【実施例】
【0037】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0038】
フライアッシュ含有モルタル又はコンクリートに使用する、混和剤(以下、フライアッシュ用混和剤と表記する。)について検討を行った。
1.フライアッシュ用混和剤検討(その1)
1−1.総括
フライアッシュ用混和剤に適していると考えられる、以下2点の条件を満たす基剤を選定した。
i)未燃カーボンに早期に吸着し、未燃カーボンを不活性化することで各種混和剤の吸着を防ぐ。
ii) 未燃カーボンには吸着しにくく、優良な空気連行性が得られるもの。
詳細を以下に示す。
【0039】
1−2.試験条件
<モルタル配合>
C+FA=450kg/m
3、W=225kg/m
3、S=1350kg/m
3、W/(C+FA)=50質量%、減水剤1%対(C+FA)
C:セメント(普通ポルトランドセメント)
W:水
S:細骨材(JIS標準砂)
FA:フライアッシュ(中国電力 新小野田発電所 フライアッシュII種、密度2.20g/cm
3、未燃炭素量2.2%)
減水剤:オキシカルボン酸塩(株式会社フローリック製 フローリックT)
<混練方法>
強制パン型ミキサーを使用し、(C+FA)プラス水、混和剤、減水剤→低速30秒→S添加(30秒)→低速30秒→掻き落とし30秒→高速120秒
<空気量測定>
JIS A1116「質量方法」
混和剤を有効分換算で加え、空気量を測定。
【0040】
1−3.試験結果
検討1.FA置換率の決定
【0041】
【表1】
試料1の内訳
ロジンK:15%、POP(3)POE(50)ラウリルエーテル:6%の水溶液
【0042】
まず最適なFA置換率を決めるため、FA置換率を変えた際の試料1の空気量を測定した。その結果、FA置換率15%、30%では経時によるエアーロスが確認されなかったが、45%では著しいエアーロスが確認された。
【0043】
以上の結果を踏まえ、性能差をより明らかにするためFA置換率を45%とした。続いて、未燃カーボンの影響を受けにくい空気連行剤の選定を実施するため試料1と併用して使用した際の空気量を測定した。
【0044】
検討2.試料1と各種混和剤との併用時の空気量(FA置換率45%)
【0045】
【表2】
試料2:ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミン
試料3:トリエタノールアミン
試料4:POE(3)ラウリルアミン
試料5:POP(3)POE(50)ラウリルエーテル
試料6:ナタネ油エマルジョン
試料7:C12〜C16脂肪酸K塩:16%、試料2:9%、ソルフィット(3-メトキシ-3-メチルブタノール):6%の水溶液
試料8:テトラデセンスルホン酸ナトリウム
試料9:硫酸化油
試料10:メチルエステルスルホン酸ナトリウム
【0046】
試験の結果、各種混和剤を加えることで少なからず空気量の増加が確認された。試料1は空気連行性が高いにも関わらず、使用量を倍にしても空気量にほとんど変化が見られなかったことから、試料1は未燃カーボンに吸着し易いと推測され、試料8は他の混和剤使用時と比べて空気量が増大していたことから、試料8は未燃カーボンの影響を受けにくい空気連行剤であると推測された。以上の推測を確認するため、検討3を実施した。
【0047】
検討3.試料1、試料8の効果確認(FA置換率45%)
【0048】
【表3】
試料1は添加量を0.02質量%にしても空気量が増大しなかったにも関わらず、試料8は添加量を0.02質量%にしたところ大幅な空気上昇が見られたため未燃カーボンの影響を受けにくい空気連行剤であると考えられた。
【0049】
試料1は試料8と併用することで空気量を大幅に増大させたことから、試料1が未燃カーボンを不活性化していると判断された。
【0050】
検討2、3の結果を踏まえ、試料1は未燃カーボン吸着不活性化剤、試料8は未燃カーボンの影響を受けにくい空気連行剤として適していると考えられた。
【0051】
2.フライアッシュ用混和剤検討(その2)
2−1.総括
上記項目1では、試料1が未燃カーボン吸着不活性化剤、試料8が未燃カーボンの影響を受けにくい優れた空気連行剤であることが判明した。この結果より、石鹸系が未燃カーボン吸着不活性化剤として優れていると推測されたが、石鹸系を使用すると未燃カーボン含有量が少ない時に空気が入り過ぎてしまうことが懸念される。そこで、空気連行性に影響を与えず高い未燃カーボン吸着性を示す剤の選定を実施した。
詳細を以下に示す。
【0052】
2−2.試験結果
検討1.各種混和剤添加時の空気量(FA置換なし)
【0053】
【表4】
(注)温度と湿度の影響より、経時での空気量測定は困難であったため経時での測定は実施せず。
【0054】
まずFAを含んでいない処方での各種石鹸系の空気連行性への影響を確認した。その結果、オクタン酸石鹸、デカン酸石鹸は空気連行性に影響を与えにくく、中でもオクタン酸K(C8K(カプリル酸K)及びi−C8K(2−エチルヘキサン酸K))が好適であることが判明した。引き続き、これらが未燃カーボン吸着性を示すかを確認した。
【0055】
検討2.各種混和剤添加時の空気量(FA置換率45%)
【0056】
【表5】
(注)温度と湿度の影響より、経時での空気量測定は困難であったため経時での測定は実施せず。
【0057】
オクタン酸石鹸、デカン酸石鹸を試料8と併用した時の空気量を測定したところ、未燃カーボンを不活性化し、高い未燃カーボン吸着性を示した。
【0058】
この結果と検討1の結果を踏まえると、空気連行性に影響を与えにくい未燃カーボン吸着不活性化剤にはオクタン酸石鹸、デカン酸石鹸が望ましいと考えられた。
【0059】
3.フライアッシュ用混和剤検討(その3)
3−1.総括
これまでの検討で、オクタン酸石鹸、デカン酸石鹸は空気連行性に影響を与えにくい未燃カーボン吸着不活性化剤、試料8 (テトラデセンスルホン酸ナトリウム)は未燃カーボンの影響を受けにくい空気連行剤として使用できることが判明したが、これまでは1種類のFAしか使用していないため他のFAでも同様の結果を示すかを確認すると同時に未燃カーボン吸着不活性化剤と試料8の最適添加量の検討を実施した。
【0060】
3−2.試験条件
<モルタル配合>
C+FA=450kg/m
3、W
※1=225kg/m
3 or 180kg/m
3、S=1350kg/m
3、W/(C+FA)=50質量% or 40質量%、減水剤1%対(C+FA)、FA置換率45%
※1 ハンドリングの兼ね合いより、水の量をFA種類により変更。
FA1:中国電力 新小野田発電所 フライアッシュII種、密度2.20g/cm
3、未燃炭素量2.2%。FA置換率45%、W/(C+FA)=50質量%
FA2:九州電力苓北事業所 フライアッシュII種、密度2.32g/cm
3、未燃炭素量1.7%。FA置換率45%、W/(C+FA)=40質量%
減水剤:オキシカルボン酸塩(株式会社フローリック製 フローリックT)
<混練方法>
強制パン型ミキサーを使用し、(C+FA)プラス水、混和剤、減水剤→低速30秒→S添加(30秒)→低速30秒→掻き落とし30秒→高速120秒
<空気量測定>
JIS A1116「質量方法」
混和剤を有効分換算で加え、空気量を測定。
【0061】
3−3.試験結果
検討1.FA2使用時の各種混和剤添加時の空気量(FA2置換率45%、W/(C+FA)=40質量%)
【0062】
【表6】
(注)温度と湿度の影響より、経時での空気量測定は困難であったため経時での測定は実施せず。
【0063】
FA2(未燃カーボン含有量が少ない)を使用して前回と同様の条件で試験を実施しようとしたが、ハンドリングの影響からW/(C+FA)を50質量%→40質量%へと変更した。
【0064】
FAの品種を変更しても、これまでと同様の傾向が確認され、空気連行性に影響を与えにくい未燃カーボン吸着不活性化剤にはオクタン酸石鹸、デカン酸石鹸を使用するのが望ましいと考えられた。
【0065】
続いて、未燃カーボン吸着不活性化剤及び試料8の最適添加量についての検討結果を以下に示す。なお、未燃カーボン吸着不活性化剤には、上記項目2検討1の結果(表4)より、中でも空気連行性に影響を与えにくい、オクタン酸K(C8K(カプリル酸K)及びi−C8K(2−エチルヘキサン酸K))を使用し、空気量は4.5〜10.0%を目標とした。
【0066】
検討2.各種混和剤の最適添加量検討(FA1置換率45%、W/(C+FA)=50質量%)
【0067】
【表7】
未燃カーボン吸着不活性化剤及び試料8の添加量を変更して最適添加量を検討したところ、C8K及びi−C8Kはセメント及びフライアッシュの合計量に対して、固形分換算0.02質量%程度で未燃カーボンをほぼ不活性化できることが判明した。
【0068】
上記未燃カーボン吸着不活性化剤を0.02質量%使用した場合、試料8の最適添加量はセメント及びフライアッシュの合計量に対して、固形分換算で0.01〜0.02質量%程度が望ましいと考えられた。
【0069】
4.フライアッシュ用混和剤検討(その4)
4−1.総括
これまでのモルタル配合検討で、空気連行性に影響を与えにくい未燃カーボン吸着不活性化剤、未燃カーボンの影響を受けにくい空気連行剤及びその最適添加量が判明した。そこでコンクリート配合を実施した。
【0070】
4−2.試験条件
<コンクリート配合>
C+FA=450kg/m
3、W=225kg/m
3、S=1020kg/m
3、G=1212kg/m
3、W/(C+FA)=50質量%、S/a{細骨材の容積/(細骨材の容積+粗骨材の容積)}×100=46体積% 減水剤1%対(C+FA)、FA置換率45%
C:セメント(普通ポルトランドセメント)
W:水
S:細骨材(JIS標準砂、密度2.60g/cm
3)
G:粗骨材(青梅産砕石、密度2.63g/cm
3)
FA:フライアッシュ(中国電力 新小野田発電所 フライアッシュII種、密度2.20g/cm
3、未燃炭素量2.2%)
減水剤:オキシカルボン酸塩(株式会社フローリック製 フローリックT)
<混練方法>
強制パン型ミキサーを使用し、C、FA、S、Gを投入し10秒間空練りした。次いで目標空気量が3〜6%の範囲となるように混和剤及び水、減水剤を添加し練り混ぜ、コンクリートを調製した。
<空気量測定>
JIS A1128「圧力方法」
混和剤を有効分換算で加え、空気量を測定。
【0071】
4−3.試験結果
検討1.コンクリートの空気量(FA置換率45%)
【0072】
【表8】
試験の結果、本発明のセメント水性組成物用混和剤は安定かつ充分な空気連行性や空気量保持性を有するものであり、品質の良いフライアッシュ含有コンクリートを製造することができたと考えられた。