21には各形容詞対に対する標準偏差と平均の例を示してある。次いで、このようにして算出した各形容詞対の評価値の絶対値に各形容詞対の感覚関連度を乗算して総和をとることにより、感覚毎の感覚関連度を算出する。なお、評価値を絶対値にしているのは、形容詞対の両端において感覚関連度は高く作用するからである。各形容詞対の感覚関連度は関連性データベース16から取得する。
【0083】
図22は関連性データベース16のデータ構造例を示す図であり、各形容詞対に対して、この例では視覚と触覚の感覚関連度を保持している。関連性データは、各形容詞対について、人間による心理実験を行い、各形容詞対のこの例では視覚または触覚に対する感じ方の回答から数量化理論I類等の手法により各感覚への影響を数値化したものである。
【0084】
次いで、関連度領域配置部133は、感覚毎の感覚関連度から、所定の閾値(例えば、25パーセンタイル)となる領域の境界を特定し、分布図上に配置する。
【0085】
図23A〜
図23Cは配置後の視覚と触覚の関連度領域の表示例を示す図であり、
図23Aは視覚が優位となる視覚関連領域(格子がある部分が視覚関連領域)を示し、
図23Bは触覚が優位となる触覚関連領域(格子がある部分が触覚関連領域)を示し、
図23Cは両者を重ねて示したものである。
図23Cにおいて、領域Iは、視覚・触覚両方の関連を捉えられず、現時点ではどちらかに分類することはできない領域である。領域IIは、触覚に強い関連を持つ領域である。領域IIIは、視覚に強い関連を持つ領域である。領域IVは、視覚・触覚両方に強い関連を持つ領域である。なお、領域の違いを格子の有無で示したが、実際の画面や用紙等への表示については、色の違いやハッチング模様等の違いにより領域を区別して表示することができる。また、質感に対応する感覚として視覚と触覚を取り上げたが、他の感覚についても同様に可視化することが可能である。
【0086】
図24は形容詞対およびオノマトペの位置と視覚および触覚の関連度領域とを重ねて表示した例を示す図である。すなわち、
図20と
図23Cとを重ねて表示したものであり、最終的な分布図である。この分布図を利用し、所望のオノマトペがどの位置に存在するかを見ることで、そのオノマトペの持つ質感印象と視覚・触覚との関連性を把握することができる。例えば、「つやのある−つやのない」・「なめらかな−粗い」・「凸凹な−平らな」という次元で特徴付けられるオノマトペは視覚優位であり、「滑る」と評価されるオノマトペは触覚優位であることが分かる。従って、オノマトペを用いて質感に対する要求がなされた場合、分布図によりそのオノマトペの意味する可能性を理解することが容易となり、要求に対する対策を漏れなく施すことが可能となる。
【0087】
次に、
図25は上記の実施形態の他の処理例を示すフローチャートであり、既に生成された分布図に新たなオノマトペの位置記号を追加配置する処理の例を示すものである。
【0088】
図25において、インタフェース部11のグラフィカルユーザインタフェース部111は、ユーザUから任意のオノマトペを入力すると、入力したオノマトペをオノマトペ解析部12に引き渡す(ステップS21)。なお、オノマトペの入力はキーボード等による文字列の入力を想定しているが、音声入力機能を用い、音声で入力して文字列を取得してもよい。
【0089】
オノマトペ解析部12の形態解析部122は、形態データベース14を参照してオノマトペを形態解析し、オノマトペ表現データを生成する(ステップS22)。
【0090】
次いで、オノマトペ解析部12の定量評価部123は、形態解析部122により生成されたオノマトペ表現データに基づき、定量評価データベース15を参照して定量評価(複数の形容詞評価尺度に対する評価値の算出)を行う(ステップS23)。
【0091】
次いで、作図部13の追加位置配置部134は、定量評価結果と各形容詞対の主成分負荷量からオノマトペの主成分得点を算出し(ステップS24)、算出した主成分得点に基づいてオノマトペの位置記号を配置する(ステップS25)。
【0092】
これにより、分布図上にないオノマトペを用いた要求がされた場合、その位置が明確となり、要求の意味するところを正確に理解することが可能となる。
【0093】
また、
図8A〜
図8Dに示したイメージ判定の画面に分布図(
図18〜
図20、
図23A〜
図23C、
図24のいずれかまたは複数の組み合わせ)の画面を並べて表示し、ユーザに入力された判定対象のオノマトペのイメージの詳細と分布図上での位置が一望できるようにすることで、より理解しやすいものとすることができる。
【0094】
<総括>
以上説明したように、本実施形態によれば、音象徴語の複数の感覚に対する関連性を可視化し、音象徴語の理解を支援することができる。
【0095】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範な趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更を加えることができることは明らかである。すなわち、具体例の詳細および添付の図面により本発明が限定されるものと解釈してはならない。
【0096】
本国際出願は、2014年8月1日に出願した日本国特許出願第2014−157793号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2014−157793号の全内容を本国際出願に援用する。