(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記機器支持具の取付部は、前記一対のビスのうち一方のビスの取着位置は変更することなく他方のビスの取着位置のみを変更することで、前記一対のビスのピッチを、前記配線機器類のビス用通孔の異なるピッチに対応可能とする位置にも、前記他方のビスを取着可能なビス下孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の配線機器類の取着装置。
前記取付部のビス孔は、前記タッピングビスが前記隙間を狭めるように更にねじ込まれた際に自身でねじ切りしながら螺進する箇所が奥側に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の機器支持具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の支持具は、取付部のビス孔及び感知器のベースのビス用通孔にビスを挿通してナット締めしたり、タッピングビスを取着して感知器を取付部の下面に固定していた。ここで、感知器等の配線機器類の取付けは、一般に、建物の天井等での高所作業となる。このため、配線機器類を取付けるには、配線機器類、支持具に加え、ビスを手で保持して高所に登り、ビスを支持具のビス孔及び配線機器類のビス用通孔に位置合わせして挿通し、ねじ込む操作が必要となるので、大変面倒で作業し難く時間もかかっていた。
【0005】
そこで、本発明は、配線機器類を建物の構造物に簡単に取付けることができる配線機器類の取着装置、機器支持具、及び配線機器類の機器支持具への取着方法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の配線機器類の取着装置は、感知器等の配線機器類と、構造物に固定される固定部及び前記配線機器類が取付けられる取付部とを備えた機器支持具と、からなり、前記配線機器類は、一対のビスにより取付けられるためのビス用通孔を少なくとも一対有し、該通孔は、同心円状に延びる長孔であって、その一部に前記ビスの頭部が通過可能な拡大部を有する。そして、前記取付部は、前記一対のビスが取着されており、該ビスが取着された面と該ビスの頭部との間に、前記通孔の拡大部を通過させるとともに長孔の弧状に沿って回動操作することにより前記配線機器類が引掛け可能となる隙間が設けられたものである。
【0007】
更に、請求項1の配線機器類の取着装置は、特に、機器支持具の取付部に、異なるピッチのビス用通孔を有する前記配線機器類に対応すべく、取着されている前記一対のビスの対方向の軸心上に該ビスを取着可能なビス下孔が形成されている。
請求項2の配線機器類の取着装置は、特に、機器支持具の取付部に、一対のビスのうち一方のビスの取着位置は変更することなく他方のビスの取着位置のみを変更することで、
前記一対のビスのピッチを、前記配線機器類のビス用通孔の異なるピッチに対応可能とする位置にも、前記他方のビスを取着可能なビス下孔が形成されている。
【0008】
請求項3の機器支持具は、構造物に固定される固定部と、感知器等の配線機器類が取付けられる取付部と、を備えたものであって、前記取付部は、前記配線機器類を取付けるビスが取着されるビス孔が設けられ、該ビス孔には、前記ビスが、その頭部と該ビスが取着される面との間に隙間を設けて取着されたものである。
【0009】
請求項4の機器支持具は、特に、取付部が、合成樹脂製であり、取付部に取着されたビスは、タッピングビスである。
請求項5の機器支持具は、特に、取付部のビス孔が、タッピングビスが前記隙間を狭めるように更にねじ込まれた際に自身でねじ切りしながら螺進する箇所が奥側に形成されている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1
及び請求項3の発明は、機器支持具の取付部に、一対のビスが取着されており、該ビスが取着された面と該ビスの頭部との間には、配線機器類のビス用通孔の拡大部を通過させるとともに長孔の弧状に沿って回動操作することにより前記配線機器類がビスに引掛け可能となる隙間が設けられているので、機器支持具のビスが取着された面と該ビスの頭部との間の隙間に配線機器類を挿入してビスに引掛けることができるとともに、その後、そのままビスを少し締め付けて増し締めするだけで配線機器類を支持具に取付けることができる。したがって、特に建物の高所での配線機器類の取付け作業において、手でビスを保持する必要がないとともに、ビスを支持具のビス孔及び配線機器類のビス用通孔に位置合わせして挿通する必要もなく、配線機器類を建物の構造物に簡単かつ安全に取付けることができる。
【0012】
また、請求項1の発明は、取着されている一対のビスの対方向の同一軸心上に、配線機器類の異なるピッチのビス用通孔に対応してビスを取着可能なビス下孔が形成されているので、機器支持具に異なるピッチのビス用通孔を有する配線機器類を取付けることができる。そして、ビス下孔を一対のビス孔の対方向の軸芯上に直線的に見栄え良く配置することができ、また、機器支持具を細幅に形成することができる。
請求項2の発明は、配線機器類の異なるピッチのビス用通孔に対応して一対のビスを機器支持具の取付部に取着するときに、取着されている一対のビスのうち一方のビスは取着位置を変更することなく他方のビスの取着位置のみを変更すればよいから、一方のビスを取着する手間が省ける。
【0013】
請求項4の発明は、取付部が合成樹脂製であるから、取付部にケーブルが挿通される挿通孔が形成されている場合に、ケーブルが移動時に挿通孔の周縁部に擦れて傷付くのを防止できる。また、取付部に取着されたビスは、タッピングビスであるから、強固に取付部に取着することができ、ビスが取着された面とビスの頭部との隙間を一定間隔に安定して
維持することができるとともに、配線機器類を取付部に強固に取付けることができる。
請求項5の発明は、タッピングビスが自身でねじ切りしながら螺進する箇所が取付部のビス孔の奥側に形成されているから、配線機器類を取付部に強固に安定して取付けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態の機器支持具及び配線機器類の取着装置を図に基づいて説明する。なお、本実施形態では、
図1の上下方向を、機器支持具及び配線機器類の取着装置の上下方向として説明する。
【0016】
図1乃至
図3において、機器支持具11は、感知器、配線ボックス等の配線機器類を建物の壁面、吊りボルト、形鋼等の構造物に取付けるために使用されるものであり、本体21に一対のビス51,51が取着されて構成されている。本体21は、構造物に固定される固定部22と、配線機器類が取付けられる取付部23とで構成されている。取付部23にはビス孔34及びビス下孔35が設けられ、ビス孔34にはビス51が取着されている。以下、各構成部について詳細に説明する。なお、ここでは、配線機器類として感知器61を取付ける場合を説明する。
【0017】
本体21は、全体が概略L字板状に形成されており、垂直部分は固定部22を構成し、水平部分は取付部23を構成している。本体21は合成樹脂材を使用して一体に形成されている。固定部22は、矩形状の側壁24等で形成されており、側壁24の外面側の左右両端部には側壁24に対して直交する方向に一定の高さで立設する一対の枠板部25,25が端部に沿って一体に設けられ、一対の枠板部25,25の内側寸法は後述する吊りボルト用支持具71の基板72の幅と略同一に形成されている。そして、固定部22の側壁24の上端部には、取付部23側で立設する突出片26と、この突出片26と反対側において左右両側に形成された一対の係合突片27,27との間に、吊りボルト用支持具71の基板72の高さ方向中間部が嵌入する嵌入溝28が形成されている。
【0018】
更に、固定部22の側壁24の上部には構造物の壁面に固定するための固定ボルトが挿通される固定孔29が設けられ、側壁24の下部には吊りボルト用支持具71の基板72に突設された割り止めピン76が挿通される挿通孔30が設けられている。
【0019】
一方、取付部23は、細長矩形状に形成され、底板31の周縁に沿って一定高さの周壁32が立設されている。取付部23の長さ方向中央部において僅かに固定部22とは反対側寄りの部分には感知器61からのケーブルが挿通するケーブル挿通孔33が形成されている。そして、底板31には、ケーブル挿通孔33を挟んだ両側にビス孔34及びビス下孔35が設けられている。具体的には、
図1(b)及び
図3に示すように、取付部23の底板31においてケーブル挿通孔33を挟んだ長手方向の両側にケーブル挿通孔33に隣接して一定幅で長手方向に延びた第1長孔35a及び第2長孔35bが形成され、また、それらの長孔の長手方向両側には丸孔形状の第1ビス孔34a及び第2ビス孔34bが形成され、更に、第2ビス孔34bに隣接して第3長孔35cが形成されている。第1ビス孔34a及び第2ビス孔34bにはビス51が取着されている。第1〜3長孔はビス51が将来的に取着されることがあり得るビス下孔35である。
【0020】
第1ビス孔34aと第2ビス孔34bとのピッチP1は、感知器61において一対のビス51,51が取付けられる一対のビス用通孔64,64の標準的なピッチP2に対応してこれと同一の大きさに設定されている。ビス孔34に加えてビス下孔35をも設けたのは、一対のビス用通孔64,64のピッチP2が、標準的な感知器61のピッチP2と異なる感知器61にも対応してビス51を取着可能とするためである。なお、異なるピッチP2の一対のビス用通孔64,64を有する感知器61を取付ける場合に、本体21の取付部23のビス下孔35に取着されるビス51は、予め機器支持具11に取着されているビス51と同一のものであってもよく、予め機器支持具11に取着されているビス51を取り替えた別のものであってもよい。
【0021】
更に、各ビス孔34は、奥行方向の略中間位置に、突き破り可能な薄張りの隔壁36が設けられている。そして、各ビス孔34の奥側には、ビス51を更に締め付ける際に自身でねじ切りしながら螺進する箇所イが形成されている。また、第1〜3長孔は、両側に縦壁37が形成されており、両縦壁37の内面の間隔はその内面をビス51が螺刻しながら取着可能な幅に形成されている。これらのビス孔34、及び長孔からなるビス下孔35は、取付部23の幅方向の中心線C上に配置されている。この中心線Cは、一対のビス51,51の対方向の軸心でもある。
【0022】
取付部23において、底板31の上面の幅方向の中央部には、
図1(a)及び
図2(a)に示すように、ケーブル挿通孔33を挟んだ両側に長さ方向に沿って平行する一対の前述した縦壁37,37が立設されており、一対の縦壁37,37の上端部は上壁38で塞がれている。縦壁37は、途中で固定部22側の部分が徐々に高くなっており、固定部22と隣接する部分には本体21に形鋼用固定具81を取付けるための取付ボルト86が貫通するボルト貫通孔39が形成されている。このボルト貫通孔39は固定部22の一部を構成する。両縦壁37の外面の間隔は、後述する形鋼用固定具81の左右一対の側壁24,24の間隔と同一または僅かに大きい幅に形成されており、これにより、取付部23の両側の縦壁37と形鋼用固定具81の一対の側壁24,24とが嵌合するようになっている。
【0023】
取付部23の両側の周壁32における固定部22寄りの部分には、ケーブルを保持するケーブル保持部40が設けられている。ケーブル保持部40は、周壁32から離間した位置に周壁32に沿って把持片41が設けられており、固定部22側の端部の挿入口42からケーブルを強制的に押し込んで周壁32と把持片41とでケーブルを弾性的に挟持し保持するようになっている。
【0024】
更に、ビス孔34に取着されているビス51は、
図1(b)及び
図2に示すように、頭部52が下方に所定距離突出し、ビス51が取着された面すなわち底板31の下面31aとビス51の頭部52との間には隙間Lが形成されており、その隙間Lは、取付部23に取付けられる後述の
図7(a)に示す感知器61のビス用通孔64とベース63の上方開口の周端部との高さ方向の間隔より僅かに大きく、感知器61のベース63に設けられたビス用通孔64の拡大部64aを通過させるとともに感知器61の長孔64bの弧状に沿って感知器61を回動操作することにより感知器61をビス51に引掛け可能な大きさに形成されている。この状態において、ビス51は、
図2(d)に示すように、軸部先端でビス孔34内の隔壁36を突き破って、または突き破ることなく奥行方向の途中まで螺着されている。なお、隔壁36はビス51が取着されていない状態において外部から埃等が侵入するのを防止する。
【0025】
ここで、予めビス孔34に取着されているビス51は、タッピングビスであって、取着面である底板31の下面31aから、前述した、ビス孔34の奥側であってビス51を更に締め付ける際に自身でねじ切りしながら螺進する箇所イまでの間の部分においては、ねじ切りにより螺着されて、感知器61が取付けられるまでの間、仮保持されてもよく、あるいはねじ切りせずに圧入などによって、ビス孔34に仮保持されてもよい。
【0026】
例えば、
図4(a)、(b)に示すように、取着面より奥側の前述した箇所イからねじ切りが開始されるよう、ビス孔34の取着面側の内面はビス51より少し大きめの内径になっているとともに、内面の周方向4箇所には取着面から奥側に向かうに従って徐々に突出高さが大きくなる半円柱状の突条34cが等間隔で奥行方向に設けられていて、ビス孔34にタッピングビスを押し込んだ際に、徐々に圧入力が増すとともに突条34cの先端が潰れていき、
図4(c)に示すように、ビス51が強固に圧入され仮保持されるようにしてもよい。あるいは、ビス51はビス孔34の取着面付近では圧入され、途中の奥側で少しねじ切りされ螺着されて仮保持されるようにしてもよい。これらの仮保持状態の位置すなわちこれより先はねじを切らないと螺進方向には進めないこととなる位置を、所定の隙間Lが形成される位置として定めれば、正確に所定の隙間Lを形成することができる。
【0027】
次に、このように構成された機器支持具11を構造物である吊りボルトに固定し、感知器61を取付ける方法を説明する。
吊りボルトは、各種配線機器類を支持するために天井から下方に吊り下げられたものであり、これに本実施形態の機器支持具11を固定するには、
図5(a)に示す吊りボルト用支持具71を使用する。吊りボルト用支持具71は、矩形板状の基板72の一側に円弧面状に湾曲形成された挟持片73が上下方向に所定距離離間して一対設けられており、挟持片73の先端と基板72との間には吊りボルト91を挿入可能な挿入口74が形成されている。各挟持片73の挿入口74は互いに向かい合う方向に形成されている。そして、一対の挟持片73,73の間は吊りボルト91が挿入される挿入部75となっている。
【0028】
この構成により、一対の挟持片73,73は吊りボルト91を相反対側から抱え込むようにして基板72とで挟持し、吊りボルト用支持具71は吊りボルト91に固定される。ここで、基板72は機器支持具11の固定部22の上端部における左右両側に形成された嵌入溝28に嵌入する一定厚さに形成されている。
【0029】
吊りボルト用支持具71の基板72の他側には、上下端部に水平方向に突出する割り止めピン76が一体に設けられており、この割り止めピン76は機器支持具11の挿通孔30に挿通される。なお、割り止めピン76は基板72の上下に設けられているので、吊りボルト用支持具71が上下いずれの向きでも反転することなくいずれか一方を機器支持具11の挿通孔30に挿通し機器支持具11に取付けることができる。ここで、吊りボルト用支持具71の基板72の高さ方向中間部の両側端部には、機器支持具11に取付ける際に基板27が機器支持具11の固定部22における上端部の左右一対の係合突片27,27と干渉するのを防止するため、コ字状に切欠された逃がし空間77が形成されている。
【0030】
そこで、機器支持具11を吊りボルト91に固定するには、最初に吊りボルト用支持具71を機器支持具11に取付ける。それには、吊りボルト用支持具71の基板72の両側端部の逃がし空間77を機器支持具11の固定部22の上端部の係合突片27に位置合わせして、吊りボルト用支持具71の基板72と機器支持具11の係合突片27との干渉を回避しつつ、基板72を固定部22の側壁24にあてがい、下方に少し移動させて基板72の高さ方向中間部を固定部22の嵌入溝28に嵌入させるとともに、割り止めピン76を固定部22の挿通孔30内に挿入して取付ける。これによって取付けられた後は、吊りボルト用支持具71は、両側端部が固定部22の左右両端部の枠板部25によって側方への移動が規制される。これにより、吊りボルト用支持具71は、基板72を固定部22の側壁24にあてがい、下方の割り止めピン76を固定部22の挿通孔30内に挿入するだけで、簡単に機器支持具11の固定部22の一定位置に取付けることができる。機器支持具11に吊りボルト用支持具71を取付けた状態を
図5(b)及び(c)に示す。
【0031】
機器支持具11に吊りボルト用支持具71を取付けたら、垂直姿勢に取付けられている吊りボルト用支持具71を機器支持具11とともに上下方向に90度反時計回りに回動させて水平姿勢に変え、その姿勢で側方から吊りボルト91にあてがうようにして吊りボルト用支持具71の挿入部75から吊りボルト91を挿入する。そして、そのまま吊りボルト用支持具71を一対の挟持片73,73の弾性力に抗して強制的に上下方向に90度時計回りに回動させて元の垂直姿勢に戻せば、吊りボルト91は一対の挟持片73,73の挿入口74,74から挿入されつつ、相反対側から内部に抱え込まれるようにして基板72と挟持片73とで挟持され、これにより、機器支持具11は、
図6に示すように、吊りボルト用支持具71を介して吊りボルト91に取付けられる。
【0032】
このようにして、機器支持具11を吊りボルト91に固定したら、機器支持具11の取付部23に感知器61を取付ける。感知器61は、感知器本体62とベース63との2つの分割体が上下2段に組み付けられてなり、最初にベース63を機器支持具11の取付部23に取付けた後、感知器本体62をベース63に組み付けるようになっている。ベース63には機器支持具11の一対のビス51,51が挿通されるビス用通孔64が一対設けられている。
【0033】
感知器61を機器支持具11に取付けるには、機器支持具11のビス51の頭部52が取付部23の底板31の下面31aから所定距離下方に突出した状態にあるので、
図7(a)に示すように、一対のビス51,51を感知器61の一対のビス用通孔64,64の拡大部64a,64a内に通過させつつ、感知器61のベース63を下方から取付部23にあてがい、底板31の下面31aとビス51の頭部52との隙間Lの部分に位置させる。ここで、隙間Lは感知器61の厚さより僅かに大きく形成されているので、感知器61のビス用通孔64の拡大部64aにビス51の頭部52を通過させるとともにビス用通孔64の長孔64bの弧状に沿って回動操作することにより、感知器61を機器支持具11の一対のビス51,51に引掛けることができる。
【0034】
その後、ビス51をビス孔34の奥側において隙間Lを狭めるように自身でねじ切りしながら螺進させ、増し締めすることにより、取付部23の底板31とビス51の頭部52とで挟持して感知器61のベース63を取付ける。次いで、ベース63に感知器本体62を組み付ければ、
図7(b)に示すように、機器支持具11の取付部23への感知器61の取付けが完了する。そして、これにより、機器支持具11を介して感知器61を吊りボルト91に取付けることができる。このようにして機器支持具11に感知器61を取付けたものは、配線機器類の取着装置1を構成する。
【0035】
なお、ベース63の一対のビス用通孔64,64のピッチP2が上述の感知器61のピッチP2とは異なる感知器61を機器支持具11に取付ける場合は、ビス孔34及びビス下孔35のうちから一対のビス用通孔64,64のピッチP2に合致する孔を選定し、これに一対のビス51,51を取着する。この場合、ケーブル挿通孔33を中心として一対のビス51,51の取着位置が左右対称となるようにビス51が取着される孔を選定してもよいし、一対のビス51,51のうち一方のビス51の取着位置は変更することなく第1ビス孔34aまたは第2ビス孔34bをそのまま使用し、他方のビス51の取着位置のみを変更することもできる。
【0036】
また、上記では、機器支持具11を吊りボルト91に固定してから感知器61を取付けているが、先に感知器61を吊りボルト用支持具71が取付けられている機器支持具11に取付けてから、吊りボルト91に固定することもできる。
【0037】
あるいは、機器支持具11の取付部23に感知器61を取付けるとともに、吊りボルト用支持具71を吊りボルト91に取付けた後に、吊りボルト用支持具11の割り止めピン76を機器支持具11の固定部22の挿通孔30に嵌入して、吊りボルト用支持具11を機器支持具11に取付けてもよい。この場合、吊りボルト91に固定するための機器支持具11の固定部22の吊りボルト用支持具71は機器支持具11の取付部23とは別体に構成されているため、感知器61を機器支持具11に取付け易い所で取付作業を行ない、機器支持具11とは独立して固定できる吊りボルト用支持具71を先に吊りボルト91に固定してからこれに機器支持具11を取付けることができるから、狭いスペースでも効率良く取付作業を行なうことができる。
【0038】
また、この場合、吊りボルト用支持具71を吊りボルト91に固定する操作は、吊りボルト用支持具71を回動させながら吊りボルト91に固定する回動操作となるのに対し、機器支持具11を吊りボルト用支持具71に取付ける操作は、固定部22の挿通孔30を吊りボルト91側に向けて吊りボルト用支持具71の割り止めピン76に外嵌する直線操作となり、つまり、吊りボルト用支持具71が吊りボルト91から外れる方向と異なる方向に操作して、機器支持具11を吊りボルト用支持具71に取付け一体化することができる。
【0039】
但し、本発明の機器支持具11は、これが予め高所の吊りボルト91や形鋼92等の構造物に固定されている状態において、その後に、感知器61を機器支持具11に取付け、この機器支持具11を介して吊りボルト91等の構造物に取付けるときに、特に有効なものである。
【0040】
ところで、上記では、機器支持具11を構造物である吊りボルト91に固定する場合について説明したが、機器支持具11は、固定ボルトを使用して構造物である壁面に直接固定することもできる。その場合は、固定ボルトを機器支持具11の固定部22の固定孔29に挿通して壁面に固定することができる。
【0041】
また、機器支持具11は、構造物としての形鋼に固定することもできる。機器支持具11を形鋼に固定するには、
図8(a)に示す形鋼用固定具81を使用する。形鋼用固定具81は、金属板材を折り曲げ加工して、左右一対の側面視略コ字状の側板82,82が所定の間隔をおいて対向しており、各側板82のコ字状の切欠部分は形鋼92のフランジ93が挿入される挿入空間83を形成している。更に、挿入空間83の下端縁部には直角に折り曲げ加工されて水平外方に突出する挟持片84が左右に一対形成されている。左右一対の側板82,82の間隔は機器支持具11の対向する2つの縦壁37,37間の外側寸法と同一またはそれより僅かに小さく形成されていて、形鋼用固定具81を機器支持具11に上方からあてがい2つの縦壁37を左右両側から挟むようにして嵌め込むことができるようになっている。
【0042】
また、側板82には機器支持具11のボルト貫通孔39と対応する位置に取付孔85が形成され、この取付孔85に取付ボルト86を挿通することにより形鋼用固定具81を機器支持具11に固定できるようになっている。そして、側板82の端部の折り返し部87には水平方向に切欠されて内部にナット88が収容されるナット収容空間89が形成されている。加えて、一対の側板82,82の端部の折り返し部87内の空間には上方から挟持ボルト90が挿入され、この挟持ボルト90は、更にナット収容空間89内のナット88内を貫通し、その軸部先端が挿入空間83内に挿入された形鋼92のフランジ93に当接可能となっている。
【0043】
機器支持具11を形鋼92のフランジ93に固定するには、最初に形鋼用固定具81を機器支持具11に取付ける。それには、形鋼用固定具81を機器支持具11に上方からあてがい、
図8(b)に示すように、2つの縦壁37を左右両側から挟むように嵌め込んで組み付け、形鋼用固定具81の取付孔85と機器支持具11のボルト貫通孔39に取付ボルト86を挿通し締め付ける。これにより、形鋼用固定具81を機器支持具11に固定したら、形鋼用固定具81の挿入空間83に形鋼92のフランジ93を挿入し、上方から挟持ボルト90を締め付けて挟持ボルト90の軸部先端と挟持片84とでフランジ93を挟む。これにより、形鋼92への機器支持具11の固定が完了する。
【0044】
このようにして、機器支持具11を形鋼92に固定したら、吊りボルト91への取付けと同様にして機器支持具11の取付部23に感知器61を取付ける。機器支持具11を介して感知器61を形鋼92に取付けた状態を
図9に示す。
【0045】
なお、上記は、機器支持具11を、形鋼用固定具81を介して形鋼92に固定してから感知器61を機器支持具11に取付けているが、前述の、感知器61を吊りボルト91に取付ける場合と同様に、先に感知器61を機器支持具11に取付けるとともに、形鋼92に形鋼用固定具81を固定した後に、機器支持具11を形鋼用固定具81に固定したりすることもできる。
【0046】
次に、本実施形態の機器支持具11及び配線機器類の取着装置1の作用を説明する。
機器支持具11は、感知器61の一対のビス用通孔64,64のピッチP2に合致した位置に形成された一対のビス孔34,34に一対のビス51,51が取着されており、ビス51が取着されている機器支持具11の底板31の下面31aとビス51の頭部52との間には、感知器61を引掛け可能な隙間Lが設けられているので、隙間L内に感知器61のベース63を挿入し、一対のビス51,51に感知器61を引掛け、その後、そのままビス51を少し締め付けて増し締めするだけで感知器61を機器支持具11に取付けることができる。したがって、特に建物の高所での感知器61の取付け作業において、手でビス51を保持する必要はなく、また、作業中にビス51を支持具のビス孔34及び感知器61のビス用通孔64に位置合わせして挿通する必要もなく、感知器61を吊りボルト91や建物の壁面、形鋼92等に簡単かつ安全に取付けることができる。
【0047】
ここで、一対のビス51,51は、工場出荷時や販売時に既に機器支持具11の本体21に取着されていることが望ましく、少なくとも市場流通前の段階において、本体21の底板31の下方に隙間Lが設けられた状態で取着されていれば、作業者はただちに感知器61をビス51に引掛け、簡単に仮取着することができる。
【0048】
また、取着されている一対のビス51,51の対方向の軸心上にビス51を取着可能なビス下孔35が形成されているので、機器支持具11に異なるピッチP2のビス用通孔64を有する感知器61を取付けることもできる。そして、ビス下孔35を一対のビス孔34の対方向の軸芯上に直線的に見栄え良く配置することができ、また、機器支持具11を細幅に形成することができる。
【0049】
加えて、異なるピッチP2のビス用通孔64を有する感知器61に対応して取付けるべく一対のビス51,51を機器支持具11の取付部23に取着するときに、取着されている一対のビス51,51のうち一方のビス51は取着位置を変更することなく他方のビス51の取着位置のみを変更して取着することもできるから、その場合には、一方のビス51を取着する手間が省ける。
【0050】
更に、機器支持具11は合成樹脂製であるから、ケーブルがケーブル挿通孔33の周縁部に擦れて傷付くのを防止できる。
【0051】
そして、取付部23に取着されたビス51は、タッピングビス51であり、また、タッピングビス51が自身でねじ切りしながら螺進する箇所イが取付部23のビス孔34の奥側に形成されているから、強固に取付部23に取着することができ、使用中にビス51が緩むのを防止できる。したがって、感知器61を取付部23に強固に安定して取付けることができる。
【0052】
また、ビス孔34内には隔壁36が設けられており、ビス51はビス孔34の内面に加えて隔壁36をも突き破ってねじ込まれることで、隔壁36は、ビス51の緩み止め効果を更に高めるものとしても作用する。このため、運搬中などで振動があっても、底板31の下面31aからのビス51の頭部52の突出距離を一定値に維持することができる。また、運搬、保管中や作業時にビス51が紛失するのを防止できる。
【0053】
ところで、上記実施形態の機器支持具11は、全体が概略L字板状に形成されているが、本発明を実施する場合には、この形状に限定されるものではない。また、異なるピッチP2のビス用通孔64を有する感知器61に対応すべく取付部23に設けられたビス下孔35は、取着されている一対のビス51,51の対方向の軸心上に設けられているが、必ずしもこの軸心上に設ける必要はない。
【0054】
更に、上記実施形態の機器支持具11では、ビス51としてタッピングビス51を使用し、ビス孔34の内壁面をビス51のおねじでねじ切りしながら取着しているが、これに限られるものではない。例えば、取付部23の底板31にナットを埋め込み、通常のビス51を使用してこれをビス孔34に取着することもできる。また、更にこのビス51を取付部23の上壁38の上方まで貫通させて前記埋め込みナットと上壁38に取付けたナットとで締め付けることにより取着することもできる。これらの場合、ビス孔34の内壁面は全長に至ってめねじが形成される。勿論、これらのいずれの場合においても、取付部23の底板31の下面31aとビス51の頭部52との間には所定の隙間Lを設けた状態でビス51は取着される。
【0055】
そして、上記実施形態の機器支持具11は、本体21全体が合成樹脂で形成されているが、これに限定されるものではなく、本体21の取付部23のみが合成樹脂で形成されていてもよい。また、本体21全体が金属製のものであってもよい。この場合、ケーブル挿通孔33には周縁部でケーブルが傷付くのを防止するために別途にグロメット等をケーブル挿通孔33に嵌め込んでおくのが望ましい。
【0056】
なお、上記実施形態では、第1ビス孔34aと第2ビス孔34bとの間のピッチP1は、標準的な感知器61のビス用通孔64のピッチP2に対応して設定されているが、当初にこれと異なるピッチP2のビス用通孔64を有する感知器61に対応して一対のビス51,51が、第1ビス孔34aまたは第2ビス孔34bと、長孔とに取着されている場合は、これらがビス孔となり、それ以外のビス51が取着されていない孔はビス下孔となる。
【0057】
また、上記実施形態では、配線機器類が感知器61である場合を例示しているが、配線機器類として配線ボックスなどを挙げることもでき、これらの機器も同様にして機器支持具11に取付けることができる。