【文献】
横山邦彦,オンプレミスの課題を解決するクラウドでの画像保存,ITvision,日本,(株)インナービジョン,2013年 1月25日,No.27,52−53頁
【文献】
宮保憲治 他3名,広域分散ネットワークを活用したディザスタリカバリ技術の実用化,電子情報通信学会論文誌B[online],日本,電子情報通信学会,2014年 8月 1日,Volume J97-B No.8,583〜598頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記データ処理装置は、前記画像生成装置が生成してから所定の第1の期間が経過した前記デジタル医療用画像データに対して、前記所定の圧縮率より高い圧縮率にて自動的に圧縮する再圧縮処理を実行する
請求項5に記載のデジタル医療用画像データ記憶システム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の画像データ記憶システムについて説明する。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の画像データ記憶システム100の構成例について説明するための図である。
図1に示すように、画像データ記憶システム100は、画像データを生成及び利用する医療機関10と、医療機関10において生成された画像データを記憶する複数のデータセンタ20と、医療機関10とデータセンタ20との画像データのデータ転送を担うネットワーク30と、を有する。
本実施形態の画像データ記憶システム100において、データセンタ20は、
図1に示すように複数存在する。
図1においては、複数のデータセンタをデータセンタ20a、20b・・・のように記載している。本実施形態では、複数のデータセンタ20の数については特に限定しない。2以上のデータセンタ20が存在すればよい。
なお、本実施形態のデータセンタ20が、本発明の記憶施設に対応する。
【0012】
医療機関10は、病院や医院等、デジタル医療用画像データ(以下、画像データ)を生成するとともに、当該画像データを診断等の目的で使用する施設である。
医療機関10は、画像生成装置11、データ処理装置12、画像取得装置13、ローカルストレージ14、診察用端末15、データ転送装置16、を有する。
本実施形態のローカルストレージ14が、本発明のローカル記憶装置に対応する。
【0013】
医療機関10の各構成について説明する。
画像生成装置11は、各種デジタル医療機器、例えば、CT(コンピュータ断層撮影)装置、PET(ポジトロン断層撮影)装置、SPECT(単一光子放射断層撮影)、OCT(光干渉断層画像撮影)装置、MRI(磁気共鳴断層撮影)装置、ガンマカメラ装置、CR(コンピュータX線撮影)装置、デジタルマンモグラフィ装置、超音波表示装置、医療用サーモグラフィ装置等、デジタル画像データ(以下、画像データ)を生成する装置である。
【0014】
本実施形態の画像データ記憶システム100において、医療機関10の画像生成装置11において生成された画像データは、原則として、データ処理装置12による所定の処理を施された後、ネットワーク30を介して医療機関10から見て外部の複数のデータセンタ20に転送され、それぞれのデータセンタが有する大容量ストレージ21に記憶及び管理される。
【0015】
データ処理装置12は、患者の個人情報に相当する画像データを医療機関10外部のデータセンタ20に転送し、記憶及び管理させるためのしかるべき所定の処理を行う。
データ処理装置12が行う所定の処理は、画像データの匿名化処理、暗号化処理、及び秘密分散処理の3つの処理である。当該3つの処理の詳細については、後述する。
【0016】
画像取得装置13は、特定の画像データが必要となった時、外部の複数のデータセンタ20が有する大容量ストレージ21から対応するデータを取得し、データ処理装置12が行った所定の処理に対する復元処理を行い、必要な画像データを取得する。
【0017】
画像データが必要になった時とは、具体的には、例えば以下のような場合である。
例えば、画像取得装置13は、患者の診察予約に応じて、当該患者の画像データが必要であると判断する。なお、患者の診察予約がなされたか否かの情報は、例えば医療機関10内において運用されるHIS(Hospital Information System:病院情報システム)等から取得すればよい。HISは、患者に関する各種情報を医療機関10内の各部署で共有し、更新を蓄積するためのシステムであり、例えば診療現場から各検査部門に対して検査や処置のオーダーを出したり、次の受診や検査の予約を登録したり、といった各種処理を実行する。HISに関しては、本実施形態においてはその構成を限定しない。画像取得装置13がHISから必要な情報、すなわち特定の患者の診察予約情報等を取得できるように構成すればよい。
【0018】
画像取得装置13が画像データを取得する条件としては、上記の具体例のように患者の診察予約の他にも、例えば画像データが生成されたこと自体を条件としてもよいし、患者が医療機関10を来訪し、診察の受付をしたことを条件としてもよいし、医師による、
図1に図示しない画像データ記憶システム100の端末装置等を介した直接入力による画像データ取得指示を条件としてもよい。
このように画像取得装置13が画像データを取得する条件は、医療機関10における画像データ記憶システム100の運用上、臨機応変に設定可能とすればよい。また複数の条件を予め設定しておき、そのいずれかが満たされた時に画像データを取得するようにしてもよい。
【0019】
このように画像取得装置13が取得した画像データは、ローカルストレージ14に記憶される。また、ローカルストレージ14には、画像生成装置11が生成し、データ処理装置12による所定の処理が行われる前の画像データが記憶される。
すなわち、ローカルストレージ14は、主に医療機関10内で現在使用されている画像データを記憶しており、医療機関10を処理装置、複数のデータセンタ20を主記憶装置として見た場合のキャッシュメモリに該当する記憶装置である。そのため、ローカルストレージ14に記憶される画像データは、必要に応じてダイナミックに入れ替わっている。
画像取得装置13により、医療機関10において画像データが必要となった時、必要な画像データが複数のデータセンタ20から予め取得され、ローカルストレージ14に記憶されているので、医療機関10において必要な画像データの読み出しに掛かる時間が少なくて済む。
【0020】
診察用端末15は、画像取得装置13により取得されローカルストレージ14に記憶された画像データを読み出し、当該画像データを表示して医師が診断や読影を行うための端末装置である。
図1には図示を省略するが、診察用端末15は、例えば画像データを表示する表示部、表示部に表示する画像データの選択操作等の入力を受け付ける操作部等の構成を有する。
【0021】
データ転送装置16は、医療機関10外部の複数のデータセンタ20と通信を行い、データ処理装置12により所定の処理がなされた画像データを、複数のデータセンタ20が有する大容量ストレージ21に転送するための通信装置である。
【0022】
ここで、データ処理装置12が行う所定の処理について説明する。
データ処理装置12が行う所定の処理は、(1)匿名化処理、(2)暗号化処理、(3)秘密分散処理の3つの処理である。
【0023】
(1)匿名化処理
画像生成装置11が生成する画像データのうち、例えばDICOM(Digital Imaging and COmmunication in Medicine)規格の画像データには、患者の氏名、年齢、生年月日等の患者を容易に特定可能な情報(以下、患者情報と称する)、画像データを生成した画像生成装置11や医療機関10を特定可能な情報や、画像データを作成した日時等、画像データに関する情報がタグ情報として添付されている場合がある。上述したように、本実施形態の画像データ記憶システム100では、医療機関10において生成された画像データが複数のデータセンタ20に転送されて記憶されるようになっているため、特に患者情報のような患者の個人情報に該当する情報が外部に流出しないようにする必要がある。
このため、データ処理装置12は、画像生成装置11が生成した画像データに添付されているタグ情報を削除することにより、画像データを匿名化する処理を行う。これが匿名化処理である。
【0024】
匿名化処理において、データ処理装置12は、タグ情報として画像データに付加されている画像データに関する情報の中から、患者名、患者の生年月日、患者住所、年齢等の患者情報を切り取り、画像データ毎に割り振った固有番号(画像ID)等と対応付けてローカルストレージ14等医療機関10内の記憶装置に記憶しておくことが望ましい。このようにすることで、外部のデータセンタ20へ転送する画像データからは患者情報を削除しつつ、データセンタ20から取得した画像データには画像IDに基づいて患者情報をタグ情報の形で内包する画像データを復活させることができるようになる。
【0025】
(2)暗号化処理
画像データを外部の複数のデータセンタ20に転送するためのセキュリティ対策の一環として、データ処理装置12は画像データに対して暗号化処理を行う。
暗号化処理の手法については本発明では限定しないが、例えば、高ビットのRSA暗号化方式を使用すればよい。
RSA暗号化方式は、桁数が大きい合成数の素因数分解問題が困難であることを安全性の根拠とした公開鍵暗号の一つである。例えば2048ビットのRSA暗号化を行うことにより、秘密鍵無しには解読困難な暗号化を行うことができる。
【0026】
(3)秘密分散処理
データ処理装置12は、画像データを秘密分散法により複数に分割したデータ(以下、分割データと称する)に分割する秘密分散処理を行う。
秘密分散法とは、電子割符とも呼ばれ、複数に分割したデータのそれぞれが元のデータを復元するための情報を有するように、データを複数に分割する手法である。したがって、秘密分散法では、分割したデータの1つのみからは全体を復元することができず、元のデータを復元するためには分割したデータが全て必要である、という特徴を有する。このため、秘密分散法は、データの秘匿性を向上させる目的で使用される。
本実施形態の画像データ記憶システム100では、データ処理装置12は秘密分散法により画像データを複数の分割データに分割する。このように分割された複数の分割データは、データ転送装置16により、必ず複数のデータセンタ20に分配されるように転送され、各データセンタが有する大容量ストレージ21に記憶される。
【0027】
このような秘密分散処理を行うことにより、画像データが複数の分割データに分割される。このように分割された個々の分割データは、単体では単なる無意味な文字列であり、全ての分割データと元の画像データとは相関性のない情報である。
個人情報の保護に関する法律の第2条第1項によれば、個人情報とは、「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」であるため、秘密分散処理が実行され分割された各分割データは、個人情報には該当しないと考えられる。このように秘密分散処理がなされた分割データは、個人情報の保護に関する法律による、個人情報に相当するデータを外部に転送及び記憶させる際の制約に抵触することなく、外部のデータセンタ20に転送及び記憶させることができる。
【0028】
次に、複数のデータセンタ20について説明する。
各データセンタ20は、医療機関10の外部に存在する、各種コンピュータや電子機器を設置し、これを用いて各種データの記憶及び管理を行うことに特化した施設であり、本発明の記憶施設に対応している。
各データセンタ20は、物理的なセキュリティ対策(施設内への入場制限等)、コンピュータや電子機器等の設置スペースの確保、発熱対策、停電対策、高速な通信回線の敷設等、コンピュータや電子機器類を好適に運用したり、データセンタ20外部とのデータ通信を好適に行ったりするための設備を有する。
本実施形態では、各データセンタ20は、それぞれ大容量ストレージ21を有し、医療機関10から転送される画像データを大量に記憶及び管理することができるように構成されている。
【0029】
本実施形態の画像データ記憶システム100では、上述したように、複数のデータセンタ20が設置されている。これは、上述した医療機関10におけるデータ処理装置12の秘密分散処理により分割された複数の分割データが、1つのデータセンタ20にのみ記憶されることを回避することにより、対障害性を向上させるためである。
【0030】
大容量ストレージ21は、大容量の記憶媒体、例えばHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等を内蔵するサーバ装置等、大容量のデータを記憶及び管理するためのストレージ装置である。データセンタ20において、1つだけでなく、複数のサーバ装置が互いに接続されて大容量ストレージ21を構成することが望ましい。また、複数のストレージ装置、例えば、100〜200個等、大量の装置を互いに接続して、分散記憶システムを構築することが望ましい。このようにすることで、大容量ストレージ21におけるデータ記憶及び管理の冗長性と耐障害性が向上する。
【0031】
図1においては、1つのデータセンタ20が1つの大容量ストレージ21を有するように記載しているが、1つのデータセンタが複数の大容量ストレージを有し、受信したデータを複数の大容量ストレージの記憶領域に適宜分散して記憶することがセキュリティの面から望ましい。
また、大容量ストレージ21は、自由に増設できるように構成することが望ましい。
ネットワーク30は、インターネット等の公衆ネットワーク、或いは医療機関10とデータセンタ20との間の専用線によるネットワークである。
【0032】
<動作例>
以下、画像データ記憶システム100の動作例について説明する。
図2は、医療機関10にて作成した画像データを外部のデータセンタに転送し記憶及び管理させる際の画像データ記憶システム100の動作例について説明するための図である。
【0033】
ステップST1:
医療機関10の画像生成装置11は、画像データを生成する。本実施形態では、画像生成装置11により生成された画像データは、大量かつ大容量であることが想定されている。
【0034】
ステップST2:
医療機関10のデータ処理装置12は、ステップST1において生成された画像データに対して、匿名化処理を行う。
【0035】
ステップST3:
医療機関10のデータ処理装置12は、ステップST2において匿名化処理を行った画像データに対して、暗号化処理を行う。
ステップST4:
医療機関10のデータ処理装置12は、ステップST3において暗号化処理を行った画像データに対して、秘密分散法による秘密分散処理を行う。
【0036】
ステップST5:
医療機関10のデータ転送装置16は、ステップST4において秘密分散処理を行った複数の分割データのそれぞれを、ネットワーク30を介して複数のデータセンタ20のいずれかに転送する。この際、データ転送装置16は、どの分割データをどのデータセンタ20に転送するかを決定し、分割データの転送先を示すデータである転送先データを作成する。
ステップST6:
複数のデータセンタ20は、ステップST5において医療機関10のデータ転送装置16から転送された分割データのいずれかを受信する。
ステップST7:
ステップST6において分割データを受信したデータセンタ20において、当該データセンタが有する大容量ストレージ21は、受信した分割データを記憶及び管理する。
複数のデータセンタ20において記憶及び管理される分割データは、上述したように匿名化処理、暗号化処理、秘密分散処理がなされているため、高いセキュリティ性を確保することができる。
【0037】
上述したように、本実施形態の画像データ記憶システム100の動作例によれば、患者の個人情報がメタデータとして付加された画像データに対して、匿名化処理、暗号化処理、秘密分散処理、の3工程の処理を実行した後、医療機関10の外部のデータセンタ20に対して転送するため、データの匿名性、安全性、冗長性を向上させることができる。
【0038】
次に、データセンタ20に転送し大容量ストレージ21に記憶させた分割データを、医療機関10にて再度画像データとして利用できるように復元する処理について説明する。
図3は、データセンタ20に転送し大容量ストレージ21に記憶させた分割データを、医療機関10にて再度画像データとして利用できるように復元する処理の動作例について説明するための図である。
【0039】
ステップST11:
医療機関10の画像取得装置13は、画像データが必要になったか否かを判断する。
画像データが必要になったか否かを判断する条件は、上述したように種々の条件を設定可能である。
画像データが必要であると画像取得装置13が判断した場合は、ステップST12に進み、そうでない場合は、本ステップを繰り返す。
【0040】
ステップST12:
医療機関10のデータ転送装置16は、ステップST11において必要であると判断した画像データの分割データの転送を、医療機関10外部の複数のデータセンタ20に要求する。
上記ステップST5において説明したように、データ転送装置16は、分割データのそれぞれが複数のデータセンタ20のうちのどのデータセンタに転送したかを示す転送先データを作成している。
本ステップST12において、データ転送装置16は、転送先データに基づいて、それぞれの分割データを記憶するデータセンタ20に当該分割データの転送を要求する。
【0041】
ステップST13:
ステップST12において、医療機関10のデータ転送装置16から分割データの転送を要求されたデータセンタ20は、要求された分割データを当該データセンタ20が有する大容量ストレージ21から読み出し、医療機関10に転送する。
【0042】
ステップST14:
医療機関10のデータ処理装置12は、ステップST13において転送された分割データに対して、秘密分散処理からの復元処理、暗号化処理に対する復号処理、及び匿名化処理からの復元処理を実行する。
この処理により、医療機関10内部のみにて利用可能な、患者情報が添付された画像データが復元される。
ステップST15:
医療機関10のデータ処理装置12は、ステップST14において復元した画像データを、ローカルストレージ14に記憶させる。
【0043】
上述したように、画像データ記憶システム100によれば、画像データが必要になったか否かを画像取得装置13が判断し、必要になったと判断した場合は、データ転送装置16が必要となった画像データの分割データを医療機関10外部のデータセンタ20に対して要求し、取得する。取得した複数の分割データは、データ処理装置12により秘密分散処理からの復元処理、暗号化処理に対する復号処理、及び匿名化処理からの復元処理を実行され、ローカルストレージ14に記憶される。
このように必要な画像データを予めローカルストレージ14に記憶しておくことにより、必要なときに必要な画像データへ高速にアクセスすることができる。
【0044】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態の画像データ記憶システム100によれば、医療機関10において、患者情報が添付された画像データに対して、匿名化処理、暗号化処理、秘密分散処理、の3つの処理が施され、その後、医療機関10の外部のデータセンタ20に対して転送されて大容量ストレージ21に記憶及び管理されるため、画像データの匿名性、安全性、冗長性が向上する。
【0045】
特に、患者を特定可能な情報である患者情報を含む画像データは、秘密分散処理によって複数の分割データに分割される。分割された各データはそれ単体では何の意味もなさない単なる文字列に過ぎないため、分割データは患者の個人情報或いはこれを含むデータには該当せず、「個人情報の保護に関する法律」に抵触することなく、医療機関10において生成した分割データを医療機関10外部のデータセンタ20等に転送して記憶及び管理等を委託することができるようになる。
【0046】
また、医療機関10において、容量が大きくなりがちな医療用のデジタル画像データを外部に記憶及び管理を委託することができるようになるので、画像データを記憶及び管理するための設備を医療機関10内に設置する必要がなくなり、設備投資・設置場所・メンテナンス要員・メンテナンス費用等を節約する事ができるようになる。
【0047】
さらに、画像データ記憶システム100によれば、必要になった画像データに対応する分割データを予めデータセンタ20から取得して復元処理を行い、復元した画像データを医療機関10内のローカルストレージ14に記憶しておく。これにより、医療機関10において、患者の診察時等、画像データがすぐに必要であるとき、画像データへの高速なアクセスが可能となり、ランダムアクセス性も向上する。
【0048】
上記説明した第1実施形態では、
図1に示すように、1つの医療機関10と複数のデータセンタ20とがネットワーク30を介して接続される例について説明したが、本発明はこれには限定されず、例えば複数の医療機関がネットワークを介して互いに接続されるようにしてもよい。
複数の医療機関が存在する場合は、データセンタには複数の医療機関の分割データが記憶及び管理される。この場合、それぞれの分割データに医療機関を特定するための識別番号を付与する等、分割データとそれぞれの医療機関との対応付けを予め行なっておくことで、複数の医療機関に対応することができる。
なお、複数のデータセンタとして、個々のデータセンタが広い地理的範囲に分散して配置されている広域分散データセンタを採用することにより、例えば地震、停電等の災害時にもデータを保守できる可能性を高めることができる。
また、データセンタ20に設置される大容量ストレージ21に、コンピュータネットワークを経由して共有しつつファイルにアクセスすることを可能にする分散ファイルシステムを導入することにより、耐障害性を向上させることができる。
【0049】
<第2実施形態>
近年では、画像を生成する装置の進化に伴い、デジタルの医療用画像データは増加の一途を辿っている。このため、画像データを記憶するストレージの必要な記憶容量が大きくならざるを得ず、データの記憶及び管理を外部に委託する場合には、外部施設(データセンタ)の利用コストが増大してしまっている。
これを改善するために、本第2実施形態では、画像データの圧縮処理を実行する。また、圧縮率を何段階かに(或いは自由に)設定できるようにする。さらに、外部施設に記憶してから所定の条件を満たしたデータに対しては自動的に削除する処理を可能とする。
【0050】
図4は、第2実施形態の画像データ記憶システム200の構成例について説明するための図である。
図4に示すように、画像データ記憶システム200は、医療機関40と複数のデータセンタ50とがネットワーク30を介して接続されている。
ネットワーク30は、第1実施形態にて説明したネットワーク30と同様の構成を有する。
【0051】
医療機関40は、病院や医院等、デジタル医療用画像データ(以下、画像データ)を生成するとともに、当該画像データを診断等の目的で使用する施設である。
医療機関40は、画像生成装置41、ローカルストレージ44、診察用端末45、データ処理装置42、データ転送装置46、画像取得装置43を有する。
【0052】
画像生成装置41は、第1実施形態にて説明した画像生成装置11と同様の動作を行う装置である。
【0053】
データ処理装置42は、医療機関40の外部に画像データを転送するにあたって、画像データの匿名化処理、圧縮処理、暗号化処理、秘密分散処理の4つの処理を行う。これらの処理のうち、匿名化処理、暗号化処理、秘密分散処理のそれぞれの詳細については、第1実施形態にて説明した通りである。
データ処理装置42の実行する圧縮処理の詳細については後述する。
【0054】
また、データ処理装置42は、後述するデータ転送装置46がデータセンタ50から分割データを取得したとき、上記匿名化処理、圧縮処理、暗号化処理、秘密分散処理からの復元処理を行い、画像データに戻して利用可能な状態にする。この際、後述する画像取得装置43と連携して、データセンタ50に転送した画像データのうち、当日必要となるデータを予め取得してローカルストレージ44に記憶させておき、必要となったときに必要な画像データを読み出して使用する。
画像取得装置43は、第1実施形態にて説明した画像取得装置13と同様の動作を行う装置である。
【0055】
ローカルストレージ44は、第1実施形態にて説明したローカルストレージ14と同様の動作を行う記憶装置である。
診察用端末45は、第1実施形態にて説明した診察用端末15と同様の動作を行う装置である。
データ転送装置46は、第1実施形態にて説明したデータ転送装置16と同様の動作を行う装置である。
【0056】
次に、上述したデータ処理装置42の実行する圧縮処理について説明する。
画像生成装置41が生成したデジタルの医療用画像データは、生成直後はRAW画像と呼ばれる、未処理・未圧縮の画像データであることが多い。
デジタルの医療用画像データは、医師がこれを読影して診断をするというその用途から、精細な画像である必要があるため、解像度が高く、サイズが大きくなりがちである。特にRAW画像のままだとデータ量が大きいため、医師等からは、画像データを圧縮してデータ量を削減したいという要望がある。
データ処理装置42が行う圧縮処理は、このような要望に応じるための処理である。
【0057】
RAW画像を圧縮する方法としては、例えばランレングス圧縮(RLE:Run Length Encoding)やロスレスJPEG(Lossless Joint Photographic Experts Group)等の可逆圧縮や、ロッシーJPEG(Lossy JPEG)等の不可逆圧縮がある。
或いは、データ処理装置42は、画像データの圧縮ではなく、ZIPフォーマット等のファイル圧縮フォーマットを使用して圧縮処理を行い、画像データのデータ量削減を実現してもよい。
なお、圧縮処理における圧縮方法については、本発明では特に限定しない。
【0058】
データ処理装置42は、これらの圧縮方法によって、画像データを圧縮する。
画像データを圧縮する際、データ処理装置42は、診察用端末45に画像データを表示させながら、医師等の入力に応じて自由に圧縮率を設定できるようにしてもよい。このようにすることで、圧縮率を見ながら画像データを圧縮することができ、好適に圧縮を行うことができるようになる。
【0059】
また、データ処理装置42は、画像データの重要度に応じて、圧縮率を複数段階から選択できるようにしてもよい。例えば、データ処理装置42は、画像データの生成から所定の期間A(本発明の所定の第1の期間に対応)が経過した画像データは、その重要度が低下していると判断して、高い圧縮率にて再度圧縮を行う再圧縮処理を行うようにすればよい。或いは、圧縮率を自由に設定できるようにしてもよい。
【0060】
次に、データセンタ50について説明する。
データセンタ50は、第1実施形態にて説明したデータセンタ20と同様に、医療機関40の外部に存在する、各種コンピュータや電子機器を設置及び運用することに特化した施設である。第1実施形態と同様、本第2実施形態においても、複数のデータセンタ50がネットワーク30を介して医療機関40と通信可能に設置されている。
【0061】
データセンタ50は、大容量ストレージ51と、自動削除装置52と、を有する。
大容量ストレージ51は、第1実施形態にて説明した大容量ストレージ21と同様の動作を行う記憶装置である。
この大容量ストレージ51は、医療機関40において匿名化処理、圧縮処理、暗号化処理、秘密分散処理の各処理を経て生成された分割データを記憶及び管理する。
【0062】
自動削除装置52は、所定の条件を満たしたか否かを判断し、当該所定の条件が満たされたと判断した場合に、特定の分割データを自動的に削除する削除処理を行う。
自動削除装置52が判断する所定の条件は、データセンタ50に画像データの記憶及び管理を委託する医療機関40の意向により自由に設定することができる。
【0063】
例えば、所定の条件として、分割データがデータセンタ50に記憶されてから所定の期間B(本発明の所定の第2の期間に対応)が経過したデータを抽出し、自動的に削除するようにすることができる。これにより、データセンタ50の大容量ストレージ51の空き容量が定期的に増えることになり、大量の分割データに大容量ストレージ51が圧迫され容量不足となる事態を回避することができる。
所定の期間Bの長さは、例えば医療機関40の意向により自由に決定できるようにすればよい。
【0064】
あるいは、所定の条件として、医療機関40からの削除依頼に応じて、削除を依頼された画像データに対応する分割データを削除するようにしてもよい。
【0065】
次に、第2実施形態の画像データ記憶システム200において、自動削除処理が実行される場合の動作例について説明する。
図5は、第2実施形態の画像データ記憶システム200における、自動削除処理が実行される場合の動作例について説明するための図である。
ステップST21:
医療機関40において、画像生成装置41は、大量かつ大容量の画像データを生成する。
ステップST22:
医療機関40において、データ処理装置42は、ステップST21において生成された画像データに対して、匿名化処理を行う。匿名化処理については、第1実施形態において説明した通りである。
【0066】
ステップST23:
医療機関40において、データ処理装置42は、ステップST22において匿名化処理がなされた画像データに対して、圧縮処理を行う。
【0067】
ステップST24:
医療機関40において、データ処理装置42は、ステップST23において圧縮された画像データに対して、暗号化処理を行う。暗号化処理については、第1実施形態において説明した通りである。
ステップST25:
医療機関40において、データ処理装置42は、ステップST24において暗号化された画像データに対して、秘密分散処理を行う。秘密分散処理については、第1実施形態において説明した通りである。
【0068】
ステップST26:
医療機関40において、データ転送装置16は、ステップST25において生成された分割データを、ネットワーク30を介してデータセンタ50に転送する。
ステップST27:
データセンタ50において、大容量ストレージ51は、ステップST25において転送されたデータの記憶及び管理を開始する。
【0069】
ステップST28:
データセンタ50において、自動削除装置52は、大容量ストレージ51に記憶及び管理する分割データのそれぞれについて、自動削除するための所定の条件を満たしたか否かを判断する。所定の条件を満たしたと判断した場合は、ステップST29に進み、そうでない場合は本ステップST28を繰り返す。
ステップST29:
データセンタ50において、自動削除装置52は、ステップST28において所定の条件を満たしたと判断した分割データを自動的に削除する。これにより、大容量ストレージ51の空き容量が確保される。
【0070】
以上説明したように、本発明の第2の実施形態の画像データ記憶システム200によれば、医療機関40において、患者の個人情報がメタデータとして付加された画像データに対して、匿名化処理、圧縮処理、暗号化処理、秘密分散処理、の4工程の処理を実行し、その後、医療機関40の外部のデータセンタ50に対して転送して大容量ストレージ51に記憶及び管理をさせるため、データの匿名性、安全性、冗長性を向上させることができるとともに、大容量ストレージ51の空き領域を確保することができ、大容量ストレージ51の容量不足により分割データを記憶できない事態を回避することができる。
【0071】
本発明は上述した実施形態には限定されない。
すなわち、本発明の実施に際しては、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
【0072】
上記説明した医療機関10(40)のデータ処理装置12(42)が行う秘密分散処理において、しきい値秘密分散法という手法を使用してもよい。
しきい値秘密分散法とは、秘密分散法の1つであり、分割した複数のデータのうち、全体数よりも少ない所定のしきい値以上の個数の分割データを集めれば元の画像データを復元できるという特徴を有する。すなわち、個々の分割データが元の画像データとは何の関連もない文字列であるという秘密分散法の特徴を有しつつ、全ての分割データが集まらなくても、所定のしきい値個以上の分割データが集まれば元のデータを復元できるため、秘匿性と可用性の両方を満たすことができる手法である。
このようなしきい値秘密分散法を採用することにより、分割データの冗長性を確保することができる。